説明

マスターモデルの製作方法

【課題】複数の分割モデルからなるタイヤ成形用金型のマスターモデルを簡易に組み立てる。
【解決手段】複数の分割モデル10を組み合わせて、マスターモデル1を製作する。複数の分割モデル10は、タイヤ周方向に並べて配置する。固定治具を複数の分割モデル10に取り付ける。固定治具は、隣り合う分割モデル10の位置を合わせて分割モデル10を拘束する。固定治具により複数の分割モデル10を固定して、マスターモデル1を組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割モデルによりタイヤ成形用金型のマスターモデルを製作するマスターモデルの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、加硫時に金型内に収容されて、金型により成形される。このタイヤ成形用の金型を製造するときには、まず、石膏等により、トレッドパターンを有するタイヤのマスターモデルを製作する。次に、マスターモデルからゴム型を形成する。また、ゴム型へ石膏を流し込んで、マスターモデルを複製した石膏型を製作する。石膏型により、アルミニウム合金からなる金型を鋳造する。
【0003】
ところで、車両用のタイヤでは、異なるパターンをトレッドのタイヤ周方向にランダムに配置することがある。これにより、タイヤが発生する騒音を低減することができる。しかしながら、このタイヤでは、一般に、1周分のトレッドパターンを形成したマスターモデルを製作する必要がある。そのため、マスターモデルの製作時間が長くなり、マスターモデルの生産性が低くなる。
【0004】
これに対し、従来、タイヤを周方向に区画した部分のマスターモデルを順次製作するマスターモデルの製作方法が知られている(特許文献1参照)。
従来のマスターモデルの製作方法では、異なるトレッドパターンを有する複数のピース(分割モデル)を組み立てて、1つのマスターモデルを製作する。また、共通する分割モデルを異なる組み合わせで使用して、異なるトレッドパターンの複数のマスターモデルを製作する。
【0005】
しかしながら、従来のマスターモデルの製作方法では、作業者が、手で、隣り合う分割モデルを密着させながら分割モデルの位置を調整する。また、分割モデルを調整後の位置に維持しつつナットを回転させて、分割モデルをタイヤ幅方向から締め付ける。このように、分割モデルの位置の調整と固定に面倒な作業が必要となるため、マスターモデルの精度のよい組み立てに手間と時間がかかる。従って、マスターモデルの製作工数を削減する観点から改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−272965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、複数の分割モデルからなるタイヤ成形用金型のマスターモデルを精度よく簡易に組み立てて、マスターモデルの製作に要する工数を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の分割モデルを組み合わせてタイヤ成形用金型のマスターモデルを製作するマスターモデルの製作方法であって、複数の分割モデルをタイヤ周方向に並べて配置する配置工程と、隣り合う分割モデルの位置を合わせて分割モデルを拘束する固定治具を、複数の分割モデルに取り付ける取付工程と、固定治具により複数の分割モデルを固定して、マスターモデルを組み立てる組立工程と、を有するマスターモデルの製作方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の分割モデルからなるタイヤ成形用金型のマスターモデルを精度よく簡易に組み立てることができ、マスターモデルの製作に要する工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のマスターモデルの製作方法を説明するための図である。
【図2】マスターモデルの製作手順を示す斜視図である。
【図3】固定治具と分割モデルを示す斜視図である。
【図4】固定治具と一対の固定部の拡大図である。
【図5】他の実施形態の固定治具を示す斜視図である。
【図6】分割モデルの位置を調整する手順を示す斜視図である。
【図7】平面視円形状の一対の固定部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のマスターモデルの製作方法では、上記した従来のマスターモデルの製作方法と同様に、複数の分割モデルにより、タイヤ成形用金型(以下、単に金型という)のマスターモデルを製作する。金型は、タイヤを成形するための型部材であり、タイヤの加硫時に使用される。マスターモデルは、複数の分割モデルを組み合わせて製作される。
【0012】
なお、本発明では、マスターモデルに関する方向を、モデルとなるタイヤの方向で表す。また、タイヤにおける周方向、半径方向、幅方向を、それぞれタイヤ周方向、タイヤ半径方向、タイヤ幅方向という。タイヤの一部に相当するマスターモデルと分割モデルの方向も、タイヤの方向で表す。
【0013】
図1は、マスターモデルの製作方法を説明するための図である。図1A〜図1Dでは、複数種類のマスターモデル1〜4を模式的に矩形状のブロックで示している。複数のブロックは、タイヤ周方向に並べた複数種類の分割モデル11〜15を表す。ブロック中の番号が、分割モデルの番号である。
本実施形態では、タイヤをタイヤ幅方向の中央面で2つに区画するとともに、タイヤ周方向に複数に区画する。4種類のマスターモデル1〜4は、タイヤの区画した各部分のモデルである。マスターモデル1〜4により、タイヤ幅方向に2分割された金型を製造する。
【0014】
5種類の分割モデル11〜15は、マスターモデル1〜4を構成するピースであり、互いに異なるトレッドパターンを有する。即ち、分割モデル11〜15のタイヤ半径方向外側の面には、それぞれ異なるトレッドパターンが形成されている。分割モデル11〜15は、必要に応じて、異なるタイヤ周方向の寸法に形成される。分割モデル11〜15の素材(例えば、石膏や合成樹脂)を加工して、分割モデル11〜15が形成される。分割モデル11〜15は、タイヤ周方向に所定のパターンで並べられる。並べた分割モデル11〜15を組み立てて、トレッドパターンが異なるマスターモデル1〜4を製作する。マスターモデル1〜4は、図1A〜図1Dに示す順番で配列する分割モデル11〜15からなる。
【0015】
マスターモデル1〜4は、分割モデル11〜15(トレッドパターン)の組み合わせと配列が異なる。第1のマスターモデル1は、6個の分割モデル13、15、12、14、15、12からなる。第2のマスターモデル2は、5個の分割モデル13、11、12、14、14からなる。第3のマスターモデル3は、5個の分割モデル12、11、13、13、14からなる。第4のマスターモデル4は、5個の分割モデル12、12、13、12、14からなる。分割モデル11〜15を組み合わせて、マスターモデル1〜4が製作される。マスターモデル1〜4は、それぞれ金型に必要なパターン配列のトレッドパターンを有する。
【0016】
金型を製造するときには、まず、複数の分割モデル11〜15から、第1のマスターモデル1のトレッドパターンに応じて、必要な分割モデルを選択する。選択した分割モデルを組み立てて、第1のマスターモデル1を製作する。第1のマスターモデル1からゴム型を形成する。次に、第1のマスターモデル1を分割モデルに分解して、第2のマスターモデル2を製作する。第2のマスターモデル2を第1のマスターモデル1と同様に製作して、第2のマスターモデル2からゴム型を形成する。続いて、第2のマスターモデル2を分解する。以降も同様に、第3と第4のマスターモデル3、4を順に製作して、それぞれゴム型を形成する。その後、複数のゴム型から石膏型を製作し、石膏型により金型を鋳造する。
【0017】
分割モデル11〜15は、複数のマスターモデル1〜4の製作に共通に使用される。共通する分割モデル11〜15を異なる組み合わせで使用して、異なるトレッドパターンのマスターモデル1〜4が製作される。また、マスターモデル1〜4の分解後、分解された分割モデル11〜15は、新たに製作するマスターモデル1〜4に使用する。新たなマスターモデル1〜4の分割モデル11〜15の配列に基づいて、分割モデル11〜15を組み立てる。そのため、分割モデル11〜15の数は、マスターモデル1〜4に使用される数の合計(21個)(タイヤ全周分)よりも少ない数でよい。
【0018】
図1Eに、分割モデル11〜15の必要数を示す。必要数は、マスターモデル1〜4を順に製作するために必要な分割モデル11〜15の数である。
分割モデル11〜15は、それぞれ複数のマスターモデル1〜4中の最大使用数分製作する。分割モデル11は、マスターモデル2、3で最大1個使用される。分割モデル12は、マスターモデル4で最大3個使用される。分割モデル13は、マスターモデル3で最大2個使用される。分割モデル14は、マスターモデル2で最大2個使用される。分割モデル15は、マスターモデル1で最大2個使用される。そのため、合計10個の分割モデル11〜15を製作する。最小限必要な10個の分割モデル11〜15を使用して、全てのマスターモデル1〜4を製作する。
【0019】
次に、1つのマスターモデル1の製作手順について説明する。以下では、5種類の分割モデル11〜15を区別せずに、全て分割モデル10と表す。
図2は、マスターモデル1の製作手順を示す斜視図である。
マスターモデル1は、図示のように、複数の分割モデル10と、複数の分割モデル10を配列させる配列部材5とを有する。分割モデル10は、ブロック状をなし、タイヤの形状に合わせた形状に形成されている。分割モデル10は、タイヤ半径方向(図2の矢印X方向)に沿って配置される。分割モデル10のタイヤ半径方向外側の面は、トレッドパターンが形成されたトレッド面16である。配列部材5は、板状部材からなり、タイヤの半径に応じた曲率の円弧状に形成されている。複数の分割モデル10は、配列部材5を使用して組み立てられる。
【0020】
その際、まず、複数の分割モデル10(図2A参照)を並列させて、配列部材5(図2B参照)を、分割モデル10のタイヤ半径方向内側に配置する。次に、分割モデル10のタイヤ半径方向内側の面を、配列部材5の凸曲面に押し付ける。これにより、複数の分割モデル10をタイヤ半径方向の所定位置に配置する。分割モデル10は、配列部材5によりタイヤ半径方向の移動が規制される。また、分割モデル10のタイヤ半径方向の位置が固定される。
【0021】
続いて、複数の分割モデル10を、配列部材5の凸曲面に沿って移動させる。分割モデル10(図2C参照)は、タイヤ周方向(図2の矢印Y方向)に移動する。これにより、分割モデル10の側面を接触させて、複数の分割モデル10をタイヤ周方向の所定位置に配置する。複数の分割モデル10は、配列部材5に沿って配列して、円弧状に配置される。また、分割モデル10のタイヤ周方向の位置が固定される。このように、配列部材5により、複数の分割モデル10を、タイヤ周方向に並べて配置する。次に、複数の分割モデル10を、固定治具により固定する。
【0022】
図3は、固定治具と分割モデル10を示す斜視図である。図3では、隣り合う2つの分割モデル10を示している。
分割モデル10は、図示のように、固定部20を有する。固定治具30は、固定部20に取り付けられて、隣り合う分割モデル10を固定する。固定部20は、分割モデル10の意匠に影響しない部分に設けられる。ここでは、固定部20は、タイヤのサイド部に相当する分割モデル10の上面に設けられる。固定部20は、分割モデル10の上面と側面の間の2箇所の角部に形成される。即ち、固定部20は、分割モデル10の分割位置に形成される。
【0023】
分割モデル10に凹状の溝21を加工することで、固定部20が分割モデル10の上面に形成される。固定部20は、複数の分割モデル10の角部で同じ位置に設けられている。隣り合う分割モデル10で、固定部20の位置が一致する。また、隣り合う分割モデル10の溝21は繋がり、全体として、矩形状の溝21になる。枠状の固定治具30は、矩形状の溝21に嵌め込まれる。これにより、固定治具30を、隣り合う分割モデル10が有する一対の固定部20に取り付ける。固定治具30により、一対の固定部20を一体に固定して、隣り合う分割モデル10を整合させて拘束する。
【0024】
図4は、固定治具30と一対の固定部20の拡大図である。図4では、分割モデル10を透視して、一対の固定部20の内部を示している。
分割モデル10は、図示のように、固定部20に、上記した溝21と、固定ブロック22(図4では実線で示す)とを有する。固定ブロック22は、溝21により区画されて、直方体形状に形成される。固定ブロック22は、分割モデル10と一体の部材であり、タイヤ半径方向に沿って形成される。2つの分割モデル10を接触させたときに、一対の固定部20の固定ブロック22は、接触した状態で、タイヤ周方向に並べて配置される。また、一対の固定部20の溝21が繋がり、一対の固定ブロック22が矩形状の溝21に囲まれる。
【0025】
固定治具30は、枠状部材からなり、矩形状の溝21の形状に合わせた矩形状に形成される。固定治具30は、矩形状の溝21に挿入されて、分割モデル10の固定部20に取り付けられる。その際、まず、一対の固定部20に設けられた一対の固定ブロック22を並列させる。続いて、固定治具30を一対の固定ブロック22の周りに嵌合させる。固定治具30は、矩形状の溝21に嵌り、溝21を埋める。一対の固定ブロック22は、固定治具30の内側に嵌り、固定治具30により締め付けられる。固定治具30は、一対の固定ブロック22をタイヤ周方向とタイヤ半径方向から締め付け、両方向の力により一対の固定ブロック22を固定する。同時に、一対の固定ブロック22の位置が揃えられる。一対の固定ブロック22がズレているときでも、固定治具30により、一対の固定ブロック22が変位して、一対の固定ブロック22の位置が合わされる。
【0026】
固定治具30により、一対の固定ブロック22を固定することで、隣り合う2つの分割モデル10を固定する。また、固定治具30により、隣り合う分割モデル10のタイヤ周方向とタイヤ半径方向の移動を拘束する。隣り合う分割モデル10において、タイヤ周方向とタイヤ半径方向の4面の位置が、固定治具30による物理的拘束により固定される。分割モデル10は、固定治具30による2方向の締め付け力により、タイヤ周方向とタイヤ半径方向に関して同時に固定される。固定治具30は、一対の固定ブロック22の位置を合わせることで、隣り合う分割モデル10の位置を合わせる。即ち、固定治具30は、一対の固定部20(固定ブロック22)を整合させることで、隣り合う分割モデル10を整合させる。分割モデル10のタイヤ半径方向の位置が同じ位置に合わせられる。
【0027】
固定部20は、分割モデル10の下面にも、上面と同様に設けられている。固定治具30は、分割モデル10の上下面の固定部20に取り付けられる。分割モデル10は、上下面の一対の固定部20で、固定治具30により固定される。分割モデル10の上下面で、固定治具30は、一対の固定ブロック22を複数方向(ここでは2方向)から締め付ける。これにより、固定治具30は、一対の固定部20(固定ブロック22)及び隣り合う分割モデル10を固定(拘束)するとともに、それらの位置を揃える。固定治具30は、隣り合う分割モデル10の固定と位置合わせを同時に行う。
【0028】
マスターモデル1を製作するときには、複数の分割モデル10を、タイヤ周方向に並べて配置する(図2参照)。次に、固定治具30を、複数の分割モデル10に取り付ける。その際、固定治具30を、2つの分割モデル10が接する複数箇所で、一対の固定部20に取り付ける。固定治具30は、タイヤ周方向に隣り合う分割モデル10の位置を合わせて、分割モデル10を各位置で拘束する。
【0029】
複数の固定治具30により、タイヤ周方向に並べた複数の分割モデル10を固定して、分割モデル10を組み立てる。タイヤ周方向の端部の分割モデル10は、隣に位置する1つの分割モデル10に固定される。2つの分割モデル10の間に位置する分割モデル10は、両側の分割モデル10に固定される。これにより、複数の分割モデル10からなるマスターモデル1を組み立てる。マスターモデル1を分解するときには、固定治具30を固定部20から外して、複数の分割モデル10の固定を解除する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、固定治具30により、隣り合う分割モデル10の位置を合わせて分割モデル10を拘束する。そのため、分割モデル10の固定作業と位置合わせ作業を一度に行うことができる。また、固定治具30により、複数の分割モデル10からなるマスターモデル1〜4を精度よく簡易に組み立てることができる。これに伴い、マスターモデル1〜4の製作に要する手間、時間、及び、工数を削減できる。最小限必要な数の分割モデル10により、複数種類のマスターモデル1〜4を製作できるため、分割モデル10の製作コストと製作時間を削減できる。
【0031】
固定治具30により、隣り合う分割モデル10のタイヤ周方向とタイヤ半径方向の移動を拘束するため、分割モデル10を確実に拘束できる。分割モデル10を拘束する力を大きくすることもできる。固定治具30を一対の固定部20に取り付けて、一対の固定部20を一体に固定することで、分割モデル10を強固に固定できる。枠状部材からなる固定治具30を一対の固定ブロック22の周りに嵌合させるときには、分割モデル10を簡単に固定できる。
【0032】
次に、他の実施形態の固定治具について説明する。
図5は、他の実施形態の固定治具を示す斜視図である。図5では、図4と同様に、分割モデル10を透視して、一対の固定部20の内部を示している。
固定治具40は、図示のように、矩形状のフレーム41と、矩形状の4つ(二対)の固定片42、43とを有する。固定片42、43は、板状部材からなり、同じ方向に突出するように、フレーム41の4辺に取り付けられている。固定片42、43は、フレーム41の外方に向かって弾性変形する。
【0033】
固定治具40は、矩形状の溝21に挿入されて、分割モデル10の固定部20に取り付けられる。その際、まず、一対の固定部20に設けられた一対の固定ブロック22を並列させる。続いて、固定片42、43を溝21内に押し込んで、フレーム41で溝21を埋める。一対の固定片42は、第1のクリップ部材44であり、固定ブロック22のタイヤ周方向外側の溝21Aに挿入される。第1のクリップ部材44は、一対の固定ブロック22をタイヤ周方向外側から挟む。一対の固定片43は、第2のクリップ部材45であり、固定ブロック22のタイヤ半径方向外側の溝21Bに挿入される。第2のクリップ部材45は、一対の固定ブロック22をタイヤ半径方向外側から挟む。
【0034】
クリップ部材44、45からなる固定治具40は、一対の固定ブロック22を複数方向から締め付ける。固定治具40により、一対の固定ブロック22をタイヤ周方向とタイヤ半径方向から締め付け、両方向の力により一対の固定ブロック22を固定する。同時に、一対の固定ブロック22の位置が揃えられる。固定治具40は、上記した固定治具30と同様に、隣り合う分割モデル10を拘束及び固定する。また、固定治具40は、隣り合う分割モデル10の位置を合わせる。固定治具40を使用することで、上記した効果が得られるとともに、分割モデル10を簡単に固定することができる。
【0035】
次に、分割モデル10の位置の調整について説明する。
図6は、分割モデル10の位置を調整する手順を示す斜視図である。図6では、一対の固定ブロック22と固定治具40を示している。
分割モデル10のトレッド面16は、加工や精度のバラツキにより、分割モデル10間でズレることがある。このように、隣り合う分割モデル10の位置にズレが生じたときには、ズレに応じた厚さの調整部材6を、一対の固定部20に配置する。これにより、隣り合う分割モデル10の位置のズレを調整する。
【0036】
調整部材6は、所定厚さ(例えば、0.05〜0.1mm)の板状部材からなる。分割モデル10のズレを調整するときには、調整部材6を一対の固定ブロック22の端部に取り付ける。その際、分割モデル10のズレ量に応じた厚さの調整部材6を選択する。調整部材6は、一対の固定ブロック22に生じるズレ部7に配置する(図6A、図6B参照)。ズレ部7は、分割モデル10のズレを調整したときに、一対の固定ブロック22に生じる段差部である。
【0037】
調整部材6をズレ部7に合わせた後、固定治具40(図6C参照)を、調整部材6を配置した一対の固定部20に取り付ける。固定治具40により、調整部材6と固定ブロック22をまとめて固定することで、分割モデル10のズレと位置を調整する。調整部材6と固定治具40を使用することで、分割モデル10の位置を簡易に調整できる。そのため、調整作業の手間、時間、及び、工数を削減できる。調整の精度を向上させることもできる。
【0038】
なお、本実施形態のマスターモデル1〜4は、タイヤをタイヤ幅方向に分割した一方の部分に対応する。これに対し、タイヤ幅方向に分割されていないマスターモデルも、上記と同様に製作できる。また、本実施形態のマスターモデルの製作方法によれば、タイヤ周方向に長いマスターモデルも製作できる。
【0039】
溝21と固定ブロック22の平面視形状は、三角形状や、五角形以上の多角形状に形成してもよい。この場合には、固定治具30、40は、溝21と固定ブロック22の形状に合わせた形状に形成する。このように、一対の固定部20と固定治具30、40は、矩形状以外の形状に形成してもよい。一対の固定部20と固定治具30、40は、曲面を有する形状に形成してもよい。
【0040】
図7は、平面視円形状の一対の固定部を示す斜視図である。図7では、一対の固定部50と固定治具60を示している。
固定部50の溝51は、図示のように、それぞれ円弧状に形成される。一対の固定部50の溝51は、全体として円形状の溝になる。一対の固定ブロック52は、溝51内で、全体として円錐台形状に形成される。固定治具60は、円筒状をなし、円形状の溝51に挿入される。これにより、固定治具60が、一対の固定部50に取り付けられて、一対の固定ブロック52の周りに嵌合する。固定治具60は、一対の固定ブロック52を固定して、隣り合う分割モデル10を拘束及び固定する。また、固定治具60は、隣り合う分割モデル10の位置を合わせる。
【0041】
なお、本実施形態では、取付工程と組立工程を順次行うように説明した。取付工程は、固定治具30を複数の分割モデル10に取り付ける工程である。組立工程は、複数の分割モデル10を固定してマスターモデル1を組み立てる工程である。これに対し、取付工程と組立工程を同時に行うようにしてもよい。この場合には、2つの分割モデル10を固定治具30により固定した後、次の分割モデル10を、固定治具30により、固定済みの2つの分割モデル10に固定する。このように、複数の分割モデル10を順次固定して、マスターモデル1を組み立てる。
【0042】
(マスターモデルの製作試験)
本発明の効果を確認するため、固定治具30、40により、それぞれ複数の分割モデル10を固定して、マスターモデル1を製作した。また、比較のため、上記した従来の製作方法で、マスターモデル1を製作した。その結果、従来の製作方法では、マスターモデル1の製作に1時間かかった。一方、本実施形態の製作方法では、20分でマスターモデル1を製作できた。従って、本実施形態により、マスターモデル1の製作に要する工数を削減できることが分かった。
【符号の説明】
【0043】
1〜4・・・マスターモデル、5・・・配列部材、6・・・調整部材、7・・・ズレ部、10〜15・・・分割モデル、16・・・トレッド面、20・・・固定部、21・・・溝、22・・・固定ブロック、30・・・固定治具、40・・・固定治具、41・・・フレーム、42、43・・・固定片、44、45・・・クリップ部材、50・・・固定部、51・・・溝、52・・・固定ブロック、60・・・固定治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割モデルを組み合わせてタイヤ成形用金型のマスターモデルを製作するマスターモデルの製作方法であって、
複数の分割モデルをタイヤ周方向に並べて配置する配置工程と、
隣り合う分割モデルの位置を合わせて分割モデルを拘束する固定治具を、複数の分割モデルに取り付ける取付工程と、
固定治具により複数の分割モデルを固定して、マスターモデルを組み立てる組立工程と、
を有するマスターモデルの製作方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたマスターモデルの製作方法において、
固定治具により、隣り合う分割モデルのタイヤ周方向又はタイヤ半径方向の移動を拘束する工程を有するマスターモデルの製作方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたマスターモデルの製作方法において、
取付工程が、隣り合う分割モデルが有する一対の固定部に固定治具を取り付ける工程と、固定治具により一対の固定部を一体に固定して隣り合う分割モデルを拘束する工程とを有するマスターモデルの製作方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたマスターモデルの製作方法において、
取付工程が、一対の固定部に設けられた一対の固定ブロックを並列させる工程と、枠状部材からなる固定治具を一対の固定ブロックの周りに嵌合させる工程とを有するマスターモデルの製作方法。
【請求項5】
請求項3に記載されたマスターモデルの製作方法において、
取付工程が、一対の固定部に設けられた一対の固定ブロックを並列させる工程と、クリップ部材からなる固定治具により一対の固定ブロックを締め付ける工程とを有するマスターモデルの製作方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載されたマスターモデルの製作方法において、
取付工程が、隣り合う分割モデルの位置にズレが生じたときに、ズレに応じた厚さの調整部材を一対の固定部に配置してズレを調整する工程と、調整部材を配置した一対の固定部に固定治具を取り付ける工程とを有するマスターモデルの製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22751(P2013−22751A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156611(P2011−156611)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】