説明

ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法

【課題】本発明の課題は、多孔質のポリ塩化ビニル樹脂組成物から、品質を保持させたまま効率的に脱水、乾燥し、成形加工が問題なくできる樹脂組成物を製造する方法を提供することにある。
【解決手段】水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、脱水押出機に導入し、脱水押出機内の最高樹脂温度を100℃〜210℃に維持して脱水、乾燥させ、含水率が2重量%未満のポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形するポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニルは、可塑剤等の配合組成及び配合量によって、軟質から硬質まで種々の物理的性質を付与することができ、種々の用途に使用されている。このようなポリ塩化ビニル製品の多くが廃棄する際には、焼却又は埋め立て等の処分がされており、従来、省エネルギーや環境問題などの社会的な問題があった。この問題に対し、使用済みの塩化ビニル樹脂製品をリサイクルする方法が種々、検討されている。使用済み塩化ビニル樹脂製品からポリ塩化ビニルを再生使用する際には、複合剤であれば、金属やポリエチレン、プロピレン、ナイロン、シリコンラバー等との分離、あるいは泥、砂、工事用テープなど種々の異物の分離、あるいは使用済み塩化ビニル樹脂に元来含まれる添加剤例えば、鉛系の熱安定剤あるいはフィラー等の分離等、再生品の使用目的応じた異物除去が望まれている。ポリ塩化ビニルを熱溶融するだけでは異物除去が十分に行われないため、溶剤を用いてポリ塩化ビニルを一度溶解し、溶解液から不溶解分をろ過や遠心分離等により除去する方法が行われている。しかし、ポリ塩化ビニルを溶解した溶媒とポリ塩化ビニルを再度分離する方法において、ポリ塩化ビニルをポリ塩化ビニルコンパウンド原料として再使用できるように改良されたいくつかの方法が知られている。例えば、特開平2002−284920号(特許文献1)に、ポリ塩ビニルを含む廃棄物を溶剤で溶解し、溶解液を加熱水と接触させ析出させ、析出したポリ塩化ビニルを分離する方法が開示されている。
【0003】
しかし、該方法のようにしてポリマー溶解液と水を接触させ析出させたポリマーは、一般的に多孔質である。よってポリマーを水から分離するため、遠心分離や沈殿法による脱水操作をしても、取り除くことができる水分は、粒子表面の付着水のみで、多孔質中の水分を取り除くことはできない。粒子中に含まれる多量の水分を取り除くには、一般的に気流乾燥や流動乾燥が採用されている。このような気流、流動乾燥機を用いる場合、粒子細孔内に含まれる水分を蒸発させるには、多量の熱エネルギーが必要であり、損失も大きい。しかも多孔質の粉体は、粉体流動性が悪く、見掛け密度が低いため、ハンドリング性に劣る。また、得られた多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形加工する場合、バージンのポリ塩化ビニルと混合ブレンドするとき、その比重差から分級が発生し、均一なコンパウンドを得ることができない、押出機に導入する場合、比重が軽く、スクリューへの食い込みが劣り、押出生産性が上がらないといった問題があった。こうした従来の乾燥方法による不具合を解消することを目的として押出機による脱水及び乾燥方法が開発されている。
【0004】
例えば特公平6−15170号(特許文献2)に多量の水分を含んだ状態で製造されるABS樹脂等を、2軸押出機を使用して脱水・乾燥する方法が開示されている。また特開平2001−219424号(特許文献3)には、含エラストマー熱可塑性樹脂の脱水造粒を、押出機を使用して脱水、脱気する方法が開示されている。
従来の種々の技術でも未だ解決できない問題として、気流、流動乾燥機での乾燥では、多孔質中の水分や有機溶剤を乾燥させるのに、多大のエネルギーと滞留時間が必要という問題がある。一方、上記の如き押出機を使ってポリ塩化ビニル組成物を脱水、脱気、混練、造粒する場合は、せん断により粒子の多孔質構造を破壊できるため、粒子内部の水分や有機溶媒を効率的に取り除くことが可能である。しかし、ポリ塩化ビニルは、溶融加工温度と樹脂の分解温度が近いため成形温度を上げることができず、溶融粘度が高いため押出機内でせん断発熱が発生し、ポリ塩化ビニルが熱分解による塩酸ガスを発生し、押出機吐出部から発泡して品質の劣化した造粒品が排出されるといった問題があった。特に熱安定性や色相に関しては劣化を受けやすく、そのため、ポリ塩化ビニルの乾燥方法として、機械的なせん断を受けず、比較的低温で処理できる、気流、流動乾燥が一般的に用いられている。しかし、このような乾燥方法で得たポリ塩化ビニル樹脂は、粒子中に多孔質構造を残しており、見掛け密度が低く、しかも粉体流動性が悪いため、ハンドリング性に劣り、帯電による静電気付着が起こりやすい。また、得られた多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形加工する場合、(i)バージンのポリ塩化ビニルと混合ブレンドする際に、その見掛け比重差から分級が発生し、均一なコンパウンドを得ることができない、(ii)押出機に導入する際に、比重が軽く、スクリューへの食い込みが劣り、押出生産性が上がらないといった問題があった。
【特許文献1】特開平2002−284920号公報
【特許文献2】特公平6−15170号公報
【特許文献3】特開平2001−219424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、多孔質のポリ塩化ビニル樹脂組成物から、品質を保持させたまま効率的に脱水、乾燥し、成形加工が問題なくできる樹脂組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は水、分を多量に含む多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の脱水、乾燥装置として、押出機を用いて従来技術の上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、成形範囲が狭いポリ塩化ビニル樹脂において、押出機タイプを用いることで、脱水、乾燥が品質劣化を伴うことなく可能であり、組成物を簡便に見掛け密度の好適値することができることを見出したものである
即ち本発明の要旨は、下記(1)〜(7)に存する。
【0007】
(1) 水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、脱水押出機に導入し、脱水押出機内の最高樹脂温度を100℃〜210℃に維持して脱水、乾燥させ、含水率が2重量%未満のポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形するポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(2) 脱水押出機のバレル口径(D)に対するバレル軸長(L)の比(L/D)が、20〜70であることを特徴とする上記(1)に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(3) 脱水押出機が、バレル内にスクリューを2本有し、導入した樹脂を上流から下流へ搬送する機構を備え、押出機構成として上流から、樹脂の投入口、樹脂を圧搾し、水分と分離する機構、分離した水分を系外へ排出する機構、樹脂を加熱し圧縮する機構及び樹脂を造粒する機構を有する上記(1)又は(2)に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(4) 押出成形させたポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性が、元の多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性の60%以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(5) ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、見掛け密度0.3g/ml以上1.0g/ml以下に成形することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(6) 有機溶剤を含有する含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂を押出機に導入し、押出機内で脱水、乾燥させ、有機溶剤含有率を30重量%以上除去することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
(7) 脱水押出機内でポリ塩化ビニル樹脂組成物に対し、添加剤を配合して溶融混練することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、多孔質のポリ塩化ビニル樹脂組成物から、品質を保持させたまま効率的に脱水、乾燥し、成形加工が問題なくできる樹脂組成物を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、脱水押出機に導入し、脱水押出機内の最高樹脂温度を100℃〜210℃に維持して脱水、乾燥させ、含水率が2重量%未満のポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形することを特徴とする。
【0010】
本発明に適用できる押出機に導入する多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物とは、例えば、マテリアルリサイクルを目的としてポリ塩化ビニル樹脂を含有する使用済みの製品や、ポリ塩化ビニル樹脂製品の製造工程で発生する規格外品等をポリ塩化ビニルに対する良溶媒に溶解した後、ポリ塩化ビニル樹脂に対する貧溶媒と接触させることにより、ポリ塩化ビニル樹脂を析出させて得た析出物である。この析出物から良溶媒や貧溶媒を取り除く抽出などの工程を経た含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂も問題なく適用できる。また、発泡剤などを用いて多孔質にした多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物へも適用できる。
【0011】
本発明において押出機に導入する多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、水を含有することを必須とし、その含水率は通常20重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは100重量%以上であり、通常800重量%以下、好ましくは600重量%以下、より好ましくは400重量%以下である。一般的な脱水、乾燥押出機へ導入する場合、含水率が低すぎると他の気流、流動乾燥などの乾燥機とのエネルギーメリットが少なく、含水率が高すぎると乾燥後の押出量が少なくなり、流動性も悪くなるため好ましくない。
【0012】
また、多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の空孔率は、通常0.5ml/g以上、好ましくは1.0ml/g以上であり、通常5ml/g以下、好ましくは3.0ml/g以下である。空孔率が低すぎると脱溶剤性が劣り、高すぎるとスクリューへの供給量が減るため生産性が劣る。なお、多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の空孔率の測定は、水銀圧入法ポロシメーターで測定した。
【0013】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂組成物は軟質、硬質を問わない。ポリ塩化ビニル樹脂とは、ポリ塩化ビニル単独重合体及び、ポリ塩化ビニルを主体とする共重合体、混合体を含む。共重合成分、混合成分としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、オクチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物などであり、特に限定されない。ポリ塩化ビニルを含有する使用済み製品として、ポリ塩化ビニル樹脂の製品あるいは金属、セラミック、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン等との複合材等が本発明においては適用できるが、より好ましくはポリ塩化ビニルの含有量が多い製品、たとえば、ポリ塩化ビニル製のパイプ管、パイプ継ぎ手、窓枠、電線、農ビ等である。また、ポリ塩化ビニル製品の製造工程で発生する規格外品等としては、成形時不良品や、不要在庫、樹脂切断時の切り屑等を適用できる。
【0014】
前述のポリ塩化ビニル樹脂に対する良溶媒とは、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、γ−ブチルラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、等や、これらの混合溶媒等があげられる。ポリ塩化ビニル樹脂に対する貧溶媒とは、水あるいはメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールがあげられる。
【0015】
本発明においては、水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物(以下「含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物」という)を、脱水押出機に導入し、押出機内で脱水、乾燥させ、含水率が2重量%未満のポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形する。ここでいう含水率とは、脱水、乾燥を押出機内でした後の押出機吐出部でのポリ塩化ビニル樹脂の含水率を指す。この含水率は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であり、含水率は低いほどよいが、通常0.01重量%以上である。この含水率が高すぎると、該樹脂を用いて成形加工を実施した場合、水分が揮発することによる成形品表面の外観不良や、物性低下を招くこととなる。なお「本発明においては、水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物」とは、本発明で脱水押出機に導入するのは「水と多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物のスラリー」ではなく、「空孔中に水が入った多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物」であることを意味する。
【0016】
これら高含水率の多孔質ポリ塩化ビニル樹脂を押出機を使って脱水、脱気、混練、造粒する場合、ポリ塩化ビニルの特性として、溶融加工温度と樹脂の分解温度が近いため、成形温度を上げることができず、溶融粘度が高いため、押出機内でせん断発熱が発生し、ポリ塩化ビニル樹脂が熱分解による、塩酸ガスを発生し、押出機吐出部から発泡、品質の劣化した造粒品が排出されるといった問題があり、特に熱安定性や色相に関しては劣化を受けやすいといった問題点があった。そこで、押出機より受けるせん断や熱による劣化の指標として、押出機で添加剤を添加しない条件下での押出造粒されたポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性が、押出機に導入する前の多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性の60%以上、より好ましくは80%以上維持する押出条件にすることで、塩酸ガスの発泡もなく、色調や物性低下のない造粒物を得ることができた。なお、熱安定性の上限は100%である。
【0017】
押出機バレル内には、スクリューが1本以上好ましくは2本あり、押出機に導入した樹脂を上流から下流へ搬送することができ、押出機構成として上流から、樹脂の投入工程、樹脂を圧搾し、水分と分離し、分離した水分を系外へ排出する脱液工程、樹脂を加熱し圧縮し脱気する脱気工程と樹脂を造粒する工程を含む。脱液工程で液を系外へ排出する好適な機構としては、脱液スリットを少なくとも1箇所、好ましくは2から4箇所有するものが挙げられる。脱気工程で脱気する好適な機構としては、脱気用ベントを0から5箇所好ましくは1から3箇所有するものが挙げられる。脱気用ベントは少なければ脱気不十分であり、多過ぎると樹脂温度が上昇し、熱安定性の低下を招く。造粒工程としてはダイスを装着しストランド状に押し出し、ペレタイザーで造粒する方法、ホットカット法、アンダーウオーターカット法、ダイスを装着せずにフレーク状に造粒する方法などがあり、いずれの方法でも可能であるが、ホットカット法が好ましい。押出機バレル長さ(L/D)は、長いと熱履歴が大きく、熱安定性の低下を招き、短いと脱水が不十分となるため、バレルL/Dは20以上70以下、好ましくは30以上50以下になるように設定する。スクリュー構造は、かみ合い、非かみ合いいずれでも可能であり、回転方向については、同方向、異方向いずれも可能であるが、脱水効率の観点から、好ましくは同方向である。スクリューピースについては、正方向、逆方向のニーディング、フルフライト、ローター、シールリングなどを任意に組み合わせることができるが、樹脂の発熱を抑制するため、好ましくは、正方向(送り方向)のスクリューピースが選ばれる。スクリューの回転数、バレルの設定温度は、高いと該樹脂の熱劣化を促進し、低いと該樹脂の水分量が低減しないという観点から、押出機内での最高樹脂温度が100℃以上210℃以下好ましくは、130℃以上190℃以下になるように、任意に組み合わせることができる。一般的にスクリュー回転数は20〜700回転/分、好ましくは30〜500回転/分、バレル温度は30℃〜210℃、好ましくは70℃〜190℃の範囲から選定される。
【0018】
脱水、押出へ導入される含水多孔質ポリ塩化ビニル組成物の大きさが小さいと押出機脱水部のスリットより水分が排出されるときに該樹脂の粒子が系外へ同伴され収率が悪くなり、また排水処理をする必要がある。また粒子系が大きいと、乾燥、脱水押出機スクリューへのフィード部の食込みが劣り、脱水、乾燥の生産性がわるくなるため、押出機へ導入される該樹脂の粒子大きさの最小長さは0.2mm以上20mm以下であり、好ましくは0.3mm以上10mm以下である。粒子の最大長さも同様の観点から20mm以下であることが好ましい。
【0019】
押出機から吐出させた造粒物中に有機溶剤が混合されていると成形加工時、揮発や、ブリードにより成形品表面性を悪化させるといった不具合を引き起こす。よって押出機に導入される多孔質ポリ塩化ビニルに含まれる水に有機溶剤が樹脂組成物に対して10%以下100ppm以上混合されている場合、これらを押出機で脱液、乾燥させることで、有機溶剤濃度が、30%以上削減される、より好ましくは、50%以上削減される。
【0020】
造粒工程で得られた造粒物は、各種成形加工に用いることができるが、バージンのポリ塩化ビニルと混合ブレンドする場合、見掛け密度が極端に異なると分級が発生し均一なコンパウンドが得られない、成形加工押出機に導入する場合、比重が低いとスクリューへの食い込みが劣り、押出生産性が悪化するといった観点から、見掛け密度が0.3以上1.0g/ml以下、好ましくは0.4以上0.8g/mlにすることが好適である。
【0021】
本発明の方法において、目的に応じて種々の添加剤を押出機内でサイドフィーダー等を使って添加配合することができる。例えば、鉛系、錫系、各種金属石鹸系、有機系、無機系安定剤や「安定助剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、衝撃改良剤、加工助剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、相溶化剤、難燃剤、顔料、無機充填剤、有機繊維、無機繊維、などの補助剤、他の熱可塑性樹脂などが添加剤として使用できる。
【0022】
本発明の方法により脱水、乾燥、造粒された該樹脂は、各種成形加工に活用することができる。例えば、パイプ、継ぎ手、異形押出、フィルム、電線、建材、工業部品、家電製品、自動車部品、家庭用品、各種コンパウンド、押出成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形、真空成形、圧空成形など多種多様の成形品として利用できる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明する。
<評価方法>
ポリ塩化ビニル中残存N−メチルピロリドン(以下、「NMP」と略する。)及び水の分析はテトラヒドロフランで溶解し、その溶液を分析した。NMPはガスクロマトグラフィーにより、水の分析はカールフィッシャー試薬を用いた水分分析計で行った。PVCの濃度はNMPと水の濃度を差し引いた残りの部分として計算により求めた。
【0024】
熱安定性については、8インチ混練2本ロールにて180℃、20rpm、0.5mm、5分間混連して採取したシートを190℃のギアオーブンへ入れその黒化時間を計測し熱安定性の指標とした。また前記ロール混練シートを5mmに積層し、180℃、10分、100kg/cm熱プレスし、色差計でイエローインデックス(YI)を測定した。
見掛け密度はJIS K7365に準じて測定した。
本発明で得られた造粒物を15φmm短軸のフィーダーで回転数を15rpm一定としてフィード量を測定し成形生産性を成形性とし比較した。
【0025】
<樹脂の調整>
攪拌機と温水ジャケットを有するSUS製溶解槽にNMPを仕込み、50℃に昇温した後、使用済みパイプの粉砕品を撹拌しながら投入し2時間で完全に溶解した。次いで得られた溶液を槽底より抜き出し、目開き1mmの金網を張って粗ろ過し、シールテープやガムテープ等の不溶解物を除去した。次いで150メッシュの金網でろ過し、砂等を除去し、最後に70μmのPP製キャンドルフィルター(日本ポール製)を用いて、微粒子をろ過した。そして得られたろ過液を0.5mm孔径の多孔板ノズルから25℃の水が入った槽の液面に連続フィードして、直径0.3mmのストランド析出物を得た。このストランドを4mmスクリーンを有した回転刃式破砕機で破砕した。得られた破砕物を破砕物と同体積の60℃の水中に浸漬し、30分毎に水を入れ替える洗浄操作を10回行った。その後、水を洗浄槽から抜き、含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を得た。得られた含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、水分量が250重量%、NMP含有量が該樹脂に対して、0.20重量%であった。また多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の空孔率は、1.9ml/gであった。
【0026】
押出機へ導入する含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性を評価するため、上記得られた該樹脂をバッチ式流動乾燥機(不二パウダル(株):MDD2000N型)で温風温度50℃、10時間乾燥させた。(比較例2と同じ)
【0027】
実施例1
押出機は、同方向ニ軸押出機(日本製鋼所(株)製:TEX44、L/D=42)で、上流から原料を投入する原料投入部1、脱液スリットが3つ配される脱液部2a、2b、2c、各脱液部の下流側に配された圧搾をするシールリング6a、6b、6c、ベント口3とその下流部に配されたシールリング6dからなるベント部、からなり、スクリューは送りスクリュー5a、5b、5c、5d、5e、5fで構成される。ヒーターは、脱液部以外に取り付けた。押出機のヘッドにはホットカットダイを取りつけ、カッターでホットカットし、造粒物を得た。樹脂温度は4a及び4bで測定した。
【0028】
実施例2
バレル温度を制御して、樹脂温度を変化させ、それ以外は実施例1と同一の条件で脱水、乾燥、造粒した。結果は比較例と共に表1に示す。
【0029】
比較例1
実施例1と同じ設備を用い、樹脂温度が215℃になるようにスクリューピース5dを逆送りニーダーに変更し、押出を実施。造粒物は着色がみられ、塩酸ガスの発生も観察された。
【0030】
比較例2
含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を一般的なポリ塩化ビニル樹脂組成物の乾燥に使用する流動乾燥機(不二パウダル(株)製:MDD2000N型)で50℃、10時間乾燥させた。乾燥品は熱安定性に問題なかったが、見掛け密度が低く、成形加工時の押出成形性が劣っていた。
【0031】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一形態の実施に用いうる2軸押出機のシリンダとバレルとを示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:原料投入部
2a、2b、2c:脱液部
3:ベント口
4a、4b:温度測定部
5a、5b、5c、5d、5e、5f:シールリング
6a。6b、6c、6d、:送りスクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を20重量%以上800重量%以下含み、空孔率0.5〜5ml/gである多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、脱水押出機に導入し、脱水押出機内の最高樹脂温度を100℃〜210℃に維持して脱水、乾燥させ、含水率が2重量%未満のポリ塩化ビニル樹脂組成物を成形するポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
脱水押出機のバレル口径(D)に対するバレル軸長(L)の比(L/D)が、20〜70であることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
脱水押出機が、バレル内にスクリューを2本有し、導入した樹脂を上流から下流へ搬送する機構を備え、押出機構成として上流から、樹脂の投入口、樹脂を圧搾し、水分と分離する機構、分離した水分を系外へ排出する機構、樹脂を加熱し圧縮する機構及び樹脂を造粒する機構を有する請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
押出成形させたポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性が、元の多孔質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性の60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、見掛け密度0.3g/ml以上1.0g/ml以下に成形することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
有機溶剤を含有する含水多孔質ポリ塩化ビニル樹脂を押出機に導入し、押出機内で脱水、乾燥させ、有機溶剤含有率を30重量%以上除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
脱水押出機内でポリ塩化ビニル樹脂組成物に対し、添加剤を配合して溶融混練することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−223123(P2007−223123A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45748(P2006−45748)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】