説明

マスクの製造方法及びマスク

【課題】アライメントマークの検出精度が高いマスクを容易に製造できるマスクの製造方法及びマスクを提供すること。
【解決手段】単結晶シリコン基板で形成されたアライメント基板5の面方位によりエッチングレートが異なるエッチャントを用いたウェットエッチングにより、アライメント基板5の一面を粗面化する工程と、アライメント基板5に、被成膜基板との位置合わせに用いるマスクマークを形成してアライメントチップ3を製造する工程と、被成膜基板に形成される薄膜パターンの少なくとも一部の形状に対応する開口部が形成されたマスクチップを製造する工程と、アライメントチップ及びマスクチップを、支持基板上に固定する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの製造方法及びマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electroluminescence)を用いた発光パネルの開発が盛んに行われている。このような発光パネル、すなわち有機EL装置では、例えば低分子系材料をRGB毎に分けて蒸着する際に、蒸着マスクが用いられている。
蒸着マスクと被成膜基板とのそれぞれには、互いの位置合わせを行うためのアライメントマークが形成されている。そして、マスクと被成膜基板との位置合わせは、例えば、マスクと被成膜基板とを重ね合わせた状態で、重ね合わせ方向の上方からマスク及び被成膜基板に向けて照明光を照射し、撮像手段によりマスクのアライメントマークであるマスクマークと被成膜基板のアライメントマークである基板マークとを検出ながらマスクと被成膜基板とを相対的に移動させることにより行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、各マークの検出は、各マークそれぞれにおける光沢度とマスクマークの周囲における光沢度との差に基づいて行われる。すなわち、マスクにおける光沢度とアライメントマークにおける光沢度との差が大きいほど、撮像手段により取得した画像において各マークとその周囲とのコントラストが高くなるため、各マークを容易に検出できる。なお、一般的に基板マークは、基板に設けられて表面が平坦面である凸部により形成されている。そのため、基板マークは、光沢度が高く、取得した画像において明るく表示される。
【特許文献1】特開2005−276480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のマスクにおいても、マスクと被成膜基板との位置合わせの精度をより向上させるため、マスク及び被成膜基板それぞれに形成されたアライメントマークの検出精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、アライメントマークの検出精度が高いマスクを容易に製造できるマスクの製造方法及びマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかるマスクの製造方法は、単結晶基板からなるアライメント基板の面方位によりエッチングレートが異なるエッチャントを用いたウェットエッチングにより、該アライメント基板の一面を粗面化する工程と、該アライメント基板に、被成膜基板との位置合わせに用いるマスクマークを形成してアライメントチップを製造する工程と、前記被成膜基板に形成される薄膜パターンの少なくとも一部の形状に対応する開口部が形成されたマスクチップを製造する工程と、前記アライメントチップ及び前記マスクチップを、支持基板上に固定する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、面方位に応じたエッチングレートの違いに基づいたウェットエッチング処理によりアライメント基板の一面を容易に粗面化できる。これにより、マスクマークの高い検出精度が得られるマスクを容易に製造できる。
すなわち、ウェットエッチング処理の時間などを調整することにより、アライメント基板の一面の粗面状態を調節できる。これにより、マスクマークの光沢度を制御してマスクマーク及び被成膜基板のマスクマークそれぞれの光沢度との差異を設けることで、各マークの高い検出精度が得られる。したがって、マスク及び被成膜基板それぞれを精度よく位置合わせできる。
【0008】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークが、前記アライメント基板に形成された貫通孔であることとしてもよい。
この発明では、マスクマークを貫通孔とすることで、検出時に取得した画像においてマスクマークがアライメント基板よりも暗く表示される。ここで、上述のように基板マークは、明るく表示される。したがって、アライメント基板の一面における光沢度をマスクマーク及び基板マークそれぞれの光沢度の中間の値とすることで、各マークの高い検出精度が得られる。
【0009】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークが、ドライエッチング法を用いて形成されることが好ましい。
この発明では、ドライエッチング法によりアライメント基板の面方位によらずに貫通孔を形成できるため、マスクマークの高い形状精度が得られる。
【0010】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークの周囲における前記アライメント基板の一面の光沢度が、60°測定において10%以上70%以下であることが好ましい。
この発明では、アライメント基板の60°測定における光沢度を10%以上70%以下とすることで、検出時に取得した画像におけるアライメント基板とマスクマークとの間及びアライメント基板と基板マークとの間それぞれで十分なコントラストが得られる。したがって、各マークのより高い検出精度が得られる。
なお、本発明でいう光沢度とは、JIS規格における、屈折率1.567のガラス表面において60°の入射角で光を照射したときに(以下「60°測定」という。)、当該光の反射率が10%である場合を光沢度100%として定義して算出したものである。
【0011】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークが、前記アライメント基板に設けられて上面が平面である凸部で形成されていることとしてもよい。
この発明では、マスクマークを凸部とすることで、検出時に取得した画像においてマスクマークがアライメントマークよりも明るく表示される。ここで、上述のように基板マークは、明るく表示される。したがって、アライメント基板の一面における光沢度をマスクマーク及び基板マークそれぞれの光沢度のよりも小さい値とすることで、各マークの高い検出精度が得られる。
【0012】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークが、マスクを用いたウェットエッチングにより前記アライメント基板の粗面化と共に形成されることが好ましい。
この発明では、ウェットエッチングによりパターニングすることで、製造工程の簡略化が図れる。
【0013】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記マスクマークの周囲における前記アライメント基板の一面の光沢度が、60°測定において0%より大きく15%以下であることが好ましい。
この発明では、アライメント基板の60°測定における光沢度を0%より大きく15%以下とすることで、検出時に取得した画像におけるアライメント基板とマスクマークとの間及びアライメント基板と基板マークとの間それぞれで十分なコントラストが得られる。したがって、各マークをより高い精度で検出できる。
【0014】
また、本発明にかかるマスクの製造方法は、前記アライメント基板が、結晶異方性を有することが好ましい。
この発明では、アライメント基板が結晶異方性を有することで、面方位によるエッチングレートの違いを用いたウェットエッチング処理を容易に行える。したがって、マスクの製造工程を簡略化できる。
【0015】
また、本発明にかかるマスクは、支持基板と、該支持基板上に固定されたマスクチップ及びアライメントチップとを備え、該アライメントチップは、被成膜基板との位置合わせに用いる貫通孔であるマスクマークが形成されると共に、該マスクマークの周囲における光沢度が60°測定において10%以上70%以下であることを特徴とする。
また、本発明にかかるマスクは支持基板と、支持基板と、該支持基板上に固定されたマスクチップ及びアライメントチップとを備え、該アライメントチップは、被成膜基板との位置合わせに用いられて上面が平面の凸部であるマスクマークが形成されると共に、該マスクマークの周囲における光沢度が60°測定において0%より大きく15%以下であることを特徴とする。
この発明では、上述と同様に、検出時に取得した画像におけるアライメント基板とマスクマークとの間及びアライメント基板と基板マークとの間それぞれで十分なコントラストが得られる。したがって、各マークをより高い精度で検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、本発明におけるマスクの製造方法及びマスクの第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0017】
〔マスク〕
まず、本実施形態におけるマスクの製造方法により製造されるマスクについて説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1はマスクを示す斜視図、図2はアライメントチップを示す断面図である。また、各図において、マスクチップに形成された開口部の数を適宜変更している。
【0018】
マスク1は、例えば有機EL装置を構成する画素パターンを形成する際に用いられる。そして、マスク1は、図1及び図2に示すように、複数のマスクチップ2と、アライメントチップ3と、マスクチップ2及びアライメントチップ3それぞれが貼付される支持基板4とを備えている。
【0019】
マスクチップ2は、図1に示すように、例えば単結晶シリコン基板を用いて形成された平面視正方形の板状部材である。また、マスクチップ2には、マスクチップ2の2辺に沿って延在する平面視正方形の貫通孔である開口部2aが複数形成されている。複数の開口部2aは、マスクチップ2の2辺それぞれに沿って互いが平行かつ一定間隔となるように形成されている。
また、マスクチップ2の周縁部は、支持基板4に貼付する際の貼付部となっている。そして、マスクチップ2には、支持基板4に貼付する際の位置決めに用いられるアライメントマーク2bが形成されている。
【0020】
アライメントチップ3は、支持基板4の対角位置にある一対の角部それぞれに配置されている。そして、アライメントチップ3は、図1及び図2に示すように、例えばシリコンで形成された平面視正方形の板状部材であるアライメント基板5を基体としている。また、アライメントチップ3には、貫通孔であるマスクマーク5aが形成されている。
アライメント基板5の上面は、光沢度が40%であって10%以上70%以下の範囲内にある粗面となっている。ここで、光沢度とは、JIS規格における、屈折率1.567のガラス表面において60°の入射角で光を照射したときに(以下「60°測定」という。)、当該光の反射率が10%である場合を光沢度100%として定義して算出したものである。なお、光沢度の測定は、例えばHORIBA社製、IG−331を用いている。また、アライメント基板5の下面には、底部にマスクマーク5aに連通する開口部が形成された凹部5bが設けられている。そして、アライメント基板5の上面には、支持基板4に貼付する際の位置決めに用いられるアライメントマーク5cが形成されている。
マスクマーク5aは、平面視で例えば正方形となっており、間隔をあけて2箇所に形成されている。
【0021】
支持基板4は、ガラスで形成された平面視正方形の板部材であり、厚さが例えば3mm程度となっている。また、支持基板4には、支持基板4の一辺に沿って延在する平面視長方形の貫通孔である開口部4aが複数形成されている。複数の開口部4aは、支持基板4の上記一辺と直交する他の一辺に沿って互いが平行かつ一定間隔となるように形成されている。
また、支持基板4の一面には、マスクチップ2の貼付の際の位置決めに用いられるアライメントマーク4bと、アライメントチップ3の貼付の際の位置決めに用いられるアライメントマーク4cとが形成されている。そして、支持基板4の一面には、複数のマスクチップ2が複数の開口部4aそれぞれを塞ぐように接着剤により貼付されると共に、アライメントチップ3が貼付されている。ここで、マスクチップ2の開口部2aは、支持基板4における開口部4aの形成領域内に配置される。
【0022】
〔マスクの製造方法〕
次に、本発明にかかるマスクの製造方法について説明する。ここで、図3は、アライメントチップの製造工程を示す工程図である。
まず、表面の面方位が(110)である単結晶シリコン基板を用いて形成されたアライメント基板5の上面を粗面化する(図3(a))。ここでは、KOHをエッチャントとしたウェットエッチングにより、アライメント基板5の上面をエッチングする(図3(b))。このとき、シリコンからなるアライメント基板5は、結晶異方性を有するため、面方位(111)と面方位(110)とでKOHを用いたウェットエッチング時のエッチングレートが異なる。そのため、ウェットエッチングにより、アライメント基板5の上面が粗面化される。
【0023】
なお、エッチャントへの浸漬時間は、例えば10分となっている。また、エッチャントの濃度は、例えば3重量%以上12重量%以下であることが好ましく、3重量%であることがより好ましい。エッチャントの濃度を3重量%以下とすることで、十分なエッチングレートが得られる。また、エッチャントの濃度を12重量%以下とすることで、各面方位におけるエッチングレートの比が同等となることを防止し、面方位(111)と面方位(110)との間で等方的にエッチングされることを抑制する。
ここで、表面の面方位が(110)であるシリコン基板をKOHの濃度が3重量%であるエッチャントに浸漬した際の、浸漬時間と光沢度(60°測定)との関係を図4に示す。図4に示すように、15分前後で中間調となる光沢度が得られることとがわかる。
【0024】
続いて、アライメント基板5にマスクマーク5aを形成する。ここでは、粗面化されたアライメント基板5の上面に、フォトリソグラフィ技術によりマスクマーク5aと同様の開口形状を有するレジスト層(図示略)を形成する。そして、レジスト層をマスクとしたICP(Inductive Coupling Plasma)ドライエッチングにより、アライメント基板5の上面に凹部5dを形成する(図3(c))。次に、アライメント基板5の下面に、フォトリソグラフィ技術によりマスクマーク5a及びその近傍と対応する領域に開口形状を有するレジスト層(図示略)を形成する。そして、レジスト層をマスクとしたウェットエッチングにより、アライメント基板5の下面に凹部5dと連通する凹部5bを形成する。これにより、図2に示すように、貫通孔であるマスクマーク5aが形成される。このように、ICPドライエッチングよりもエッチングレートの高いウェットエッチングによりアライメント基板5の下面に凹部5bを形成して凹部5dと連通させることで、ICPドライエッチングのみによりマスクマーク5aを形成することと比較して、マスクマーク5aの形成が容易になる。以上のようにして、アライメントチップ3を製造する。
【0025】
次に、マスクチップ2及び支持基板4それぞれを製造する。その後、支持基板4上にマスクチップ2及びアライメントチップ3それぞれを貼付する。以上のようにして、マスク1を製造する。
【0026】
〔被成膜基板〕
次に、以上のような構成のマスク1を用いて薄膜パターンが形成される被成膜基板について、図5を参照しながら説明する。ここで、図5は被成膜基板を示す平面図である。
被成膜基板10は、平面視でほぼ矩形であってガラスなどの透光性材料を主体として形成されており、例えば有機EL装置をする透明基板である。そして、被成膜基板10の表面において互いに対向する2つの角部それぞれには、図5に示すように、マスク1との位置合わせを行うための基板マーク10aが形成されている。
【0027】
基板マーク10aは、被成膜基板10に設けられた凸部であり、被成膜基板10の表面をパターニングすることにより形成されている。そして、基板マーク10aは、被成膜基板10の対向する2つの角部それぞれに形成されており、平面視において例えば十字型となっている。ここで、基板マーク10aの表面における光沢度は、基板マーク10aの表面が平面となっているため、アライメントチップ3の表面における光沢度よりも高くなっている。
【0028】
〔成膜装置〕
続いて、マスク1を用いて被成膜基板10に薄膜パターンを形成する成膜装置について説明する。ここで、図6は成膜装置を示す概略構成図、図7はマスク及び被成膜基板の位置合わせ状態を説明する説明図である。
成膜装置20は、図6に示すように、チャンバ21と、フレーム22と、蒸着源23と、永久磁石24と、撮像手段25と、照明手段26と、移動機構27と、これらを制御する制御手段28とを備えている。
フレーム22は、マスク1の外周縁を保持する構成となっている。また、蒸着源23は、被成膜基板10に堆積させる成膜材料で形成されている。そして、永久磁石24は、マスクチップ2の上面に成膜された磁性体膜との間で発生する引力によりマスク1及び被成膜基板10を保持する構成となっている。
【0029】
撮像手段25は、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを撮像する構成となっている。また、撮像手段25は、例えばCCD(Charge Coupled Device)で構成されており、マスク1の2つの角部に形成されたマスクマーク5aと被成膜基板10の2つの角部に形成された基板マーク10aとのそれぞれを撮像するように2箇所に設けられている。
照明手段26は、マスク1及び被成膜基板10に対して重ね合わせ方向の上方から照明光を照射する落射照明系を構成となっている。なお、被成膜基板10が透光性材料で形成されていることから、被成膜基板10に向けて照射された照明光は、被成膜基板10を透過してマスク1にも照射される。
移動機構27は、マスク1を被成膜基板10に対して移動させる構成となっている。
制御手段28は、撮像手段25による撮像結果からマスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを検出し、移動機構27によるマスク1及び被成膜基板10の位置合わせを行う構成となっている。
【0030】
このような構成の成膜装置20では、マスク1と被成膜基板10とを間隙をあけて重ね合わせた状態で、撮像手段25がマスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを検出する。ここで、マスクマーク5aは、貫通孔であって照明光を反射しないため、図7に示すように、最も暗く表示される。また、基板マーク10aは、表面が平坦面であって照明光を鏡面反射するため、最も明るく表示される。そして、アライメント基板5は、上面が粗面化されていて照明光を散乱反射するため、マスクマーク5aと基板マーク10aとの間の明度で表示される。
【0031】
制御手段28は、撮像手段25で取得した画像からマスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを検出し、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれが所定の位置関係となるように移動機構27を制御する。
このとき、アライメント基板5の上面の光沢度(60°測定)が40%であって10%以上70%以下の範囲内であるため、アライメント基板5の上面とマスクマーク5aとの間及びアライメント基板5の上面と基板マーク10aとの間それぞれのコントラストが十分に得られる。また、アライメントチップ3をマスクチップ2と共に支持基板4に貼付することで、マスクマーク5aの開口端面が被成膜基板10の基板マーク10aの表面に近接する。そのため、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれで撮像手段25による焦点深度を揃えることができる。したがって、制御手段28は、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを高い精度で検出する。
【0032】
移動機構27は、マスク1を被成膜基板10に対して移動させる。以上のようにして、マスク1と被成膜基板10との位置合わせを行う。この後、永久磁石24は、マスク1に成膜された磁性体膜を吸着することにより、マスク1及び被成膜基板10を保持する。この状態で、成膜装置20は、蒸着源23から開口部2aを介して薄膜形成材料を被成膜基板10に堆積させ、薄膜パターンを形成する。
【0033】
以上のように、本実施形態におけるマスク1の製造方法及びマスク1によれば、面方位(111)と面方位(110)とにおけるエッチングレートの違いによりアライメント基板5の上面を容易に粗面化できる。これにより、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを高い精度で検出できるマスク1を容易に製造できる。
そして、アライメント基板5の60°測定における光沢度を10%以上70%以下とすることで、検出時に取得した画像におけるアライメント基板5の上面とマスクマーク5aとの間及びアライメント基板5と基板マーク10aとの間それぞれで十分なコントラストが得られる。したがって、制御手段28は、マスクマーク5a及び基板マーク10aそれぞれを高い精度で検出し、マスク1及び被成膜基板10を精度よく位置合わせできる。
また、マスクマーク5aをアライメント基板5の面方位の影響を受けにくいドライエッチング法により形成することで、マスクマーク5aを高い形状精度で形成できる。
【0034】
[第2の実施形態]
以下、本発明におけるマスクの製造方法及びマスクの第2の実施形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明すると共に、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。ここで、図8はアライメントチップを示す断面図、図9はアライメントチップの製造工程を示す工程図、図10はマスク及び被成膜基板の位置合わせ状態を説明する説明図である。
【0035】
本実施形態におけるマスク50は、図8に示すように、アライメントチップ51を構成するアライメント基板52に凸部であるマスクマーク52aが形成されている。
アライメント基板52におけるマスクマーク52aを除く上面は、光沢度が0%より大きく15%以下(60°測定)である粗面となっている。
マスクマーク52aは、平面視で例えば正六角形となっており、上面が平坦面となっている。したがって、マスクマーク52aの表面の光沢度は、アライメント基板52の上面の光沢度よりも高くなっている。
【0036】
次に、このような構成のマスクの製造方法について説明する。まず、上述した第1の実施形態と同様に、表面の面方位が(110)であるシリコンからなるアライメント基板52の上面に熱酸化処理を施して酸化シリコン膜53を形成する(図9(a))。そして、酸化シリコン膜53をフォトリソグラフィ技術によりパターニングする(図9(b))。
続いて、アライメント基板52にマスクマーク52aを形成する。ここでは、KOHをエッチャントとしたウェットエッチングにより、酸化シリコン膜53をマスクとしてアライメント基板52の上面をエッチングする(図9(c))。このとき、アライメント基板52における酸化シリコン膜53で被覆されていない領域が粗面化される。また、アライメント基板52の上面において酸化シリコン膜53で被覆されている領域は、エッチングされずに凸部となる。これにより、凸部であるマスクマーク52aが形成される。なお、エッチャントへの浸漬時間は、例えば30分以上となっている。その後、例えば緩衝フッ酸水溶液に浸漬し、酸化シリコン膜53を除去する。
以上のようにして、図8に示すようなアライメントチップ51を製造する。その後、上述と同様にアライメントチップ51及びマスクチップ2それぞれを支持基板4に貼付する。以上のようにして、マスク50を製造する。
【0037】
以上のような構成のマスク50におけるマスクマーク52aは、上面が平坦面であって照明光を鏡面反射するため、図10に示すように、撮像手段25により取得した画像において、最も明るく表示される。同様に、基板マーク10aも、表面が平坦面であることから、マスクマーク52aと共に最も明るく表示される。そして、アライメント基板52は、上面が粗面化されているため、最も暗く表示される。このとき、アライメント基板52の上面の光沢度(60°測定)が0%より大きく15%以下の範囲内であるため、アライメント基板52の上面とマスクマーク52aとの間及びアライメント基板52の上面と基板マーク10aとの間それぞれのコントラストが十分に得られる。したがって、制御手段28は、マスクマーク52a及び基板マーク10aそれぞれを高い精度で検出する。
【0038】
以上のような構成のマスクの製造方法及びマスク50においても、上述した第1の実施形態と同様の作用、効果を奏するが、ウェットエッチング法によりアライメント基板52の粗面化と同時にマスクマーク52aを形成することで、アライメントチップ51の製造工程の簡略化が図れる。
また、アライメント基板52の60°測定における光沢度を0%より大きく15%以下とすることで、検出時に取得した画像におけるアライメント基板52の上面とマスクマーク52aとの間及びアライメント基板52と基板マーク10aとの間それぞれで十分なコントラストが得られる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1の実施形態において、アライメント基板の上面の60°測定における光沢度を10%以上70%以下としているが、位置合わせ時において貫通孔であるマスクマークや基板マークとの間で十分なコントラストが得られれば、この範囲に限られない。同様に、第2の実施形態において、アライメント基板の上面お60°測定における光沢度を0%より大きく15%以下としているが、位置合わせ時において貫通孔であるマスクマークや基板マークとの間で十分なコントラストが得られれば、この範囲に限られない。
また、第1の実施形態においてマスクマークをドライエッチング法により形成しているが、マスクマークの形状を精度よく形成できれば、他の方法により形成してもよい。
そして、第2の実施形態においてマスクマークをウェットエッチング法により粗面化と共に形成しているが、粗面化と別の工程で形成してもよい。
【0040】
また、KOHをエッチャントとしたウェットエッチング処理によりアライメント基板の一面を粗面化しているが、アライメント基板の面方位によりエッチングレートの異なるウェットエッチングができれば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)など他のエッチャントを用いてもよい。
また、アライメント基板は、結晶異方性を有するシリコンで形成されているが、面方位によりエッチングレートの異なるウェットエッチングができれば、シリコンに限らず、他の結晶異方性を有する材料であってもよく、金属などであってもよい。
そして、アライメントチップには、マスクチップのように被成膜基板への薄膜のパターニング時に用いられる開口部が形成されていてもよい。
さらに、マスクマークは、アライメント基板に形成された貫通孔や凸部に限らず、凹部など、他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるマスクを示す斜視図である。
【図2】アライメントチップを示す断面図である。
【図3】アライメントチップの製造工程を示す工程図である。
【図4】ウェットエッチング時間と光沢度との関係を示すグラフである。
【図5】被成膜基板を示す平面図である。
【図6】マスクを用いた薄膜形成装置を示す構成図である。
【図7】各マークの検出状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるアライメントチップを示す斜視図である。
【図9】アライメントチップの製造工程を示す工程図である。
【図10】各マークの検出状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1,50 マスク、2 マスクチップ、3,51 アライメントチップ、4 支持基板、5,52 アライメント基板、5a,52a マスクマーク、10 被成膜基板、10a 基板マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板からなるアライメント基板の面方位によりエッチングレートが異なるエッチャントを用いたウェットエッチングにより、該アライメント基板の一面を粗面化する工程と、
該アライメント基板に、被成膜基板との位置合わせに用いるマスクマークを形成してアライメントチップを製造する工程と、
前記被成膜基板に形成される薄膜パターンの少なくとも一部の形状に対応する開口部が形成されたマスクチップを製造する工程と、
前記アライメントチップ及び前記マスクチップを、支持基板上に固定する工程とを備えることを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項2】
前記マスクマークが、前記アライメント基板に形成された貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載のマスクの製造方法。
【請求項3】
前記マスクマークが、ドライエッチング法を用いて形成されることを特徴とする請求項2に記載のマスクの製造方法。
【請求項4】
前記マスクマークの周囲における前記アライメント基板の一面の光沢度が、60°測定において10%以上70%以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のマスクの製造方法。
【請求項5】
前記マスクマークが、前記アライメント基板に設けられて上面が平面である凸部で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスクの製造方法。
【請求項6】
前記マスクマークが、マスクを用いたウェットエッチングにより前記アライメント基板の粗面化と共に形成されることを特徴とする請求項5に記載のマスクの製造方法。
【請求項7】
前記マスクマークの周囲における前記アライメント基板の一面の光沢度が、60°測定において0%より大きく15%以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のマスクの製造方法。
【請求項8】
前記アライメント基板が、結晶異方性を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。
【請求項9】
支持基板と、該支持基板上に固定されたマスクチップ及びアライメントチップとを備え、
該アライメントチップは、被成膜基板との位置合わせに用いる貫通孔であるマスクマークが形成されると共に、該マスクマークの周囲における光沢度が60°測定において10%以上70%以下であることを特徴とするマスク。
【請求項10】
支持基板と、該支持基板上に固定されたマスクチップ及びアライメントチップとを備え、
該アライメントチップは、被成膜基板との位置合わせに用いられて上面が平面の凸部であるマスクマークが形成されると共に、該マスクマークの周囲における光沢度が60°測定において0%より大きく15%以下であることを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−76227(P2009−76227A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241908(P2007−241908)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】