説明

マトリックスからのダイヤ砥粒の突出高さを調節でき、内外径を強固に維持できる表面植込み型ダイヤモンド・ビット

【課題】表面植込み型ビットのダイヤモンドを保持するマトリックス面と、掘削する岩とのクリアランスを大きく取り、穿孔の冷却と切り屑の除去を目的とした冷却水の循環をスペースを確保する。
【解決手段】刃先となるダイヤ砥粒10を保持するマトリックス20を高さ方向に二階建て構造とし、二階層はダイヤ粒子より十分大きい台座で構成させ、マトリックスより突出させた二階層の台座を構築する。製造は含浸法で、グラファイト製のメス型を加工して構成する。二階層部はダイヤの埋め込み孔をグラファイト型にドリル、エンドミルやボールエンドミルで加工成形する。ダイヤを乗せる一段目の台座の中心に、更にダイヤサイズに応じた深さに加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地下の地質調査や地下資源の探索のため加工をする。その地質調査用の加工技術とその加工工具の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
技術背景の一つとしてダイヤモンドビットにおいて、ビットのマトリックスからのダイヤの突出量を確保することは連続先行加工では非常に重要である。それはビットによる穿孔加工が連続的に遂行するためには、ダイヤが被削体(地盤の岩、岩盤)に常に深く食い込むことが重要になる。このため大きなダイヤ砥粒ほど粒径が大きいので、その突出量を大きくでき、穿孔には有利に作用する。粒径の大きい天然ダイヤや人工の細かいダイヤを高温高圧で焼成結合体(以下;焼結体)を刃先として構成することが多い。
【0003】
しかし、ダイヤモンド粒径や焼結体にはコストとのバランスでダイヤを保持するマトリックス面とのクレアランスを常に高くするには限度がある。しかも、天然ダイヤの天然としての性質再現性や品質幅の確保、輸入依存からの為替変動や1粒(二つとして同じダイヤはない)あたりのコスト要因が工具構成因子としてのリスクを高めることになる。しかも、これらの組み合わせ総合体として、かなり高額品な製品となることが多く、競争社会における不利な要素が多く現れることになる。
【特許文献】
【0004】
【特許文献2】特願1998−146771号公報
【特許文献3】特願2003−027037号公報
【実案文献1】
実願2008−002506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、文献1、3は出願人の先願の実用新案・特許であるが、技術分野や技術的工法は同じである。したがって、原理・原則の理解の向上には効果的であるし、製品特許を願う出願人の意志が反映されている。特に、ダイヤを包含式にマトリックス中に混合分散させて、マトリックスの摩耗と共に、ダイヤ刃先を露出させる方式であるインプリ方式であるし、文献2も同じインプリ方式である。本願とは原則技術・加工方式
【0006】
が異なるが、ダイヤを含まない層をマトリックスとして構築するこの新技術は、新規性・先行技術が明白で、顕著な効果を発揮している。ちなみにこれらの方式ではダイヤの突出量は測定値ではあるが、数ミクロンの値である。しかしながら、文献3では数十ミクロンと10倍以上向上することができる。文献2の工具の効能は不明であるが、顕著な効果を業界として報道されていないことを鑑みるに不適であろうと推察される。
【0007】
一般的に天然ダイヤの突出量を確保するためには粒径の大きなダイヤ又は人工の細かいダイヤを高温高圧で焼結体(以下;焼結体)として見掛け上大きな粒径とした焼結体(PDC(:多結晶ダイヤモンド)で突出量を大きく出していた。従来の表面植込み型ビットは掘削する岩と刃先のダイヤモンドを保持するマトリックス面とのクレアランスが大きく取れないため、穿孔の冷却と切り屑の除去を目的とした冷却水(以下;スライム水)が循環することで、土砂摩耗効果、ビット先端やマトリックス層をエロージョン(erosion)摩耗を生ずる。また、排出する流体を阻止し目詰まりの発生を起こし、工具の異常摩耗、穿孔加工率の低下を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
問題の解決のために、刃先となるダイヤ砥粒を保持するマトリックスを高さ方向に二階建て構造とし、二階層はダイヤ粒子より十分大きい台座で構成させ、マトリックスより突出させた二階層の台座を構築する。原理的に階層をいくらでも増やせるが構造安定度である強度向上や型の加工には限度があり、2ないし3層以内が適している。その製造法の概略は含浸法であるからメス型であるグラファイト製の型(以下;型と略す)を加工して構成する。二階層部は刃先となるダイヤを突出させるための孔を型にドリル、
【0009】
エンドミルやボールエンドミルで、容易に加工成形できる。最近のNC機搭載工作機は加工精度、能率、時間も、それを容易にしている。ダイヤを乗せる一段目の台座の中心に、更にダイヤサイズに応じた深さに加工する。そうすることで、型には順次2階層となる、円筒状のメス型を構成できる。このメス型の中心にダイヤを天然・有機糊で設置して仮止めする。メス型の内面に仮止めした状態で、次に台金を中心決めの治具中心でセットして固定さす。
【0010】
更にメス型と台金の隙間に骨組みを構成するスケルトン材料を流し込み充填させる。そして、そのスケルトン充填状態の上に溶解してスケルトン隙間に、バインダーとなる粉末を乗せてスケルトン粉末とバインダーの濡れが向上するように、金属酸化物で構成されるガラス成分となるフラックスで覆う。この状態で型とフラックスを十分乾燥させる。そして、型を加熱炉に入れて加熱することで溶けたバインダーを含浸させることで本法を実施できる。
【0011】
十分高い温度に加熱することで、バインダーはスケルトン層の空間に浸み込み、ダイヤをカシメ構造としている円筒状のスケルトンもバインダーで濡れて、ダイヤを固定することができる。こうすることで、従来不可能であったダイヤとマトリックスからの突出量を2倍以上に確保する事ができる。ダイヤが乗る部分をスケルトンとバインダーで押し上げた構造であるから、元々のマトリックス層から比較するとダイヤを物理的に表面に突出させたことになる。
【発明の効果】
【0012】
一般的にダイヤモンドの突出量を確保するためには大きなダイヤモンド又は人工的に大きく造ったPDC(多結晶ダイヤモンド)で突出量を大きく出していた。二段形状にする事で、小さなダイヤモンドでも大きな突出量を確保する事が可能となる。小さなダイヤモンドで大きな突出量が出せるため、ダイヤ費が大きく軽減できる。
【0013】
従来の表面植込み型ビットは掘削する岩と刃先のダイヤモンドを保持するマトリックス面とのクレアランスが大きく取れないため、スライム水を排出する流体を阻止し、目詰まりの発生を起こし掘削性能を低下させた。
二段形状の場合、従来の2倍以上のクレアランスを取ることができるため、流体の流れがよくスライムの排出が容易で掘削性を維持する事ができる。ダイヤ砥粒の場合、密に植え込まれているため、回転掘削で採取される採取コアの外形外観は滑らかな状態で、採取コア分析のために良好な状態でコアが採取できる。
【0014】
メタルビットでは軟硬岩の互層では刃先の摩耗が早く掘削性の低下が早い。
ダイヤモンドを使用しているため、軟岩から硬岩まで幅広く使用できる。
硬軟岩で使用できるため、ビットの交換が不要となり作業効率がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1
【0015】
実施形態は図を参照しながら説明する。図1は従来品の見取り図であるが、ダイヤ(10)はマトリックス(20)から突出する高さはダイヤ砥粒(10)の直径から30〜40%程度が限界である。図1の詳細部分がそれを示す。この突出の量を改善して、より大きく突出させようとするのが本願の基本である。 図2は埋め込型ダイヤ・ビット(1)の外径が66mmで、内径50mmの一般的なサイズの本発明実施事例のダイヤビット(1)である。
【0016】
従来品と同等な砥粒間隔とダイヤ植込み数が同じである。マトリックス(20)が直径約3mmで、円柱(22)で試作した実施例である。回転数180回転/毎分で回転させ、スライム水は10L/毎分で供給しながら泥岩、砂岩を試掘削した。性能としての掘進速度は15%増加し、加圧変動幅が100Kg〜130Kgの範囲で極めて安定した状態が維持できた。採取されたコア表面は従来品に比較すると明確な堆積状態が確認でき、非常に良好な植込み型ダイヤ・ビット(1)であることが確認できた。相対的な工法全体では時間
【0017】
短縮と油圧駆動安定化で、約30%の試掘能率の向上が確認された。使用後のビット表面を詳細に観察すると、破砕したダイヤ(10)は10%、脱落したダイヤ(10)は5%以内であった。マトリックス(20)は図2詳細図の上部円筒部(22)の摩耗が顕著であったが、ダイヤの保持に影響はなかった。これは工具損耗の相対評価で判断すると、全体で85%と低基準で非常に向上したことになる。
【0018】
円筒(22)の上部が片摩耗しやすいことが第1実施形態で判明したので、第2事例を図3に示した。ダイヤビット1の外径が66mmで、内径50mmと図2事例と同様で一般的なサイズのダイヤビット(1)である。従来品と同等な砥粒間隔とダイヤ植込み数である。マトリックス(20)の円柱(22)に対してダイヤ1を内径側は内接円弧(26)に沿うようにして、外径側が外接円弧(27)の沿うように形成しR面を大きくして高さ1.2mmで試
【0019】
作した。全体的にはダイヤ突出量、約1.7倍突出させた形状となる。性能確認の試験条件は図1の実施形態と同一被削材で、ローム層岩(泥岩・砂岩)を試掘削した。その結果、掘進速度が20%増加し、加圧変動幅が90Kgから120Kgの範囲で安定した良好な状態が実現できた。採取されたコアは図1の従来品と図2、の実施形態試作品に比較しても、更に良好な堆積層が確認できた。摩耗した表面では土砂摩耗はほとんど生じなく平滑で、ダイヤ自体の破砕、脱落も生じることなく、同程度以上に改善される
【0020】
ことがわかった。試作条件の検討のなかで、円柱(22)にしてマトリックス(20)を底上げすると明確な改善が確認できた。ダイヤ(10)の大きさの1.5から4倍程度が適応でき、好ましくは2から3倍程度がさらに良い。円柱(22)の高さの検討値は1mmから5mm程度まで検討したが、1.5mmの場合はマトリックス(20)の土砂摩耗が全く生じないことが判明した。グラファイト型(30)の肉厚、強度などの点から大きな問題はなく変更できて、かつ著しい性能改善が実現できる。
【0021】
図3はマトリックス(20)に対して、ダイヤ(10)の位置関係を内径側は内径円弧(26)に内接するように成形する。また、外径円弧(27)はコーナーに相当する部分は二次元空間から三次元空間での摩耗の形態差を比較して外径円弧(27)のように内径は中心側に外径側は外径に内接するようにダイヤ(10)を設置試作した。周辺部分の要素から円筒(22)の中心から円筒内面側(26)と外面側(27)では円筒(22)に埋没させた構造の実施事例を記載する。
【0022】
ダイヤ(10)の位置は円筒状(22)であるから、内面側(26)と外面側(27)は土砂摩耗が顕著に生ずるので円筒(22)に内・外接する構成を試作した。円筒(22)が直径3mm高さ1mmで構成させた場合、円筒(22)の中心より、内径側(26)は内面側に、外径側(27)は外径側に極力内・外接させるのがよかった。逆に、ダイヤ(10)を各内・外径側に多くした場合はダイヤ(10)の脱落が多かった。これらの構成はグラファイト型(30)を加工することで比較的容易に構成できた。内・外径に近い程よい。いずれもしても細径エンドミルで型(30)は軸中心に並行で、ダイヤの設置が容易にできるように加工できる。
【0023】
その全体配置は図3に示したが、経験的ノウハウが多く一粒のダイヤ刃先1が回転した時に二重にオーバーラップしないように構成するのがポイントである。その結果、土砂摩耗軽減が顕著に実現できた。掘進速度は図3試作改良品よりさらに5%増加して、加圧変動幅は100Kg〜130Kgの範囲で安定した状態であった。採取されたコアは、図1の従来法とは明らかに向上しているのが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の考え方は砥石の結合度合いを巧みに利用したもので、一般の鉄系粉末冶金製品や超硬合金製品にも応用できる。セラミックスなどの窯業関連製品に使える。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来工具の側面図および、部分断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態を示している。
【図3】この発明の第2実施形態を示している。
【符号の説明】
【0025】
(1)植込み型ダイヤモンドビット
(10)ダイヤモンド砥粒(ダイヤ)
(20)マトリックス
(22)円柱・マトリックス
(26)内接円弧
(27)外接円弧
(30)グラファイト型
(70)台金(母材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド砥粒(以下;ダイヤと略す)を表面植込み型ダイヤモンド・ビット(以下;植込み型ダイヤ・ビットと略す)において、台金を構成する加工成形された金属台金とダイヤをカシメ固定させた金属溶浸合金(以下;含浸合金、マトリックスと略す)部分をマトリックスで台座を円筒状に盛り上げて構成された先端が、そのマトリックス表面より高い位置にダイヤを設置させた植込み型ダイヤ・ビット
【請求項2】
台金を構成するマトリックスの台座は円筒状に盛り上げて構成された構造で、かつ植込み型ダイヤ・ビットの内・外径の直径を強力に維持できるようにダイヤを内・外径に内接するように埋没させてなる構造をしている、請求項1記載の植込み型ダイヤ・ビット。
【請求項3】
マトリックス層を構成する複合金属合金は含浸法(Infiltration法)目的形状を構成できる成分スケルトン層(Skelton層)と自ら溶解してスケルトン層の空隙に含浸、表面張力での浸透などで隙間を埋めるバインダー層(Binder層)とからなる、請求項1記載の植込み型ダイヤ・ビット。
【請求項4】
ダイヤ砥粒は天然に産出されるもの(以下;天然ダイヤ)、人工的に超高圧で形成された焼結体(以下;焼結体)であって、その組み合わせで使用することを含み、かつ単独でも使用される請求項1記載の植込み型ダイヤ・ビット。
【請求項5】
マトリックス層のスケルトン層を構成する金属はタングステン、タンタルの金属、炭化物、窒化物、ホウ素化物であって、この相状態の組み合わせ、あるいは単独でも合金状態でもスケルトン層を構成できる、請求項1記載の植込み型ダイヤ・ビット。
【請求項6】
自ら溶解してスケルトン層の空隙に含浸、あるいは表面張力を低下させて、スケルトン表面と濡れ易く、浸透効果などで隙間を完全にバインダー合金内部の空間を無くするような性質を保持して、銀、銅、錫、アンチモン、マンガンなどの金属、炭化物、窒化物、ホウ素化物の合金であって、これらの組み合わせで構成されるスケルトン部材の空間をなくして成形できる、請求項1記載の植込み型ダイヤ・ビット。

【図1】
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【図2】
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【図2】
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【図3】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67573(P2012−67573A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230966(P2010−230966)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(599096835)
【出願人】(501021782)株式会社クリステンセン・マイカイ (4)
【Fターム(参考)】