説明

マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、露光用マスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法

【目的】 透光性物品における光学的な不均一性の有無を正確に検査できる透光性物品の
検査方法を提供する。
【構成】 透光性物品に200nm以下の波長を有する検査光を導入した場合に、該透光
性物品内部で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位
がある場合にこの部位から発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知す
ることにより、前記透光性物品における光学的な不均一性の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーといった非常に強
力なエネルギーを持つ光に対して透光性の性質を有する透光性材料からなる透光性物品の
内部に、前記光に対して局所的に光学特性が変化する不均一性の有無を検査する透光性物
品の検査方法、及びガラス基板の検査方法及び装置、ガラス基板の内部欠陥を検査した後
にマスクブランク用ガラス基板を製造するマスクブランク用ガラス基板の製造方法、この
マスクブランク用ガラス基板を用いるマスクブランクの製造方法、このマスクブランクを
用いる露光用マスクの製造方法、並びにこの露光用マスクを用いる半導体装置の製造方法
に関する。
【0002】
近年では、半導体デバイスに形成されるパターンの微細化により、光リソグラフィー技
術において使用される露光光はArFエキシマレーザー(露光波長193nm)、F2エ
キシマレーザー(露光波長157nm)へと短波長化が進んでいる。上記光リソグラフィ
ー技術において使用される露光用マスクや、この露光用マスクを製造するマスクブランク
にあっては、マスクブランク用透光性基板(例えば、ガラス基板)上に形成される、上述
の露光光の露光波長に対して光を遮断する遮光膜や、位相を変化させる位相シフト膜の開
発が急速に行われ、様々な膜材料が提案されている。
【0003】
また、光リソグラフィー技術において使用される露光装置(例えば、ステッパー)には
、レンズなどの光学部品が備えており、これらの光学部品は露光光に対しては、吸収の少
ない即ち、透過性の良い材料が使用されている。
【0004】
上記マスクブランク用透光性基板や、このマスクブランク用透光性基板を製造するため
の透光性物品(例えば、合成石英ガラス基板)や、露光装置に使われるレンズなどの光学
部品の内部には、光学的な不均一性(異物や気泡などの欠陥による光学特性の変化)が存
在しないことが要求されている。特許文献1には、ガラス基板に対し、He−Neレーザ
ーを入射し、ガラス基板に存在する光学的な不均一性、例えば内部欠陥(異物や気泡など
)により散乱された散乱光を検出することで、上記光学的な不均一性を検出する欠陥検出
装置及び欠陥検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−261953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような欠陥検出装置によって光学的な不均一性(例えば、内部欠陥)が存在しな
いと判定された透光性基板(例えば、合成石英ガラス基板)、マスクブランク用透光性基
板(例えば、マスクブランク用ガラス基板)から製造される露光用マスクであっても、露
光光であるArFエキシマレーザーを用いて半導体基板に露光用マスクのマスクパターン
を転写するパターン転写時に、後述の透光性基板起因による転写パターン欠陥が生じて転
写精度が低下する場合がある。また、露光装置に使用するレンズなどの光学部品において
も上述と同様に、パターン転写時に光学部品起因による転写パターン欠陥が生じて転写精
度が低下する場合がある。
【0007】
この原因は、He−Neレーザーなどの可視光レーザーを検査光としたときには散乱な
どの光学的変化が発生しなかったが、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーな
どの高エネルギーの光を露光光として実際、パターン転写を行う際には、局部的に(又は
局所的に)光学特性を変化(例えば、透過率を低下、位相差を変化)させる光学的な不均
一性(例えば、局所脈理、内容物、異質物による内部欠陥)が、透光性基板や光学部品中
に存在しているからであると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、光リソグラフィーの際に
使用される露光装置の光学部品や露光用マスクの基板などの透光性物品における、被転写
体へのパターン転写に大きな影響を与える光学的な不均一性の有無を正確に検査できる透
光性物品の検査方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、半導体基板へのパターン転写の転写精度を良好にできる半導体装
置の製造方法、この半導体装置を製造するための被転写体へのパターン転写の転写精度を
良好にできる露光用マスク及びその製造方法、この露光用マスクを製造するためのマスク
ブランク及びその製造方法、及びこのマスクブランクを製造するためのマスクブランク用
透光性基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するための手段として第1の手段は、
光リソグラフィーに使用され、透光性材料からなる透光性物品の内部に、露光光に対し
て局部的に光学特性が変化する不均一性の有無を検査する透光性物品の検査方法において
、前記透光性物品に200nm以下の波長の検査光を導入した場合に、該透光性物品内部
で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位がある場合
にこの部位から発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知することによ
り、前記透光性物品における光学的な不均一性の有無を検査することを特徴とする透光性
物品の検査方法ある。
【0011】
第2の手段は、
第1の手段にかかる透光性物品の検査方法において、前記検査光の波長よりも長い光は
、該光の波長が200nm超600nm以下であることを特徴とする透光性物品の検査方
法である。
【0012】
第3の手段は、
第1又は第2の手段にかかる透光性物品の検査方法において、前記透光性物品は、光リ
ソグラフィーの際に使用される露光装置の光学部品、又は光リソグラフィーの際に使用さ
れる露光用マスクの基板の何れかであることを特徴とする透光性物品の検査方法である。
【0013】
第4の手段は、
第3の手段にかかる透光性物品の検査方法において、前記光学部品、前記露光用マスク
の基板は、合成石英ガラスからなることを特徴とする透光性物品の検査方法である。
【0014】
第5の手段は、
第1乃至第4のいずれかの手段にかかる透光性物品の検査方法において、請求項5に記載
の発明に係る透光性物品の検査方法は、請求項1乃至4の何れか一に記載の発明において
、前記透光性物品に前記検査光を導入する際に、該検査光の導入により前記透光性物品の
表面にダメージを生じさせる原因物質を、該透光性物品の周辺の雰囲気から排除した状態
で、前記検査光を該透光性物品に導入することを特徴とする透光性物品の検査方法である

【0015】
第6の手段は、
第1乃至第5のいずれかの手段にかかる透光性物品の検査方法において、前記検査光は、
パルス光であり、1パルスの単位面積当たりのエネルギーが、10mJ/cm以上50
mJ/cm以下であることを特徴とする透光性物品の検査方法である。
【0016】
第7の手段は、
200nm以下の波長の検査光を導入する表面を有するマスクブランク用透光性基板を準
備する準備工程と、前記表面の一方から前記検査光を導入した場合に、前記透光性基板内
部で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位がある場
合にこの部位から発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知することに
より、前記透光性基板における光学的な不均一性の有無を検査する検査工程と、前記不均
一性の有無により、局所又は局部的に光学特性が変化することによる転写パターン欠陥が
発生しない透光性基板であるか否かを判別する判別工程と、を有することを特徴とするマ
スクブランク用透光性基板の製造方法ものである。
【0017】
第8の手段は、
第7の手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法において、前記判別工程の
後、前記透光性基板の主表面を精密研磨して、マスクブランク用透光性基板を得ることを
特徴とするマスクブランク用透光性基板の製造方法である。
【0018】
第9の手段は、
第7又は第8の手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法において、前記検
査光の波長よりも長い光は、該光の波長が200nm超600nm以下であることを特徴
とするマスクブランク用透光性基板の製造方法である。
【0019】
第10の手段は、
第7乃至第9のいずれかの手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法におい
て、前記透光性基板に前記検査光を導入する際に、該検査光の導入により前記透光性基板
の表面にダメージを生じさせる原因物質を、該ガラス基板の周辺の雰囲気から削除した状
態で、前記検査光を該透光性基板に導入することを特徴とするマスクブランク用透光性基
板の製造方法である。
【0020】
第11の手段は、
第7乃至第10のいずれかの手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法にお
いて、前記検査光を導入する前記表面は、マスクパターンとなる薄膜が形成される透光性
基板の主表面と直交する側面であることを特徴とするマスクブランク用透光性基板の製造
方法である。
【0021】
第12の手段は、
第第11の手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法において、前記検査工
程において、前記側面の幅よりも大きなビーム形状を有する検査光を該表面に導入するこ
とを特徴とするマスクブランク用透光性基板の製造方法である。
【0022】
第13の手段は、
第7乃至第12のいずれかの手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法にお
いて、前記検査光は、パル光であり、1パルスの単位面積当たりのエネルギーが、10m
J/cm以上50mJ/cm以下であることを特徴とするマスクブランク用透光性基
板の製造方法である。
【0023】
第14の手段は、
第7乃至第13のいずれかの手段にかかるマスクブランク用透光性基板の製造方法によ
って得られたマスクブランク用透光性基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形
成してマスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造法である。
【0024】
第15の手段は、
第14の手段にかかるマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブラン
ク用透光性基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特
徴とする露光用マスクの製造方法である。
【0025】
第16の手段は、
第15の手段にかかる露光用マスクの製造方法によって得られた露光用マスクを使用し
、露光用マスクに形成されているマスクパターンを半導体基板上に形成されているレジス
ト膜に転写して半導体装置を製造することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0026】
また、上記課題を解決するための具体的手段としては、以下の構成を採用することがで
きる。
【0027】
(構成1−1)
ガラス基板の表面の一方から露光波長の光を導入し、この導入された露光波長の光によ
って上記ガラス基板の内部欠陥が発する、露光波長よりも長い波長の光を上記表面の他方
から受光し、この受光した光の光量に基づき上記ガラス基板の上記内部欠陥を検出するこ
とを特徴とするガラス基板の欠陥検査方法。
【0028】
(構成1−2)
上記ガラス基板に導入される光の波長が、200nm以下であることを特徴とする構成
1−1に記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【0029】
(構成1−3)
ガラス基板の表面の一方から露光波長の光を導入する光導入手段と、この光導入手段に
より上記ガラス基板内に導入された露光波長の光によって上記ガラス基板の内部欠陥が発
する、露光波長よりも長い波長の光を上記表面の他方から受光する受光手段と、この受光
手段により受光した光の光量に基づき、上記ガラス基板の上記内部欠陥を検出する検出手
段とを有することを特徴とするガラス基板の欠陥検査装置。
【0030】
(構成1−4)
上記光導入手段がガラス基板に導入する光の波長が、200nm以下であることを特徴
とする構成1−3に記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【0031】
(構成1−5)
露光波長の光を導入する表面を有する合成石英ガラス基板を準備する準備工程と、上記
表面の一方から露光波長の光を導入し、当該ガラス基板の内部欠陥が発する露光波長より
も長い波長の光を上記表面の他方から受光し、この受光した光の光量に基づき上記内部欠
陥を検出する検出工程とを有し、上記検出工程で内部欠陥が検出されない上記合成石英ガ
ラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板を製造することを特徴とするマスクブラン
ク用ガラス基板の製造方法。
【0032】
(構成1−6)
上記合成石英ガラス基板に導入される光の波長が、200nm以下であることを特徴と
する構成1−5に記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【0033】
(構成1−7)
上記検出工程の後、合成石英ガラス基板の主表面を精密研磨して、マスクブランク用ガ
ラス基板を得ることを特徴とする構成1−5または構成1−6に記載のマスクブランク用
ガラス基板の製造方法。
【0034】
(構成1−8)
構成1−5乃至構成1−7のいずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法
によって得られたマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜
を形成してマスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0035】
(構成1−9)
構成1−8に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク
用ガラス基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴
とする露光用マスクの製造方法。
【0036】
上記構成1−1から構成1−4のいずれかに記載の発明によれば、ガラス基板の表面の
一方から露光波長の光を導入し、この導入された露光波長の光によって上記ガラス基板の
内部欠陥が発する、露光波長よりも長い波長の光を上記表面の他方から受光し、この受光
した光の光量に基づき、ガラス基板の内部欠陥を検出することから、露光波長の光をガラ
ス基板の内部欠陥の検査に用いることによって、パターン転写の際に転写パターン欠陥と
なる内部欠陥を良好に検出できる。
【0037】
ここで、ガラス基板がマスクブランク用ガラス基板を製造するためのものである場合に
は、このマスクブランク用ガラス基板及びマスクブランクを経て製造される露光用マスク
のガラス基板に内部欠陥が存在しないことから、この露光用マスク及び露光光を用いて当
該露光用マスクのマスクパターンを被転写体に転写するパターン転写の際に、この露光用
マスクには、ガラス基板の内部欠陥により局所的に光学特性が変化(例えば透過率が低下
)する領域が存在しないので、パターン転写に悪影響を及ぼして被転写体に転写パターン
欠陥が生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0038】
上記構成1−5または構成1−6に記載の発明によれば、合成石英ガラス基板の一方の
表面から露光波長の光を導入し、当該ガラス基板の内部欠陥が発する露光波長よりも長い
波長の光を上記表面の他方から受光し、この受光した光の光量に基づき上記内部欠陥を検
出し、内部欠陥が検出されない合成石英ガラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板
を製造することから、このマスクブランク用ガラス基板からマスクブランクを経て製造さ
れる露光用マスクのガラス基板に内部欠陥が存在しない。従って、この露光用マスクを用
いて被転写体に当該露光用マスクのマスクパターンを転写するパターン転写の際に、この
露光用マスクには、ガラス基板の内部欠陥により局所的に光学特性が変化(例えば透過率
が低下)する領域が存在しないので、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パターン欠陥
が生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0039】
上記構成1−7に記載の発明によれば、マスクブランク用ガラス基板の製造工程の、主
表面を精密研磨する前の早い段階で合成石英ガラス基板の内部欠陥を検出することから、
内部欠陥の存在しない合成石英ガラス基板に対してのみ主表面を精密研磨し、内部欠陥の
存在する合成石英ガラス基板について主表面を精密研磨する無駄を省くことができる。
【0040】
上記構成1−8または構成1−9に記載の発明によれば、構成1−5乃至構成1−7の
いずれか記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク
用ガラス基板を用いてマスクブランクを製造し、このマスクブランクにおける薄膜をパタ
ーニングして露光用マスクを製造することから、この露光用マスクを用いて被転写体に当
該露光用マスクのマスクパターンを転写するパターン転写時に、この露光用マスクには、
内部欠陥が存在しない合成石英ガラス基板が用いられているので、局所的に光学特性が変
化(例えば透過率が低下)する領域が存在せず、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パ
ターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0041】
(構成2−1)
波長が200nm以下の短波長光を導入する表面を有する合成石英ガラス基板を準備す
る準備工程と、この合成石英ガラス基板の上記表面から上記短波長光を導入し、当該ガラ
ス基板の内部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を上記表面の他方か
ら受光し、この受光した長波長光に基づき上記内部欠陥を検出する検出工程とを有し、上
記検出工程で上記内部欠陥が検出されない上記合成石英ガラス基板を用いてマスクブラン
ク用ガラス基板を製造するマスクブランク用ガラス基板の製造方法であって、上記検出工
程において、上記短波長光を上記合成石英ガラス基板に導入する際に、この短波長光の導
入により当該ガラス基板の上記表面にダメージを生じさせる原因物質を、当該ガラス基板
の周辺の雰囲気から排除した状態で、上記短波長光を当該ガラス基板に導入することを特
徴とするマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【0042】
(構成2−2)
上記合成石英ガラス基板の周辺の雰囲気から原因物質を排除した状態は、清浄な空気が
循環した雰囲気であることを特徴とする構成2−1に記載のマスクブランク用ガラス基板
の製造方法。
【0043】
(構成2−3)
上記清浄な空気が循環した雰囲気は、清浄度がISOクラス5より高い清浄度の雰囲気
であることを特徴とする構成2−1または構成2−2に記載のマスクブランク用ガラス基
板の製造方法。
【0044】
(構成2−4)
上記清浄な空気が循環した雰囲気は、空気がケミカルフィルタを通過することに生成さ
れることを特徴とする構成2−1乃至構成2−3のいずれかに記載のマスクブランク用ガ
ラス基板の製造方法。
【0045】
(構成2−5)
上記短波長光が導入される合成石英ガラス基板の表面は、最大高さ(Rmax)が0.
5μm以下であることを特徴とする構成2−1乃至構成2−4のいずれかに記載のマスク
ブランク用ガラス基板の製造方法。
【0046】
(構成2−6)
構成2−1乃至構成2−5いずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法に
よって得られたマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を
形成してマスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0047】
(構成2−7)
構成2−6に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク
用ガラス基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴
とする露光用マスクの製造方法。
【0048】
上記構成2−1乃至構成2−5のいずれかの発明によれば、合成石英ガラス基板に波長
が200nm以下の短波長光を導入して、この短波長光を合成石英ガラス基板(マスクブ
ランク用ガラス基板)の内部欠陥の検査に用いることから、このガラス基板から製造され
る露光用マスクと露光光を用いたパターン転写の際に転写パターン欠陥となる内部欠陥を
良好に検出できる。
【0049】
検査用の光である短波長光を合成石英ガラス基板に導入する際に、この短波長光の導入
により当該ガラス基板の表面にダメージを生じさせる原因物質(例えば大気浮遊物)等を
、このガラス基板の周辺の雰囲気から排除した状態で、短波長光を当該ガラス基板に導入
することから、この合成石英ガラス基板の表面に付着した付着物や堆積物が短波長光を吸
収して、当該表面を局所的に高温状態とすることで生ずる当該表面のダメージを防止する
ことができる。特に、検査用の光を導入する合成石英ガラス基板の表面を、最大高さ(R
max)が0.5μm以下になるようにすることにより、ダメージを生じさせる原因物質
が付着しにくくなるので、上記表面のダメージを更に防止することができる。
【0050】
上記構成2−6または構成2−7によれば、構成2−1乃至構成2−5のいずれか記載
のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク用ガラス基板
を用いてマスクブランクを製造し、このマスクブランクにおける薄膜をパターニングして
露光用マスクを製造する。従って、この露光用マスクを用いて被転写体に当該露光用マス
クのマスクパターンを転写するパターン転写時に、この露光用マスクには、内部欠陥が存
在せず、且つ表面にダメージが存在しない合成石英ガラス基板が用いられているので、上
記内部欠陥または上記ダメージに起因して局所的に光学特性が変化(例えば透過率が低下
)する領域が存在せず、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パターン欠陥が生ずること
がなく、転写精度を向上させることができる。
【0051】
(構成3−1)
波長が200nm以下の短波長光を導入する一端面を含む表面を有する合成石英ガラス
基板を準備する準備工程と、上記一端面から上記短波長光を導入し、当該ガラス基板の内
部欠陥が発する、上記短波長光よりも長い波長の長波長光を上記表面の他方から受光し、
この受光した長波長光に基づき上記内部欠陥を検出する検出工程とを有し、上記検出工程
で内部欠陥が検出されない上記合成石英ガラス基板を用いてマスクブランク用ガラス基板
を製造するマスクブランク用ガラス基板の製造方法であって、上記検出工程において、上
記一端面の幅よりも大きなビーム形状を有する上記短波長光を、当該一端面に導入するこ
とを特徴とするマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【0052】
(構成3−2)
上記端面は、マスクパターンとなる薄膜が形成されるガラス基板の主表面と直交する側
面、及び当該側面と上記主表面との間の面取面であることを特徴とする構成3−1に記載
のマスクブランク用ガラス基板の製造方法。
【0053】
(構成3−3)
上記短波長光の単位面積当たりのエネルギー(1パルス当たり)は、10mJ/cm2以
上50mJ/cm2以下であることを特徴とする構成3−1または構成3−2に記載のマ
スクブランク用ガラス基板の製造方法。
【0054】
(構成3−4)
上記短波長光を、合成石英ガラス基板の一端面において、当該一端面の長手方向に走査
することを特徴とする構成3−1乃至構成3−3のいずれかに記載のマスクブランク用ガ
ラス基板の製造方法。
【0055】
(構成3−5)
構成3−1乃至構成3−4いずれかに記載のマスクブランク用ガラス基板の製造方法に
よって得られたマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を
形成してマスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0056】
(構成3−6)
構成3−5に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク
用ガラス基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴
とする露光用マスクの製造方法。
【0057】
上記構成3−1または構成3−2によれば、合成石英ガラス基板に波長が200nm以
下の短波長光を導入して、この短波長光を合成石英ガラス基板(マスクブランク用ガラス
基板)の内部欠陥の検査に用いることから、上記ガラス基板から製造される露光用マスク
及び露光光を用いたパターン転写の際に転写パターン欠陥となる内部欠陥を良好に検出で
きる。
【0058】
また、短波長光のビーム形状が、この短波長光が導入される合成石英ガラス基板の一端
面の幅よりも大きく設定されたことから、一端面における単位面積当たりの短波長光のエ
ネルギー(1パルス当たり)が強くなり過ぎないので、この一端面においてプラズマの発生
を回避できる。この結果、一端面に付着した汚れや異物等がプラズマにより当該一端面に
ダメージを与える事態を防止できる。
【0059】
上記構成3−3によれば、合成石英ガラス基板の一端面に導入される短波長光の単位面
積当たりのエネルギー(1パルス当たり)が、10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下で
あることから、この短波長光による一端面でのプラズマの発生を回避できると共に、当該
短波長光の導入により内部欠陥が発する長波長光の強度も充分確保されるので、欠陥検出
精度の信頼性を保持できる。
【0060】
上記構成3−4によれば、短波長光を、合成石英ガラス基板の一端面において当該一端
面の長手方向に走査することから、この一端面に接する両主表面の全域にも短波長光が照
射されることになる。このため、これらの両主表面に付着したパーティクルや汚染物を上
記短波長光により除去することができる。
【0061】
上記構成3−5または構成3−6によれば、構成3−1乃至構成3−4のいずれか記載
のマスクブランク用ガラス基板の製造方法によって得られたマスクブランク用ガラス基板
を用いてマスクブランクを製造し、このマスクブランクにおける薄膜をパターニングして
露光用マスクを製造する。従って、この露光用マスクを用いて被転写体に当該露光用マス
クのマスクパターンを転写するパターン転写時に、この露光用マスクには、内部欠陥が存
在しない合成石英ガラス基板が用いられているので、上記内部欠陥に起因して局所的に光
学特性が変化(例えば透過率が低下)する領域が存在せず、パターン転写に悪影響を及ぼ
して転写パターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0062】
第1乃至第4のいずれかの手段によれば、光リソグラフィーに使用され、透光性材料か
らなる透光性物品の内部に、露光光に対して局所又は局部的に光学特性が変化する不均一
性の有無を検査する透光性物品の検査方法において、
前記透光性物品に200nm以下の波長の検査光を導入した場合に、該透光性物品内部
で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位がある場合
にこの部位から発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知することによ
り、前記透光性物品における光学的な不均一性の有無を検査することによって、被転写体
へのパターン転写に大きな影響を与える内部欠陥の有無を正確に検査することができる。
【0063】
ここで、上記透光性物品に200nm以下の波長の光を導入した場合に、該透光性物品
内部で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位(例え
ば、200nm以下の露光波長において、転写パターン欠陥となる透過率の低下を引き起
こす欠陥等)がある場合に、この部位から前記検査光の波長よりも長い光が発せられると
いう現象が起こることは、本願発明者がはじめて発見したものである。上記解決手段は、
この発見された現象に基づいている。この現象は、200nm以下の波長の光を、例えば
、合成石英ガラス等の内部に導入した場合、この石英ガラス内部に後述する局所脈理その
他の欠陥等があると、その欠陥等の部位からその欠陥等の種類に応じた蛍光その他のさま
ざまな光が発せられるといった現象である。そして、特に、この発せられる光は、波長が
200nmを超えるが、600nm以下のものを多く含むものであった。なお、上述の通
り、上記欠陥等は、上記蛍光等を発すると同時に、この透光性物品が露光用マスクのガラ
ス基板である場合にはおいては、200nm以下の露光波長において転写パターン欠陥と
なる透過率の低下を引き起こすものである。また、この発せられる光は、欠陥等の大きさ
が非常に微細であっても、又逆にかなり大きなものであっても、充分に感知可能なもので
あることがわかった。
【0064】
上記手段による検査を通過した透光性物品が、光リソグラフィーの際に使われる露光装
置の光学部品や、光リソグラフィーの際に使われる露光用マスクの基板(マスクブランク
用透光性基板)を製造するためのものである場合には、この露光用マスクの基板及びマス
クブランクを経て製造される露光用マスクや、露光装置の光学部品には局所又は局部的に
光学的に不均一な領域が存在しないことから、この露光用マスクや光学部品と露光光を用
いて当該露光用マスクのマスクパターンを被転写体に転写するパターン転写の際に、この
露光用マスクや光学部品には、光学的に不均一性により局所又は局部的に光学特性が変化
(例えば透過率が低下)する領域が存在しないので、パターン転写に悪影響を及ぼして被
転写体に転写パターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0065】
第5の手段によれば、透光性物品の表面のダメージを防止しつつ、被転写体へのパター
ン転写に大きな影響を与える光学的な不均一性の有無を正確に検査することができる。
【0066】
検査光を透光性物品に導入する際に、検査光の導入により当該透光性物品の表面にダメ
ージを生じさせる原因物質(例えば大気浮遊物)等を、この透光性物品の周辺の雰囲気か
ら排除した状態で、検査光を当該透光性物品に導入することから、この透光性物品の表面
に付着した付着物や堆積物が検査光を吸収して、当該表面を局所又は局部的に高温状態と
することで生ずる当該表面のダメージを防止することができる。
【0067】
第5の手段によれば、透光性物品の表面に導入される検査光の単位面積当たりのエネル
ギーが、1パルス当たり10mJ/cm以上50mJ/cm以下であることから、こ
の検査光による透光性物品表面でのプラズマの発生を回避できると共に、当該検査光の導
入により光学的な不均一性が発する検査光よりも長い波長の光の強度も充分確保されるの
で、不均一性の検出精度を高く維持できる。
【0068】
請求項7又は8の発明によれば、200nm以下の波長の検査光を導入する表面を有す
るマスクブランク用透光性基板を準備する準備工程と、前記表面の一方から前記検査光を
導入し、前記透光性基板内部で前記検査光が伝播する光路において、局所又は局部的に発
する前記波長よりも長い光を感知することにより、前記透光性基板における光学的な不均
一性の有無を検査する検査工程と、前記不均一性の有無により、局所又は局部的に光学特
性が変化することによる転写パターン欠陥が発生しない透光性基板であるか否かを判別す
る判別工程と、を有する工程を経てマスクブランク用透光性基板を製造することから、こ
のマスクブランク用透光性基板からマスクブランクを経て製造される露光用マスクの透光
性基板には、光学的な不均一性により局所又は局部的に光学特性が変化(例えば透過率が
低下)する領域が存在しないので、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パターン欠陥が
生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0069】
第9の手段によれば、マスクブランク用透光性基板の製造工程の、主表面を精密研磨す
る前の早い段階で透光性基板の光学的な不均一性を検出することから、光学的な不均一性
の存在しない透光性基板に対してのみ主表面を精密研磨し、光学的な不均一性の存在する
透光性基板について主表面を精密研磨する無駄を省くことができる。
【0070】
第10又は第11の手段によれば、被転写体へのパターン転写に大きな影響を与える光
学的な不均一性のないマスクブランク用透光性基板を、検査光の導入によるマスクブラン
ク用透光性基板の表面のダメージなく得ることができる。
【0071】
第12の手段によれば、上記第10又は第11の手段によって得られる効果に加え、マ
スクブランク用透光性基板の主表面に付着している異物や汚染物を除去する効果がある。
【0072】
第13の手段によれば、被転写体へのパターン転写に大きな影響を与える光学的な不均
一性のないマスクブランク用透光性基板を、この検査光によるマスクブランク用透光性基
板表面でのプラズマの発生によるダメージなく得ることができる。
【0073】
第14乃至第16の手段によれば、第7乃至第13の手段の何れかの手段にかかるマス
クブランク用透光性基板の製造方法によって得られたマスクブランク用透光性基板を用い
てマスクブランクを製造し、このマスクブランクにおける薄膜をパターニングして露光用
マスクを製造し、この露光用マスクを用いて半導体装置を製造する。従って、この露光用
マスクを用いて被転写体(半導体基板)に当該露光用マスクのマスクパターンを転写する
パターン転写時に、この露光用マスクには、光学的な不均一性が存在しないマスクブラン
ク用透光性基板が用いられているので、上記光学的な不均一性に起因して局部的に光学特
性が変化(例えば透過率が低下)する領域が存在せず、パターン転写に悪影響を及ぼして
転写パターン欠陥が生ずることがなく、転写精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び露光用マスクの製造方法における一実施の形態を示す製造工程図である。
【図2】本発明に係るガラス基板の欠陥検査装置における一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図2のコンピュータが画像処理した、受光した光の強度分布を示すグラフである。
【図4】図2のレーザー照射装置から導入されるArFエキシマレーザー光と合成石英ガラス基板とを示し、(A)が正面図、(B)が側面図である。
【図5】図2の欠陥検査装置の全体構成を示す概略正面図である。
【図6】本発明に係るマスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び露光用マスクの製造方法における他の実施の形態を示す製造工程図である。
【図7】本発明に係るガラス基板の欠陥検査装置における他の実施の形態を示す斜視図である。
【図8】図1のマスクブランクの製造工程において用いられるスパッタリング装置を示す概略側面図である。
【図9】図8のスパッタリングターゲットとマスクブランク用ガラス基板との位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、透光性物品として、マスクブランク用透光性基板、より具体的にはマスクブラン
ク用ガラス基板を例にとり、マスクブランク用ガラス基板の製造方法、マスクブランクの
製造方法、露光用マスクの製造方法について最良の形態を、図面に基づき説明する。尚、
以下、露光光及び検査光を、露光波長及び検査光波長が200nm以下のArFエキシマ
レーザー光(波長:193nm、パルスレーザー)として説明する。
〔A〕マスクブランク用ガラス基板の製造方法
特開平8―31723号公報や特開2003―81654号公報に記載された製造方法
により作製された合成石英ガラスインゴットから、約152mm×約152mm×約6.
5mmや、約152.4mm×約152.4mm×約6.85mmに切り出して得られた
合成石英ガラス板1(図1(a))に面取り加工を施し、次に、この合成石英ガラス板1
の表面である主表面5及び6と対向する端面2及び3(端面は、前記主表面5及び6と直
交する側面と、前記主表面と前記側面との間に形成された面取り面(不図示)からなる)
とを、露光波長の光でもある検査用の光(ArFエキシマレーザー光)を導入できる程度
に鏡面になるように研磨して合成石英ガラス基板4を準備する(図1(b))。この準備
工程においては、合成石英ガラス基板4における主表面5及び6の表面粗さRa(算術平
均粗さ)は約0.5nm以下であり、端面2、3(側面及び面取り面)の表面粗さRa(
算術平均粗さ)は約0.03μm以下とする。
【0076】
次に、図2に示すガラス基板の欠陥検査装置20に合成石英ガラス基板4を装着し、A
rFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の一方の端面2から導入し、この合成石
英ガラス基板4中に存在する光学的な不均一性である内部欠陥16が発するArFエキシ
マレーザー光よりも長い波長の光(蛍光)15を、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16
以外の領域が発するArFエキシマレーザー光の波長よりも長い波長の光(蛍光)17と
共に、この合成石英ガラス基板4の一方の主表面5から受光し、この受光した光15及び
17の光量(強度)の相違に基づき、上記内部欠陥16を検出する検査工程を実施する。
【0077】
ここで、合成石英ガラス基板4に存在する内部欠陥16のうち、露光波長が200nm
超の露光光源(例えば、KrFエキシマレーザー(露光波長:248nm))の場合には問題
とならないが、ArFエキシマレーザーのように露光波長が200nm以下の露光光源の
場合に問題となる内部欠陥16として局所脈理、内容物、異質物等がある。これらの内部
欠陥16は、合成石英ガラス基板4からマスクブランク用ガラス基板7及びマスクブラン
ク9を経て製造された露光用マスク14と、露光波長が200nm以下の上記露光光とを
用いて、当該露光用マスク14のマスクパターンを被転写体に転写するパターン転写時に
、いずれも局所又は局部的な光学特性の変化(例えば透過率の低下や位相差の変化)を生
じさせ、パターン転写に悪影響を及ぼして転写精度を低下させるものとなる。そして最終
的には、上記内部欠陥16が原因で、被転写体(例えば、半導体装置)の転写パターン欠
陥(半導体装置においては、回路パターン欠陥)となる。
【0078】
上記「局所脈理」は、合成石英ガラスの合成時に金属元素が合成石英ガラス中に微量に
混入された領域である。露光用マスク14のマスクブランク用ガラス基板7に当該局所脈
理が存在すると、パターン転写時に約20〜40%の透過率低下が生じ、転写精度を低下
させ、最終的には転写パターン欠陥となる。また、上記「内容物」は、金属元素が合成石
英ガラス中に、局所脈理の場合よりも多く混入された領域である。露光用マスク14のマ
スクブランク用ガラス基板7に当該内容物が存在すると、パターン転写時に約40〜60
%の透過率低下が生じ、転写精度を低下させ、最終的には転写パターン欠陥となる。更に
、「異質物」は、合成石英ガラス中に酸素が過剰に混入された酸素過剰領域であり、高エ
ネルギーの光が照射された後は回復しない。露光用マスク14のマスクブランク用ガラス
基板7に当該異質物が存在すると、パターン転写時に約5〜15%の透過率の低下が生じ
、転写精度を低下させ、最終的には転写パターン欠陥となる。パターン転写の際、転写パ
ターン欠陥となる局部的な光学的な不均一性である内部欠陥16は、上記「局所脈理」、
「内容物」、「異質物」に限られるものではない。検査光や露光光である200nm以下
の波長を有する光をマスクブランク用ガラス基板に導入したとき、基板内部で局所又は局
部的に発する蛍光による損出が8%/cmを超える光学的な不均一性を、内部欠陥16と
するとよい。つまり、マスクブランク用ガラス基板7内部の光の損失が8%/cm以下で
あるマスクブランク用ガラス基板7を上記検査工程で選定すると良い。特に、位相シフト
マスク用に使われるマスクブランク用ガラス基板の場合は、マスクブランク用ガラス基板
7内部の光の損失が3%以下であるものを上記検査工程で選定すると良い。
【0079】
上記転写パターン欠陥となる局所又は局部的な光学特性の変化を引き起こす内部欠陥1
6は、マスクブランク用ガラス基板7にArFエキシマレーザーを導入したときには、A
rFエキシマレーザー光の波長よりも長い波長の光(蛍光)15を発することとなる。転
写パターン欠陥となる内部欠陥16が発する蛍光15の波長としては、200nm超60
0nm以下であり、この蛍光15の色としては、紫(波長400〜435nm)、青(波
長435〜480nm)、緑青(480〜490nm)、青緑(490〜500nm)、
緑(500〜560nm)、黄緑(500〜580nm)、黄(580〜595nm)が
挙げられる。これらの蛍光による内部欠陥16の特定は目視による光15と光17の色の
違いや、分光器による蛍光の分光特性の違い及び/又は光量の違いを検出すること等で行
うことができる。
【0080】
前述の検査工程を実施する上記ガラス基板の欠陥検査装置20は、上述の内部欠陥16
(パターン転写時に局部的な光学特性の変化を生じさせる局所脈理、内容物、異質物等)
を感知または検出するものである。このガラス基板の欠陥検査装置20は、図2に示すよ
うに、露光波長の光(つまり、露光波長と同一波長の光)であるArFエキシマレーザー
光を合成石英ガラス基板4の端面2から導入する光導入手段としてのレーザー照射装置2
1と、合成石英ガラス基板4を載置し、レーザー照射装置21から発せられるレーザー光
に対して合成石英ガラス基板4をX方向、Y方向、Z方向にそれぞれ移動させるXYZス
テージ22と、このXYZステージ22に載置された合成石英ガラス基板4の主表面5側
に設置され、CCD素子とこのCCD素子の検出範囲を広げるためのレンズ(ともに不図
示)とを備え、合成石英ガラス基板4の幅方向(つまり、レーザー照射装置21から照射
されるレーザー光の照射方向)全域に渡って検出視野24を有する、受光手段としてのC
CDカメラ(ラインセンサカメラ)23と、このCCDカメラ23にUSBケーブル26
を用いて接続された検出手段としてのコンピュータ27とを有して構成される。
【0081】
レーザー照射装置21は、XYZステージ22が合成石英ガラス基板4をY方向に移動
させている間に、ArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端面2におけるY
方向(つまり端面2の長手方向)の各位置から順次導入する。このレーザー照射装置21
は、鏡面研磨された端面2に、例えば端面2の幅よりも大きいビーム形状とし、ビーム形
状が7.0mm×4.0mm、1パルス当たりのエネルギーが6mJ、単位面積あたりの
エネルギーが21.4mJ/cm2、周波数が50HzのArFエキシマレーザー光を発
するのものを使用することができる。また、CCDカメラ23は、合成石英ガラス基板4
の端面2におけるY方向の各位置へ入射されたArFエキシマレーザー光(波長λ1)に
よって合成石英ガラス基板4が発する、波長λ1によりも長い波長の光15及び17を、
合成石英ガラス基板4のY方向の各位置毎に、合成石英ガラス基板4の主表面5側から受
光して撮影する。本実施の形態では、CCDカメラ23はモノクロカメラであり、光15
及び17の明暗を受光して撮影する。
【0082】
コンピュータ27は、CCDカメラ23からの画像を入力して、合成石英ガラス基板4
のY方向の各位置毎に画像処理し、この合成石英基板4のY方向の各位置について、CC
Dカメラ23が受光する光15及び17の光量(強度)を、合成石英ガラス基板4のX方
向位置との関係で解析する。つまり、コンピュータ27は、光15及び17の光量が所定
閾値以上の局所的な光量を有する場合に、その所定閾値以上の局部的な光量の光15を内
部欠陥16が発したと判断して、この内部欠陥16の位置(合成石英ガラス基板4におけ
るX方向及びY方向の位置)と共に、内部欠陥16が発する局部的な光量の光15の形状
などから内部欠陥16の種類(局所脈理、内容物、異質物)を特定して検出する。
【0083】
例えば、合成石英ガラス基板4に内部欠陥16として局所脈理または内容物が存在する
場合には、レーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光が合成石英ガラス基板
4に導入されることによって、上記局所脈理または内容物が図3(A)に示すように、所
定閾値(1000counts)以上の局所的な光量の光15を発し、合成石英ガラス基板4の
局所脈理または内容物以外の領域が光17を発する。コンピュータ27は、CCDカメラ
23が受光した光15及び17を画像処理して解析することで、所定閾値以上の局部的な
光量の光15の形状から内部欠陥16を局所脈理または異質物と判断し、且つその所定閾
値以上の局所的な光量の光15が発する位置に局所脈理または内容物が存在するとして、
その局所脈理または内容物をその位置と共に検出する。ここで、図3(A)の場合、横軸
は合成石英ガラス基板4のX方向位置を、縦軸は光15及び17の光量(強度)をそれぞ
れ示す。
【0084】
また、合成石英ガラス基板4に内部欠陥16として異質物が存在する場合には、レーザ
ー照射装置21からArFエキシマレーザー光が合成石英ガラス基板4に導入されること
によって、上記異質物が図3(B)に示すように、所定の範囲(例えば50mm)に所定
閾値(1000counts)以上の局部的な光量の光15を発し、合成石英ガラス基板4の異
質物以外の領域が光17を発する。コンピュータ27は、CCDカメラ23が受光した光
15及び17を画像処理して解析することで、所定閾値以上の局部的な光量の光15の形
状から内部欠陥16を異質物と判断し、且つその所定閾値以上の局部的な光量の光15が
発生する位置に当該異質物が存在するとして、この異質物をその位置と共に検出する。こ
こで、図3(B)の場合も、横軸は合成石英ガラス基板4のX方向位置を、縦軸は光15
及び17の光量(強度)をそれぞれ示す。
【0085】
上記ガラス基板の欠陥検査装置20によって内部欠陥16が検出されない合成石英ガラ
ス基板4に対し、その主表面5、6を所望の表面粗さになるように精密研磨し、洗浄処理
を実施してマスクブランク用ガラス基板7を得る(図1(c))。このときの主表面5、
6の表面粗さは、自乗平均平方根粗さ(RMS)で0.2nm以下が好ましい。
【0086】
ところで、上記検査工程において、レーザー照射装置21からArFエキシマレーザー
光25を合成石英ガラス基板4の端面2へ導入する際には、このArFエキシマレーザー
光25の導入により合成石英ガラス基板4の表面(特に主表面5及び6)にダメージを生
じさせる原因物質を、当該ガラス基板4の周辺の雰囲気から排除した状態とすると良い。
【0087】
つまり、図4に示すように、内部欠陥検査装置20のレーザー照射装置21、XYZス
テージ22及びCCDカメラ23、並びに上記XYZステージ22に載置された被検査体
としての合成石英ガラス基板4は、クリーンルーム41の内部空間Aに収容される。この
クリーンルーム41の一方側に、ファン43及びフィルタ(例えば活性炭を使用したケミ
カルフィルタ44)を備えたフィルタ室42が形成されている。
【0088】
ファン43は、フィルタ室42の底部に設置される。また、ケミカルフィルタ44は、
フィルタ室42とクリーンルーム41の内部空間Aとを区画する隔壁45の上下方向略中
央位置に配設される。ファン43からケミカルフィルタ44を通過した空気は、隔壁45
に対向する例えば格子形状の対向壁46を通過して、クリーンルーム41の底部に形成さ
れた空気流通路47を通りフィルタ室42に戻されて循環される。空気がケミカルフィル
タ44を通過することにより、化学的汚染物質などのような、前述のダメージを生じさせ
る原因物質が除去されて、クリーンルーム41の内部空間Aは、清浄な空気が循環された
雰囲気となる。
【0089】
このように清浄な空気が循環された雰囲気となるクリーンルーム41の内部空間Aは、
ISOクラス5より清浄度が高い雰囲気、好ましくはISOクラス4より清浄度が高い雰
囲気、更に好ましくはISOクラス3より清浄度が高い雰囲気である。尚、上記清浄度が
、ISO 14644-1:1999(Cleanrooms and associated controlled enviornm
ents-Part1:Classification of air cleanliness)に定められた、クリーンルーム規格
とする。
【0090】
このように、クリーンルーム41の内部空間Aにおいて化学的汚染物質が除去されるの
で、XYZステージ22に載置された合成石英ガラス基板4の周辺の雰囲気に上記汚染物
質が極めて少なくなり、このガラス基板4の表面、特に鏡面研磨された主表面5及び6に
上記汚染物質が付着したり堆積することが回避される。このため、この合成石英ガラス基
板4の表面(特に鏡面研磨された主表面5及び6)に付着した付着物や堆積物が、高エネ
ルギーの光であるArFエキシマレーザー光25を吸収して加熱され、上記合成石英ガラ
ス基板4の表面を局所的に高温状態として当該表面にダメージを与える不具合が回避され
る。
【0091】
また、上述の検査工程においてレーザー照射装置21から合成石英ガラス基板4の端面
2に導入されるArFエキシマレーザー光25は、図4に示すように、そのビーム形状が
上記端面2の幅Wよりも大きな形状を有し、この端面2の側面51に対し垂直に導入され
る。
【0092】
つまり、ArFエキシマレーザー光25が導入される端面2は、マスクパターンとなる
薄膜(後述のハーフトーン膜8)が形成される合成石英ガラス基板4の主表面5または6
に直交する上記側面51と、この側面51と上記主表面5、6との間の面取り面52及び
53とを有して構成される。これらの側面51の幅W1、面取り面52の幅W2及び面取
り面53の幅W3の和が上記端面2の幅Wであり、例えばW=6.85mmである。また
、この端面2に導入されるArFエキシマレーザー光25は、例えばビーム形状が長辺a
×短辺bの四角形(a=7.0mm、b=4.0mm)、パワーが6mJ(従って、単位面
積当たりのエネルギー(1パルス当たり)は21.4mJ/cm)、周波数が50Hzの
ArFエキシマレーザー光である。
【0093】
このようなArFエキシマレーザー光25がレーザー照射装置21から合成石英ガラス
基板4の端面2へ導入されると、この端面2における単位面積当たりのArFエキシマレ
ーザー光25のエネルギーが強くなり過ぎないので、この端面2においてプラズマの発生
が防止される。しかも、この端面2に導入されるArFエキシマレーザー光25により内
部欠陥16が発生する光15の強度も、検出可能な程度に充分確保されることになる。上
述のようにプラズマの発生を防止し、且つ光15の強度も充分確保できるに必要なArF
エキシマレーザー光25の条件は、単位面積当たりのエネルギー(1パルス当たり)が10
mJ/cm2以上で50mJ/cm以下、好ましくは15mJ/cm以上で45mJ
/cm以下、さらに好ましくは、15mJ/cm以上で40mJ/cm以下である
。また、内部欠陥16を確実に捕らえ検査精度を高めるためには、周波数が20Hz以上
、好ましくは40Hz以上、さらに好ましくは50Hz以上であることが好ましい。
【0094】
また、端面2に導入されるArFエキシマレーザー光25の形状が長辺a×短辺bの四
角形(a=7.0mm、b=4.0mm)であり、長辺(a=7.0mm)側が合成石英ガ
ラス基板4における端面2の幅W(6.85mm)より大きい寸法となっているので、上
記ArFエキシマレーザー光25は、合成石英ガラス基板4の主表面5及び6に対しても
、その面方向に照射されることになる。このため、主表面5、6にパーティクルや汚染物
55が付着していた場合にも、これらパーティクルや汚染物55がArFエキシマレーザ
ー光25により吹き飛ばされて除去可能とされる。尚、ArFエキシマレーザー光25の
ビーム形状が四角形の場合を述べたが、上記端面2の幅W以上の直径を有する円形状や楕
円形状であっても良い。
【0095】
更に、端面2に導入されるArFエキシマレーザー光25は、合成石英ガラス基板4内
またはその外周近傍において、レーザー光のエネルギーによりプラズマが発生しなければ
、平行光、ある程度の拡がり角を持った光、ある程度の角度で収束された光であってもよ
い。好ましくは平行光、或いは僅かながらの拡がり角を持った光が望ましい。この拡がり
角は6mrad以下が好ましい。
【0096】
尚、上述の実施形態では、合成石英ガラス板1へのArFエキシマレーザー光の導入を
、合成石英ガラス板1の表面である主表面5及び6と、対向する端面2及び3とを鏡面に
なるように研磨した合成石英ガラス基板4を準備した状態で行ったが、ArFエキシマレ
ーザー光を導入する側の端面2のみ鏡面研磨した状態の合成石英ガラス基板4であっても
良く、または、ArFエキシマレーザー光を導入する側の端面2と、この端面2に隣接し
、内部欠陥16が発する光を受光又は感知する側の端面18を、ArFエキシマレーザー
光が導入でき、内部欠陥16が発する光を受光又は感知することができる程度に鏡面研磨
した状態の合成石英ガラス基板4であっても良い。(図6(b)の状態)
つまり、上記合成石英ガラス基板の準備工程において、合成石英ガラス基板4の表面の
うちの、残りの端面19と、互いに対向する主表面5及び6は鏡面研磨せず、その表面粗
さは約0.5μm程度であるが、上記端面2及び18の表面粗さは約0.03μm以下と
しても良い。
【0097】
上記のように、マスクブランク用ガラス基板の製造工程における合成石英ガラス基板4
の主表面を精密研磨する前の早い段階(図6(b)の段階)で、合成石英ガラス基板4の
光学的な不均一性、即ち転写パターン欠陥をもたらす内部欠陥16を感知または検出する
ことから、ArFエキシマレーザーを合成石英ガラス基板4に導入したときに、光学的な
不均一性が生じない合成石英ガラス基板4に対してのみ主表面及び、その他端面を精密に
研磨することができるので、マスクブランク用ガラス基板の製造工程における無駄を省く
ことができる。
【0098】
上記の合成石英ガラス基板4の主表面を鏡面研磨していない状態にて、ArFエキシマ
レーザー光をもちいて検査工程を行う場合、局所又は局部的な光学的な不均一性を合成石
英ガラス基板4の端面18側から感知または検出する必要があるため図7に示すような欠
陥検査装置で検査工程を行う。尚、図7において図2と同じ構成のものについては、同じ
番号を付与して説明する。
【0099】
図7の欠陥検査装置は、露光波長の光(つまり、露光波長と同一の波長の光)であるA
rFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端面2から導入する光導入手段として
のレーザー照射装置21と、合成石英ガラス基板4を載置し、レーザー照射装置21から
発せられるレーザー光25に対して合成石英ガラス基板4をX方向、Y方向、Z方向にそ
れぞれ移動させるXYZステージ22と、このXYZステージ22に載置された合成石英
ガラス基板4の端面33側に設置され、CCD素子とこのCCD素子の検出範囲を広げる
ためのレンズ(ともに不図示)とを備え、合成石英ガラス基板4の幅方向(つまり、レー
ザー照射装置21から照射されるレーザー光の照射方向)の略全域に渡って検出視野24
を有する、受光手段としてのCCDカメラ(ラインセンサカメラ)23と、このCCDカ
メラ23にUSBケーブル26を用いて接続された検出手段としてのコンピュータ27と
を有して構成される。
【0100】
レーザー照射装置21は、XYZステージ22が合成石英ガラス基板4をY方向に移動
させている間に、ArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4の端面2におけ
るY方向(つまり端面2の長手方向)の各位置から順次導入する。従って、ArFエキシ
マレーザー光25は、合成石英ガラス基板4の端面2の長手方向(図4(A)のα方向)
に走査されることになる。また、CCDカメラ23は、合成石英ガラス基板4の端面2に
おけるY方向の各位置へ入射されたArFエキシマレーザー光(波長λ1)によって合成
石英ガラス基板4が発する、波長λ1よりも長い波長の長波長の光15及び17を、合成
石英ガラス基板4のY方向の各位置毎に、合成石英ガラス基板4の端面18側から受光し
て撮影する。
【0101】
また、上記実施形態において、レーザー照射装置21からのArFエキシマレーザー光
25が、合成石英ガラス基板4の端面における、主表面5及び6に垂直な側面に垂直に導
入される例を挙げた。ところが、合成石英ガラス基板4の主表面5、6及び側面(例えば
、端面2、3の側面)を精密研磨した後に、上記側面と主表面5、6との間に形成される
面取り面の一方から、主表面5、6及び側面にて全反射する条件で、ArFエキシマレー
ザー光25を合成石英ガラス基板4に導入させても良い。この場合、ArFエキシマレー
ザー光25は、合成石英ガラス基板4内に実質的に閉じ込められた状態となるが、当該ガ
ラス基板4の表面に付着物等が付着していると、全反射条件が崩れてArFエキシマレー
ザー光25が漏出し、この漏出したArFエキシマレーザー光25が上記付着物に吸収さ
れて合成石英ガラス基板4の表面を局所又は、局部的な高温状態とし、ダメージを与える
ことになる。この場合においては、図5にあるような合成石英ガラス基板4がクリーンル
ーム44の内部空間A内で清浄な雰囲気にあれば、合成石英ガラス基板4の表面に付着物
等が付着せず、したがって上記ダメージの発生が防止される。または、合成石英ガラス基
板4の主表面5、6を精密研磨した後に、この主表面5、6からArFエキシマレーザー
光25を導入しても良い。
【0102】
また、上記実施形態において、ArFエキシマレーザー光を合成石英ガラス基板4の端
面2から導入する場合において、マスクブランク用ガラス基板である合成石英ガラス基板
4の四隅のコーナーは、R面取りされている(丸みを帯びている)ため、R面取りされた
四隅のコーナーに、ArFエキシマレーザー光が照射されると、R面によるレンズ効果に
より、合成石英ガラス基板4で集光するため、導入されたArFエキシマレーザー光のエ
ネルギーが高くなり、焦点位置においてダメージが発生する場合がある。R面の曲率半径
によっては、マスクパターンが形成されるマスクパターン形成領域に、焦点位置がある場
合、基板内部のダメージにより、露光光に対する光学特性の変化(たとえば、透過率の低
下)が引き起こされ、転写パターン欠陥となるので好ましくない。また、上記R面による
ArFエキシマレーザー光の集光により、基板内部のダメージが大きい場合、基板が欠け
る場合があるので好ましくない。この場合においては、ArFエキシマレーザー光が、合
成石英ガラス基板の四隅のコーナーに照射されないように、遮蔽手段(図示せず)により
遮蔽しておくことが好ましい。そのことにより、R面でのレンズ効果によるArFエキシ
マレーザー光による基板内部のダメージを防止することができる。
【0103】
また、上記実施形態では、検査光を露光光と同じArFエキシマレーザー光を用いたが
、必ずしも検査光を露光光と同じである必要はなく、200nm以下の波長を有するレー
ザー光や、200nm以下の波長を有する光源であっても良い。好ましくは、マスクブラ
ンク用ガラス基板である合成石英ガラス基板に対して透過率が80%以上、更に望ましく
は透過率が85%以上となる200nm以下の波長を有する光であることが望ましい。好
ましくは波長が100nm〜200nmの光であれば良く、F2エキシマレーザーであっ
ても良い。或いは、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーと同じ波長の光を得
るために、重水素(D2)ランプ等の光源から光を分光させて中心波長がArFエキシマ
レーザー、F2エキシマレーザーと同じ波長の光を用いても良い。但し、検査光を露光光
と同じにすることにより、実際にパターン転写時の環境での光学的な不均一性の検査が行
えるので好ましい。
【0104】
また、上記実施形態では、光学的な不均一性を、受光手段を用いて検出したが、光学的
な不均一性の種類、即ち転写パターン欠陥となる内部欠陥16の種類を特定する必要がな
いなどの場合は、人的に影響がある紫外域の波長をカットできる透明なアクリル材で保護
した状態で、局所又は局部的に発する光(蛍光)を目視により感知して、検査工程を行っ
ても良い。また、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16及びこの内部欠陥16以外の領域
が発する、露光波長の光(検査光)よりも長い波長の光15及び17をCCDカメラ23
が受光するものを述べたが、これらの光15及び17を分光器が受光して、内部欠陥16
の分光特性(波長及び強度)や、光15及び17の強度(光量)分布を測定して、内部欠
陥16を感知または検出して、検査工程を行っても良い。また、CCDカメラ23をカラ
ーカメラとして、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16及びこの内部欠陥16以外の領域
が発する、露光波長の光(検査光)よりも長い波長の光15及び17を受光して撮影し、
コンピュータ27により、このCCDカメラ23の画像を赤、緑、青などの色別に画像処
理し、この色別に画像処理した光の強度(光量)分布や光の波長等の情報から内部欠陥1
6を感知または検出して、検査工程を行っても良い。また、内部欠陥16の検出は、マス
クブランク用ガラス基板の製造工程の最終段階で実施しても良い。
【0105】
また、上記実施形態では、合成石英ガラス基板4にArFエキシマレーザー光を導入し
た際に、内部欠陥16による局所又は局部的に発する光と、内部欠陥16以外の領域が発
する光を感知または検出する例を挙げたが、これに限られず、ArFエキシマレーザー光
を合成石英ガラス基板4に導入しても内部欠陥16以外の領域は光が発せず、内部欠陥1
6のみ局所又は局部的に発する光を感知または検出して検査工程を行っても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、露光光源がArFエキシマレーザーとした場合にマスクブラ
ンク用透光性基板として使われている合成石英ガラス基板を挙げたが、これに限られず、
石英原料を溶融した透明石英ガラスでも良い。また、露光光源がF2エキシマレーザーと
した場合には、マスクブランク用透光性基板として弗化カルシウム(CaF2)基板や、
弗素がドープされたガラス基板であっても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、検査対象としてマスクブランク用透光性基板を挙げたがこれ
に限らず、マスクブランク用透光性基板にする前の状態や、合成石英ガラス基板の場合に
は、合成石英ガラスを生成した合成石英ガラスインゴットの状態、合成石英ガラスインゴ
ットからブロック状に切り出した状態、ブロック状から板状に切り出した状態を検査対象
としても良い。また、検査対象として光リソグラフィーの際に使われる露光装置の光学部
品、例えばレンズ、レンズ加工前の状態を検査対象としても良い。
〔B〕マスクブランクの製造方法
次に、マスクブランク用ガラス基板7の主表面5上にマスクパターンとなる薄膜(ハー
フトーン膜8)をスパッタリング法により形成して、マスクブランク9(ハーフトーン型
位相シフトマスクブランク)を作製する(図1(d))。ハーフトーン膜8の成膜は、例えば
、以下の構成を有するスパッタリング装置を使って行う。
【0108】
このスパッタリング装置は、図8に示すようなDCマグネトロンスパッタリング装置3
0であり、真空槽31を有しており、この真空槽31の内部にマグネトロンカソード32
及び基板ホルダ33が配置されている。マグネトロンカソード32には、バッキングプレ
ート34に接着されたスパッタリングターゲット35が装着されている。例えば、銃沖バ
ッキングプレート34に無酸素鋼を用い、スパッタリングターゲット35とバッキングプ
レート34との接着にインジウムを用いる。上記バッキングプレート34は水冷機構によ
り直接または間接的に冷却される。また、マグネトロンカソード32、バッキングプレー
ト34及びスパッタリングターゲット35は電気的に結合されている。基板ホルダ33に
ガラス基板7が装着される。
【0109】
上記スパッタターゲット35とガラス基板7とは、図9に示すように、ガラス基板7と
スパッタリングターゲット35の対向する面が所定の角度を有するように配置されている
。このようにすることにより、ガラス基板7の主表面上に均一にマスクパターンとなる薄
膜(ハーフトーン膜8)が形成されるので、マスクブランクとしての基板面内の透過率ば
らつきを抑えることができる。この場合、例えば、スパッタリングターゲット35とガラ
ス基板7のオフセット距離は340mm、スパッタリングターゲット35とガラス基板7
間の垂直距離(T/S)は380mm、スパッタリングターゲットの傾斜角は15°であ
る。
【0110】
図8の真空槽31は、排気口37を介して真空ポンプにより排気される。真空槽31内
の雰囲気が、形成する膜の特性に影響しない真空度に達した後に、ガス導入口38から窒
素を含む混合ガスを導入し、DC電源39を用いてマグネトロンカソード32に負電圧を
加え、スパッタリングを行う。DC電源39はアーク検出機能を持ち、スパッタリング中
の放電状態を監視する。真空槽31の内部圧力は圧力計36によって測定される。
〔C〕露光用マスクの製造方法
次に、図1に示すように、上記マスクブランク9(ハーフトーン型位相シフトマスクブ
ランク)のハーフトーン膜8の表面にレジストを塗布した後、加熱処理してレジスト膜1
0を形成する。(図1(e))。
【0111】
次に、レジスト膜付きのマスクブランク11におけるレジスト膜10に所定のパターン
を描画・現像処理し、レジストパターン12を形成する(図1(f))。
【0112】
次に、上記レジストパターン12をマスクにして、ハーフトーン膜8をドライエッチン
グしてハーフトーン膜パターン13をマスクパターンとして形成する(図1(g))。
【0113】
最後に、レジストパターン12を除去して、ガラス基板7上にハーフトーン膜パターン
13が形成された露光用マスク14を得る(図1(h))。
【0114】
尚、上記実施形態では、マスクブランク用ガラス基板上にハーフトーン膜を形成したハ
ーフトーン型位相シフトマスクブランクや、マスクブランク用ガラス基板上にハーフトー
ン膜パターンを形成したハーフトーン型位相シフトマスクの場合を述べたが、これに限定
されるものではない。例えば、マスクブランク用ガラス基板7上にハーフトーン膜と、こ
のハーフトーン膜上に遮光膜とを有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクであっ
ても良い。そして、このハーフトーン型位相シフトマスクブランクから得られるハーフト
ーン型位相シフトマスクとして、ハーフトーン膜パターン上の所望の位置に遮光機能を増
加させるために遮光膜パターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクであっても
良い。
【0115】
また、マスクブランク用ガラス基板7上に遮光膜が形成されたフォトマスクブランクや
、マスクブランク用ガラス基板7上に、該ガラス基板表面をエッチングして所望の深さで
基板を掘り込んで凹凸パターンを形成してクロムレスマスクを作製するためのマスクパタ
ーン形成用の薄膜が形成されたクロムレスマスク用ブランクであっても良い。
【0116】
尚、本発明は、マスクブランク用透光性基板における光学的な不均一性が存在していた
場合に、露光光に対する光学特性の変化による転写パターンの影響が大きい位相シフトマ
スクブランク用透光性基板の検査方法、及び位相シフトマスクブランク用透光性基板の製
造方法で、発明の効果がより発揮される。中でも、露光用マスクにおけるマスクパターン
の露光光に対する透過率が10%以上となる位相シフトマスク(例えば、露光光に対する
透過率が10%以上のハーフトーン膜と遮光膜が形成されたトライトーンタイプの位相シ
フトマスクや、クロムレスタイプの位相シフトマスク)用の透光性基板の検査方法、及び
透光性基板の製造方法で、発明の効果がさらに発揮される。
【0117】
尚、これらのハーフトーン型位相シフトマスクブランクやクロムレスマスク用ブランク
などの位相シフトマスクブランク、フォトマスクブランクは、マスクパターンとなる薄膜
やマスクパターンを形成するための薄膜上に、レジスト膜を形成したレジスト付きマスク
ブランクであっても良い。
[D]半導体デバイスの製造方法
得られた露光用マスク14を露光装置に装着し、この露光用マスク14を使用し、Ar
Fエキシマレーザーを露光光として光リソグラフィー技術を用い、半導体基板(半導体ウ
エハ)に形成されているレジスト膜に露光用マスクのマスクパターンを転写して、この半
導体基板上に所望の回路パターンを形成し、半導体デバイスを製造する。
[E]実施の形態の効果
上述のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果を奏する。
ガラス基板などの透光性物品の欠陥検査装置20にあっては、透光性物品である合成石英
ガラス基板4の表面(端面2)から、光導入手段であるレーザー照射装置21によって2
00nm以下の波長を有する検査光(露光波長の光でもある)であるArFエキシマレー
ザー光を導入し、この導入されたArFエキシマレーザー光によって、合成石英ガラス基
板4の内部欠陥16が発する前記波長よりも長い波長の光15と、合成石英ガラス基板4
の内部欠陥16以外の領域が発する前記波長よりも長い波長の光17とを、合成石英ガラ
ス基板4の主表面、又は前記端面2と異なる端面33から、受光手段であるCCDカメラ
23が受光し、検出手段であるコンピュータ27が、これらの受光した光15及び17を
画像処理し、これらの光15と光17の光量の相違に基づき、合成石英ガラス基板4の内
部欠陥16を検出する。このように200nm以下の波長を有する光を、光リソグラフィ
ーに使用される透光性物品である合成石英ガラス基板4の内部欠陥16の検査に用いるこ
とによって、この内部欠陥16を良好に検出することができる。
【0118】
マスクブランク用透光性基板である合成石英ガラス基板4の端面2から、200nm以
下の波長を有する検査光(露光波長の光でもある)であるArFエキシマレーザー光を導
入し、当該合成石英ガラス基板4の局部的な光学的な不均一性である内部欠陥16が発す
る前記波長よりも長い波長の光15と、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16以外の領域
が発する前記波長よりも長い波長の光17とを、合成石英ガラス基板4の主表面、又は前
記端面2と異なる端面33から受光し、この受光した光15及び17の光量の相違に基づ
き上記内部欠陥16を検出し、内部欠陥16が検出されない合成石英ガラス基板4を用い
てマスクブランク用ガラス基板7を製造する。この結果、このマスクブランク用ガラス基
板7からマスクブランク9を経て製造される露光用マスク14にガラス基板7の内部欠陥
16が存在しない。従って、この露光用マスク14を用いて、被転写体としての半導体ウ
エハに当該露光用マスク14のマスクパターンを転写するパターン転写の際に、この露光
用マスク14には、ガラス基板7の内部欠陥16により局部的に光学特性が変化(例えば
、透過率が低下)する領域が存在しないので、パターン転写に悪影響を及ぼして転写パタ
ーン欠陥が生ずることがなく、転写精度を良好にできる。
【0119】
マスクブランク用透光性基板であるマスクブランク用ガラス基板7の製造工程の、主表
面5及び6を精密研磨する前の早い段階で、合成石英ガラス基板4の内部欠陥16を欠陥
検査装置20を用いて検出することから、内部欠陥16が存在しない合成石英ガラス基板
4に対してのみ主表面5及び6を精密研磨し、内部欠陥16が存在する合成石英ガラス基
板4について主表面5及び6を精密研磨する無駄を省くことができる。
マスクブランク用透光性基板である合成石英ガラス基板4に200nm以下の波長を有す
る検査光(露光波長の光でもある)を導入して、当該ガラス基板の内部欠陥16の検査を
行う。このことから、この合成石英ガラス基板4からマスクブランク用ガラス基板7及び
マスクブランク9を経て製造される露光用マスク14と露光光とを用いたパターン転写の
際に、転写パターン欠陥となる内部欠陥16を良好に検出できる。この内部欠陥16が検
出されず、且つ主表面5、6にダメージが存在しない合成石英ガラス基板4を用いてマス
クブランク用ガラス基板7を製造することにより、このマスクブランク用ガラス基板7を
用いた露光用マスク14には、ガラス基板の内部欠陥16、または主表面5、6のダメー
ジに起因して局所又は局部的に光学特性が変化(例えば透過率が低下)する領域が存在し
なくなるので、転写パターン欠陥が生ずることなく、転写精度を向上させることができる

【0120】
内部欠陥16の検出工程において被検査体である合成石英ガラス基板4が、清浄な空気
が循環するクリーンルーム41の内部空間A内に配置されたので、検査用の光であるAr
Fエキシマレーザー光25を上記ガラス基板4に導入する際に、このArFエキシマレー
ザー光25の導入により当該ガラス基板4の表面(特に主表面5及び6)にダメージを生
じさせる原因物質を、この合成石英ガラス基板4の周辺の雰囲気から排除した状態で、A
rFエキシマレーザー光25を当該ガラス基板4に導入することができる。この結果、こ
の合成石英ガラス基板4の表面(特に主表面5及び6)に付着した付着物や堆積物がAr
Fエキシマレーザー光25を吸収して、当該表面を局所又は局部的に高温状態とすること
で生ずる当該表面のダメージを防止することができる。
マスクブランク用透光性基板である合成石英ガラス基板4の端面2に導入されるArFエ
キシマレーザー光25のビーム形状(長辺a×短辺bの四角形)が、このArFエキシマ
レーザー光25が導入される端面2の幅Wよりも大きく設定されたことから、端面2にお
ける単位面積当たりのレーザー光25のエネルギー(1パルス当たり)が強くなり過ぎな
いので、この端面2においてプラズマの発生を回避できる。この結果、端面2に付着した
汚れや異物等がプラズマにより当該端面2にダメージを与える事態を防止でき、内部欠陥
16の検出精度を向上させることができる。
【0121】
マスクブランク用透光性基板である合成石英ガラス基板4の端面2に導入されるArF
エキシマレーザー光25の単位面積当たりのエネルギー(1パルス当たり)が、10mJ
/cm以上50mJ/cm以下であることから、このArFエキシマレーザー光25
による端面2でのプラズマの発生を回避できると共に、当該ArFエキシマレーザー光5
の導入により合成石英ガラス基板4の内部欠陥16が発する光15、17の強度も検出可
能な程度に充分確保されるので、欠陥検出精度の信頼性を保持できる。
マスクブランク用透光性基板である合成石英ガラス基板4の端面2に導入されるArFエ
キシマレーザー光25が、上記端面2の幅Wよりも大きなビーム形状(長辺a×短辺bの
四角形)を有し、更にこのArFエキシマレーザー光25を合成石英ガラス基板4の端面
2において、当該端面2の長手方向(図4(A)のα方向)に走査することから、この端
面2に接する両主表面5、6にもArFエキシマレーザー光25が照射されることになる
。このため、これらの両主表面5、6に付着したパーティクルや汚染物55を上記ArF
エキシマレーザー光25により除去することができる。
(実施例1)
四塩化珪素等を出発原料として生成された合成石英ガラス母材(合成石英ガラスインゴ
ット)から152.4mm×152.4mm×6.85mmに切り出して得られた合成石
英ガラス板について、形状加工及び面取り加工を施して、検査光であるArFエキシマレ
ーザー光(波長:193nm、パルスレーザー)が導入される端面(薄膜が形成される主
表面と直交する側面、及び主表面と側面との間に形成された面取り面)の表面粗さが、最
大高さRmaxで0.5μm以下の合成石英ガラス基板を10枚準備した。尚、この準備
した合成石英ガラス基板の主表面は、まだ鏡面研磨や精密研磨が施されていないので、す
りガラス状になっている。
【0122】
次に、上記実施形態で説明した欠陥検査装置を用いて、この合成石英ガラス基板の端面
に対して、合成石英ガラス基板の板厚よりも大きいビーム形状が7.0mm×4.0mm
、1パルス当たりのエネルギーが6mJ、周波数が50HzのArFエキシマレーザー光
を導入して、内部欠陥の検査を行った。
【0123】
合成石英ガラス基板の内部欠陥の観察は、ArFエキシマレーザー光を導入する端面と
は異なり、且つArFエキシマレーザー光の光路と直交する他端面から目視にて行った。
【0124】
合成石英ガラス基板の内部欠陥検査の結果、10枚中4枚において、点状や、楕円状、
又は亀裂の入った層状の、局所又は局部的に光る不均一領域があることが確認された。尚
、点状の光は薄い青色の蛍光として、楕円状の光は薄い青色の蛍光や黄色の蛍光として、
亀裂の入った層状の光は黄色の蛍光として確認できた。
【0125】
局所又は局部的に光る不均一領域が確認できなかった合成石英ガラス基板に対して、主
表面と端面(側面と面取り面)の精密研磨を施して、152.4mm×152.4mm×
6.35mmのマスクブランク用ガラス基板を得た。
【0126】
得られたマスクブランク用ガラス基板の物性として、該ガラス基板におけるマスクパタ
ーン形成領域(132mm×132mm)において、波長193nmにおける板厚方向の
透過率を面内9箇所で、透過率測定装置により測定した。この測定は、上記ガラス基板の
一方の主表面から、開口径が2.0mmφのアパーチャを介して、波長193nmの重水
素ランプ検査光を導入し、他方の主表面から出射させて測定した。入射光強度をIiとし
、出射光強度をTiとしたとき、透過率は、(Ii−Ti)/100である。こうして測
定した9箇所の透過率の中における最大透過率と最小透過率との差は2%以内に収まって
おり、良好であった。なお、もし、上記検査で欠陥が検出された場合、上記透過率測定の
9箇所の測定箇所のうち、その欠陥部位を何れかの検査光が通過するように測定箇所を選
定し、透過率測定を行った場合において、最大透過率と最小透過率との差が例えば5%超
であったとする。この場合においては、最小透過率の箇所が欠陥を通過した箇所であると
考えられる。そこで、5%超の透過率差が欠陥によるものとする。そして、その欠陥によ
る単位長さ当たりの光の損失として、上記差の5%を基板の厚さ0.635cmで除算し
て求める。すなわち、(5%)/(0.635cm)=7.9%/cmを、この欠陥によ
る損失と定義する。そうすれば、この損失を欠陥の程度の評価に用いることができる。
【0127】
該マスクブランク用ガラス基板に対して、ArFエキシマレーザー光に対して透過率が
20%、位相差が180°のハーフトーン膜と、光学濃度が3以上の遮光膜と、レジスト
膜を順次形成して高透過率用ハーフトーン型位相シフトマスクブランクと、ArFエキシ
マレーザー光に対して光学濃度が3以上の遮光膜と、レジスト膜を順次形成してフォトマ
スクブランクをそれぞれ3枚づつ作製した。
【0128】
該ハーフトーン型位相シフトマスクブランクからハーフトーン型位相シフトマスクを、
フォトマスクブランクからフォトマスクをそれぞれ作製した。
【0129】
作製したハーフトーン型位相シフトマスク及びフォトマスクをそれぞれ露光光源をAr
Fエキシマレーザー(波長193nm)とする露光装置(ステッパー)に装着し、半導体
基板上に回路パターンを光リソグラフィーにより形成し半導体装置を作製した。
【0130】
得られた半導体装置には、回路パターンの欠陥もなくすべて良好であった。
【0131】
上述のように、マスクブランク用ガラス基板の製造工程の、主表面を精密研磨する前の
段階において、合成石英ガラス基板内部に存在する透過率が低下する内部欠陥のない合成
石英ガラス基板を選定して、該選定した合成石英ガラス基板のみ主表面の精密研磨を行い
マスクブランク用ガラス基板の製造が行えるので、本発明の検査方法は、内部欠陥の合成
石英ガラス基板の精密研磨を行わないで済むので、無駄を省くことができる。
(比較例1)
一方、上記実施例に対する比較のために、上記検査工程において、局部的に光が発する
蛍光が確認された合成石英ガラス基板(主表面及び端面を精密研磨された合成石英ガラス
基板)を用いて、上述と同様に、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクとフォトマス
クブランクを作製した後、ハーフトーン型位相シフトマスク、フォトマスクをそれぞれ作
製した。尚、このとき使用した合成石英ガラス基板は、波長193nmにおける板厚方向
の透過率の最大透過率と最小透過率との差が5%超であった。該作製したハーフトーン型
位相シフトマスクとフォトマスクを使って、上述と同様に光リソグラフィーにより、半導
体基板上に回路パターンを形成したところ、回路パターンが形成されないといったパター
ン欠陥が生じた。
【0132】
上記フォトマスクについて、転写特性を評価装置(マイクロリソグラフィー・シミュレ
ーション・マイクロスコープ(Microlithography Simulation Microscops)AIMS19
3(カールツァイス社製)を用いて評価したところ、局部的に蛍光として光を発していた
領域(数十μmから数百μm)の領域で、約5%から約40%透過率が低下することが確
認された。
(実施例2)
上述の実施例1において、内部欠陥の検査を、清浄な空気が循環された雰囲気(ISO
クラス4、ケミカルフィルタ使用)内に設置された欠陥検査装置を用いて、合成石英ガラ
ス基板の内部欠陥を検査した以外は、上記実施例1と同様にして合成石英ガラス基板の検
査方法を行い、更に、主表面の精密研磨を行ってマスクブランク用ガラス基板を得た。そ
の結果、合成石英ガラス基板の内部欠陥の検査を、ArFエキシマレーザー光を導入する
端面にダメージを与えることなく行うことができ、局部的に蛍光として光が発しない合成
石英ガラス基板を選定することができた。該選定した合成石英ガラス基板を使って、主表
面の精密研磨を行ってマスクブランク用ガラス基板を製造し、さらに、ハーフトーン型位
相シフトマスク及びフォトマスクを作製して、光リソグラフィーにより半導体装置を作製
したところ、回路パターン欠陥は生じなかった。
(実施例3)
上述の実施例1において、四塩化珪素等を出発原料として生成された合成石英ガラス母
材(合成石英ガラスインゴット)に、ArFエキシマレーザー光を導入すべく導入面を形
成し、該導入面からArFエキシマレーザー光を導入して、合成石英ガラス母材内部の内
部欠陥を検査した。尚、導入面は、ArFエキシマレーザー光のビーム形状よりも大きい
サイズで鏡面状態となるように、合成石英ガラス母材の表面を局部的に鏡面研磨を施して
形成した。
【0133】
合成石英ガラス母材にArFエキシマレーザー光を導入したときに、局部的に蛍光とし
て発していなかった領域を特定して、該特定した領域のみ切り出した合成石英ガラスブロ
ックから、ArFエキシマレーザーを露光光源とする露光装置(ステッパー)のレンズ、
及びマスクブランク用ガラス基板を作製した。
【0134】
得られたレンズ及びマスクブランク用ガラス基板について、ArFエキシマレーザー光
における透過率低下の有無について評価したところ、透過率低下はほとんど確認できず極
めて良好であり、露光装置(ステッパー)用のレンズ、マスクブランク用ガラス基板とし
て使用する上で問題ないものであった。
(実施例4)
上述の実施例1において、上述の検査工程において選定した合成石英ガラス基板の板厚
方向の透過率が、最大透過率と最小透過率の差で5%以内(即ち、ガラス基板の光の損失
が8%/cm以下)ガラス基板を使って、該ガラス基板上にArFエキシマレーザー光に
対して光学濃度が3以上の遮光膜と、レジスト膜を順次形成してフォトマスクブランクを
作製した以外は実施例1と同様にして、フォトマスク更に半導体装置を作製した。その結
果、得られた半導体装置には、回路パターンの欠陥もなくすべて良好であった。
(参考例)
上記実施例2において、合成石英ガラス基板の内部欠陥の検査を、清浄度が管理されて
いない大気中に設置された欠陥検査装置を用いて行った以外は、実施例2と同様に合成石
英ガラス基板の内部欠陥の検査を行った。
【0135】
その結果、合成石英ガラス基板の端面にArFエキシマレーザー光を照射中に、端面近
傍でプラズマが発生し、合成石英ガラス基板の端面にダメージが発生した。このダメージ
は、その後に行われるマスクブランクの製造工程で、端面の精密研磨を行わない場合や、
端面の精密研磨を行ったとしてもダメージが深く、端面の精密研磨の取りしろの方が小さ
い場合は、マスクブランクの製造工程や、マスクブランクを収納容器に収める際や、マス
クブランクの搬送時において、発塵の原因となり、マスクパターン欠陥の原因となるので
好ましくない。尚、ダメージが浅く、端面の精密研磨の取りしろの方が大きい場合は、上
記発塵の原因にはならず問題にはならない。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、ArFエキシマレーザー(露光波長193nm)、F2エキシマレーザー(
露光波長157nm)等の短波長の露光光を用いた光リソグラフィー技術において使用さ
れる露光用マスクや、この露光用マスクを製造するマスクブランクや、マスクブランク用
透光性基板等の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光リソグラフィーに使用され、透光性材料からなる透光性物品の内部に、露光光に対し
て局所又は局部的に光学特性が変化する不均一性の有無を検査する透光性物品の検査方法
において、
前記透光性物品に200nm以下の波長を有する検査光を導入した場合に、該透光性物
品内部で前記検査光が伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位があ
る場合にこの部位から発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知するこ
とにより、前記透光性物品における光学的な不均一性の有無を検査することを特徴とする
透光性物品の検査方法。
【請求項2】
前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位から発せられる光の波長が、200nm
超600nm以下であることを特徴とする請求項1記載の透光性物品の検査方法。
【請求項3】
前記透光性物品は、光リソグラフィーの際に使用される露光装置の光学部品、又は、光
リソグラフィーの際に使用される露光用マスクの基板の何れかであることを特徴とする請
求項1又は2記載の透光性物品の検査方法。
【請求項4】
前記光学部品、前記露光用マスクの基板は、合成石英ガラスからなることを特徴とする
請求項3記載の透光性物品の検査方法。
【請求項5】
前記透光性物品に前記検査光を導入する際に、該検査光の導入により前記透光性物品の
表面にダメージを生じさせる原因物質を、該透光性物品の周辺の雰囲気から排除した状態
で、前記検査光を該透光性物品に導入することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に
記載の透光性物品の検査方法。
【請求項6】
前記検査光は、パルス光であり、1パルスの単位面積当たりのエネルギーが、10mJ
/cm以上50mJ/cm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に
記載の透光性物品の検査方法。
【請求項7】
200nm以下の波長を有する検査光を導入する表面を有するマスクブランク用透光性
基板を準備する準備工程と、
前記表面の一方から前記検査光を導入した場合に、前記透光性基板内部で前記検査光が
伝播する光路に前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位がある場合にこの部位から
発せられる光であって前記検査光の波長よりも長い光を感知することにより、前記透光性
基板における光学的な不均一性の有無を検査する検査工程と、
前記不均一性の有無により、局所又は局部的に光学特性が変化することによる転写パタ
ーン欠陥が発生しない透光性基板であるか否かを判別する判別工程と、を有することを特
徴とするマスクブランク用透光性基板の製造方法。
【請求項8】
前記局所又は局部的に光学特性が変化する部位から発せられる光の波長が、200nm
超600nm以下であることを特徴とする請求項7記載のマスクブランク用透光性基板の
製造方法。
【請求項9】
前記判別工程の後、前記透光性基板の主表面を精密研磨して、マスクブランク用透光性
基板を得ることを特徴とする請求項7又は8記載のマスクブランク用透光性基板の製造方
法。
【請求項10】
前記透光性基板に前記検査光を導入する際に、該検査光の導入により前記透光性基板の
表面にダメージを生じさせる原因物質を、該ガラス基板の周辺の雰囲気から削除した状態
で、前記検査光を該透光性基板に導入することを特徴とする請求項7乃至9の何れか一に
記載のマスクブランク用透光性基板の製造方法。
【請求項11】
前記検査光を導入する前記表面は、マスクパターンとなる薄膜が形成される透光性基板
の主表面と直交する側面であることを特徴とする請求項7乃至10の何れか一記載のマス
クブランク用透光性基板の製造方法。
【請求項12】
前記検査工程において、前記側面の幅よりも大きなビーム形状を有する検査光を該表面
に導入することを特徴とする請求項11記載のマスクブランク用透光性基板の製造方法。
【請求項13】
前記検査光は、パルス光であり、1パルスの単位面積当たりのエネルギーが、10mJ
/cm以上50mJ/cm以下であることを特徴とする請求項7乃至12の何れか一
に記載のマスクブランク用透光性基板の製造方法。
【請求項14】
請求項7乃至13の何れかに記載のマスクブランク用透光性基板の製造方法によって得
られたマスクブランク用透光性基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成して
マスクブランクを製造することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のマスクブランクにおける薄膜をパターニングして、マスクブランク
用透光性基板の主表面上にマスクパターンを形成し、露光用マスクを製造することを特徴
とする露光用マスクの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の露光用マスクの製造方法によって得られた露光用マスクを使用し、
露光用マスクに形成されているマスクパターンを半導体基板上に形成されているレジスト
膜に転写して半導体装置を製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−215154(P2011−215154A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130905(P2011−130905)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2006−42996(P2006−42996)の分割
【原出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】