説明

ムスカリン性レセプターアンタゴニストとして有用なビフェニル化合物

本発明は、式Iの化合物を提供し、ここで、a、b、c、d、f、W、Q、Y、R、R、およびRは、本明細書中で定義されるとおりである。式Iの化合物は、ムスカリン性レセプターアンタゴニストである。本発明はまた、そのような化合物を含む薬学的組成物、そのような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、ならびに肺障害を処置するためにそのような化合物を使用する方法を提供する。本発明は、ムスカリン性レセプターアンタゴニストであるかまたは抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、長期間作用すると考えられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性または抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物に関する。本発明はまた、そのようなビフェニル化合物を含む薬学的組成物、そのようなビフェニル化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および肺障害を処置するためにそのようなビフェニル化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(当該分野の状況)
肺障害または呼吸器障害(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびぜんそく)は、世界中で何百万人もの人々がかかる病気であり、この障害は罹患率および死亡率の主要因である。
【0003】
ムスカリン性レセプターアンタゴニストは気管支保護効果があることが知られており、そのため、この化合物は呼吸器障害(例えば、COPDおよびぜんそく)を処置するのに有用である。ムスカリン性レセプターアンタゴニストは、このような障害を処置するのに使用される場合、代表的には吸入によって投与される。しかし、吸入によって投与されたとしても、顕著な量のムスカリン性レセプターアンタゴニストが体循環で吸収されてしまい、全身性の副作用(例えば、口の乾き、散瞳および心血管系副作用)を生じることがよくある。
【0004】
さらに、吸入されたムスカリン性レセプターアンタゴニストの多くは比較的作用持続時間が短く、1日に数回投与することが必要である。このような1日に複数回投与する方法は不便であるだけではなく、頻繁な投薬スケジュールが必要であるということに対する患者のコンプライアンスのなさに起因して、処置が不十分になるという顕著なリスクが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、新規ムスカリン性レセプターアンタゴニストが必要とされている。特に、吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少ない新規ムスカリン性レセプターアンタゴニストが必要とされている。さらに、長期間作用して1日に1回または1週間に1回の投与でよい吸入用ムスカリン性レセプターアンタゴニストが必要とされている。このような化合物は、副作用(例えば口の渇きおよび便秘)を減らすかまたは排除しつつ、肺障害(例えば、COPDおよびぜんそく)の処置に特に有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ムスカリン性レセプターアンタゴニストであるかまたは抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、長期間作用すると考えられる。
【0007】
本発明の一局面は、式Iの化合物:
【0008】
【化24】

あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体に関し、
ここで、
aは、0または1〜5の整数であり、
各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから独立して選択され;ここで、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1j、およびR1kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
bは0または1〜4の整数であり;
各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから独立して選択され;ここで、R2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2j、およびR2kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
Wは、OまたはNWを表し、ここで、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり;
cは、0または1〜5の整数であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルを表すか、あるいは2つのR基は、結合して(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
dおよびfは、独立して、0または1〜10の整数であり、ただし、2つの窒素原子間の最も短い鎖中の連続する原子の数は、7〜17の範囲であり;
Qは、以下:
【0009】
【化25】

から選択され、
ここで、RQaおよびRQbは、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから選択されるか、あるいは一緒になって、(2〜4C)アルキレンまたは(2〜3C)アルケニレンを形成し;
Yは、
【0010】
【化26】

から選択され、
ここで、
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンC(O)OR4a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンX、−(1〜4C)アルキレンC(O)X’、−C(O)(1〜4C)アルキレンX’、および−S(O)(1〜4C)アルキレンX’から選択され;ここで、Xは、−NR4b4cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基であり;X’は、−NR4d4eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基であり;R4aは、水素または(1〜4C)アルキルであり;R4b、R4c、R4dおよびR4eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、またはヒドロキシフェニルを表し、そしてここで、(1〜4C)アルキルは、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから独立して選択され;該ヘテロシクリルは、1もしくは2個の窒素原子を含み、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR4f4gおよび−C(O)NR4h4iから独立して選択され、ここで、R4f、R4g4hおよびR4iの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表し;そして該ヘテロアリールは、1もしくは2個の窒素原子を含み;
Zは、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択され;ここで、任意のZにおける該アルキレン基は、1もしくは2個の置換基で必要に応じて置換され、該置換基は、(1〜4C)アルキルおよび−NRZaZbから独立して選択され;ここで、RZaおよびRZbは、水素および(1〜4アルキル)から独立して選択され;
pは0、1または2であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR5a、−C(O)OR5b、−SR5c、−S(O)R5d、−S(O)5eまたは−NR5f5gを表し;R5a、R5b、R5c、R5d、R5e、R5fおよびR5gの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、ここで、各フェニル基は、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、ハロ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから独立して選択され;そして
は、水素、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR6a6b、およびフェニルから選択され、R6aおよびR6bの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRは、Rと一緒になって、1〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここで、該環は、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基によって置換され;
qは、0または1〜3の整数であり;
rは、0または1〜4の整数であり;
各Rは、独立して、フルオロまたは(1〜4C)アルキルを表し;
は、水素、−OH、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR8a8b、−C(O)NR8a8b、および−CHC(O)NR8a8bから選択され、ここで、R8aおよびR8bは、水素、(1〜4C)アルキル、ヒドロキシ、(1〜4C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンOR8c、(3〜6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1〜4C)アルキレンC(O)NR8d8eから独立して選択され、ここで該(3〜6C)シクロアルキルは、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜6C)アルキルまたは−NR8d8e基で置換され、そしてここで、R8c、R8dおよびR8eの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはR8aは、R8bと一緒になって、3〜7員の環を形成し、該環は、ヒドロキシで必要に応じて置換され;
は、水素、(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、および−(1〜4C)アルキレンヘテロアリールから選択され;そして
10は、(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、(3〜6C)シクロアルキル、−(1〜4C)アルキレン(3〜6C)シクロアルキル、および−(1〜4C)アルキレンC(O)NR10a10bから選択され、ここで、R10aおよびR10bは、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRおよびR10は、一緒になって、ピペラジノン、モルホリン、およびピペラジンから選択される環を形成し;そして該ピペラジンは、(R10cで置換され、ここで、wは、0または1〜3の整数であり、各R10cは、(1〜4C)アルキル、フェニルまたはベンジルから独立して選択され、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換されるか、あるいは2つのR10c基は、結合して、(1〜3C)アルキレンを形成し;
ここで、R、R1a〜1k、R、R2a〜2k、R、R、R5a〜5g、R、R6a〜e、およびR8a〜eにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。
【0011】
本発明の別の局面は、薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を含む薬学的組成物に関する。本発明のなお別の局面は、1種以上の他の治療因子と組み合わせて式Iの化合物を含む組成物に関する。したがって、一実施形態において、本発明は、(a)薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体;ならびに(b)ステロイド性抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド;βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4インヒビター;またはこれらの組み合わせ)から選択される治療有効量の因子を含む組成物であって;上記式Iの化合物および上記因子が一緒にまたは別々に処方される、組成物に関する。上記因子が別々に処方される場合、薬学的に受容可能なキャリアが含まれ得る。
【0012】
本発明の化合物は、ムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性を有する。したがって、式Iの化合物は、肺障害(例えば、慢性閉塞性肺疾患および喘息)を処置するために有用であると予期される。
【0013】
本発明のなお別の局面は、肺障害を処置するための方法に関し、この方法は、治療有効量の式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を患者に投与する工程を包含する。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、患者において気管支拡張を生じる方法に関し、この方法は、気管支拡張を生じる量の式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体をその患者に投与する工程を包含する。一実施形態において、上記化合物は、吸入によって投与される。
【0015】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置する方法に関し、この方法は、治療有効量の式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を患者に投与する工程を包含する。
【0016】
本発明の別の局面は、哺乳動物においてムスカリン性レセプターをアンタゴナイズする(antagonize)ための方法に関し、この方法は、その哺乳動物に治療有効量の式Iの化合物を投与する工程を包含する。
【0017】
本発明の化合物はムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性を有するので、そのような化合物はまた、研究ツールとしても有用である。したがって、本発明の別の局面は、式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を、生物学的システムもしくはサンプルを研究するため、またはムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性を有する新規化学化合物を発見するための研究ツールとして使用するための方法に関する。
【0018】
本発明はまた、式Iの化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物および立体異性体を調製するために有用なプロセスおよび新規中間体に関する。したがって、本発明の別の局面は、式Iの化合物を調製するプロセスに関し、このプロセスは、
(a)式IIの化合物を、式IIIの化合物と反応させる工程;あるいは
(b)式IVの化合物と、式Vの化合物とをカップリングさせる工程;あるいは
(c)式VIaの化合物を、式VIIaの化合物と反応させる工程、または式VIbの化合物を、式VIIbもしくはVIIcの化合物と反応させる工程;あるいは
(d)式IIの化合物を、式VIIIの化合物と還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IXの化合物を、式Xの化合物と還元剤の存在下で反応させる工程;
次いで、必要な場合、任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程
を包含し、ここで、式I〜Xの化合物は、本明細書で定義されるとおりである。
【0019】
一実施形態において、上記プロセスは、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程をさらに包含する。一実施形態において、本発明は、本発明に記載されるプロセス;および本発明に記載されるプロセスのいずれかによって調製される生成物に関する。
【0020】
本発明はまた、治療において使用するため、または医薬としての、式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体に関する。
【0021】
さらに、本発明は、医薬の製造のため(特に、肺障害の処置のため、または哺乳動物においてムスカリン性レセプターをアンタゴナイズするための医薬の製造のため)の、式Iの化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iのビフェニル化合物、およびその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物または立体異性体に関する。これらの化合物は、1つ以上のキラル中心を含み得、したがって、本発明は、そうでないことが示されない限り、ラセミ混合物;純粋な立体異性体(すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマー);立体異性体が富化された混合物などに関する。特定の立体異性体が本明細書に示されているかまたは命名されている場合、当業者は、他の異性体が存在することによって組成物の所望の有用性が失われないという条件で、そうでないことが示されない限り、少量のそのような他の立体異性体が本発明の組成物中に存在し得ることを理解する。
【0023】
式Iの化合物はまた、数種の塩基性基(例えば、アミノ基)を含み、したがって、式Iの化合物は、遊離塩として、または種々の塩形態で存在し得る。すべてのそのような塩形態は、本発明の範囲内である。さらに、式Iの化合物の溶媒和物またはその塩が、本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
さらに、適用可能である場合、式Iの化合物のすべてのシス−トランス異性体またはE/Z異性体(幾何学異性体)、互変異形態およびトポロジー形態が、他に指定されない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
式Iの化合物、およびそれらの合成え使用される化合物もまた、同位体標識化合物(すなわち、1以上の原子が、天然で主に見出される原子質量と異なる原子質量を有する原子で富化されたもの)を包含し得る。式Iの化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の化合物を命名するために本明細書で使用される命名法は、本明細書の実施例に示されている。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL,San Leandro,California)を用いて導かれている。例えば、WがOである式Iの化合物は、代表的に、ビフェニル−2−イルカルバミン酸と命名される。
【0027】
(代表的な実施形態)
以下の置換基および値は、本発明の種々の局面および実施形態の代表的な例を与えることを意図する。これらの代表的な値は、そのような局面および実施形態をさらに規定し、説明することを意図し、本発明の他の実施形態を排除することも、本発明の範囲を限定することも意図しない。この点において、具体的に示されない限り、特定の値または置換基が好ましいという表現は、本発明の他の値または置換基をいかなる様式でも排除することを意図しない。
【0028】
aについての値は、0、1、2、3、4または5であり;特に、0、1または2であり、そしてさらにより特に、0または1である。bについての値は、0、1、2、3または4であり;特に、0、1または2であり;そしてさらにより特に、0または1である。一実施形態において、aは0である。別の実施形態において、bはゼロである。なお別の実施形態において、aおよびbは両方とも0である。
【0029】
存在する場合、各Rは、それが結合するフェニル環の2位、3位、4位、5位または6位であり得る。各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから独立して選択され、この例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。Rについての特定の値は、フルオロまたはクロロである。
【0030】
存在する場合、各Rは、それが結合するフェニレン環の3位、4位、5位または6位(窒素原子に結合したフェニレン環の炭素原子が1位である場合)であり得る。各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから独立して選択され、その例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどが挙げられる。Rについての特定の値は、フルオロまたはクロロである。
【0031】
およびRにおいて使用される場合、各R1a〜1kおよびR2a〜2k基は、それぞれ、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、その例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはベンジルが挙げられる。一実施形態において、これらの基は、独立して、水素または(1〜3C)アルキルである。別の実施形態において、これらの基は、独立して、水素、メチルまたはエチルである。さらに、R、R1a〜1k、R、およびR2a〜2kにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1〜5個のフルオロ置換基で置換される。
【0032】
Wは、OまたはNWであり得る。一般に、WがOを表す化合物は、ムスカリン性レセプターに対して特に高い親和性を示すことが見出されている。したがって、本発明の特定の実施形態において、WはOを表す。
【0033】
WがNWである場合、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり、この例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。一実施形態において、Wは水素または(1〜3C)アルキルである。別の実施形態において、Wは水素、メチルまたはエチルであり、特に、水素またはメチルである。なお別の実施形態において、Wは水素である。
【0034】
cについての値は、0、1、2、3、4、または5であり;特に0、1または2であり;そしてさらに特に、0または1である。1つの特定の実施形態において、cは0である。
【0035】
一実施形態において、各Rは、ピペリジン環の3位、4位または5位(ピペリジン環の窒素原子が1位である場合)である。特定の実施形態において、Rは、ピペリジン環の4位である。別の実施形態において、Rは、ピペリジン環の1位(すなわち、ピペリジン環の窒素原子上)であり、したがって、四級アミン塩を形成する。各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルであるか、あるいは2つのR基が結合して、(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成する。一実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルn−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル)である。さらに、Rにおける各アルキル基は、必要に応じて、1〜5個のフルオロ置換基で置換される。一実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルであり、そして別の実施形態において、各Rは、独立してメチルまたはエチルである。
【0036】
なお別の実施形態において、2つのR基は結合して、(1〜3C)アルキレンまたは(2〜3C)アルケニレン基を形成する。例えば、2つのR基は、ピペリジン環の2位および6位で結合して、エチレン架橋(すなわち、ピペリジン環およびR基が8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン環を形成する)を形成し得る;あるいは2つのR基は、ピペリジン環の1位および4位で結合して、エチレン架橋(すなわち、ピペリジン環およびR基が1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン環を形成する)を形成し得る。この実施形態において、本明細書で規定されるように、他のR基もまた存在し得る。
【0037】
さらに別の実施形態において、2つのR基は結合して、オキシラン−2,3−ジイル基を形成する。例えば、2つのR基は、ピペリジン環の2位および6位で結合して、3−オキサトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン環を形成し得る。この実施形態において、本明細書で規定されるように、他のR基もまた存在し得る。
【0038】
dおよびfについての値は、独立して、0または1〜10の整数である。一実施形態において、dは、0または1である。別の実施形態において、fは0、1または3である。さらに、2つの窒素原子の間の最も短い鎖における連続する原子の数は、7〜17の範囲である(すなわち、ピペリジニル環における窒素原子と「Y」基における窒素原子との間)。一実施形態において、2つの窒素原子の間の最も短い鎖における連続する原子の数は、7〜9の範囲である。別の実施形態において、2つの窒素原子の間の最も短い鎖における連続する原子の数は、16〜17の範囲である。
【0039】
Qは、
【0040】
【化27】

から選択され、
ここで、RQaおよびRQbは、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから独立して選択されるか、あるいは一緒になって(2〜4C)アルキレンまたは(2〜3C)アルケニレンを形成する。
【0041】
一実施形態において、Qは、
【0042】
【化28】

であり、
ここで、RQaおよびRQbは、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから独立して選択される。一実施形態において、RQaおよびRQbは、両方とも水素である。別の実施形態において、RQaは水素であり、RQbはメチルである。別の実施形態において、RQaはメチルであり、RQbは水素である。上に示されるように、dおよびfについての値は、2つの窒素原子の間の最も短い鎖における連続する原子の数が7〜17の範囲にあるように選択される。したがって、鎖中に3つの連続する原子を提供するQのこの実施形態について、dおよびfの合計は、0〜10の範囲内である。
【0043】
別の特定の実施形態において、RQaおよびRQbは、一緒になって、
【0044】
【化29】

と描かれ得る(2〜4C)アルキレンを形成し、ここで、eについての値は、1または2または3である。一実施形態において、eは1である(すなわち、RQaおよびRQbが一緒になってエチレンを形成する)。
【0045】
別の実施形態において、RQaおよびRQbは一緒になって、(2〜3C)アルケニレンを形成する。RQaおよびRQbの特定の実施形態において、RQaおよびRQbは一緒になって、
【0046】
【化30】

と描かれ得るエテニレンを形成する。
【0047】
別の特定の実施形態において、Qは、
【0048】
【化31】

である。鎖中に4つの連続する原子を提供するQのこの実施形態について、dおよびfの合計は、0〜9の範囲である。
【0049】
Yは、
【0050】
【化32】

から選択される。1つの特定の実施形態において、Yは、
【0051】
【化33】

である。
【0052】
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンC(O)OR4a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンX、−(1〜4C)アルキレンC(O)X’、−C(O)(1〜4C)アルキレンX’、または−S(O)(1〜4C)アルキレンX’を表す。Xは、−NR4b4cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基である。X’は、−NR4d4eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基である。R4aは、水素または(1〜4C)アルキルである。R4b、R4c、R4dおよびR4eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキルまたはヒドロキシフェニルを表し、(1〜4C)アルキルは、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、その置換基は、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから独立して選択される。上記ヘテロシクリルは、1もしくは2個の窒素原子を含み、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基で置換され、その置換基は、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR4f4gおよび−C(O)NR4h4iから独立して選択され、ここで、R4f、R4g、R4hおよびR4iの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表す。上記ヘテロアリールは、1もしくは2個の窒素原子を含む。上記ヘテロシクリルおよびヘテロアリール基は、1もしくは2個の窒素原子に加えて、他のヘテロ原子を含み得る。例えば、上記ヘテロシクリルは、モルホリニル基であり得る。
【0053】
一実施形態において、Rは、水素、(1〜4C)アルキル、または(3〜4C)シクロアルキルを表し、この例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。別の実施形態において、Rは、水素または(1〜3C)アルキル、特に、メチルを表す。別の特定の実施形態において、Rは、メチルである。なお別の実施形態において、Rは水素である。
【0054】
一実施形態において、Rは−C(O)(1〜4C)アルキルである。特定の実施形態としては、Rが−C(O)CHおよび−C(O)CHCHである場合が挙げられる。
【0055】
別の実施形態において、Rは−(1〜4C)アルキレンC(O)OR4aである。特定の実施形態において、Rは、−(CHC(O)OHまたは−(CHC(O)OCHである。
【0056】
なお別の実施形態において、Rは、−C(O)ヘテロシクリルである。特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、1個の窒素原子を含み、非置換であるかまたはヒドロキシで置換される。特定の実施形態としては、上記ヘテロシクリルがピロリジニル、ヒドロキシピロリジニルまたはピペリジルである場合が挙げられる。
【0057】
別の実施形態において、Rは、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンXである。一実施形態において、Xは、−NR4b4c(例えば、−NH)である。別の実施形態において、Xは、ヘテロアリール(例えば、ピリジルまたはイミダゾリル)である。
【0058】
特定の実施形態において、Rは、−(1〜4C)アルキレンC(O)X’(ここで、X’は、−NR4d4eである)(例えば、−(CHC(O)NR4d)である。一実施形態において、R4dおよびR46eは、両方とも(1〜4C)アルキルであり、特に、メチルである。別の実施形態において、R4dは水素であり、そしてR4eは、(1〜4C)アルキル(例えば、メチルおよびエチル)、(3〜6C)シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)およびヒドロキシフェニルから選択される。一実施形態において、上記(1〜4C)アルキルは、非置換であるかまたはフリル、ヒドロキシもしくはメチルイミダゾリルで置換される。
【0059】
特定の実施形態において、Rは、−(1〜4C)アルキレンC(O)X’(ここで、X’は、ヘテロシクリルである)(例えば、−(CHC(O)ヘテロシクリル)である。一実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ピペリジルのように1個の窒素原子を含み、アミドで置換される。
【0060】
さらに別の実施形態において、Rは、−C(O)(1〜4C)アルキレンX’(ここで、X’は、−NR4d4eである)(例えば、−C(O)CHNR4d4e、−C(O)(CHNR4d4e、および−C(O)(CHNR6d6e)である。特定の実施形態において、R4dおよびR4eの各々は、独立して、水素、または(1〜4C)アルキルを表す。別の実施形態において、R4dは水素またはメチルであり、そしてR4eは、アミド、シアノ、フリル、もしくはヒドロキシで置換された(1〜4C)アルキルである。
【0061】
さらに別の実施形態において、Rは、−C(O)(1〜4C)アルキレンX’(ここで、X’は、ヘテロシクリルである)(例えば、−C(O)(CH)ヘテロシクリル、−C(O)(CHヘテロシクリルおよび−C(O)(CHヘテロシクリル)である。一実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ピロリジニルまたはピペリジルのように1個の窒素原子を含む。別の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ピペラジニル、テトラヒドロピリミジニルおよび1,4ジアゼパニルのように2個の窒素原子を含む。特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ピロリジニルであり、非置換であるかまたはアミドもしくは(1〜4C)アルコキシ(例えば、メトキシ)で置換される。特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ピペリジルであり、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、その置換基は、ヒドロキシル、アミド、および(1〜4C)アルコキシ(例えば、メトキシ)から独立して選択される。特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、オキソで置換されたテトラヒドロピリミジニルである。別の特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、−S(O)(1〜4C)アルキル(例えば、−S(O)CHCH)で置換されたピペラジニルである。なお別の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、オキソで置換された1,4ジアゼパニルである。
【0062】
なお別の実施形態において、Rは、−S(O)(1〜4C)アルキレンX’(ここで、X’は、−NR4d4eである)(例えば、−S(O)(CHNR4d4e)である。特定の実施形態において、R4dおよびR4eの各々は、独立して、(1〜4C)アルキルであり、ここで(1〜4C)アルキルは、ヒドロキシルで置換される(例えば、−N(CHCHOH))。
【0063】
なお別の実施形態において、Rは、−S(O)(1〜4C)アルキレンX’(ここで、X’は、ヘテロシクリルである)(例えば、−S(O)(CHヘテロシクリル)である。特定の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、ヒドロキシル、−(1〜4C)アルキレンOH(例えば、−(CHOH)、または−C(O)NR4h4i(例えば、−(CO)N(CHCH)で置換されたピペリジルである。別の実施形態において、上記ヘテロシクリルは、オキソで置換されたピペラジニルである。
【0064】
Zは、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択される。任意のZにおけるアルキレン基は、1もしくは2個の置換基で必要に応じて置換され、その置換基は、(1〜4C)アルキルおよび−NRZaZbから独立して選択され、ここで、RZaおよびRZbは、水素および(1〜4アルキル)から独立して選択される。一実施形態において、Zは、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−または−SO−から選択される。Zについての特定の値の例は、−CH−、−CHCH−、−CHC(O)−、−C(O)CH(NH)CH−および−SO−である。特定の実施形態において、Zは、−CH−または−CHCH−である。
【0065】
pについての値は、0、1または2である。pについての特定の値は、0または1である。一実施形態において、pは0である。別の実施形態において、pは1である。
【0066】
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR5a、−C(O)OR5b、−SR5c、−S(O)R5d、−S(O)5eまたは−NR5f5gである。Rにおいて使用される場合、各R5a、R5b、R5c、R5d、R5e、R5fおよびR5gは、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、ここで、各フェニル基は、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、その置換基は、ハロ、(1〜4C)アルキル、および(1〜4C)アルコキシから独立して選択される。さらに、RおよびR5a−5gにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。一実施形態において、各Rは、独立して、ハロ、(1〜3C)アルキル、(1〜3C)アルコキシ、または−OR5aを表し、ここで、上記アルキルおよびアルコキシ基は、1〜3個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。別の実施形態において、各Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシから独立して選択される。特定の実施形態において、Rは、−OR5aであり、ここで、R5aは、メチルまたはシクロペンチルである。
【0067】
は、水素、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR6a6b、およびフェニルから選択されるか;あるいはRは、Rと一緒になって、1〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここでその環は、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基で置換される。R6aおよびR6bの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルである。さらに、RおよびR6a〜8bにおける各アルキル基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。一実施形態において、Rは、水素である。一実施形態において、Rは、(1〜4C)アルキル(例えば、メチルまたは2もしくは3個のフルオロ置換基で置換されたメチル)である。別の実施形態において、Rは、(1〜4C)アルキレンNR6a6b(ここで、R6aおよびR6bの各々は、独立して、(1〜4C)アルキルである)(例えば、−(CHN(CH)である。特定の実施形態において、Rはフェニルである。一実施形態において、Rは、Rと一緒になって、1〜2個の酸素原子を有する環を形成し、その環は、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基によって置換される。例示的なR/R鎖としては、−O−CH−O−、−O−C(CH−(CH−、−O−(CH−、および−O(CH−O−が挙げられる。
【0068】
式Iに示されるように、−OR基は、オルト位、メタ位またはパラ位に位置し得る。一実施形態において、−OR基は、メタ位またはパラ位に位置し;特定の実施形態において、−OR基は、パラ位に位置する。
【0069】
別の特定の実施形態において、Yは、
【0070】
【化34】

である。
【0071】
qについての値は、0、1、2、または3である。qについての特定の値は、1または2である、一実施形態において、qは2である。
【0072】
rについての値は、0、1、2、3、または4である。rについての特定の値は、0、1または2である。一実施形態において、rは0である。
【0073】
各Rは、独立して、フルオロまたは(1〜4C)アルキルを表し、この例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。さらに、Rにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。一実施形態において、各Rは、独立して、フルオロまたは(1〜3C)アルキルを表し、別の実施形態において、各Rは、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルから独立して選択される。
【0074】
は、水素、−OH、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR8a8b、−C(O)NR8a8b、および−CHC(O)NR8a8bから選択される。R8aおよびR8bは、水素、(1〜4C)アルキル、ヒドロキシ、(1〜4C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンOR8c、(3〜6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1〜4C)アルキレンC(O)NR8d8eから独立して選択される。上記(3〜6C)シクロアルキルは、非置換であるか、または1もしくは2個の(1〜6C)アルキルまたは−NR8d8e基で置換される。R8c、R8dおよびR8eの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルである。さらに、R8a〜eにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。別の実施形態において、R8aは、R8bと一緒になって、ヒドロキシで必要に応じて置換される3〜7員の環を形成する。一実施形態において、Rは水素である。一実施形態において、Rは、−OHである。一実施形態において、Rは、−(1〜4C)アルキレンOH(例えば、−CHOHおよび−(CHOH)である。一実施形態において、Rは、−NR8a8b(例えば、−NH、−NHCH、−N(CH、および−N(CHCH)である。一実施形態において、Rは、−C(O)NR8a8b(例えば、−C(O)NH、−C(O)N(CH、−C(O)N(CHCH、および−C(O)NH(CHOH)である。
【0075】
式Iに示されるように、Rは、環の任意の炭素原子に位置し得る。例えば、qが2である場合、Rは、オルト位、メタ位またはパラ位に位置し得る。一実施形態において、Rは、メタ位またはパラ位に位置し;特定の実施形態において、Rは、パラ位に位置する。
【0076】
なお別の特定の実施形態において、Yは−NR10である。Rは、水素、(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、および−(1〜4C)アルキレンヘテロアリールから選択される。R10は、(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−(1〜4C)アルキレンヘテロアリール、(3〜6C)シクロアルキル、−(1〜4C)アルキレン(3〜6C)シクロアルキル、および−(1〜4C)アルキレンC(O)NR10a10bから選択され、ここで、R10aおよびR10bは、独立して、水素または(1〜4C)アルキルである。一実施形態において、Rは、水素、−CH、−CHCHまたは−(CHOHである。別の実施形態において、R10は、(1〜4C)アルキル(例えば、−CHまたは−CHCH(CH)である。別の実施形態において、R10は、−(1〜4C)アルキレンOH(例えば、−(CHOH)である。なお別の実施形態において、R10は、(3〜6C)シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)または−(1〜4C)アルキレン(3〜6C)シクロアルキル(例えば、−CH−シクロプロピル)である。別の実施形態において、R10は、−(1〜4C)アルキレンC(O)NR10a10b(例えば、−CHC(O)NH)である。別の実施形態において、Rは水素であり、そしてR10は、−(1〜4C)アルキレンヘテロアリール基(例えば、ピリジン−4−イルメチル、チオフェン−2−イルメチル、フラン−2−イルメチルおよび1H−イミダゾル−2−イルメチル)である。なお別の実施形態において、RおよびR10は両方、−(1〜4C)アルキレンヘテロアリール基(例えば、1H−イミダゾル−2−イルメチル)である。
【0077】
あるいは、RおよびR10は、一緒になって、ピペラジノン、モルホリン、およびピペラジンから選択される環を形成し得る。ピペラジン環が形成される場合、そのピペラジン環は、(R10cで置換され得、ここで、wは、0または1〜3の整数である。各R10cは、(1〜4C)アルキル、フェニルまたはベンジルから独立して選択され、これらのすべてが、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換され得る。さらに、2つのR10c基は、結合して、(1〜3C)アルキレンを形成し得る。一実施形態において、RおよびR10は、一緒になって、ピペラジン−2−オンを形成する。別の実施形態において、RおよびR10は、一緒になって、1つの炭素架橋を有するピペラジン(2,5−ジアザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環)を形成する。なお別の実施形態において、RおよびR10は、一緒になって、1つの炭素架橋を有するピペラジンを形成し、そのピペラジン環は、(1〜4C)アルキル(例えば、メチル)、フェニルもしくはフルオロで置換されたフェニル、またはベンジルでさらに置換される。
【0078】
(代表的な亜属分類)
以下の亜属式および分類は、本発明の種々の局面および実施形態の代表的な例を提供することを意図し、そのようなものとして、これらは、そうでないことが示されない限り、他の実施形態を排除することも、本発明の範囲を制限することも意図しない。
【0079】
目的の化合物の特定の群は、a、b、およびcが0である式Iの化合物である。目的の化合物の別の群において、WはOを表す。目的の化合物の別の群において、dは、0または1である。目的の化合物の別の群は、fが0、1または3である式Iの化合物である。上記の組み合わせもまた、目的のものである。例えば、目的の化合物の1つの群において、a、b、およびcは0であり;WはOを表し;dは0または1であり;そしてfは0、1または3である。
【0080】
目的の化合物の別の群は、Qが、
【0081】
【化35】

であり、そしてRQaおよびRQbが水素およびメチルから独立して選択され、そして一実施形態において、dが0であり、fが0、1または3である式Iの化合物である。別の実施形態において、RQaおよびRQbは、一緒になって、エチレンを形成し、そして一実施形態において、dおよびeは両方とも1である。
【0082】
目的の化合物の別の群において、Qは、
【0083】
【化36】

であり、そして一実施形態において、dおよびeは両方とも1である。
【0084】
目的の化合物の別の群は、Yが、
【0085】
【化37】

である式Iの化合物であり、ここで、Rは水素であり;Zは(1〜3C)アルキレンおよび−SO−から選択され;pは0であるかまたはpは1でありかつRが−OR5aであり、ここで、R5aは、(1〜4C)アルキルおよび(3〜6C)シクロアルキルから選択され;そしてRは水素、(1〜4C)アルキル、および(1〜4C)アルキレンNR6a6b(ここで、R6aおよびR6bの各々は、(1〜4C)アルキルである)から選択されるか、またはRはRと一緒になって、2個の酸素原子を有する環を形成する。
【0086】
目的の化合物の別の群において、Yは、
【0087】
【化38】

であり、ここで、qは1または2であり;rは0であり;そしてRは、水素、−OH、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR8a8b、および−C(O)NR8a8bから選択され、ここで、R8aおよびR8bは、水素、および(1〜4C)アルキルから独立して選択される。
【0088】
目的の化合物の別の群は、Yが−NR10である式Iの化合物であり、ここで、Rは、水素、(1〜4C)アルキル、および−(1〜4C)アルキレンOHから選択され;そしてR10は、(1〜4C)アルキル、および−(1〜4C)アルキレンOHから選択されるか;あるいはRおよびR10は一緒になって、ピペラジノン環を形成する。
【0089】
上に示されるように、上記の組み合わせもまた、目的のものである。例えば、目的の化合物の1つの群において、n a、b、およびcは0であり;WはOを表し;dおよびfは1であり、Qは、
【0090】
【化39】

であり、
ここで、RQaおよびRQbは、一緒になって、エチレンを形成し;そしてYは、
【0091】
【化40】

である。1つの特定の実施形態において、Rは水素であり、Zは(1〜3C)アルキレンである。別の実施形態において、pは0であるか、またはpが1でありかつRが−OR5aであり、ここでR5aが(1〜4C)アルキルおよび(3〜6C)シクロアルキルから選択される。なお別の実施形態において、Rは、水素、(1〜4C)アルキル、および(1〜4C)アルキレンNR6a6bから選択され、ここで、R6aおよびR6bの各々は、(1〜4C)アルキルである。
【0092】
目的の化合物の別の群は、式Iaの化合物:
【0093】
【化41】

であり、ここでd、f、Q、およびYは、上で定義されるとおりである。
【0094】
さらに、目的のものである特定の式Iの化合物としては、
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−カルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ジエチルカルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ジエチルアミノピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−[3−(3−{3−[2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((S)−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((S)−2−ジメチルカルバモイルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((R)−2−カルバモイルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[4−(2−ヒドロキシ−エチル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((R)−3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[2−オキソ−3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)イミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−メチルアミノプロピル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロピル]−2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル}−プロピル)−ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[エチル−(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[(1R,4R)−5−(3−フルオロフェニル)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル]−プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((1S,4S)−5−メチル−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((1R,4R)−5−ベンジル−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(4−{3−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]プロピル}−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−カルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソ−ピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(3−ジエチルカルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[2,5−ジオキソ−4−(3−ピロリジン−1−イル−プロピル)ピペラジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[4−(3−メチルアミノプロピル)−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{2,5−ジオキソ−4−[3−(3−オキソピペラジン−1−イル)プロピル]ピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[(ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イルメチル)アミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[1−メチル−3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(2−ピペリジン−1−イルエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[1−メチル−3−(2−ピペリジン−1−イルエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(5−イソブチルアミノペンチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−メチル−3−(2−メチルアミノエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物、が挙げられる。
【0095】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記載する場合、以下の用語は他に言及されない限り以下に示す意味を有する。
【0096】
用語「アルキル」は、一価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキル基は代表的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基としては、一例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0097】
用語「アルキレン」は、二価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキレン基は代表的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキレン基としては、一例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0098】
用語「アルコキシ」は、式(アルキル)−O−の一価の基を意味し、アルキルは上に定義されるとおりである。代表的なアルコキシ基としては、一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0099】
用語「アルケニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、代表的には1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合を有する一価の飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルケニル基は代表的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、一例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブタ−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。用語「アルケニレン」は、二価のアルケニル基を意味する。
【0100】
用語「アルキニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、代表的には1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価の不飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルキニル基は代表的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基としては、一例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。用語「アルキニレン」は、二価のアルキニル基を意味する。
【0101】
用語「アリール」は、単環(すなわちフェニル)または縮合環(すなわちナフタレン)を有する一価の芳香族炭化水素を意味する。他に定義されない限り、このアリール基は代表的には6〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアリール基としては、一例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。用語「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。
【0102】
用語「アザシクロアルキル」は、1個の窒素原子を有する一価のヘテロ環式環、すなわち、1個の炭素原子が窒素原子に変わったシクロアルキルを意味する。他に定義されないかぎり、このアザシクロアルキル基は代表的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なアザシクロアルキルの例は、ピロリジニルおよびピペリジニル基である。用語「アザシクロアルキレン」は、二価のアザシクロアルキル基を意味する。アザシクロアルキレン基の代表例は、ピロリジニレンおよびピペリジニレン基である。
【0103】
用語「シクロアルキル」は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このシクロアルキル基は代表的には3〜10個の炭素原子を含有する。代表的なシクロアルキル基としては、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。用語「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキル基を意味する。
【0104】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0105】
用語「ヘテロアリール」は、単環または2個の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(代表的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の芳香族基を意味する。他に定義されないかぎり、この基は代表的には5〜10個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロアリール基としては、一例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロアリーレン」は、二価のヘテロアリール基を意味する。
【0106】
用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」は、単環または複数の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(代表的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の飽和または不飽和(芳香族ではない)基を意味する。他に定義されない限り、この基は代表的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロ環基としては、一例として、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロシクレン」は、二価のヘテロシクリルまたはヘテロ環基を意味する。
【0107】
本明細書で使用される特定の用語に特定の数の炭素原子を入れようとする場合、炭素原子の数は用語の前に括弧書きで示される。例えば、用語「(1〜4C)アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0108】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、患者(例えば哺乳動物)に投与するのに受容可能な塩(例えば、所与の投薬法で哺乳動物への安全性が受容可能なものである塩)を意味する。この塩は、薬学的に受容可能な無機塩基または有機塩基と、薬学的に受容可能な無機酸または有機酸とから誘導することができる。薬学的に受容可能な無機塩基から誘導される塩としては、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(manganic)塩、マンガン(manganous)塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。特に好ましいのはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。薬学的に受容可能な有機塩基から誘導される塩としては、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンの塩が挙げられ、アミンとしては、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなど、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。薬学的に受容可能な酸から誘導される塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、エジシル酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩、グルタミン酸塩、馬尿酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシナホン酸塩(xinafoic)などが挙げられる。特に好ましいのは、クエン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩および酒石酸塩である。
【0109】
用語「それらの塩」は、酸の水素がカチオン(例えば金属カチオンまたは有機カチオンなど)と交換されて形成される化合物を意味する。好ましくは、この塩は薬学的に受容可能な塩である。しかし、いくつかの塩(例えば、中間体化合物の塩)は患者に投与することを意図していないので、薬学的に受容可能な塩である必要はない。
【0110】
用語「溶媒和物」は、1つ以上の溶質(すなわち、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩)と1つ以上の溶媒分子によって形成される複合体または凝集物を意味する。この溶媒和物は、代表的には、溶質および溶媒のモル比が実質的に固定した結晶性固体である。代表的な溶媒としては、一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0111】
用語「またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体」が、塩、溶媒和物および立体異性体のあらゆる組み合わせ(例えば、式Iの化合物の立体異性体の薬学的に受容可能な塩の溶媒和物)を含むことが意図されると理解される。
【0112】
用語「治療有効量」は、処置が必要な患者に投与したときに患者を処置するのに十分な量を意味する。例えば、ムスカリン性レセプターをアンタゴナイズするための治療有効量は、所望な拮抗効果を達成する量である。同様に、肺障害を処置するための治療有効量は、所望な治療結果を達成する量であり、この量は、以下に記載されるように、疾患を予防し、改善し、抑制するかまたは緩和させる量であってもよい。
【0113】
用語「処置する」または「処置」は、本明細書で使用される場合、患者(例えば哺乳動物、特にヒト)の疾患または医学状態(例えばCOPD)を処置することまたは処置を意味し、以下の内容を含む:
(a)疾患または医学状態が発症することを予防すること、すなわち、疾患または医学状態が発症するかまたは処置前の状態であるリスクがあると考えられる患者の予防的処置;
(b)疾患または医学状態を改善させること、すなわち、疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態を除去すせるか、または退縮させること;
(c)疾患または医学状態を抑制すること、すなわち、この疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の進行を遅らせるかまたは進行をとめること;または
(d)疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の症状を緩和すること。
【0114】
用語「単位投薬形態」は、患者に投与するのに適した物理的に別個の単位を指す。すなわち、それぞれの単位は、所望の治療効果を得るように計算された所定量の本発明の化合物を単独でまたは1つ以上のさらなる単位と組み合わせて含有する。例えば、この単位投薬形態は、カプセル、錠剤、丸薬などであってもよい。
【0115】
用語「薬学的に受容可能な」は、生物学的またはその他の要因で望ましくない材料ではない物質を指す。例えば、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、組成物に組み込み可能で、所望ではない生物学的影響を与えたり、組成物の他の成分に悪影響を与えないで患者に投与される物質を指す。この薬学的に受容可能な物質は、代表的には、必要な毒性試験標準および製造試験標準を満たし、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug administration)によって適切な不活性成分であると同定されている物質を含む。
【0116】
用語「脱離基」は、置換反応(例えば求核置換反応)で別の官能基または原子と交換可能な官能基または原子を意味する。一例として、代表的な脱離基としては、クロロ、ブロモおよびヨード基;スルホン酸エステル基、例えば、メシレート、トシレート、ブロシレート、ノシレートなど;およびアシルオキシ基、例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシなどが挙げられる。
【0117】
用語「それらの保護された誘導体」は、化合物の1つ以上の官能基を保護基またはブロッキング基で保護して望ましくない反応を防ぐようにした特定の化合物の誘導体を意味する。保護可能な官能基としては、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸の代表的な保護基としては、エステル(例えばp−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジド;アミノ基の保護基としては、カルバメート(例えばtert−ブトキシカルボニル)およびアミド;ヒドロキシル基の保護基としては、エーテルおよびエステル;チオール基の保護基としては、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニル基の保護基としては、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。この保護基は当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999およびそれらで引用される文献に記載されている。
【0118】
用語「アミノ保護基」は、アミノ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、限定されないが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0119】
用語「カルボキシ保護基」は、カルボキシ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基としては、限定されないが、エステル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。
【0120】
用語「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定されないが、シリル基、例えば、トリ(1〜6C)アルキルシリル基、例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)など;エステル(アシル基)、例えば、(1〜6C)アルカノイル基、例えば、ホルミル、アセチルなど;アリールメチル基、例えば、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。さらに、2個のヒドロキシル基は、例えば、ケトン(例えばアセトン)と反応させることによってアルキリデン基(例えばプロパ−2−イリデン)として保護して形成することもできる。
【0121】
(一般的な合成手順)
本発明のビフェニル化合物は、以下の一般的な方法、実施例に記載の手順を用いるか、または当業者が容易に入手可能な他の方法、試薬および出発物質を用いて容易に入手可能な出発物質から調製することができる。本発明の特定の実施形態が本明細書に示されるかまたは記載されるが、本発明のあらゆる実施形態または局面で容易に調製可能であることを当業者は認識する。代表的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、他に述べられていない限り、他のプロセス条件も使用可能であることが理解される。最適な反応条件は使用される特定の反応物または溶媒に依存して変わることがあるが、この条件は通常の最適化手順によって当業者は容易に決定することができる。
【0122】
さらに、当業者には明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を受けることを防ぐのに従来の保護基が必要であるか、または望ましいことがある。特定の官能基の適した保護基およびこのような官能基を保護し、脱保護するのに適した条件の選択は、当該技術分野で周知である。本明細書に記載の手順に説明されているもの以外の保護基も望ましい場合には使用してもよい。例えば、多くの保護基およびこの導入および除去は、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999およびそれらで引用される文献に記載されている。
【0123】
例示の目的で、式Iの化合物は、以下の工程
(a)式IIの化合物:
【0124】
【化42】

またはその塩を、式IIIの化合物:
【0125】
【化43】

と反応させる工程であって、ここで、Lは脱離基を表す、工程;あるいは
(b)Qが
【0126】
【化44】

であり、かつRQaおよびRQbが水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから独立して選択される化合物について、式IVの化合物:
【0127】
【化45】

と、式Vの化合物:
【0128】
【化46】

とをカップリングさせる工程;あるいは
(c)式VIaの化合物:
【0129】
【化47】

を、式VIIaの化合物:
【0130】
【化48】

と反応させる工程、または式VIbの化合物:
【0131】
【化49】

を、式VIIbの化合物:
【0132】
【化50】

もしくは式VIIcの化合物:
【0133】
【化51】

と反応させる工程であって、ここでLは脱離基を表し;そしてPは水素原子またはヒドロキシル保護基を表す、工程;あるいは
(d)式IIの化合物を、式VIIIの化合物:
【0134】
【化52】

と還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IXの化合物:
【0135】
【化53】

を、式Xの化合物:
【0136】
【化54】

または式VIIbもしくは式VIIcの化合物と、還元剤の存在下で反応させる工程;次いで、
(f)存在し得る任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程;ならびに必要に応じて、その薬学的に受容可能な塩を形成する工程
を包含するプロセスによって調製され得る。
【0137】
一般的に、1つの出発物質の塩(例えば酸付加塩)が上述のプロセスで使用される場合、この塩は代表的には、反応プロセス前または反応プロセス中に中和される。この中和反応は、代表的には、酸付加塩1モル当量に対して1モル当量の塩基とこの酸付加塩とを接触させることによって行われる。
【0138】
プロセス(a)の式IIの化合物と式IIIの化合物との間の反応で、Lであらわされる脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えばメシレートまたはトシレート)であり得る。この反応は、塩基(例えば、三級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミン)存在下で首尾よく行われる。簡便な溶媒としては、ニトリル、例えば、アセトニトリルが挙げられる。この反応は、0〜100℃の温度範囲で首尾よく行われる。
【0139】
式IIの化合物は、一般的に当該分野で公知であるか、または式XIの化合物:
【0140】
【化55】

を脱保護することによって調製され得、ここで、Pは、アミノ保護基(例えば、ベンジル基)を表す。ベンジル基は、水素またはギ酸アンモニウムと、第VIII族の金属触媒(例えば、パラジウム)とを用いる還元によって、首尾よく除去される。WがNWを表す場合、水素化反応は、Pearlman触媒(Pd(OH))を用いて首尾よく行われる。
【0141】
式XIの化合物は、式XIIの化合物:
【0142】
【化56】

のイソシアネート化合物を、
式XIIIの化合物:
【0143】
【化57】

と反応させることによって調製され得る。
【0144】
式IIIの化合物は、式中のLがヒドロキシル基を表す対応する化合物から出発して、例えば、ハロゲン化剤(例えば、塩化チオニル)反応によって、調製されて、式中のLがハロ(例えば、クロロ)を表す式IIIの化合物が得られ得る。Lがヒドロキシル基を表す化合物は、例えば、式Vの化合物を適切なアミノ置換アルコール(例えば、2−アミノエタノールまたは3−アミノプロパン−1−オール)と反応させることによって調製され得る。
【0145】
プロセス(b)において、適切なカップリング剤としては、カルボニルジイミダゾールが挙げられる。その反応は、代表的に、溶媒(例えば、トリフルオロ酢酸およびジクロロメタン)の存在下で行われる。式IVの化合物は、式IIの化合物を式XIVの化合物:
【0146】
【化58】

と反応させることによって調製され得、ここで、Pは、アミノ保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル)を表す。Lは、脱離基(例えば、ハロ(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード))である。
【0147】
プロセス(c)に関して、Lによって表される脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモもしくはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えば、メシレートもしくはトシレート)であり得る。この反応は、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミンのような三級アミン)の存在下で首尾よく行われる。都合のよい溶媒としては、ニトリル(例えば、アセトニトリル)が挙げられる。反応は、0℃〜100℃の範囲の温度で首尾よく行われる。式VIaの化合物は、式IIの化合物を式XVaの化合物:
【0148】
【化59】

(式XVaにおいて、Lは脱離基を表し、Pはアミノ保護基である)と反応させること、その後、必要な場合、Pを除去することによって調製され得る。式VIbの化合物は、式IIの化合物を式XVbの化合物:
【0149】
【化60】

(式XVbにおいて、Lは脱離基を表す)と反応させることによって調製され得る。式VIIaおよび式VIIbの化合物は、一般的に公知であるか、または周知の合成方法を用いて容易に利用可能な出発物質から調製され得る。
【0150】
プロセス(d)において、上記還元剤は、例えば、第VIII族の金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下での水素、または金属水素化物還元剤(例えば、ホウ化水素(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる))であり得る。都合のよい溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール)が挙げられる。反応は、0℃〜100℃の範囲の温度で首尾よく行われる。式VIIIの化合物は、式中のLがヒドロキシ基を表す式IIIに対応する化合物を酸化することによって調製され得る。そのような酸化反応は、例えば、三級アミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、ジメチルスルホキシド中の二酸化硫黄ピリジン錯体を用いて行われ得る。
【0151】
プロセス(e)において、上記還元剤は、第VIII族の金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下での水素、または金属水素化物還元剤(ホウ化水素(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)が挙げられる)であり、必要に応じて、チタンテトラアルコキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド)と組み合わせて使用される。都合のよい溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール)が挙げられる。反応は、0℃〜100℃の範囲の温度で首尾よく行われる。式IXの化合物は、式IIの化合物を式XVIの化合物:
【0152】
【化61】

の化合物と反応させること、その後、酸化剤(例えば、三酸化硫黄ピリジン)との反応によって調製され得る。式Xの化合物は、一般的に公知であるか、または周知の合成方法を用いて容易に利用可能な出発物質から調製され得る。
【0153】
当業者に明らかなように、本明細書中の工程(a)〜(e)のいずれかによって調製される式Iの化合物は、当該分野で周知の方法および試薬を用いて、式Iの他の化合物を形成するために、さらに誘導体化され得る。例示の目的で、式Iの化合物は、式中のRが例えばブロモ基を表す式Iの対応する化合物を得るために、臭素と反応され得る。したがって、RQa、RQbまたはRが水素原子を表す式Iの化合物は、式中のRQa、RQbまたはRが(1〜4C)アルキル基を表す式Iの対応する化合物を得るために、アルキル化され得る。
【0154】
本発明の代表的な化合物またはそれらの中間体を調製するための特定の反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、以下に示される実施例に記載される。
【0155】
(薬学的組成物および処方物)
本発明のビフェニル化合物は、代表的には、薬学的組成物または処方物の形態で患者に投与される。この薬学的組成物は、任意の受容可能な投与経路で患者に投与されてもよい。投与経路としては、限定されないが、吸入、経口、経鼻、局所(経皮を含む)および非経口の投与形態が挙げられる。
【0156】
特定の投与形態に適した本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物など)が、本明細書で議論される薬学的組成物で使用可能であることが理解される。
【0157】
従って、本発明の一実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアまたは腑形剤と治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体とを含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、望ましい場合には他の治療因子および/または処方化剤を含有してもよい。
【0158】
本発明の薬学的組成物は、代表的には、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を活性因子として含有する。代表的には、この薬学的組成物は、約0.01〜95重量%の活性因子を含有し、例えば、約0.01〜約30重量%、例えば、約0.01〜10重量%の活性因子を含有する。
【0159】
任意の従来のキャリアまたは腑形剤を本発明の薬学的組成物に使用してもよい。特定のキャリアまたは腑形剤の選択、またはキャリアまたは腑形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処理するために使用される投与形態または医学状態または疾患状態の種類に依存する。この観点で、特定の投与形態のための適切な薬学的組成物の調製は、薬学的分野の技術常識の範囲内にある。さらに、この組成物の成分は、例えば、Sigma(P.O.Box 14508,St. Louis,MO 63178)から市販されている。さらに説明すると、従来の処方化技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland (2000);およびH.C.Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland (1999)に記載されている。
【0160】
薬学的に受容可能なキャリアとして役立つ物質の代表例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;腑形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性食塩水;Ringer溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;圧縮噴射ガス、例えば、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン;および薬学的組成物に使用される他の毒性のない適合性基質。
【0161】
本発明の薬学的組成物は、代表的には、本発明の化合物と薬学的に受容可能なキャリアおよび1つ以上の任意成分とを十分に混合またはブレンドすることによって調製される。必要な場合または望ましい場合には、得られた均一にブレンドされた混合物を従来の手順および装置を用いて、錠剤、カプセル、丸薬に成形するか、または小型缶、カートリッジ、ディスペンサーなどに入れることができる。
【0162】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、吸入による投与に適している。吸入による投与に適した薬学的組成物は、代表的にはエアロゾルまたは粉末の形態である。この組成物は、一般的に、周知の送達デバイス、例えば、噴霧吸入器、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)または同様の送達デバイスを用いて投与される。
【0163】
本発明の特定の実施形態では、活性因子を含む薬学的組成物は、噴霧吸入器を用いて吸入によって投与される。この噴霧デバイスは、代表的には、高速の空気流を作り出し、活性因子を含む薬学的組成物を霧として噴霧し、患者の呼吸器に届ける。従って、噴霧吸入機器で用いるために処方化される場合、活性因子は、代表的には、適切なキャリアに溶解して溶液にする。または、活性因子を微粉化し、適切なキャリアを混合して呼吸可能な大きさの微粉末の懸濁物にする。この微粉化とは、約90%以上の粒子直径が約10μm未満の状態であると定義される。適切な噴霧デバイスは、例えば、PARI GmbH(Starnberg,German)から市販されている。他の噴霧デバイスとしては、Respimat(Boehringer Ingelheim)、および例えば、Lloydらに対する米国特許第6,123,068号およびWO 97/12687(Eicher et al.)に記載の物があげられる。これらの文献は、その内容全体が本明細書に参考として援用される。
【0164】
噴霧吸入器に使用するための代表的な薬学的組成物は等張性水溶液を含み、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.05μg/mL〜約10mg/mL含む。
【0165】
本発明の別の特定の実施形態では、活性因子を含む薬学的組成物はDPIを用いた吸入によって投与される。このDPIは、代表的には、活性因子を流動性のよい粉末として投与し、吸気中に患者が作った空気流で分散する。流動性のよい粉末を作るために、活性因子は、代表的には、適切な腑形剤(例えばラクトースまたはデンプン)とともに処方化される。微粉化は、肺送達に適した結晶サイズまで小さくする一般的な方法である。代表的には、活性因子を微粉化し、適切なキャリアと混合して、吸気可能な大きさまで微粉化した粒子の懸濁物を作る。ここで、「微粉化した粒子」または「微粉化形態」とは、少なくとも約90%以上の粒子直径が約10μm未満の状態であることを意味する。粒子サイズを小さくする他の方法を使用してもよく、例えば、所望な粒子サイズが得られるような微細粉砕、裁断、破砕、粉砕、磨り潰し、篩い分け、磨砕、粉状化などが挙げられる。
【0166】
DPIに使用するための代表的な薬学的組成物は、約1μm〜約100μmの粒子サイズを有する乾燥ラクトースと、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を微粉化した粒子とを含む。この乾燥粉末処方物は、例えば、ラクトースと活性因子とを混合し、これらの成分を乾燥ブレンドすることによって作製することができる。または、望ましい場合、活性因子を腑形剤なしで処方化することができる。この薬学的組成物は、代表的には乾燥粉末ディスペンサーに入れられるか、または乾燥粉末送達デバイスとともに使用するための吸入カートリッジまたはカプセルに入れられる。
【0167】
DPI送達デバイスの例としては、Diskhaler(GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC;例えば、米国特許第5,035,237号(Newell et al.)を参照);Diskus(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第6,378,519(Davies et al.)を参照);Turbuhaler(AstraZeneca,Wilmington,DE(例えば、米国特許第4,524,769(Wetterlin)を参照);Rotahaler(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第4,353,365(Hallworth et al.)を参照)およびHandihaler(Boehringer Ingelheim)が挙げられる。適切なDPIデバイスのさらなる例は、米国特許第5,415,162号(Casper et al.)、同第5,239,993号(Evans)および同第5,715,810号(Armstrong et al.)およびこれらの引用文献である。上述の特許の開示内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0168】
本発明のなお別の特定の実施形態では、活性因子を含む薬学的組成物は、MDIの吸入によって投与され、圧縮噴霧ガスを用いて所定量の活性因子またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体が放出される。従って、MDIを用いて投与される薬学的組成物は代表的には、液化噴射剤中に活性因子の溶液または懸濁物を含む。使用可能な任意の適切な液化噴射剤としては、クロロフルオロカーボン、例えば、CClF、およびハイドロフルオロアルカン(HFA)、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)が挙げられる。クロロフルオロカーボンはオゾン層に影響を与える懸念があるため、HFAを含有する処方物が一般的には好ましい。HFA処方物のさらなる任意成分としては、共溶媒(例えばエタノールまたはペンタン)および界面活性剤(例えばソルビタントリオレエート、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。例えば、米国特許第5,225,183号(Purewal et al.)、EP 0717987 A2(Minnesota Mining and Manufacturing Company)、およびWO 92/22286(Minnesota Mining and Manufacturing Company)を参照(これらの開示内容全体は本明細書に参考として援用される)。
【0169】
定量吸入器で使用するための代表的な薬学的組成物は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.01〜約5重量%と;エタノールを約0〜約20重量%と;界面活性剤を約0〜約5重量%とを含み、残りの成分はHFA噴射剤である。
【0170】
そのような組成物は、代表的には、凍結または加圧したハイドロフルオロアルカンを、活性因子、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適切な容器に加えることによって調製される。懸濁物を調製するために、活性因子を微粉化し、噴射剤と混合する。この処方物を定量吸入デバイスの一部分を構成するエアロゾル缶に入れる。HFA噴射剤とともに用いるために特別に開発された定量吸入デバイスの例としては、米国特許第6,006,745号(Marecki)および同第6,143,277号(Ashurst et al)に記載されるものが挙げられる。または、懸濁処方物は、活性因子の微粉化粒子に界面活性剤のコーティングをスプレー乾燥させることによって調製することができる。例えば、WO99/53901(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/61108(Glaxo Group Ltd.)。上記特許および刊行物の開示内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0171】
吸気可能な粒子を調製するプロセス、吸入投与に適した処方物およびデバイスのさらなる例は、米国特許第6,268,533号(Gao et al.)、同第5,983,956号(Trofast);同第5,874,063号(Briggner et al.);および同第6,221,398号(Jakupovic et al.);およびWO99/55319(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/30614(AstraZeneca AB)を参照のこと(これらの開示内容全体は参考として本明細書に援用される)。
【0172】
別の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に適した薬学的組成物は、カプセル、錠剤、丸薬、トローチ剤、カシェ剤、糖衣錠、粉末、顆粒;または水性液体または非水液体の溶液または懸濁物;または水中油または油中水の液体エマルション;またはエリキシルまたはシロップなどの形態であってもよく、それぞれの形態は、所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する。薬学的組成物は、単位投薬形態で包装されてもよい。
【0173】
固体投薬形態(すなわち、カプセル、錠剤、丸薬など)で経口投与を目的とする場合、本発明の薬学的組成物は、代表的には、本発明の化合物を活性成分として含み、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)をさらに含む。必要に応じて、または、固体投薬形態は、以下のものを含んでもよい:フィラーまたは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/、または炭酸ナトリウム;溶液緩染剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート;吸収剤、例えばカオリンおよび/またはベントナイトクレイ;滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはその混合物;着色剤;および緩衝剤。
【0174】
放出剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も本発明の薬学的組成物中に存在してもよい。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例としては、以下のものが挙げられる:水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。錠剤、カプセル、丸薬などのコーティング剤としては、腸溶性コーティングとして使用されるもの、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)などが挙げられる。
【0175】
望ましい場合、本発明の薬学的組成物は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを種々の比率で用いて、活性成分を遅延放出または制御放出するように処方化されてもよい。
【0176】
それに加えて、本発明の薬学的組成物は、乳白剤を必要に応じて含有してもよく、活性成分を、胃腸管の特定部分にのみまたは胃腸管の特定部分に優先的に、必要に応じて遅延様式で放出するように処方化されてもよい。使用可能な埋包組成物の例としては、ポリマー基質およびワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合、1つ以上の上述の腑形剤を含むマイクロカプセルの形態であってもよい。
【0177】
経口投与に適した液体投薬形態としては、一例として、薬学的に受容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。この液体投薬形態は、代表的には、活性成分と不活性希釈剤(例えば水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含む。懸濁物は、活性成分に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminium metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0178】
経口投与が意図される場合、本発明の薬学的組成物は、単位投薬形態にパッケージされ得る。用語「単位投薬形態」とは、患者に投与するために適切な物理的に別個の単位(すなわち、各単位は、単独もしくは1種以上のさらなる単位と組み合わせてのいずれかで所望の治療効果をもたらすために計算された所定の量の活性因子を含む)を意味する。例えば、そのような単位投薬形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤などであり得る。
【0179】
本発明の化合物は、既知の経皮送達系および腑形剤を用いて経皮投与することができる。例えば、本発明の化合物は、透過促進剤、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなどと混合することができ、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。望ましい場合には、さらなる腑形剤(ゲル化剤、乳化剤およびバッファーを含む)をこの経皮組成物に使用してもよい。
【0180】
本発明の化合物は、他の治療因子とともに同時投与することもできる。この組み合わせ治療は、本発明の化合物を1つ以上の第2の薬剤と組み合わせて、一緒に処方化する(例えば1個の処方物中に一緒に包装)か、または別個に処方化する(例えば別個の単位投薬形態として包装)かのいずれかで使用することを含む。同じ処方物または別個の単位投薬形態に複数の薬剤を処方化する方法は、当該技術分野で周知である。
【0181】
さらなる治療因子は、他の気管支拡張剤(例えば、PDE阻害剤、アデノシン2b調整剤およびβアドレナリン作用性レセプターアゴニスト);抗炎症剤(例えば、ステロイド性抗炎症剤、例えばコルチコステロイド;非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)およびPDE阻害剤);他のムスカリン性レセプターアンタゴニスト(すなわち抗コリン作用性薬剤);抗炎症剤(例えば、グラム陽性抗生物質およびグラム陰性抗生物質または抗ウイルス剤);抗ヒスタミン剤;プロテアーゼ阻害剤;および求心性ブロッカー(afferent blocker)(例えば、Dアゴニストおよびニューロキニン調整剤)から選択することができる。
【0182】
本発明の1つの特定の実施形態は、(a)薬学的に受容可能なキャリアと治療有効量の式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と;および(b)薬学的に受容可能なキャリアと、ステロイド性抗炎症剤(例えばコルチコステロイド);βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4阻害剤;またはそれらの組み合わせから選択される治療有効量の薬剤とを含む組成物に関し、ここで、式Iの化合物および上記薬剤はともに処方化されるか、または別個に処方化される。別の実施形態では、(b)は薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量のβアドレナリン作用性レセプターアゴニストおよびステロイド性抗炎症剤である。第2の薬剤は、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物の形態で使用することができ、適切な場合、光学的に純粋な立体異性体として使用することができる。
【0183】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なβアドレナリン作用性レセプターアゴニストとしては、限定されないが、サルメテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメファモール、フェノテロール、テルブタリン、アルブテロール、イソエタリン(isoetharine)、メタプロテレノール、ビトルテロール、ピルブテロール、レバルブテロールなどまたはその薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用可能な他のβアドレナリン作用性レセプターアゴニストとしては、限定されないが、3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}−アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/066422(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル]アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−フェニル]イミダゾリジン−2,4−ジオンおよびWO02/070490(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/076933(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよびWO03/024439(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよび米国特許第6,576,793号(Moran et al.)に記載の関連化合物;N−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび米国特許第6,653,323号(Moran et al.)に記載の関連化合物;およびこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。特定の実施形態では、β−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンの結晶性一塩酸塩である。使用される場合、β−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、治療有効量で薬学的組成物中に存在する。代表的には、β−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。上記特許および刊行物の開示内容全体は、本明細書に参考として援用される。
【0184】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なステロイド性抗炎症剤としては、限定されないが、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3S−イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17−プロピオン酸エステルまたは17,21−ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フランカルボン酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコルト(butixocort)、RPR−106541、ST−126など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用される場合、ステロイド性抗炎症剤は治療有効量でこの組成物中に存在する。代表的には、ステロイド性抗炎症剤は、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。
【0185】
例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性レセプターアゴニストとしてサルメテロールおよびステロイド性抗炎症剤としてプロピオン酸フルチカゾンとがともに投与される組み合わせである。別の例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性レセプターアゴニストとして塩N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよびステロイド性抗炎症剤として6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステルとがともに投与される組み合わせである。上述のように、これらの薬剤は、一緒に処方化されても別個に処方化されてもよい。
【0186】
他の適切な組み合わせとしては、例えば、他の抗炎症剤、例えば、NSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、およびホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤およびPDE3/PDE4阻害剤の混合物);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテロイカスト(monteleukast));ロイコトリエンの合成阻害剤;iNOS阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプターゼ阻害剤およびエラスターゼ阻害剤;β−2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシンレセプターアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト);サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト、例えば、インターロイキン抗体(αIL抗体)、特に、αIL−4治療およびαIL−13治療、またはこれらの組み合わせ);またはサイトカインの合成阻害剤が挙げられる。
【0187】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なホスホジエステラーゼ−4(PDE4)阻害剤またはPDE3/PDE4阻害剤混合物としては、限定されないが、シス4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン;シス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール];シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。他の代表的なPDE4阻害剤またはPDE4/PDE3阻害剤混合物としては、AWD−12−281(elbion);NCS−613(INSERM);D−4418(Chiroscience and Schering−Plough);CI−1018またはPD−168787(Pfizer);WO99/16766(Kyowa Hakko)に記載のベンゾジオキソール化合物;K−34(Kyowa Hakko);V−11294A(Napp);ロフルミラスト(Byk−Gulden);WO99/47505(Byk−Gulden)に記載のフタラジノン(pthalazinone)化合物;Pumafentrine(Byk−Gulden,現在はAltana);アロフィリン(arofylline)(Almirall−Prodesfarma);VM554/UM565(Vernalis);T−440(Tanabe Seiyaku);およびT2585(Tanabe Seiyaku)が挙げられる。
【0188】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なムスカリン性アンタゴニスト(すなわち、抗コリン作用性薬剤)としては、限定されないが、アトロピン、硫酸アトロピン、アトロピンオキシド、硝酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒヨスチアミン(d,l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、コピロレート(copyrrolate)(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクタラミン(methoctramine)など、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0189】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的な抗ヒスタミン剤(すなわち、H−レセプターアンタゴニスト)としては、限定されないが、エタノールアミン、例えば、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナート;エチレンジアミン、例えば、マレイン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン;アルキルアミン、例えば、クロルフェニラミンおよびアクリバスチン;ピペラジン、例えば、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン;ピペリジン、例えば、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシアナログ、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン;塩酸アゼラスチンなど、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0190】
他に言及されない限り、本発明の化合物と組み合わせて投与される他の治療因子について例示的な適切な投薬量は、約0.05μg/日〜100mg/日の範囲内である。
【0191】
以下の処方は、代表的な本発明の薬学的処方物および例示的な調製方法を例示する。1つ以上の第2の薬剤は、本発明の化合物(第1の活性因子)とともに必要に応じて処方され得る。または、第2の薬剤は、同時または順次のいずれかで、第1の活性因子と別個に、およびともに投与することができる。例えば、一実施形態では、1個の乾燥粉末処方物が本発明の化合物と1つ以上の第2の薬剤を両方含むように製造することができる。別の実施形態では、本発明の化合物を含有する処方物が製造され、第2の薬剤を含有する別個の処方物が製造される。この乾燥粉末処方物を別個のブリスターパックに入れ、1個のDPIデバイスで投与することができる。
【0192】
(吸入による投与のための例示的な乾燥粉末処方物)
本発明の化合物0.2mgを微粉化し、ラクトース25mgと混合する。このブレンドした混合物をゼラチン吸入カートリッジに入れる。このカートリッジの内容物を粉末吸入器を用いて投与する。
【0193】
(乾燥粉末吸入器によって投与するための例示的な乾燥粉末処方物)
本発明の微粉化した化合物(活性因子)対ラクトースの比率を1:200にしたバルク処方物を有する乾燥粉末を調製する。この粉末を乾燥粉末吸入デバイスに入れる。この乾燥粉末吸入デバイスは、投薬1回あたり活性因子を約10μg〜約100μg送達することができる。
【0194】
(定量吸入器によって投与するための例示的な処方物)
微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性因子の粒子10gを脱イオン水200mLにレシチン0.2gを溶解した溶液に分散させることによって、本発明の化合物(活性因子)5wt%およびレシチン0.1wt%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンとともにカートリッジに入れる。
【0195】
あるいは、微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性因子の粒子5gを脱イオン水100mLにトレハロース0.5gおよびレシチン0.5gを溶解したコロイド溶液に分散させることによって、活性因子5wt%、レシチン0.5wt%およびトレハロース0.5wt%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンとともにカートリッジに入れる。
【0196】
(噴霧器によって投与するための例示的な水性エアロゾル処方物)
本発明の化合物(活性因子)0.5mgをクエン酸で酸性にした0.9%塩化ナトリウム溶液1mLに溶解して薬学的組成物を調製する。この混合物を攪拌し、活性因子が溶解するまで超音波にかける。NaOHをゆっくりと添加して溶液のpHを3〜8(代表的には約5)に調整する。
【0197】
(経口投与のための例示的な硬質ゼラチンカプセル)
以下の成分を十分にブレンドし、硬質ゼラチンカプセルに入れる。本発明の化合物250mg、ラクトース(スプレー乾燥品)200mg、およびステアリン酸マグネシウム10mg、カプセルあたり組成物全体で460mg。
【0198】
(経口投与のための例示的な懸濁処方物)
以下の成分を混合して、懸濁物10mLあたり活性成分100mgを含有する懸濁物を作製する。
【0199】
【化62】

(例示的な注射用処方物)
以下の成分をブレンドし、0.5N HClまたは0.5N NaOHを用いてpHを4±0.5に調整する。
【0200】
【化63】

(有用性)
本発明のビフェニル化合物はムスカリン性レセプターアンタゴニストとして有用であると考えられ、そのために、この化合物は、ムスカリン性レセプターによって媒介される医学状態、すなわち、ムスカリン性レセプターアンタゴニストで処置することによって改善される医学状態を処置するのに有用であると考えられる。この医学状態としては、一例として、可逆性軌道閉塞と関連する障害または疾患を含む肺障害または疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性および喘息様気管支炎および肺気腫)、ぜんそく、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏などが挙げられる。ムスカリン性レセプターアンタゴニストで処置可能な他の医学状態は、尿生殖路障害、例えば、過活動膀胱または排尿筋過活動(detrusor hyperactivity)およびその症状;胃腸管障害、例えば、過敏性腸症候群、憩室疾患、アカラシア、胃腸運動亢進障害および下痢;不整脈、例えば、洞性徐脈;パーキンソン病;認識障害、例えばAlzheimer病;月経困難症などが挙げられる。
【0201】
一実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトおよびコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコなど)を含む)の平滑筋障害を処置するのに有用である。この平滑筋障害としては、一例として、過活動膀胱、慢性閉塞性肺疾患および過敏性腸症候群が挙げられる。
【0202】
本発明の化合物が平滑筋障害またはムスカリン性レセプターによって媒介される他の状態を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、1日に1回または1日に複数回、代表的には、経口、直腸内、非経口または吸入によって投与される。投薬1回あたり投与される活性因子の量または1日の投薬合計量は、代表的には、患者の担当医によって決定され、患者の状態の性質および重篤度、処置される状態、患者の年齢および全体的な健康度、患者の活性因子に対する耐性、投与経路などのような因子に依存する。
【0203】
代表的には、平滑筋障害またはムスカリン性レセプターによって媒介される他の障害を処置するのに適した投薬量は、活性因子として約0.14μg/kg/日〜約7mg/kg/日であり、例えば、約0.15μg/kg/日〜約5mg/kg/日である。平均70kgのヒトでは、適した投薬量は、活性因子として1日あたり約10μg〜500mgである。
【0204】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトを含む)の肺障害または呼吸器障害(例えばCOPDまたはぜんそく)を処置するのに有用である。本発明の化合物がこの障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、代表的には1日に複数回、1日に1回、または1週間に1回、吸入によって投与される。一般的には、肺障害を処置するための投薬量は、約10μg/日〜約200μg/日である。本明細書で使用される場合、COPDは、慢性閉塞性気管支炎および肺気腫を含む(例えば、Barnes,Chronic Obstructive Pulmonary Disease,N Engl J Med 343:269−78(2000)を参照)。
【0205】
肺障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、必要に応じて他の治療因子、例えば、βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト;コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0206】
吸入によって投与される場合、本発明の化合物は、代表的には、気管支を拡張させる効果を有する。従って、本発明の一実施形態は、気管支を拡張させる量の本発明の化合物を患者に投与する工程を含む、患者の気管支を拡張させる方法に関する。一般的に、気管支を拡張させるための治療有効量は、約10μg/日〜200μg/日である。
【0207】
別の実施形態では、本発明の化合物は、過活動膀胱を処置するために使用される。過活動膀胱を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、代表的には1日に1回または1日に複数回、好ましくは1日に1回、経口投与される。一実施形態では、過活動膀胱を処置するための投薬量は、約1.0mg/日〜500mg/日である。
【0208】
なお別の実施形態では、本発明の化合物は、過敏性腸症候群を処置するために使用される。過敏性腸症候群を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、代表的には1日に1回または1日に複数回、経口投与または直腸内投与される。一実施形態では、過敏性腸症候群を処置するための投薬量は、約1.0〜500mg/日である。
【0209】
本発明の化合物がムスカリン性レセプターアンタゴニストであるため、そのような化合物は、ムスカリン性レセプターを有する生物学的系またはサンプルを観察または試験するための研究ツールとしても有用である。この生物学的系またはサンプルは、M、M、M、Mおよび/またはMムスカリン性レセプターを含んでもよい。ムスカリン性レセプターを有する任意の適した生物学的系またはサンプルがこの試験に使用されてもよく、試験はインビトロまたはインビボのいずれで行われてもよい。この試験に適した代表的な生物学的系またはサンプルとしては、限定されないが、細胞、細胞抽出物、血漿膜、組織サンプル、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタなど)などが挙げられる。
【0210】
この実施形態では、ムスカリン性レセプターを含む生物学的系またはサンプルとムスカリン性レセプターをアンタゴナイズする量の本発明の化合物とを接触させる。ムスカリン性レセプターをアンタゴナイズする効果は、従来の手順および装置(例えば、放射性リガンド結合アッセイおよび機能アッセイ)を用いて決定される。この機能アッセイとしては、リガンドによって媒介される細胞内環状アデノシンモノフォスフェート(cAMP)の変化、リガンドによって媒介されるアデニリルシクラーゼ酵素(cAMPを合成する)の活性変化、レセプターにより触媒されるグアノシン5’−ジホスフェート(GDP)への[35S]GTPγSの交換を経るグアノシン5’−O−(γ−チオ)トリホスフェート([35S]GTPγS)の単離膜への組み込みのリガンドによって媒介される変化、リガンドによって媒介される細胞内遊離カルシウムイオンの変化(例えば、蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices,Inc.製のFLIPR(登録商標)を用いて測定)が挙げられる。本発明の化合物は、上に列挙した機能アッセイのいずれか、または同様の性質を有するアッセイでムスカリン性レセプターの活性をアンタゴナイズするかまたは減少させる。ムスカリン性レセプターをアンタゴナイズする量の本発明の化合物は、代表的には、約0.1〜100nMである。
【0211】
さらに、本発明の化合物は、ムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性を有する新規化合物を開発するための研究ツールとして使用することができる。この実施形態では、試験化合物または試験化合物群のムスカリン性レセプター結合データ(例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイで決定される)を本発明の化合物のムスカリン性レセプター結合データと比較して、この試験化合物が本発明の化合物とほぼ同等または優れたムスカリン性レセプター結合性を有するか否かを同定する。本発明のこの局面は、比較データの作成(適切なアッセイを用いて)および目的の試験化合物を同定するための試験データの分析の両方を別個の実施形態として含む。
【0212】
別の実施形態では、本発明の化合物は、生態系および哺乳動物(詳細には、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)のムスカリン性レセプターをアンタゴナイズするために使用される。この実施形態では、治療有効量の式Iの化合物が哺乳動物に投与される。ムスカリン性レセプターをアンタゴナイズする効果を従来の手順および装置(例は上述)を用いて決定する。
【0213】
他の特性の中でも、本発明の化合物は、Mムスカリン性レセプター活性の強力な阻害剤であることが見出された。従って、特定の実施形態では、本発明は、例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイによって決定される場合、Mレセプターサブタイプに対して10nM以下の阻害解離定数(K)を有する式Iの化合物に関する。一実施形態では、本発明の化合物は、Mレセプターサブタイプに対して5nM以下の値のKを有する。
【0214】
さらに、本発明の化合物は、所望な作用持続時間を有すると予想される。従って、別の特定の実施形態では、本発明は、約24時間以上の作用持続時間を有する式Iの化合物に関する。さらに、本発明の化合物は、他の既知のムスカリン性レセプターアンタゴニスト(例えばチオトロピウム)が吸入で投与される場合と比較して、有効量投与で副作用(例えば、口の乾き)が少ないと予想される。
【0215】
これらおよび他の性質、および本化合物の有用性は、当業者に周知の種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて示すことができる。例えば、代表的なアッセイは、以下の実施例にさらに詳細に記載される。
【実施例】
【0216】
調製および実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する。以下の省略形は、他に言及されたり、本明細書中で任意の他の省略形が使用されたり、その標準的な意味を有すると定義されたりしない限り、以下に示す意味を有する。
【0217】
AC アデニリルシクラーゼ
ACh アセチルコリン
ACN アセトニトリル
BSA ウシ血清アルブミン
cAMP 3’−5’環状アデノシン一リン酸
CDI カルボニルジイミダゾール
CHO チャイニーズハムスター卵巣
cM クローン化チンパンジーMレセプター
DCM ジクロロメタン(すなわち、塩化メチレン)
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
dPBS Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
HBSS ハンクス緩衝化塩溶液
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
HOAc 酢酸
MCh メチルコリン
MeOH メタノール
Na(OAc)BH トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
TBSCl tert−ブチルジメチルシリルクロリド
TFA トリフルオロ酢酸。
【0218】
他に示されない限り、全物質(例えば試薬、出発物質および溶媒)は、商業的な供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Flukaなど)から購入し、精製することなく使用した。
【0219】
他に言及されない限り、HPLC分析は、3.5ミクロンの粒子サイズを有するZorbax Bonus RP 2.1×50mmカラム(Agilent)を取り付けたAgilent(Palo Alto,CA)Series 1100装置を用いて行った。214nmのUV吸収を用いて検出した。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液はACN(2%)、水(98%)およびTFA(0.1%)であり、B液はACN(90%)、水(10%)およびTFA(0.1%)である。HPLC 10−70データは、0.5mL/分の流速で、B液を6分間で10〜70%まで変動させて得た(残りの%はA液である)。同様に、HPLC 5−35データおよびHPLC 10−90データは、5分間の勾配にわたって、5〜35%のB液、または10〜90%のB液を用いて得た。
【0220】
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)データはApplied Biosystems(Foster City,CA) Model API−150EX装置を用いて得た。LCMS 10−90データは、移動相B液を5分間で10〜90%まで変動させて得た。
【0221】
小スケールの精製は、Applied Biosystems製のAPI−150EX Prep Workstationシステムを用いて行った。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液は水および0.05%TFAであり、B液はACNおよび0.05%TFAである。アレイ(代表的には回収サンプルサイズが約3〜50mg)の場合、以下の条件を用いた:流速20mL/分;勾配15分および5ミクロン粒子の20mm×50mm Prism RPカラム(Thermo Hypersil−Keystone,Bellefonte,PA)。大スケールの精製(代表的には粗サンプルが100mgを超えるもの)については、以下の条件を用いた:流速60mL/分;勾配30分および10ミクロン粒子の41.4mm×250mm Microsorb BDSカラム(Varian,Palo Alto,CA)。
【0222】
(調製1)
1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]イミダゾリジン−2−オン
N−(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(19.9g、168mmol)、DIPEA(87mL、504mmol、3.0当量)を、500mL DMFに溶解させ、その後、1,1−カルボニルジイミダゾール(27.3g、168mmol、1.0当量)を添加した。その反応物を、50℃で一晩攪拌させた。一晩経った後、その反応物を室温に冷却し、そしてTBSCl(25.2g、168mmol、1.0当量)を添加した。その混合物を、室温で3時間攪拌させた。次いで、その反応物を真空中で40℃にて濃縮し、次いで、得られた残渣をDCM500mL)に入れた。その有機相を水(2×500mL)で洗浄し、次いで、ブライン(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して表題の化合物を淡黄色固体(42.8g)として98%の収率で得た。
【0223】
(調製2)
1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]−3−(3,3−ジメトキシプロピル)イミダゾリジン−2−オン
1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]イミダゾリジン−2−オン(17.65g、68.30mmol;調製1に記載されるように調製した)を、DMA(400mL)中のNaH(8.20g、204.9mmol、3.0当量、40%ミネラルオイル)の懸濁液にゆっくりと添加した。脱プロトン化をバブラー(bubbler)でモニタリングし、室温で1時間の攪拌の後バブリングを終了した。DMA(100mL)中の3−ブロモプロピオンアルデヒドジメチルアセタール(25.0g、136.6mmol、2.0当量)の溶液を、その反応混合物に滴下漏斗(addition funnel)を通じて2時間かけてゆっくりと添加した。室温でのさらなる時間攪拌した後、その溶液を、真空中で濃縮し、その粗製の反応混合物をDCM(200mL)に入れ、水(2×200mL)およびブライン(2×200mL)で洗浄した。その有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、表題の化合物(24.53g、68.8mmol)を淡黄色の油状物として得た。その物質を、さらに精製せずに使用した。
【0224】
(調製3)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イソシアネート(97.5g、521mmol)および4−ヒドロキシ−N−ベンジルピペリジン(105g、549mmol)を、一緒に70℃で12時間加熱した。次いで、その反応混合物を50℃に冷却し、そしてEtOH(1L)を加え;次いで、6M HCl(191mL)をゆっくりと加えた。次いで、得られた混合物を、周囲温度に冷却し、ギ酸アンモニウム(98.5g、1.56mol)を加え、次いで、窒素ガスをその溶液を通じて20分間激しく泡立てた。次いで、活性炭担持パラジウム(20g、10wt% 乾燥ベース)を加え、その反応混合物を40℃で12時間加熱し、次いで、セライトのパッドを通して濾過した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、その粗製残渣に1M HCl(40mL)を加えた。次いで、その混合物のpHを、10N NaOHを用いてpH12に調整した。水層を酢酸エチル(2×150mL)で抽出し、有機層を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去して、155gの表題の中間体(100%収率)を得た。HPLC(10−70) R=2.52;m/z:[M+H] C1820についての計算値、297.15;実測値、297.3。
【0225】
(調製4)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−ヒドロキシルプロピル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル
粗製の1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]−3−(3,3−ジメトキシプロピル)イミダゾリジン−2−オン(11.4g、32mmol;調製2に記載されるように調製した)に、ACN(32mL)中の1N HCl水溶液(32mL、32mmol、1.0当量)の1:1混合物を添加した。その反応物を、室温で2時間攪拌させた。その反応混合物に、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(9.4g、32mmol;調製3に記載されるように調製した)を添加し、30分間攪拌させ、その後、NaBH(OAc)(20.3g、96mmol)を添加した。その反応混合物を一晩攪拌させた。一晩経った後、その溶液を真空中で濃縮した。その粗製混合物を、DCM(400mL)に入れ、1N NaOH(200mL)、水(200mL)そしてブライン(200mL)で洗浄した。その有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中の10%MeOH(1% NH(aq)を含む))によって精製して、表題の化合物(7.98g、16.6mmol)を52%の収率で得た。
【0226】
(実施例1)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル
【0227】
【化64】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−ヒドロキシプロピル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル(5.2g、10.8mmol、1.0当量;調製4に記載されるように調製した)を、DCM(120mL)に溶解させ、15℃に冷却した。DMSO(7.6mL、108.3mmol、10当量)を添加し、その後、DIPEA(9.4mL、54.1mmol、5当量)を添加した。5分間の攪拌後、ピリジン・三酸化硫黄錯体(8.6g、54.1mmol、5当量)を固体として一度に添加した。その反応物を2時間攪拌し、その間、0℃にゆっくり温めた。出発物質が完全に変換した後、その有機溶液を分液漏斗に移し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液およびブラインで洗浄した。次いで、その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。その濾液に、無水MeOH(120mL)を添加し、そして15分間で0℃に冷却した。p−ヒドロキシベンジルアミン・ヒドロブロミド(4.18g、20.5mmol、1.9当量)を固体として添加し、その反応物を0℃で30分間攪拌した。固体のNa(OAc)BH(6.86g、32.4mmol、3.0当量)を一度に添加し、その反応物を氷浴から取り出し、1時間攪拌した。HCl水溶液(1N、500mL)をその反応物に添加し、その溶液を分液漏斗に移した。DCM層を除去し、EtOAc(300mL)を添加した。それらの層を十分に混合し、分離した。固体のNaOHを酸性の水層に添加して、pHを約12〜14に調整した。次いで、その塩基性の水層を、EtOAc(2×250mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和したブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過によって除去し、その有機溶液を濃縮して、5.6g(2工程にわたって88%収率の粗製物)を得た。その粗製の物質をDCMに溶解させ(約1g/50mL)、激しく攪拌しながら0.5M NaHPO(3×250mL)を添加した。酸性の洗浄液を合わせ、6N NaOHを用いてpH=6.5にした。次いで、その水層をDCM(300mL)を用いて洗浄した。次いで、その水層を取り出し、6N NaOHを用いてpH=約11にした。その水層をEtOAc(3×250mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、水(2×200ml)そして飽和したブライン(250mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過によって除去し、その有機溶液を濃縮した。最終的な精製を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:DCM中の11% MeOH(1% NH(25% aq)を含む))によって行い、表題の化合物(2.5g、4.32mmol、40%収率)を得た。MS m/z:[M+H] C3443についての計算値、586.3;実測値、586.4。
【0228】
表題の化合物を、以下の手順を用いて酢酸塩としても調製した:丸底フラスコに、表題の化合物(400mg、0.634mmol;上に記載されるように調製した)および攪拌子を加えた。30〜40分間攪拌しながら、そのフラスコにACN(40mL)を添加した。次に、HOAc(0.043mL、0.697mmol、1.1当量)を攪拌しながら添加した。1〜2分間攪拌した後、攪拌子を取り出し、一晩のうちにその塩を形成させた。一晩経った後、その塩をフラスコからかき取り、濾紙(6μM)で濾過し、ACN(3×50mL)で洗浄し、次いで、回収し、乾燥させた(0.372g、91%)。
【0229】
表題の化合物を、以下の手順を用いてプロピオン酸塩としても調製した:丸底フラスコに、表題の化合物(400mg、0.634mmol;上に記載されるように調製した)および攪拌子を加えた。30〜40分間攪拌しながら、そのフラスコにACN(40mL)を添加した。次に、プロピオン酸(0.052mL、0.697mmol、1.1当量)を攪拌しながら添加した。1〜2分間攪拌した後、攪拌子を取り出し、一晩のうちにその塩を形成させた。一晩経った後、その塩をフラスコからかき取り、濾紙(6μM)で濾過し、ACN(3×50mL)で洗浄し、次いで、回収し、乾燥させた(0.367g、88%)。
【0230】
(実施例2)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステルのモノプロピオン酸結晶性塩
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル(5g、8.55mmol;実施例1に記載されるように調製した)を、丸底フラスコに加えた。約30分間攪拌しながら、EtOH(33mL)およびEtOAc(33mL)をそのフラスコに添加した。次に、EtOAc(23mL)中のプロピオン酸(0.700mL、9.4mmol、1.1当量)を、5分間にわたって攪拌しながら添加した。一晩のうちにその塩を形成させた。一晩経った後、その結晶性塩をフラスコからかき取り、濾紙(6μM)で濾過し、40% EtOH/EtOAc(3×50mL)で洗浄し、次いで、回収し、乾燥させた(4.98g、88.2%)。
【0231】
肺障害または呼吸器障害を処置するために有用な治療因子は、吸入により直接気道に有利に投与される。この点に関して、薬学的な吸入デバイスの数種の型が、吸入によって治療因子を投与するために開発されており、乾燥粉末吸入器(D
PI)、定量吸入器(MDI)およびネブライザー吸入器が挙げられる。そのようなデバイスで使用するために薬学的組成物および処方物を調製する場合、吸湿性でも潮解性でもなく、比較的高い融点を有する治療因子の結晶性形態を有すること、それによってその物質を有意に分解させることなく微粉化させることが非常に望ましい。表題の化合物はこれらの必要性を満たす。
【0232】
さらに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステルの酢酸塩結晶、乳酸塩結晶、コハク酸塩結晶、硫酸塩結晶、ナパジシル酸塩結晶、および塩酸塩結晶を、類似の様式で調製した。
【0233】
(粉末X線回折)
粉末X線回折パターンを、Cu Kα(30.0kV、15.0mA)放射線をもちいてRigaku回折計によって得た。この分析を、ゴニオメータを用いて、2°〜45°の範囲にわたって0.03°のステップサイズで1分あたり3°の連続スキャンモードで稼動させて行った。サンプルを、石英標本ホルダー上で粉末状の物質の薄層として調製した。機器をシリコン金属標準物質でキャリブレートした。モノプロピオン酸塩についてのPXRDパターンは、その物質が結晶であることを示した。この結晶性塩のサンプルについての代表的なPXRDパターンを図1に示す。結晶性塩は、以下から選択される2θ値で2つ以上の回折ピークを有するPXRDパターンによって特徴付けられ得る:8.51±0.2、10.68±0.2、11.99±0.2、12.86±0.2、13.46±0.2、14.67±0.2、15.26±0.2、16.13±0.2、17.99±0.2、18.68±0.2、19.28±0.2、19.90±0.2、20.72±0.2、21.53±0.2、22.43±0.2、23.90±0.2、24.44±0.2、25.17±0.2、25.88±0.2、26.48±0.2、26.84±0.2、27.87±0.2、28.98±0.2、30.24±0.2,31.70±0.2、31.97±0.2、32.75±0.2、33.83±0.2、34.62±0.2、35.87±0.2、36.41±0.2、37.51±0.2、および39.22±0.2。特に、この結晶形態は、以下の2θ値での回折ピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる:8.51±0.2、12.86±0.2、13.46、±0.2、16.13±0.2、17.99±0.2、18.68±0.2、20.72±0.2、21.53±0.2、22.43±0.2、23.90±0.2、24.44±0.2、および25.88±0.2。
【0234】
(熱分析)
示差走査熱量測定(DSC)を、Thermal Analystコントローラを備えるTA Instruments Model Q−10モジュールを用いて行った。TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いてデータを収集し、分析した。約1mgのサンプルを、ふたを備えるアルミニウムパンに正確に秤量した。そのサンプルを、周囲温度から約300℃まで10℃/分の線形加熱ランプを用いて評価した。DSCセルを使用の間乾燥窒素でパージした。結晶のモノプロピオン酸塩のサンプルについての代表的なDSCとレース(図2)は、この結晶性塩が良好な熱安定性を有し、約141℃での融解ピークを有することを示した。
【0235】
熱重量分析(TGA)を、高分解能を備えるTA Instruments Model Q−50モジュールを用いて行った。TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いてデータを収集し、分析した。約2mgで秤量したサンプルをプラチナパン上に置き、周囲温度から300℃まで高い分解−加熱速度で走査した。バランスおよびファーネスチャンバーを、使用の間窒素流でパージした。この結晶性塩のサンプルについての代表的なTGAトレースは、図2で確認されるように、100℃未満の温度での溶媒および/または水の喪失(<1.00%)を示した。このTGAトレースは、結晶性塩が室温から中程度に上昇した温度まで少量の重量を喪失したことを示し、これは、残留水分または溶媒の喪失と一致する。
【0236】
(動的吸湿評価)
動的吸湿(DMS)評価(吸湿−放湿プロフィールとしてもまた公知)を、VTI atmospheric microbalance、SGA−100システム(VTI Corp.,Hialeah,FL 33016)を用いて結晶性モノプロピオン酸塩のサンプルに対して行った。約10mgのサンプルサイズを使用し、分析の開始時に湿度を周囲値に設定した。代表的なDMS分析は、3つの走査からなる:5%相対湿度(RH)/ステップの走査速度で、周囲湿度〜2%RH、2%RH〜90%RH、90%RH〜5%相RH。質量を2分ごとに測定し、そのサンプルの質量が5つの連続点について0.01%以内に安定したときにRHを次の値(+/− 5%RH)に変化させた。この結晶性塩のサンプルについての代表的なDMSトレースは、40%RH〜75%RHの湿度範囲に曝露した場合に、吸湿性が低く、0.3%の重量増加を有する可逆的な吸湿/放湿プロフィールを示した。DMSトレースは、結晶性塩が吸湿性の低い可逆的な吸湿/放湿プロフィールを有することを示した。結晶性塩は、幅広い湿度範囲に曝露した場合に許容可能な重量増加を有した。可逆的な吸湿/放湿プロフィールは、結晶性塩が許容可能な吸湿性を有し、潮解性でないことを示した。
【0237】
(固体状態の安定性評価)
モノプロピオン酸結晶性塩のサンプル(各々約200mg)を、複数の3mLホウケイ酸バイアルに−20℃(密閉した容器)、40℃/75% RH(開放した容器および密閉した容器)、ならびに50℃(密閉した容器)で保存した。特定の間隔で、代表的なバイアルの全内容物を以下のHPLC法によって分析した:
カラム:Agilent Zorbox SB−C18、4.6×250mm、5μm;移動相A:98% 水、2% ACN、0.1% TFA;移動相B:10% 水、90% ACN;0.1% TFA;流速:1mL/分;注入体積:20μL;検出器:220nm;勾配−時間(分)(移動相Bの%):0.0(10);4.00(20);26.00(28);34.40(100);38.40(100);38.50(10);および45.00(10)。サンプルを溶解度に依存して、HO中の10−50% ACN中の10mg/mLストック溶液として調製した。これらのストック溶液をHPLCへの注入のために10% ACNの1mg/mLに希釈した。
【0238】
サンプルの初期精製は、HPLS面積割合で決定した場合、98.9%であった。6週間の保存の後、すべての条件下で保ったサンプルについて、化学的純度における検出可能な変化はなく、物質の概観における観察可能な変化はなく、そしてDSCおよびTGAによる分析は検出可能な相違を示さなかった。
【0239】
(微粉化)
モノプロピオン酸結晶性塩の10.3gサンプルを微粉化して、9.0gの自由に流れる(free−flowing)白色粉末(88%回収率)を得た。微粉化前、結晶性塩は、HPLC面積割合で決定した場合、98.9%の初期純度を有していた。微粉化した物質の純度は同じであった。微粉化前の物質の含水率は0.3wt%であり、微粉化した物質の含水率は0.6wt%であった。粒径分布は以下のとおりであった:
【0240】
【化65】

微粉化していない物質と比べて、微粉化した物質について、粉末X線回折パターン、TGA、DSC、DMS、化学的純度、キラル純度および湿分含有量では有意な変化は観察されなかった。例えば、結晶性塩のサンプルは、40%RH〜70%RHの湿度範囲で0.7%の重量増加を示し、一方で、微粉化した物質は、この範囲で1.0%の重量増加を示した。
【0241】
(調製5)
1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]イミダゾリジン−2−オン
【0242】
【化66】

DMF(100mL)中の2−イミダゾリドン(5.0g、60mmol)の攪拌溶液に、NaH(2.4g、ミネラルオイル中60%、60mmol)を添加した。次いで、その反応物を50℃に加熱し、Hのバブリングが終わるまで(約1時間)攪拌した。その混合物に、(3−ブロモプロポキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(13.5mL、60mmol)を滴下した。その反応混合物を、50℃で3時間攪拌させた。3時間後、その反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮し、次いで、DCM(250mL)に溶解させ、そして1N HCl(500mL)、水(500mL)、NaCl(飽和)(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を減圧下で除去した。粗製の物質を、シリカゲルクロマトグラフィー(10% MeOH/DCM)によって精製して、表題の化合物を45%収率(6.9g、26.7mmol)で得た。
【0243】
(調製6)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−ヒドロキシプロピル)2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル
DMF(500mL)中の1−[3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)プロピル]イミダゾリジン−2−オン(38g、147mmol;調製5に記載されるように調製した)の攪拌溶液に、NaH(6.4g、ミネラルオイル中60%、160mmol)を添加した。次いで、その反応物を50℃に加熱し、Hのバブリングが終わるまで(約1時間)攪拌した。次いで、その反応物を室温に冷却した。その反応混合物に、1,3−ジブロモプロパン(14.0mL、147mmol)を滴下した。その反応物を室温で16時間攪拌させた。次に、DIPEA(52mL、294mmol)およびビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(47g、160mmol;調製3に記載されるように調製した)を、その反応物に添加し、これを18時間で50℃に加熱した。18時間後、その反応物を室温に冷却し、次いで、減圧下で濃縮した。その粗製の反応混合物を、1N HCl:ACN(250mL)の1:1混合物に溶解させ、5時間で50℃に加熱した。次いで、その反応物を減圧下で濃縮し、DCM(500mL)に溶解させ、1N HCl(500mL)、水(500mL)、NaCl(飽和)(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を減圧下で除去した。粗製の物質を、シリカゲルクロマトグラフィー(10% MeOH/DCM(1% NH3(aq)を含む))によって精製して、表題の化合物を9.8%収率(8.6g、14.4mmol)で得た。
【0244】
(実施例3)
【0245】
【化67】

化合物3−1を、以下のとおりに合成した。DCM(1.0mL)中のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−ヒドロキシプロピル)2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル(48mg、0.10mmol;調製6に記載されるように調製した)の攪拌した−15℃に冷却した溶液に、DMSO(56μL、1.0mmol、10当量)を添加し、その後、DIPEA(86.9mL、0.5mmol、5当量)を添加した。5分間の攪拌の後、ピリジン・三酸化硫黄錯体(80mg、0.5mmol、5当量)を固体として一度に添加した。その反応物を2時間攪拌し、その間、0℃にゆっくりと温めた。出発物質が完全に変換した後、その有機溶液を分液漏斗に移し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液およびブラインで洗浄した。次いで、その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。その濾液に、無水MeOH(1.0mL)を添加し、その後、チラミン(21mg、0.15mmol)およびNa(OAc)BH(63.3mg、0.3mmol)を添加した。その反応物を16時間攪拌させた。次に、その反応混合物を減圧下で濃縮し、次いで、HOAc:HO(1.5mL)の1:1混合物に溶解させ、逆相シリカゲル(勾配溶出、−50% 10ACN/HO)で精製して、表題の化合物を13%収率(2工程にわたる)(15.6mg、0.019mmol)で得た。
【0246】
化合物3−2および3−3を、類似の様式で、適切な出発物質および試薬を置き換えて、作製した。
【0247】
【化68】

(実施例4)
【0248】
【化69】

実施例3に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0249】
【化70】

【0250】
【化71】

(実施例5)
【0251】
【化72】

実施例3に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0252】
【化73】

(調製7)
1,4−ビス(3−クロロプロピル)ピペラジン−2,5−ジオン
DMF(100mL)中のグリシン無水物(5.0g、43mmol)の攪拌溶液に、NaH(3.9g、96mmol)を添加した。次いで、その反応物を50℃に加熱し、Hのバブリングが終わるまで(約1時間)攪拌させた。次いで、その反応物を室温に冷却し、その混合物に3−クロロ−1−ブロモプロパン(9.3mL、96mmol)を添加した。その反応混合物を一晩室温で攪拌させた。一晩経った後、その反応物を真空中で濃縮し、次いで、DCM(200mL)に溶解させ、そして1N HCl(100mL)、水(100mL)、NaCl(飽和)(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を減圧下で除去した。その粗製の物質は、さらなる精製なしに使用するのに十分に純粋であった。表題の化合物を、79%収率(9.9g、37.3mmol)で得た。
【0253】
(実施例6)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2,5−ジオキシピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル
【0254】
【化74】

DMF(1.5mL)中の1,4−ビス(3−クロロプロピル)ピペラジン−2,5−ジオン(40mg、0.15mmol;調製7に記載されるように調製した)の攪拌溶液に、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(44mg、0.15mmol;調製3に記載されるように調製した)およびDIPEA(0.078mL、0.45mmol)を添加し、この反応物を室温で一晩攪拌させた。一晩経った後、4−ヒドロキシベンジルアミン(18.5mg、0.15mmol)を添加し、その反応物を16時間で50℃に加熱した。次に、その反応混合物を真空中で濃縮し、次いで、HOAc:HO(1.5mL)の1:1混合物に溶解させ、逆相シルカゲル(勾配溶出、−50% ACN10/HO)で精製して、表題の化合物を10%収率(2工程にわたる)(13mg、0.015mmol)で得た。MS m/z:[M+H] C3543についての計算値、614.4;実測値,614.2)。
【0255】
(実施例7)
ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]プロピル}−2,5−ジオキソピペリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル
【0256】
【化75】

表題の化合物を、実施例6に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、調製した。MS m/z:[M+H] C3645についての計算値、628.3;実測値、628.4。
【0257】
(実施例8)
【0258】
【化76】

実施例6に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0259】
【化77】

(実施例9)
【0260】
【化78】

実施例6に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0261】
【化79】

(調製8)
【0262】
【化80】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(5g、16.95mmol;調製3に記載されるように調製した)を、ACN(100mL)に溶解させた。その溶液に、2−(Boc−アミノ)エチルブロミド(4.18g、18.64mmol)を添加し、その後、DIPEA(8.84mL、50.85mmol)を添加した。その混合物を、50℃で17時間攪拌し、次いで、室温に冷却した。溶媒を真空中で除去した。残渣を100mLのDCMに入れ、ブライン(100mL)で洗浄した。その有機相をNaSOで乾燥させ、濃縮して、Boc保護した化合物を灰白色固体(7g、94%)として得た。
【0263】
(調製9)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−アミノエチル)ピペリジン−4−イルエステル
【0264】
【化81】

調製8の生成物(7g、15.94mmol)を、DCM(80mL)に溶解させた。TFA(20mL)を室温でその溶液に添加し、17時間攪拌を続けた。その反応物を減圧下で濃縮し、残渣をDCM(100mL)に入れた。その溶液を、1N NaOH(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。その有機相をMgSO4で乾燥させ、濃縮して、表題の化合物を灰白色固体(4.66g、86%)として得た。
【0265】
(調製10)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(5−アミノペンチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル
【0266】
【化82】

調製9の生成物(1.5g、4.4mmol)をDMF(11mL)に溶解させた。その溶液に、DIPEA(2.29mL、13.2mmol)を添加し、その後、CDI(0.75g、4.65mmol)を添加した。その反応物を室温で2時間攪拌した後、それをN−Boc−1,5−ジアミノペンタン(1.34g、6.6mmol)で処理した。その混合物を50℃で4時間攪拌し、攪拌下で室温に冷却した。その反応物を、20mLのTFA/DCM(1:1)溶液で処理し、室温で17時間攪拌した後、それをDCM(100mL)に入れた。その混合物を、1N NaOH(100mL)で洗浄し、その後、ブライン(100mL)で洗浄した。その有機相をMgSO4で乾燥させ、濃縮した。2.09gの粗生成物を発泡性固体として得、さらなる精製なしに使用した。
【0267】
(実施例10)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
【0268】
【化83】

調製10の生成物(50mg、0.1mmol)およびDIPEA(35μL、0.2mmol)を、ACN(1mL)に溶解させた。その溶液に、4−ヒドロキシフェネチルクロリド(20mg、0.12mmol)を添加し、その後、NaI(触媒量)を添加した。その混合物を室温で一晩攪拌した後、それを濃縮した。その粗生成物を逆相HPLCによって精製して、7.3mgの表題の化合物をビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。MS m/z:[M+H] C3445についての計算値、588.4;実測値、588.4。
【0269】
(実施例11)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル
【0270】
【化84】

実施例10に記載される手順に従い、そして4−ヒドロキシフェネチルクロリドを4−メトキシ−ベンゼンスルホニルクロリドに置き換えて、表題に化合物を調製した。MS m/z:[M+H] C3343Sについての計算値、638.3;実測値、638.2。
【0271】
(実施例12)
【0272】
【化85】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(5−アミノペンチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル(50mg、0.1mmol;調製10に記載されるように調製した)および適切なアルデヒド(0.1mmol)(例えば、3−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンズアルデヒドを化合物12−1の合成のために使用した)を、MeOH(1mL)に溶解させた。その溶液を室温で30分間攪拌し、次いで、Na(OAc)BH(64mg、0.3mmol)を添加した。その反応物を室温で1時間攪拌した後、それを濃縮した。その粗生成物を、逆相HPLCによって精製して、以下の化合物をビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0273】
【化86】

(実施例13)
【0274】
【化88】

実施例10に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0275】
【化89】

(実施例14)
【0276】
【化90】

実施例10に記載される手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0277】
【化91】

(アッセイ1 放射性リガンド結合アッセイ)
(hM、hM、hMおよびhMムスカリン性レセプターサブタイプを発現する細胞からの膜調製)
クローン化ヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン性レセプターサブタイプをそれぞれ安定に発現するCHO細胞株を10%FBSおよび250μg/mLのGeneticinを加えたHAMのF−12からなる培地中でほぼコンフルーエンシーまで成長させた。この細胞を5%CO、37℃インキュベーター中で成長させ、dPBS中の2mM EDTAで浮き上がらせた。650×gで5分間遠心分離して細胞を集め、細胞ペレットを−80℃で凍結させて保存するか、または膜をすぐに調製した。膜調製について、細胞ペレットを溶解バッファーに再懸濁させ、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG;20秒×2回破裂させる)で均質にした。粗膜を4℃で40,000×gで15分間遠心分離した。膜ペレットを再懸濁バッファーに再懸濁させ、Polytron組織破壊器で再び均質にした。膜懸濁物のタンパク質濃度をLowry,O.et al.,Journal of Biochemistry 193:265(1951)に記載の方法によって決定した。全膜を−80℃のアリコートで凍結保存するか、またはすぐに使用した。調製したhMレセプター膜のアリコートをPerkin Elmerから直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0278】
(ムスカリン性レセプターサブタイプhM、hM、hM、hMおよびhMの放射性リガンド結合アッセイ)
96ウェルマイクロタイタープレート中で全アッセイ量100μLで放射性リガンド結合アッセイを行った。hM、hM、hM、hMおよびhMムスカリン性レセプターサブタイプのいずれかを安定に発現するCHO細胞膜を、以下の特定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)になるようにアッセイバッファーで希釈した:hM 10μg;hM 10〜15μg、hM 10〜20μg、hM 10〜20μg、およびhM 10〜12μg。Polytron組織破壊器で(10秒)膜を簡単に均質化した後、アッセイプレートに添加した。放射性リガンドのK値を決定する飽和結合試験をL−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech、Buckinghamshire、England)を0.001nM〜20nMの濃度範囲で用いて行った。試験化合物のK値を決定するための交換アッセイを[H]−NMSを1nMの濃度で用いて11個の異なる試験化合物濃度で行った。試験化合物を希釈バッファーに400μMの濃度になるように希釈し、最終濃度が10pM〜100μMの範囲になるまで希釈バッファーで順次5倍希釈した。アッセイプレートへの添加順序および体積は以下のとおりであった:放射性リガンド25μL、希釈した試験化合物25μL、および膜50μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートした。1%BSAで前処理したGF/Bガラスファイバーろ過プレート(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で迅速にろ過して結合反応を終了させた。ろ過プレートを洗浄バッファー(10mM HEPES)で3回洗浄して結合していない放射能活性を除去した。プレートを風乾し、Microscint−20液体シンチレーション液(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)50μLを各ウェルに添加した。次いで、プレートをPerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で計測した。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析した。観察されたIC50値から試験化合物のK値を計算し、Cheng−Prusoff式(Cheng Y; Prusoff W. H. Biochemical Pharmacology 22(23):3099−108(1973))を用いて放射性リガンドのK値を計算した。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定した。この統計結果をK値に戻し、データを報告した。
【0279】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターに高い結合アフィニティーを有することを示す。例えば、実施例1の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験した場合、Mムスカリン性レセプターサブタイプについて約5nM未満のK値を有することがわかっている。
【0280】
(アッセイ2 ムスカリン性レセプター機能効力アッセイ)
(cAMP蓄積のアゴニストによって媒介される阻害の阻止)
このアッセイでは、試験化合物がhMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力を測定することによって試験化合物の機能効力を決定する。125I−cAMP(NEN SMP004B,PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston,MA)を用いてFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを製造業者の指示に従って用いて、放射性免疫アッセイ形態でcAMPアッセイを行う。
【0281】
細胞培養および膜調製の節で上に記載されるように、細胞をdPBSで1回洗い、Trypsin−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mM EDTA)で浮き上がらせた。dPBS 50mL中で650×gで5分間遠心分離して、分離した細胞を2回洗浄する。細胞ペレットをdPBS 10mLに再懸濁させ、細胞をCoulter Z1 Dual Particle Counter(Beckman Coulter,Fullerton,CA)で計測した。細胞を650×gで5分間再び遠心分離して、1.6×10〜2.8×10細胞/mLのアッセイ濃度になるように刺激バッファーに再懸濁させる。試験化合物を希釈バッファー(1mg/mL BSA(0.1%)を加えたdPBS)に400μMの濃度になるように最初に溶解し、最終モル濃度が100μM〜0.1nMの範囲になるまで希釈バッファーで順次希釈する。オキソトレモリンを類似の様式で希釈する。
【0282】
アデニリルシクラーゼ(AC)活性のオキソトレモリンによる阻害を測定するために、ホルスコリン25μL(dPBSで最終濃度25μMまで希釈)、希釈したオキソトレモリン25μL、および細胞50μLをアゴニストアッセイウェルに添加する。試験化合物がオキソトレモリンによって阻害されるAC活性を阻止する能力を測定するために、ホルスコリン25μLおよびオキソトレモリン(dPBSでそれぞれ最終濃度25μMおよび5μMまで希釈)、希釈した試験化合物25μL、および細胞50μLを残りのアッセイウェルに添加する。反応物を37℃で10分間インキュベートし、100μLの氷冷検出バッファーを添加することによって反応を停止させる。プレートを密閉し、室温で一晩インキュベートし、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で次の朝に計測する。各サンプルの計測結果およびcAMP標準に基づいて、製造業者のユーザーマニュアルに記載されるように産生したcAMPの量(pmol/ウェル)を計算する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定する。この統計結果をK値に戻し、データを報告する。
【0283】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0284】
(アゴニストによって媒介される[35S]GTPγS結合の阻止)
第2の機能アッセイでは、試験化合物がhMレセプターを発現するCHO−K1細胞でオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力を測定することによって、試験化合物の機能効力を決定することができる。
【0285】
使用時に、凍結膜を解凍し、最終標的組織濃度が5〜10μgタンパク質/ウェルになるようにアッセイバッファーで希釈する。Polytron PT−2100組織破壊器で膜を均質にし、アッセイプレートに添加する。アゴニストオキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激についてEC90値(最大応答の90%となるのに有効な濃度)を各実験で決定する。
【0286】
試験化合物がオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻害する能力を決定するために、96ウェルの各ウェルに以下のものを添加する:[35S]GTPγS(0.4M)を含むアッセイバッファー25μL、オキソトレモリン(EC90)25μLおよびGDP(3μM)、希釈した試験化合物25μLおよびhMレセプターを発現するCHO細胞膜25μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートする。PerkinElmer 96ウェル収集器を用いてアッセイプレートを1% BSAで前処理したGF/Bフィルターでろ過する。プレートを氷冷洗浄バッファーで3×3秒洗い、風乾または減圧乾燥する。Microscint−20シンチレーション液体(50μL)を各ウェルに添加し、各プレートを密閉し、トップカウンター(PerkinElmer)で放射能活性を計測する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。
【0287】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0288】
(FLIPRアッセイを用いたアゴニストによって媒介されるカルシウム放出の阻止)
Gqタンパク質にカップリングするムスカリン性レセプターサブタイプ(M、MおよびMレセプター)は、レセプターにアゴニストが結合する際にホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。結果として、活性化されたPLCは、ホスファチルイノシトールジホスフェート(PIP)を加水分解してジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジル−1,4,5−トリホスフェート(IP)にし、細胞内貯蔵庫(すなわち、小胞体および筋小胞体)からカルシウムが放出される。FLIPR(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)アッセイは、細胞内のカルシウム増加を利用して、遊離カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム感受性染料(Fluo−4AM、Molecular Probes,Eugene,OR)を用いる。この蛍光はFLIPRによってリアルタイムで測定され、ヒトMおよびMおよびチンパンジーMレセプターでクローン化した細胞の単一層からの蛍光変化を検出する。アンタゴニストの効力は、アゴニストによって媒介される細胞内でのカルシウム増加を阻害する能力によって決定される。
【0289】
FLIPRカルシウム刺激アッセイでは、hM、hMおよびcMレセプターを安定に発現するCHO細胞をアッセイ前日に96ウェルFLIPRプレートに接種する。接種した細胞をCellwash(MTX Labsystems,Inc.)でFLIPRバッファー(Hank緩衝化塩溶液(HBSS)中の10mM HEPES、pH7.4、2mM 塩化カルシウム、2.5mM プロベネシド、カルシウムおよびマグネシウムは含まない)を用いて2回洗浄して成長培地を除去し、FLIPRバッファー50μL/ウェルを残す。50μL/ウェルの4μM FLUO−4AM(2倍溶液を作製)とともに37℃で40分間、5%二酸化炭素中で細胞をインキュベートする。染料インキュベーション後、細胞をFLIPRバッファーで2回洗浄し、最終体積を50μL/ウェルにする。
【0290】
アンタゴニスト効力を決定するために、オキソトレモリンによる用量依存性の細胞内Ca2+放出の刺激を最初に決定し、その後にアンタゴニスト効力がEC90濃度でオキソトレモリン刺激に対して測定される。まず、細胞を化合物希釈バッファーを用いて20分間インキュベートし、その後にアゴニストを添加し、FLIPRを行う。オキソトレモリンのEC90値は、以下のFLIPR測定およびデータ変形の章で説明される方法に従って式EC=((F/100−F)^1/H)*EC50と組み合わせて与えられる。3×EC濃度のオキソトレモリンは、刺激プレート中で調製し、EC90濃度のオキソトレモリンをアンタゴニスト阻害アッセイプレートの各ウェルに添加する。
【0291】
FLIPRで使用されるパラメーターは以下のものである:露光長0.4秒、レーザー強度0.5ワット、励起波長488nm、および発光波長550nm。アゴニストを添加する10秒前の蛍光変化を測定することによってベースラインを決定する。アゴニスト刺激の後に、FLIPRによって1.5分間、0.5〜1秒ごとに連続して蛍光変化を測定して、最大蛍光変化点を探す。蛍光変化は、それぞれのウェルについて最大蛍光−ベースライン蛍光であらわされる。生データを薬物濃度の対数に対してGraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いてシグモイド型用量応答のビルトインモデルを用いて非線形で分析する。Cheng−Prusoff式(Cheng & Prusoff,1973)に従ってKおよびオキソトレモリンEC90と同様にアンタゴニストK値をPrismによってオキソトレモリンEC50値を用いて決定する。
【0292】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを安定に発現するCHO細胞でアゴニストによって媒介されるカルシウム放出を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0293】
(アッセイ3 アセチルコリンによって誘発される気管支収縮のモルモットモデルの気管支保護の持続時間の決定)
このインビボアッセイを使用してムスカリン性レセプターアンタゴニスト活性を示す試験化合物の気管支保護効果を評価する。250〜350g体重の6匹の雄モルモット群(Duncan−Hartley (HsdPoc:DH)Harlan,Madison,WI)をケージカードで個々を区別する。試験中、動物は餌および水を自由に摂取できる状態にある。
【0294】
全身露出投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で 試験化合物を吸入によって10分間かけて投与する。エアロゾルが中央マニホルドから6個の個々のチャンバに同時に送達されるように投薬チャンバを整列させる。モルモットに試験化合物またはビヒクル(WFI)のエアロゾルを与える。これらのエアロゾルはLC Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)を用いた水溶液から作られており、混合ガス(CO=5%、O=21%およびN=74%)を用いて圧力22psiで噴射される。この操作圧で噴霧器を通るガス流は、約3L/分である。発生したエアロゾルは加圧によってチャンバに運ばれる。エアロゾル化した溶液を送達する間、希釈空気は使用しない。10分間の噴霧中に溶液約1.8mLが噴霧される。この量は、充填された噴霧器の噴霧前と噴霧後の重量を比較することによって重量測定法で測定される。
【0295】
吸入によって投与された試験化合物の気管支保護効果を、投薬1.5時間後、24時間後、48時間後および72時間後に全身プレチスモグラフィーで評価する。肺の評価を開始する45分前に、各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を筋肉内注射して麻酔する。手術部位の毛を剃り、70%アルコールで洗浄した後、首の腹部を2〜3cm正中線切開する。次いで、頚部静脈を分離し、生理食塩水を満たしたポリエチレンカテーテル(PE−50,Becton Dickinson,Sparks,MD)を通し、生理食塩水中のACh(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を静脈に注入する。気管を解剖し、14Gテフロン(登録商標)管(#NE−014,Small Parts,Miami Lakes,FL)を通す。必要な場合、上述の麻酔薬混合物をさらに筋肉内注射して麻酔を維持する。麻酔の深さをモニタリングし、動物の挟んでいる足が反応したり、または呼吸速度が100呼吸/分を超えたら麻酔を調整する。
【0296】
挿管が終わったら、動物をプレチスモグラフ(#PLY3114,Buxco Electronics,Inc.,Sharon,CT)に置き、食道加圧カニューレ(PE−160,Becton Dickinson,Sparks,MD)を挿入して肺駆動圧(圧力)を測定する。テフロン(登録商標)製気管チューブをプレチスモグラフの開口部に取り付け、モルモットがチャンバの外から空気を吸えるようにする。チャンバを密閉する。加熱ランプを使用して体温を維持し、10mLのキャリブレーションシリンジ(#5520 Series,Hans Rudolph,Kansas City,MO)を用いてモルモットの肺を空気4mLで3回ふくらませ、下気道が崩壊しないように、動物が過呼吸にならないようにする。
【0297】
コンプライアンスのベースライン値が0.3〜0.9mL/cmHOの範囲内にあることを確認し、抵抗のベースラインが1秒あたり0.1〜0.199cmHO/mLの範囲内にあることを確認したら、肺の評価を開始する。Buxco肺測定コンピュータプログラムによって、肺の値を集め、導出することができる。
【0298】
このプログラムを開始して実験プロトコルを開始し、データを集める。呼吸時にプレチスモグラフ内で起こる時間経過にともなう体積変化をBuxco圧力トランスデューサで測定する。このシグナルを時間で積分して、呼吸ごとの流量測定値を計算する。このシグナルと、肺の駆動圧の変化とをSensym圧力トランスデューサ(#TRD4100)で集め、Buxco(MAX2270)プリアンプをデータ収集インターフェース(# SFT3400およびSFT3813)に接続する。他のすべての肺パラメーターを2つの入力から入れる。
【0299】
ベースライン値を5分間集め、その後、モルモットをAChでチャレンジする。ACh(0.1mg/mL)をシリンジポンプ(sp210iw,World Precision Instruments,Inc.,Sarasota,FL)から以下の投薬量および実験開始からの時間で、1分間静脈吸入する:5分に1.9μg/分、10分に3.8μg/分、15分に7.5μg/分、20分に15.0μg/分、25分に30μg/分、および30分に60μg/分。抵抗またはコンプライアンスが各ACh投薬3分後にベースラインに戻らない場合、モルモットの肺を10mLキャリブレーションシリンジで空気4mLで3回ふくらませる。記録した肺パラメーターは、呼吸頻度(呼吸/分)、コンプライアンス(mL/cmHO)および肺抵抗(1秒あたりのcmHO/mL)を含む。肺機能の測定がこのプロトコルで35分に終了したら、モルモットをプレチスモグラフからはずし、二酸化炭素で窒息させて安楽死させる。
【0300】
データを以下の様式のうち1つまたは両方で評価する:
(a)肺抵抗(R,1秒あたりのcmHO/mL)を「圧力変化」対「流量の変化」の比から計算する。RはACh(60μg/分、IH)に応答し、ビヒクルおよび試験化合物群で算出される。各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の平均ACh応答を計算し、各前処置時間で、試験化合物の各投薬量でのAch応答の阻害率%を算出するために使用する。「R」についての阻害用量−応答曲線をGraphPad Prism,バージョン3.00(for Windows(登録商標))(GraphPad Software,San Diego,California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、気管支保護ID50(ACh(60μg/分)での気管支収縮応答が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
【0301】
【化92】

式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(AChの阻害がRの増加を誘発する割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0302】
(b)PD量(肺抵抗のベースラインを2倍にするのに必要なAChまたはヒスタミンの量として定義)を流量から誘導される肺抵抗値から計算し、AChまたはヒスタミンのチャレンジを行っている間の圧力を以下の式を用いて計算する(American Thoracic SocietyのGuidelines for methacholine and exercise challenge testing −1999.Am J Respir Crit Care Med. 161:309−329 (2000)):に記載されるPC20値を計算するために使用する式から誘導される:
【0303】
【化93】

式中、CはCに進むAChまたはヒスタミンの濃度であり、Cは肺抵抗(R)を少なくとも2倍に増加させるAChまたはヒスタミンの濃度であり、RはベースラインR値であり、RはC後のR値であり、RはC後のR値である。有効な投薬量は、ACh50μg/mL投薬に対する気管支収縮を肺抵抗ベースラインの2倍(PD2(50))までに制限する用量であると定義される。
【0304】
両側Students t検定を用いてデータの統計分析を行う。P値<0.05で有意であるとみなされる。一般的に、このアッセイでAChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、AChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有すると予想される。
【0305】
(アッセイ4 吸入モルモット唾液分泌アッセイ)
200〜350g体重のモルモット(Charles River,Wilmington,MA)をインハウスモルモットコロニーに到着後少なくとも3日間順応させる。試験化合物またはビヒクルをパイ型投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で吸入(IH)によって10分間投薬する。試験溶液を滅菌水に溶解し、投薬溶液5.0mLを満たした噴霧器を用いて送達する。モルモットを吸入チャンバに30分間拘束する。この時間中、モルモットは約110平方センチメートルの面積に制限される。この空間は動物が自由に向きを変え、位置を変え、身づくろいをするのに十分な大きさである。順応させて20分後、LS Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)から22psiの圧力の空気によってエアロゾルを作製してモルモットに与える。噴霧が終わったら、モルモットを処置1.5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、または72時間後に評価する。
【0306】
モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を0.88mL/kgの体積で筋肉内(IM)注射による試験の1時間前に麻酔する。加温した(37℃)毛布に動物の腹側が接するように置き、下向きの傾斜に頭が20°の角度になるように置く。4層の2×2インチゲージパッド(Nu−Gauze General−use sponges,Johnson and Johnson,Arlington,TX)をモルモットの口に挿入する。5分後、ムスカリンアゴニストピロカルピン(3.0mg/kg,SC)を投与し、ゲージパッドをすぐに取り出し、新しい計量済みのゲージパッドと交換する。唾液を10分間集め、この時点でゲージパッドを秤量し、記録した重量差から集めた唾液の量(mg)を決定する。ビヒクルおよび各用量の試験化合物を投与した動物について集めた唾液の平均量を計算する。ビヒクル群の平均が唾液100%であるとする。結果の平均値を用いて結果を計算する(n=3以上)。信頼区間(95%)を両側ANOVAを用いて時間点ごと、用量ごとに計算する。このモデルはRechterの「Estimation of anticholinergic drug effects in mice by antagonism against pilocarpine−induced salivation」Ata Pharmacol Toxicol 24:243−254 (1996)に記載される手順の改変である。
【0307】
各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の唾液の平均重量を計算し、対応する前処置時間、各用量での唾液の阻害割合%を算出する。阻害用量−応答データをGraphPad Prism,バージョン3.00(Windows(登録商標)用)(GraphPad Software,San Diego,California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、抗唾液分泌促進薬ID50(ピロカルビンによって誘発される唾液分泌が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
【0308】
【化94】

式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(唾液分泌の阻害割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0309】
抗唾液分泌促進薬ID50対気管支保護ID50の比率を使用して試験化合物の見かけの肺選択性指数を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0310】
(アッセイ5 意識のあるモルモットでのメタコリンで誘発される降圧応答)
200〜300g体重の健康な雄の成体Sprague−Dawleyモルモット(Harlan,Indianapolis,IN)をこの試験に使用する。イソフルランで麻酔し、動物に一般的な頚動脈および頚部カテーテル(PE−50管)を取り付ける。カテーテルを皮下の穴を利用して肩甲下に露出させる。すべての手術による切開部を4−0 Ethicon Silkで縫い合わせ、カテーテルをヘパリン(1000単位/mL)で保護する。それぞれの動物に手術後に生理食塩水(3mL、SC)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg,IM)を投与する。それぞれの保持室に戻すまでは動物を加温パッドに戻しておく。
【0311】
手術の約18〜20時間後、動物の体重を測り、それぞれの動物の頚動脈カテーテルをトランスデューサに接続して動脈圧を記録する。動脈圧および心臓の脈拍をBiopac MP−100 Acquisition Systemを用いて記録する。動物を20分間順応させ、安定化させる。
【0312】
それぞれの動物に頚部静脈からMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、心臓血管の応答を10分間モニタリングする。動物を全身投薬チャンバに入れ、試験化合物またはビヒクル溶液を含有する噴霧器に接続する。呼吸可能な空気および5%二酸化炭素の混合ガスを用いて3L/分の流速でこの溶液を10分間噴霧する。この動物を全身チャンバから出し、それぞれのカゴに戻す。投薬1.5時間後および24時間後に、この動物に再びMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、血流応答を決定する。その後、この動物をナトリウムペントバルビタール(150mg/kg,IV)で安楽死させる。
【0313】
MChによって平均動脈圧(MAP)が減少し、心臓の脈拍が減少する(徐脈)。MAPのピークがベースラインよりも下にあること(低下応答)が各MCh投与時(IH投薬前および投薬後)に測定される。MCh応答に対する処置効果をコントロール低下応答の阻害率(平均±SEM)%であらわす。適切な試験の両側ANOVAを使用して処置時間および前処置時間の効果を試験する。MChに対する低下応答は、ビヒクルを吸入投薬した場合には1.5時間後および24時間後で相対的に変化しないと予想される。
【0314】
抗低下ID50 対気管支保護ID50の比率を使用して、試験化合物の見かけの肺選択性を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで測定した場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0315】
本発明が特定の局面または実施形態を参照して記載されたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更をほどこすことが可能であり、または交換することが可能であることが当業者には理解される。さらに、適用可能な特許の状態および規制で許される限り、本明細書に引用される特許および特許明細書は、まるで各文献が本明細書に参考として個々に組み込まれているかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0316】
本発明の種々の局面は、添付の図面を参照することによって説明される。
【図1】図1は、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステルの結晶性モノプロピオン酸塩の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
【図2】図2は、図1の結晶性塩についての示差走査熱量測定(DSC)トレースおよび熱重量分析(TGA)を示す。
【図3】図3は、図1の結晶性塩の顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体であって、
aは、0または1〜5の整数であり、
各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから独立して選択され;ここで、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1j、およびR1kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
bは0または1〜4の整数であり;
各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから独立して選択され;ここで、R2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2j、およびR2kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
Wは、OまたはNWを表し、ここで、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり;
cは、0または1〜5の整数であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルを表すか、あるいは2つのR基は、結合して(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
dおよびfは、独立して、0または1〜10の整数であり、ただし、2つの窒素原子間の最も短い鎖中の連続する原子の数は、7〜17の範囲であり;
Qは、以下:
【化2】

から選択され、
ここで、RQaおよびRQbは、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから選択されるか、あるいは一緒になって、(2〜4C)アルキレンまたは(2〜3C)アルケニレンを形成し;
Yは、
【化3】

から選択され、
ここで、
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンC(O)OR4a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンX、−(1〜4C)アルキレンC(O)X’、−C(O)(1〜4C)アルキレンX’、および−S(O)(1〜4C)アルキレンX’から選択され;ここで、Xは、−NR4b4cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基であり;X’は、−NR4d4eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基であり;R4aは、水素または(1〜4C)アルキルであり;R4b、R4c、R4dおよびR4eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、またはヒドロキシフェニルを表し、そしてここで、(1〜4C)アルキルは、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから独立して選択され;該ヘテロシクリルは、1もしくは2個の窒素原子を含み、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR4f4gおよび−C(O)NR4h4iから独立して選択され、ここで、R4f、R4g4hおよびR4iの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表し;そして該ヘテロアリールは、1もしくは2個の窒素原子を含み;
Zは、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択され;ここで、任意のZにおける該アルキレン基は、1もしくは2個の置換基で必要に応じて置換され、該置換基は、(1〜4C)アルキルおよび−NRZaZbから独立して選択され;ここで、RZaおよびRZbは、水素および(1〜4アルキル)から独立して選択され;
pは0、1または2であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR5a、−C(O)OR5b、−SR5c、−S(O)R5d、−S(O)5eまたは−NR5f5gを表し;R5a、R5b、R5c、R5d、R5e、R5fおよびR5gの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、ここで、各フェニル基は、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基によって置換され、該置換基は、ハロ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから独立して選択され;そして
は、水素、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR6a6b、およびフェニルから選択され、R6aおよびR6bの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRは、Rと一緒になって、1〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここで、該環は、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基によって置換され;
qは、0または1〜3の整数であり;
rは、0または1〜4の整数であり;
各Rは、独立して、フルオロまたは(1〜4C)アルキルを表し;
は、水素、−OH、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR8a8b、−C(O)NR8a8b、および−CHC(O)NR8a8bから選択され、ここで、R8aおよびR8bは、水素、(1〜4C)アルキル、ヒドロキシ、(1〜4C)アルコキシ、(1〜4C)アルキレンOR8c、(3〜6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1〜4C)アルキレンC(O)NR8d8eから独立して選択され、ここで該(3〜6C)シクロアルキルは、非置換であるかまたは1もしくは2個の(1〜6C)アルキルまたは−NR8d8e基で置換され、そしてここで、R8c、R8dおよびR8eの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはR8aは、R8bと一緒になって、3〜7員の環を形成し、該環は、ヒドロキシで必要に応じて置換され;
は、水素、(1〜4C)アルキル、および−(1〜4C)アルキレンOHから選択され;そして
10は、(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、(3〜6C)シクロアルキル、−(1〜4C)アルキレン(3〜6C)シクロアルキル、および−(1〜4C)アルキレンC(O)NR10a10bから選択され、ここで、R10aおよびR10bは、独立して、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRおよびR10は、一緒になって、ピペラジノン、モルホリン、およびピペラジンから選択される環を形成し;そして該ピペラジンは、(R10cで置換され、ここで、wは、0または1〜3の整数であり、各R10cは、(1〜4C)アルキル、フェニルまたはベンジルから独立して選択され、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換されるか、あるいは2つのR10c基は、結合して、(1〜3C)アルキレンを形成し;
ここで、R、R1a〜1k、R、R2a〜2k、R、R、R5a〜5g、R、R6a〜e、およびR8a−eにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される、
化合物。
【請求項2】
a、bおよびcが各々0を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがOを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
dが0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
fが0、1または3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Qが、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
QaおよびRQbが、水素およびメチルから独立して選択され;dが0であり;そしてfが0、1または3である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
QaおよびRQbが、一緒になってエチレンを形成し;そしてdおよびeが両方とも1である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
Qが、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
dおよびeが両方とも1である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Yが、
【化6】

である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
が水素であり;Zが(1〜3C)アルキレンおよび−SO−から選択され;pが0であるか、またはpが1でありかつRが−OR5aであり、ここでR5aが、(1〜4C)アルキルおよび(3〜6C)シクロアルキルから選択され;そしてRが、水素、(1〜4C)アルキル、および(1〜4C)アルキレンNR6a6bから選択され、ここで、R6aおよびR6bの各々が、(1〜4C)アルキルであるか、あるいはRがRと一緒になって、2個の酸素原子を有する環を形成する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Yが、
【化7】

である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
qが1または2であり;rが0であり;そしてRが水素、−OH、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR8a8b、および−C(O)NR8a8bから選択され、ここでR8aおよびR8bが水素および(1〜4C)アルキルから独立して選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yが−NR10である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
が、水素、(1〜4C)アルキル、および−(1〜4C)アルキレンOHから選択され;そしてR10(1〜4C)アルキルおよび−(1〜4C)アルキレンOHから選択されるか;あるいはRおよびR10が一緒になって、ピペラジノン環を形成する、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
a、b、およびcが0であり;WがOを表し;dおよびfが1であり;Qが、
【化8】

であり、
ここで、RQaおよびRQbが一緒になってエチレンを形成し;そしてYが、
【化9】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
が水素であり、そしてZが(1〜3C)アルキレンである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
pが0であるか、またはpが1でありかつRが−OR5aであり、ここで、R5aが(1〜4C)アルキルおよび(3〜6C)シクロアルキルから選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
が、水素、(1〜4C)アルキル、および(1〜4C)アルキレンNR6a6bから選択され、ここで、R6aおよびR6bの各々が、(1〜4C)アルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
以下の式:
【化10】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
以下:
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−カルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ジエチルカルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ジエチルアミノピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−[3−(3−{3−[2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((S)−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((S)−2−ジメチルカルバモイルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((R)−2−カルバモイルピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[4−(2−ヒドロキシ−エチル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((R)−3−ジメチルアミノピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[2−オキソ−3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)イミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イル]プロピル}−2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[3−(3−メチルアミノプロピル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−(3−{3−[3−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−プロピル]−2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル}−プロピル)−ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[エチル−(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(3−{3−[(1R,4R)−5−(3−フルオロフェニル)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル]−プロピル}−2−オキソイミダゾリジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((1S,4S)−5−メチル−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−((1R,4R)−5−ベンジル−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[3−(4−{3−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]プロピル}−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル)プロピル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−カルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソ−ピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(3−ジエチルカルバモイルピペリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[2,5−ジオキソ−4−(3−ピロリジン−1−イル−プロピル)ピペラジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{3−[4−(3−メチルアミノプロピル)−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル]プロピル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{4−[3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)プロピル]−2,5−ジオキソピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{2,5−ジオキソ−4−[3−(3−オキソピペラジン−1−イル)プロピル]ピペラジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{3−[5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチル]ウレイド}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(3−{5−[(ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イルメチル)アミノ]ペンチル}ウレイド)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[1−メチル−3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(3−ピロリジン−1−イルプロピル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(2−ピペリジン−1−イルエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[1−メチル−3−(2−ピペリジン−1−イルエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−(5−イソブチルアミノペンチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[3−メチル−3−(2−メチルアミノエチル)ウレイド]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
から選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物。
【請求項23】
前記化合物が、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(3−{3−[3−(4−ヒドロキシベンジルアミノ)プロピル]−2−オキソイミダゾリジン−1−イル}プロピル)ピペリジン−4−イルエステルであり、前記薬学的に受容可能な塩が、結晶性モノプロピオン酸塩である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト、ステロイド性抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ−4インヒビター、およびそれらの組み合わせから選択される治療有効量の因子をさらに含み;ここで、前記化合物および該因子が、一緒にまたは別々に処方される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
治療有効量のβアドレナリン作用性レセプターアゴニストおよびステロイド性抗炎症剤を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)式IIの化合物:
【化11】

またはその塩を、式IIIの化合物:
【化12】

と反応させる工程であって、
ここで、Lは脱離基を表す、工程;あるいは
(b)Qが
【化13】

であり、かつRQaおよびRQbが水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜6C)シクロアルキルから独立して選択される化合物について、式IVの化合物:
【化14】

と、式Vの化合物:
【化15】

とをカップリングする工程;あるいは
(c)式VIaの化合物:
【化16】

を、式VIIaの化合物:
【化17】

と反応させる工程、または
式VIbの化合物
【化18】

を、式VIIbの化合物:
【化19】

と、または式VIIcの化合物:
【化20】

と反応させる工程であって、
ここで、Lは脱離基を表し;そしてPは水素原子またはヒドロキシル保護基を表す、工程;あるいは
(d)式IIの化合物を、式VIIIの化合物:
【化21】

と、還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IXの化合物:
【化22】

を、式Xの化合物:
【化23】

と、または式VIIbもしくはVIIcの化合物と、還元剤の存在下で反応させる工程;次いで、
(f)存在し得る任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程
を包含する、プロセス。
【請求項28】
前記プロセスが、請求項1に記載の化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程をさらに包含する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
請求項27または28に記載のプロセスによって調製される生成物。
【請求項30】
ムスカリン性レセプターを含む生物学的系またはサンプルを研究する方法であって、(a)該生物学的系またはサンプルを、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程;および(b)該生物学的系またはサンプルにおいて該化合物によって引き起こされる効果を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項31】
治療において使用するため、または医薬としての、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
医薬の製造のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項33】
前記医薬が、哺乳動物においてムスカリン性レセプターをアンタゴナイズするためのものである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬が、肺障害の処置のためのものである、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記医薬が、気管支拡張を生じるためのものである、請求項32に記載の使用。
【請求項36】
前記医薬が、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置するためのものである、請求項32に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−537931(P2008−537931A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500907(P2008−500907)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/008392
【国際公開番号】WO2006/099031
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】