説明

ポリマー厚膜抵抗体、設計セル、及びその製造方法

プリント回路用高分子厚膜(PTF)抵抗体(410、420)は、抵抗体本体部(423)のほとんどを包囲し、かつ抵抗値と抵抗体長さとの線形性を大幅に向上させ、抵抗体間及び基板間の製造誤差を大幅に低減するような公差制御材料(425、426、440)を有する。一実施形態(420)において、公差制御材料は、プリント回路導体(430)と同じ金属材料からなり、抵抗体本体部の中心から離れた位置に形成された二つのフィンガーパターンである。各フィンガーパターンは、抵抗体の一つの端子パッド(435)に接続されている。PTF抵抗体の製造のために設計セル(700)が用いられる。PTF抵抗体の製造のためにある方法が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜抵抗体に係り、詳しくは、ポリマー厚膜抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜抵抗体は、電子回路に用いられ、幅広い有用性を備える小型で安価な抵抗体を提供する。そのような抵抗体は、スクリーン印刷等によって、厚膜抵抗ペースト又はインクを、プリント配線板(PWB)、フレキシブル回路、或いはセラミック又はシリコン基板等の基板上に印刷することにより形成される。有機プリント配線板上に施される厚膜インクは、導電性材料、抵抗体の最終的な電気的特性に好ましい影響を与える各種添加剤、有機結合剤、及び有機賦形剤を含む。印刷後、厚膜インクを加熱して乾燥すると、該インクは、基板に付着した良好な薄膜に変質する。ポリマー厚膜(PTF)インクを用いる場合、有機結合剤は高分子マトリクス材料であり、加熱工程により有機賦形剤が除去されて、高分子マトリクス材料が硬化する。
【0003】
厚膜抵抗体の電気抵抗は、抵抗体が製造される精度、抵抗材料の安定性、及び抵抗体末端の安定性に依存している。長方形状のPTF抵抗体のx及びz方向の寸法(幅及び厚さをそれぞれ示す)についてその大部分がスクリーン印刷工程により決定されるが、分離した2つの末端により決まるy方向の寸法(抵抗体の電気的長さ)については、所望の抵抗を得るように設計されている。一般に、従来のスクリーン印刷法では、形成される抵抗体の像を作り出す開口が設けられた型板を用いる。スクリーニングマスクと称される型板は、抵抗体が形成される基板の表面上においてその表面近傍に配置される。次に、そのマスクにPTF抵抗インクが盛られて、マスク表面を横切るようにスキージブレードを引くことにより、開口を通過したインクが基板の表面上に押し出される。通常は、銅箔又は銅箔及び電解メッキ銅のアディティブメッキ又はサブトラクティブエッチングによるインクの成膜に先立ち、銅又はその他の金属末端が形成される。これらの方法によって、抵抗体の正確な電気的長さ(y)の決定を可能にする高いレベルのエッジ仕上が達成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他の多くの成膜法と比較して、スクリーン印刷は相対的に精度の粗い方法である。その結果、スクリーン印刷されたPTF抵抗体は、通常、約1/10mmよりも大きい寸法に限定される。スクリーン印刷されたPTF抵抗体のy方向の寸法(電気的長さ)は、末端を形成するための適切な方法を用いて正確に決定されるが、PTF抵抗体のx方向及びz方向の寸法(幅及び厚さ)の制御は、相対的に粗いスクリーンのメッシュと成膜後のインク流れとによって基本的に制限される。抵抗体の寸法の制御は、抵抗インクの印刷面のばらつき、これは、約10〜35μmの標準厚さの抵抗体用にパターン形成された金属配線に主に起因するものであって、即ち、印刷面が平面ではないことによって一層複雑になる。平坦でない板表面は、その表面を横切るスキージの均一な動作に影響を及ぼすため、その結果、スクリーン像の印刷が不完全になり、抵抗体インクの成膜が不均一になる。更に、硬化時に、抵抗体の各位置での温度が不均一になるため、固有抵抗のばらつきも生じる。その結果、回路基板の製造において最終的な段階での抵抗値の分布について、許容範囲から逸脱した平均値及び変動係数が生じるようになり、そのため、プロセス設計の段階で抵抗体の寸法に関する経験的な調節が必要となり、広範囲な種々の抵抗値を含む複雑な回路に対してはそうした経験的な調節がとりわけ必要となる。新製品を形成し、スクリーンを新たに製作し、変更点を確認するため追加の試作品を製作する必要があることから、そのような経験的な調節によって抵抗体の印刷工程に要する時間が増大し、コストが増大する。
【0005】
以上から、実平均値を所望の抵抗値に調整する際に経験的な調節が不要で、予測がより一層容易であり、かつ一定の抵抗値を有するPTF抵抗体の製造方法が要求されている。
当業者であれば、図中の要素は簡潔・明瞭を目的として示されたものであり、実寸に比例して図示する必要のないことは明らかである。例えば、図中の要素の一部の寸法は、本発明の実施形態をより一層理解し易いものとするため、他の要素と比較して誇張されているかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は実例により図示されるが、添付の図に限定されない。図中の同じ符号は同じ構成要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高分子厚膜(PTF)抵抗体について詳細に説明する前に、本発明が主にPTF技術に関する方法の工程、及び装置の構成要素の組合せに属することは確認すべきである。従って、装置の構成要素及び方法の工程は図中の形式的な記号によって示し、本明細書の説明により利益を得る当業者にとって明らかになるであろう詳細な開示を不明瞭にしないようにするため、本発明の理解に関する詳細な説明のみを示す。
【0008】
図1は、従来の設計及び製造技術により部分的に形成されたポリマー厚膜抵抗体を備える回路基板の部分平面図である。その形成された回路基板は、約14.2g(1/2オンス)(厚さ約17μm)の銅板製の導体130(プリント配線又はランナーとも称される)を有する回路基板100である。ポリマー厚膜(PTF)抵抗体110は、ランナー130の一部をなす二つの端子パッド115を介してランナー130に接続されている。それとは別のPTF抵抗体120が、ランナー130の一部をなす二つの端子パッド135を介してランナー130に接続されている。この平面図は、理想化された設計図であり、ランナー130及びPTF抵抗体110,120の輪郭が直線で示されていることから、実際に形成される回路基板の一部を反映していない。その輪郭線は、実際には直線にならない。PTF抵抗体110,120は公称幅150を有する。他のプリント回路のレイアウト(図示略)では、端子パッドの幅はランナーよりも広く、端子パッドとランナーとの境界がより明瞭であるが、ランナー130の端子パッド部115,135は、ランナーと同じ大きさの幅を有しており、製造誤差(具体的には、プリント抵抗体の位置ずれの可能性)を許容するために、関連するPTF抵抗体の幅150よりも若干大きい長さ151を有している。基板100の一部は、従来の有機回路基板材料からなる。有機回路基板材料上にPTF抵抗体を形成するための厚膜インクは、導電性材料、抵抗体の最終的な電気的特性に好ましい影響を与える各種添加剤、有機結合剤、及び有機媒体を含む。PTF抵抗体は、従来のスクリーン印刷法を用いて形成され、その方法では、スキージによって、抵抗体110,120の形状を有する抵抗体用マスクの開口にPTF材料が押し込まれ、そして、硬化される。図1に示す例では、抵抗体本体部の幅150は約250μmとなるように設計され、ランナーの幅160は約250μmとなるように設計されている。両端子パッド115の端部間の距離170は約500μmとなるように設計されている。両端子パッド135の端部間の距離175は約1000μmとなるように設計されている。このように、抵抗体110は2スクエアの面積を有する抵抗体であり、抵抗体120は4スクエアの面積を有する抵抗体である。抵抗体110,120のレイアウトは、各端子パッド115,135上において約125μmの重複部分165を有するように設計されている。
【0009】
図2は、従来の設計及び製造技術による図1の回路基板の部分端面図である。これもまた、理想化された設計図である。抵抗体110,120を形成するのに従来技術が用いられるため、抵抗体110,120の上部表面111,121(図1及び図2)は、設計図に示す理想形からは逸脱している。
【0010】
図3は、従来の設計及び製造技術によるPTF抵抗体の1組の試験に対する正規化抵抗と抵抗体長さとの関係を示すグラフである。この場合の抵抗体は、公称幅250μmを有する。従来のPTF材料が、2kΩ/スクエアの特性を得るように混合されている。PTF抵抗体は、厚さ250μmのFR4回路基板上に印刷される。グラフは、約0.25mm〜約4mmの長さを有する1〜12スクエアの抵抗体の結果をプロットしたものである。正規化抵抗は、各設計長さに対する設計抵抗と実際の抵抗との比であり、そのため、理想的な正規化抵抗の値は1となる。理想状態からの偏差は、高品質の電子回路を製造するために許容されない20%を上限としている。その結果、このような寸法を有する従来のPTF抵抗体では、許容される抵抗体公差を得るように回路基板設計が改良され、多くの試験が行われなければならない。
【0011】
理論により拘束されることは望まないが、本発明者らは、抵抗体について実抵抗値の設計抵抗値からの偏差が、PTF抵抗材料の成膜時に生じるスキージ縁部の撓みと、硬化時に生じる抵抗体本体部の不均一な加熱といった製造時の2つの操作から生じる抵抗体本体部の不均一性によって発生するものと考える。材料成膜時のスキージブレードの撓みについては、これが主な問題であると考えられ、不均一な加熱については、中心部(PTF材料からの溶媒蒸発によって冷却される)よりも抵抗体本体部の末端部を速く昇温させる端子パッドの高い熱伝導性が原因であると理論化されている。
【0012】
図4及び図5は、ポリマー厚膜抵抗体を有する部分的に製造された回路基板の部分平面図及び部分端面図である。この回路基板は、本発明の好ましい実施形態により製造される回路基板の例である。PTF抵抗体410,420は、図1及び図2を参照して説明したものと同じ抵抗値を有するように設計されている。その製造された回路基板は、回路基板400の一部に導体430(ランナー又はプリント配線とも称される)を備えている。高分子厚膜(PTF)抵抗体410は、ランナー430の一部をなす二つの端子パッド415を介してランナー430に接続されている。それとは別のPTF抵抗体420が、ランナー430の一部をなす二つの端子パッド435を介してランナー430に接続されている。図1及び図2の場合と同様に、平面図は、理想化された設計図である。PTF抵抗体410,420は、PTF抵抗体110,120(図1及び図2)と同じ公称幅を有する。回路基板400は、従来の有機回路基板、あるいはセラミック、液晶高分子材料、又はフレキシブル回路基板等、PTF抵抗体のスクリーン印刷に好適な他の材料からなる回路基板である。PTF抵抗体410は、その抵抗体本体部413の長軸414とほぼ平行に配置される公差制御材料440を有している。同様に、PTF抵抗体420は、その抵抗体本体部423の長軸424とほぼ平行に配置される公差制御材料425,426を有している。PTF抵抗体本体部413,423は、スクリーン印刷法と適合性を有するPTF材料を含み、従来のPTF材料であってもよい。PTF抵抗体本体部413,423は、スクリーン印刷法又はステンシル印刷法を用いて形成され、この場合、スキージによって、抵抗体410,420の形状を有する抵抗体用マスクの開口を通過してPTF材料が押し込まれ、それに続いて、加熱されて、硬化される。抵抗体410,420の抵抗体本体部の幅は、好ましくは、50〜400μmの範囲である。図4及び図5に示す抵抗体410,420の幅は公称で250μmである。抵抗体本体部の高さ461は5〜25μmの範囲であり、使用されるPTF材料及びスクリーン印刷工具(抵抗体用マスク及びスキージ)により適宜設定される。図4及び図5に示す抵抗体410,420の高さは、公称で12μmである。抵抗体410は、2スクエアの抵抗体となるように設計され、抵抗体420は、4スクエアの抵抗体となるように設計されている。抵抗体410,420のレイアウトは、各端子パッド415、435上で約125μmの重複部分を提供するように設計されているが、他の重複部分を用いることができ、異なる大きさの抵抗本体及び/又はランナーの幅に応じて変更してもよい。本発明の好ましい実施形態において、端子パッド415,435は、約12μmの厚さを有する銀メッキされた銅の層からなり、銅は、FR4回路基板上に設けられる約14.2g(1/2オンス)の銅板から形成され、銀は、0.05〜1.0μmの厚さを有する同時成膜された銀及び高分子材料の層であり、例えば、ニュージャージー州、ジャージー市、クックソン・エレクトロニクス社、及び、コネチカット州、ウォーターベリー市、マクダーミド社よりそれぞれ市販されるアルファレベル及びスターリング浸漬銀仕上剤等が挙げられる。しかしながら、他のプリント配線材料又は材料の組合せを用いてもよく、例えば、酸化インジウム・スズ(ITO)、金、ニッケル、ニッケルメッキ銅、白金メッキ銅、又はそれらを組合わせた多層構造(例えば、金/ニッケル/銅、又はパラジウム/ニッケル/銅)等が挙げられる。ランナーは、同じ金属層から形成されてもよく、あるいは、端子パッド415,435を除いて銅のみから形成されてもよい。
【0013】
公差制御材料440,425、426は、好ましくは、端子パッド415,435と同じ金属材料からなり、好ましくは、実質的に抵抗体410,420の端子パッド415,435を介してランナー430と繋がっている(電気的、それにより熱的に接続されている)。公差制御材料の端子パッド415,435との接続は好ましいが、必要なものではない。好ましいランナー材料は、上述したように、従来のリソグラフィー及びエッチング技術によりプリント回路基板上に銅ランナーをパターン形成したものに銀の浸漬メッキを施すことにより形成されている。それとは別に、他の種類の公差制御材料を用いることもできる。他の材料を用いる場合、好ましくは、ランナーとほぼ同一面を有するように形成され、マスク開口に抵抗体本体部の材料を堆積させるためのスキージの使用に先立ち、固化されていなければならない。高熱伝導性を有する他の材料は、低熱伝導性の材料よりも有利であるかもしれない。公差制御材料440,425,426は、PTF抵抗体410の例のように同PTF抵抗体本体部の片側のみにあってもよく、PTF抵抗体420の例のように両側にあってもよい。1/2スクエア以上の全ての抵抗体については、PTF抵抗体本体部の両側に公差制御材料を設けることが好ましいが、2スクエア以上の抵抗体においては特に重要なものとなる。公差制御材料をPTF抵抗体本体部の両側に設ける場合、抵抗体の本体部は公差制御材料によって部分的に包囲されている。それは、端子パッドは除いて、本体部をほぼ包囲する公差制御材料であって、同本体部と繋がっていないものとしても説明できる。公差制御材料が抵抗体本体部の片側のみに設けられ、スキージの縁部が抵抗体用マスク内の抵抗体本体部のパターン上を通過する際にPTF抵抗体の長軸とスキージの縁部とが平行になる場合、抵抗体上を移動するスキージ縁部の中心から離れた位置が好ましい。公差制御材料にランナー材料を用いれば、プリント回路基板の形成に要する成膜工程の数が、異なる材料を用いる場合と比較して削減されることは明らかである。
【0014】
公差制御材料440,425,426は、抵抗体本体部413,423からの間隔441(又は近接部441)を有しており、その間隔441は、抵抗体本体部及び公差制御材料の実際の形状がいかなる場合でも、回路基板400上の実際に設けられた(形成された)公差制御材料440,425,426の位置に対応する抵抗体本体部413,423の縁部からの最短距離である。約50〜400μmの本体幅を有する抵抗体の場合、前記間隔を125〜250μmの範囲に設定することが好ましい。間隔は、好ましくは0ではない。即ち、公差制御材料は、抵抗体本体部と接続又は接触してはならない。こうした基準は、両者の接触がPTF抵抗体の抵抗値に重大な影響を及ぼす虞があることから、公差制御材料が導電性を有する場合にとりわけ重要なものとなる。0ではない間隔の基準について、言い換えれば、公差制御材料を抵抗体本体部から離間しなければならない。
【0015】
図4には、幅442を有し、ほぼ長方形をなす公差制御材料が示されている。好ましい導電性材料(ランナー及び端子パッドに使用される材料)を用いる場合、公差制御材料の幅は約75μmであることが好ましい。それよりも大きい幅としてもよいが、その場合、抵抗体410,420の設置面積が増大する。他の材料の場合、実験により決定される最小幅よりも大きい幅を必要とする場合がある。公差制御材料の形状は長方形である必要はない。例えば、公差制御材料が導電性であり、更に抵抗端子パッドに接続されている場合、抵抗体本体部から離間する方向に延びる直径200μmの略半円形又は3/4円形の試験用パッドを公差制御材料に一体に設けてもよい。
【0016】
抵抗体110,120の本体部の上面411,421(図4及び図5)は、設計図に示す理想形とは異なるが、その偏差は、従来の方法により製造されるPTF抵抗体の場合よりもかなり小さいと推定される。そうした偏差の少なさは、抵抗体本体部に沿って公差制御材料が存在するため、また、一部には高い熱伝導性を有する公差制御材料を通じて抵抗体本体部がより一層均一に加熱されるため、抵抗体用マスク内の抵抗体パターン上をスキージが移動する際に同スキージ縁部が安定化することによってもたらされると理論上想定される。
【0017】
図6は、本発明の好ましい実施形態による2組のPTF抵抗体の試験について正規化抵抗と抵抗体長さとの関係を示すグラフである。抵抗体は、公称幅250μmを有する。2kΩ/スクエアの特性を得るために、従来のPTF材料が混合されている。公差制御材料は、端子パッド材料と同じである。図4及び図5にその概略(実寸通りでない)が示されるように、75μmの幅を有する2つのフィンガーとしてパターン形成されている。各フィンガーは、対向する各抵抗体の端子パッドから抵抗体本体部と平行に延び、各抵抗体の他方の末端にある端子パッド材料から約100μmの位置で終端となるようにパターン形成されている。フィンガーは、抵抗体本体部から約200μmの幅を有する実間隔を備えている。PTF抵抗体は、厚さ250μmのFR4回路基板上に印刷される。各抵抗体にフィンガーが一つだけ設けられる場合を除き、二つ目のPTF抵抗体も一つ目と同じように構成される。グラフには、約0.25mm〜約4.0mmの長さを有する1〜12スクエアの抵抗体の結果がプロットされている。プロット610は、一つのフィンガーを有する抵抗体の結果を示したものであり、プロット620は、二つのフィンガーを有する抵抗体の結果を示したものである。銅−銀からなる公差制御材料としての一つのフィンガーを有する抵抗体について理想形からの偏差は最大約10%であり、銅−銀からなる公差制御材料としての二つのフィンガーを有する抵抗体についてはその偏差が約2%であることがわかる。これらの特徴を有するPTF抵抗体のための回路基板レイアウトによれば、実際の抵抗値と目標抵抗値との偏差について第1関門で非常に高い許容レベルが達成されるように設計することができるという結果が得られる。それによって、抵抗値と抵抗体長さとの線形性がかなり高くなり、抵抗体間及び基板間の製造誤差がかなり低減される。公差制御材料は、ポリマーをベースとしたポリマー系材料に対する近接部を有しており、その近接部は、プリント回路基板上にポリマー系材料を塗布する際にスキージの撓み変動を低減するよう設計されている。また、その公差制御材料は幅を有すると共にポリマー系材料に対する近接部を有し、その近接部は、ポリマー系材料の硬化時に同樹脂材料の温度の変動を低減するように設計されている。
【0018】
図7は、本発明の好ましい実施形態による本体部を有し、その長軸上に対向する端部を配置する高分子厚膜(PTF)抵抗体の設計セル700の一例を示す。この設計セル700の例は、プリント回路基板上に、金属導体材料からなる公差制御材料を有するプリント回路金属導体パターンを形成するために用いられる。プリント回路金属導体パターン(設計セル700)は、特定の大きさ(例えば、250μm×1000μm;即ち、250μmの幅で4スクエアの面積を有するPTF抵抗体)の本体部723(金属導体と同じ工程で形成されないため図7中に点線で示す)を有するPTF抵抗体の形成に好適である。本体部723は、その長軸724上に配置された対向する末端を有する。設計セル700は、二つの端子パッドパターン735,736及び公差制御材料パターン725,726を有する。二つの端子パッドパターン735,736はパッド間隔743を有しており、パターンからなる端子パッドの少なくとも一部が本体部の対向する各端部の下部に設けられるように形成されている。設計セル700は、公差制御材料パターン725,726に対応する抵抗体本体部723の縁部からの間隔741を有する。特定のプリント抵抗体用マスクパターンを用いて複数のプリント回路を製造する際によく直面する誤差の下では、PTF抵抗体本体部の縁部の実際の位置が、回路基板に関するセル設計位置から変動し得て、公差制御材料の実際の位置が、回路基板に関するセル設計の位置から変動し得る。設計セル700では、公差制御材料パターンの本体部からの間隔(又は公差制御材料パターンの本体部に対する近接部)が、製造誤差を考慮しつつ、製造されるプリント回路基板上に実間隔又は実近接部を提供するように設計されている。図4及び図5を参照して説明したように、公差制御材料は長方形である必要はなく、二つの端子パッドと繋がる必要はない。公差制御材料が抵抗体本体部の近位縁部と平行ではなく、同抵抗体本体部近傍に縁部を有している場合、間隔及び近接部は、公差制御材料の縁部及び抵抗体本体部の縁部間の最短距離として定められる。公差制御材料パターンは、ポリマー系材料の印刷及び硬化時に長軸に沿う方向でポリマー厚膜抵抗体の抵抗値の均一性を高くする範囲内で、公差制御材料の本体部に対する実近接部を与えるといった方法により二つの端子パッドパターンについて設けられている。近接部は、特定の公差制御材料及び抵抗体の寸法を用いる実験により決定することができる。例えば、公差制御材料がプリント回路基板ランナーと同じ導電性金属製からなる実施形態において、本体部の幅が50〜400μmである場合、125〜250μmを有する本体部からの間隔が得られるように、公差制御材料パターンの二つの端子パッドパターンに対する位置が設定される。本発明の一実施形態に係る基準によれば、ポリマー系材料をプリント回路基板上に塗布する際にポリマー系材料の高さのばらつきを低減すべく設計される本体部との近接部を提供するように、それ故にプリント回路基板上の抵抗値に対する抵抗体のばらつきを低減するように、公差制御材料パターンの二つの端子パッドパターンに対する位置が設定されている。また、ある実施形態では、公差制御材料パターンは、ポリマー系材料の硬化時に同樹脂系材料の温度の変動を低減すべく設計される抵抗体本体部との近接部を提供するように、組成物を含み、幅を有し、かつ、二つの端子パッドパターンに対して配置されている。
【0019】
図8は、本明細書に開示される技術を用いるポリマー厚膜抵抗体の製造方法の工程を示すフローチャートである。これらの工程は、必ずしも記載される順序で行う必要はない。工程805では、導電性材料がプリント回路基板上にパターン形成される。その導電性材料からなるパターンは、端子パッドパターンを有し、該端子パッドパターンは、抵抗体本体部の長軸上に位置する同抵抗体本体部の対向する二つの端部の下部にそれぞれ配置される。公差制御材料は、工程810で抵抗体本体部の一部を包囲するパターンで形成される。好ましい実施形態において、公差制御材料は導電性材料からなり、工程805及び工程810を一つに纏めることもできる。工程815では、ポリマー系材料が抵抗体本体部の位置に成膜されて、そのポリマー系材料が工程820で硬化される。
【0020】
工程815において、ポリマー系材料を成膜する工程は、スキージを用いてポリマー系材料をスクリーン印刷する工程からなる。工程810において、公差制御材料を形成する工程は、端子パッドの表面とほぼ同一面となるように公差制御材料を形成する工程からなる。工程815では、工程810においてポリマー系材料に対し形成される公差制御材料の近接部によって、ポリマー系材料の成膜時に同樹脂系材料の高さの変動量が低減される。工程820では、工程810において形成される公差制御材料の熱伝導性と、公差制御材料のポリマー系材料との近接部とを組合せることによって、ポリマー系材料の硬化時に生じる同樹脂系材料の温度変動が低減される。
【0021】
以上の明細書では、本発明及びその効果及び利点について、具体的な実施形態を参照しながら説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲を逸脱せずに、様々な変更及び変形がなされることは、当業者にとって明らかである。従って、本明細書及び図は、限定的な意味ではなく説明的なものと見なすべきであり、そのような変更はいずれも、本発明の技術的範囲に含まれることを意図している。効果、利点、課題を解決する方法、ならびに効果、利点又は解決をもたらしたり、より顕著なものとし得るあらゆる要素は、全ての請求項の必須、必要又は本質的な特徴又は要素であると解釈すべきではない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「含む」、「包含する」という用語又はその他の変形表現は、挙げられた要素を含む工程、方法、物品、又は装置が、その要素のみを含むのではなく、明瞭に表現されていないか、又はそのような工程、方法、物品又は装置に固有のものである他の要素を含むことができるように、非排他的な包含を網羅するものである。
【0023】
本明細書で使用される「一つ」又は「一つの」という用語は、一つ又は一つより多いものと定義される。本明細書で使用される「複数」という用語は、二つ又は二つより多いものと定義される。本明細書で使用される「別の」という用語は、少なくとも第2又はそれ以降のものと定義される。本明細書で使用される「〜を含む」及び/又は「有する」という用語は、包含と定義される。電気光学技術に関して本明細書で使用される「繋がる」という用語は、接続されているものと定義される。ただし、必ずしも直接ではなく、必ずしも物理的にではない。本明細書で使用される「プログラム」という用語は、コンピュータシステム上での実行のために設計された一連の命令と定義される。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、コンピュータシステム上での実行のために設計されたサブルーチン、関数、手順、オブジェクト方法、オブジェクト実行、実行可能アプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共用ライブラリ/ダイナミックロードライブラリ及び/又は他の一連の命令を含むことができる。本明細書で使用される「組」とは、0ではない集合体を意味する(即ち、本明細書で定義の組では、少なくとも一つのものを含む)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の設計及び製造技術により部分的に形成されたポリマー厚膜抵抗体を備える回路基板の部分平面図。
【図2】従来の設計及び製造技術による図1の回路基板の部分端面図。
【図3】従来の設計及び製造技術による1組のPTF抵抗体の試験に対する正規化抵抗と抵抗体長さとの関係を示すグラフ。
【図4】本発明の好ましい実施形態により部分的に製造されたポリマー厚膜抵抗体を有する回路基板の部分平面図及び部分端面図。
【図5】本発明の好ましい実施形態により部分的に製造されたポリマー厚膜抵抗体を有する回路基板の部分平面図及び部分端面図。
【図6】本発明の好ましい実施形態による2組のPTF抵抗体の試験に対する正規化抵抗と抵抗体長さとの関係を示すグラフ。
【図7】本発明の好ましい実施形態による本体部を有しその長軸上に対向する端部を配置した高分子厚膜(PTF)抵抗体の設計セルの例を示す図。
【図8】本明細書に開示される技術を用いてポリマー厚膜抵抗体を製造する方法を示すフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー厚膜抵抗体において、
プリント回路基板上に設けられ、ポリマー系材料からなる抵抗体本体部であって、
同抵抗体本体部の長軸上の対向する端部に設けられた二つの端子パッドと電気的に繋がる抵抗体本体部と、
前記長軸に対してほぼ平行に設けられる公差制御材料と、
からなるポリマー厚膜抵抗体。
【請求項2】
請求項1記載のポリマー厚膜抵抗体において、
前記公差制御材料は、前記二つの端子パッドの表面とほぼ同一面となる表面を有しているポリマー厚膜抵抗体。
【請求項3】
請求項1記載のポリマー厚膜抵抗体において、
前記二つの端子パッドは導電性材料からなり、前記公差制御材料は前記導電性材料からなり、前記公差制御材料は前記二つの端子パッドのうちの少なくとも一つに接続されているポリマー厚膜抵抗体。
【請求項4】
請求項1記載のポリマー厚膜抵抗体において、
前記抵抗体本体部の幅は50〜400μmの範囲であり、前記ポリマー厚膜抵抗体の大きさは2スクエアよりも大きいポリマー厚膜抵抗体。
【請求項5】
請求項1記載のポリマー厚膜抵抗体において、
前記公差制御材料は、前記ポリマー系材料を印刷及び硬化する際にその長軸に沿う同ポリマー厚膜抵抗体の抵抗値の均一性を向上させる前記ポリマー系材料からの間隔を有するポリマー厚膜抵抗体。
【請求項6】
請求項5記載のポリマー厚膜抵抗体において、
前記抵抗体本体部の幅は50〜400μmの範囲であり、前記間隔は125〜250μmの範囲であるポリマー厚膜抵抗体。
【請求項7】
本体部と、その本体部の長軸上の対向する端部とを有する抵抗体のためのポリマー厚膜抵抗体の設計セルであって、
プリント回路基板上にプリント回路パターンを形成するための設計セルにおいて、
パッド間隔を有し、前記本体部の対向する各端部の下部に少なくとも一部が設けられるように形成される二つの端子パッドパターンと、
前記長軸とほぼ平行に設けられ、前記本体部から分離され、前記パッド間隔のほぼ全体に沿って延びる公差制御材料を提供する形状及び配置を有する公差制御材料パターンと、
からなることを特徴とする設計セル。
【請求項8】
ポリマー厚膜抵抗体において、
プリント回路基板上に設けられ、ポリマー系材料からなる抵抗体本体部であって、同抵抗体本体部の対向する端部に設けられる二つの端子パッドと電気的に繋がる抵抗体本体部と、
前記抵抗体本体部を部分的に囲む公差制御材料と、
からなるポリマー厚膜抵抗体。
【請求項9】
ポリマー厚膜抵抗体の製造方法において、
抵抗体本体部の位置において同抵抗体本体部の長軸上の対向する2つの端部の下部にそれぞれ設けられるように、二つの端子パッドを備えるプリント回路基板のパターンで導電性材料を形成する工程と、
前記抵抗体本体部の位置を部分的に包囲するパターンで公差制御材料を形成する工程と、
前記抵抗体本体部の位置にポリマー系材料を成膜する工程と、及び、
前記ポリマー系材料を硬化させる工程と、
からなる方法。
【請求項10】
ポリマー厚膜抵抗体において、
ポリマー系材料からなり、有機プリント回路基板上に設けられる抵抗体本体部であって、同抵抗体本体部の長軸の対向する端部に設けられた金属組成物からなる二つの端子パッドと電気的に繋がる抵抗体本体部と、
前記金属組成物からなる公差制御材料であって、前記二つの端子パッドと同一面を有する公差制御材料とからなり、
前記公差制御材料は、前記二つの端子パッドを除いて前記抵抗体本体部に接続されずに前記抵抗体本体部をほぼ包囲するポリマー厚膜抵抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−526897(P2006−526897A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514341(P2006−514341)
【出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/014665
【国際公開番号】WO2004/109719
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】