説明

マニピュレータおよびロボット

【課題】機構や制御アルゴリズムを単純にしつつも、様々な形状の物体を確実に把持することができるマニピュレータを提供する。
【解決手段】複数の関節軸111,112,113及び複数のリンク131,132,133を有し、複数の関節軸111,112,113の回転角が一定の関係を保つように複数のリンク131,132,133が連動して閉じる方向に動く指1と、指1と対向して配置され、複数の関節軸211,212,213及び複数のリンク211,212,213を有し、複数のリンク231,232,233のうち根元側のリンク231から順に閉じる方向に動き、且つ根元側のリンク231が物体に接触すると、根元側のリンク231に隣り合うリンク232が閉じる方向に動く指2と、指1及び指2を駆動する駆動源100,200を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を把持するマニピュレータおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に工場等で用いられる、定型作業のみを行い、一定形状の物体のみを把持するようなロボットアームとグリッパが多く開発されてきた。しかし近年、人のそばで動き、人の生活を支援するアーム付きのサービスロボットが開発されてきている。このようなロボットでは、定型作業のみを行うのではなく、様々な状況に対応した作業を行わなければならない。又、扱う物も不定形状をしており、この不定形状の物体を確実に把持することが求められる。
【0003】
このために、グリッパに取り付けた指の複数の関節を複数のアクチュエータで駆動し、物体の形状にならって把持を行う機構が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。又、複数の関節を駆動するアクチュエータを1つにし、各関節をワイヤで連結し、各関節を連動させることにより、物体の把持を行う機構が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。又、アクチュエータを1つにし、各関節に配置したクラッチを利用することで物体を包み込むように把持する機構が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の機構では、複数のアクチュエータを用いるため、機構が複雑になり、また重量も増加する。更に複数のアクチュエータの制御も複雑になってしまう。又、特許文献2の機構では各関節が完全に一定の関係で連動してしまい、指が物体の表面形状に沿った姿勢をとることができない。又、特許文献3の機構では、各関節にクラッチを配置することで、機構は複雑になり、また重量も増加する。又、アクチュエータをできるだけ省略しようとした従来のグリッパでは、茶碗のような凹形状の物体や、箸のような細い棒状の物体等の様々な形状に対して同一の機構では対応できなかった。
【特許文献1】特開2005−46980号公報
【特許文献2】特開2003−211383号公報
【特許文献3】特開2004−223687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機構や制御アルゴリズムを単純にしつつも、様々な形状の物体を確実に把持することができるマニピュレータおよびロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、(イ)複数の第1の関節軸及び複数の第1のリンクを有し、複数の第1の関節軸の回転角が一定の関係を保つように複数の第1のリンクが連動して閉じる方向に動く第1の指と、(ロ)第1の指と対向して配置され、複数の第2の関節軸及び複数の第2のリンクを有し、該複数の第2のリンクのうち根元側の第2のリンクから順に閉じる方向に動き、且つ根元側の第2のリンクが物体に接触すると、根元側の第2のリンクに隣り合う第2のリンクが閉じる方向に動く第2の指と、(ハ)第1及び第2の指を駆動する駆動源とを備えるマニピュレータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機構や制御アルゴリズムを単純にしつつも、様々な形状の物体を確実に把持することができるマニピュレータおよびロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第4の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す第1〜第4の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るマニピュレータは、図1に示すように、複数第1のリンク131,132,133及び複数の関節軸111,112,113を有し、複数の関節軸111,112,113の回転角が一定の関係を保つように複数のリンク131,132,133が連動して閉じる方向に動く第1の指1と、第1の指1と対向して配置され、複数の関節軸211,212,213及び複数のリンク211,212,213を有し、複数のリンク231,232,233のうち根元側のリンク231から順に閉じる方向に動き、且つ根元側のリンク231が物体に接触すると、根元側のリンク231に隣り合うリンク232が閉じる方向に動く第2の指2と、第1の指1及び第2の指2をそれぞれ駆動する複数(2つ)の駆動源100,200を備えるグリッパである。
【0011】
第1の指1及び第2の指2は、拳部3に取り付けられている。駆動源100,200は拳部3に組み込まれている。駆動源100,200としては、アクチュエータ等が使用可能である。駆動源100,200の駆動は、図示を省略した制御部により制御される。
【0012】
第1の指1において、図2に示すように、駆動源100に取り付けた駆動軸110にはプーリ101が固定されている。リンク131,132,133は、関節軸111,112,113を軸として回転自在にそれぞれ接合されている。関節軸111にはプーリ102及びプーリ102と一体化した歯車142が配置され、リンク131に固定されている。リンク131には更に回転軸161が回転自在に取り付けられ、回転軸161にはプーリ103と歯車143が一体となった伝達機構{103,143}が配置されている。関節軸112には、プーリ104及びプーリ104と一体化した歯車144が配置され、リンク132に固定されている。リンク132には回転軸162が回転自在に取り付けられ、回転軸162にはプーリ105と歯車145が一体となった伝達機構{105,145}が配置されている。関節軸113には、プーリ106が配置され、リンク133に固定されている。
【0013】
プーリ101とプーリ102とはタイミングベルト121で連結され、プーリ103とプーリ104とはタイミングベルト122で連結され、プーリ105とプーリ106とはタイミングベルト123で連結されている。
【0014】
駆動源100を駆動すると、駆動源100の動力がタイミングベルト121によりプーリ102に伝達され、プーリ102と一体化したリンク131が閉じる方向に動く。更に、プーリ102と一体化した歯車142と、歯車143とプーリ103が一体になった伝達機構{103,143}との間で動力が伝達される。この伝達機構{103,143}からタイミングベルト122によりプーリ104と一体化したリンク132に動力が伝達され、リンク132が閉じる方向に動く。更に、プーリ104と一体化した歯車144と、歯車145とプーリ105が一体になった伝達機構{105,145}との間で動力が伝達される。この伝達機構{105,145}からタイミングベルト123によりプーリ106と一体となったリンク133に動力が伝達され、リンク133が閉じる方向に動く。このように、関節軸111,112,113の回転角が一定の関係を保ちつつ連動して回転する。
【0015】
一方、図1に示した第2の指2において、図3に示すように、駆動源200に取り付けた駆動軸210にはプーリ201が固定されている。関節軸211には、プーリ202及びプーリ202と一体化しプーリ202よりも径が小さいプーリ203が回転自在に接合されている。関節軸212には、プーリ203よりも径が小さいプーリ204、及びプーリ204と一体化しプーリ204よりも径が大きいプーリ205が回転自在に接合されている。関節軸213には、プーリ205より径が小さいプーリ206が結合されている。
【0016】
プーリ201とプーリ202とはタイミングベルト221で連結され、プーリ203とプーリ204とはタイミングベルト222で連結され、プーリ205とプーリ206とはタイミングベルト223で連結されている。関節軸211,212,213には、隣合うリンク231,232,233同士を隣り合う前記第2のリンクを開く方向に付勢するように、弾性部材241,242,243がそれぞれ取り付けられている。弾性部材241,242,243としては、バネ等が使用可能である。
【0017】
第2の指2は、根元側のリンク231から順に第1の指1側に閉じる方向に動き、リンク231が物体表面に接触すると、リンク231と隣り合うリンク232が閉じる方向に動く。リンク232が物体表面に接触すると、リンク232と隣り合うリンク233が閉じる方向に動く。このように、物体の表面形状に沿った形状でリンク231,232,233が閉じる方向に動く。
【0018】
ここで、リンク231から順に閉じる方向に動く機構とするためには、弾性部材241,242,243による力が、駆動源200の力をそれぞれ上回っている状態から、関節軸211から弾性部材243まで順に、弾性部材241,242,243による力よりも、駆動源200による力が上回っていけばよい。つまり、第2の指2の根元側の関節軸111から順にn=1、2、3・・・とする場合、n番目の関節軸とn+1番目の関節軸の間で動力伝達されるプーリ径をRn、Rn+1、弾性部材の弾性係数をKn、Kn+1とすると、これらの関係が下記式(1)を満たすようにする。
【0019】

(Rn+1/Rn)<(Kn+1/Kn)…(1)

次に、図4〜図8を用いて、コップのような円筒状の物体10を把持する方法を説明する。
【0020】
図4に示すように、円筒状の物体10にグリッパが近づいた状態から、まず第1の指1が、関節軸111,112,113が一定の回転角で連動して閉じ始める。図5に示すように、第1の指1が物体10と接した状態になると、第2の指2が閉じ始める。
【0021】
第2の指2は、まず根元側の関節軸211から閉じ始める。図6に示すように、リンク231が物体10に接すると、リンク232が閉じ始める。図7に示すようにリンク232が物体10に接すると、リンク233が閉じ始める。この結果、図8に示すように第2の指2のリンク231,232,233が物体10表面形状に沿うように閉じて、第1の指1及び第2の指2で物体10を把持する。
【0022】
このように、第2の指2が物体10の表面形状に沿うように閉じることにより、物体10と接触する面積を大きくすることができ、物体10を確実に把持することができる。
【0023】
又、関節軸111,112,113が一定の回転角で連動している第1の指1を先に閉じておくことで、第2の指2を閉じているときに、グリッパから物体10が離れないように支えることができる。このため、物体10が動いてグリッパとは逆方向に押し出されて把持できなくなってしまうことを防ぎ、確実に把持することができる。
【0024】
次に、図9〜図12を用いて、茶碗のような、支持部11xが設けられた凹形状の物体11を把持する方法を説明する。
【0025】
まず、図9に示すように、第1の指1が閉じて凹形状の物体11の外側に沿うような姿勢をとる。次に、第2の指2が、リンク231から閉じ始める。図10に示すように、リンク231が物体11の内側表面に接すると、リンク232が閉じ始める。図11に示すようにリンク232が物体11の内側表面に接すると、リンク233が閉じ始める。この結果、図12に示すように、物体11の内側に沿った形状になる。
【0026】
このように、通常は把持しにくい凹形状の物体11でも、第2の指2が物体11の内側の表面に沿った形状となるので、接触面積を大きくすることができ、確実に把持することができる。
【0027】
又、第2の指2を凹形状の物体11に沿わせようとする場合、根元からリンク231,232,233が閉じる方向に動くという構成上、第2の指2の初期姿勢を図9のように外側に反り返る姿勢とし、この状態から閉じ始めるため、凹形状の物体11表面にも沿わせることができる。
【0028】
次に、図13〜図16を用いて、箸のような細い棒状の物体12を把持する方法を説明する。
【0029】
まず、図13に示すように、第1の指1が閉じて棒状の物体12に沿うような姿勢をとる。次に第2の指2がリンク231から閉じ始める。図14に示すように、リンク231がリンク131に接すると、リンク232が閉じ始める。図15に示すように、リンク232がリンク132に接すると、リンク233が閉じ始める。この結果、図16に示すように、第1の指1及び第2の指2の先端で物体12を挟んで持つことができる。
【0030】
このように本発明の第1の実施の形態によれば、互いに異なる構造の第1の指1及び第2の指2を使用することで、できるだけ駆動源の数を減らし、機構や制御アルゴリズムを単純にしつつも、円筒形状の物体10、凹形状の物体11、細い棒状の物体12等の様々な不定形状の物体に対して、物体の表面形状に沿った姿勢をとりながら、接触面積をできるだけ大きくして、確実に安定把持することができる。
【0031】
(アームへの応用)
本発明の第1の実施の形態に係るマニピュレータの一例としてのグリッパを取り付けたアームについて説明する。
【0032】
図17に示すように、ロボット本体95にアーム98及びグリッパ99が取り付けられている。アーム98は、ロボット本体95側から、肩関節8、上腕部7、肘関節6、前腕部5及び手首関節4を有する。肩関節8、肘関節6及び手首関節4のそれぞれは、1つもしくは複数の回転自在度を有する。なお、肩関節8、肘関節6及び手首関節4が合計で6自由度以上あれば、把持対象の物体15に対してグリッパ99を任意の位置、姿勢にもっていくことができる。更に、カメラ5aを前腕部5に、グリッパ99の方向を向けて配置する。グリッパ99は、第1の指1、第2の指2及び拳部3を有する。
【0033】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るグリッパ99を取り付けたアーム98の動作について、図18のフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
ステップS21において、把持対象の物体15がありそうな場所にカメラ5aが向くようアーム98を制御する。この際には肩関節8、肘関節6及び手首関節4を動かして、カメラ5aを把時対象の物体15がありそうな方向に向ける。ステップS22において、カメラ5aで取得した画像から物体15の位置を検出する。この処理としては、画像から物体15の輪郭を切り出したり、色の違いから物体15の位置を検出する。
【0035】
ステップS23において、把持対象の物体15を検出できたか判断する。把持対象の物体15を検出できたと判断した場合、ステップS24において、把持対象の物体15が、グリッパ99の把持可能範囲に入るようアーム98を制御する。「把時可能範囲」とは、グリッパ99を閉じたときに物体15を掴める範囲を意味し、概ね、グリッパ99に近く、第1の指1及び第2の指2の中央にあるほど物体15を掴める可能性が高くなる。アーム98の制御は肩関節8、肘関節6及び手首関節4の自由度を動かして行う。ステップS23において物体15を検出できないと判断した場合、ステップS21の手順に戻り、カメラ5aの方向をもう一度変えてみる。
【0036】
ステップS25において、把持対象の物体15がグリッパ99の把持可能範囲内にあるか判断する。把持対象の物体15がグリッパ99の把持可能範囲にあると判断した場合、ステップS26において、グリッパ99を閉じて、物体15を把持する。最後に、ステップS27において、カメラ5aでグリッパ99の中に把持対象の物体15があるか確認する。このとき、カメラ5aの画像から物体15の位置とグリッパ99の位置を検出し、グリッパ99の中に把時対象の物体15があれば把時動作を完了する。
【0037】
本発明の第1の実施の形態に係るグリッパ99を取り付けたアーム98によれば、グリッパ99を適当な位置に移動させて物体15を確実に把持することができる。
【0038】
(ロボットへの応用)
本発明の第1の実施の形態の応用例として、マニピュレータの一例としての双腕ロボットについて説明する。本発明の第1の実施の形態に係るロボットは、図19に示すように、複数(2つ)のアーム98,98xを搭載している。複数のアーム98,98xを用いて複数の作業を同時に行ったり、複数のアーム98,98xを協調させた作業を行うことができる。
【0039】
ロボット本体95には、図示を省略した制御部が内蔵されている。制御部は、グリッパ99,99x及びアーム98,98xを含むロボット全体の制御を行う。ロボット全体は、移動機構96により移動することができる。移動機構96は例えば左右独立駆動車輪で構成される。移動機構96を制御することにより、ロボット全体は目標位置姿勢に移動することができ、物体へのアプローチがしやすくなる。又、ロボット本体95の低い位置には、周りの障害物を検出するセンサ97が取り付けられている。
【0040】
ロボット本体95の上方には頭部91が配置され、ロボット本体95に対して頭部91の方向を変える駆動機構を介して連結されている。頭部91には視覚92,92xが搭載されている。視覚92,92xは、例えばカメラ等を用いて画像処理によりアーム98,98xで作業をする場合の作業対象物の位置、姿勢検出等を行う。又、ロボットにはスピーカ及びマイク93が取り付けられており、人間とコミュニケーションをとることもできる。ロボット本体95にはアーム98,98xが取り付けられている。アーム98,98xは、肩関節8,8x、上腕部7,7x、肘関節6,6x、前腕部5,5x及び手首関節4,4xをそれぞれ備える。アーム98,98xのそれぞれには、グリッパ99,99xが取り付けられている。グリッパ99,99xは、第1の指1,1x及び第2の指2,2xをそれぞれ備える。
【0041】
本発明の第1の実施の形態に係るロボットは、図20に示すように、大きいもしくは重い物体16を持つ場合、2つのアーム98,98x及びグリッパ99,99xを用いて物体16を把持することができる。
【0042】
次に、マニピュレータの動作を、図21のフローチャートを参照しながら説明する。ステップS31において、ロボットに搭載されている視覚92,92xで把持対象の物体16の大きさ、位置を確認する。物体16の検出はカメラ画像から物体16の輪郭を抜き出したり、色の検出により物体16を抜き出したりして行う。
【0043】
ステップS32において、このとき検出した物体16がグリッパ99,99xのうち片方で持てる大きさかどうかを判断する。グリッパ99,99xのうち片方で持てないと判断した場合は、ステップS33にぴて、移動機構96とアーム98,98xを制御して物体16の両側からグリッパ99,99xを近付ける。ステップS34において、グリッパ99,99xで物体16を挟んで把持する。ステップS35において、最後に物体16を把持できたかどうかを確認する。把持できたことを確認したら、処理を完了する。一方、物体16を把持できていない場合、ステップS31の手順に戻る。
【0044】
ステップS32において、グリッパ99,99xのうち片方で持てる大きさであると判断した場合には、ステップS36において移動機構96とアーム98,98xを用いて片方のグリッパ(例えばグリッパ99)を把持対象の物体16に近付け、ステップS37において片方のグリッパ99で物体16を把持する。ステップS38において物体16を把持できたことを確認したら処理を完了する。一方、把持できなければステップS33に進み2本のアーム98,98x及びグリッパ99,99xを使って物体16を把持する。
【0045】
本発明の第1の実施の形態に係るロボットによれば、大きいもしくは重い物体16に対しても両側から2つのアーム98,98x及びグリッパ99,99xがアプローチすることにより、物体16への接触面積をより大きくすることができ、物体16を確実に把持することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、柔軟部材を配置したグリッパについて説明する。物体を確実に把持するために、物体とグリッパとの接触面積をできるだけ増やしたいが、リンクのみでは限界がある。そこで、図22に示すように、第1の指1及び第2の指2の表面に柔軟部材41,42,43,44,45,46を配置する。第1の指1及び第2の指2の間の拳部3の表面にも柔軟部材40が配置されている。
【0047】
第1の指1において、図23に示すように、2枚の側板部材(第3のリンク)133は、図示を省略したねじ等を用いて中央部材14で接合されている。
【0048】
本発明の第2の実施の形態によれば、第1の指1及び第2の指2の表面に柔軟部材41,42,43,44,45,46を配置したことにより、物体との接触面積を更に大きくすることができる。
【0049】
又、第1の指1及び第2の指2の構造を、図23に示すような構造とすれば、第1の指1及び第2の指2の強度が確保でき、また組み立てやすく、メンテナンスもし易くなる。更に、柔軟部材41,42,43,44,45,46内には空間ができるので、柔軟部材が変形し易くなるという効果も有する。又、この空間に接触センサ等のセンサも配置して把持に利用することもできる。
【0050】
又、本発明の第2の実施の形態に係るグリッパは、第1の実施の形態に係るグリッパと同様に、アームに取り付けることが可能であり、そのアームをロボットに取り付けることも可能である。
【0051】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、複数の指を有するグリッパについて説明する。本発明の第3の実施の形態に係るグリッパは、図24に示すように、複数の第2の指2,2a,2b,2cを備える。
【0052】
複数の第2の指2,2a,2b,2cは1つの駆動源200により駆動される。駆動源200からタイミングベルト221を介して第2の関節軸(連結軸)251に駆動力が伝達される。関節軸211から複数の第2の指2,2a,2b,2cのプーリ203,203a,203b,203cを介して複数の第2の指2,2a,2b,2cの指先へそれぞれのタイミングベルト222,222a,222b,222cを介して動力が伝達される。
【0053】
図25に示すように、第1の指1及び複数の第2の指2,2a,2b,2cを用いて、3次元形状の物体15を把持することができる。ここで、図24に示したタイミングベルト222,222a,222b,222cの剛性を下げておけば、複数の第2の指2,2a,2b,2cが同じ角度で動くのではなく、複数の第2の指2,2a,2b,2cのそれぞれにかかる力によって、姿勢が変わる。つまり、複数の第2の指2,2a,2b,2cが、3次元形状の物体15の表面形状に沿った姿勢とすることができる。
【0054】
本発明の第3の実施の形態によれば、3次元形状の物体15をより確実に物体を把持することができる。又、1つの駆動源200で複数の第2の指2,2a,2b,2cを駆動するので、機構が複雑にしないで重量の増加も防止することができる。
【0055】
なお、図24では複数の第2の指2,2a,2b,2cを説明したが、第1の指1を複数備えていても良く、第1の指1及び第2の指2の両方をそれぞれ複数備えていても良い。
【0056】
又、本発明の第3の実施の形態に係るグリッパは、第1の実施の形態に係るグリッパと同様に、アームに取り付けることが可能であり、そのアームをロボットに取り付けることも可能である。
【0057】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態として、接触センサを取り付けたグリッパについて説明する。図26に示すように、第1の指1及び第2の指2の表面に、接触センサ51,52,53及び接触センサ54,55,56が取り付けられている。第1の指1及び第2の指2の間の拳部3の表面にも接触センサ50が取り付けられている。
【0058】
接触センサ50,51,52,53,54,55,56は、物体との接触を検出する。接触センサ50,51,52,53,54,55,56としては、ピエゾ素子等が使用可能である。接触センサ50,51,52,53,54,55,56は、図示を省略した制御部に接続されている。制御部は、接触センサ50,51,52,53,54,55,56による検出結果に応じて、第1の指1及び第2の指2の動作を制御する。
【0059】
次に、図26に示したグリッパの動作を、図27のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
ステップS11において、物体を把持するために第1の指1及び第2の指2を最大まで開く。ステップS12において、第1の指1を閉じる方向に動く。ステップS13において、第1の指1の指先の接触センサ53が反応したら、第1の指1が物体に回り込んで接触し、第2の指2を動かす準備が整ったと判断して、ステップS14において、第1の指1を停止する。
【0061】
ステップS15において、第2の指2を閉じる方向に動く。ステップS16において、第2の指2を閉じているときに、第2の指2の指先の接触センサ56が反応すれば、第2の指2も物体の表面形状に沿って展開し、物体を把持できたと判断して、ステップS17において第2の指2を停止する。
【0062】
ステップS18において、最後に物体をきちんと把持できているかどうかを第1の指1の接触センサ53及び第2の指2の接触センサ56の両方が反応しているかどうかを確認する。両方の接触センサ53,56が反応していれば物体を確実に把持できているものと判断し、把持動作を終了する。一方、接触センサ53,56のいずれかが反応していなければ、確実な把持ができていないということで、ステップS11の手順に戻り、もう一度最初から把持動作をやり直す。
【0063】
本発明の第4の実施の形態によれば、接触センサ50,51,52,53,54,55,56を使用することにより、より確実に物体を把持することができる。
【0064】
なお、図27を参照した説明では、接触センサ53,56の検出結果に応じて制御する一例を説明したが、他の接触センサ50,51,52,54,55の検出結果を適宜使用しても良い。
【0065】
又、本発明の第4の実施の形態に係るグリッパは、第1の実施の形態に係るグリッパと同様に、アームに取り付けることが可能であり、そのアームをロボットに取り付けることも可能である。
【0066】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第4の実施の形態及びその応用例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替第1の実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
例えば、リンク131,132,133及び関節軸111,112,113を有する第1の指1と、リンク231,232,233及び関節軸211,212,213を有する第2の指2を説明したが、第1の指1及び第2の指2のそれぞれは、2つのリンク及び2つの関節以上で構成される多関節の構造であれば良い。
【0068】
又、第2の指2は、弾性部材241,242,243として同じ弾性力のものを用い、プーリ径を変えることで式(1)を満たす構造としたが、式(1)を満たす構造であれば特に限定されず、例えば弾性部材241,242,243として異なる弾性力のものを用いプーリ径が同じ構造にしても良い。
【0069】
又、第1の指1と第2の指2の長さはそれぞれ特に限定されず、マニピュレータの用途等により適宜設定されるものである。
【0070】
このように、本発明はここでは記載していない様々な第1の実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパの構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパの第1の指1を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパの第2の指2を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパの動作を説明するための概略図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる基本動作を説明するための概略図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる基本動作を説明するための概略図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる基本動作を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる基本動作を説明するための概略図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる凹形状の物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる凹形状の物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる凹形状の物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる凹形状の物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる細い物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる細い物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる細い物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパによる細い物体の把持動作を説明するための概略図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパを取り付けたアームを示す概略図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係るグリッパを取り付けたアームの把持動作を説明するためのフローチャートである。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係るロボットを示す概略図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係るロボットの把持動作を説明するための概略図である。
【図21】本発明の第1の実施の形態に係るロボットの把持動作を説明するためのフローチャートである。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係るグリッパを示す断面図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係るグリッパを示す断面図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態に係るグリッパを示す断面図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係るグリッパを示す断面図である。
【図26】本発明の第4の実施の形態に係るグリッパを示す断面図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係るグリッパの把持動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1…第1の指
2…第2の指
3…拳部
4,4x…手首関節
5,5x…前腕部
5a…カメラ
6,6x…肘関節
7,7x…上腕部
8,8x…肩関節
10,11,12,15,16…物体
11x…支持部
14…中央部材
40,41,42,43,44,45,46…柔軟部材
50,51,52,53,54,55,56…接触センサ
91…頭部
92,92x…視覚
93…スピーカ及びマイク
95…ロボット本体
96…移動機構
97…センサ
98,98x…アーム
99,99x…グリッパ
100,200…駆動源
101,102,103,104,105,106,201,202,203,203a,203b,203c,204,205,206…プーリ
111,112,113…第1の関節軸
121,122,123,221,222,222a,222b,222c,223…タイミングベルト
131,132,133…第1のリンク
142,143,144,145…歯車
110,210…駆動軸
161,162…回転軸
211,212,213…第2の関節軸
231,232,233…第2のリンク
241,242,243…弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の関節軸及び複数の第1のリンクを有し、前記複数の第1の関節軸の回転角が一定の関係を保つように前記複数の第1のリンクが連動して閉じる方向に動く第1の指と、
前記第1の指と対向して配置され、複数の第2の関節軸及び複数の第2のリンクを有し、該複数の第2のリンクのうち根元側の第2のリンクから順に閉じる方向に動き、且つ前記根元側の第2のリンクが物体に接触すると、前記根元側の第2のリンクに隣り合う第2のリンクが閉じる方向に動く第2の指と、
前記第1及び第2の指を駆動する駆動源
とを備えることを特徴とするマニピュレータ。
【請求項2】
前記第2の指が、
前記複数の第2の関節軸にそれぞれ配置された複数のプーリと、
隣合う前記プーリ間で動力をそれぞれ伝達する複数の伝達機構と、
前記複数の第2の関節軸にそれぞれ配置され、隣合う前記第2のリンクを隣り合う前記第2のリンクを開く方向に付勢する複数の弾性部材
とを更に備え、
前記複数の第2の関節軸のうち先端の第2の関節軸に配置された前記プーリが前記複数の第2のリンクのうち先端の第2のリンクに固定され、
前記複数の第2の関節軸のうち先端の第2の関節軸以外の第2の関節軸に配置された前記プーリが対応する前記第2の関節軸に対して回転自在である
ことを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記複数の第2の関節軸に対して根元側の第2の関節軸から順にn=1、2、3、・・・とする場合、n番目及びn+1番目の第2の関節軸に配置されたプーリ径をそれぞれRn、Rn+1とし、前記弾性部材の弾性係数をそれぞれKn、Kn+1とすると、(Rn+1/Rn)<(Kn+1/Kn)の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
ロボット本体と、
前記ロボット本体に取り付けた複数のアームと、
前記複数のアームの先端にそれぞれ取り付けられた、請求項1〜3のいずれか1項に記載された複数のマニピュレータと、
前記複数のアーム及び前記複数のグリッパを前記物体を把持するように制御する制御部
とを備えることを特徴とするロボット。
【請求項5】
前記制御部が、
前記複数のアーム及び前記複数のマニピュレータのうち一対のアーム及びマニピュレータで前記物体を把持することができるか否か判断し、
前記物体を把持できないと判断したとき、前記一対のアーム及びマニピュレータと該一対のアーム及マニピュレータと異なる一対のアーム及びマニピュレータとを前記物体を把持するように制御する
ことを特徴とする請求項4に記載のロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2009−28859(P2009−28859A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196327(P2007−196327)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】