ミシン
【課題】心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られるミシンを提供する。
【解決手段】ミシンは、針12を装着可能な針棒11と、送り方向における縫製対象物の送り量と送り方向に直交する方向において縫製対象物に対する針12の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有する。縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力するへたうま選択要素10が設けられている。へたうま選択要素10は、針12の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【解決手段】ミシンは、針12を装着可能な針棒11と、送り方向における縫製対象物の送り量と送り方向に直交する方向において縫製対象物に対する針12の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有する。縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力するへたうま選択要素10が設けられている。へたうま選択要素10は、針12の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は針を装着可能な針棒を有するミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンの縫い目制御量のバラツキ、例えば布送り量のバラツキを0(ゼロ)になるようにし、一定の布送り量が得られるようにしていた。しかし、その結果として得られる縫い目は、整然とはしているが、機械的な縫製に特有の機械的な且つ画一的な硬さ、冷たさを感じさせる縫い目であった。このような機械的な硬さ、冷たさといったものを排除する方策として、ミシンの縫い目制御量のバラツキを1/fのゆらぎとする方法技術が提案されている(特許文献1)。この方法技術は、ミシンで縫製される縫い目の制御量のバラツキのパワースペクトルが1/fの傾向を示すようにしたものである。一種の心地よさ、温かさを感じさせる縫い目が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-79982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に係る方法技術によれば、1/fを表す数値を得るまでに極めて複雑な演算が必要である。この場合、演算が複雑であるため、縫製速度には限界があるおそれがある。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、1/fを表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とすることなく、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られるミシンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るミシンは、(i)縫製対象物が載せられる載置部と、(ii)載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、(iii)送り方向における縫製対象物の送り量と送り方向に直交する振れ方向において縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、(iv)縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられており、(v)へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力することを特徴とする。
【0006】
へたうま選択要素は、縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力する。へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【0007】
このように縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、機械的且つ画一的な縫い目ではなく、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。更に、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るミシンによれば、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の機械的且つ画一的な固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、うまい程度が高いときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。
【0009】
更に本発明に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ミシンの正面図である。
【図2】針板付近の斜視図である。
【図3】制御系のブロック図である。
【図4】アップリケ模様の縫い目を示す図である。
【図5】アップリケ模様の縫い目における送りの方向および幅の方向を示す図である。
【図6】アップリケ模様の縫い目を形成する際の振れ幅のデータを示す図である。
【図7】アップリケ模様の縫い目を形成する際の送りデータを示す図である。
【図8】制御装置が実行するフローチャートである。
【図9】制御装置が実行するフローチャートである。
【図10】ミシンの内部構造を示す全体図である。
【図11】送り歯の送り機構を概念的に示す図である。
【図12】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図13】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図14】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図15】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図16】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図17】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図18】他の実施形態に係り、ミシンの正面図である。
【図19】他の実施形態に係り、ミシンの背面図である。
【図20】他の実施形態に係り、ミシンの右側面図である。
【図21】他の実施形態に係り、ミシンの左側面図である。
【図22】他の実施形態に係り、ミシンの平面図である。
【図23】他の実施形態に係り、ミシンの底面図である。
【図24】他の実施形態に係り、ミシンの六面図をまとめて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
載置部は、縫製対象物が載せられるものであれば良く、針板やベッド部を例示できる。針棒は、載置部に対して昇降可能に設けられ、針を装着可能なものであれば良い。制御装置は、送り方向における布等の縫製対象物の送り量と、送り方向に直交する方向において縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とを制御できるものであれば良い。『縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量』とは、縫製対象物および針の相対的な振れ幅量に相当する。この場合、平面視において、送り方向に直交する方向において縫製対象物が動かないときには、縫製対象物に対する針の振れ幅量を意味する。送り方向に直交する方向においても縫製対象物が動くときには、縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とする。へたうま選択要素は、縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力する。へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【0012】
好ましくは、へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値としてユーザが設定する設定スイッチと、へたうまモードを選択するへたうまスイッチとを有している。この場合、制御装置は、へたうまスイッチによりへたうまモードが選択されているとき、設定スイッチにより設定された設定値を含むと共に設定値付近の選択領域において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方をばらつかせる。この場合、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。好ましくは、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値を含むと共に設定値付近の選択領域において、振れ幅量および/または送り量をばらつかせる。この場合、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる更に、好ましくは、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値を選択する。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値が選択された確率を含むため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。
【0013】
好ましくは、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値を含むと共に幅設定値付近の広い選択領域において振れ幅量をばらつかせると共に、設定スイッチにより設定された幅設定値を選択する確率を含む。この場合、振れ幅量をばらつかせたへたうまモードが実行される。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値が選択される確率があるため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。好ましく、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された送り量に関する送り設定値を含むと共に送り設定値付近の広い選択領域において送り量をばらつかせると共に、設定スイッチにより設定された送り設定値を選択する確率を含む。この場合、送り量をばらつかせたへたうまモードが実行される。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値が選択される確率があるため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。好ましくは、へたうま選択要素は、送り量をばらつかせないで針の振れ幅をばらつかせる振れ幅ばらつきモード、振れ幅をばらつかせないで送り量をばらつかせる送り量ばらつきモード、針の振れ幅および送り量の双方をばらつかせる振れ幅・送り量ばらつきモードとを選択可能である。
【0014】
縫製途中においてへたうまモードが変更されたときであっても、制御装置は、へたうま選択要素の操作に拘わらず、縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことが好ましい。このようにへたうま選択要素の操作に拘わらず、模様選択要素で選択された縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないため、縫い目の一セットの途中でバランスが崩れることが抑えられ、縫い目および模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、縫い目の一セットが終了すると、へたうま選択要素により選択されたモードは変更可能とすることが好ましい。縫い目の一セットとは、布等の縫製対象物を針が刺す所定回数により定義できる。所定回数としては2〜30回の範囲から模様毎に選択でき、2〜20回の範囲、2〜10回の範囲、2〜5回の範囲から適宜設定できる。
【0015】
好ましくは、場合によっては、制御装置は、縫い目の一セット内において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更可能とすることもできる。この場合、縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更するため、へたの程度が高まり、縫い目の一セットが異常な模様になるおそれがあるものの、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる可能性が高くなる。好ましくは、縫製対象物に縫製される模様を選択する模様選択要素が設けられている。模様選択要素で選択された模様が縫製されているときにおいて、へたうまモードが変更されたときであっても、制御装置は、へたうま選択要素の操作に拘わらず、模様の一単位において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことが好ましい。このようにへたうま選択要素の操作に拘わらず、模様選択要素で選択された模様の一単位において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないため、模様の一単位の途中でバランスが崩れることが抑えられ、模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、模様の一単位が終了すると、へたうま選択要素により選択されたモードは変更可能とすることが好ましい。模様の一単位とは、他の模様に連続しておらず、他の模様と物理的に区別できる模様をいう。例えば、動物の絵が他の隣接する模様と区別できる模様である場合には、その動物の絵が1単位にできる。
【0016】
好ましくは、制御装置は、へたうまモードが実行されているとき、一時的に、設定要素による設定値に基づいて縫い目を形成し、それ以外はへたうまモードを実行することができる。途中でバランスが崩れることが抑えられ、縫い目または模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。好ましくは、予め作成された縫い模様データに基づき、針の振れ幅量および/または送り量を制御して縫い模様を形成するにあたり、選択使用中の模様データに対し、へたうま選択要素に基づいて、振れ幅量および/または送り量をばらつかせることができる。一般的なミシンでは、振れ幅量および/または送り量の設定をユーザが調整できる。この設定値自体を変更させるため、縫い目の変化が判りやすい。
【0017】
好ましくは、振れ幅量および/または送り量について、(i)設定値どおり,(ii)設定値の前後1段階といった合計3つの設定数値からランダムに1つを抽出する方式(以後「バラツキ小モード」とも呼ぶ),(iii)(ii)よりも広い領域(設定可能な全体領域)からランダムに1つの設定値を抽出する(以後「ばらつき大モード」と呼ぶ)が選択可能さとされている形態が採用できる。好ましくは、複数の針数をもってひとつの模様のセットを形成する模様データにおいて、1セット毎に、振れ幅量および/または送り量について、制御装置は設定値を抽出することができる。これにより、模様の途中でバランスが崩れて、模様が異常になり、何の模様か判らなくなる ということは抑えられる。ミシンの用途として、布を縫い合わせること以外に、縫い目を見せる場合がある。例えばアップリケで布片を留めるのに、布片の外縁を、梯子の片側が無い模様(図4参照)で縫いつけるときである。この場合、用途などによっては、この模様が、『機械で縫い付けました』というバラツキゼロのあたかも機械的な縫い目ではなく、『人間の手で縫ったんだけど、不揃いになっちゃった』という縫い目の方が場合によっては好まれることがある。この場合、『積極的に不揃いになっちゃった縫い目』つまり、縫い目を『へた』にみせることにより、縫製対象物に温かみを出す効果がある。
【0018】
好ましくは、次の形態を採用できる。例えば、ユーザがへたうま選択要素によりへたうまモードにおいて(モード0)(モード1)(モード2)(モード3)(モード4)(モード5)(モード6)と変更できる方式が採用できる。
(モード0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード
(モード1)振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
このように1つの模様の縫い目の1セットにおいて、(モード0)〜(モード6)までの合計7種類の縫い目の味わいが生まれる。このようにへたうま選択要素が設けられていることにより、好みの模様のマンネリ感が解消される。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るミシンの正面図を示す。図1に示すように、ミシンは、ミシン本体1と、ミシン本体1に着脱可能な操作コントローラとして機能するフットコントローラ20とを備える。また、フットコントローラ20の接続コード25の一端に設けたプラグ(図示せず)は、脚柱部3の図1における下部に設けたジャック100aに着脱可能に接続される。図1に示すように、ミシン本体1は、ベッド部2と、ベッド部2の図1における右端から立設する脚柱部3と、脚柱部3の上端側からベッド部2の上面2aに対面して延在するアーム4とを有する。アーム4の頭部5の前面には、縫製作業の起動と停止を制御する起動スイッチ6が設けられている。また、アーム4の前面には、設定スイッチ7と、模様番号等を切り替えて選択するための切替スイッチ8(切替要素)と、模様番号等を表示する7セグメントLED9(表示要素)、縫製の下手および上手の度合いを調整するへたうまモードを設定するためのへたうまスイッチ10とが設けられている。設定スイッチ7は、模様を選択するための模様選択スイッチ7aと、送り量を設定するための送り量設定スイッチ7b(設定スイッチ)と、振れ幅量を設定するための振れ幅量設定スイッチ7c(設定スイッチ)とを有する。表示部70は、模様選択スイッチ7aが操作されると点灯する模様灯70aと、送り量設定スイッチ7bが操作されると点灯する送り灯70bと、振れ幅量を設定する振れ幅量設定スイッチ7cが操作されると点灯する幅灯70cとを有する。
【0020】
図2は、頭部5の下面5a側に設けた針12周辺の拡大斜視図を示す。図1及び図2に示すように、針棒11の先端に取付けた針12と、押さえ棒90に着脱可能な且つ押さえ棒90と一体となって昇降可能な布押さえ13(押さえ要素)とが頭部5の下面5aから突設されている。また、ベッド部2の上面2aに設けられている針板14(載置部)の溝14aには、直線縫製時において縦方向であるY方向に沿って布(縫製対象物)を送るための送り歯15が設けられている。X方向は針12の振れ幅方向を示し、アーム4が延設されている方向を示す。Y方向は布等の縫製対象物の送り方向を示し、ミシンのユーザ側と奥方とを繋ぐ方向を示す。
【0021】
図3は制御系を示す。マイコン101、メモリ102およびインターフェースを搭載する制御装置100が設けられている。模様を選択する模様選択スイッチ7a,送り量設定スイッチ7b,振れ幅量設定スイッチ7c、ミシンを起動および停止させる起動スイッチ6,へたうまモードを選択するへたうまスイッチ10,切り替えスイッチ8,フットコントローラ20の各信号は、制御装置100に入力される。制御装置100は、表示部70、7セグメントLED9、主軸モータ59、幅モータ71、送りモータ215に制御信号をそれぞれ出力する。
【0022】
さて、説明の便宜上、実施形態1の説明に先立ち、従来形態を説明する。ユーザは、ミシン本体1の送り量設定スイッチ7bを押して送り灯70b(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される送り設定値を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望する送り設定値を示す番号を選択する。同様に、ユーザは、ミシン本体1の振れ幅量設定スイッチ7cを押して送り灯70c(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される幅設定値を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望する幅設定値を示す番号を選択する。
【0023】
アップリケ模様を縫うとき、ユーザは、ミシン本体1の模様選択スイッチ7aを押して模様灯70a(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される模様番号を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望するアップリケ模様を示す番号を選択する。このとき、選択されたアップリケ模様の振れ幅量と送り量の設定は、強制的に指示される強制値であるデフォルト値として3が設定される。即ち、ユーザがスイッチ7b,7cを操作しない限り、幅設定値としては3が設定され、送り設定値としては3が強制的に設定される。ここで、図6は、矢印X方向における振れ幅データを示す。図6に示す幅データは、振れ幅調整用の幅モータ71の回転位置を絶対値で示すものであり、針12が振れ幅方向(図2に示すX方向)における中央に位置するとき、値は30である。このように図6は矢印X方向における針12の振れ幅量を示す。図6に示すように、振れ幅量が幅設定値3とされているとき、データ1の値40では、針12はユーザからみて右方向(一方向)に1.75mm振れる。データ2も値40なので針位置はそのままとなり、振れ幅量はデータ3で値20となり左方向(他方向)に1.75mm振れる。結果としては、幅設定値3では、左右方向(X方向)において1.75mmずつ振れるので、針12の振れ幅は合計3.5mmである。
【0024】
図7は、矢印Y方向における布の送り量のデータを示す表1を表す。図7に示す送り量のデータは、送りモータ215の回転位置を絶対値で示すものであり、送り量が送り設定値3とされているとき、データ1の値22は、送り歯15が上下するだけで布を送らない位置を示し、データ2の値36は布を正方向(矢印Y方向においてミシンの手前から奥方向)へ2.5mm送る位置である。実際に縫うときには、振れ幅量データと送り量データとがそれぞれ針12の1刺し毎に、データ1→データ2→データ3と進み、所定針数(例えば3針)縫ったところで、縫い目の1セットが完了する。1セットの値は、模様選択スイッチ7aで選択された模様に対応する縫い目の数として、模様毎に、メモリ102のエリアに格納されている。ユーザが布の送り量を変えたい場合は、ミシン本体1の送り量設定スイッチ7bを操作して送り灯70bを点灯させ、7セグメントLED9に表示される送り設定値を見ながら『+』,『−』スイッチで、送り設定値を1から6までの範囲(図7参照)で変更できる。同様に、ユーザが針12の振れ幅量を変えたい場合は、ミシン本体1の振れ幅量設定スイッチ7cを操作して幅灯70cを点灯させ、7セグメントLED9に表示される振れ幅量の設定値を見ながら『+』,『−』スイッチで設定値を1から6までの範囲(図6参照)で変更できる。これが従来技術であり、本実施形態に係るミシンもこのように操作される。
【0025】
以降、本発明に対応する実施形態について説明する。本実施形態によれば、次に示すようにモード1〜モード0が設定可能とされている。
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
ミシン本体1に搭載されているへたうまスイッチ10をユーザが手で操作すると、7セグメントLED9に、現在設定されているへたうまモードにおけるモード値が表示される。強制値であるデフォルトは0(へたうまモードの切りであり、へたうまモードが採用されていないモードの切りに相当する)。ユーザがへたうまスイッチ10を手で操作するたびに、7セグメントLED9において、1モード→2モード→3モード→4モード→5モード→6モード と設定が順に切り変わる。さらにユーザがへたうまスイッチ10を操作すると 0モードになり、へたうまモードの不採用になる。例えば、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード1(送り量をばらつかせず、振れ幅量のみバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4(送り量:3.0mm)として固定されるものの、幅設定値が幅設定値2,3,4の領域(ユーザが設定した設定値3の前後を含む領域)において、何れかからランダムに抽出される。すなわち、振れ幅量の幅設定値が幅設定値2、幅設定値3,幅設定値4のうちからいずれ1つの幅設定値が抽出される。
【0026】
縫い目の1セット(この場合には3針の縫い目)が終了するまでは、抽出された設定値のデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セット(たとえば3針の縫い目)が終了した時点で、次の1セット用の幅設定値が再び幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域から何れかからランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの縫い目形成処理が繰り返される。この場合、送り設定値は4(送り量:3.0mm)で固定されているため、送り量は3mmで一定であるものの、振れ幅量が3.0mm(幅設定値2)か、3.5mm(幅設定値3)か、4.0mm(幅設定値4)でばらついているアップリケ模様が出来上がる。このようにへたうまモードのうち、送り量をばらつかせず、振れ幅量のみバラツキ小とするモード1が実行される。このとき、ユーザが設定した幅設定値である幅設定値3を含む広い領域において,すなわち、幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域からランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した幅設定値である幅設定値3が抽出される確率が存在する。このためユーザが全く意図しない縫い目が形成されることが抑制される。従って、下手な縫い目であるものの、ユーザが意図した下手程度の縫い目が形成されることになる。
【0027】
また、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード2(振れ幅量のみバラツキ大とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4に固定であり、幅設定値1,幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4,幅設定値5,幅設定値6という広い領域(図6に示す全領域)から幅設定値がランダムに抽出される。縫い目の1セット(この場合には3針)が終了するまでは、抽出された設定値に基づいてデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セットが終了した時点では、次の1セット用の幅設定値が、幅設定値1,幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4,幅設定値5,幅設定値6のうちの何れかからランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの処理が繰り返され、送り設定値4で固定されているため送り量は3.0mmで一定であるものの、振れ幅量が2.5mm(幅設定値1)、3.0mm(幅設定値2)、3.50mm(幅設定値3)、4.0mm(幅設定値4)、4.5mm(幅設定値5)、5mm(幅設定値6)の間においてばらついているアップリケ模様が出来上がる。
【0028】
また、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード5(振れ幅量および送り量ともにバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り量の送り設定値は送り設定値3,送り設定値4,送り設定値5の領域(ユーザが設定した送り設定値4を含むと共にその前後の設定値を含む領域)から抽出される。また、振れ幅量の幅設定値が幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域(ユーザが設定した幅設定値3を含むと共にその前後の設定値を含む領域)からランダムに抽出される。縫い目の1セット(この場合には3針)が終了するまでは、抽出された送り設定値および幅設定値のデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セットが終了した時で、制御装置100により、次の1セット用の幅設定値,送り設定値が再びランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまでこれらの処理が繰り返される。この場合、送り量は2.5mm(送り設定値3)、3.0mm(送り設定値4)、3.5mm(送り設定値5)としてばらついている。且つ、幅が3.0mm(幅設定値2)、3.5mm(幅設定値3)、4.0mm(幅設定値4)でばらついているアップリケ模様が出来上がる。なお、一セットは3針と限定されず、模様に応じて、例えば2〜2000の針数の範囲内で設定できる。へたうまモードのモード3,モード4,モード5,モード6についても同様である。例として、アップリケ模様をあげたが、他の模様や縫い目についても同様である。
【0029】
以上説明したように本実施形態によれば、モード0では、規則正しい画一的な縫い目が得られる。この場合、規則正し過ぎるため、画一的な固い感じ、冷たい感じを与えるおそれがある。この点について本実施形態によれば、振れ幅量の幅設定値がユーザにより振れ幅量設定スイッチ7cより設定され、送り量の送り設定値がユーザにより送り量設定スイッチ7bより設定されているにも拘わらず、へたうまスイッチ10がユーザにより操作されていると、制御装置100によりへたうまモードが実行される。そしてへたうまモードのうちモード1〜モード6では、縫製中において、送り量および振れ幅量のうちの少なくとも一方がそれぞれの、ユーザが設定した幅設定値および送り設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の画一的な固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、モード0を採用すれば、振れ量および送り量についてバラツキは解消されるため、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。
【0030】
本実施形態によれば、針12の振れ幅量についてばらつかせるときには、ユーザが設定した幅設定値を必ず含む広い領域において,幅設定値がランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した幅設定値が抽出される確率が必ず存在する。同様に、布の送り量についてばらつかせるときには、ユーザが設定した送り設定値を必ず含む広い領域において,送り設定値がランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した送り設定値が抽出される確率が存在する。このためユーザが全く意図しない縫い目が形成されることが抑制される。従って、下手な縫い目であるものの、ユーザが意図した下手程度の縫い目が形成されることになる。
【0031】
更に実施形態に係るミシンによれば、へたうまモードを実行するにあたり、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量に関する幅設定値と縫製対象物の送り量に関する送り設定値とをユーザが設定すると共に、幅設定値および送り設定値の一方または双方をそれぞれのユーザ設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0032】
ところで本実施形態によれば、へたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードのあるモードが実行されているとき、そのモードの実行途中において、へたうまスイッチ10が操作されて異なるモードが選択されるときがある。この場合において、制御装置100は、へたうまスイッチ10の操作に拘わらず、縫い目の一セットにおいて、へたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードを変更しない。このようにへたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードを変更しないため、縫い目の一セットの途中で縫い目や模様のバランスが崩れることが抑えられ、縫い目が異常になることが抑えられ、何の縫い目または模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、縫い目の一セットが終了すると、へたうまスイッチ10により新しく選択されたモードは変更されるようにできる。ここで、縫い目の一セットとは、布等の縫製対象物を針が刺す所定回数により定義でき、布等の縫製対象物に縫製される模様を選択する模様選択要素として機能する模様選択スイッチ7aで選択される模様毎に設定されており、メモリ102のエリアに格納されている。例えば、模様毎に、模様に対応する所定回数が一セットとして設定されており、制御装置100のメモリ102に格納されている。一セットは例えば2〜1000回の範囲から選択できる。あるいは、2〜200回の範囲、2〜100回の範囲、2〜50回の範囲等から適宜設定できる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。実施形態1と同様に、模様選択スイッチ7aがミシン本体1に設けられている。制御装置100は、へたうまスイッチ10の操作により選択されたへたうまモードのあるモードが実行されている途中において、へたうまスイッチ10の操作によりモードが変更された場合を想定する。このような場合であっても、縫い目の一セット(即ち、模様の一単位)が終了するまでは、へたうまスイッチ10の操作により選択されたモード(モード1〜モード6およびモード0)を変更しない。このようにへたうまスイッチ10の操作がされてモードが変更されたとしても、模様選択スイッチ7aで選択された一セット(模様の一単位)において、へたうまスイッチ10により選択されたモードを変更しないため、一セット(模様の一単位)の途中でバランスが崩れることが抑えられ、模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、一セット(模様の一単位)が終了すると、へたうまスイッチ10により選択されたモードは変更される。
【0034】
(実施形態3)
図8および図9は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
まず、制御装置100は、模様選択スイッチ7a、送り量設定スイッチ7b、振れ幅量設定スイッチ7cの読み込みを行うとともに、模様灯70a,送り灯70b,幅灯70cの表示処理を行う(ステップS102)。縫製開始信号があるときには(ステップS104のYes)、縫製開始処理を開始する(ステップS106)。縫製終了信号があるときには(ステップS108のYes)、制御装置100は縫製停止処理を行ない(ステップS110)、リターンし、ステップS102に戻る。縫製終了信号がないときには(ステップS108のNo)、制御装置100は、針数を計測する針数カウント処理を行う(ステップS120)。針数が模様ステップの区切りか否かを判定する(ステップS122)。針数が模様ステップの区切りであることは、模様に対応する一セットが終了することに相当する。針数が模様ステップの区切りであるとき(ステップS122のYes)、制御装置100は、へたうまモード切りか否か、即ち、へたうまモードであるか否かを判定する(ステップS128)。
【0035】
へたうまモードでないときには(ステップS128のNo)、振れ幅量を幅設定値どおりとする(ステップS130)。送りを送り設定値どおりととし(ステップS132)、制御装置100は、主軸モータ59、幅モータ79、送りモータ215に制御信号を出力する(ステップS124)。
【0036】
ユーザにより選択されているモードがへたうまモードであるときには(ステップS128のYes)、制御装置100は、へたうまモード1または5であるか判定する(ステップS134)。へたうまモード1または5である場合(ステップS134のYes)には、送り量が送り設定値であるものの、振れ幅量のバラツキが小である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値が最小か否か判定する(ステップS136)。振れ幅量の幅設定値が最小である場合(ステップS136のYes)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値と、最小値+1、最小値+2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS138)、ステップS160に進む。振れ幅量の幅設定値が最小でない場合(ステップS136のNo)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値が最大か否かを判定する(ステップS140)。振れ幅量の幅設定値が最大である場合(ステップS140のYes)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最大値と、最大値−1、最大値−2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS142)、ステップS160に進む。振れ幅量の幅設定値が最小でなく、且つ、振れ幅量の幅設定値が最大でない場合(ステップS140のNo)、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、幅設定値−1、幅設定値、幅設定値+1の領域からアトランダムに抽出し(ステップS144)、ステップS160に進む。
【0037】
さて、へたうまモード2または6である場合(ステップS150のYes)には、振れ幅量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値から最大値を含むまでの全領域から、アトランダムに抽出し(ステップS152)、ステップS160に進む。へたうまモード1,5でなく、且つ、へたうまモード2,6でない場合(ステップS150のNo)には、へたうまモードはモード3または4(振れ幅量を幅設定値として固定し、送り量だけをばらつかせるモード)である。そこで、制御装置100は、振れ幅量を、もとの幅設定値どおりとする(ステップS154)。ここで、へたうまモードが2,6であるときには、振れ幅量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値から最大値を含むまでの全領域から、アトランダムに抽出し(ステップS152)、ステップS160に進む。
【0038】
へたうまモード4または6である場合(ステップS180のYes)には、送り量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、送り量の送り量設定値を、最小値から最大値までの全領域からアトランダムに抽出し(ステップS182)、ステップS124に進む。へたうまモード3,5でなく、且つ、へたうまモード4,6でない場合(ステップS180のNo)には、へたうまモードはモード1または2(送り量を送り設定値として固定し、振れ幅量だけをばらつかせるモード)である。そこで、制御装置100は、送り量を、もとの送り量設定値どおりとする(ステップS184)。
【0039】
へたうまモード3または5である場合(ステップS160のYes)には、送り量をばらつかせるモードである。このため、制御装置100は、送り量の送り設定値が最小か否か判定する(ステップS162)。送り設定量の送り設定値が最小である場合(ステップS162のYes)には、制御装置100は、送り量の送り設定値を、最小値と、最小値+1、最小値+2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS164)、ステップS124に進む。送り量の送り設定値が最小でない場合(ステップS162のNo)には、制御装置100は、送り量の送り設定値が最大か否かを判定する(ステップS166)。送り量の送り設定値が最大である場合(ステップS166のYes)には、制御装置100は、送り量の送り設定値を、最大値と、最大値−2、最大値−1の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS168)、ステップS124に進む。また、送り量の設定値が最小でなく且つ最大でない場合(ステップS166のNo)、制御装置100は、送り量の送り設定値を、送り設定値−1、送り設定値、送り設定値+1の領域からアトランダムに抽出し(ステップS170)、ステップS124に進む。
【0040】
さて本実施形態においても、モード0では、規則正しい画一的な縫い目が得られる。しかしながらモード1〜モード6では、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、うまい程度が高いときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。更に実施形態に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式であるため、極めて複雑な演算を必要とせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0041】
(実施形態4)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード1(振れ幅量のみバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4として固定であるものの、幅設定値2および幅設定値4という領域(幅設定値3を含まない)から幅設定値がランダムに抽出される。縫い目の1セットが終了するまでは、抽出された設定値に基づいてデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの処理が繰り返され、送り設定値4で固定されているため送り量は一定であるものの、3.0mm(幅設定値2)、4.0mm(幅設定値4)とばらついているアップリケ模様が出来上がる。このように振れ幅量および/または送り量について、ユーザが設定した設定値それ自体を含まないものの、ユーザが設定した設定値前後のデータに基づいて縫製する。
【0042】
(実施形態5)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。実施形態1と同様に、模様選択スイッチ7aがミシン本体1に設けられている。制御装置100は、へたうまスイッチ10が操作されると、へたうまスイッチ10の操作により選択されたモード(モード1〜モード6およびモード0)を変更することができる。
【0043】
このようにへたうまスイッチ10の操作によりへたうまモードのうち特定のモードが選択されて、そのモードに基づいて縫製がされているとき、へたうまスイッチ10のユーザ操作によりモードが変更されたときを想定する。この場合、模様選択スイッチ7aで選択された一セット(模様の一単位)の途中であっても、へたうまスイッチ10により選択されたモードを変更する。このため、一セット(模様の一単位)の途中においてバランスが多少崩れるおそれがあるため、一セット(模様の一単位)に必要とされる針数が所定値以上であることを条件とする。所定値は模様に応じて適宜設定され、複雑な模様であれば、所定値の数は増加し、簡単な模様であれば、所定値の数は減少する。模様の一単位に要する針数が少ない場合には、模様が崩れ易いためである。模様の一単位に要する針数が多い場合には、模様が崩れ難いためである。本実施形態によれば、一セット(模様の一単位)において下手および上手の程度を調整する自由度を広げることができ、ユーザの選択の自由度を高めることができる。
【0044】
(実施形態6)
図10および図11は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図10はミシン本体1の内部の構成を示す正面図を示す。図10に示すように、ミシン本体1のミシン外郭51は、内部に機枠52を備える。機枠52に固定された一対の軸受54により、主軸53は回転自在に且つ水平方向に沿って支持されている。主軸53の一端には、ハンドホイール55、プーリ56が固着されている。プーリ56は、大径の従動プーリ56aと小径のタイミングプーリ56bとを有する。機枠52には、メインモータである主軸モータ59(図10では一部のみ図示)が取付けられている。主軸モータ59の出力軸には、モータプーリ58が固着されている。ベッド部2の内部には、タイミングプーリ67cをもつ下軸67が軸受67aにより回転可能に支持されている。このモータプーリ58とタイミングプーリ67cと従動プーリ56aとには、エンドレス状の駆動ベルト57が掛けられている。駆動ベルト57により、主軸モータ59の回転は所定の減速比(例えば約1/9)に減速されて主軸53および下軸67に伝達される。駆動ベルト57にはテンションプーリ68が当てられている。
【0045】
図10に示すように、針棒11を上下方向に往復動させるための針棒上下動機構60が設けられている。主軸53の他端には、周知のように針棒クランク61が固定されている。針棒上下動機構60は、針棒クランク61と、針棒クランク61に連結されるクランクロッド62とから構成されている。針12は針止め16により針棒11の下端に固定されている。針12は針棒11と一体となって上下方向(Z方向)へ往復動する。針棒腕76の上端部は、軸75を揺動中心として軸支されて、針棒腕76の下端部は横方向(X方向)に揺動自在とされている。針棒11は、針棒腕76により横方向(X方向)に摺動自在に軸支されている。
【0046】
ここで、針12を横方向(X方向)に揺動させる針棒揺動機構70は、機枠52に保持されたステッピングモータで形成された振れ幅調整用の幅モータ71と、幅モータ71により回転される小歯車72と、小歯車72と噛み合う扇状歯車73aをもつ幅駆動腕73と、幅駆動腕73を揺動させる揺動中心となる枢支軸73cと、X方向に延びる幅出しロッド74と、軸75により横方向(X方向)に揺動可能に支持された針棒腕76とより構成される。即ち、振れ幅調整用の幅モータ71のモータ軸には、小歯車72が取付けられている。小歯車72は幅駆動腕73の扇状歯車73aと噛み合う。幅駆動腕73の一端73eは幅出しロッド74の一端74aと連結されている。幅出しロッド74の他端74cは針棒腕76の下部76dに連結されている。振れ幅調整用の幅モータ71が駆動すると、その駆動力は、小歯車72および幅駆動腕73を介して幅出しロッド74に矢印X方向の動作として伝達され、更に針棒腕76に伝達される。この結果、針棒11が軸75を中心に横方向(X方向)に揺動する。このように振れ幅調整用の幅モータ71は、主軸53の回転と同期してコンピュータ制御により、幅出しロッド74を介して針棒11および針12を横方向(X方向)に揺動させる。振れ幅調整モード71の駆動量に基づいて、横方向(X方向)における針棒11の振れ幅量が決定される。ミシン(図10)は、ユーザが脚で操作するフットコントローラ20を有する。針12は針棒11の先端に装着されている。故に、針棒11の縫製速度及び振れ幅量は、針12の縫製速度及び振れ幅量に等しい。以下、振れ幅量は、X方向における針棒11及び針12の振れ幅量に相当する。また縫製速度は、針棒11及び針12の上下方向(Z方向)の往復動速度に相当し、主軸53の回転速度(以下、主軸回転速度ともいう)に相当する。
【0047】
図11は、送り歯15を作動させる作動機構を概念化して示す。かかる作動機構自体は周知機構である。図11に示すように、作動機構は、第1枢支軸200を中心として回動する第1アーム201と、第1アーム201に第2枢支軸203を介して枢支された第2アーム204と、第1アーム201の中間部に第3枢支軸205を介して枢支された第3アーム206と、第2アーム204を昇降させる昇降用駆動カム207と、第3アーム206を昇降させる水平方向用駆動カム208と、第2アーム204を矢印W2方向に引っ張る引っ張りばね210と、第3アーム206を矢印W3方向に引っ張る引っ張りばね212と、第3アーム206に設けられたカム従動子213と、カム従動子213を嵌合させる溝カム215をもつ送り調節器216と、送り調節器216に係合すると共に送り調節器216の向きを調整するステッピングモータで形成された送りモータ215とを有する。第2アーム204には送り歯15が設けられている。第3アーム206は引っ張りばね212により矢印W3方向に引っ張られている。第3アーム206のカム従動子213は、送り調節器216の溝カム215に嵌合している。
【0048】
縫製時には、昇降用駆動カム207および水平方向用駆動カム208は、主軸モータ59(図10参照)により回転駆動される。ここで、昇降用駆動カム207が第1偏心軸210の回りで回転すると、第2アーム204が昇降動作する。水平方向用駆動カム208が第2偏心軸211の回りで回転すると、第3アーム206が昇降方向(Z方向)に沿って動作すると共に、送り歯15を水平方向に沿って移動させる。このような動作が複合化されて、送り歯15は、昇降方向(Z方向)および水平方向の動きを伴ったスクウェア運動する。矢印Y方向において送り歯15の送り量を調整するためには、送りモータ215を所定角度駆動させる。このように送りモータ215を所定角度駆動させると、送り調節器216の向きは向きA1と向きA2の間において調整される。この結果、送り歯15の送り方向(矢印Y方向)に沿って、送り量大と送り量小との間において送り歯15の送り量を調整できる。
【0049】
(実施形態7)
図12〜図17は、本実施形態のミシンのへたうまモードを実施したときの縫製形態を示す。
(モード0)へたうまモードを実行せず、布の送り量について送り量設定スイッチ7bで設定した設定値どおり、且つ、針12の振れ幅量について振れ幅量設定スイッチ7cで設定した設定値どおり、縫製した場合であり、バラツキなしのモードである。
(モード1)布の送り量を送り量設定スイッチ7bで設定した送り設定値とし、針12の振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り量設定スイッチ7bで設定した送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を振れ幅量設定スイッチ7cで設定した幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を振れ幅量設定スイッチ7cで設定した幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
図12〜図17から理解できるように、モード0では、縫い目が規則正しかった。モード1〜モード6では、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、モードが0であるときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。更に実施形態に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式であるため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0050】
(実施形態8)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけにバラツキを発生させるモード
(モード2)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけにバラツキを発生させるモード
(モード3)振れ幅量も送り量もバラツキを発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態9)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ小を発生させるモード
(モード2)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ中を発生させるモード
(モード3)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態10)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)振れ幅量はユーザ設定値とし、送り量のみについてバラツキ小を発生させるモード
(モード2)振れ幅量はユーザ設定値とし、送り量のみについてバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態11)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量はユーザ設定値とし、振れ幅量のみについてバラツキ小を発生させるモード
(モード2)送り量はユーザ設定値とし、振れ幅量のみについてバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態12)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。前記した実施形態1によれば、振れ幅量設定スイッチ7cによりユーザが設定できる幅設定値は幅設定値1〜幅設定値6から選択されるが、本実施形態では幅設定値1〜幅設定値3から選択される。また前記した実施形態1によれば、送り量設定スイッチ7bによりユーザが設定できる送り設定値は送り設定値1〜送り設定値6から選択されるが、本実施形態では送り設定値1〜送り設定値3から選択される。
【0051】
(実施形態13)
図18〜23は他の実施形態を示す。図18は、縫製するためのミシンの正面図、図19は背面図、図20は右側面図、図21は左側面図、図22は平面図、図23は底面図をそれぞれ示す。図24は全体をまとめて示す。このミシンの特徴としては、平面視において、縫製する布等の縫製対象物を載せるテーブルが円形である。このため、縫製する布等の縫製対象物が置きやすく、縫製し易い。また、丸いテーブルはミシン本体から取り外すことができ、テーブルがミシン本体から取り外されると、通常のミシンと同様に縫製ができる。本実施形態のミシンは、へたうまモードを実行するためのへたうまスイッチを有するが、へたうまスイッチを有していない場合でも、布等の縫製対象物を載せるテーブルが円形であれば良い。
【0052】
(その他)
図6は矢印X方向における振れ幅データを示し、図7は矢印Y方向における送りデータを示すが、この図に示すデータの数値に限定されるものではない。7セグメントLED9に限定されず、液晶表示部としても良い。へたうまスイッチ10のみにより幅設定値および送り設定値の双方を個別に設定できることにしても良い。実施形態1では、へたうまモードのモード数はモード0を含めて7であるが、これに限らず、モード数はモード0を含めて5としても良いし、9としても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。本明細書の記載から次の技術的思想も把握される。
[付記項1]縫製対象物が載せられる載置部と、前記載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、送り方向における前記縫製対象物の送り量と前記送り方向に直交する振れ方向において前記縫製対象物に対する前記針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、前記縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を前記制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられていることを特徴とするミシン。縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整することができる。
【符号の説明】
【0053】
1はミシン本体、2はベッド部、4アーム部、5は頭部、6は起動スイッチ、7設定スイッチ、7aは模様選択スイッチ、7bは送り量設定スイッチ、7cは振れ幅量設定スイッチ、70は表示部、9は7セグメントLED、10はへたうまスイッチ(へたうま選択要素)、11は針棒、12は針、13は押さえ、14は針板(載置部)、15は送り歯、59は主軸モータ、71は振れ幅調整用の幅モータ、100は制御装置、215は送りモータを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は針を装着可能な針棒を有するミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンの縫い目制御量のバラツキ、例えば布送り量のバラツキを0(ゼロ)になるようにし、一定の布送り量が得られるようにしていた。しかし、その結果として得られる縫い目は、整然とはしているが、機械的な縫製に特有の機械的な且つ画一的な硬さ、冷たさを感じさせる縫い目であった。このような機械的な硬さ、冷たさといったものを排除する方策として、ミシンの縫い目制御量のバラツキを1/fのゆらぎとする方法技術が提案されている(特許文献1)。この方法技術は、ミシンで縫製される縫い目の制御量のバラツキのパワースペクトルが1/fの傾向を示すようにしたものである。一種の心地よさ、温かさを感じさせる縫い目が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-79982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に係る方法技術によれば、1/fを表す数値を得るまでに極めて複雑な演算が必要である。この場合、演算が複雑であるため、縫製速度には限界があるおそれがある。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、1/fを表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とすることなく、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られるミシンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るミシンは、(i)縫製対象物が載せられる載置部と、(ii)載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、(iii)送り方向における縫製対象物の送り量と送り方向に直交する振れ方向において縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、(iv)縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられており、(v)へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力することを特徴とする。
【0006】
へたうま選択要素は、縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力する。へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【0007】
このように縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、機械的且つ画一的な縫い目ではなく、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。更に、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るミシンによれば、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の機械的且つ画一的な固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、うまい程度が高いときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。
【0009】
更に本発明に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ミシンの正面図である。
【図2】針板付近の斜視図である。
【図3】制御系のブロック図である。
【図4】アップリケ模様の縫い目を示す図である。
【図5】アップリケ模様の縫い目における送りの方向および幅の方向を示す図である。
【図6】アップリケ模様の縫い目を形成する際の振れ幅のデータを示す図である。
【図7】アップリケ模様の縫い目を形成する際の送りデータを示す図である。
【図8】制御装置が実行するフローチャートである。
【図9】制御装置が実行するフローチャートである。
【図10】ミシンの内部構造を示す全体図である。
【図11】送り歯の送り機構を概念的に示す図である。
【図12】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図13】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図14】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図15】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図16】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図17】へたうまモードにおける各モードで縫い目を形成した状態を示す図である。
【図18】他の実施形態に係り、ミシンの正面図である。
【図19】他の実施形態に係り、ミシンの背面図である。
【図20】他の実施形態に係り、ミシンの右側面図である。
【図21】他の実施形態に係り、ミシンの左側面図である。
【図22】他の実施形態に係り、ミシンの平面図である。
【図23】他の実施形態に係り、ミシンの底面図である。
【図24】他の実施形態に係り、ミシンの六面図をまとめて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
載置部は、縫製対象物が載せられるものであれば良く、針板やベッド部を例示できる。針棒は、載置部に対して昇降可能に設けられ、針を装着可能なものであれば良い。制御装置は、送り方向における布等の縫製対象物の送り量と、送り方向に直交する方向において縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とを制御できるものであれば良い。『縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量』とは、縫製対象物および針の相対的な振れ幅量に相当する。この場合、平面視において、送り方向に直交する方向において縫製対象物が動かないときには、縫製対象物に対する針の振れ幅量を意味する。送り方向に直交する方向においても縫製対象物が動くときには、縫製対象物に対する針の相対的な振れ幅量とする。へたうま選択要素は、縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を制御装置に出力する。へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる指令を制御装置に出力する。
【0012】
好ましくは、へたうま選択要素は、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値としてユーザが設定する設定スイッチと、へたうまモードを選択するへたうまスイッチとを有している。この場合、制御装置は、へたうまスイッチによりへたうまモードが選択されているとき、設定スイッチにより設定された設定値を含むと共に設定値付近の選択領域において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方をばらつかせる。この場合、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。好ましくは、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値を含むと共に設定値付近の選択領域において、振れ幅量および/または送り量をばらつかせる。この場合、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる更に、好ましくは、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値を選択する。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量および/または送り量に関する設定値が選択された確率を含むため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。
【0013】
好ましくは、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値を含むと共に幅設定値付近の広い選択領域において振れ幅量をばらつかせると共に、設定スイッチにより設定された幅設定値を選択する確率を含む。この場合、振れ幅量をばらつかせたへたうまモードが実行される。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値が選択される確率があるため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。好ましく、へたうまモードにおいて、制御装置は、設定スイッチにより設定された送り量に関する送り設定値を含むと共に送り設定値付近の広い選択領域において送り量をばらつかせると共に、設定スイッチにより設定された送り設定値を選択する確率を含む。この場合、送り量をばらつかせたへたうまモードが実行される。このようにへたうまモードといえども、設定スイッチにより設定された振れ幅量に関する幅設定値が選択される確率があるため、縫い目および模様が異常になることが抑えられる。好ましくは、へたうま選択要素は、送り量をばらつかせないで針の振れ幅をばらつかせる振れ幅ばらつきモード、振れ幅をばらつかせないで送り量をばらつかせる送り量ばらつきモード、針の振れ幅および送り量の双方をばらつかせる振れ幅・送り量ばらつきモードとを選択可能である。
【0014】
縫製途中においてへたうまモードが変更されたときであっても、制御装置は、へたうま選択要素の操作に拘わらず、縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことが好ましい。このようにへたうま選択要素の操作に拘わらず、模様選択要素で選択された縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないため、縫い目の一セットの途中でバランスが崩れることが抑えられ、縫い目および模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、縫い目の一セットが終了すると、へたうま選択要素により選択されたモードは変更可能とすることが好ましい。縫い目の一セットとは、布等の縫製対象物を針が刺す所定回数により定義できる。所定回数としては2〜30回の範囲から模様毎に選択でき、2〜20回の範囲、2〜10回の範囲、2〜5回の範囲から適宜設定できる。
【0015】
好ましくは、場合によっては、制御装置は、縫い目の一セット内において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更可能とすることもできる。この場合、縫い目の一セットにおいて、へたうま選択要素により選択されたモードを変更するため、へたの程度が高まり、縫い目の一セットが異常な模様になるおそれがあるものの、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる可能性が高くなる。好ましくは、縫製対象物に縫製される模様を選択する模様選択要素が設けられている。模様選択要素で選択された模様が縫製されているときにおいて、へたうまモードが変更されたときであっても、制御装置は、へたうま選択要素の操作に拘わらず、模様の一単位において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことが好ましい。このようにへたうま選択要素の操作に拘わらず、模様選択要素で選択された模様の一単位において、へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないため、模様の一単位の途中でバランスが崩れることが抑えられ、模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、模様の一単位が終了すると、へたうま選択要素により選択されたモードは変更可能とすることが好ましい。模様の一単位とは、他の模様に連続しておらず、他の模様と物理的に区別できる模様をいう。例えば、動物の絵が他の隣接する模様と区別できる模様である場合には、その動物の絵が1単位にできる。
【0016】
好ましくは、制御装置は、へたうまモードが実行されているとき、一時的に、設定要素による設定値に基づいて縫い目を形成し、それ以外はへたうまモードを実行することができる。途中でバランスが崩れることが抑えられ、縫い目または模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。好ましくは、予め作成された縫い模様データに基づき、針の振れ幅量および/または送り量を制御して縫い模様を形成するにあたり、選択使用中の模様データに対し、へたうま選択要素に基づいて、振れ幅量および/または送り量をばらつかせることができる。一般的なミシンでは、振れ幅量および/または送り量の設定をユーザが調整できる。この設定値自体を変更させるため、縫い目の変化が判りやすい。
【0017】
好ましくは、振れ幅量および/または送り量について、(i)設定値どおり,(ii)設定値の前後1段階といった合計3つの設定数値からランダムに1つを抽出する方式(以後「バラツキ小モード」とも呼ぶ),(iii)(ii)よりも広い領域(設定可能な全体領域)からランダムに1つの設定値を抽出する(以後「ばらつき大モード」と呼ぶ)が選択可能さとされている形態が採用できる。好ましくは、複数の針数をもってひとつの模様のセットを形成する模様データにおいて、1セット毎に、振れ幅量および/または送り量について、制御装置は設定値を抽出することができる。これにより、模様の途中でバランスが崩れて、模様が異常になり、何の模様か判らなくなる ということは抑えられる。ミシンの用途として、布を縫い合わせること以外に、縫い目を見せる場合がある。例えばアップリケで布片を留めるのに、布片の外縁を、梯子の片側が無い模様(図4参照)で縫いつけるときである。この場合、用途などによっては、この模様が、『機械で縫い付けました』というバラツキゼロのあたかも機械的な縫い目ではなく、『人間の手で縫ったんだけど、不揃いになっちゃった』という縫い目の方が場合によっては好まれることがある。この場合、『積極的に不揃いになっちゃった縫い目』つまり、縫い目を『へた』にみせることにより、縫製対象物に温かみを出す効果がある。
【0018】
好ましくは、次の形態を採用できる。例えば、ユーザがへたうま選択要素によりへたうまモードにおいて(モード0)(モード1)(モード2)(モード3)(モード4)(モード5)(モード6)と変更できる方式が採用できる。
(モード0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード
(モード1)振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
このように1つの模様の縫い目の1セットにおいて、(モード0)〜(モード6)までの合計7種類の縫い目の味わいが生まれる。このようにへたうま選択要素が設けられていることにより、好みの模様のマンネリ感が解消される。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るミシンの正面図を示す。図1に示すように、ミシンは、ミシン本体1と、ミシン本体1に着脱可能な操作コントローラとして機能するフットコントローラ20とを備える。また、フットコントローラ20の接続コード25の一端に設けたプラグ(図示せず)は、脚柱部3の図1における下部に設けたジャック100aに着脱可能に接続される。図1に示すように、ミシン本体1は、ベッド部2と、ベッド部2の図1における右端から立設する脚柱部3と、脚柱部3の上端側からベッド部2の上面2aに対面して延在するアーム4とを有する。アーム4の頭部5の前面には、縫製作業の起動と停止を制御する起動スイッチ6が設けられている。また、アーム4の前面には、設定スイッチ7と、模様番号等を切り替えて選択するための切替スイッチ8(切替要素)と、模様番号等を表示する7セグメントLED9(表示要素)、縫製の下手および上手の度合いを調整するへたうまモードを設定するためのへたうまスイッチ10とが設けられている。設定スイッチ7は、模様を選択するための模様選択スイッチ7aと、送り量を設定するための送り量設定スイッチ7b(設定スイッチ)と、振れ幅量を設定するための振れ幅量設定スイッチ7c(設定スイッチ)とを有する。表示部70は、模様選択スイッチ7aが操作されると点灯する模様灯70aと、送り量設定スイッチ7bが操作されると点灯する送り灯70bと、振れ幅量を設定する振れ幅量設定スイッチ7cが操作されると点灯する幅灯70cとを有する。
【0020】
図2は、頭部5の下面5a側に設けた針12周辺の拡大斜視図を示す。図1及び図2に示すように、針棒11の先端に取付けた針12と、押さえ棒90に着脱可能な且つ押さえ棒90と一体となって昇降可能な布押さえ13(押さえ要素)とが頭部5の下面5aから突設されている。また、ベッド部2の上面2aに設けられている針板14(載置部)の溝14aには、直線縫製時において縦方向であるY方向に沿って布(縫製対象物)を送るための送り歯15が設けられている。X方向は針12の振れ幅方向を示し、アーム4が延設されている方向を示す。Y方向は布等の縫製対象物の送り方向を示し、ミシンのユーザ側と奥方とを繋ぐ方向を示す。
【0021】
図3は制御系を示す。マイコン101、メモリ102およびインターフェースを搭載する制御装置100が設けられている。模様を選択する模様選択スイッチ7a,送り量設定スイッチ7b,振れ幅量設定スイッチ7c、ミシンを起動および停止させる起動スイッチ6,へたうまモードを選択するへたうまスイッチ10,切り替えスイッチ8,フットコントローラ20の各信号は、制御装置100に入力される。制御装置100は、表示部70、7セグメントLED9、主軸モータ59、幅モータ71、送りモータ215に制御信号をそれぞれ出力する。
【0022】
さて、説明の便宜上、実施形態1の説明に先立ち、従来形態を説明する。ユーザは、ミシン本体1の送り量設定スイッチ7bを押して送り灯70b(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される送り設定値を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望する送り設定値を示す番号を選択する。同様に、ユーザは、ミシン本体1の振れ幅量設定スイッチ7cを押して送り灯70c(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される幅設定値を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望する幅設定値を示す番号を選択する。
【0023】
アップリケ模様を縫うとき、ユーザは、ミシン本体1の模様選択スイッチ7aを押して模様灯70a(表示部)を点灯させ、7セグメントLED9に表示される模様番号を見ながら、切替スイッチ8の『+』,『−』スイッチでユーザが希望するアップリケ模様を示す番号を選択する。このとき、選択されたアップリケ模様の振れ幅量と送り量の設定は、強制的に指示される強制値であるデフォルト値として3が設定される。即ち、ユーザがスイッチ7b,7cを操作しない限り、幅設定値としては3が設定され、送り設定値としては3が強制的に設定される。ここで、図6は、矢印X方向における振れ幅データを示す。図6に示す幅データは、振れ幅調整用の幅モータ71の回転位置を絶対値で示すものであり、針12が振れ幅方向(図2に示すX方向)における中央に位置するとき、値は30である。このように図6は矢印X方向における針12の振れ幅量を示す。図6に示すように、振れ幅量が幅設定値3とされているとき、データ1の値40では、針12はユーザからみて右方向(一方向)に1.75mm振れる。データ2も値40なので針位置はそのままとなり、振れ幅量はデータ3で値20となり左方向(他方向)に1.75mm振れる。結果としては、幅設定値3では、左右方向(X方向)において1.75mmずつ振れるので、針12の振れ幅は合計3.5mmである。
【0024】
図7は、矢印Y方向における布の送り量のデータを示す表1を表す。図7に示す送り量のデータは、送りモータ215の回転位置を絶対値で示すものであり、送り量が送り設定値3とされているとき、データ1の値22は、送り歯15が上下するだけで布を送らない位置を示し、データ2の値36は布を正方向(矢印Y方向においてミシンの手前から奥方向)へ2.5mm送る位置である。実際に縫うときには、振れ幅量データと送り量データとがそれぞれ針12の1刺し毎に、データ1→データ2→データ3と進み、所定針数(例えば3針)縫ったところで、縫い目の1セットが完了する。1セットの値は、模様選択スイッチ7aで選択された模様に対応する縫い目の数として、模様毎に、メモリ102のエリアに格納されている。ユーザが布の送り量を変えたい場合は、ミシン本体1の送り量設定スイッチ7bを操作して送り灯70bを点灯させ、7セグメントLED9に表示される送り設定値を見ながら『+』,『−』スイッチで、送り設定値を1から6までの範囲(図7参照)で変更できる。同様に、ユーザが針12の振れ幅量を変えたい場合は、ミシン本体1の振れ幅量設定スイッチ7cを操作して幅灯70cを点灯させ、7セグメントLED9に表示される振れ幅量の設定値を見ながら『+』,『−』スイッチで設定値を1から6までの範囲(図6参照)で変更できる。これが従来技術であり、本実施形態に係るミシンもこのように操作される。
【0025】
以降、本発明に対応する実施形態について説明する。本実施形態によれば、次に示すようにモード1〜モード0が設定可能とされている。
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
ミシン本体1に搭載されているへたうまスイッチ10をユーザが手で操作すると、7セグメントLED9に、現在設定されているへたうまモードにおけるモード値が表示される。強制値であるデフォルトは0(へたうまモードの切りであり、へたうまモードが採用されていないモードの切りに相当する)。ユーザがへたうまスイッチ10を手で操作するたびに、7セグメントLED9において、1モード→2モード→3モード→4モード→5モード→6モード と設定が順に切り変わる。さらにユーザがへたうまスイッチ10を操作すると 0モードになり、へたうまモードの不採用になる。例えば、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード1(送り量をばらつかせず、振れ幅量のみバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4(送り量:3.0mm)として固定されるものの、幅設定値が幅設定値2,3,4の領域(ユーザが設定した設定値3の前後を含む領域)において、何れかからランダムに抽出される。すなわち、振れ幅量の幅設定値が幅設定値2、幅設定値3,幅設定値4のうちからいずれ1つの幅設定値が抽出される。
【0026】
縫い目の1セット(この場合には3針の縫い目)が終了するまでは、抽出された設定値のデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セット(たとえば3針の縫い目)が終了した時点で、次の1セット用の幅設定値が再び幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域から何れかからランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの縫い目形成処理が繰り返される。この場合、送り設定値は4(送り量:3.0mm)で固定されているため、送り量は3mmで一定であるものの、振れ幅量が3.0mm(幅設定値2)か、3.5mm(幅設定値3)か、4.0mm(幅設定値4)でばらついているアップリケ模様が出来上がる。このようにへたうまモードのうち、送り量をばらつかせず、振れ幅量のみバラツキ小とするモード1が実行される。このとき、ユーザが設定した幅設定値である幅設定値3を含む広い領域において,すなわち、幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域からランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した幅設定値である幅設定値3が抽出される確率が存在する。このためユーザが全く意図しない縫い目が形成されることが抑制される。従って、下手な縫い目であるものの、ユーザが意図した下手程度の縫い目が形成されることになる。
【0027】
また、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード2(振れ幅量のみバラツキ大とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4に固定であり、幅設定値1,幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4,幅設定値5,幅設定値6という広い領域(図6に示す全領域)から幅設定値がランダムに抽出される。縫い目の1セット(この場合には3針)が終了するまでは、抽出された設定値に基づいてデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セットが終了した時点では、次の1セット用の幅設定値が、幅設定値1,幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4,幅設定値5,幅設定値6のうちの何れかからランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの処理が繰り返され、送り設定値4で固定されているため送り量は3.0mmで一定であるものの、振れ幅量が2.5mm(幅設定値1)、3.0mm(幅設定値2)、3.50mm(幅設定値3)、4.0mm(幅設定値4)、4.5mm(幅設定値5)、5mm(幅設定値6)の間においてばらついているアップリケ模様が出来上がる。
【0028】
また、模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード5(振れ幅量および送り量ともにバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り量の送り設定値は送り設定値3,送り設定値4,送り設定値5の領域(ユーザが設定した送り設定値4を含むと共にその前後の設定値を含む領域)から抽出される。また、振れ幅量の幅設定値が幅設定値2,幅設定値3,幅設定値4の領域(ユーザが設定した幅設定値3を含むと共にその前後の設定値を含む領域)からランダムに抽出される。縫い目の1セット(この場合には3針)が終了するまでは、抽出された送り設定値および幅設定値のデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫い目の1セットが終了した時で、制御装置100により、次の1セット用の幅設定値,送り設定値が再びランダムに抽出され、縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまでこれらの処理が繰り返される。この場合、送り量は2.5mm(送り設定値3)、3.0mm(送り設定値4)、3.5mm(送り設定値5)としてばらついている。且つ、幅が3.0mm(幅設定値2)、3.5mm(幅設定値3)、4.0mm(幅設定値4)でばらついているアップリケ模様が出来上がる。なお、一セットは3針と限定されず、模様に応じて、例えば2〜2000の針数の範囲内で設定できる。へたうまモードのモード3,モード4,モード5,モード6についても同様である。例として、アップリケ模様をあげたが、他の模様や縫い目についても同様である。
【0029】
以上説明したように本実施形態によれば、モード0では、規則正しい画一的な縫い目が得られる。この場合、規則正し過ぎるため、画一的な固い感じ、冷たい感じを与えるおそれがある。この点について本実施形態によれば、振れ幅量の幅設定値がユーザにより振れ幅量設定スイッチ7cより設定され、送り量の送り設定値がユーザにより送り量設定スイッチ7bより設定されているにも拘わらず、へたうまスイッチ10がユーザにより操作されていると、制御装置100によりへたうまモードが実行される。そしてへたうまモードのうちモード1〜モード6では、縫製中において、送り量および振れ幅量のうちの少なくとも一方がそれぞれの、ユーザが設定した幅設定値および送り設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の画一的な固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、モード0を採用すれば、振れ量および送り量についてバラツキは解消されるため、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。
【0030】
本実施形態によれば、針12の振れ幅量についてばらつかせるときには、ユーザが設定した幅設定値を必ず含む広い領域において,幅設定値がランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した幅設定値が抽出される確率が必ず存在する。同様に、布の送り量についてばらつかせるときには、ユーザが設定した送り設定値を必ず含む広い領域において,送り設定値がランダムに抽出され、縫い目が形成される。換言すれば、ユーザが設定した送り設定値が抽出される確率が存在する。このためユーザが全く意図しない縫い目が形成されることが抑制される。従って、下手な縫い目であるものの、ユーザが意図した下手程度の縫い目が形成されることになる。
【0031】
更に実施形態に係るミシンによれば、へたうまモードを実行するにあたり、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量に関する幅設定値と縫製対象物の送り量に関する送り設定値とをユーザが設定すると共に、幅設定値および送り設定値の一方または双方をそれぞれのユーザ設定値に対してばらつかせる方式である。このため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0032】
ところで本実施形態によれば、へたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードのあるモードが実行されているとき、そのモードの実行途中において、へたうまスイッチ10が操作されて異なるモードが選択されるときがある。この場合において、制御装置100は、へたうまスイッチ10の操作に拘わらず、縫い目の一セットにおいて、へたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードを変更しない。このようにへたうまスイッチ10により選択されたへたうまモードにおけるモードを変更しないため、縫い目の一セットの途中で縫い目や模様のバランスが崩れることが抑えられ、縫い目が異常になることが抑えられ、何の縫い目または模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、縫い目の一セットが終了すると、へたうまスイッチ10により新しく選択されたモードは変更されるようにできる。ここで、縫い目の一セットとは、布等の縫製対象物を針が刺す所定回数により定義でき、布等の縫製対象物に縫製される模様を選択する模様選択要素として機能する模様選択スイッチ7aで選択される模様毎に設定されており、メモリ102のエリアに格納されている。例えば、模様毎に、模様に対応する所定回数が一セットとして設定されており、制御装置100のメモリ102に格納されている。一セットは例えば2〜1000回の範囲から選択できる。あるいは、2〜200回の範囲、2〜100回の範囲、2〜50回の範囲等から適宜設定できる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。実施形態1と同様に、模様選択スイッチ7aがミシン本体1に設けられている。制御装置100は、へたうまスイッチ10の操作により選択されたへたうまモードのあるモードが実行されている途中において、へたうまスイッチ10の操作によりモードが変更された場合を想定する。このような場合であっても、縫い目の一セット(即ち、模様の一単位)が終了するまでは、へたうまスイッチ10の操作により選択されたモード(モード1〜モード6およびモード0)を変更しない。このようにへたうまスイッチ10の操作がされてモードが変更されたとしても、模様選択スイッチ7aで選択された一セット(模様の一単位)において、へたうまスイッチ10により選択されたモードを変更しないため、一セット(模様の一単位)の途中でバランスが崩れることが抑えられ、模様が異常になることが抑えられ、何の模様か判らなくなる ということが抑えられる。この場合、一セット(模様の一単位)が終了すると、へたうまスイッチ10により選択されたモードは変更される。
【0034】
(実施形態3)
図8および図9は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
まず、制御装置100は、模様選択スイッチ7a、送り量設定スイッチ7b、振れ幅量設定スイッチ7cの読み込みを行うとともに、模様灯70a,送り灯70b,幅灯70cの表示処理を行う(ステップS102)。縫製開始信号があるときには(ステップS104のYes)、縫製開始処理を開始する(ステップS106)。縫製終了信号があるときには(ステップS108のYes)、制御装置100は縫製停止処理を行ない(ステップS110)、リターンし、ステップS102に戻る。縫製終了信号がないときには(ステップS108のNo)、制御装置100は、針数を計測する針数カウント処理を行う(ステップS120)。針数が模様ステップの区切りか否かを判定する(ステップS122)。針数が模様ステップの区切りであることは、模様に対応する一セットが終了することに相当する。針数が模様ステップの区切りであるとき(ステップS122のYes)、制御装置100は、へたうまモード切りか否か、即ち、へたうまモードであるか否かを判定する(ステップS128)。
【0035】
へたうまモードでないときには(ステップS128のNo)、振れ幅量を幅設定値どおりとする(ステップS130)。送りを送り設定値どおりととし(ステップS132)、制御装置100は、主軸モータ59、幅モータ79、送りモータ215に制御信号を出力する(ステップS124)。
【0036】
ユーザにより選択されているモードがへたうまモードであるときには(ステップS128のYes)、制御装置100は、へたうまモード1または5であるか判定する(ステップS134)。へたうまモード1または5である場合(ステップS134のYes)には、送り量が送り設定値であるものの、振れ幅量のバラツキが小である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値が最小か否か判定する(ステップS136)。振れ幅量の幅設定値が最小である場合(ステップS136のYes)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値と、最小値+1、最小値+2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS138)、ステップS160に進む。振れ幅量の幅設定値が最小でない場合(ステップS136のNo)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値が最大か否かを判定する(ステップS140)。振れ幅量の幅設定値が最大である場合(ステップS140のYes)には、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最大値と、最大値−1、最大値−2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS142)、ステップS160に進む。振れ幅量の幅設定値が最小でなく、且つ、振れ幅量の幅設定値が最大でない場合(ステップS140のNo)、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、幅設定値−1、幅設定値、幅設定値+1の領域からアトランダムに抽出し(ステップS144)、ステップS160に進む。
【0037】
さて、へたうまモード2または6である場合(ステップS150のYes)には、振れ幅量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値から最大値を含むまでの全領域から、アトランダムに抽出し(ステップS152)、ステップS160に進む。へたうまモード1,5でなく、且つ、へたうまモード2,6でない場合(ステップS150のNo)には、へたうまモードはモード3または4(振れ幅量を幅設定値として固定し、送り量だけをばらつかせるモード)である。そこで、制御装置100は、振れ幅量を、もとの幅設定値どおりとする(ステップS154)。ここで、へたうまモードが2,6であるときには、振れ幅量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、振れ幅量の幅設定値を、最小値から最大値を含むまでの全領域から、アトランダムに抽出し(ステップS152)、ステップS160に進む。
【0038】
へたうまモード4または6である場合(ステップS180のYes)には、送り量のバラツキが大である。このため、制御装置100は、送り量の送り量設定値を、最小値から最大値までの全領域からアトランダムに抽出し(ステップS182)、ステップS124に進む。へたうまモード3,5でなく、且つ、へたうまモード4,6でない場合(ステップS180のNo)には、へたうまモードはモード1または2(送り量を送り設定値として固定し、振れ幅量だけをばらつかせるモード)である。そこで、制御装置100は、送り量を、もとの送り量設定値どおりとする(ステップS184)。
【0039】
へたうまモード3または5である場合(ステップS160のYes)には、送り量をばらつかせるモードである。このため、制御装置100は、送り量の送り設定値が最小か否か判定する(ステップS162)。送り設定量の送り設定値が最小である場合(ステップS162のYes)には、制御装置100は、送り量の送り設定値を、最小値と、最小値+1、最小値+2の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS164)、ステップS124に進む。送り量の送り設定値が最小でない場合(ステップS162のNo)には、制御装置100は、送り量の送り設定値が最大か否かを判定する(ステップS166)。送り量の送り設定値が最大である場合(ステップS166のYes)には、制御装置100は、送り量の送り設定値を、最大値と、最大値−2、最大値−1の領域から、アトランダムに抽出し(ステップS168)、ステップS124に進む。また、送り量の設定値が最小でなく且つ最大でない場合(ステップS166のNo)、制御装置100は、送り量の送り設定値を、送り設定値−1、送り設定値、送り設定値+1の領域からアトランダムに抽出し(ステップS170)、ステップS124に進む。
【0040】
さて本実施形態においても、モード0では、規則正しい画一的な縫い目が得られる。しかしながらモード1〜モード6では、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、うまい程度が高いときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。更に実施形態に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式であるため、極めて複雑な演算を必要とせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0041】
(実施形態4)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。模様設定をアップリケとし,振れ幅量の幅設定値を3とし,送り量の送り設定値を4とし,へたうまモードをモード1(振れ幅量のみバラツキ小とするモード)で縫製を開始すると、送り設定値は4として固定であるものの、幅設定値2および幅設定値4という領域(幅設定値3を含まない)から幅設定値がランダムに抽出される。縫い目の1セットが終了するまでは、抽出された設定値に基づいてデータ1,データ2,データ3を使用して縫い目が形成される。縫製終了信号が入力されるまで、これらの処理が繰り返され、送り設定値4で固定されているため送り量は一定であるものの、3.0mm(幅設定値2)、4.0mm(幅設定値4)とばらついているアップリケ模様が出来上がる。このように振れ幅量および/または送り量について、ユーザが設定した設定値それ自体を含まないものの、ユーザが設定した設定値前後のデータに基づいて縫製する。
【0042】
(実施形態5)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、モード1〜モード6およびモード0がへたうまスイッチ10により選択可能とされている。実施形態1と同様に、模様選択スイッチ7aがミシン本体1に設けられている。制御装置100は、へたうまスイッチ10が操作されると、へたうまスイッチ10の操作により選択されたモード(モード1〜モード6およびモード0)を変更することができる。
【0043】
このようにへたうまスイッチ10の操作によりへたうまモードのうち特定のモードが選択されて、そのモードに基づいて縫製がされているとき、へたうまスイッチ10のユーザ操作によりモードが変更されたときを想定する。この場合、模様選択スイッチ7aで選択された一セット(模様の一単位)の途中であっても、へたうまスイッチ10により選択されたモードを変更する。このため、一セット(模様の一単位)の途中においてバランスが多少崩れるおそれがあるため、一セット(模様の一単位)に必要とされる針数が所定値以上であることを条件とする。所定値は模様に応じて適宜設定され、複雑な模様であれば、所定値の数は増加し、簡単な模様であれば、所定値の数は減少する。模様の一単位に要する針数が少ない場合には、模様が崩れ易いためである。模様の一単位に要する針数が多い場合には、模様が崩れ難いためである。本実施形態によれば、一セット(模様の一単位)において下手および上手の程度を調整する自由度を広げることができ、ユーザの選択の自由度を高めることができる。
【0044】
(実施形態6)
図10および図11は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図10はミシン本体1の内部の構成を示す正面図を示す。図10に示すように、ミシン本体1のミシン外郭51は、内部に機枠52を備える。機枠52に固定された一対の軸受54により、主軸53は回転自在に且つ水平方向に沿って支持されている。主軸53の一端には、ハンドホイール55、プーリ56が固着されている。プーリ56は、大径の従動プーリ56aと小径のタイミングプーリ56bとを有する。機枠52には、メインモータである主軸モータ59(図10では一部のみ図示)が取付けられている。主軸モータ59の出力軸には、モータプーリ58が固着されている。ベッド部2の内部には、タイミングプーリ67cをもつ下軸67が軸受67aにより回転可能に支持されている。このモータプーリ58とタイミングプーリ67cと従動プーリ56aとには、エンドレス状の駆動ベルト57が掛けられている。駆動ベルト57により、主軸モータ59の回転は所定の減速比(例えば約1/9)に減速されて主軸53および下軸67に伝達される。駆動ベルト57にはテンションプーリ68が当てられている。
【0045】
図10に示すように、針棒11を上下方向に往復動させるための針棒上下動機構60が設けられている。主軸53の他端には、周知のように針棒クランク61が固定されている。針棒上下動機構60は、針棒クランク61と、針棒クランク61に連結されるクランクロッド62とから構成されている。針12は針止め16により針棒11の下端に固定されている。針12は針棒11と一体となって上下方向(Z方向)へ往復動する。針棒腕76の上端部は、軸75を揺動中心として軸支されて、針棒腕76の下端部は横方向(X方向)に揺動自在とされている。針棒11は、針棒腕76により横方向(X方向)に摺動自在に軸支されている。
【0046】
ここで、針12を横方向(X方向)に揺動させる針棒揺動機構70は、機枠52に保持されたステッピングモータで形成された振れ幅調整用の幅モータ71と、幅モータ71により回転される小歯車72と、小歯車72と噛み合う扇状歯車73aをもつ幅駆動腕73と、幅駆動腕73を揺動させる揺動中心となる枢支軸73cと、X方向に延びる幅出しロッド74と、軸75により横方向(X方向)に揺動可能に支持された針棒腕76とより構成される。即ち、振れ幅調整用の幅モータ71のモータ軸には、小歯車72が取付けられている。小歯車72は幅駆動腕73の扇状歯車73aと噛み合う。幅駆動腕73の一端73eは幅出しロッド74の一端74aと連結されている。幅出しロッド74の他端74cは針棒腕76の下部76dに連結されている。振れ幅調整用の幅モータ71が駆動すると、その駆動力は、小歯車72および幅駆動腕73を介して幅出しロッド74に矢印X方向の動作として伝達され、更に針棒腕76に伝達される。この結果、針棒11が軸75を中心に横方向(X方向)に揺動する。このように振れ幅調整用の幅モータ71は、主軸53の回転と同期してコンピュータ制御により、幅出しロッド74を介して針棒11および針12を横方向(X方向)に揺動させる。振れ幅調整モード71の駆動量に基づいて、横方向(X方向)における針棒11の振れ幅量が決定される。ミシン(図10)は、ユーザが脚で操作するフットコントローラ20を有する。針12は針棒11の先端に装着されている。故に、針棒11の縫製速度及び振れ幅量は、針12の縫製速度及び振れ幅量に等しい。以下、振れ幅量は、X方向における針棒11及び針12の振れ幅量に相当する。また縫製速度は、針棒11及び針12の上下方向(Z方向)の往復動速度に相当し、主軸53の回転速度(以下、主軸回転速度ともいう)に相当する。
【0047】
図11は、送り歯15を作動させる作動機構を概念化して示す。かかる作動機構自体は周知機構である。図11に示すように、作動機構は、第1枢支軸200を中心として回動する第1アーム201と、第1アーム201に第2枢支軸203を介して枢支された第2アーム204と、第1アーム201の中間部に第3枢支軸205を介して枢支された第3アーム206と、第2アーム204を昇降させる昇降用駆動カム207と、第3アーム206を昇降させる水平方向用駆動カム208と、第2アーム204を矢印W2方向に引っ張る引っ張りばね210と、第3アーム206を矢印W3方向に引っ張る引っ張りばね212と、第3アーム206に設けられたカム従動子213と、カム従動子213を嵌合させる溝カム215をもつ送り調節器216と、送り調節器216に係合すると共に送り調節器216の向きを調整するステッピングモータで形成された送りモータ215とを有する。第2アーム204には送り歯15が設けられている。第3アーム206は引っ張りばね212により矢印W3方向に引っ張られている。第3アーム206のカム従動子213は、送り調節器216の溝カム215に嵌合している。
【0048】
縫製時には、昇降用駆動カム207および水平方向用駆動カム208は、主軸モータ59(図10参照)により回転駆動される。ここで、昇降用駆動カム207が第1偏心軸210の回りで回転すると、第2アーム204が昇降動作する。水平方向用駆動カム208が第2偏心軸211の回りで回転すると、第3アーム206が昇降方向(Z方向)に沿って動作すると共に、送り歯15を水平方向に沿って移動させる。このような動作が複合化されて、送り歯15は、昇降方向(Z方向)および水平方向の動きを伴ったスクウェア運動する。矢印Y方向において送り歯15の送り量を調整するためには、送りモータ215を所定角度駆動させる。このように送りモータ215を所定角度駆動させると、送り調節器216の向きは向きA1と向きA2の間において調整される。この結果、送り歯15の送り方向(矢印Y方向)に沿って、送り量大と送り量小との間において送り歯15の送り量を調整できる。
【0049】
(実施形態7)
図12〜図17は、本実施形態のミシンのへたうまモードを実施したときの縫製形態を示す。
(モード0)へたうまモードを実行せず、布の送り量について送り量設定スイッチ7bで設定した設定値どおり、且つ、針12の振れ幅量について振れ幅量設定スイッチ7cで設定した設定値どおり、縫製した場合であり、バラツキなしのモードである。
(モード1)布の送り量を送り量設定スイッチ7bで設定した送り設定値とし、針12の振れ幅量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード2)送り量を送り量設定スイッチ7bで設定した送り設定値とし、振れ幅量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード3)振れ幅量を振れ幅量設定スイッチ7cで設定した幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ小」とするモード
(モード4)振れ幅量を振れ幅量設定スイッチ7cで設定した幅設定値とし、送り量だけを「バラツキ大」とするモード
(モード5)振れ幅量も送り量も「バラツキ小」とするモード
(モード6)振れ幅量も送り量も「バラツキ大」とするモード
図12〜図17から理解できるように、モード0では、縫い目が規則正しかった。モード1〜モード6では、縫製中において、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方が設定値に対してばらつくため、心地よさおよび温かさを感じさせ得る縫い目が得られる。すなわち、機械縫製に特有のある種の固さ、冷たさを排除するだけでなく、へたの程度が高いときには、あたかも裁縫初心者や子供等が手縫いで縫ったように見せることもできる。つまり、積極的に『へた』に見せる縫い目を形成することもできる。勿論、モードが0であるときには、あたかも機械や裁縫上級者が縫ったように見せることもできる。更に実施形態に係るミシンによれば、へたうま選択要素は、1/f を表す数値を得るまでに極めて複雑な演算を必須とする方式ではなく、針の振れ幅量および縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、振れ幅量および送り量のうちの少なくとも一方を設定値に対してばらつかせる方式であるため、極めて複雑な演算をとせず、極めて高性能のコンピュータおよび極めて高性能のメモリとを必要とせず、廉価なマイコンおよびメモリで足りる。
【0050】
(実施形態8)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量を送り設定値とし、振れ幅量だけにバラツキを発生させるモード
(モード2)振れ幅量を幅設定値とし、送り量だけにバラツキを発生させるモード
(モード3)振れ幅量も送り量もバラツキを発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態9)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ小を発生させるモード
(モード2)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ中を発生させるモード
(モード3)送り量および振れ幅量のそれぞれにバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態10)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)振れ幅量はユーザ設定値とし、送り量のみについてバラツキ小を発生させるモード
(モード2)振れ幅量はユーザ設定値とし、送り量のみについてバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態11)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。本実施形態によれば、へたうまモードにおいて、モードの数が減少されている。
(モード1)送り量はユーザ設定値とし、振れ幅量のみについてバラツキ小を発生させるモード
(モード2)送り量はユーザ設定値とし、振れ幅量のみについてバラツキ大を発生させるモード
(モード0)(=0)へたうまモードを実行せず、バラツキなしのモード)
(実施形態12)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図7を準用できる。前記した実施形態1によれば、振れ幅量設定スイッチ7cによりユーザが設定できる幅設定値は幅設定値1〜幅設定値6から選択されるが、本実施形態では幅設定値1〜幅設定値3から選択される。また前記した実施形態1によれば、送り量設定スイッチ7bによりユーザが設定できる送り設定値は送り設定値1〜送り設定値6から選択されるが、本実施形態では送り設定値1〜送り設定値3から選択される。
【0051】
(実施形態13)
図18〜23は他の実施形態を示す。図18は、縫製するためのミシンの正面図、図19は背面図、図20は右側面図、図21は左側面図、図22は平面図、図23は底面図をそれぞれ示す。図24は全体をまとめて示す。このミシンの特徴としては、平面視において、縫製する布等の縫製対象物を載せるテーブルが円形である。このため、縫製する布等の縫製対象物が置きやすく、縫製し易い。また、丸いテーブルはミシン本体から取り外すことができ、テーブルがミシン本体から取り外されると、通常のミシンと同様に縫製ができる。本実施形態のミシンは、へたうまモードを実行するためのへたうまスイッチを有するが、へたうまスイッチを有していない場合でも、布等の縫製対象物を載せるテーブルが円形であれば良い。
【0052】
(その他)
図6は矢印X方向における振れ幅データを示し、図7は矢印Y方向における送りデータを示すが、この図に示すデータの数値に限定されるものではない。7セグメントLED9に限定されず、液晶表示部としても良い。へたうまスイッチ10のみにより幅設定値および送り設定値の双方を個別に設定できることにしても良い。実施形態1では、へたうまモードのモード数はモード0を含めて7であるが、これに限らず、モード数はモード0を含めて5としても良いし、9としても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。本明細書の記載から次の技術的思想も把握される。
[付記項1]縫製対象物が載せられる載置部と、前記載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、送り方向における前記縫製対象物の送り量と前記送り方向に直交する振れ方向において前記縫製対象物に対する前記針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、前記縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を前記制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられていることを特徴とするミシン。縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整することができる。
【符号の説明】
【0053】
1はミシン本体、2はベッド部、4アーム部、5は頭部、6は起動スイッチ、7設定スイッチ、7aは模様選択スイッチ、7bは送り量設定スイッチ、7cは振れ幅量設定スイッチ、70は表示部、9は7セグメントLED、10はへたうまスイッチ(へたうま選択要素)、11は針棒、12は針、13は押さえ、14は針板(載置部)、15は送り歯、59は主軸モータ、71は振れ幅調整用の幅モータ、100は制御装置、215は送りモータを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製対象物が載せられる載置部と、
前記載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、
送り方向における前記縫製対象物の送り量と前記送り方向に直交する振れ方向において前記縫製対象物に対する前記針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、
前記縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を前記制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられており、
前記へたうま選択要素は、前記針の振れ幅量および前記縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、前記振れ幅量および前記送り量のうちの少なくとも一方を前記設定値に対してばらつかせる指令を前記制御装置に出力することを特徴とするミシン。
【請求項2】
請求項1において、前記へたうま選択要素は、前記針の振れ幅量および前記縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値としてユーザが設定する設定スイッチと、前記へたうまモードをユーザが選択するへたうまスイッチとを有しており、
前記制御装置は、前記へたうまスイッチにより前記へたうまモードが選択されているとき、前記設定スイッチにより設定された設定値を含むと共に前記設定値付近の選択領域において、前記振れ幅量および前記送り量のうちの少なくとも一方をばらつかせることを特徴とするミシン。
【請求項3】
請求項1または2において、前記へたうまモードにおいて、前記制御装置は、前記設定スイッチにより設定された前記振れ幅量に関する幅設定値を含むと共に前記幅設定値付近の選択領域において、前記振れ幅量をばらつかせると共に、前記設定スイッチにより設定された前記幅設定値を選択する確率を有することを特徴とするミシン。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記へたうまモードにおいて、前記制御装置は、前記設定スイッチにより設定された前記送り量に関する送り設定値を含むと共に前記送り設定値付近の広い選択領域において前記送り量をばらつかせると共に、前記設定スイッチにより設定された前記送り設定値を選択する確率を有することを特徴とするミシン。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記へたうま選択要素は、前記送り量をばらつかせないで前記針の振れ幅量をばらつかせる振れ幅ばらつきモード、前記振れ幅量をばらつかせないで送り量をばらつかせる送り量ばらつきモード、針の振れ幅量および送り量の双方をばらつかせる振れ幅量・送り量ばらつきモードとを選択可能であることを特徴とするミシン。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、縫製途中においてへたうまモードが変更されたとき、前記制御装置は、前記縫い目の一セットにおいて、前記へたうま選択要素の操作に拘わらず、前記へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことを特徴とするミシン。
【請求項7】
請求項1〜5のうちの一項において、前記制御装置は、前記縫い目の一セットにおいて、前記へたうま選択要素が操作されると、前記へたうま選択要素により選択されたモードを変更することを特徴とするミシン。
【請求項1】
縫製対象物が載せられる載置部と、
前記載置部に対して昇降可能に設けられ針を装着可能な針棒と、
送り方向における前記縫製対象物の送り量と前記送り方向に直交する振れ方向において前記縫製対象物に対する前記針の相対的な振れ幅量とを制御可能な制御装置とを有するミシンであって、
前記縫製対象物の縫い目における下手および上手の程度を調整するへたうまモードを実行する指令を前記制御装置に出力するへたうま選択要素が設けられており、
前記へたうま選択要素は、前記針の振れ幅量および前記縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値として設定すると共に、前記振れ幅量および前記送り量のうちの少なくとも一方を前記設定値に対してばらつかせる指令を前記制御装置に出力することを特徴とするミシン。
【請求項2】
請求項1において、前記へたうま選択要素は、前記針の振れ幅量および前記縫製対象物の送り量をそれぞれ設定値としてユーザが設定する設定スイッチと、前記へたうまモードをユーザが選択するへたうまスイッチとを有しており、
前記制御装置は、前記へたうまスイッチにより前記へたうまモードが選択されているとき、前記設定スイッチにより設定された設定値を含むと共に前記設定値付近の選択領域において、前記振れ幅量および前記送り量のうちの少なくとも一方をばらつかせることを特徴とするミシン。
【請求項3】
請求項1または2において、前記へたうまモードにおいて、前記制御装置は、前記設定スイッチにより設定された前記振れ幅量に関する幅設定値を含むと共に前記幅設定値付近の選択領域において、前記振れ幅量をばらつかせると共に、前記設定スイッチにより設定された前記幅設定値を選択する確率を有することを特徴とするミシン。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記へたうまモードにおいて、前記制御装置は、前記設定スイッチにより設定された前記送り量に関する送り設定値を含むと共に前記送り設定値付近の広い選択領域において前記送り量をばらつかせると共に、前記設定スイッチにより設定された前記送り設定値を選択する確率を有することを特徴とするミシン。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記へたうま選択要素は、前記送り量をばらつかせないで前記針の振れ幅量をばらつかせる振れ幅ばらつきモード、前記振れ幅量をばらつかせないで送り量をばらつかせる送り量ばらつきモード、針の振れ幅量および送り量の双方をばらつかせる振れ幅量・送り量ばらつきモードとを選択可能であることを特徴とするミシン。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、縫製途中においてへたうまモードが変更されたとき、前記制御装置は、前記縫い目の一セットにおいて、前記へたうま選択要素の操作に拘わらず、前記へたうま選択要素により選択されたモードを変更しないことを特徴とするミシン。
【請求項7】
請求項1〜5のうちの一項において、前記制御装置は、前記縫い目の一セットにおいて、前記へたうま選択要素が操作されると、前記へたうま選択要素により選択されたモードを変更することを特徴とするミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図9】
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【図11】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−245092(P2011−245092A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122619(P2010−122619)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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