説明

メタルマスクの製造方法、枠部材及びその製造方法

【課題】マスク本体と枠体との接合性が良く、接着剤の除去が容易に行えるメタルマスクの製造方法と、その製造方法において用いる枠部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多数独立の通孔5からなる開口パターン6をパターン形成領域4内に備えるマスク本体2と、マスク本体2の外周に配置されるマスク本体2の補強用の枠体3とを備えるメタルマスク1の製造方法について説明する。まず、マスク本体2に対応する金属体15を形成するする。次に、金属体15を囲むように枠部材3’を配する。次に、枠部材3’の表面と、金属体15の外周縁4a表面とを覆うように金属層9を形成して、金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合する。この枠部材3’は、枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備え、枠体3は、枠材31と、第2金属材32とを有している。そして、金属層9を介して金属体15と枠部材3’とを接合した後に、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルマスクの製造方法、並びにメタルマスクを製造する際に用いる枠部材及びその製造方法に関する。本発明によって製造されたメタルマスクは、フラックスや半田ペーストを印刷するための印刷用マスク、半田ボールを搭載するための配列用マスク、蒸着材を蒸着するための蒸着マスクなどとして用いると好適である。
【背景技術】
【0002】
この種のメタルマスクとしては、例えば、所定のパターンを有するマスク体と枠体とを接着剤を用いて接合したものが、特許文献1に開示されている。(図18参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のマスクは、マスク体102と枠体103とを接合している接着剤108の側面が露出しているため、メタルマスクを洗浄した際に、接着剤108が変質され、接合強度が低下してしまい、印刷・搭載精度が低下するおそれがある。また、このようなメタルマスクを蒸着用マスクとして適用して高温の中で使用した場合、接着剤108から有機物などの不純物が蒸発してしまい、これが蒸着精度を低下させるおそれもあった。このため、露出する接着剤108を保護層で覆うといった対策、更には、接着剤108を除去するといった対策をとっていたが、接着剤108の除去は別工程となるだけでなく、容易に除去することができないため、生産性が悪くなってしまっていた。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、マスク体と枠体との接合性が良いメタルマスクの製造方法と、その製造方法において用いる枠部材及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明は、多数独立の通孔5からなる開口パターン6をパターン形成領域4内に備えるマスク本体2と、マスク本体2の外周に配置されるマスク本体2の補強用の枠体3とを備えるメタルマスクの製造方法であって、まず、マスク本体2に対応する金属体15を形成する。次に、金属体15を囲むように、枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備える枠部材3’を配する。次に、枠部材3’の表面と、金属体15の外周縁4a表面とを覆うように金属層9を形成して、金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合する。最後に、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を除去する。金属体15の形成においては、母型10の表面に、レジスト体14aを有するパターンレジスト14を設け、このパターンレジスト14を用いて、母型10上に電着金属を電鋳して、金属体15を形成する。そして、枠部材3’を金属体15が形成された母型10上に配し、金属層9によって金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合した後に、母型10、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を除去する。枠部材3’を配する際には、枠部材3’の接着層34によって母型10上に接着し、この母型10は剥離によって除去する。
【0007】
また、本発明は、上記メタルマスクの製造方法において用いる枠部材3’であって、枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備え、枠体3は、枠材31と第1金属材32とを有する。そして、第1金属材32と第2金属材33との間には、剥離処理が施されている。さらに、本発明は、枠部材3’の製造方法であって、まず、基材31aの表面に金属をメッキして、第1金属層32aを形成する。次に、第1金属層32a表面に金属をメッキして、第2金属層33aを形成する。次に、第2金属層33aの表面にパターンレジスト35を形成する。次に、第2金属層33a上に形成したパターンレジスト35をマスクとして、第2金属層33a、第1金属層32a、基材31aをエッチングする。最後に、第2金属層33a上にフォトレジスト層34aを形成する。なお、第1金属層32aを形成した後に、第1金属層32aの表面に剥離処理を施してから第2金属層33aを形成しても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るメタルマスクの製造方法によれば、枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備える枠部材3’を用いることで、枠体3と接着層34を別々に配設する形態に比べて、生産性を向上することができる。
【0009】
また、本発明の枠部材3’によれば、枠材31及び第1金属材32を有する枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備えているので、枠部材3’の対象物への固定を容易に行うことができる。また、本発明の枠部材3’の製造方法によれば、メッキにより、基材31a表面に第1金属層32a及び第2金属層33aを形成し、エッチングにより、第2金属層33aと第1金属層32aと基材31aとに開口3aを形成しているので、枠部材3’を精度良く且つ生産性良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクの縦断側面図
【図2】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図3】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図4】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクの分解斜視図
【図5】本発明に係る枠部材の製造過程の工程説明図
【図6】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの縦断側面図
【図7】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの要部の平面図
【図8】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの要部の斜視図
【図9】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの分解斜視図
【図10】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図11】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図12】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図13】本発明の第2実施形態に係るメタルマスクの別実施形態を示す図
【図14】本発明の第1実施形態に係るメタルマスクの製造過程の工程説明図
【図15】本発明に係る枠部材の製造過程の工程説明図
【図16】本発明に係る枠部材の製造過程の工程説明図
【図17】本発明に係る枠部材の製造過程の工程説明図
【図18】従来のメタルマスクを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1および図4は、本発明に係るメタルマスクの第1実施形態を示す。図1において、メタルマスク1は、ニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金、銅や銅合金、その他の金属を素材として形成されたマスク本体2と、このマスク本体2を囲むように装着された枠体3とを含む。図4において、マスク本体2は、700×600mmの四角形状の母型10領域の中に、例えば、100×100mmの正方形状に4つ独立して形成されており、その内部にパターン形成領域4を備える。パターン形成領域4には、多数独立の通孔5からなる開口パターン6が形成されている。
【0012】
マスク本体2の厚みは、10〜100μmの範囲が好ましく、本実施例では、15μmに設定した。各通孔5は、例えば、平面視で前後の長さ寸法が50〜200μm、左右幅寸法が20〜80μmの四角形状を有しており、これら通孔5は、前後方向に直線的に並ぶ複数個の開口群を列とし、複数個の列が左右方向に並列状に配設されたマトリクス状の開口パターン6を構成する。なお、図1の縦断面図は、実際の開口パターン6の様子を示したものではなく、それを模式的に示している。
【実施例1】
【0013】
マスク本体2には、マスク本体2の補強用の枠体3が装着される。この枠体3は、枠材31と金属材(第1金属材)32とを備え、枠材31の材質としては、アルミニウムやステンレスが挙げられるが、メタルマスク1の高温中での使用にも対応できるよう、ニッケル−鉄合金であるインバー材、あるいはニッケル−鉄−コバルト合金であるスーパーインバー材等のような低熱線膨張係数の材質からなるものでも良い。枠材31の下面には金属材32が形成されており、金属材32の材質としては、ニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金、銅や銅合金、その他の金属からなる。枠体3は、マスク本体2よりも肉厚であり、めっき法などによって形成された金属層9により、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと不離一体的に接合される。ここでは、図4に示すごとく、4枚のマスク本体2を1つの枠体3で保持している。すなわち、枠体3は、その板面上に4つの開口3aが整列配置されており、各開口3aに一枚のマスク本体2が装着される。枠体3は、マスク本体2に対応する4つの開口3aを備える平板形状に形成されている。枠体3の厚み寸法は、例えば0.1〜2.0mm程度とし、本実施例においては、1.0mmに設定した。
【0014】
枠材31の形成素材として、インバー材やスーパーインバー材を採用すれば、その線膨張係数が2×10-6/℃、あるいは1×10-6/℃以下と極めて小さいため、メタルマスク1が高温に晒される環境下においても、熱影響によるマスク本体2の寸法変化を良好に抑制できる。具体的には、本メタルマスク1を常温で使用するのではなく、蒸着マスクといった高温炉内で使用する場合において、例えば、マスク本体2がニッケルからなるものであると、その線膨張係数は12.80×10-6/℃であるのに対し、ワーク(基板)40である一般ガラスの線膨張係数は3.20×10-6/℃と、熱膨張率が数倍違うことから、常温下でメタルマスク(蒸着マスク)1をワーク(基板)40に整合させた際の蒸着される位置と、実際の蒸着時における供給物(蒸着物質)41が蒸着される位置との間に、位置ズレが生じることは避けられない。そこで、マスク本体2を保持する枠体3の形成素材として、インバー材といった線膨張係数の小さな素材を採用してあると、昇温時におけるマスク本体2の膨張に起因する寸法変化、形状変化をよく抑え、常温時における整合精度を蒸着時の昇温時にも良好に保つことができる。
【0015】
図1において、符号9は、パターン形成領域の外周縁4aに係るマスク本体2の上面に、例えば、めっき法により形成されたニッケルやニッケル−コバルト合金等の金属層を示す。詳しくは、金属層9は、パターン形成領域4の外周縁4aの上面と、枠体3の側面と、マスク本体2と枠体3との間隙部分に形成されており、これでパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3の開口3a周縁とを不離一体的に接合する。
【0016】
図2および図3は、本実施形態に係るメタルマスク1の製造方法を示す。まず、図2(a)に示すごとく、導電性を有する、例えば、ステンレスや真ちゅう鋼製の母型10の表面にフォトレジスト層11を形成する。このフォトレジスト層11は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0017】
次いで、図2(b)に示すごとく、フォトレジスト層11の上に、前記通孔5に対応する透光孔12aを有するパターンフィルム12(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外光ランプ13で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図2(c)に示すごとく、前記通孔5に対応するストレート状のレジスト体14aを有するパターンレジスト14を母型10上に形成する。
【0018】
続いて、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図2(d)に示すごとく、先のレジスト体14aの高さの範囲内で、母型10のレジスト体14aで覆われていない表面に上述の電着金属を、好ましくは、10〜100μm厚の範囲、本実施例では、ニッケル−コバルトを15μm厚で電鋳して金属体15、すなわち、前記マスク本体2となる層を形成する。ここでは、母型10の略全面にわたって、金属体15を形成した。次に、レジスト体14aを溶解除去することにより、図2(e)に示すごとく、多数独立の通孔5からなる開口パターン6を備えるマスク本体2を得た。
【0019】
続いて、図3(a)に示すごとく、金属体15(マスク本体2)の形成部分を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層16を形成する。このフォトレジスト層16は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成したものであり、ここでは、20μm厚にフォトレジスト層16を形成した。
【0020】
続いて、図3(b)に示すごとく、前記パターン形成領域4に対応する透光孔17aを有するパターンフィルム17を密着させたのち、紫外光ランプ13で紫外線光を照射して露光を行う。かくして、図3(c)に示すごとく、パターン形成領域4に係る部分が露光されたフォトレジスト層16aを得た。なお、それ以外の部分である未露光のフォトレジスト層16bは、残しても除去してもどちらでも構わないが、ここでは、除去することとした。
【0021】
続いて、図3(d)に示すごとく、母型10上に金属体15を囲むように、枠部材3’を配する。この枠部材3’は、図5(e)に示すように、枠体3、第2金属材33、接着層34を備えるものであり、枠体3は、枠材31と第1金属材(金属材)32とを有し、第1金属材32と第2金属材33との間には、剥離処理を施すことが好ましい。これは、例えば、酸化膜や有機膜を形成することにより施すことができる。
【0022】
係る枠部材3’の製造方法について説明すると、まず、700×600mmのアルミニウム、ステンレス、インバーなどといった材質からなる基材31aを用意し、図5(a)に示すように、基材31aの表面にニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金からなる金属をメッキして、1〜10μm厚の第1金属層32aを形成する。次に、図5(b)に示すように、第1金属層32a表面に剥離処理を施した後に、ニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金からなる金属をメッキして、1〜10μm厚の第2金属層33aを形成する。ここで、第2金属層33aは第1金属層32aより厚く形成することが好ましく、本実施形態では、第1金属層32aを2μm、第2金属層33aを3μmとした。次に、図5(c)に示すように、第2金属層33aの表面にフォトレジスト層を形成した後に、開口3aに対応するパターンを有するパターンフィルムを密着させ、露光、現像、乾燥を行って、開口3aに対応するパターンを有するパターンレジスト35を形成する。次に、図5(d)に示すように、第2金属層33a上に形成したパターンレジスト35をマスクとして、第2金属層33a、第1金属層32a、基材31aをエッチングして、開口3aを形成する。最後に、図5(e)に示すように、パターンレジスト35を除去し、開口3aを含む第2金属層33a表面にフォトレジスト層を形成した後、開口3a上に存在するフォトレジスト層を除去して、開口3aを除く第2金属層33aの表面にフォトレジスト槽34aを残存させることで、枠材31、第1金属材32、第2金属材33、接着層34を有する枠部材3’が得られる。ここで、接着層34はフォトレジスト層34aからなるものとしているが、これは、未露光のフォトレジストは粘着性を有するので、この性質を利用することで、フォトレジスト層34aからなる接着層34を得ている。なお、接着層34は、第2金属層33a上に粘着性を有する材質を直接形成したものでも良い。また、本実施形態では、パターンレジスト35を除去しているが、パターンレジスト35を除去せずに、その表面にフォトレジスト層34a(接着層34)を形成するようにしても良い。
【0023】
続いて、図3(e)に示すごとく、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する金属体15の上面、枠部材3’と金属体15との間で表面に露出する母型10の表面、および枠体3の表面上に電着金属を電鋳して金属層9を形成し、金属層9により金属体15と枠部材3’の枠体3とを接合した。ここでは、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する金属体15の上面、および枠部材3’と金属体15との間で表面に露出する母型10の表面における層厚が90μmとなるように金属層9を形成した。このとき、枠部材3’の表面の層厚は、30μmとなっていた。このように、母型10の表面等と枠部材3’との間で層厚が異なるのは、金属層9は、母型10の表面から順次積層されていき、そして、金属層9が枠部材3’の接着層34の高さ寸法を超えて枠部材3’の 第2金属材33に至ると、枠部材3’が母型10と導通状態となって、該枠部材3’の表面に金属層9が形成されることによる。
【0024】
最後に、母型10、枠部材3’の第2金属材33および接着層34、フォトレジスト層16aを除去する。具体的には、フォトレジスト層16aを除去して、マスク本体2(金属体15)、金属層9、枠体3(枠部材3’の枠材31および第1金属材32)から母型10、枠部材3’の第2金属材33および接着層34を剥離することにより、図1に示すようなマスク1を得た。
【0025】
係るメタルマスク1の製造方法によれば、枠材31と、第1金属材(金属材)32と、第2金属材33と、接着層34とを備える枠部材3’を用いるので、枠部材3’の接着層34により、母型10への枠部材3’の固定を容易に行うことができる。また、金属層9によってマスク本体2と枠体3を接合した後は、不要となる枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を母型10の除去に続いて除去することができる。さらに、第1金属材32と第2金属材33との間に剥離処理を施すとともに、母型10を剥離により除去する方法を採用すれば、母型10を剥離することで、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34とともに、一括して除去することができる。
【0026】
なお、金属層9は、金属体15、すなわちマスク本体2を枠体3側に引き寄せる、引っ張り応力F1(図1参照)が作用するようなテンションを加えた状態で形成することが好ましい。かかる応力F1の付与は、金属層9を作成する際の電鋳槽中に添加する第2種光沢剤中のカーボンの含有比率を調製することによって実現できる。これにより、マスク本体2は、金属層9を介して枠体3に対してピンと張った引っ張り応力が作用した状態で張設されるため、高温中でのマスクの使用においても、枠体3との熱膨張係数の差に伴うマスク本体2の膨張を吸収し、さらに、マスク本体2を保持する枠体3自体が熱膨張しにくいことと相俟って、メタルマスク1全てが熱による寸法精度のばらつきが生じ難く、供給物41の再現精度の向上に寄与できる。
【0027】
同様に、マスク本体2、すなわち金属体15は、それが内方に収縮する方向の応力F2(図1参照)が作用するようなテンションを加えた状態で形成することが好ましい。かかる応力F2の付与は、マスク本体2となる金属体15を作成する際の電鋳槽中に添加する第2種光沢剤中のカーボンの含有比率を調製することで実現できる。かかる応力F2は、金属体15を作成する際の電鋳槽の温度(40〜50℃)と常温(20℃)との温度差に起因して、常温時に金属体15が収縮するようにすることによって実現できる。より詳しく説明すると、母型10として42アロイやインバー、SUS430(ステンレス)等の低温膨張係数の素材を用いたうえで、40〜50℃の電鋳槽内で金属体15を形成すると、このとき電着金属であるニッケルやニッケル合金等の金属体15は、母型10よりも膨張率が大きいため、母型10に対して膨張しようとする応力が作用する(尤も、このときの金属層9の膨張は、母型10により規制される)。しかるに、電鋳槽温度(40〜50℃)よりも低い常温(20℃)においては、金属体15は内方に収縮しようとし、従って、母型10から剥離することによって、金属体15、すなわちマスク本体2は、枠体3に対して引っ張り応力F2が作用することとなる。これにより、金属体15を皺の無いピンと張った状態とできるため、高温中でマスク1を使用しても、枠体3との熱膨張係数の差に伴うマスク本体2自体の膨張を吸収し、さらにマスク本体2を保持する枠体3自体が熱膨張しにくいことと相俟って、メタルマスク1全てが熱による寸法精度のばらつきが生じ難く、パターンに対応する供給物41の再現精度の向上に寄与できる。
【0028】
また、メタルマスク1には、応力緩和部8を設けることが好ましい。これは、マスク1(マスク本体2)を電鋳により形成すれば、内部応力の発生を回避することが困難なため、マスク1にうねりが生じ、マスク1の平面性に悪影響を及ぼしてしまうが、応力緩和部8を設けることで、係る問題を解決でき、マスク1の平面性の向上に寄与できる。この応力緩和部8は、例えば、枠体3の上面に形成される金属層9を分断することで設けることができ、その形成方法は、金属層9を形成する前に、枠体3の上面にフォトレジストを形成して、金属体15と枠部材3’とを接合する際に、枠体3の上面に金属層9が形成されないようにすることで実現できる。
【0029】
具体的には、例えば、図2(a)〜(e)に示す工程を経て、母型10上に金属体15(マスク本体2)を得た後に、図14(a)に示すように、金属体15を囲むように、母型10上に枠部材3’を配し、続いて、図14(b)に示すように、金属体15のパターン形成領域4に係る部分及び枠部材3’の上面に対応するフォトレジスト層16a・16cを形成し、次に、図14(c)に示すように、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する金属体15の上面、枠部材3’と金属体15との間で表面に露出する母型10の表面、および枠体3の表面に金属層9を形成し、最後に、母型10、枠部材3’の第2金属材33および接着層34、フォトレジスト層16a・16cを除去することで、図14(d)に示すように、枠体3の上面に応力緩和部8が設けられたメタルマスク1が得られる。
【0030】
この他にも、上記のように、枠部材3’を配した後にフォトレジスト層16cを形成するのではなく、予めから枠部材3’にフォトレジスト層を形成する、つまり、枠材31と、第1金属材32と、第2金属材33と、接着層34と、フォトレジスト36とを備えた枠部材3”を用意し、この枠部材3”を母型10上に金属体15を囲むようにして配し、金属層9を形成して金属体15と枠部材3’の枠体3とを接合した後に、母型10、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34、フォトレジスト層16aを除去することでも、応力緩和部8が設けられたメタルマスク1を得ることができる。
【0031】
この枠部材3”の製造方法としては、まず、700×600mmのアルミニウム、ステンレス、インバーなどといった材質からなる基材31aを用意し、図15(a)に示すように、基材31aの表面にニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金からなる金属をメッキして、1〜10μm厚の第1金属層32aを形成する。次に、図15(b)に示すように、第1金属層32a表面に剥離処理を施した後に、ニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金からなる金属をメッキして、1〜10μm厚の第2金属層33aを形成する。ここで、第2金属層33aは第1金属層32aより厚く形成することが好ましく、本実施形態では、第1金属層32aを2μm、第2金属層33aを3μmとした。次に、図15(c)に示すように、第2金属層33aの表面にフォトレジスト層を形成した後に、開口3aに対応するパターンを有するパターンフィルムを密着させ、露光、現像、乾燥を行って、開口3aに対応するパターンを有するパターンレジスト35を形成する。次に、図15(d)に示すように、第2金属層33a上に形成したパターンレジスト35をマスクとして、第2金属層33a、第1金属層32a、基材31aをエッチングして、開口3aを形成する。次に、図15(e)に示すように、パターンレジスト35を除去し、基材31aの表面にフォトレジスト層を形成した後、パターンフィルムを密着させ、露光、現像、乾燥を行って、開口3aを除く基材31aの表面にフォトレジスト36を形成する。最後に、図15(f)に示すように、開口3aを含む第2金属層33a表面にフォトレジスト層を形成した後、開口3a上に存在するフォトレジスト層を除去して、開口3aを除く第2金属層33aの表面にフォトレジスト層34aを残存させることで、枠材31、第1金属材32、第2金属材33、接着層34、フォトレジスト36を有する枠部材3”が得られる。
【0032】
上記製造方法では、接着層34(フォトレジスト層34a)とフォトレジスト36とは、別々の工程で形成しているが、図15(a)〜(d)に示す工程を経て、第2金属層33a、第1金属層32a、基材31aに開口3aを形成した後に、パターンレジスト35を除去して、図16(a)に示すように、基材31a及び第2金属層33a表面にフォトレジスト層34a・36aを形成する。このフォトレジスト層34a・36aの厚さは、表裏で異なっていても良く、所望の厚さにて形成する。次に、基材31a側におけるフォトレジスト層36aの表面にパターンフィルムを密着させて露光することで、図16(b)に示すように、基材31aの表面にフォトレジスト層36aが露光されてなるフォトレジスト36が形成される。そして、現像にて基材31a側の未露光のフォトレジスト層36aを除去するが、その際に、基材31aの表面に形成されたフォトレジスト36がマスクとなって、第2金属層33a側に形成したフォトレジスト層34aの開口3a上に存在するフォトレジスト層34aも除去され、基材31aの表面にはフォトレジスト36が、また、第2金属層33a表面にはフォトレジスト層34aが形成されることとなり、よって、枠材31、第1金属材32、第2金属材33、接着層34、フォトレジスト36を有する枠部材3”を得ることができる。
【0033】
また、枠部材3”の別の製造方法としては、図15(a)〜(b)に示す工程を経て、基材31a上に第1金属層32a及び第2金属層33aを形成した後に、図17(a)に示すように、第1金属層32aの表面にフォトレジスト層34aを形成するとともに、第2金属層33aの表面にフォトレジスト層36aをそれぞれ所望の厚さ形成する。次に、図17(b)に示すように、基材31a側におけるフォトレジスト層36aの表面にパターンフィルムを密着させ、露光、現像、乾燥することで、基材31aの表面にフォトレジスト36を形成する。次に、図17(c)に示すように、基材31a上に形成したフォトレジスト36をマスクとして、フォトレジスト36より露出する基材31a表面と、これに対応する部分の第1金属層32a、第2金属層33a、フォトレジスト層34aをエッチングして、開口3aを形成することによっても、枠部材3”を得ることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図6ないし図9に本発明に係るメタルマスク1の第2実施形態を示す。図6において、メタルマスク1は、ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金、その他の電着金属を素材として、電鋳方法により形成されたマスク本体2と、このマスク本体2を囲むように装着された枠体3とを含む。図9において、メタルマスク1は、550×450mmの四角形状を呈しており、その内部に複数個のマスク本体2を備える。各マスク本体2は、60×40mmの四角形状に形成されており、その内部にパターン形成領域4を備える。パターン形成領域4には、多数独立の通孔5からなる開口パターン6が形成されている。
【0035】
マスク本体2の厚みは、好ましくは、10〜100μmの範囲とし、本実施例では、15μmに設定した。各通孔5は、例えば平面視で前後の長さ寸法が70μm、左右幅寸法が150μmの四角形状を有しており、これら通孔5は、前後方向に直線的に並ぶ複数個の通孔群を列とし、複数個の列が左右方向に並列状に配設されたマトリクス状の開口パターン6を構成した。なお、図6の縦断面図は、実際の開口パターン6の様子を示したものではなく、それを模式的に示している。
【0036】
マスク本体2の上面側には、マスク本体2の補強用の枠体3が装着される。この枠体3は、ニッケル−鉄合金であるインバー材、あるいはニッケル−鉄−コバルト合金であるスーパーインバー材等のような低熱線膨張係数の材質からなる枠材31と、ニッケルやニッケル−コバルトといったニッケル合金、銅や銅合金、その他の金属からなる金属材32とを備える。枠体3は、マスク本体2よりも肉厚の成形品であり、電鋳法により形成された金属層9によりマスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと不離一体的に接合される。ここでは、図9に示すごとく、30枚のマスク本体2を1枚の枠体3で保持している。すなわち、枠体3は、その板面上に30個の開口3aが整列配置されており、各開口3aに一枚のマスク本体2が装着される。枠体3は、マスク本体2に対応する開口3aを備える平板形状に形成されている。枠体3の厚み寸法は、例えば、10〜100μm程度とし、本実施例においては、50μmに設定した。
【0037】
図6において、符号9は、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを接合する金属層を示す。かかる金属層9は、例えば、電鋳法により形成されるものであり、ニッケルやニッケル−コバルト合金等からなる。このように、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを金属層9で接合してあると、図18に示す従来例のごとく、マスク本体102と枠体103とを接着剤108で接合する形態では不可避であった、洗浄処理等において使用される有機溶媒が接着剤108に作用することに起因する接着剤108の変質などの不具合は一切生じず、マスク本体102と枠体103との間の良好な接合状態を長期にわたってよく維持できる。
【0038】
そのうえで、本実施形態においては、図6ないし図8に示すごとく、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aの全周にわたって多数個の孔部21を設けてあり、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを、該孔部21を埋めるように形成された金属層9を介して一体的に接合してある点が着目される。すなわち、本実施形態に係る金属層9は、パターン形成領域4の外周縁4aの上面と、枠体3のパターン形成領域4に臨む表面と、マスク本体2と枠体3との間隙部分のみならず、さらに、孔部21を埋めるように成長・形成されている点が着目される。このように、孔部21を埋めるように成長・形成された金属層9を介してマスク本体2と枠体3とを接合してあると、両者2・3間の接合強度の向上を図ることができるため、枠体3に対するマスク本体2の不用意な脱落や位置ずれを確実に抑えることができる。従って、供給物41の再現精度の向上を図ることができる。
【0039】
また、図7および図8に示すごとく、マスク本体2の四つの角部を平面視で面取り状に形成している。これによれば、マスク本体2が熱膨張した際に角部に応力が集中することを抑えることができる。
【0040】
図10ないし図12は、本実施形態に係るメタルマスク1の製造方法を示す。まず、図10(a)に示すごとく、導電性を有する、例えば、42アロイやインバー、SUS430(ステンレス)等の低温膨張係数の素材の母型10の表面にフォトレジスト層11を形成する。このフォトレジスト層11は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。
【0041】
続いて、図10(b)に示すごとく、フォトレジスト層11の上に、前記通孔5および接着強度アップ用の孔部21に対応する透光孔12aを有するパターンフィルム12(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外光ランプ13で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図10(c)に示すごとく、前記通孔5および孔部21に対応するストレート状のレジスト体14aを有するパターンレジスト14を母型10上に形成した。
【0042】
続いて、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図10(d)に示すごとく、先のレジスト体14aの高さの範囲内で、母型10のレジスト体14aで覆われていない表面にニッケル合金等の電着金属を好ましくは、10〜100μm厚の範囲、本実施例では、15μm厚で電鋳して、金属体15、すなわち前記マスク本体2となる層を形成した。金属体15は、下面側(母型10側)に形成された無光沢ニッケル層と、該無光沢ニッケル層上に形成された光沢ニッケル層とからなるものとしても良く、ここでは、母型10の略全面に無光沢ニッケルからなる金属層を10μm電鋳したのち、その上に光沢ニッケルからなる金属層を5μm電鋳して金属体15とした。このように、金属体15を2層構造とすると、無光沢ニッケルが母型10に対してくっつき難く、最後のメタルマスク1の母型10からの剥離工程を作業効率良く進めることができる。
【0043】
続いて、レジスト体14aを溶解除去することにより、図10(e)に示すごとく、多数独立の通孔5からなる開口パターン6、および開口パターン6の外周縁の全体に、接合強度アップ用の孔部21を備える平面視で四角形状のマスク本体2を得た。マスク本体2の各角部は、図7および図8に示すごとく、平面視で面取り状に形成した。なお、図10(e)において、符号15aは、金属体15・15(マスク本体2・2)どうしの間に形成され、枠部材3’の配置位置に対応する金属体を示す。この金属体15aはフォトレジスト層26を形成する前に除去するが、フォトレジスト層16を形成する前であればいつでも良く、例えば、後の活性化処理後に行っても良い。
【0044】
続いて、金属体15aを剥離した後、図11(a)に示すごとく、金属体15(マスク本体2)の表面全体に、フォトレジスト層26を形成してから、孔部21の周辺部分に対応するパターンフィルム27を密着させて、紫外光ランプ13で紫外線光を照射して露光を行った。ここでのフォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成したものであり、ここでは、20μm厚にフォトレジスト層を形成した。次に、未露光部分のフォトレジスト層を溶解除去することにより、図11(b)に示すごとく、孔部21の周辺部分に対応する開口28aを有するパターンレジスト28を得た。つまり、孔部21の周辺部分のみが表面に露出するようにパターンレジスト28を形成した。
【0045】
次いで、パターンレジスト28の開口28aに露出する金属体15部分、すなわち孔部21の周辺の金属体15に対して酸浸漬や電解処理等の活性化処理を施した。図11(b)において、符号29は活性化処理を施した部分を示しており、詳しくは孔部21の内壁面と、該孔部21の周辺の金属体15の上面に対して活性化処理を施した。このように、孔部21の周辺に活性化処理を施してあると、無処理の場合に比べて、当該活性化処理部分と金属層9との接合強度の格段の向上を図ることができる。
【0046】
なお、先の活性化処理に替えて、孔部21の周辺の金属体15に対して、ストライクニッケルや無光沢ニッケル等の薄層を形成してもよい。これによっても、孔部21の周辺部分と金属層9との接合強度の向上を図ることができる。また、孔部21は、必ずしも貫通されている必要はなく、有底の凹みであっても良い。
【0047】
続いて、パターンレジスト28を溶解除去したのち、図12(a)に示すごとく、金属体15(マスク本体2)の形成部分を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層16を形成した。このフォトレジスト層16は、先と同様にネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを所定の高さに合わせて、一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成したものであり、ここでは、200μm厚にフォトレジスト層16を形成した。続いて、図12(b)に示すごとく、前記パターン形成領域4に対応する透光孔17aを有するパターンフィルム17を密着させたのち、紫外光ランプで紫外線光を照射して露光を行った。かくして、図12(c)に示すごとく、パターン形成領域4に係る部分が露光されたフォトレジスト層16aと、それ以外の部分である未露光のフォトレジスト層16bが得られた。なお、この未露光のフォトレジスト層16bは、この後に除去するが、除去せずに残しておいても構わない。
【0048】
続いて、図12(d)に示すごとく、母型10上に金属体15を囲むように、枠部材3’を配した。この枠部材3’は、第1実施形態と同様に、枠体3、第2金属材33、接着層34とを備え、枠体3は、枠材31と第1金属材(金属材)32とを有し、第1金属材32と第2金属材33との間には、剥離処理を施すことが好ましい。ここでは、枠部材3’の接着層34により、母型10上に接着固定した。なお、枠部材3’の製造方法は、第1実施形態と同様であるが、マスク本体2の形状及び個数に対応するように、枠部材3’の開口3aが形成されている。
【0049】
続いて、図12(e)に示すごとく、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する金属体15の上面、枠体3と金属体15との間で表面に露出する母型10の表面、枠部材3’の表面上、および孔部21内に電着金属を電鋳して金属層9を形成し、かかる金属層9により金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合した。
【0050】
最後に、フォトレジスト層16aを除去するとともに、金属体15(マスク本体2)、金属層9、枠部材3’の枠材31および第1金属材32(枠体3)から母型10、第2金属材33、接着層34を剥離除去することにより、図6に示すようなマスク1が得られた。
【0051】
ここで、枠部材3’は、枠材31、第1金属材32、第2金属材33、接着層34を備えているので、母型10への接着固定が精度良く且つ容易に行うことができる。また、金属層9を介して金属体15と枠部材3’とを接合した後は不要となる第2金属材33及び接着層34の除去を母型10の除去と連動して行うことができ、容易に除去することができる。そして、接着層34によって母型10に固定された枠部材3’において、第1金属材32と第2金属材33との間に剥離処理を施すとともに、母型10を剥離によって除去すれば、母型10の剥離と同時に、捨て枠部材である第2金属材33および接着層34も一緒に剥離することができる。
【0052】
本実施形態において、金属層9は、金属体15、すなわち、マスク本体2を枠体3側に引き寄せる、引っ張り応力F1が作用するようなテンションを加えた状態で形成することができ、また、マスク本体2、すなわち金属体15は、それが内方に収縮する方向の応力F2(図6参照)が作用するようなテンションを加えた状態で形成することができる。これにより、温度上昇中におけるマスク1の使用において、昇温に伴うマスク本体2の膨張分を、当該引っ張り応力や収縮方向へのテンションで吸収し、膨張による枠体3に対するマスク本体2の位置ずれや皺の発生を防ぐことができる。よって、常温時におけるワーク40に対するマスク本体2の整合精度を昇温時においても良好に担保でき、ワーク40に対する供給物41の再現精度の向上に寄与できる。さらに、本実施形態では、孔部21を形成したことおよびマスク本体2の角部を面取り状としたことと相俟って、パターン形成領域4に皺ができることをより確実に抑制でき、さらなる供給物41の再現精度の向上に寄与できる。
【0053】
図13は、第2実施形態の別実施形態を示す。同図において、符号50は、フォトレジスト層11(図12(a)参照)の形成に先立って母型10の全面にわたって形成され、最後の剥離工程時に金属体15から分離される捨て金属層を示す。かかる捨て金属層50は、製造工程時においてはマスク本体2の下面に存している。このようにマスク本体2の下面に捨て金属層50を形成してあると、母型10からのマスク本体2の剥離時に、マスク本体2に皺や応力が発生することを効果的に抑えることができる。従って、これによっても供給物41の再現精度の向上に寄与し得る。なお、捨て金属層50は、剥離性を考慮すると、無光沢ニッケルなどで作製することが好適であり、その厚み寸法は20〜120μm程度とすることが好ましい。また、この捨て金属層50は、母型10側に形成された無光沢ニッケル層と、該無光沢ニッケル層上に形成された光沢ニッケル層との2層で構成されていても良く、この場合、無光沢ニッケル層の厚さを5μm、光沢ニッケル層の厚さを10μmとすると良い。さらに、捨て金属層50は、2層に限らず、母型10の厚みからマスク本体2の厚みに徐々に近づくように複数の層を形成するとなお良い。
【0054】
なお、メタルマスク1が有するマスク本体2の枚数は、上記実施形態に示したものに限られない。また、パターンレジスト14を除去し、金属体15を研磨して平滑化してから、パターン形成領域4にフォトレジスト層16aを形成するようにしてもよい。また、枠材31の材質としては、実施形態に示すインバー材等のような金属材料のほか、できる限りワークに近い低熱線膨張係数の材料を選択すると良い。この場合には、これら材料の少なくとも表面に導電性を付与させることが必要となる。さらに、形成されたメタルマスク1を引っ張り状態で、その外周縁に別途ステンレス、アルミ等の固定枠を周知の方法で固定しても良い。ただ、実施形態のごとく、枠体3に各マスク本体2が金属層9を介してテンションを加えた状態で保持されているような場合、固定枠を必要としない所謂フレームレス化が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 メタルマスク
2 マスク本体
3 枠体
3’ 枠部材
4 パターン形成領域
5 通孔
6 開口パターン
9 金属層
10 母型
14 パターンレジスト
15 金属体
16 フォトレジスト層
21 孔部
31 枠材
32 金属材(第1金属材)
33 第2金属材
34 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数独立の通孔(5)からなる開口パターン6をパターン形成領域4内に備えるマスク本体2と、マスク本体2の外周に配置されるマスク本体2の補強用の枠体3とを備えるメタルマスクの製造方法であって、
マスク本体2に対応する金属体15を形成する工程と、
金属体15を囲むように枠部材3’を配する工程と、
枠部材3’の表面と、金属体15の外周縁4a表面とを覆うように金属層9を形成して、該金属層9を介して金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合する工程とを含み、
枠部材3’は、枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備え、
金属層9を介して金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合した後に、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を除去することを特徴とするメタルマスクの製造方法。
【請求項2】
金属体15を形成する工程においては、母型10の表面に、レジスト体14aを有するパターンレジスト14を設ける工程と、パターンレジスト14を用いて、母型10上に電着金属を電鋳して、マスク本体2に対応する金属体15を形成しており、
枠部材3’を配する工程においては、枠部材3’を母型10上に配しており、
金属層9を介して金属体15と枠部材3’とを不離一体的に接合した後に、母型10、枠部材3’の第2金属材33及び接着層34を除去することを特徴とする請求項1に記載のメタルマスクの製造方法。
【請求項3】
枠部材3’を配する工程では、枠部材3’の接着層34を母型10の表面に接着させることを特徴とする請求項2に記載のメタルマスクの製造方法。
【請求項4】
母型10を剥離により除去することを特徴とする請求項3に記載のメタルマスクの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のメタルマスクの製造方法において用いる枠部材3’であって、
枠体3と、第2金属材33と、接着層34とを備え、
枠体3は、枠材31と第1金属材32とを有することを特徴とする枠部材。
【請求項6】
第1金属材32と第2金属材33との間には、剥離処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の枠部材。
【請求項7】
請求項5または6に記載の枠部材3’の製造方法であって、
基材31aの表面に金属をメッキして、第1金属層32aを形成する工程と、
第1金属層32a表面に金属をメッキして、第2金属層33aを形成する工程と、
第2金属層33aの表面にパターンレジスト35を形成する工程と、
第2金属層33a上に形成したパターンレジスト35をマスクとして、第2金属層33a、第1金属層32a、基材31aをエッチングする工程と、
第2金属層33a上にフォトレジスト層34aを形成する工程
とを有することを特徴とする枠部材の製造方法。
【請求項8】
第1金属層32aを形成する工程後に、第1金属層32aの表面に剥離処理を施すことを特徴とする請求項7に記載の枠部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−111195(P2012−111195A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264049(P2010−264049)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】