説明

ポリマー組成物およびそれを含む電力ケーブル

【課題】改善されたDC電気特性を有する架橋可能なおよび架橋されたポリマー組成物および上記ポリマー組成物を含む少なくとも1の層によって取り囲まれた導体を含むケーブルを提供する。
【解決手段】ポリオレフィンおよび架橋剤を含む架橋可能なおよび架橋されたポリマー組成物であって、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを明細書の「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)にしたがって70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有するところのポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの層のために適するポリマー組成物、電力ケーブルの層における上記ポリマー組成物の使用、上記ポリマー組成物を含む電力ケーブルおよび上記ケーブルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧(HP)法で製造されたポリオレフィンは、ポリマーが高い機械的および/または電気的要求を満たさなければならないところの要求の厳しいポリマー用途において広く使用されている。例えば電力ケーブル用途、特に中電圧(MV)および特に高電圧(HV)および超高電圧(EHV)のケーブル用途では、ポリマー組成物の電気特性が特に重要である。さらに、電気特性のため要件は、交流(AC)および直流(DC)のケーブル用途間の場合のように種々のケーブル用途において異なり得る。
【0003】
典型的な電力ケーブルは、少なくとも、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む。
【0004】
空間電荷
ケーブルにおける電場分布に関してACとDCとの間に基本的な相違がある。ACケーブルにおける電場は、それが1つの物質特性、すなわち公知の温度依存性を伴う比誘電率(誘電率)、のみに依存するので、容易に計算される。電場は誘電率に影響を及ぼさないであろう。他方、DCケーブルにおける電場ははるかに複雑であり、絶縁体内部における電荷、いわゆる空間電荷、の伝導性、トラップ(trapping)および増加(build-up)に依存する。絶縁体内部における空間電荷は、電場をひずませ、非常に高い電気応力の点、おそらくは絶縁破損が起こるであろう高い点をもたらし得る。
【0005】
好ましくは、空間電荷が存在すべきでない。なぜならば、それは、絶縁体における電場の分布が知られるとき、ケーブルを容易に設計することを可能にするであろうからである。
【0006】
通常、空間電荷は、電極の近くに位置される。近くの電極と同じ極性の電荷はホモ電荷と呼ばれ、反対の極性の電荷はヘテロ電荷と呼ばれる。ヘテロ電荷は、この電極での電場を増加させ、ホモ電荷は、電場をむしろ低下させるであろう。
【0007】
電気伝導度
DC電気伝導度は、例えばHV DCケーブル用絶縁物質のための、重要な物質特性である。第一に、この特性の強い温度および電場依存性は、上述したように、空間電荷の増加によって電場分布に影響を及ぼすであろう。第二の問題は、内側半導電層と外側半導電層との間を流れる漏えい電流によって絶縁体内に熱が発生することである。この漏えい電流は、絶縁体の電場および電気伝導度に依存する。絶縁物質の高い伝導性は、高い応力/高い温度条件下で熱暴走をすら招き得る。従って、上記伝導性は、熱暴走を回避するのに十分低く保持されなければならない。
【0008】
圧縮器潤滑剤
HP法は、典型的には4000バールまでの高圧力で運転される。公知のHP反応器システムでは、出発モノマーが、実際の高圧重合反応器に導入される前に、圧縮(加圧)される必要がある。出発モノマーの機械的に厳しい圧縮工程を可能にするためのシリンダ潤滑のために、ハイパー圧縮器において圧縮器潤滑剤が慣用的に使用されている。少量の潤滑剤が通常、密閉部を通って反応器中に漏れ、モノマーと混合することが周知である。その結果、反応混合物は、モノマーの実際の重合工程の間、微量(数百ppmまで)の圧縮器潤滑剤を含む。この微量の圧縮器潤滑剤は、最終ポリマーの電気特性に影響を有し得る。
【0009】
市販の圧縮器潤滑剤の例として、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG):R−「C−O]−H(RはHまたは直鎖のまたは分岐したヒドロカルビルであり得、x、y、x、nは独立して、公知のやり方で変わり得る整数である)、および鉱油(石油の蒸留における副生物)に基づく潤滑剤が挙げられ得る。食品接触において使用されるプラスチックのための欧州指令2002/72/EC、付録 V、におけるホワイトミネラルオイルのために定められた要件を満たす鉱油に基づく圧縮器潤滑剤が、例えば、特に食品および製薬工業のためのポリマーの重合のために使用される。そのような鉱油に基づく潤滑剤は通常、潤滑性添加剤を含み、また、他の種類の添加剤、例えば酸化防止剤、をも含み得る。
【0010】
国際公開第2009/012041号パンフレット(ダウ社)は、反応物、すなわち1以上のモノマー、を加圧するために圧縮器が使用されるところの高圧重合法において、圧縮器潤滑剤が、重合されたポリマーの特性に影響を及ぼし得ることを開示している。この文献は、特にシラン変性されたHPポリオレフィンの早期架橋を回避するために、圧縮器潤滑剤として1のヒドロキシル基を含むまたはヒドロキシル基を含まないポリオールポリエーテルの使用を記載している。国際公開第2009/012092号パンフレット(ダウ社)は、(i)シラン官能基のないHPポリオレフィンおよび(ii)PAG型の疎水性ポリエーテルポリオール、ここで、その分子の少なくとも50%が、1個より多くのヒドロキシル官能基を含まない、を含む組成物を開示している。成分(ii)は、圧縮器潤滑剤に由来しているように見える。上記組成物は、特にW&C用途用であり、MVおよびHV電力ケーブルにおける電気損失を減少させることが述べられている(第2頁0006段落を参照)。どちらの出願も、圧縮器潤滑剤に存在する親水性基(例えばヒドロキシル基)が、ポリマーによる増加された水吸収をもたらし得、それは、ポリマーがケーブルの層材料として使用されるとき、電気損失を増加させ、あるいは早期スコーチを増加させ得ることを述べている。上記問題は、ヒドロキシル官能基の量が低下された特定のPAG型の潤滑剤によって解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/012041号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/012092号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
要求の厳しいポリマー用途、例えば高い要求および厳しい規則を有するワイヤおよびケーブル用途に適するポリマーを見出すことの要求がポリマー分野において引き続きある。
【0013】
本発明の目的の一つは、ケーブルの層、好ましくは交流(AC)または直流(DC)ケーブルの層、より好ましくはDCケーブルの層において使用するために非常に有利な特性を有する代替ポリマー組成物を提供することである。
【0014】
さらに、本発明は、電力ケーブル、好ましくは直流(DC)電力ケーブル、の絶縁層における代替ポリマー組成物の使用を提供する。
【0015】
本発明およびそのさらなる目的は、下記に詳細に記載され、定義される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ポリオレフィンを含む架橋可能なポリマー組成物を提供する。上記ポリマー組成物は、ポリオレフィンおよび架橋剤を含み、かつ架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板(plaque)状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有する。
【0017】
好ましくは、ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物であり、架橋の前に(すなわち架橋される前に)ポリオレフィンおよび架橋剤を含み、かつ架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「架橋可能な」は、ポリマー組成物が、その最終用途において使用される前に架橋剤を使用して架橋され得ることを意味する。架橋可能なポリマー組成物は、ポリオレフィンおよび架橋剤を含む。ポリマー組成物のポリオレフィンが架橋されるのが好ましい。ポリマー組成物の架橋は、少なくとも、本発明のポリマー組成物の架橋剤を用いて行われる。さらに、架橋されたポリマー組成物または架橋されたポリオレフィンは、非常に好ましくは、遊離ラジカル発生剤を用いるラジカル反応によって架橋される。架橋されたポリマー組成物は、当該分野において周知であるように、典型的な網状組織、特にポリマー間架橋を有する。当業者に明らかであるように、架橋されたポリマーは、文脈において述べられまたは文脈から明らかなように、架橋の前または後のポリマー組成物またはポリオレフィン中に存在する特徴によって定義され得、そして、本明細書では上記特徴によって定義される。例えば、ポリマー組成物中の架橋剤の存在またはポリオレフィン成分の種類および組成特性、例えばMFR、密度および/または不飽和度、は特に断らない限り架橋の前の定義であり、架橋後の特徴は、例えば架橋されたポリマー組成物を用いて測定された電気伝導度または架橋度である。
【0019】
好ましい架橋剤は、遊離ラジカル発生剤、より好ましくはパーオキシドである。
【0020】
従って、本発明の好ましい架橋されたポリマー組成物は、上記または下記で定義されるパーオキシドによる架橋によって得られ得る。表現「架橋によって得られ得る」、「によって架橋された」および「架橋されたポリマー組成物」は、本明細書において交換可能に使用され、架橋工程が、下記で説明されるように、ポリマー組成物にさらなる技術的特徴を付与することを意味する。
【0021】
本発明のポリマー組成物が、好ましい架橋されたポリマー組成物の態様に関して下記に記載される。この態様はまた、本明細書において「本ポリマー組成物」として交換可能に言及される。
【0022】
本発明のポリマー組成物によって与えられる予期せぬ低い電気伝導度は、電力ケーブル、好ましくは直流(DC)電力ケーブルのために非常に有利である。本発明は、特にDC電力ケーブルのために有利である。
【0023】
本ポリマー組成物は好ましくは、高圧(HP)法において製造される。周知であるように、高圧反応器システムは典型的には、a)ハイパー圧縮器としても知られている1以上の圧縮器において1以上の出発モノマーを圧縮するための圧縮ゾーン、b)1以上の重合反応器においてモノマーを重合するための重合ゾーン、およびc)1以上の分離器において未反応物を分離し、分離されたポリマーを回収するための回収ゾーンを含む。さらに、HP反応器システムの回収ゾーンは典型的には、分離器の次に、分離されたポリマーをペレットの形状で回収するための混合・ペレット化セクション、例えばペレット押出機、を含む。上記方法を以下により詳細に記載する。
【0024】
今驚いたことに、出発モノマーを圧縮するためのHP反応器システムでは、鉱油を含む圧縮器潤滑剤が圧縮器においてシリンダ潤滑のために使用されるとき、得られるポリオレフィンが、非常に有利な電気特性、例えば、ケーブルの優れた電気特性に寄与する低下された電気伝導度、を有することが分かった。これは予期しなかったことである。なぜならば、鉱油は、W&C用途のために要求される低下された伝導性ではなく、健康面が関与するところの薬品および食品工業のためのポリマーの製造に慣用的に使用されているからである。
【0025】
圧縮器潤滑剤は、本明細書では、圧縮器、すなわちハイパー圧縮器、においてシリンダ潤滑のために使用される潤滑剤を意味する。
【0026】
本明細書において交換可能に使用される「低下された」または「低い」電気伝導度は、DC伝導度法によって得られる値が低い、すなわち低下されている、ことを意味する。
【0027】
好ましくは、ポリマー組成物がポリオレフィンおよび架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含み、ポリオレフィンが、下記:
(a)1以上のモノマーを圧縮器中で加圧下に、潤滑のための圧縮器潤滑剤を使用して圧縮すること、
(b)モノマーを、任意的に1以上のコモノマーと共に、重合ゾーンで重合すること、
(c)得られたポリオレフィンを未反応物から分離し、分離されたポリオレフィンを回収ゾーンで回収すること、
を含む高圧法によって得られ得る。ここで、工程(a)において、圧縮器潤滑剤が鉱油を含む。
【0028】
得られるポリマー組成物は、上述した有利な低下された電気伝導度を有する。
【0029】
表現「上記方法によって得られ得る」または「上記方法によって製造される」は、本明細書において交換可能に使用され、「プロダクトバイプロセス」のカテゴリー、すなわち生成物が、製造法故の技術的特徴を有すること、を意味する。
【0030】
より好ましくは、本ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有する。ここで、本ポリマー組成物のポリオレフィンは、下記:
(a)1以上のモノマーを圧縮器中で加圧下に、潤滑のための圧縮器潤滑剤を使用して圧縮すること、
(b)モノマーを、任意的に1以上のコモノマーと共に、重合ゾーンで重合すること、
(c)得られたポリオレフィンを未反応物から分離し、分離されたポリオレフィンを回収ゾーンで回収すること、
を含む高圧法によって得られ得る。ここで、工程(a)において、圧縮器潤滑剤が鉱油を含む。
【0031】
本ポリマー組成物の低い電気伝導度は、特にACおよびDC電力ケーブルにおいて、好ましくは直流(DC)電力ケーブルにおいて、より好ましくは低電圧(LV)、中電圧(MV)、高電圧(HV)または超高電圧(EHV)のDCケーブルにおいて、より好ましくは任意の電圧、好ましくは36kVより高い電圧、で運転するDC電力ケーブル、例えばHVまたはEHV DC電力ケーブルにおいて、非常に有利である。
【0032】
本発明はさらに、1以上の層によって取り囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブル、に向けられる。ここで、上記層の少なくとも1が、架橋剤、好ましくはパーオキシド、によって架橋されたポリオレフィンを含む本発明の架橋されたポリマー組成物を含む。より好ましくは、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブル、より好ましくは架橋されたHVまたはEHV DC電力ケーブルに向けられる。ここで、少なくとも1の層、好ましくは絶縁層が、パーオキシドによって架橋されたポリオレフィンを含む本発明の架橋されたポリマー組成物を含む。架橋されたケーブルにおける「架橋剤/パーオキシドによって架橋されたポリオレフィン」の表現は、架橋前のポリマー組成物がポリオレフィンおよび架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含むことを意味する。
【0033】
ケーブルが任意的に、W&C分野において慣用的に使用されるところの、1以上のスクリーン、ジャケット層または他の保護層を含む1以上の他の層を含み得ることは当業者に明らかでる。
【0034】
架橋の前または後の本ポリマー組成物の下記の好ましいサブグループ、特性および態様は、そのようなものとしてポリマー組成物に、および上記または下記で定義される架橋可能なケーブルおよび架橋されたケーブルに、等しくかつ独立して当てはまる。
【0035】
好ましい態様では、本ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、140fS/m以下の、好ましくは130fS/m以下の、好ましくは120fS/m以下の、好ましくは100fS/m以下の、好ましくは0.01〜90fS/mの、より好ましくは0.05〜90fS/mの、より好ましくは0.1〜80fS/mの、より好ましくは0.5〜75fS/mの電気伝導度を有する。この態様では、ポリマー組成物がまた、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされた1mm厚さの板状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、140fS/m以下の、好ましくは130fS/m以下の、好ましくは60fS/m以下の、好ましくは0.01〜50fS/mの、より好ましくは0.05〜40fS/mの、より好ましくは0.1〜30fS/mの電気伝導度を有する。
【0036】
本ポリマー組成物の電気伝導度は、驚いたことに、架橋後の揮発性副生物を除去しなくても、すなわち脱ガスしなくても、低い。従って、望まれるならば、ケーブル製造中の脱ガス工程が短縮され得る。
【0037】
さらに好ましくは、本ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされた0.5mm厚さの板状サンプルを「測定法」に記載されたDC伝導度法(2)に従って20℃および40kV/mmの平均電場で測定したとき、0.27fS/m以下の、好ましくは0.25fS/m以下の、より好ましくは0.001〜0.23fS/mの電気伝導度を有する。
【0038】
架橋剤は、好ましくは、架橋されるべき組成物の総重量に対して10重量%未満の量で、より好ましくは0.2〜8重量%の量で、さらにより好ましくは0.2〜3重量%の量で使用される。
【0039】
より好ましくは、架橋剤が好ましくはパーオキシドであり、架橋前に本ポリマー組成物が好ましくはパーオキシドを少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で含む。
【0040】
単位「ミリモル−O−O−/ポリマー組成物kg」は、本明細書において、架橋前のポリマー組成物を測定したときのポリマー組成物1kg当たりのパーオキシド官能基の含量(ミリモル)を意味する。例えば、35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgは、ポリマー組成物の総重量(100重量%)に基づいて周知のジクミルパーオキシド0.95重量%に相当する。
【0041】
さらにより好ましくは、架橋前の本ポリマー組成物が、36ミリモル以上の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜75ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量でパーオキシドを含む。
【0042】
例えば、37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの濃度範囲は、電力ケーブルの架橋のために慣用的に使用されるジクミルパーオキシド1.0〜2.4重量%(ポリマー組成物に基づく)に相当する。パーオキシド含量は、所望の架橋レベルに依存する。さらに、ポリオレフィンは不飽和であり得、ここで、パーオキシド含量は上記不飽和度に依存し得る。
【0043】
1の好ましい態様では、ポリマー組成物が、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgのパーオキシドを使用して架橋され、そして、デカリン抽出を使用してASTM D 2765−01、方法Bに従って測定されるとき、少なくとも30重量%のゲル含量を有する。好ましくは、36〜50ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgのパーオキシドで、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも65重量%のゲル含量を有する。
【0044】
従って、上記の電気特性および架橋度特性は、ポリマー組成物中に存在する架橋剤を使用して架橋した後のポリマー組成物を用いて測定される。架橋剤の量は変わり得る。好ましくは、これらの試験法では、パーオキシドが使用され、パーオキシドの量が、上記にまたは特許請求の範囲において定義されるように、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgである。架橋されたポリマー組成物のそれぞれのサンプルの作製は、下記の「測定法」に記載されている。
【0045】
パーオキシドは、好ましい架橋剤である。非制限的例は、有機パーオキシド、例えばジ−t−アミルパーオキシド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、ジクミルパーオキシド、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキシド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、またはそれらの任意の混合物である。好ましくは、パーオキシドが、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、またはそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、パーオキシドがジクミルパーオキシドである。
【0046】
架橋剤に加えて、有利な電気特性を有する本ポリマー組成物は、更なる成分、例えばさらなるポリマー成分および/または1以上の添加剤、を含み得る。任意的な添加剤として、本ポリマー組成物が、酸化防止剤、安定剤、水トリー遅延剤、加工助剤、スコーチ遅延剤、金属不活性化剤、架橋ブースター、難燃剤、酸またはイオンスカベンジャー、無機フィラー、電圧安定剤、またはそれらの任意の混合物を含み得る。
【0047】
より好ましくは態様では、本ポリマー組成物が1以上の酸化防止剤および任意的に1以上のスコーチ遅延剤(SR)を含む。
【0048】
酸化防止剤の非制限的例として、例えば、立体障害を有するまたは半立体障害を有するフェノール類、芳香族アミン、脂肪族系の立体障害を有するアミン、有機ホスファイトまたはホスホナイト、チオ化合物、およびそれらの混合物が挙げられ得る。チオ化合物の非制限的例は、例えば、
1.硫黄含有フェノール系酸化防止剤、好ましくはチオビスフェノールから選択され、最も好ましくは、4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)(CAS番号:96−69−5)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、または4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(CAS:110553−27−0)またはそれらの誘導体、またはそれらの任意の混合物、
2.他のチオ化合物、例えばジ−ステアリル−チオ−ジプロピオネートまたは炭素鎖上に種々の長さを有する同様の化合物、またはそれらの混合物、または
3.1)および2)の任意の混合物
である。上記1)の群が好ましい酸化防止剤である。
【0049】
この好ましい態様では、酸化防止剤の量が、好ましくは、本ポリマー組成物の重量に基づいて、0.005〜2.5重量%である。酸化防止剤は好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて、0.005〜2.0重量%、より好ましくは0.01〜1.5重量%、より好ましくは0.03〜0.8重量%、さらにより好ましくは0.04〜0.8重量%の量で添加される。
【0050】
さらに好ましい態様では、本ポリマー組成物が少なくとも1以上の酸化防止剤および1以上のスコーチ遅延剤を含む。
【0051】
スコーチ遅延剤(SR)は、当該分野において周知の添加剤であり、特に早期の架橋を防ぐことができる。また、知られているように、SRは、ポリマー組成物の不飽和レベルに寄与し得る。スコーチ遅延剤の例として、アリル化合物、例えば芳香族α−メチルアルケニルモノマーの二量体、好ましくは2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、置換されたまたは非置換のジフェニルエチレン、キノン誘導体、ヒドロキノン誘導体、単官能性ビニル含有エステルおよびエーテル、少なくとも2以上の二重結合を有する単環式炭化水素、またはそれらの混合物が挙げられ得る。好ましくは、スコーチ遅延剤の量が、本ポリマー組成物の重量に基づいて、0.005〜2.0重量%、より好ましくは0.005〜1.5重量%の範囲内である。さらに好ましい範囲は、例えば、本ポリマー組成物の重量に基づいて、0.01〜0.8重量%、0.03〜0.75重量%、0.03〜0.70重量%、または0.04〜0.60重量%である。本ポリマー組成物の好ましいSRは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(CAS番号6362−80−7)である。
【0052】
本発明はまた、本発明のポリマー組成物を使用して、上記または下記で定義される、架橋可能なおよび架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋可能なおよび架橋された直流(DC)電力ケーブル、を製造する方法に向けられる。
【0053】
本ポリマー組成物またはその成分のための上記および下記に示される、上記特性、更なる特性、変数および態様のさらに好ましいサブグループは、本発明の電気伝導度を低下させる方法、電力ケーブル、好ましくはDC電力ケーブルに同様に当てはまる。
【0054】
ポリオレフィン成分
本ポリマー組成物のために適するポリオレフィン成分の下記の好ましい態様、特性およびサブグループは、それらが本ポリマー組成物の好ましい態様をさらに定義するために任意の順序または組合せで使用され得るように一般化可能である。さらに、上記記載が、架橋される前のポリオレフィンに当てはまることは明らかである。
【0055】
用語「ポリオレフィン」は、オレフィンホモポリマーおよびオレフィンと1以上のコモノマーとのコポリマーの両方を意味する。周知であるように、「コモノマー」は、共重合可能なコモノマー単位を意味する。
【0056】
ポリオレフィンは、任意のポリオレフィン、例えば、電気ケーブル、好ましくは電力ケーブル、の層、好ましくは絶縁層、におけるポリマーとして適する慣用のポリオレフィンであり得る。
【0057】
ポリオレフィンは、例えば、市販のポリマーであり得、または化学文献に記載された公知の重合法に従って、またはそれに類似して製造され得る。より好ましくは、ポリオレフィンが、高圧法で製造されたポリエチレンであり、より好ましくは、高圧法で製造された低密度ポリエチレンLDPEである。LDPEポリマーの意味は周知であり、文献に記載されている。用語「LDPE」は、低密度ポリエチレンの略号であるが、この用語は、密度範囲を限定するものではなく、低密度、中密度および高密度を有するLDPE様のHPポリエチレンをカバーする。用語「LDPE」は、オレフィン重合触媒の存在下で製造されたPEと比較して、典型的な特徴、例えば種々の分岐構造、を有するHPポリエチレンの性質のみを記載し、区別する。
【0058】
上記ポリオレフィンとしてのLDPEは、エチレンの低密度ホモポリマー(LDPEホモポリマーと言う)またはエチレンと1以上のコモノマーとの低密度コポリマー(LDPEコポリマーと言う)を意味する。LDPEコポリマーの1以上のコモノマーは、好ましくは、上記または下記で定義される、極性コモノマー、非極性コモノマーまたは極性コモノマーと非極性コモノマーの混合物から選択される。さらに、上記ポリオレフィンとしての上記LDPEホモポリマーまたはLDPEコポリマーは、任意的に不飽和であり得る。
【0059】
上記ポリオレフィンとしてのLDPEコポリマーのための極性コモノマーとして、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基またはこれらの混合物を有するコモノマーが使用され得る。より好ましくは、カルボキシルおよび/またはエステル基を有するコモノマーが、上記極性コモノマーとして使用される。さらにより好ましくは、LDPEコポリマーの極性コモノマーが、アクリレート、メタクリレートまたはアセテートまたはそれらの任意の混合物の群から選択される。上記LDPEコポリマーに存在するならば、極性コモノマーは好ましくは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートまたはビニルアセテート、またはそれらの混合物の群から選択される。さらに好ましくは、上記極性コモノマーが、C〜Cアルキルアクリレート、C〜Cアルキルメタクリレートまたはビニルアセテートから選択される。さらにより好ましくは、上記極性LDPEコポリマーが、エチレンとC〜Cアルキルアクリレート、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルアクリレート、またはビニルアセテート、またはそれらの任意の混合物とのコポリマーである。
【0060】
上記ポリオレフィンとしてのLDPEコポリマーのための非極性コモノマーとして、上述した極性コモノマー以外のコモノマーが使用され得る。好ましくは、非極性コモノマーが、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有するコモノマー以外である。好ましい非極性コモノマーの1群は、モノ不飽和(=1つの二重結合)コモノマー、好ましくはオレフィン、好ましくはα−オレフィン、より好ましくはC〜C10α−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、1−オクテン、1−ノネン;ポリ不飽和(=1より多い二重結合)コモノマー;シラン基含有コモノマー;またはそれらの任意の混合物を含み、好ましくはそれらから成る。上記ポリ不飽和コモノマーは、不飽和LDPEコポリマーに関して以下にさらに記載される。
【0061】
LDPEポリマーがコポリマーであるならば、好ましくは、0.001〜50重量%、より好ましくは0.05〜40重量%、さらにより好ましくは35重量%未満、さらにより好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満の1以上のコモノマーを含む。
【0062】
本ポリマー組成物、好ましくはそのポリオレフィン成分、より好ましくはLDPEポリマーが、任意的に不飽和であり得る。すなわち、ポリマー組成物、好ましくはポリオレフィン、好ましくはLDPEポリマーが、炭素−炭素二重結合を含み得る。「不飽和」は、本明細書において、ポリマー組成物、好ましくはポリオレフィンが、炭素−炭素二重結合を少なくとも0.4個/炭素原子1000個の総量で含有する。
【0063】
周知であるように、不飽和は、特にポリオレフィン、低分子量(Mw)化合物、例えば架橋ブースターまたはスコーチ遅延剤、またはそれらの任意の組合せによって、本ポリマー組成物に付与され得る。二重結合の総量は、本明細書では、不飽和に寄与することが知られ、そのために故意に添加される源から決定される二重結合を意味する。不飽和を与えるために使用されるべき2以上の上記二重結合源が選択されるならば、本ポリマー組成物中の二重結合の総量は、それらの二重結合源に存在する二重結合の和を意味する。定量的赤外線(FTIR)決定を可能にするために、各選択された源のために、較正のための特徴的なモデル化合物が使用されることは明らかである。
【0064】
任意の二重結合の測定が、架橋の前に行われる。
【0065】
本ポリマー組成物が、架橋の前に不飽和であるならば、不飽和が、少なくとも不飽和ポリオレフィン成分由来であるのが好ましい。より好ましくは、不飽和ポリオレフィンが不飽和ポリエチレンであり、より好ましくは不飽和LDPEポリマー、さらにより好ましくは不飽和LDPEホモポリマーまたは不飽和LDPEコポリマーである。ポリ不飽和コモノマーが、上記不飽和ポリオレフィンとしてのLDPEポリマーに存在するとき、LDPEポリマーは、不飽和LDPEコポリマーである。
【0066】
好ましい態様では、用語「炭素−炭素二重結合の総量」は、不飽和ポリオレフィンから定義され、特に断らない限り、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基由来の二重結合の合計量を意味する。当然、ポリオレフィンは必ずしも上記3種類の二重結合を全て含むわけではない。しかし、上記3種類のいずれかが、存在するとき、「炭素−炭素二重結合の総量」の計算に入れられる。各種類の二重結合の量は、「測定法」に示されるように測定される。
【0067】
LDPEホモポリマーが不飽和であるならば、不飽和は、例えば、連鎖移動剤(CTA)、例えばプロピレン、によっておよび/または重合条件によって付与され得る。LDPEコポリマーが不飽和であるならば、不飽和は、下記手段:連鎖移動剤(CTA)、1以上のポリ不飽和コモノマー、または重合条件、の1以上によって付与され得る。選択された重合条件、例えばピーク温度および圧力、が不飽和度に影響を及ぼし得ることは周知である。不飽和LDPEコポリマーの場合には、好ましくは、エチレンと少なくとも1のポリ不飽和コモノマーおよび任意的に他のコモノマー、例えばアクリレートまたはアセテートコモノマーから好ましくは選択される極性コモノマー、との不飽和LDPEコポリマーである。より好ましくは、不飽和LDPEコポリマーが、エチレンと少なくともポリ不飽和コモノマーのとの不飽和LDPEコポリマーである。
【0068】
不飽和ポリオレフィンに適するポリ不飽和コモノマーは好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を有しかつ非共役二重結合間に少なくとも4個の炭素原子を有する炭素直鎖からなり、非共役二重結合のうち少なくとも1は末端にある。より好ましくは、上記ポリ不飽和コモノマーがジエンであり、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含み、第一の炭素−炭素二重結合が末端にあり、第二の炭素−炭素二重結合が第一のものに対して非共役の関係にあるジエンである。好ましいジエンは、C〜C14非共役ジエンまたはそれらの混合物から選択され、より好ましくは、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、ジエンが、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、またはそれらの任意の混合物から選択されるが、上記ジエンに限定されない。
【0069】
例えばプロピレンがコモノマーとしてまたは連鎖移動剤(CTA)としてまたは両方として使用され得、それによって、それがC−C二重結合の総量に、好ましくはビニル基の総量に寄与し得ることは周知である。本明細書では、コモノマーとしても使用され得る化合物、例えばプロピレン、が二重結合を付与するためのCTAとして使用されるとき、上記共重合可能なコモノマーは、コモノマー含量の計算に入れない。
【0070】
ポリオレフィン、より好ましくはLDPEポリマーが不飽和であるならば、それは、好ましくは、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基に由来する、炭素−炭素二重結合を、0.5超/炭素原子1000個の総量で有する。ポリオレフィンに存在する炭素−炭素二重結合の量の上限は限定されないが、好ましくは、5.0未満/炭素原子1000個、好ましくは3.0未満/炭素原子1000個であり得る。
【0071】
いくつかの態様、例えば最終の架橋された絶縁層のより高い架橋度が望ましいところの態様では、不飽和LDPE中の、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基に由来する、炭素−炭素二重結合の総量が、好ましくは0.50超/炭素原子1000個、好ましくは0.60超/炭素原子1000個である。
【0072】
所望ならば、架橋剤、好ましくはパーオキシド、の存在と組み合わせられるより高い二重結合含量が、本ポリマー組成物に、電気的特性と機械的特性との間の有利なバランスを、好ましくは良好な熱および変形耐性と組み合わせて、付与する。
【0073】
従って、ポリオレフィンは好ましくは不飽和であり、少なくともビニル基を含有し、ビニル基の総量が、好ましくは0.05超/炭素原子1000個、さらにより好ましくは0.08超/炭素原子1000個、最も好ましくは0.11超/炭素原子1000個である。好ましくは、ビニル基の総量が、4.0未満/炭素原子1000個である。より好ましくは、架橋前のポリオレフィンが、0.20超/炭素原子1000個、さらにより好ましくは0.30超/炭素原子1000個、最も好ましくは0.40超/炭素原子1000個の総量でビニル基を含有する。いくつかの要求の厳しい態様、好ましくは電力ケーブル、より好ましくはDC電力ケーブルでは、少なくとも1の層、好ましくは絶縁層が、0.50超/炭素原子1000個の総量でビニル基を含有するLDPEポリマー、好ましくはLDPEコポリマーを含む。
【0074】
本ポリマー組成物での使用のために好ましいポリオレフィンは、飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの飽和LDPEコポリマーであり、あるいは不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーから選択され、さらにより好ましくは、不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマー、好ましくは少なくとも1のポリ不飽和コモノマー、好ましくは上述したジエン、および任意的に他のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーから選択される不飽和LDPEポリマーであり、存在するならば、上述した、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基に由来する炭素−炭素二重結合の総量を有し、好ましくは、上述したビニル基の総量を有する。上記不飽和LDPEポリマーは、本発明の電力ケーブル、好ましくはDC電力ケーブル、の絶縁層のために非常に使用され得る。
【0075】
W&C用途において典型的には、および好ましくは、ポリオレフィン、好ましくはLDPEポリマーの密度が、860kg/mより高い。好ましくは、ポリオレフィン、好ましくはLDPEポリマー、エチレンホモまたはコポリマー、の密度が960kg/m以下であり、好ましくは、900〜945kg/mである。ポリオレフィン、好ましくはLDPEポリマーのMFR(2.16kg、190℃)は、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜20g/10分、最も好ましくは0.2〜10g/10分である。
【0076】
圧縮器潤滑剤
本ポリマー組成物の好ましいポリオレフィンを製造するための重合法において使用される圧縮器潤滑剤は、公知の石油製品である鉱油を含む。鉱油は、周知の意味を有し、特に、市販の潤滑剤における潤滑のために使用される。「鉱油を含む圧縮器潤滑剤」および「鉱油に基づく圧縮器潤滑剤」は、本明細書において、交換可能に使用される。
【0077】
鉱油は、合成的に製造される合成鉱油または原油精製プロセスから得られ得る鉱油であり得る。典型的には、液体石油としても知られる鉱油は、原油からガソリンおよび他の石油に基づく製品を製造するための石油の蒸留における副生物である。本発明の圧縮器潤滑剤の鉱油は、好ましくは、パラフィン油である。そのようなパラフィン油は、石油に基づく炭化水素供給原料から誘導される。
【0078】
鉱油は好ましくは、圧縮器潤滑剤の基油である。圧縮器潤滑剤は、周知であるように、他の成分、例えば潤滑添加剤、粘度ビルダー、酸化防止剤、他の添加剤、またはそれらの任意の混合物を含み得る。
【0079】
より好ましくは、圧縮器潤滑剤は、食品または薬品工業のためのプラスチック、例えばLDPE、を製造するための圧縮器潤滑剤として慣用的に使用される鉱油を含む。より好ましくは、圧縮器潤滑剤は、ホワイトオイルである鉱油を含む。さらにより好ましくは、圧縮器潤滑剤が、鉱油としてホワイトオイルを含み、食品または薬品工業のためのポリマーの製造に適する。ホワイトオイルは周知の意味を有する。さらに、そのようなホワイトオイルに基づく圧縮器潤滑剤は周知であり、市販されている。さらにより好ましくは、ホワイトオイルが、食品または薬品ホワイトオイルのための要件を満たす。
【0080】
知られているように、好ましい圧縮器潤滑剤の鉱油、好ましくはホワイトミネラルオイルが、パラフィン系炭化水素を含む。さらにより好ましくは、圧縮器潤滑剤が下記態様の1以上を満たす。
1の好ましい態様では、圧縮器潤滑剤の鉱油、好ましくはホワイトミネラルオイルが、少なくとも8.5×10−6/sの粘度(100℃)を有する。
第2の好ましい態様では、圧縮器潤滑剤の鉱油、好ましくはホワイトミネラルオイルが、5重量%以下の、25未満の炭素原子を有する炭化水素を含有する。
第3の好ましい態様では、圧縮器潤滑剤の鉱油、好ましくはホワイトミネラルオイルの炭化水素が、480以上の平均分子量(Mw)を有する。
【0081】
上記「炭化水素の量」、「粘度」および「Mw」は好ましくは、2002年8月6日の欧州指令2002/72/ECに従う。
【0082】
圧縮器潤滑剤は好ましくは、上記3つの態様1〜3の各々に従う。
【0083】
本発明の最も好ましい圧縮器潤滑剤は、食品接触において使用されるプラスチックのための2002年8月6日の欧州指令2002/72/EC、付録V(Annex V)、におけるホワイトミネラルオイルのための要件を満たす。上記指令は、例えば、2002年8月15日の欧共同体のL220/18EN官報に発表されている。従って、鉱油は、最も好ましくは、上記2002年8月6日の欧州指令2002/72/EC、付録 V、に従うホワイトミネラルオイルである。さらに、圧縮器潤滑剤が、上記2002年8月6日の欧州指令2002/72/ECに従うことが好ましい。
【0084】
本発明の圧縮器潤滑剤は、市販の圧縮器潤滑剤であり得、または慣用の手段によって製造され得る。好ましくは、薬品または食品用途のためのプラスチックを製造するための高圧重合法で使用される市販の潤滑剤である。好ましい市販の圧縮器潤滑剤の包括的でない例は、例えば、ExxonMobilによって特に供給される、食品接触において使用されるポリエチレンの製造のためのExxcolub Rシリーズの圧縮器潤滑剤、Shellによって供給される、薬品用途のためのポリエチレンを製造するためのShell Corena、またはSonnebornによって供給されるCL-1000-SONO-EUである。
【0085】
圧縮器潤滑剤は、好ましくは、ポリアルキレングリコールに基づく成分を含有しない。
【0086】
本発明の本ポリマー組成物に存在する任意の鉱油が、ポリオレフィンの重合プロセス中の装置において使用される圧縮器潤滑剤に由来するのが好ましい。したがって、本ポリマー組成物に、または重合後のポリオレフィンに、鉱油が添加されないのが好ましい。
【0087】
製造されたポリオレフィン中の圧縮器潤滑剤由来の、およびあるならば上記ポリオレフィン中に存在する微量の鉱油は、典型的には、最大で、ポリオレフィンの量に基づいて0.4重量%までの量であろう。上記限界は、失われた圧縮器潤滑剤(平均の漏出量)の全てが最終のポリオレフィンに入るところの最悪のシナリオの計算に基づく絶対的最大値である。そのような最悪のシナリオは起こりそうになく、通常は、得られるポリオレフィンは、明らかにより低い量の鉱油を含む。
【0088】
本発明の圧縮工程(a)における圧縮器の潤滑のための本発明の圧縮器潤滑剤は、慣用のやり方で使用され、当業者に周知である。
【0089】
方法
高圧(HP)法は、本ポリマー組成物のポリオレフィン、好ましくはLDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとのLDPEコポリマーから選択される低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマー、を製造するために好ましい方法である。
【0090】
本発明はさらに、下記工程:
(a)1以上のモノマーを圧縮器において加圧下で圧縮すること、ここで、圧縮器潤滑剤が潤滑のために使用される、
(b)モノマーを、任意的に1以上のコモノマーとともに、重合ゾーンで重合すること、
(c)得られたポリオレフィンを未反応物から分離し、分離されたポリオレフィンを回収ゾーンで回収すること、
を含む高圧法でポリオレフィンを重合するための方法を提供する。ここで、工程(a)において、圧縮器潤滑剤は、その好ましい態様を包含する鉱油を含む。
【0091】
したがって、本発明のポリオレフィンは、好ましくは、遊離ラジカル開始重合によって高圧で製造される(高圧ラジカル重合と言う)。好ましいポリオレフィンは、上述したように、LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとのLDPEコポリマーである。本発明の方法によって得られ得るLDPEポリマーは、好ましくは、上記または下記に述べるように、有利な電気特性を与える。高圧(HP)重合および、所望の最終用途に応じてポリオレフィンの他の特性をさらに適応させるためのプロセス条件の調整は周知であり、文献に記載されており、当業者によって容易に使用され得る。
【0092】
本発明の方法の圧縮工程a)
モノマー、好ましくはエチレン、および1以上の任意的なコモノマーが、圧縮器ゾーンで1以上の圧縮器に供給されて、所望の重合圧力になるまでモノマーを圧縮し、制御された温度での高い量のモノマーの取り扱いを可能にする。上記方法の典型的な圧縮器、すなわちハイパー圧縮器は、ピストン圧縮器またはダイヤフラム圧縮器であり得る。圧縮器ゾーンは通常、1以上の圧縮器、すなわちハイパー圧縮器を含む。それは、直列でまたは並列で作用し得る。本発明の圧縮器潤滑剤は、圧縮器ゾーンに存在する少なくとも1の、好ましくは全てのハイパー圧縮器におけるシリンダ潤滑のために使用される。圧縮工程a)は、通常、2〜7の圧縮工程を含み、しばしば中間の冷却ゾーンを有する。温度は典型的には低く、通常、200℃未満、好ましくは100℃未満である。任意の再循環されたモノマー、好ましくはエチレン、および任意的なコモノマーが、圧力に応じて適する時点で添加され得る。
【0093】
本発明の方法の重合工程b)
好ましい高圧重合は、1以上の重合反応器、好ましくは少なくとも管状反応器またはオートクレーブ反応器、好ましくは管状反応器、を含む重合ゾーンで行われる。重合反応器、好ましくは管状反応器は、1以上の反応器ゾーンを含み得、ここで、種々の重合条件が生じ得、および/またはHP分野で周知であるように調整され得る。1以上の反応器ゾーンは、モノマー及び任意的なコモノマーを供給するための手段および開始剤および/またはさらなる成分、例えばCTA、を添加するための手段が、公知のやり方で備えられる。さらに、重合ゾーンは、重合反応器に先立つまたはそれと統合された予熱セクションを含み得る。1の好ましいHP法では、モノマー、好ましくはエチレン、が任意的に1以上のコモノマーとともに、好ましい管状反応器中で、好ましくは連鎖移動剤の存在下で、重合される。
【0094】
管状反応器
反応混合物は、管状反応器に供給される。管状反応器は、単一供給系(フロントフィードとしても知られる)として運転され得、ここで圧縮器ゾーンからの全モノマー流が反応器の第一反応ゾーンの入口に供給される。あるいは、管状反応器は多供給系であり得、ここで例えば圧縮ゾーンからのモノマー、任意のコモノマーまたはさらなる成分(例えばCTA)が、別々にまたは任意の組合せで、2以上の流れに分割され、分割された供給物が、反応器に沿って種々の反応ゾーンへの管状反応器に導入される。例えば、全モノマー量の10〜90%が第一反応ゾーンに供給され、他の90〜10%の残りのモノマー量が、任意的にさらに分割され、分割された各々が反応器に沿って種々の位置で注入される。開始剤の供給も2以上の流れに分割され得る。さらに、多供給系では、モノマー(/コモノマー)および/または任意的なさらなる成分、例えばCTA、の分割された流れ、および開始剤の分割された流れがそれぞれ、同じもしくは異なる成分または同じもしくは異なる濃度の成分、またはそれらの両方を有し得る。
【0095】
本発明のポリオレフィンの製造のための管状反応器では、モノマーおよび任意のコモノマーのための単一供給系が好ましい。
【0096】
管状反応器の第一の部分は、モノマー、好ましくはエチレン、および任意的なコモノマーの供給の温度を調整することであり、通常の温度は200℃より下、例えば100〜200℃である。次いでラジカル開始剤が添加される。ラジカル開始剤としては、高められた温度でラジカルに分解する任意の化合物またはそれらの混合物が使用され得る。使用できるラジカル開始剤、例えばパーオキシド、は市販されている。重合反応は発熱的である。別個の注入ポンプが通常備えられた反応器に沿って、いくつかのラジカル開始剤注入点、例えば1〜5の注入点があり得る。既に述べたようにまた、モノマー、好ましくはエチレン、および任意のコモノマーが、フロントで添加され、任意的にモノマー供給物が、本発明方法の任意の時点で、管状反応器の任意のゾーンでおよび1以上の注入点、例えば1〜5の注入点から、別々の圧縮器を伴ってまたは伴わないで、上記モノマーおよび/または任意のコモノマーを添加するために分割され得る。
【0097】
さらに、ポリオレフィンの重合法において1以上のCTAが好ましくは使用される。好ましいCTAは、1以上の非極性CTAおよび1以上の極性CTA、またはそれらの任意の混合物から選択され得る。
【0098】
非極性CTAは、存在するならば、好ましくは下記から選択される。
i)ニトリル(CN)、スルフィド、ヒドロキシル、アルコキシ、アルデヒド(HC=O)、カルボニル、カルボキシル、エーテルまたはエステル基、またはそれらの混合から選択される極性基を有しない1以上の化合物。
非極性CTAは、好ましくは、1以上の非芳香族、直鎖、分岐または環式のヒドロカルビルであって、任意的にヘテロ原子、例えばO、N、S、SiまたはP、を含むものから選択される。より好ましくは、非極性CTAが、1以上の、5〜12の炭素原子の環式α−オレフィンまたは1以上の、3〜12の炭素原子の直鎖または分岐鎖α−オレフィン、より好ましくは1以上の、3〜6の炭素原子の直鎖または分岐鎖α−オレフィン、から選択される。好ましい非極性CTAはプロピレンである。
【0099】
極性CTAは、存在するならば、好ましくは下記から選択される。
i)ニトリル(CN)、スルフィド、ヒドロキシル、アルコキシ、アルデヒド(HC=O)、カルボニル、カルボキシル、エーテルまたはエステル基、またはそれらの混合物から選択される1以上の極性基を有する1以上の化合物、
ii)1以上の芳香族有機化合物、または
iii)それらの任意の混合物。
【0100】
好ましくは、任意のそのような極性CTAが、12までの炭素原子、例えば10までの炭素原子、好ましくは8までの炭素原子を有する。好ましくは、12までの炭素原子(例えば8までの炭素原子)を有しかつ少なくとも1のニトリル(CN)、スルフィド、ヒドロキシル、アルコキシ、アルデヒド(HC=O)、カルボニル、カルボキシルまたはエステル基を有する直鎖または分岐鎖のアルカンを包含する。
【0101】
より好ましくは、極性CTAが、存在するならば、i)1以上のヒドロキシル、アルコキシ、HC=O、カルボニル、カルボキシルおよびエステル基またはそれらの混合物を有する1以上の化合物から、より好ましくは、1以上のアルコール、アルデヒドおよび/またはケトン化合物から選択される。好ましい極性CTAは、存在するならば、12までの炭素原子、好ましくは8までの炭素原子、特に6までの炭素原子、を有する直鎖または分岐鎖のアルコール、アルデヒドまたはケトンであり、最も好ましくは、イソプロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)および/またはプロピオンアルデヒド(PA)である。
【0102】
好ましいCTAの量は限定されず、最終ポリマーの所望の最終特性に応じて本発明の範囲内で当業者によって適応され得る。従って、好ましい連鎖移動剤は、反応器の任意の注入箇所においてポリマー混合物に添加され得る。1以上のCTAの添加は、重合中の任意の時点で1以上の注入箇所から行われ得る。
【0103】
ポリオレフィンの重合が、上述した1以上の極性CTAおよび上述した1以上の非極性CTAを含むCTA混合物の存在下で行われる場合には、極性CTAと非極性CTAとの供給比(重量%)は好ましくは、反応器への極性CTAおよび非極性CTAの供給の一緒にされた量に基づいて、1〜99重量%の極性CTAおよび1〜99重量%の非極性CTAである。
【0104】
モノマー、コモノマーおよび任意のCTAの添加は、新鮮なおよび再循環された供給物を包含し得、典型的には、それらを包含する。
【0105】
反応器は、例えば水または蒸気によって、連続的に冷却される。最も高い温度をピーク温度と言い、反応開始温度を開始温度と言う。適する温度は400℃まで、好ましくは80〜350℃の範囲であり、圧力は700バール以上、好ましくは1000〜4000バール、より好ましくは1000〜3500バールである。圧力は、少なくとも圧縮段階の後および/または管状反応器の後に測定され得る。温度は、全工程中のいくつかの時点で測定され得る。高い温度および高い圧力は一般に、出力を高める。当業者によって選択される種々の温度プロファイルを使用すると、ポリマー鎖の構造の制御、すなわち長鎖分岐および/または短鎖分岐、密度、分岐係数(branching factor)、コモノマーの分布、MFR、粘度、分子量分布などの制御が可能であろう。反応器は慣用的に、バルブ、いわゆる製造制御バルブ、によって終わる。バルブは、反応器圧を制御し、反応混合物を反応圧から分離圧へ減圧する。
【0106】
本発明の方法の回収工程c)
分離
圧力は、典型的には、約100〜450バールに低下され、反応混合物は分離器に送られ、そこで未反応物(しばしば気体状)のほとんどがポリマー流から除去される。未反応物は、例えばモノマーまたは任意のコモノマーを含み、未反応成分のほとんどが回収される。ポリマー流は任意的に、より低圧で、典型的には1バール未満で、それ以上の未反応物が回収されるところの第二の分離器でさらに分離される。通常、低分子化合物、すなわちワックス、が気体から除去される。気体は通常、再循環の前に冷却され、きれいにされる。
【0107】
分離されたポリマーの回収
分離後、得られたポリマーは、典型的には、ポリマー溶融物の形状であり、それは通常、HP反応器系に連結して配置されたペレット化セクション、例えばペレット押出機において、混合され、ペレット化される。任意的に、添加剤、例えば酸化防止剤、がこのミキサーに公知のやり方で添加されて本ポリマー組成物を与え得る。
【0108】
高圧ラジカル重合によるエチレン(コ)ポリマーの製造の更なる詳細は、特に、the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol.6 (1986),pp 383-410およびEncyclopedia of Materials: Science andTechnology, 2001 Elsevier Science Ltd.: “Polyethylene:High-pressure (「ポリエチレン:高圧) R. Klimesch,D. Littmann and F.-O. Mahlingpp. 7181-7184に見られ得る。
【0109】
重合されたポリマー、好ましくはLDPEポリマー、のポリマー特性、例えばMFR、に関して、上記特性は、例えば重合中に連鎖移動剤を使用することによってまたは反応温度または圧力を調整することによって(これらはまた、ある程度まで、不飽和レベルに影響を及ぼす)調整され得る。エチレンの不飽和LDPEコポリマーが調製されるとき、周知のように、C−C二重結合量は、不飽和LDPEコポリマーのために望ましいC−C二重結合の性質および量に応じて、エチレンを、例えば1以上のポリ不飽和コモノマー、連鎖移動剤、プロセス条件、またはそれらの任意の組合せの存在下で、例えばモノマー、好ましくはエチレン、およびポリ不飽和コモノマーおよび/または連鎖移動剤の間の望ましい供給比を使用して、重合することにより調整され得る。特に国際公開第9308222号パンフレットは、エチレンコポリマーの不飽和度を高めるための、エチレンとポリ不飽和モノマー、例えばα,ω−アルカジエン、との高圧ラジカル重合を記載している。こうして、反応しなかった二重結合は、形成されたポリマー鎖の、ポリ不飽和コモノマーが重合によって組み入れられたところの部位にペンダントのビニル基を付与する。その結果、不飽和は、ランダム共重合法においてポリマー鎖に沿って均一に分布され得る。また、例えば国際公開第9635732号パンフレットは、エチレンとある種のポリ不飽和α,ω−ジビニルシロキサンとの高圧ラジカル重合を記載している。さらに、公知のように、例えばプロピレンが連鎖移動剤として使用されて上記二重結合を付与し得る。
【0110】
ポリマー組成物
ポリマー組成物は、架橋の前に、少なくとも1の架橋剤、好ましくは、少なくとも1の−O−O−結合を含有するする少なくとも1のパーオキシド、を含む。もちろん、2以上の異なるパーオキシド製品がポリマー組成物において使用される場合には、上記に、下記にまたは特許請求の範囲において記載された好ましい量(モル)の−O−O−/ポリマー組成物kgは、各パーオキシド製品の−O−O−/ポリマー組成物kgの量の合計である。
【0111】
本発明のポリマー組成物は、ポリマー組成物に存在するポリマー成分の総重量に基づいて、典型的には、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは80〜100重量%、より好ましくは85〜100重量%のポリオレフィンを含む。好ましい本ポリマー組成物は、唯一のポリマー成分としてのポリオレフィンから成る。上記記載は、本ポリマー組成物が、さらなるポリマー成分を含まず、唯一のポリマー成分としてポリオレフィンを含むことを意味する。しかし、本明細書では、本ポリマー組成物が、ポリマー成分以外の更なる成分、例えば担体ポリマーを有する混合物、すなわちいわゆるマスターバッチ、中に任意的に添加され得る添加剤、を含み得ることが理解されるべきである。
【0112】
本ポリマー組成物は、好ましくは、W&C用途のために慣用的に使用される添加剤、例えば1以上の酸化防止剤および任意的に1以上のスコーチ遅延剤、好ましくは少なくとも1の酸化防止剤、を含む。添加剤の使用量は慣用的であり、例えば上記「発明を実施するための態様」において既に記載されているように、当業者に周知である。
【0113】
本ポリマー組成物は好ましくは、唯一のポリマー成分として、本発明のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくはLDPEホモまたはコポリマー(任意的に不飽和であってもよい)から成る。本ポリマー組成物の最も好ましいポリオレフィンは、不飽和のLDPEホモまたはコポリマーである。
【0114】
本発明の最終の使用および最終用途
上述したように、新規な本ポリマー組成物は、広範囲のW&C用途、より好ましくは電力ケーブルの1以上の層において非常に有用である。
【0115】
電力ケーブルは、任意の電圧、典型的には1kVより高い電圧で作動する、エネルギーを運ぶケーブルであると定義される。電力ケーブルに適用される電圧は、交流(AC)、直流(DC)または過渡(インパルス)電圧であり得る。本発明のポリマー組成物は、電力ケーブル、特に6kV超〜36kVの電圧で作動する電力ケーブル(中電圧(MV)ケーブル)、および36kV超の電圧で作動する電力ケーブル(高電圧(HV)ケーブルおよび超高電圧(EHV)ケーブルとして知られ、EHVケーブルは、周知のように、非常に高い電圧で作動する)のために非常に適する。これらの用語は、周知の意味を有し、そのようなケーブルの作動レベルを示す。HVおよびEHV DC電力ケーブルに関して、作動電圧は、本明細書では、アースと高電圧ケーブルの導体との間の電圧として定義される。HV DC電力ケーブルおよびEHV DC電力ケーブルは、例えば40kV以上の電圧で、さらには50kV以上の電圧ですら、作動し得る。EHV DC電力ケーブルは、非常に高い電圧範囲、例えば800kVまでの高い電圧で作動するが、それに限定されない。
【0116】
有利なDC伝導性を有する本ポリマー組成物はまた、上述したように、任意の電圧、好ましくは36kVより高い電圧で作動する直流(DC)電力ケーブル、例えばHVまたはEHV DC電力ケーブルのために非常に適する。
【0117】
低下された電気伝導度に加えて、本ポリマー組成物はまた、好ましくは、電力ケーブル、特にDC電力ケーブルのために有利である非常に良好な空間電荷特性を有する。
【0118】
本発明はさらに、電力ケーブル、好ましくはDC電力ケーブルの絶縁層を製造するための、本発明の高圧(HP)法によって得られ得る本発明のポリオレフィンの使用を提供する。
【0119】
1以上の層によって、好ましくは少なくとも絶縁層によって、より好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に、取り囲まれた導体を含む架橋可能な電力ケーブル、好ましくは架橋可能なDC電力ケーブルが提供される。ここで、上記層の少なくとも1、好ましくは絶縁層が、架橋可能なポリオレフィンおよび架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含む本発明のポリマー組成物を含む。上記パーオキシドは好ましくは、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは少なくとも36ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、37ミリモル以上の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜75ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、の量である。電力ケーブル、好ましくはDC電力ケーブルの絶縁層は、好ましくは、上述した架橋可能な不飽和LDPEコポリマーを含む。
【0120】
用語「導体」は本明細書では上記および下記において、導体が1以上のワイヤを含むことを意味する。さらに、ケーブルは、1以上のそのような導体を含み得る。好ましくは、導体は電気導体であり、1以上の金属ワイヤを含む。
【0121】
本発明はまた、上記にまたは特許請求の範囲に記載されているように、1以上の層によって、好ましくは少なくとも絶縁層によって、より好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に、取り囲まれた導体を含む電力ケーブル、好ましくは架橋可能な電力ケーブル、より好ましくは架橋可能なDC電力ケーブル、より好ましくは架橋可能なHVまたはEHV DC電力ケーブルを製造する方法を提供する。上記方法は、1以上の層を導体上に施与する工程を含み、ここで、少なくとも1の層、好ましくは絶縁層が、ポリオレフィンおよび架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含む本発明の架橋可能なポリマー組成物を含み、上記パーオキシドは好ましくは、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは少なくとも36ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、37ミリモル以上の−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜75ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、の量である。
【0122】
本発明の電力ケーブルの製造法の好ましい態様では、架橋可能な電力ケーブルが、
(a)上記にまたは下記の特許請求の範囲に記載された本発明の架橋可能なポリマー組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合する、
(b)工程(a)で得られたポリマー組成物の溶融混合物を、好ましくは(共)押出によって、導体上に施与して、1以上の層、好ましくは少なくとも絶縁層、を形成する、および
(c)任意的に、上記少なくとも1の層、好ましくは絶縁層における少なくともポリマー組成物を架橋する
ことにより製造される。
【0123】
より好ましくは、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む架橋可能なDC電力ケーブル、好ましくは架橋可能なHVまたはEHV DC電力ケーブル、が製造される。ここで、上記方法は、下記工程を含む。
(a)内側半導電層のための、ポリマー、カーボンブラックおよび任意的に更なる成分を含む架橋可能な第一の半導電性組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
絶縁層のための本発明の架橋可能なポリマー組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
外側半導電層のための、好ましくは架橋可能であり、ポリマー、カーボンブラックおよび任意的に更なる成分を含む第二の半導電性組成物を用意しそして混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
(b)内側半導電層を形成するための工程(a)で得られた第一の半導電性組成物の溶融混合物、
絶縁層を形成するための工程(a)で得られた本発明のポリマー組成物の溶融混合物、および
外側半導電層を形成するための工程(a)で得られた第二の半導電性組成物の溶融混合物、
を、好ましくは共押出によって、導体上に施与すること、および
(c)任意的に、得られたケーブルの絶縁層のポリマー組成物、内側半導電層の半導電性組成物および外側半導電層の半導電性組成物の1以上、好ましくは少なくとも絶縁層のポリマー組成物、より好ましくは絶縁層のポリマー組成物および、内側半導電層の半導電性組成物および外側半導電層の半導電性組成物の少なくとも一方、好ましくは両方、を架橋条件で架橋すること。
【0124】
第一および第二の半導電性組成物のポリマーは好ましくは、ポリオレフィン、例えば本発明のポリマー組成物に関して記載されたもの、から独立して選択される。カーボンブラックは、電力ケーブルの半導電層、好ましくはDC電力ケーブルの半導電層において使用される任意の慣用的なカーボンブラックであり得る。カーボンブラックの例は、導電性カーボンブラック、例えば周知のファーネスカーボンブラックおよびアセチレンカーボンブラックである。さらに、第一および第二の半導電性組成物は、互いに異なりまたは同一であり得、好ましくは同一である。
【0125】
溶融混合は、得られた混合物の少なくとも主要なポリマー成分の融点より上で混合することを意味し、典型的には、ポリマー成分の融点または軟化点より少なくとも10〜15℃上の温度で行われる。
【0126】
用語「(共)押出」は、本明細書では、周知のように、2以上の層の場合には、上記層が別々の工程で押し出され得、または上記層の少なくとも2または全部が同じ押出工程で共押出され得ることを意味する。用語「(共)押出」はまた、本明細書では、層の全てまたは一部が、1以上の押出ヘッドを使用して同時に形成されることを意味する。例えば、3つのケーブル層を形成するために、三重押出が使用され得る。
【0127】
周知のように、本発明のポリマー組成物および任意のおよび好ましい第一および第二の半導電性組成物は、ケーブル製造プロセスの前またはその製造プロセスの間に製造され得る。さらに、本発明のポリマー組成物および任意のおよび好ましい第一および第二の半導電性組成物は各々独立して、ケーブル製造プロセスの(溶融)混合工程a)へ導入する前にその成分の一部または全部を含み得る。
【0128】
好ましくは、本ポリマー組成物の上記一部または全部、好ましくは少なくともポリオレフィンが、ケーブル製造プロセスに提供されるとき、粉末、顆粒またはペレットの形状である。ペレットは、任意の大きさおよび形状であり得、任意の慣用のペレット製造デバイス、例えばペレット押出機、によって製造され得る。
【0129】
1実施態様によれば、本ポリマー組成物は、上記任意の更なる成分を含む。この実施態様では、上記更なる成分の一部または全部が例えば、
1)重合プロセスで得られた形状であり得るポリオレフィンに溶融混合することによって、および/または
2)上記更なる成分の一部を既に含み得るポリオレフィンのペレットに混合することによって、
添加され得る。上記1)では、得られた溶融混合物が次いでペレット化される。上記2)では、更なる成分の一部または全部が、ペレットと一緒に溶融混合され、次いで得られた溶融混合物がペレット化され、および/または更なる成分の一部または全部が固体ペレットに含浸され得る。
【0130】
別の第二の実施態様では、本ポリマー組成物が、ケーブル製造ラインと結合して、例えばポリオレフィンを、好ましくは、更なる成分の一部を任意的に含み得るペレットの形状で提供することによって製造され得、そして、混合工程a)において更なる成分の全部または残りと一緒にされて本発明の方法の工程b)のための(溶融)混合物を提供する。ポリオレフィンのペレットが更なる成分の一部を含む場合には、ペレットが上記第一の実施態様において記載されたように製造され得る。
【0131】
上述したように、更なる成分は、好ましくは、1以上の添加剤から少なくとも選択され、好ましくは、少なくとも遊離ラジカル発生剤から、より好ましくはパーオキシドから選択され、任意的におよび好ましくは、酸化防止剤から、および任意的にスコーチ遅延剤から選択される。
【0132】
提供された本ポリマー組成物および好ましくあり得る第一および第二の半導電性組成物の混合工程a)は、好ましくはケーブル押出機において行われる。工程a)は、任意的に、ケーブル押出の前に、例えばミキサー中での、別個の混合工程を含み得る。先行する別個のミキサーでの混合は、成分の外部加熱(外部の源による加熱)を伴ってまたは伴わないで混合することによって行われ得る。本ポリマー組成物または好ましくあり得る第一および第二の半導電性組成物の任意の更なる成分は、存在しかつケーブル製造プロセス中に添加されるならば、任意の段階でおよび任意の時点でケーブル押出機にまたはケーブル押出機の前の任意の別個のミキサーに添加され得る。添加剤の添加は、そのようなものとして、好ましくは液体形状で、または周知のマスターバッチで、混合工程(a)中の任意の段階で、同時にまたは別々になされ得る。
【0133】
(溶融)混合工程(a)から得られた本ポリマー組成物の(溶融)混合物が、唯一のポリマー成分としての本発明のポリオレフィンから成ることが好ましい。任意的な、および好ましくあり得る添加剤が、本ポリマー組成物に、そのようなものとして、または担体ポリマーとの混合物として、すなわちいわゆるマスターバッチの形状で、添加され得る。
【0134】
最も好ましくは、工程(a)から得られた本発明のポリマー組成物の混合物および任意的な第一および第二の半導電性組成物の各々の混合物が、少なくとも押出機で製造される溶融混合物である。
【0135】
好ましい実施態様では、本発明のポリマー組成物が、予め作られたペレットの形状でケーブル製造プロセスに提供される。
【0136】
ケーブル製造法の好ましい実施態様では、架橋可能な電力ケーブル、好ましくは架橋可能なDC電力ケーブル、より好ましくは架橋可能なHVまたはEHV DC電力ケーブルが製造され、ここで、絶縁層が、架橋可能なポリオレフィン、好ましくは不飽和のLDPEホモまたはコポリマー、および上記または下記に示す量の架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含むポリマー組成物を含み、次いで、得られたケーブルの絶縁層の架橋可能なポリオレフィンが、架橋条件で工程c)において架橋される。より好ましくは、この実施態様では、架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋されたDC電力ケーブル、より好ましくは架橋されたHVまたはEHV DC電力ケーブル、が製造される。上記電力ケーブルは、第一の半導電性組成物を含む、好ましくは上記組成物から成る、内側半導電層、ポリオレフィンおよび上述した架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含む本発明の架橋可能なポリマー組成物を含む、好ましくは上記組成物から成る絶縁層、および任意的におよび好ましくは、第二の半導電性組成物を含む、好ましくは上記組成物から成る外側半導電層によって取り囲まれた導体を含み、ここで、絶縁層のポリマー組成物は、好ましくは上記にまたは特許請求の範囲に記載された量の、架橋剤、好ましくはパーオキシド、の存在下で工程(c)で架橋条件で架橋され、内側半導電層の第一の半導電性組成物および任意的におよび好ましくは外側半導電層の第二の半導電性組成物が、架橋剤、好ましくは遊離ラジカル発生剤、好ましくはパーオキシド、の存在下で工程(c)で架橋条件で架橋される。
【0137】
架橋剤は、架橋工程(c)に導入する前に任意の第一および第二半導電性組成物に既に存在し得、または架橋工程(c)の間に導入され得る。パーオキシドは、上記任意の第一および第二の半導電性組成物のための好ましい架橋剤であり、好ましくは、組成物が上述したケーブル製造プロセスにおいて使用される前に半導電性組成物のペレットに含まれる。
【0138】
架橋は、周知のように、架橋剤の種類に応じて選択される高められた温度で行われ得る。例えば、150℃より上の温度が典型的であるが、それに限定されない。
【0139】
本発明はさらに、1以上の層によって、好ましくは少なくとも絶縁層によって、より好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に、取り囲まれた導体を含む架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋されたDC電力ケーブル、を提供する。ここで、少なくとも絶縁層は、上記にまたは特許請求の範囲に記載された、架橋されたポリマー組成物またはその好ましいサブグループもしくは態様を含む。より好ましくは、内側半導電性組成物および任意的にかつ好ましくは外側半導電性組成物が架橋されている。
【0140】
当然、本発明のケーブルの少なくとも1のケーブル層、好ましくは絶縁層において使用される本発明のポリマー組成物は、架橋されると、上記にまたは特許請求の範囲に記載された有利な電気特性を有する。
【0141】
少なくとも1の層によって、好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれ、そして任意的に1以上の他の層、例えば従来周知のスクリーン、ジャケット層または他の保護層、によって取り囲まれた導体を含む、架橋された電力ケーブル、好ましくは架橋された(DC)電力ケーブル、好ましくは架橋されたHVまたはEHV DC電力ケーブル、の少なくとも1の層、好ましくは少なくとも絶縁層における、上記にまたは特許請求の範囲に記載されたポリマー組成物またはその好ましいサブグループもしくは態様の使用。
【0142】
電力ケーブル、好ましくはDCケーブル、より好ましくはHVまたはEHV DC電力ケーブル、の絶縁層の厚さは、ケーブルの絶縁層の断面で測定されるとき、典型的には2mm以上、好ましくは少なくとも3mm、好ましくは少なくとも3〜100mmである。
【0143】
本発明はさらに、ケーブルのDC伝導度を低下させるために、少なくとも1の層によって、好ましくは少なくとも内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に、取り囲まれた導体を含む、架橋された(DC)電力ケーブル、好ましくは架橋されたHVまたはEHV DV電力ケーブル、の絶縁層における本発明のポリマー組成物の使用を提供する。
【0144】
測定法
説明および実験部分において特に断らない限り、下記方法が特性の測定のために使用された。
wt%は重量%である。
【0145】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO1133に従って測定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの流動性、およびしたがって加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度が低い。MFRはポリエチレンの場合には190℃で測定され、種々の荷重、例えば2.16kg(MFR)または21.6kg(MFR21)、で測定され得る。
【0146】
密度
密度は、ISO1183−2に従って測定された。サンプルの作製は、ISO1872−2表3Q(圧縮成形)に従って行われた。
【0147】
分子量
Mz、Mw、MnおよびMWDが、当該分野において公知のように、低分子量ポリマーのためのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0148】
コモノマー含量
a)線状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンにおけるα−オレフィン含量のNMR分光法による定量
コモノマー含量は、基本的割り当て(basic assignment)の後、定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された(J. Randall JMS - Rev. Macromol. Chem.Phys., C29(2&3), 201-317(1989))。実験パラメータは、この特定の仕事のための定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された。
【0149】
特に溶液状態のNMR分光法が、Bruker AvanceIII 400分光計を使用して用いられた。ヒートブロックおよび回転管オーブンを使用して140℃で10mmサンプル管において約0.200gのポリマーを2.5mlの重水素化テトラクロロエテンに溶解することにより均一なサンプルを調製した。(出力制御された(powergated))NOEを伴うプロトンデカップリングされた13C単パルスNMRスペクトルが下記の取得パラメータを使用して記録された:90°のフリップ角、4個のダミースキャン、4096積算回数(transients)1.6sのアクイジションタイム、20kHzのスペクトル幅、125℃の温度、2元準位(bilevel)WALTZプロトンデカップリングスキームおよび3.0sの緩和遅延。得られたFIDは、下記のプロセッシングパラメータを使用して処理された:32kデータポイントへのゼロ充填(zero-filling)および、ガウス窓関数を使用するアポダイゼーション;自動ゼロ次および一次位相較正および、関係領域に限定された5次多項式を使用する自動基線較正。
【0150】
従来周知の方法に基づいて代表的位置のシグナルの積分の簡単な較正された比を使用して量が計算された。
【0151】
b)低密度ポリエチレンの極性コモノマーのコモノマー含量
(1)>6重量%の極性コモノマー単位を含有するポリマー
コモノマー含量(重量%)が、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって較正されたフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知のやり方で決定された。下記に、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレートおよびエチレンメチルアクリレートの極性コモノマー含量の決定を例示する。ポリマーのフィルムサンプルが、FTIR測定のために作製された。>6重量%の量のエチレンブチルアクリレートおよびエチレンエチルアクリレートのために0.5〜0.7mm厚さが使用され、エチレンメチルアクリレ-トのために0.10mmフィルム厚さが使用された。フィルムが、Specacフィルムプレスを使用して、150℃で約5トンで1〜2分間プレスされ、次いで制御されないやり方で冷水を用いて冷却された。得られたフィルムサンプルの正確な厚さが測定された。
【0152】
FTIRによる分析の後、吸収モードにおける基線が、分析されるべきピークのために引かれた。コモノマーのための吸収ピークが、ポリエチレンの吸収ピークによって正規化された(例えば、3450cm−1でのブチルアクリレートまたはエチルアクリレートのためのピーク高さを、2020cm−1でのポリエチレンのピーク高さで割った)。NMR分光法の較正手法が、文献に十分記載されそして下記で説明される慣用のやり方で行われた。
【0153】
メチルアクリレートの含量の決定のために、0.10mm厚さのフィルムサンプルが作製された。分析後、3455cm−1でのメチルアクリレートのためのピークの最大吸光度から2475cm−1での基線の吸光度が差し引かれた(Aメチルアクリレート−A2475)。次いで、2660cm−1でのポリエチレンのピークのための最大吸光度から、2475cm−1での基線の吸光度が差し引かれた(A2660−A2475)。次いで、文献に十分記載されている慣用のやり方で、(Aメチルアクリレート−A2475)と(A2660−A2475)との比が計算された。重量%は、計算によってモル%に変換され得る。それは、文献に十分記載されている。
【0154】
NMR分光法によるポリマー中のコポリマー含量の定量
コノモマー含量が、基本的割り当ての後、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された(例えば、“NMR Spectra of Polymersand Polymer Additives(ポリマーおよびポリマー添加剤のNMRスペクトル)”, A. J. Brandolini and D. D. Hills, 2000, Marcel Dekker, Inc. NewYork)。実験パラメータは、この特定の仕事のための定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された(例えば、“200 and More NMR Experiments: A Practical Course(200以上のNMR実験:実際のコース)”, S. Berger and S.Braun, 2004, Wiley-VCH, Weinheim)。従来公知のやり方で代表的位置のシグナルの積分の簡単な較正された比を使用して量が計算された。
【0155】
(2)6重量%以下の極性コモノマー単位を含有するポリマー
コモノマー含量(重量%)が、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって較正されるたーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知のやり方で決定された。下記に、エチレンブチルアクリレートおよびエチレンメチルアクリレートの極性コモノマー含量の決定を例示する。FTIR測定のために、0.05〜0.12mm厚さのフィルムサンプルが、上記方法1)に記載されたように作製された。得られたフィルムサンプルの正確な厚さが測定された。
【0156】
FTIRによる分析の後、吸収モードにおける基線が、分析されるべきピークのために引かれた。コモノマーのためのピーク(例えば、1164cm−1でのメチルアクリレートおよび1165cm−1でのブチルアクリレート)の最大吸光度から、1850cm−1での基線の吸光度が差し引かれた(A極性コモノマー−A1850)。次いで、2660cm−1でのポリエチレンのピークのための最大吸光度から、1850cm−1での基線の吸光度が差し引かれた(A2660−A1850)。次いで、(A極性コモノマー−A1850)と(A2660−A1850)との比が計算された。NMR分光法の較正手法が、文献に十分記載された慣用のやり方で、上記方法1)に記載されたように行われた。重量%は、計算によってモル%に変換され得る。それは、文献に十分記載されている。
【0157】
ゲル含量
ゲル含量が、ASTM D2765−01、方法Bに従って、デカリン抽出を使用して測定される。
しかし、この標準とは、3つの点で小さい違いがあった。
1) 全ての可溶物が抽出されるのを確実にするために、新しいデカリンでの1時間の追加の抽出を行った。
2)上記標準において特定された1%の代わりに、0.05%のみの酸化防止剤(Irganox 1076、オクタデシル3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、CAS:2082−79−3)がデカリンに添加された。
3)ケーブルから切り取られた小片は、上記標準において特定された0.4mmではなく、0.2mm厚さであった。
【0158】
サンプルが、20kVケーブルの内側半導電層にできるだけ接近した、本ポリマー組成物から作られた絶縁層から得られた。この3層ケーブルコアは、パイロット規模のCCVライン上で1+2構成(construction)を使用して製造された。導体はアルミニウムで作られ、50mmの面積を有した。内側半導電層は0.9mm厚さであり、絶縁層は5.5mm厚さであり、外側半導電層は0.8mm厚さであった。ケーブルコアの製造のために使用されたライン速度は、2m/分であった。このCCVラインは、ドライ硬化のための2つの加熱ゾーンを有し、各々3mであり、これら2つのゾーンで使用された温度はそれぞれ450℃および400℃であった。冷却セクションは12.8m長さであり、ケーブルが、約25〜30℃の温度を保持する水で冷却された。
【0159】
DC伝導度の測定法
DC伝導度法1:架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていないまたは脱ガスされた1mm厚さの板状サンプルの70℃および30kV/mmの平均電場で測定される電気伝導度
【0160】
板状サンプルの作製:
板状物が、試験ポリマー組成物のペレットから圧縮成形される。最終の板状物は、1mmの厚さおよび330mmの直径を有する。
【0161】
板状物が、130℃で12分間圧縮成形され、その間、圧力は2MPaから20MPaに徐々に高められる。その後、温度が高められ、5分後に180℃に達する。温度は次いで、180℃で15分間一定に保たれ、その間に、板状物は試験ポリマー組成物中に存在するパーオキシドによって完全に架橋される。最後に、圧力が開放されるときに室温が達されるまで、温度が15℃/分の冷却速度を使用して低下される。板状物は、揮発性物質の損失を防ぐために、圧力の開放後直ちに金属製ホイルで包まれる(脱ガスされない場合の測定のために使用される)。
【0162】
板状物が脱ガスされるべきならば、それは、減圧オーブン中に10Pa未満の圧力で置かれ、70℃で24時間脱ガスされる。その後、板状物は、板状物と周囲との間での揮発性物質の更なる交換を防ぐために、再び金属製ホイルに包まれる。
【0163】
測定法:
試験サンプルに電圧をかけるために、高電圧源が、上方電極に連結される。サンプルを通る得られた電流が電位計を用いて測定される。測定セルは、真鍮電極を有する3電極系である。真鍮電極は、高められた温度での測定を容易にしかつ試験サンプルの均一な温度を付与するために、加熱サーキュレーターに連結された加熱パイプを備えている。測定電極の直径は100mmである。電極の丸い(round)端部からのフラッシュオーバーを回避するために、シリコーンゴムのスカート部が真鍮電極端部と試験サンプルとの間に置かれる。
【0164】
適用された電圧は30kVDCであり、これは、30kV/mmの平均電場を意味する。温度は70℃であった。板状物を通る電流が、24時間続く実験全体にわたって記録された。24時間後の電流が、絶縁体の伝導度を計算するために使用された。
【0165】
この方法および伝導度測定のための測定手順の模式図は、Nordic InsulationSymposium 2009 (Nord-IS 09)、スウェーデン国イェーテボリ、2009年6月15〜17日、55〜58頁、Olssonら、“Experimental determination of DC conductivity for XLPE insulation(XLPE絶縁体のDC伝導度の実験的測定)”に完全に記載されている。
【0166】
DC伝導度法2:架橋されたポリマー組成物から成る板状サンプルの20℃および40kV/mmの平均電場での電気伝導度
【0167】
板状サンプルの作製:
試験ポリマー組成物のペレットが下記条件を使用して圧縮成形された。最初にペレットが120℃で1分間、20バールで溶融された。次いで、圧力が200バールに高められるのと同時に温度が180℃に高められた。次いで、板状物は、ポリマー組成物に存在するパーオキシドによって完全に架橋された。全架橋時間は、温度を120℃から180℃に高めるための時間を含めて12分であった。架橋完了後、板状物が、なおも加圧下で、15℃/分の冷却速度で室温に冷却された。圧縮を取り除いた後、冷却された板状物が、オーブン中、70℃で72時間、1atmで脱ガスされた。板状物の最終の厚さは0.5mmであった。
【0168】
伝導電流測定:
伝導電流測定は、3端子セルによって、窒素下、3バールの圧力および20℃の温度で行われる。試料が、低温スパッタリングによって得られた、金で被覆された電極を用いて試験される。低電圧電極は、25mmの直径(従って測定面積は490mmである)を有する。保護電極は、低電圧電極の周りにこの電極から離れて位置される。高電圧電極は、50mmの直径を有し、これは、保護電極の外径と同じ寸法である。
【0169】
目標平均電気応力(E)×測定された絶縁体の厚さ(d)に等しいDC電圧(U)が、高電圧電極にかけられる。目標平均電気応力Eは、この場合には40kV/mmである。高電圧電極と低電圧電極との間のテープを通る電流が、電位計を用いて測定される。測定は、電流が安定した状態のレベルに達したときに終わり、通常は24〜48時間後である。報告された伝導度σが、下記式によって、安定な状態の電流(I)から計算される。
σ=Id/(AU)
ここで、Aは測定面積であり、この場合には490mmである。
【0170】
DC伝導度法3:架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていないまたは脱ガスされた1mm厚さの板状サンプルの70℃および30kV/mmの平均電場で測定される電気伝導度
【0171】
板状物が、試験ポリマー組成物のペレットから圧縮成形される。最終の板状物は、1±10%mmの厚さおよび195×195mmを有する。厚さは、板状物の上の5カ所で測定される。
【0172】
板状物は、130℃で600秒間、20バールで圧縮成形される。その後、温度が高められ、170秒後に180℃に達し、圧力が同時に200バールに高められる。温度は次いで、180℃で1000秒間、一定に保持され、その間、板状物は、試験ポリマー組成物中に存在するパーオキシドによって完全に架橋される。最後に、圧力が開放されるときに室温が達されるまで、15℃/分の冷却速度を使用して温度が低下される。圧縮成形の後直ちに、板状物の厚さが測定され、次いで、伝導度測定のための下記に記載された試験セル中に置かれる。
【0173】
試験サンプルに電圧をかけるために、高電圧源が、上方電極に連結される。サンプルを通って得られた電流が電位計を用いて測定される。測定セルは、真鍮電極を有する3電極系である。高められた温度での測定を容易にしかつ試験サンプルの均一な温度を付与するために、セルが、加熱オーブン中に置かれる。測定電極の直径は100mmである。電極の丸い端部からのフラッシュオーバーを回避するために、シリコーンゴムのスカート部が真鍮電極端部と試験サンプルとの間に置かれる。
【0174】
適用されたHVDC電圧は、測定された板状物の厚さに応じて調整されて、30kV/mmの平均電場に達した。温度は70℃であった。板状物を通る電流が、24時間続く実験全体にわたって記録された。24時間後の電流が、絶縁体の伝導度を計算するために使用された。
【0175】
DC伝導度法4:70℃および30kV/mmの平均電場で測定される、絶縁層としての架橋された試験ポリマー組成物および半導電層としての架橋された試験半導電性組成物の1.5mmモデルケーブルサンプルの電気伝導度
【0176】
モデルケーブルの作製:
3層ケーブルコアが、パイロット規模のCCVライン上の1+2構成を使用して製造された。内側および外側半導電層は、架橋剤(下記実験の部ではパーオキシド)を含む同じ試験半導電性組成物から成る。内側半導電層は0.7mm厚さであり、絶縁層は1.5mm厚さであり、外側半導電層は0.15mm厚さであった。ケーブルコアは、2工程で製造された。工程1では、ケーブルコアは、加硫管を通ることなく、8m/分のライン速度で押し出された。工程2では、ケーブルコアが、5m/分のライン速度で加硫管のみを通過した。上記管は、ドライ硬化(窒素下での架橋)のための2つの加熱ゾーンを有し、各々3mであり、これら2つのゾーンで使用された温度はそれぞれ400℃および380℃であった。この結果、絶縁物質および半導電性物質中のパーオキシド故に、完全に架橋されたケーブルが得られた。冷却セクションは12.8m長さであり、ケーブルが、約25〜30℃の温度を保持する水で冷却された。
【0177】
ケーブルは、伝導電流測定の前に脱ガスされなかった。望ましくない脱ガスが生じるのを回避するために、測定が行われるまでケーブルがアルミニウムホイルで覆われた。ケーブルは次いで、外側半導電層が存在するところの中央に100cmの活性長さ(測定ゾーン)を有する3m長さのサンプルに切断された。サンプルの両端100cmの外側半導電層が、ピーリング具によって除去された。方法5で使用された絶縁厚さ1.5mmを有する3層モデルケーブルの模式図を図1に示す。
【0178】
伝導電流測定:
伝導電流測定は、導体が高電圧電極として作用するところの3端子セルによって行われる。低電圧電極は、活性部分における外側半導電層を被覆するアルミニウムホイルである。保護電極は、測定ゾーンの両側で絶縁層を被覆するアルミニウムホイルによって導入される。低電圧電極と保護電極との間のギャップは5cmである。適用された電圧は45kV DC(30kV/mmの平均電場)であり、温度は70℃である。測定は、24時間後に終わりにされ、伝導度が23〜24時間の平均として測定される。安定状態の電流(漏洩電流)が計算において使用される。
【0179】
伝導度s(S/m)が、下記式を使用して計算された。

ここで、R=U/I=印加電圧(V)/漏洩電流(A)
【0180】
【表1】

【0181】
本ポリマー組成物またはポリマー中の二重結合の量の決定法
A)IR分光法による炭素−炭素二重結合の量の定量
定量的赤外(IR)分光法が、炭素−炭素二重結合(C=C)の量を定量するために使用された。既知の構造の代表的低分子量モデル化合物中のC=C官能基のモル吸光係数の事前の決定により較正が達成された。
【0182】
これらの基の各々の量(N)が、下記式によって、炭素原子1000個当たりの炭素−炭素二重結合の数(C=C/1000C)として決定された。
N=(A×14)/(E×L×D)
ここで、Aは、ピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Eは、係る基のモル吸光係数(l・モル−1・mm−1)であり、Lはフィルム厚さ(mm)であり、Dは物質の密度(g・cm−1)である。
【0183】
炭素原子1000個当たりのC=C結合の総量は、個々のC=C含有成分のNを合計することによって計算され得る。
【0184】
ポリエチレンサンプルの場合には、固体状態の赤外スペクトルが、FTIR分光計(PerkinElmer 2000)を使用して、圧縮成形された薄い(0.5〜1.0mm)フィルムについて4cm−1の分解能で記録され、吸収モードで分析された。
【0185】
1)>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを除く、ポリエチレンホモポリマーおよびコポリマーを含むポリマー組成物
ポリエチレンのために、3種類のC=C含有官能基が定量された。各々は特徴的な吸収を有し、個々の吸光係数をもたらす異なるモデル化合物に対して較正された。
E=13.13 l・モル−1・mm−1を与える1−デセン[デク−1−エン]に基づく910cm−1によるビニル(R−CH=CH2)
E=18.24 l・モル−1・mm−1を与える2−メチル−1−ヘプテン[2−メチルヘプト−1−エン]に基づく888cm−1によるビニリデン(RR’C=CH2)
E=15.14 l・モル−1・mm−1を与えるトランス−4−デセン[(E)−デク−4−エン]に基づく965cm−1によるトランス−ビニレン(R−CH=CH−R’)
【0186】
ポリエチレンホモポリマーまたは<0.4重量%の極性コモノマーを有するコポリマーのために、約980cm−1と840cm−1との間に線状基線較正が適用された。
【0187】
2)>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを含むポリマー組成物
>0.4重量%の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーのために、2種類のC=C含有官能基が定量された。各々は、特徴的な吸収を有し、個々の吸光係数をもたらす異なるモデル化合物に対して較正された。
E=13.13 l・モル−1・mm−1を与える1−デセン[デク−1−エン]に基づく910cm−1によるビニル(R−CH=CH2)
E=18.24 l・モル−1・mm−1を与える2−メチル−1−ヘプテン[2−メチルヘプト−1−エン]に基づく888cm−1によるビニリデン(RR’C=CH2)
【0188】
EBA:
ポリ(エチレン−コ−ブチルアクリレート)(EBA)系のために、約920cm−1と870cm−1との間に線状基線較正が適用された。
EMA:
ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)(EMA)系のために、約930cm−1と870cm−1との間に線状基線較正が適用された。
【0189】
3)不飽和低分子量分子を含有するポリマー組成物
低分子量C=C含有種を含む系のために、上記低分子量種自体におけるC=C吸収のモル吸光係数を使用する直接の較正が行われた。
【0190】
B)IR分光法によるモル吸光係数の定量
モル吸光係数が、ASTM D3124−98およびASTM D6248−98に示された手法に従って決定された。溶液状態の赤外スペクトルが、0.1mm光路長の液体セルを備えたFTIR分光計(Perkin Elmer 2000)を使用して4cm−1の分解能で記録された。モル吸光係数(E)は、下記式によって、l・モル−1・mm−1として決定された。
E=A/(C×L)
ここで、Aはピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Cは濃度(モル・l−1)であり、Lはセル厚さ(mm)である。少なくとも3つの二流化炭素(CS)中の0.18モル・l−1溶液が使用され、モル吸光係数の平均値が決定された。
【0191】
実験
実施例および参考例のポリオレフィンの調製
ポリオレフィンは、高圧反応器で製造された低密度ポリエチレンであった。本発明のポリマーおよび参照のポリマーの製造を下記に記載する。CTA供給に関して、例えばPA含量は、リットル/時またはkg/時として示され得、検算のために0.807kg/リットルのPAの密度を使用していずれかの単位に変換され得る。
【0192】
実施例1
エチレンが、再循環されたCTAとともに、中間の冷却を伴って5段階プレ圧縮器および2段階ハイパー圧縮器において圧縮されて約2576バールの初期反応圧力に達した。合計の圧縮器処理量は約30トン/時であった。圧縮器領域では、約4.9リットル/時のプロピオンアルデヒド(CAS番号:123−38−6)が約119kgのプロピレン/時とともに連鎖移動剤として添加されて2.1g/10分のMFRを維持した。圧縮された混合物が、約40mmの内径および1200mの全長を有するフロント供給3ゾーン管状反応器の予熱セクションで166℃に加熱された。イソドデカンに溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤の混合物が、プレヒーターのすぐ後で、発熱重合反応が約276℃のピーク温度に達するのに十分な量で注入され、その後、約221℃に冷却された。続く第二および第三のピーク反応温度はそれぞれ271℃および261℃であり、それらの間での225℃への冷却を伴った。反応混合物は、キックバルブ(kick valve)によって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0193】
実施例2
エチレンが、再循環されたCTAとともに、中間の冷却を伴って5段階プレ圧縮器および2段階ハイパー圧縮器において圧縮されて約2523バールの初期反応圧力に達した。合計の圧縮器処理量は約30トン/時であった。圧縮器領域では、約4.5リットル/時のプロピオンアルデヒドが約118kgのプロピレン/時とともに連鎖移動剤として添加されて2.0g/10分のMFRを維持した。ここでまた、1,7−オクタジエンが23kg/時の量で反応器に添加された。圧縮された混合物が、約40mmの内径および1200mの全長を有するフロント供給3ゾーン管状反応器の予熱セクションで160℃に加熱された。イソドデカンに溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤の混合物が、プレヒーターのすぐ後で、発熱重合反応が約272℃のピーク温度に達するのに十分な量で注入され、その後、約205℃に冷却された。続く第二および第三のピーク反応温度はそれぞれ270℃および253℃であり、それらの間での218℃への冷却を伴った。反応混合物は、キックバルブによって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0194】
実施例3
エチレンが、再循環されたCTAとともに、中間の冷却を伴って5段階プレ圧縮器および2段階ハイパー圧縮器において圧縮されて約2592バールの初期反応圧力に達した。合計の圧縮器処理量は約30トン/時であった。圧縮器領域では、約4.9リットル/時のプロピオンアルデヒドが約77kgのプロピレン/時とともに連鎖移動剤として添加されて1.9g/10分のMFRを維持した。圧縮された混合物が、約40mmの内径および1200mの全長を有するフロント供給3ゾーン管状反応器の予熱セクションで163℃に加熱された。イソドデカンに溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤の混合物が、プレヒーターのすぐ後で、発熱重合反応が約281℃のピーク温度に達するのに十分な量で注入され、その後、約208℃に冷却された。続く第二および第三のピーク反応温度はそれぞれ282℃および262℃であり、それらの間での217℃への冷却を伴った。反応混合物は、キックバルブによって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0195】
実施例4
エチレンが、再循環されたCTAとともに、中間の冷却を伴って5−段階プレ圧縮器および2−段階ハイパー圧縮器において圧縮されて約2771バールの初期反応圧力に達した。合計の圧縮器処理量は約30トン/時であった。圧縮器領域では、約5.3リットル/時のプロピオンアルデヒドが約86kgのプロピレン/時とともに連鎖移動剤として添加されて0.7g/10分のMFRを維持した。圧縮された混合物が、約40mmの内径および1200mの全長を有するフロント供給3ゾーン管状反応器の予熱セクションで171℃に加熱された。イソドデカンに溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤の混合物が、プレヒーターのすぐ後で、発熱重合反応が約281℃のピーク温度に達するのに十分な量で注入され、その後、203℃に冷却された。続く第二および第三のピーク反応温度はそれぞれ273℃および265℃であり、それらの間での226℃への冷却を伴った。反応混合物は、キックバルブによって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0196】
参考例1
純粋なエチレンが90バールの圧力および−30℃の温度への圧縮および冷却によって液化され、各々約14トン/時の2つの等しい流れに分割された。CTA(メチルエチルケトン、MEK)、空気、および溶媒に溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤が、上記2つの液体エチレン流に個々の量で添加された。ここでまた、1,7−オクタジエンが24kg/時の量で反応器に添加された。2つの混合物が別々に、4つの増圧器の配列を通ってポンプ送りされて2200〜2300バールの圧力および約40℃の出口温度に達した。これら2つの流れがそれぞれ、スプリット供給2ゾーン管状反応器のフロント(ゾーン1)(50%)およびサイド(ゾーン2)(50%)に供給された。上記2つの反応器ゾーンの内径および長さはゾーン1が32mmおよび200mであり、ゾーン2が38mmおよび400mであった。MEKが205kg/時の量でフロント流に添加されて約2g/10分のMFRを維持した。フロント供給流が加熱セクションを通って、発熱重合反応が開始するのに十分な温度に達した。反応が達したピーク温度は第1ゾーンおよび第2ゾーンにおいてそれぞれ253℃および290℃であった。サイド供給流が、上記反応を、168℃の第2ゾーンの開始温度に冷却した。空気及びパーオキシド溶液が、目標のピーク温度に達するのに十分な量で上記2つの流れに添加された。反応混合物は、生成物バルブ(product valve)によって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0197】
参考例2
純粋なエチレンが90バールの圧力および−30℃の温度への圧縮および冷却によって液化され、各々約14トン/時の2つの等しい流れに分割された。CTA(メチルエチルケトン(MEK))、空気、および溶媒に溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤が、上記2つの液体エチレン流に個々の量で添加された。2つの混合物が別々に、4つの増圧器の配列を通ってポンプ送りされて2100〜2300バールの圧力および約40℃の出口温度に達した。これら2つの流れがそれぞれ、スプリット供給2ゾーン管状反応器のフロント(ゾーン1)(50%)およびサイド(ゾーン2)(50%)に供給された。上記2つの反応器ゾーンの内径および長さはゾーン1が32mmおよび200mであり、ゾーン2が38mmおよび400mであった。MEKが約216kg/時の量でフロント流に添加されて約2g/10分のMFRを維持した。フロント供給流が加熱セクションを通って、発熱重合反応が開始するのに十分な温度に達した。反応が達したピーク温度は第1ゾーンおよび第2ゾーンにおいてそれぞれ約250℃および318℃であった。サイド供給流が、上記反応を、165〜170℃の第2ゾーンの開始温度に冷却した。空気及びパーオキシド溶液が、目標のピーク温度に達するのに十分な量で上記2つの流れに添加された。反応混合物は、生成物バルブによって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0198】
参考例3
純粋なエチレンが90バールの圧力および−30℃の温度への圧縮および冷却によって液化され、各々約14トン/時の2つの等しい流れに分けられた。CTA(メチルエチルケトン、MEK)、空気、および溶媒に溶解された市販のパーオキシドラジカル開始剤が、上記2つの液体エチレン流に個々の量で添加された。2つの混合物が別々に、4つの増圧器の配列を通ってポンプ送りされて2100〜2300バールの圧力および約40℃の出口温度に達した。これら2つの流れがそれぞれ、スプリット供給2ゾーン管状反応器のフロント(ゾーン1)(50%)およびサイド(ゾーン2)(50%)に供給された。上記2つの反応器ゾーンの内径および長さはゾーン1が32mmおよび200mであり、ゾーン2が38mmおよび400mであった。MEKが約201kg/時の量でフロント流に添加されて約0.75g/10分のMFRを維持した。フロント供給流が加熱セクションを通って、発熱重合反応が開始するのに十分な温度に達した。反応が達したピーク温度は第1ゾーンおよび第2ゾーンにおいてそれぞれ約251℃および316℃であった。サイド供給流が、上記反応を、約185〜190℃の第2ゾーンの開始温度に冷却した。空気及びパーオキシド溶液が、目標のピーク温度に達するのに十分な量で上記2つの流れに添加された。反応混合物は、生成物バルブによって減圧され、冷却され、ポリマーが未反応ガスから分離された。
【0199】
モデルケーブルサンプルの半導電層のための半導電性組成物
Semicon 2:LE0550、Borealis社からの市販グレード、アセチレンカーボンブラックを含有する、密度1100kg/cm、DC体積抵抗率:23℃で100オームcm未満および90℃で1000オームcm未満(ISO3915)、熱間硬化試験(200℃、0.20MPa、IEC60811−2−1):荷重伸び25%
永久変形0%、ガットフェルト‐エラストグラフ(Gottfert Elastograph)1.2Nm
【0200】
実験結果
鉱油=実施例1〜3:鉱油に基づく潤滑剤、Shelll Corena E150、Shell製;実施例4:鉱油に基づく潤滑剤、M-RARUS PE KPL 201、Exxon Mobil製
PAG=参考例:ポリアルキレングリコールに基づく潤滑剤、Syntheso D201N、Klueber製
PA=プロピオンアルデヒド(CAS番号:123−38−6)
MEK=メチルエチルケトン
【0201】
【表2】

【0202】
【表3】

【0203】
【表4】

【0204】
【表5】

【0205】
上記測定法で定義されたゲル含量法にしたがって測定されたとき、実施例2のゲル含量は78.2重量%であり、比較例1のゲル含量は77.9重量%であった。
【0206】
【表6】

【0207】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンおよび架橋剤を含む架橋可能なポリマー組成物であって、架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを明細書の「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)にしたがって70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有するところのポリマー組成物。
【請求項2】
架橋前にはポリオレフィンおよび架橋剤を含んでいた架橋されたポリマー組成物であって、該架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを明細書の「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)にしたがって70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、150fS/m以下の電気伝導度を有するところのポリマー組成物。
【請求項3】
ポリオレフィンが下記工程:
(a)1以上のモノマーを圧縮器中で加圧下に、潤滑のための圧縮器潤滑剤を使用して圧縮すること、
(b)モノマーを、任意的に1以上のコモノマーと共に、重合ゾーンで重合すること、
(c)得られたポリオレフィンを未反応物から分離し、分離されたポリオレフィンを回収ゾーンで回収すること、
を含む高圧法によって得られ得る、ここで工程a)における圧縮器潤滑剤が鉱油を含む、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
鉱油が、食品接触において使用されるプラスチックのための2002年8月6日の欧州指令2002/72/EC、付録V、におけるホワイトミネラルオイルのための要件を満たすホワイトミネラルオイルである、請求項3記載のポリマー組成物。
【請求項5】
架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされていない1mm厚さの板状サンプルを明細書の「測定法」に記載されたDC伝導度法(1)に従って70℃および30kV/mmの平均電場で測定したとき、140fS/m以下の、好ましくは130fS/m以下の、好ましくは120fS/m以下の、好ましくは100fS/m以下の、好ましくは0.01〜90fS/mの、より好ましくは0.05〜90fS/mの、より好ましくは0.1〜80fS/mの、より好ましくは0.5〜75fS/mの電気伝導度を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項6】
架橋されたポリマー組成物から成る脱ガスされた0.5mm厚さの板状サンプルを明細書の「測定法」に記載されたDC伝導度法(2)に従って20℃および40kV/mmの平均電場で測定したとき、0.27fS/m以下の、好ましくは0.25fS/m以下の、より好ましくは0.001〜0.23fS/mの電気伝導度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項7】
ポリマー組成物が架橋前にパーオキシドを含み、パーオキシドの量が、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは少なくとも36ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、37ミリモル以上の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜75ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgである、請求項1〜6のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項8】
酸化防止剤が、立体障害を有するまたは半立体障害を有するフェノール類、芳香族アミン、脂肪族系の立体障害を有するアミン、有機ホスファイトまたはホスホナイト、チオ化合物、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは硫黄含有フェノール系酸化防止剤を含むチオ化合物から選択され、好ましくはチオビスフェノールから選択され、かつ任意的なスコーチ遅延剤が、アリル化合物、例えば芳香族α−メチルアルケニルモノマーの二量体、好ましくは2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、置換されたまたは非置換のジフェニルエチレン、キノン誘導体、ヒドロキノン誘導体、単官能性ビニル含有エステルおよびエーテル、少なくとも2の二重結合を有する単環式炭化水素、またはそれらの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載されたケーブル。
【請求項9】
ポリオレフィンが、飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの飽和LDPEコポリマーであり、あるいは不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーから選択される不飽和LDPEポリマーである、請求項1〜8のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項10】
ポリオレフィンが、不飽和LDPEホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーから選択される不飽和LDPEポリマーであり、かつ0.4超/炭素原子1000個の炭素−炭素二重結合の総量を有し、好ましくは不飽和LDPEに存在する炭素−炭素二重結合の総量が、存在するならば、ビニル基、ビニリデン基およびトランス−ビニレン基の量であり、より好ましくは不飽和LDPEポリマーがビニル基を有し、不飽和LDPEに存在するビニル基の総量が好ましくは0.05超/炭素原子1000個であり、さらにより好ましくは0.08超/炭素原子1000個、最も好ましくは0.11超/炭素原子1000個である、請求項1〜9のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項11】
不飽和LDPEコポリマーが、エチレンと少なくとも1のポリ不飽和コモノマーおよび任意的に1以上の他のコモノマーとの不飽和LDPEコポリマーであり、好ましくは該ポリ不飽和コモノマーが、少なくとも8個の炭素原子を有しかつ非共役二重結合間に少なくとも4個の炭素原子を有する炭素直鎖からなり、非共役二重結合のうちの少なくとも1は末端にあり、より好ましくは、該ポリ不飽和コモノマーがジエンであり、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含有し、第一の炭素−炭素二重結合が末端にあり、第二の炭素−炭素二重結合が該第一のものに対して非共役の関係にあるジエンであり、さらに好ましくは、C〜C14非共役ジエンまたはそれらの混合物から選択されるジエンであり、より好ましくは、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、またはそれらの混合物から選択されるジエンであり、さらにより好ましくは、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、またはそれらの混合物から選択されるジエンである、請求項10に記載されたポリマー組成物。
【請求項12】
ポリオレフィンが、総量で0.20超/炭素原子1000個の、さらにより好ましくは0.30超/炭素原子1000個のビニル基を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項13】
ポリオレフィンがパーオキシドで架橋されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載されたポリマー組成物。
【請求項14】
少なくとも、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれ、任意的に更なる層で取り囲まれた導体を含む架橋可能な電力ケーブル、好ましくは架橋可能な直流(DC)電力ケーブル、の少なくとも1の層、好ましくは少なくとも絶縁層、を製造するために請求項1〜13のいずれか1項に記載されたポリマー組成物を使用する方法。
【請求項15】
少なくとも1の層によって取り囲まれた、好ましくは少なくとも、第一の半導電性組成物を含む内側半導電層、ポリマー組成物を含む絶縁層、および第二の半導電性組成物を含む外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む架橋可能な電力ケ−ブル、好ましくは架橋可能な直流(DC)電力ケーブルであって、該少なくとも1の層が、好ましくは絶縁層が、その架橋前に、請求項1〜13のいずれか1項に記載されたポリマー組成物を含むところの電力ケ−ブル。
【請求項16】
少なくとも1の層によって取り囲まれた、好ましくは少なくとも、第一の半導電性組成物を含む内側半導電層、ポリマー組成物を含む絶縁層、および第二の半導電性組成物を含む外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む架橋された電力ケ−ブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブルであって、該少なくとも1の層が、好ましくは絶縁層が、請求項2〜13のいずれか1項に記載された架橋されたポリマー組成物を含むところの電力ケ−ブル。
【請求項17】
少なくとも、内側半導電層、絶縁層および外側半導電層によってこの順に取り囲まれた導体を含む請求項15または16に記載の電力ケーブル、好ましくは架橋された直流(DC)電力ケーブルの製造法であって、下記工程:
第一の半導電性組成物を含む内側半導電層、ポリマー組成物を含む絶縁層、および第二の半導電性組成物を含む外側半導電層を導体上に施与すること、ここで該絶縁層が、請求項1〜12のいずれか1項に記載されたポリマー組成物を含み、該ポリマー組成物はポリオレフィンおよび架橋剤、好ましくはパーオキシド、を含み、より好ましくはパーオキシドを、少なくとも35ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは少なくとも36ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、37ミリモル以上の−O−O−/ポリマー組成物kg、好ましくは37〜90ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kg、より好ましくは37〜75ミリモルの−O−O−/ポリマー組成物kgの量で含む、そして
任意的におよび好ましくは、架橋剤の存在下で架橋条件下で、絶縁層のポリマー組成物の少なくともポリオレフィンを架橋すること、および任意的におよび好ましくは、内側半導電層の第一の半導電性組成物および外側半導電層の第二の半導電性組成物の少なくとも1、好ましくは両方を架橋すること、
を含む方法。

【公表番号】特表2013−510915(P2013−510915A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538282(P2012−538282)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066711
【国際公開番号】WO2011/057927
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511114678)
【Fターム(参考)】