説明

メキノール及びアダパレンを含む水性−アルコールの脱色性ゲル

本発明は、メキノール及びアダパレンを含み、任意選択で日焼け止め剤を含んでいてよい、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリーム形態の、美容又は医薬適用のための脱色性組成物、その製造方法、並びに化粧品及び皮膚科学でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に、メキノール(4−ヒドロキシアニソール)と、特に分散形態である、アダパレン(6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸)とを含み、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームの形態である、美容又は医薬に適用するための脱色性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着過剰(hyperpigmentation)の治療に推奨されている治療薬のうち、メキノール及びその誘導体などのフェノール誘導体が、数十年間にわたり、最も有効な活性成分(actives)の1つであった。
【0003】
しかし、フェノール誘導体は、酸化及び熱に感受性であることが知られており、そのために製剤はすぐに褐色に変わり、時に相分離が生じることさえあり得る。
【0004】
さらに、アダパレンは水への溶解性が低いので、製剤組成物中に分散されなければならず、それ故、この活性生成物の潜在的沈殿が、製剤にこれを含めなければならない場合に直面する主要な問題である。従って、この生成物を懸濁液中に保ち、かつ流れ出ないために、いくらか粘性を有するが同時に十分に流動的であって、懸濁液中にアダパレンを含む製剤を得ることは難しい。
【0005】
本発明では、アダパレンは、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリーム形態により、及び沈殿の問題を克服するためのカルボマーゲル及び界面活性湿潤剤(surface−active wetting agent)の使用により、首尾よく懸濁化されている。
【0006】
従来技術において、亜硫酸塩が、製剤が褐色に変わる問題を低減させるために、通常用いられている。しかし、亜硫酸塩は、電解質に感受性のある製剤の粘性を変化させ得る。
【0007】
特に、亜硫酸塩は、カルボマーゲルを壊すことが知られており、これにより、ゲル化剤の粘性増加力の低下が導かれ、その結果、活性成分の沈殿がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、物理的に安定(相分離せず、粘性の顕著な低下も生じない)であり、化学的に安定(活性成分の安定性を変えない)であり、かつアダパレン及びメキノールの皮膚への浸透を最適化する配合を用いた、メキノール及びアダパレンを含む局所医薬組成物が必要である
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本出願人は、本出願に記載のとおりの賦形剤を含む、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリーム形態の製剤が、活性化合物の物理的及び化学的安定性に関して良好な結果をもたらすことを実証した。また、安定性、特に温度及び酸化への耐性、有効性、安全性、並びに美容的な質(cosmetic quality)の間の優れた折衷案も提供する。
【0010】
実際に、この組成物及び特に2〜10%のアルコールの存在により、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームは、組成物及びその構成成分が安全であることに加えて、安定であることを確保する。
【0011】
さらに、以下の実施例に示されている、製剤の安定性のモニタリングにより、活性化合物と亜硫酸塩、特にメタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムとを組み合わせることで、EDTA及びアルコール(エタノール)がメキノールの褐変を大幅に減少させることが示されている。サルファイトが存在しない場合には、55℃で1ヶ月貯蔵後に褐変が観察され、上記化合物の全てが存在しない場合には、55℃でほんの数日後に褐変が生じる。
【0012】
アダパレンの懸濁のためのものであって、亜硫酸塩の影響を受ける、カルボマーの粘性増加力の低下の問題に対する解決策は、他のゲル化剤を製剤に添加することにある。
【0013】
選択されるゲル化剤(1種以上)は、単独又は組み合わせ物として、以下の特性を有さなければならない:
− 容器を逆にした場合に最終製造物が流れ出ないように、十分な固さ(stiffness)を有する水性ゲルを形成するための、水相のゲル化;
− アダパレンを懸濁液中に保つのに十分な粘性の提供;
− 電解質に低感受性を有すること、すなわち、電解質の存在下、そのゲル化特性を低下させないこと;
− 経時的に、又は様々な貯蔵温度(4℃〜室温[RT]〜40℃)で崩壊しないこと。
【0014】
以下の実施例で得られる製剤は、ゲル化剤により形成されるネットワークに助けられ、かつ界面活性湿潤剤の添加に助けられて、アダパレンが容易に分散し、その分散が長期にわたって均質なままであることを示している。
【0015】
特に本発明による組成物の活性相の安定性により、製造物の有効性がとりわけ説明される。
【0016】
本出願人はまた、メキノールの脱色作用が、組成物中のアダパレンの存在により相乗的に増加することも実証した。従って、実施例に示されている結果により、この組み合わせが、より急速で、より効果的な脱色効果を有利に生じさせることが示されている。
【0017】
本出願人はまた、本発明の組成物の製造方法も開発した。
【0018】
従って、本発明は、生理学的に許容可能な媒体中にメキノールとアダパレンとを含み、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームであることを特徴とする、脱色性組成物に関する。
【0019】
「生理学的に許容可能な媒体」とは、皮膚、粘膜、及び/又は皮膚付属器に適合する媒体を意味する。
【0020】
「脱色性組成物」とは、皮膚の脱色活性を有する少なくとも1種の活性剤を含む、任意の組成物を意味する。この活性は、皮膚の既存の色素沈着を低減させることを可能にする。
【0021】
「水性−アルコールのゲル」とは、アルコール、水、及び少なくとも1種のゲル化剤を含む水性ゲルを意味する。
【0022】
「水性−アルコールのゲル−クリーム」とは、水相、少ない割合(0〜20%、好ましくは10%)の油相、及びアルコールを含み、ここで前記水相が、油滴を捕捉しそれらを懸濁液中に保つネットワークを形成できるゲル化剤を含んでいる、水性ゲルを意味する。
【0023】
水性−アルコールのゲル−クリームは、ゲルの利点(適用の容易性、活性成分の急速な放出、適用時の清涼感[freshness])と、クリームの利点(油相が少ない割合であることによる皮膚の快適性、皮膚の非乾燥)とを組み合わせた製剤である。
【0024】
本発明の組成物は、好ましくは2〜10%、より好ましくは5%のアルコールを含む。
【0025】
アルコールのうち、非限定的な例として、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールを挙げることができる。エタノールがとりわけ好ましい。
【0026】
有利には、本発明の組成物はまた、キレート剤、界面活性湿潤剤、及び1種以上のゲル化剤も含む。
【0027】
本発明の組成物はまた、1つ以上の以下の成分も含む:
a)カルボマー;
b)1種以上の他のゲル化剤;
c)抗酸化剤;
d)油相;
e)保湿剤(moisturizer)/皮膚軟化剤(emollient);
f)抗刺激剤;
g)pH中和剤;
h)保存料。
【0028】
好ましくは、本発明の水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームは、カルボマーと1種以上の他のゲル化剤とを含むか、又は前記カルボマーと1種以上の他のカルボマーとを含む。実際に、既述のとおり、これらの化合物は、アダパレンを懸濁液中に保ちながら、適した粘性を有する組成物を提供する。
【0029】
カルボマー及び他の可能性のあるゲル化剤のうち、非限定的な例として以下を挙げることができる:BF Goodrich社からCarbopol 1382の商品名で市販されているカルボマー1382、又はBF Goodrich社からPemulen TR1の商品名で市販されているアクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートクロスポリマー、Kelco社から市販のKeltrol Tなどのキサンタンガム、カルボポール(carbopol)980、カルボポール981、カルボポールUltrez 10、カルボポールEDT2020、カルボポール974、Aqualon社からNatrosol HHX 250の商品名で市販されているものなどのヒドロキシプロピルセルロース、並びにSeppic社からSimulgel 600の商品名で市販されている、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー及びイソヘキサデカン及びポリソルベート80。
【0030】
ゲル化剤のうち、好ましくは、カルボマー/アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートクロスポリマーとキサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースとの組み合わせ物、あるいはまた、カルボマー1382とキサンタンガム及びカルボマー981との組み合わせ物を挙げることができる。
【0031】
抗酸化剤のうち、非限定的な例として以下を挙げることができる:アスコルビン酸及びその塩、トコフェロール、並びにメタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩。
【0032】
本発明の組成物の油相は、例えば、植物油、鉱物油、動物油、又は合成油、シリコーン油、及びこれらの混合物などを含むことができる。
【0033】
鉱物油の例として、様々な粘度のパラフィン油、例えば、Esso社により市販されている、Primol 352、Marcol 82、及びMarcol 152などを挙げることができる。
【0034】
植物油として、以下を挙げることができる:甘扁桃油、ヤシ油、大豆油、ゴマ油、及びヒマワリ油。
【0035】
動物油として、以下を挙げることができる:ラノリン、スクアレン、魚油、及びミンク油。
【0036】
合成油として、エステル類、例えば、Cognis France社によりCetiol SNという商品名で市販されているものなどのイソノナン酸セテアリル、ISF社によりCeraphyl 230という商品名で市販されているものなどのアジピン酸ジイソプロピル、Croda社によりCrodamol IPPという商品名で市販されているものなどのパルミチン酸イソプロピル、及びHuls/Lambert Riviere社により市販されているMiglyol 812などのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(caprylic capric triglyceride)などを挙げることができる。
【0037】
シリコーン油として、Dow Corning社によりDow Corning 200 fluidという商品名で市販されているものなどのジメチコーン、Dow Corning 244 fluidという商品名で市販されているものなどのシクロメチコーン、又はSACI−CFPA社によりMirasil CM5という商品名で市販されているものなどを挙げることができる。
【0038】
さらに、天然又は合成ワックスなどの固形脂肪を使用することも可能であるだろう。この場合、当業者ならば、これらの固形物の存在又は不在と関連させて、調製物の加熱温度を適応させるだろう。
【0039】
本発明による水性−アルコールのゲル−クリームタイプの脱色性組成物のために、パラフィン油、より詳細にはMarcol 152が好ましい。
【0040】
アダパレンの良好な分散のために、本発明の組成物は、0.01〜10%、より好ましくは0.1〜5%の1種以上の界面活性湿潤剤を有利に含む。
【0041】
好ましくは、それらは、7〜9のHLB(親水性・親油性バランス)を有する界面活性剤であるか、あるいはまた、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンコポリマーなどの非イオン性界面活性剤である。
【0042】
界面活性湿潤剤の非限定的な例として、以下を挙げることができる:ポロキサマークラスの化合物、より詳細には、Poloxamer 124及びPoloxamer 182。
【0043】
特に好ましい界面活性湿潤剤は、Poloxamer 124である。
【0044】
キレート剤の例として、以下を挙げることができる:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、好ましくはエデト酸二ナトリウム及びEDTA。
【0045】
本発明の組成物には、化粧品又は医薬品分野で通常使用されている添加物、例えば、中和剤、保湿剤及び/又は共溶媒、皮膚軟化剤、緩和剤(soothing agent)、保存料、pH調整剤(pH corrector)、又はこれらの混合物などを追加して含めることができる。
【0046】
もちろん、当業者ならば、この1種以上の任意選択の追加化合物、及び/又はその量を、本発明の組成物の有利な特性が損なわれないように、又は実質的に損なわれないように、選択するだろう。
【0047】
これらの添加物は、組成物の総重量に対して、0.001〜20重量%の割合で組成物中に存在できる。
【0048】
保湿剤/皮膚軟化剤の例として、以下を挙げることができる:グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール。
【0049】
共溶媒として、Macrogol 400を挙げることができる。
【0050】
抗刺激剤及び/又は「緩和」剤(soothing agent)もまた製剤に添加することができ、これは例えば、硝酸ストロンチウム、シアバター、18−β−グリチルリチン酸のカリウム塩、グリチルリチン酸ジカリウム(acid dipotassium glycyrrhizate)、ティーツリー油、エノキソロン、酢酸α−トコフェロール、アラントイン、及びタルクなどである。
【0051】
適したpHを得るためのpH中和剤の例として、以下を挙げることができる:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トロメタミン、及びトロメタモールなどのアミン塩基、又は水酸化ナトリウムなどの多くの他の塩基。
【0052】
保存料の例として、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアゾリジニルウレア、パラベン、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0053】
しかし、本発明の好ましい組成物は、有利には、保存料を含まない。
【0054】
本発明の活性剤は、メキノール(4−ヒドロキシアニソール)、並びにその前駆体及び/又は誘導体、及び特に分散形態である、アダパレン(6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸)、並びにその前駆体及び/又は誘導体であって、これに、先に説明したとおりの他の薬剤を添加することが可能である。分散形態とは、液体媒体中における可変粒度分布の固形物の分布を意味する。
【0055】
もちろん、本発明の組成物中の活性剤の量は、選択される組み合わせによって決まり、それ故、特に所望の治療の性質によって決まる。好ましくは、アダパレンの量は、0.0001〜20%、より好ましくは0.001〜10%である。
【0056】
本発明の水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームタイプの組成物は、良好な皮膚耐性を与える。有利には、これは、粘性のあるエマルジョンよりも容易に塗り広げることができ、気持ちいい感じの清涼感を残す。
【0057】
より詳細には、本発明は、1つ以上の以下の成分:
0.01〜5%のメキノール;
0.10〜2%のアダパレン;
2〜10%のエタノール;
0.01〜2%の1種以上のゲル化剤;
0〜1%の抗酸化剤;
0.01〜20%のキレート剤;
0〜20%の油相、
を含む、水性−アルコールの脱色性ゲル又はゲル−クリームである。
【0058】
本発明の好ましい組成物は、
2%のメキノール;
0.10〜2%のアダパレン;
5%のエタノール;
1〜2%の1種以上のゲル化剤;
0.1〜0.5%の抗酸化剤;
0.10%のEDTA;
0〜15%の油相、
を含む。
【0059】
本発明の特に好ましい組成物は、
2%のメキノール;
0.10%のアダパレン;
5%のエタノール;
1〜2%の1種以上のゲル化剤;
0.1〜0.4%の抗酸化剤、より好ましくは亜硫酸塩;
0.10%のEDTA;
5〜15%の油相、
を含む。
【0060】
本発明はまた、先に定義されたとおりの組成物であって、化学的又は物理的な日焼け止め剤(sun filter)を含む組成物にも関する。
【0061】
「日焼け止め剤」とは、化学的又は物理的な日焼け止め剤、及びこれらの混合物を意味し、非限定的な例として、以下を挙げることができる:二酸チタン及び酸化亜鉛などの物理的な日焼け止め剤、並びにオクトクリレン、メトキシケイ皮酸エチルエキシル、サリチル酸オクチル、アボベンゾン、オキシベンゾン、エカムシューレ(ecamsule)、及びドロメトリゾールトリシロキサンなどの化学的な日焼け止め剤。
【0062】
日焼け止め剤はそれぞれ、組成物の総重量に対して、0.001〜20重量%、好ましくは0.001〜5%の濃度で添加され得る。
【0063】
本発明はまた、医薬品としての、前述の組成物にも関する。
【0064】
本発明はまた、連続した以下の工程:
a)水を含む配合相を準備し、Rayneri撹拌装置で撹拌し、ついでキレート剤を注ぎ、溶解するまで撹拌する工程;
b)工程a)の前記混合物を60℃に加熱し、1種以上のゲル化剤をまき、均質になるまで撹拌する工程;
c)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、前記混合物が室温に戻るまで放置する工程;
d)別のビーカー中で、メキノール及びアルコールを含む第一の活性相を、完全に溶解するまで磁気撹拌して準備する工程;
e)この第一の活性相を、室温に戻した後の前記配合相に添加し、撹拌を維持する工程;
f)別のビーカー中で、アダパレン、界面活性湿潤剤、及び保湿剤を含む第二の活性相を、滑らかで均質なディスパージョンが得られるまで撹拌して準備する工程;
g)ついで、この第二の活性相を、室温に戻した後の前記配合相に添加し、撹拌を維持する工程;
h)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、所望のpHを得るために中和剤を用いて中和する工程;
i)撹拌しながら、抗酸化剤を前記配合相に添加する工程、
を含む、水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームタイプの組成物の調製方法にも関する。
【0065】
混合物のそもそものpHを確認し、必要ならば、中和剤溶液を用いて修正する。
【0066】
上述の製造方法の工程の1つの工程の間に、その化学的性質との関連で、任意選択の添加物のいずれをも組み込むことができる。
【0067】
本発明の方法の特定の実施態様では、保湿剤及び/又は抗刺激剤を、工程a)において、キレート剤と同時に任意選択で添加することができる。
【0068】
本発明の方法の別の特定の実施態様では、油、界面活性剤、及び保存料を、ウォーターバスで60℃に加熱して混合することにより得られた油相を、工程b)の最後に得られた配合相に添加する。
【0069】
日焼け止め剤の物理化学的特性に応じて、当業者ならば、先に定義した工程の1つの工程の間に、これを注意深く組み込むだろう。
【0070】
「配合相」とは、単一相中に一緒に導入される成分群の混合物を意味する。
【0071】
「活性相」とは、1種以上の活性成分を含む配合相を意味する。
【0072】
本発明はまた、化粧品及び皮膚科学における、前述のとおりの新規組成物の使用にも関する。
【0073】
特に、本発明は、色素沈着疾患に関連する皮膚病変を治療及び/又は予防することが意図される医薬品の製造のための、前述のとおりの組成物の使用に関する。
【0074】
本発明の組成物は、例えば以下のような、色素沈着疾患に関連する皮膚病変を治療及び/又は予防するのに特に適している:黒皮症;肝斑;黒子;老年性黒子;白斑;雀卵斑;擦過傷、火傷、瘢痕(scar)、皮膚疾患、又は接触アレルギーによって引き起こされる炎症後色素沈着(post−inflammatory hyperpigmentation);母斑;遺伝的な色素沈着過剰;代謝性又は薬剤誘発性の色素沈着過剰;メラノーマ;又は他の全ての色素沈着過剰病変(lesion)。
【0075】
本発明の組成物にはまた、化粧品分野における適用、特に、日光の悪影響、及び/又は皮膚及び皮膚付属器の光老化(photo−induced ageing)若しくは経年的老化を予防及び/又は排除(combating)するための適用も見出される。
【0076】
本発明の組成物にはまた、身体及び毛髪衛生における適用も見出される。
【0077】
本発明はまた、メキノール及びアダパレンを含み、任意選択で日焼け止め剤を含んでいてもよい本発明の水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、皮膚及び/又は皮膚付属器に適用されることを特徴とする、皮膚を飾るため(embellishment)及び/又は皮膚の外観を高めるための非治療的な美容的処置方法にも関する。
【0078】
以下の配合例は、本発明の組成物を例証するものであって、その範囲を限定するものではない。本発明の組成物の安定性を示す実施例も記載する。
【0079】
[実施例]
以下の組成物(実施例1、3、5、7、9、及び11)において、様々な構成成分の割合は、組成物の総重量に対する重量パーセンテージとして表されている。
【0080】
[実施例1:ゲル配合物]
【0081】
【表1】

【0082】
ゲル配合物を以下の方法により調製する:
a)配合相:
主となるビーカー中に水の大部分を入れ、Rayneri撹拌装置で撹拌する。キレート剤、抗刺激剤、及びグリセロールを添加し、ついで溶解するまで撹拌し続ける。ゲル化剤の分散を容易にするために60℃に加熱する。1種以上のゲル化剤を配合相にまき、均質になるまで撹拌し続ける。ついで、絶え間なく撹拌しながら、室温(RT)に戻るまで放置する。
b)活性相:
・ 別のビーカー中で、脱色剤及びエタノールの重量を量り、ついで完全に溶解するまでマグネチックスターラーで撹拌する;
・ 最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、室温(RT)に戻した前記配合相に添加する;
・ 別のビーカー中で、アダパレン、プロピレングリコール、及びポロキサマー124の重量を量り、ついで滑らかで均質なディスパージョンが得られるまで、Ultra−turaxで、20500rev/min、15分間撹拌する;
・ 最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、RTに戻した前記配合相に添加する。
c)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、6+/−0.3のpHが得られるように、塩基で中和する。
d)最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、前記配合相に抗酸化剤を添加する。
【0083】
[実施例2:実施例1のゲル配合物の物理的及び化学的安定性]
実施例1のゲル配合物の物理的安定性を、室温(RT)、4℃、40℃、及び55℃で3ヶ月間測定する:
【0084】
【表2】

【0085】
上記の「適合(compliant)」とは、1、2、又は3ヶ月後に測定された組成物の特徴が、T0で得られたものに適合することを意味する。
【0086】
実施例1のゲル配合物の化学的安定性を、RT及び40℃で3ヶ月にわたって、HPLCにより測定する:
【0087】
【表3】

【0088】
結果から、この組成物が、3ヶ月間、全ての温度で、物理的及び化学的に安定であることが示されている。
【0089】
さらに、40℃での配合物の褐変は、3ヶ月後でも全く観察されない。
【0090】
[実施例3:ゲル−クリーム配合物]
【0091】
【表4】

【0092】
ゲル−クリーム配合物を以下の方法により調製する:
a)水性配合相:
主となるビーカー中に水の大部分を入れ、Rayneri撹拌装置で撹拌する。キレート剤、抗刺激剤、及びグリセロールを添加し、ついで溶解するまで撹拌し続ける。ゲル化剤の分散を容易にするために60℃に加熱する。1種以上のゲル化剤をまき、均質になるまで撹拌し続ける。
b)油相:
別のビーカー中で、鉱物油、界面活性剤、及び保存料の重量を量る。ウォーターバスで60℃に加熱する。ついで、Rayneri撹拌装置で十分に撹拌しながら、水相a)に添加する。このエマルジョンが室温に戻るまで放置する。
c)活性相:
・ 別のビーカー中で、メキノール及びエタノールの重量を量り、ついで完全に溶解するまでマグネチックスターラーで撹拌する;
・ 最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、室温(RT)に戻した前記配合相に添加する;
・ 別のビーカー中で、アダパレン、プロピレングリコール、及びポロキサマー124の重量を量り、ついで滑らかで均質なディスパージョンが得られるまで、Ultra−turaxで、20500rev/min、15分間撹拌する;
・ 最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、RTに戻した前記配合相に添加する。
d)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、所望のpHを得るために塩基で中和する。
e)最後に、Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、前記配合相にサルファイト溶液を添加する。
【0093】
[実施例4:実施例3のゲル−クリーム配合物の物理的及び化学的安定性]
実施例3のゲル−クリーム配合物の化学的安定性を、室温(RT)及び40℃で3ヶ月間、HPLCにより測定する:
【0094】
【表5】

【0095】
降伏点(yield point)(タウθ)は、ファンデルワールスタイプの凝集力に打ち勝ち、流動性をもたらすのに必要とされる力(最小せん断応力)である。降伏点を、4s−1で見られる値と比較する。
【0096】
【表6】

【0097】
この組成物は、全ての温度で3ヶ月間、化学的に安定である。
【0098】
[実施例5:他のゲル−クリーム配合物]
【0099】
【表7】

【0100】
この配合物を、実施例3に記載の方法に従って調製する。
【0101】
[実施例6:実施例5のゲル−クリーム配合物の物理的及び化学的安定性]
実施例5のゲル−クリーム配合物の物理的安定性を、室温(RT)、4℃、及び40℃で3ヶ月間測定する:
【0102】
【表8】

【0103】
実施例5のゲル−クリーム配合物の化学的安定性を、室温(RT)及び40℃で2ヶ月間、HPLCにより測定する:
【0104】
【表9】

【0105】
この組成物は、全ての温度で、物理的及び化学的に安定である。
【0106】
[実施例7:他のゲル−クリーム配合物]
【0107】
【表10】

【0108】
この配合物を、実施例3に記載の方法に従って調製する。
【0109】
[実施例8:実施例7のゲル−クリーム配合物の物理的及び化学的安定性]
実施例7のゲル−クリーム配合物の物理的安定性を、室温(RT)、4℃、及び40℃で2ヶ月間測定する。
【0110】
【表11】

【0111】
実施例7のゲル−クリーム配合物の化学的安定性を、室温(RT)及び40℃で1ヶ月間、HPLCにより測定する:
【0112】
【表12】

【0113】
この組成物は、全ての温度で、物理的及び化学的に安定である。
【0114】
[実施例9:他のゲル−クリーム配合物]
【0115】
【表13】

【0116】
この配合物を、実施例3に記載の方法に従って調製する。
【0117】
[実施例10:実施例9のゲル−クリーム配合物の安定性]
実施例9のゲル−クリーム配合物の物理的安定性を、室温(RT)、45℃、及び55℃で3ヶ月間測定する。
【0118】
【表14】

【0119】
この組成物は、全ての温度で3ヶ月間、物理的に安定(pH、粘性)である。
【0120】
さらに、55℃での配合物の褐変は、3ヶ月後も全く観察されない。
【0121】
[実施例11:日焼け止め剤を含む、他のゲル−クリーム配合物]
【0122】
【表15】

【0123】
このゲル−クリーム配合物を、実施例3に記載の方法に従って調製する。
【0124】
日焼け止め剤を、工程b)の間に添加する。
【0125】
[実施例12:SKH2マウスにおける、アダパレンとメキノールとの組み合わせ物の脱色活性の測定]
本研究の目的は、(i)2%のメキノールを含む組成物、(ii)0.1%のアダパレンを含む組成物、又は(iii)これらの両方の組み合わせ物を含む組成物(本発明の組成物)のいずれかを、SKH2マウスの尾の皮膚に局所適用し、そこから4週間後の脱色活性を評価することである。
【0126】
ゲルとゲル−クリームの2種類の配合物もまた比較する。
【0127】
4週間にわたって、5日間に1日1回適用する割合で、2種類の配合物(20μL)を、2群に分けたSKH2マウス(9週齢の雌マウス)の尾に局所適用する。
【0128】
評価は、様々な臨床的観察に基づいている:
1週間ごとに、0〜4段階の点数として色素沈着を評価する。採点基準は以下のとおりである:
0:天然色素沈着
脱色点数:−1〜−4点
−1:わずかな脱色
−2:中程度の脱色
−3:著しい脱色
−4:完全な脱色
【0129】
この結果を図1及び図2に示す。
【0130】
図1には、以下の2種類の配合物についての、治療時間の関数としてのマウスの皮膚脱色点数の動態を示す:
【表16】

【0131】
図2には、以下の2種類の配合物の比較脱色点数を示す:
【表17】

【0132】
研究結果により、4週間後、2%のメキノールを含む組成物は顕著な脱色効果を有し、0.1%のアダパレンと組み合わせて適用された場合に、その効果が増加することが示される。
【0133】
0.1%のアダパレン単独では、ゲル配合物及びゲル−クリーム配合物についてのバーチャートが0点に相当する点数なので、脱色効果を有していない。0点に相当する同じ点数が、コントロール(非処理マウス及びプラセボ処理マウス)についても記録されている。
【0134】
脱色効果は、ゲル−クリーム配合物で、特にメキノールとアダパレンとの組み合わせ物の場合に、より急速かつ顕著である。
【0135】
結果から、脱色活性に対するメキノールとアダパレンとの相乗効果が示される。特に、2%メキノールと0.1%アダパレンとの組み合わせ物は、メキノール単独よりも急速かつ顕著な脱色効果を有する。
【0136】
実施例1、3、5、7、及び9の配合物を、黒子、肝斑、又は黒皮症の治療のために、完全な脱色となるまで1日に1回又は2回適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1には、ゲル及びゲル−クリームの2種類の配合物についての、治療時間の関数としてのマウスの皮膚脱色点数の動態を示す。
【図2】図2には、ゲル及びゲル−クリームの2種類の配合物の比較脱色点数を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームであることを特徴とする、生理学的に許容可能な媒体中にメキノール及びアダパレンを含む脱色性組成物。
【請求項2】
前記水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、2〜10%のアルコールを含むことを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコールが、エタノール、イソプロパノール、又はブタノールであることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
キレート剤、界面活性湿潤剤、及び1種以上のゲル化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、1つ以上の以下の成分:
a)カルボマー;
b)1種以上の他のゲル化剤;
c)抗酸化剤;
d)油相;
e)保湿剤/皮膚軟化剤;
f)抗刺激剤;
g)pH中和剤;
h)保存料、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、カルボマーと1種以上の他のゲル化剤、又は前記カルボマーと1種以上の他のカルボマーとを含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、
− 0.01〜5%のメキノール;
− 0.10〜2%のアダパレン;
− 2〜10%のエタノール;
− 0.01〜2%の1種以上のゲル化剤;
− 0〜1%の抗酸化剤;
− 0.01〜20%のキレート剤;
− 0〜20%の油性液体相、
を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、
− 2%のメキノール;
− 0.10〜2%のアダパレン;
− 5%のエタノール;
− 1〜2%の1種以上のゲル化剤;
− 0.1〜0.5%の抗酸化剤;
− 0.10%のEDTA;
− 0〜15%の油性液体相、
を含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記水性−アルコールのゲル−クリームが、
− 2%のメキノール;
− 0.10%のアダパレン;
− 5%のエタノール;
− 1〜2%の1種以上のゲル化剤;
− 0.1〜0.4%の抗酸化剤;
− 0.10%のEDTA;
− 5〜15%の油性液体相、
を含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
化学的又は物理的な日焼け止め剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
医薬品としての、請求項1乃至10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
以下の連続工程:
a)水及び前記キレート剤を含む配合相を準備し、溶解するまで撹拌し、任意選択で保湿剤及び抗刺激剤を添加してよい工程;
b)工程(a)の前記混合物を60℃に加熱し、1種以上の前記ゲル化剤をまき、均質になるまで撹拌する工程;
c)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、前記混合物が室温に戻るまで放置する工程;
d)別のビーカー中で、メキノール及びアルコールを含む第一の活性相を、完全に溶解するまで磁気撹拌して準備する工程;
e)この第一の活性相を、室温に戻した後の前記配合相に添加し、撹拌を維持する工程;
f)別のビーカー中で、アダパレン、界面活性湿潤剤、及び保湿剤を含む第二の活性相を、滑らかで均質なディスパージョンが得られるまで撹拌して準備する工程;
g)ついで、この第二の活性相を、室温に戻した後の前記配合相に添加し、撹拌を維持する工程;
h)Rayneri撹拌装置で撹拌しながら、所望のpHを得るために中和剤を用いて中和する工程;
i)撹拌しながら、前記抗酸化剤を前記配合相に添加する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項記載の組成物の製造方法。
【請求項13】
油、界面活性剤、及び保存料を、ウォーターバスで60℃に加熱して一緒に混合することにより得られた油相を、工程(b)の最後に得られた前記配合相に添加することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
色素沈着疾患に関連する皮膚病変を治療及び/又は予防することが意図される医薬品の製造のための、請求項1乃至11のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項15】
前記色素沈着疾患に関連する病変が、黒皮症;肝斑;黒子;老年性黒子;白斑;雀卵斑;擦過傷、火傷、瘢痕、皮膚疾患、又は接触アレルギーによって引き起こされる炎症後色素沈着;母斑;遺伝的な色素沈着過剰;代謝性又は薬剤誘発性の色素沈着過剰;メラノーマ;又は他の全ての色素沈着過剰病変であることを特徴とする、請求項14記載の使用。
【請求項16】
日光の悪影響及び/又は光老化若しくは経年的老化を予防及び/又は排除するための、請求項1乃至10のいずれか一項記載の組成物の美容のための使用。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の、メキノール及びアダパレンを含み、任意選択で日焼け止め剤を含んでいてもよい水性−アルコールのゲル又はゲル−クリームが、皮膚及び/又は皮膚付属器に適用されることを特徴とする、皮膚を飾るため及び/又は皮膚の外観を高めるための非治療的な美容処置方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−501769(P2008−501769A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526492(P2007−526492)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001393
【国際公開番号】WO2006/003299
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】