説明

ミシン及びミシンの制御方法

【課題】縫製作業を開始することなく上糸に付加する張力の確認を行うことができるミシン及びミシンの制御装置を提供する。
【解決手段】CPUは、足踏みペダルの位置が踏み返し位置(Pb1)以上踏み返された位置である駆動領域に属するか否かを判断する(S90)。踏み返し位置(Pb1)は、縫製動作のために作業者が足踏みペダルを中立位置(Pn)から踏み込み位置(Pf2)へ操作する方向と異なる方向に設けた位置である。駆動領域に属する場合、CPUは、布押え部材の押え位置への移動を禁止し(S170)、糸調子ソレノイドをONにして上糸に張力を付加する(S180)。作業者は、上糸張力を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン及びミシンの制御方法に関する。より詳細には、上糸に張力を付加するために上糸を挟持する一対の糸調子皿の挟持力をペダルの操作により変更するミシン及びミシンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンは、上糸に張力を付加する糸調子装置を備えている。該糸調子装置は、上糸を挟持する一対の糸調子皿を有する。上糸に付加する張力は、縫製する加工布の種類又は布厚等に応じて変更する。ミシンは、上糸を挟持する一対の糸調子皿の挟持力を変更して、縫製作業を行う。糸調子装置は、上糸を挟持する一対の糸調子皿の挟持力を変更するためのソレノイド等のアクチュエータを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のミシンは、足踏みペダルの操作によって、加工布を押える布押え部材と糸調子装置が連動して動作する。該ミシンは、足踏みペダルが操作されない基準位置(中立位置)のときに布押え部材を上昇し且つ一対の糸調子皿の挟持力を解除する。ミシンは、足踏みペダルが踏み込み位置まで操作されたときに加工布を針板に押える位置まで布押え部材を下降し且つ一対の糸調子皿に挟持力を付与し、縫製を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−36192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクチュエータにより一対の糸調子皿の挟持力を変更するミシンは、上糸に付加する張力を確認するためにアクチュエータのみを駆動する必要がある。特許文献1のミシンは、アクチュエータを駆動させるために足踏みペダルを踏み込み位置にする必要がある。この場合、ミシンは縫製を開始してしまうため、上糸に付加する張力を確認することができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、縫製作業を開始することなく上糸に付加する張力の確認を行うことができるミシン及びミシンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のミシンは、上糸に張力を付加するために前記上糸を挟持する一対の糸調子皿の挟持力を変更する糸調子駆動手段と、加工布を針板に押える布押え部材を駆動する布押え駆動手段と、前記布押え部材によって針板に押えた前記加工布に縫目を形成する縫製手段と、操作開始前の基準位置と前記縫製手段による前記加工布に縫目の形成を指令する縫製位置との間を操作可能な操作手段と、前記操作手段の操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記操作位置検出手段が検出する前記操作手段の操作位置に基づいて前記布押え駆動手段と前記糸調子駆動手段とを制御する駆動制御手段とを備え、前記操作手段が前記基準位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記布押え部材を前記針板から離れた位置に移動するように前記布押え駆動手段を制御し、且つ前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を解除するように前記糸調子駆動手段を制御するミシンにおいて、前記操作手段は、前記基準位置から前記縫製位置への操作方向とは異なる方向に設けられる駆動位置に操作可能であり、前記操作手段が前記駆動位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を付与するように前記糸調子駆動手段を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明のミシンは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記操作手段が前記駆動位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記布押え部材が前記加工布を押える位置に移動することを禁止するように前記布押え駆動手段を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明のミシンは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記操作手段は、踏み込み操作及び踏み返し操作が可能な足踏みペダルで構成され、前記基準位置は、前記足踏みペダルによる操作を行っていない場合の該足踏みペダルの位置であり、前記縫製位置は、前記踏み込み操作を行った場合の該足踏みペダルの位置であり、前記駆動位置は、前記踏み返し操作を行った場合の該足踏みペダルの位置であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明のミシンは、請求項1〜3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記糸調子駆動手段により前記一対の糸調子皿に付与する前記挟持力を設定する糸挟持力設定手段を更に備え、前記操作手段が前記基準位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に前記糸挟持力設定手段によって前記挟持力を設定可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明のミシンの制御方法は、操作開始前の基準位置と加工布に縫目の形成を指令する縫製位置との間を操作可能な操作手段が前記基準位置に操作されたことが検出された場合に、加工布を針板に押える布押え部材を前記針板から離れた位置に移動させ、且つ上糸に張力を付加するために前記上糸を挟持する一対の糸調子皿に対し挟持力を解除するように制御するミシンの制御方法において、前記操作手段が、前記基準位置から前記縫製位置への操作方向とは異なる方向に設けられた駆動位置に操作されたか否かを判断する駆動判断工程と、前記駆動判断工程により前記操作手段が前記駆動位置に操作されたと判断された場合に、前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を付与するように制御する駆動制御工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のミシンでは、駆動制御手段は、操作位置検出手段によって操作手段が基準位置から縫製位置への操作方向とは異なる方向に設けられる駆動位置であることを検出した場合に、糸調子駆動手段により上糸を挟持する一対の糸調子皿に挟持力を付与するように制御する。従って、ミシンは、駆動位置が操作手段の基準位置から縫製位置への操作方向と異なる方向にあるので、作業者は上糸張力を確認することができる。
【0013】
請求項2のミシンでは、請求項1に記載の発明の効果に加え、駆動制御手段は、操作位置検出手段によって操作手段が駆動位置であることを検出した場合に、布押え駆動手段により布押え部材が加工布を押える位置に移動することを禁止するように制御する。布押え部材は、操作手段が駆動位置であるときに加工布を押える位置に移動しないので、布押え部材が上糸を押えてしまうことがない。従って、ミシンは、操作手段を駆動位置に操作して作業者が上糸張力を確認する際に、布押え部材が上糸を押えて上糸張力が変わってしまうのを防ぐことができる。
【0014】
請求項3のミシンでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、操作手段は、踏み込み操作及び踏み返し操作が可能な足踏みペダルで構成される。駆動位置は、足踏みペダルにより踏み返し操作を行った場合に操作位置検出手段により検出可能であるので、作業者が上糸張力を確認する際に両手で他の作業を行うことができる。従って、ミシンは、作業効率が向上する。
【0015】
請求項4のミシンでは、請求項1〜3の何れかに記載の発明の効果に加え、糸調子駆動手段により一対の糸調子皿に付与する挟持力を設定する糸挟持力設定手段を備える。ミシンは、操作手段が基準位置に操作されたことを操作位置検出手段によって検出した場合に糸挟持力設定手段によって挟持力を設定可能である。従って、ミシンは、作業者が上糸張力を確認する際に誤って糸張力設定手段により設定してある上糸張力を変更してしまうのを防ぐことができる。
【0016】
請求項5のミシンの制御方法では、駆動判断工程により操作手段が駆動位置であると判断された場合に、上糸を挟持する一対の糸調子皿に挟持力を付与するように制御する駆動制御工程を備える。駆動位置は、操作手段を基準位置から縫製位置へ操作する方向と異なる方向にある。従って、ミシンの制御方法は、作業者が上糸張力を確認する場合に、誤って操作手段を縫製位置に操作するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るミシンの側面図である。
【図2】ミシンの要部縦断側面図である。
【図3】糸調子機構の分解斜視図である。
【図4】ミシンの制御系のブロック図である。
【図5】(A)は、作業時における足踏みペダルの位置を示す要部側面図、(B)は、作業時における足踏みペダルの位置と布押え部材、起動信号、上糸張力の関係を示す図である。
【図6】ミシンの全体の処理のフローチャートである。
【図7】駆動力設定制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態であるミシン1について、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面左方、右方、表面、背面を、それぞれミシン1の前方、後方、右方、左方とする。
【0019】
図1を参照してミシン1の構造について説明する。ミシン1は、ベッド部2と、脚柱部5と、アーム部6とを備える。ミシン1は、テーブル8上に設けてある。脚柱部5は、ベッド部2の後端部から上方に延びている。アーム部6は、脚柱部5の上端部からベッド部2と対向するように前方へ延びる。脚柱部5及びアーム部6は、ミシンモータ9(図4参照)を備えている。ミシンモータ9は、アーム部6後方に設け、カバー部材7で覆っている。ミシンモータ9は、針棒駆動機構(図示略)を介して針棒10を上下駆動する。針棒10は、アーム部6の前方に設けてある。針棒10は、その下端に縫針11を設けている。針棒駆動機構は公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
ベッド部2は、布送り機構(図示略)と、垂直半回転釜14と、下軸15とを備えている。布送り機構は、後述する布押え装置20と、針板12と、送り台13と、布受け板16とを前後方向(Y方向)及び左右方向(X方向)に移動する。送り台13は、ベッド部2の上面に設ける。布受け板16は、その後端部を送り台13に連結する。垂直半回転釜14は、縫針11の上下動と協働して縫目を形成する。下軸15は、ミシンモータ9の回転駆動力を垂直半回転釜14に伝達する。
【0021】
布押え装置20について説明する。布押え装置20は、送り台13上に設けてある。布押え装置20は、押え腕21と、押え腕レバー23と、布押え部材24とを備える。押え腕21は、側面視にて湾曲状に形成してある。押え腕21は、その基端部(後端部)が送り台13の上面に固定してある。押え腕21は、その前端部に平面視矩形枠状の布押え部材24を支持するための押え取付け部21aを備えている。押え腕21は、その前後方向中央部に、左右方向向きの支持軸22を固定している。押え腕21は、その左右両側に、前後方向に延びる押え腕レバー23をそれぞれ設けている。各押え腕レバー23は、前後方向の略中央部において支持軸22に回動可能に支持してある。
【0022】
押え取付け部21aは、布押え部材24の連結部(図示略)を上下動可能に支持する。布押え部材24の連結部は左右2つの係合穴(図示略)を有する。係合穴は押え腕レバー23の先端部を後方からそれぞれ挿通可能であり、布押え部材24と押え腕レバー23とを連結している。押え腕レバー23は、その後端部がバネガイド軸25の上端部に回動可能に連結している。バネ受け部材26は、バネガイド軸25の下端部を上下方向に摺動可能に支持する。圧縮コイルバネ27は、バネ受け部材26上のバネガイド軸25に装着している。
【0023】
圧縮コイルバネ27は、バネ力によって1対の押え腕レバー23を、支持軸22を中心に反時計回りに付勢する。押え腕レバー23は、押え腕21の押え取付け部21aを介して布押え部材24を針板12上面に押圧する。押え腕レバー23は、支持軸22よりも後側の左右両側に、押え作動板28をボルト29によりそれぞれ固定している。押え作動板28は、圧縮コイルバネ27のバネ力により、上下動部材17に当接している。上下動部材17は、布押えモータ19(図4参照)の駆動によって上下動する。
【0024】
布押え部材24の上下動について説明する。布押えモータ19(図4参照)が正回転で駆動すると、上下動部材17は下降して押え作動板28を押し下げる。押え腕レバー23は、圧縮コイルバネ27のバネ力に抗して支持軸22を回動支点として時計回り(図1において)に回動する。押え腕レバー23の先端部に係合している布押え部材24は、押え腕レバー23の回動に伴って上昇する。
【0025】
布押えモータ19が逆回転で駆動する場合、上下動部材17は上昇して押え作動板28の押し下げを解除する。押え腕レバー23は、圧縮コイルバネ27のバネ力によって支持軸22を回動支点として反時計回り(図1において)に回動する。それ故、押え腕レバー23の先端部に係合している布押え部材24は、押え腕レバー23の回動に伴って下降する。
【0026】
足踏みペダル57について説明する。足踏みペダル57は、床面に設けてある。足踏みペダル57は、作業者が操作していない状態では圧縮バネ(図示略)により中立位置Pn(図5(A)参照)に位置する。足踏みペダル57は、その一端部が連結ロッド56を介して回動レバー52の端部に連結している。足踏みペダル57は、その下部に設けた支持軸57aを回動支点として回動可能である。
【0027】
支持軸51は、回動レバー52の基端部を回動可能に支持している。支持軸51は、テーブル8の下方のボックスBに固定している。引っ張りバネ53は、バネ力により回動レバー52を常時反時計回りに付勢する。回動レバー52は、その上方に設けたストッパ54に当接することで、反時計回り方向への回動が規制してある。回動レバー52は、その基端部にポテンショメータ55の駆動軸を連結している。ポテンショメータ55の駆動軸は、回動レバー52と同期して回動する。
【0028】
作業者が足で足踏みペダル57を踏み込むと、足踏みペダル57は回動する。足踏みペダル57が回動することで連結ロッド56を介して回動レバー52は回動する。回動レバー52が回動することでポテンショメータ55の駆動軸は回動する。それ故、ポテンショメータ55は駆動軸の回動角度に応じた検出電圧値を後述する制御装置60(図4参照)に出力する。
【0029】
図2、図3を参照して、糸調子装置30について説明する。糸調子装置30は、アーム部6に設けてある。糸調子装置30は、アーム部6の右フレーム6aに設けた糸調子機構31と、アーム部6の左フレーム6bに設けた糸調子ソレノイド41とを備えている。
【0030】
糸調子機構31は、糸調子台32と、糸調子軸33と、可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35と、駆動軸40とを有している。糸調子軸33は、糸調子台32に対し軸方向に相対移動不能に装着してある。可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35は、糸調子軸33の先端部に装着してある。駆動軸40は、糸調子軸33の中心部に軸方向に移動可能に設けてある。
【0031】
糸調子台32について説明する。図2、図3に示すように、糸調子台32は、右フレーム6aに右方向きに形成した円筒状の保持穴6cに装着してある。右フレーム6aは、保持穴6cの軸心方向と直交する螺子穴6dを形成してある。螺子36は、螺子穴6dに挿入して螺合することで、糸調子台32を右フレーム6aに固定する。螺子36は、その先端面が糸調子台32の全周に亙って形成された環状溝32dの底面を押圧する。
【0032】
糸調子台32は、中央部に筒穴32eを備える。筒穴32eは、糸調子台32の右方に開口したバネ収容穴32aと、左方に開口した軸受け穴32cとからなる。バネ収容穴32aの開口径は、軸受け穴32cの開口径よりも大きい。糸調子台32は、その左端部近傍において、外周部から軸受け穴32cに向けて貫通する螺子穴32bを備える。螺子37は、螺子穴32bにねじ込み、後述する糸調子軸33を糸調子台32に回動可能に固定している。
【0033】
糸調子軸33について説明する。図2、図3に示すように、糸調子軸33は、左端側から右端側に向かって、小径軸部33aと、大径軸部33bと、皿支持軸部33cと、螺子形成軸部33dとを同軸上に一体的に備える。小径軸部33a及び大径軸部33bは、略円筒状に形成してある。大径軸部33bの外径は、小径軸部33aの外径よりも大きい。螺子形成軸部33dは、その外周面に雄螺子を形成してある。小径軸部33a及び大径軸部33bは、その軸心に駆動軸40が挿通可能な挿通穴33eを形成してある。皿支持軸部33c及び螺子形成軸部33dは、軸心に沿って割り溝33fを形成してある。挿通穴33eは、割り溝33fに連通している。
【0034】
糸調子軸33の小径軸部33aは、糸調子台32の軸受け穴32cに配置してある。螺子37は、小径軸部33aを、糸調子台32に対して回動可能に固定している。糸調子軸33の大径軸部33bは、糸調子台32のバネ収容穴32aに配置してある。皿支持軸部33c及び螺子形成軸部33dは、糸調子台32の右端面よりも右方に突出している。
【0035】
糸取りバネ39について説明する。図2、図3に示すように、糸取りバネ39は、1本の金属線からなる。糸取りバネ39は、コイル部39aと、湾曲部39bとを備える。コイル部39aは、金属線をコイル状に巻いて形成している。湾曲部39bは、コイル部39aの右端に連なって湾曲している。大径軸部33bは、コイル部39aの内部に配置してある。コイル部39aの左端部は、大径軸部33bに固着している。コイル部39aは、糸調子台32のバネ収容穴32aに配置している。湾曲部39bは、糸調子台32の外部に延出している。
【0036】
可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35について説明する。図2、図3に示すように、可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35は、一枚の金属板からなり、略皿状に形成してある。可動糸調子皿34は、中心部に一対の半円形状の穴部34aを備えている。帯状の架橋部34bは、一対の穴部34aの間に形成してある。糸調子軸33の皿支持軸部33cは、可動糸調子皿34の穴部34aに挿入してある。架橋部34bは、皿支持軸部33cに形成してある割り溝33fに位置している。可動糸調子皿34は、糸調子軸33の軸心に沿って移動可能である。
【0037】
固定糸調子皿35は、中心部に円形の穴部35aを備えている。糸調子軸33の皿支持軸部33cは、穴部35aに挿入してある。皿支持軸部33cは、固定糸調子皿35を糸調子軸33の軸心に沿って移動可能に支持する。
【0038】
固定ナット38について説明する。図2、図3に示すように、固定ナット38は、糸調子軸33の螺子形成軸部33dの右端部にねじ込んで固定してある。固定ナット38は、可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35の右端側への移動を規制する。
【0039】
駆動軸40について説明する。図2、図3に示すように、駆動軸40は、糸調子軸33の挿通穴33eの軸心に沿って移動自在に配置している。駆動軸40は、後述する糸調子ソレノイド41(図2参照)が駆動すると右方に移動する。駆動軸40が右方に移動すると、駆動軸40は、駆動軸40の右端が可動糸調子皿34の架橋部34bに当接して、可動糸調子皿34を固定糸調子皿35に向けて押す。
【0040】
糸調子ソレノイド41について説明する。図2に示すように、糸調子ソレノイド41は、アーム部6の左フレーム6bに配置してある。糸調子ソレノイド41は、一般的な比例ソレノイドである。糸調子ソレノイド41は、左右方向に移動可能な出力軸41aと出力軸41aを駆動電圧に応じて駆動する駆動装置(図示省略)とを備える。出力軸41aは、後述する制御装置60(図4参照)が糸調子ソレノイド41に駆動電圧を供給すると右方に所定距離だけ進出する。出力軸41aの進出距離は、固定ナット38の固定位置に依存する。比例ソレノイドは駆動電圧に比例する推進力で出力軸41aを固定ナット38側に突出する。
【0041】
出力軸41aの右端部は、ストローク調整ボルト43と接続している。ストローク調整ボルト43は、固定ナット43aを締め付けることで出力軸41aからの突出量を調整可能である。中間軸42は、ストローク調整ボルト43に接続している。中間軸42と出力軸41aと駆動軸40とは同軸上に位置している。保護カバー44は、糸調子ソレノイド41の左方部分を覆う。
【0042】
次に、上述した糸調子装置30による上糸の張力調整方法について説明する。作業者は、ミシン1で縫製動作を開始する前に糸駒(図示略)が供給する上糸を、糸調子装置30、天秤(図示略)を経由して、縫針11に供給する。作業者は、上糸を糸調子装置30に係合する場合に、上糸を可動糸調子皿34(図2参照)と固定糸調子皿35(図2参照)との間に配置した後、糸取りバネ39(図2参照)の湾曲部39b(図2参照)に引っ掛ける。ミシン1が縫製動作を開始していない状態では、中間軸42(図2参照)の右端は、駆動軸40(図2参照)の左端に接触していない。中間軸42の右端と駆動軸40の左端との間には所定の離間距離がある。
【0043】
図2に示すように、縫製開始時に、制御装置60(図4参照)が糸調子ソレノイド41に駆動電圧を供給すると、出力軸41aは右方に移動する。出力軸41aが右方に移動すると、出力軸41aと接続している中間軸42は右方に移動して、中間軸42の右端と駆動軸40の左端とが接触する。その後、中間軸42は、駆動軸40を右方に押す。それ故、駆動軸40は、右方に移動する。
【0044】
図3に示すように、右方に移動した駆動軸40は、可動糸調子皿34の架橋部34bに当接して、可動糸調子皿34を右方に押す。可動糸調子皿34は、固定糸調子皿35を右方に押す。固定ナット38は、固定糸調子皿35の右方への移動を規制している。それ故、挟持圧力は、可動糸調子皿34と固定糸調子皿35との間に発生する。可動糸調子皿34及び固定糸調子皿35は、上糸を挟持して、上糸に張力を付加する。
【0045】
図4のブロック図を参照して、ミシン1の制御系について説明する。制御装置60は、入出力インターフェース(I/O)61と、CPU62と、ROM63と、RAM64及び不揮発性メモリ65等を含むコンピュータと、駆動回路67〜71等を有する。
【0046】
入出力インターフェース61は、操作パネル66と、各駆動回路67〜71と、ポテンショメータ55等と接続している。駆動回路67は、糸調子ソレノイド41の為の回路である。駆動回路68は、ミシンモータ9の為の回路である。駆動回路69は、布送り機構に設けたX方向駆動機構を介して送り台13をX方向に駆動するXモータ72の為の回路である。駆動回路70は、布送り機構に設けたY方向駆動機構を介して送り台13をY方向に駆動するYモータ73の為の回路である。駆動回路71は、布押えモータ19の為の駆動回路である。Xモータ72、Yモータ73、布押えモータ19は、それぞれの駆動軸にロータリエンコーダであるXエンコーダ72EとYエンコーダ73EとNエンコーダ19Eとをそれぞれ付設している。
【0047】
ROM63は、各種の駆動機構を駆動制御するとともに、各種の模様を形成する縫製制御プログラム、ミシン1の全体の処理の制御プログラム等を予め格納している。RAM64は、縫製を実行する縫製データ、CPU62で演算処理した演算結果を収容する各種メモリ、ポインタ、カウンタ等を必要に応じて設ける。不揮発性メモリ65は、電気的に書換え可能である。
【0048】
図5(A)、(B)を参照して、作業時における足踏みペダル57の位置と布押え部材24、ミシンモータ9の起動信号、上糸への張力付加との関係について説明する。
【0049】
足踏みペダル57は、作業者による操作が行われていない状態で、図5(A)に示す中立位置Pn(基準位置)に位置する。足踏みペダル57は、中立位置Pnから作業者の操作によって前踏み、後踏みが可能である。本実施形態では、中立位置Pnを基準「0」として、足踏みペダル57の前踏み方向を「+」とし、後踏み方向を「−」とする。
【0050】
足踏みペダル57は、中立位置Pnから作業者が前踏みすることで、踏み込み位置Pf1と、踏み込み位置Pf1から更に前踏みされた踏み込み位置Pf2(縫製位置)とに位置することができる。足踏みペダル57は、中立位置Pnから作業者が後踏みすることで、踏み返し位置Pb1(駆動位置)に位置することができる。中立位置Pn、踏み込み位置Pf1、Pf2、踏み返し位置Pb1は、夫々ポテンショメータ55からの検出電圧と対応付けられて不揮発性メモリ65に記憶してある。
【0051】
図5(B)に示すように、足踏みペダル57が中立位置Pnでは、布押え部材24は上昇位置にある。上昇位置は、布押え部材24が針板12から最も離隔した位置である。足踏みペダル57が中立位置Pnの場合は、ミシンモータ9の起動信号をOFFにし、糸調子ソレノイド41をOFFにしている。それ故、上糸に張力は付加されない。
【0052】
作業者が足踏みペダル57を踏み込み位置Pf1にした場合、布押え部材24は押え位置に位置する。押え位置は、布押え部材24が加工布を針板12に押える位置である。足踏みペダル57が踏み込み位置Pf1の場合は、糸調子ソレノイド41をONにして上糸へ張力を付加する。足踏みペダル57が踏み込み位置Pf1の場合、ミシンモータ9の起動信号はOFFである。
【0053】
作業者が足踏みペダル57を踏み込み位置Pf2にした場合、布押え部材24は押え位置に位置する。足踏みペダル57が踏み込み位置Pf2の場合は、糸調子ソレノイド41をONにした状態でミシンモータ9の起動信号をONにして、上糸に張力を付加した状態で縫製動作を行う。
【0054】
作業者が足踏みペダル57を踏み返し位置Pb1にした場合、布押え部材24は上昇位置に位置する。足踏みペダル57が踏み返し位置Pb1の場合は、糸調子ソレノイド41はONして上糸に張力を付加する。足踏みペダル57が踏み返し位置Pb1の場合、ミシンモータ9の起動信号はOFFである。
【0055】
図6のフローチャートを参照して、ミシン1の制御装置60が実行するミシン1の全体の処理について説明する。但し、図中の符号Si(i=10、20、30・・・)は各ステップである。
【0056】
作業者が電源をONすると、CPU62は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値を読み込み、その検出電圧値に対応する足踏みペダル57の位置を取得する(S10)。CPU62は、足踏みペダル57の位置が踏み返し位置Pb1と踏み込み位置Pf1との間である中立領域に属するか否かを判断する(S20)。足踏みペダル57の位置が中立位置Pnの場合は、中立領域に属する。足踏みペダル57の位置が中立領域に属さない場合(S20:NO)、CPU62は処理をS10に移行する。
【0057】
足踏みペダル57の位置が中立領域に属する場合(S20:YES)、CPU62は、布押えモータ19を駆動して布押え部材24を上昇位置へ移動させる(S30)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をOFFにし(S40)、処理をS50に移行する。S40までの処理は、作業者が電源をONした場合のミシン1の初期化に相当する。ミシン1の初期化は、作業者が足踏みペダル57を踏み込んだ状態で電源をONした場合に、突然縫製動作が開始されることを防ぐものである。
【0058】
CPU62は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値に対応する足踏みペダル57の位置を取得する(S50)。CPU62は、S50で取得した足踏みペダル57の位置が中立領域に属するか否か判断する(S60)。足踏みペダル57の位置が中立領域に属する場合(S60:YES)、CPU62は、布押えモータ19を駆動して布押え部材24を上昇位置へ移動させる(S100)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をOFFにし(S110)、処理をS50に移行する。
【0059】
足踏みペダル57の位置が中立領域に属さない場合(S60:NO)、CPU62は、足踏みペダル57の位置が踏み込み位置Pf1と踏み込み位置Pf2との間である押え領域に属するか否かを判断する(S70)。足踏みペダル57の位置が踏み込み位置Pf1の場合は、押え領域に属する。足踏みペダル57の位置が押え領域に属する場合(S70:YES)、CPU62は、布押えモータ19を駆動して布押え部材24を押え位置へ移動させる(S120)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONにし(S130)、処理をS50に移行する。
【0060】
足踏みペダル57の位置が押え領域に属さない場合(S70:NO)、CPU62は、足踏みペダル57の位置が踏み込み位置Pf2以上前踏みされた位置である縫製領域に属するか否かを判断する(S80)。足踏みペダル57の位置が踏み込み位置Pf2の場合は、縫製領域に属する。足踏みペダル57の位置が縫製領域に属する場合(S80:YES)、CPU62は、布押えモータ19によって布押え部材24が押え位置から上昇位置へ移動することを禁止する(S140)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONにした状態を保持し(S150)、ミシンモータ9を駆動する起動指令を出力して、縫製動作を開始する(S160)。縫製動作の終了後、CPU62は、処理をS10に移行してミシン1の初期化を再度行う。
【0061】
足踏みペダル57の位置が縫製領域に属さない場合(S80:NO)、CPU62は、足踏みペダル57の位置が踏み返し位置Pb1以上後踏みされた位置である駆動領域に属するか否かを判断する(S90)。足踏みペダル57の位置が踏み返し位置Pb1の場合は、駆動領域に属する。足踏みペダル57の位置が駆動領域に属する場合(S90:YES)、CPU62は、布押えモータ19によって布押え部材24が上昇位置から押え位置へ移動することを禁止する(S170)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONにして上糸に張力を付加し(S180)、処理をS50に移行する。
【0062】
足踏みペダル57の位置が駆動領域に属さない場合(S90:NO)、CPU62は、再度処理をS50に移行し、S50以降の処理を繰り返す。
【0063】
図6のフローチャートに基づいたミシン1の全体の処理の動作及び作用について説明する。
【0064】
まず、作業者が電源をONすると、ミシン1は布押え部材24を初期位置(上昇位置)に移動する。通常、作業者が電源をONする場合、足踏みペダル57の操作は行わないため、足踏みペダル57は中立位置Pnである。CPU62は、駆動回路71を介して布押えモータ19を駆動する(S20でYES、S30)。これにより、布押え部材24は、上昇位置に移動する。足踏みペダル57が中立位置Pnの場合、上糸へ張力を付加しないため、CPU62は糸調子ソレノイド41をOFFにする(S40)。
【0065】
その後、作業者は、足踏みペダル57を踏み込まない状態で、縫製する加工布を布受け板16上にセットする。CPU62は、布押え部材24を上昇位置に位置した状態とし、糸調子ソレノイド41をOFFの状態にする(S60でYES、S100、S110)。
【0066】
加工布をセットした後、作業者が足踏みペダル57を踏み込み位置Pf1まで前踏みすると、布押え部材24は、加工布を押える押え位置に移動する(S70でYES、S120)。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONにする(S130)。
【0067】
作業者は、縫製を開始するために足踏みペダル57を更に前踏みする。作業者が足踏みペダル57を踏み込み位置Pf2まで前踏みすると、CPU62は、布押え部材24が上昇位置へ上昇することを禁止し(S80でYES、S140)、押え位置を保持する。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONの状態にする(S150)。CPU62は、縫製開始を指令して、縫製処理を実行する(S160)。
【0068】
縫製処理の開始後、作業者は足踏みペダル57の踏み込み操作を中止することができる。縫製処理が終了すると、CPU62は、処理をS10に戻し、足踏みペダル57が中立位置Pnに戻された場合に布押え部材24を上昇位置に移動し、糸調子ソレノイド41をOFFにする。
【0069】
作業者が足踏みペダル57を中立位置Pnから踏み返し位置Pb1に後踏みした場合、CPU62は、布押え部材24が押え位置へ下降することを禁止し(S90でYES、S170)、上昇位置を保持する。CPU62は、糸調子ソレノイド41をONにして上糸に張力を付加する(S180)。これにより、作業者は上糸に付加する張力を確認することが出来る。踏み返し位置Pb1に後踏みした場合、CPU62はミシンモータ9を駆動することなく糸調子ソレノイド41をONするので、安全に張力の確認を行うことができる。
【0070】
S110、S130、S160、S180の処理後は、前述したS50以降の処理を繰り返すことになる。
【0071】
図7のフローチャートを参照して、駆動力設定制御処理について説明する。作業者は、操作パネル66により、制御装置60が糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧を予め任意に設定しておくことができる。
【0072】
作業者が操作パネル66から駆動力設定キー(図示略)を操作すると、CPU62は、駆動力設定制御処理を開始する。
【0073】
CPU62は、足踏みペダル57の位置が中立領域に属するか否か判断する(S210)。足踏みペダル57の位置が中立領域に属さない場合(S210:NO)、CPU62は、処理を終了する。
【0074】
足踏みペダル57の位置が中立領域に属する場合(S210:YES)、CPU62は、不揮発性メモリ65が記憶している糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧のデータを読み込む(S220)。作業者は、操作パネル66を操作して糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧を設定する(S230)。CPU62は、不揮発性メモリ65に記憶していた糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧のデータを更新し(S240)、処理を終了する。
【0075】
本実施形態における糸調子装置30は、本発明の「糸調子駆動手段」に相当する。布押えモータ19は、本発明の「布押え駆動手段」に相当する。ミシンモータ9、針棒10、縫針11、垂直半回転釜14等は、本発明の「縫製手段」に相当する。足踏みペダル57は、本発明の「操作手段」に相当する。ポテンショメータ55は、本発明の「操作位置検出手段」に相当する。S30、S40、S100〜S150、S170、S180の処理を実行するCPU62は、本発明の「駆動制御手段」に相当する。操作パネル66及び駆動力設定制御は、本発明の「糸挟持力設定手段」に相当する。S90の処理は、本発明の「駆動判断工程」に相当する。S180の処理は、本発明の「駆動制御工程」に相当する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のミシン1は、足踏みペダル57の位置が踏み返し位置Pb1以上踏み返された位置である駆動領域に属するか否かを判断する。駆動領域に属する場合、ミシン1は、糸調子ソレノイド41をONにして上糸に張力を付加する。踏み返し位置Pb1は、縫製動作のために作業者が足踏みペダル57を中立位置Pnから踏み込み位置Pf2へ操作する方向と異なる方向に設けた位置である。従って、作業者は上糸張力を確認することができる。
【0077】
ミシン1は、足踏みペダル57の位置が駆動領域である場合に、布押えモータ19によって布押え部材24が押え位置から上昇位置へ移動することを禁止する。布押え部材24は、足踏みペダル57が駆動領域であるときに押え位置に移動しないので、布押え部材24が上糸を押えてしまうことがない。従って、ミシン1は、作業者が上糸張力を確認する際に、布押え部材24が上糸を押えて上糸張力が変わってしまうのを防ぐことができる。
【0078】
踏み返し位置Pb1は、足踏みペダル57により中立位置Pnから作業者が後踏み操作を行った場合に位置するので、作業者が上糸張力を確認する際に両手で他の作業を行うことができる。従って、ミシン1は、作業効率が向上する。
【0079】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、様々な変更が可能である。例えば、布押え部材24は布押えモータ32を駆動することによって移動するようにした。布押え部材24は、エアシリンダ等のアクチュエータで移動するようにしてもよい。
【0080】
上記実施形態では、布押え部材24は、足踏みペダル57の位置が踏み込み位置Pf1であるときに押え位置に移動した。布押え部材24は、その高さを足踏みペダル57の踏み込み量に応じて変化するようにしてもよい。
【0081】
上記実施形態では、足踏みペダル57の踏み込み量は、ポテンショメータ55の検出電圧に基づいて取得した。足踏みペダル57の踏み込み量は、各種の位置検出センサにより構成してもよい。
【0082】
上記実施形態では、糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧は、操作パネル66により予め任意に設定した。糸調子ソレノイド41に供給する駆動電圧は、加工布に形成する縫製プログラム毎に設定してROM63にデータを格納しておいてもよい。
【0083】
本発明の操作手段は、足踏みペダル57に限らず、作業者の手で操作するスイッチ等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ミシン
9 ミシンモータ
10 針棒
11 縫針
14 垂直半回転釜
19 布押えモータ
20 布押え装置
24 布押え部材
30 糸調子装置
31 糸調子機構
41 糸調子ソレノイド
55 ポテンショメータ
57 足踏みペダル
60 制御装置
61 入出力インターフェース(I/O)
62 CPU
63 ROM
64 RAM
65 不揮発性メモリ
66 操作パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸に張力を付加するために前記上糸を挟持する一対の糸調子皿の挟持力を変更する糸調子駆動手段と、
加工布を針板に押える布押え部材を駆動する布押え駆動手段と、
前記布押え部材によって針板に押えた前記加工布に縫目を形成する縫製手段と、
操作開始前の基準位置と前記縫製手段による前記加工布に縫目の形成を指令する縫製位置との間を操作可能な操作手段と、
前記操作手段の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記操作位置検出手段が検出する前記操作手段の操作位置に基づいて前記布押え駆動手段と前記糸調子駆動手段とを制御する駆動制御手段と
を備え、
前記操作手段が前記基準位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記布押え部材を前記針板から離れた位置に移動するように前記布押え駆動手段を制御し、且つ前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を解除するように前記糸調子駆動手段を制御するミシンにおいて、
前記操作手段は、
前記基準位置から前記縫製位置への操作方向とは異なる方向に設けられる駆動位置に操作可能であり、
前記操作手段が前記駆動位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を付与するように前記糸調子駆動手段を制御する
ことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記操作手段が前記駆動位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に、前記駆動制御手段は前記布押え部材が前記加工布を押える位置に移動することを禁止するように前記布押え駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記操作手段は、踏み込み操作及び踏み返し操作が可能な足踏みペダルで構成され、
前記基準位置は、前記足踏みペダルによる操作を行っていない場合の該足踏みペダルの位置であり、
前記縫製位置は、前記踏み込み操作を行った場合の該足踏みペダルの位置であり、
前記駆動位置は、前記踏み返し操作を行った場合の該足踏みペダルの位置である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記糸調子駆動手段により前記一対の糸調子皿に付与する前記挟持力を設定する糸挟持力設定手段を更に備え、
前記操作手段が前記基準位置に操作されたことを前記操作位置検出手段によって検出した場合に前記糸挟持力設定手段によって前記挟持力を設定可能である
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のミシン。
【請求項5】
操作開始前の基準位置と加工布に縫目の形成を指令する縫製位置との間を操作可能な操作手段が前記基準位置に操作されたことが検出された場合に、加工布を針板に押える布押え部材を前記針板から離れた位置に移動させ、且つ上糸に張力を付加するために前記上糸を挟持する一対の糸調子皿に対し挟持力を解除するように制御するミシンの制御方法において、
前記操作手段が、前記基準位置から前記縫製位置への操作方向とは異なる方向に設けられた駆動位置に操作されたか否かを判断する駆動判断工程と、
前記駆動判断工程により前記操作手段が前記駆動位置に操作されたと判断された場合に、前記一対の糸調子皿に対し前記挟持力を付与するように制御する駆動制御工程と
を備えたことを特徴とするミシンの制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−65965(P2012−65965A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215063(P2010−215063)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】