説明

メタル基材装置、ICカードモジュールの製造方法及びICカードモジュール体

【課題】 非接触型のICカード用のICモジュールを、更に量産性良く製造できるメタル基材装置およびICカードモジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】 メタルサブストレート部材は、トランスファモールドタイプの非接触型ICカード用のICカードモジュールに用いられる多数の単位のメタルサブストレートを備えている。メタルサブストレート部材は、金属からなる帯状の薄い加工用素材からなり、単位のメタルサブストレートの各部が繋ぎ部で保持されている。各単位のメタルサブストレートは、ICチップを搭載するためのダイパッドを有し、アンテナコイルと接続するためのアンテナ端子がダイパッドおよび樹脂封止領域よりも外側に配設されている。加工用素材の長手方向に隣接する単位のメタルサブストレート同志のアンテナ端子部は、幅方向の共通領域内にオーバラップして入っている。各単位のメタルサブストレートは、その外側の2本の連結線において加工用素材の長手方向に所定幅のカットを入れるだけで、樹脂封止した後に分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型のICカードに用いられるトランスファーモールドタイプのICカードモジュール用のメタル基材装置と、該メタル基材装置を用いた非接触型のICカードに用いられるトランスファーモールドタイプのICカードモジュールの製造方法、及びICカードモジュール体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の機密性の面からICカードが次第に普及されつつある。近年では、読み書き装置(リーダライタ)と接触せずに情報の授受を行う非接触型のICカードが提案され、中でも、外部の読み書き装置との信号交換を、あるいは信号交換と電力供給とを電磁波により行う方式のものが実用化されている。
【0003】
このような非接触式のICカードは、例えば、図8(a)に示すように、ICモジュール812を有し、このICモジュール812は、アンテナ811に接続されており、その回路構成は、通常、図8(b)のようになっている。
【0004】
図8(a)(b)において、810はICカード、811はアンテナ、812はICモジュール、813は(ICモジュールの)端子である。
【0005】
このようなICモジュールにおけるICチップの実装方法としては、プリント基板にICチップをマウントし、ボンディング線にてプリント基板上へ接続するCOB(Chip On Board)が最も多く用いられている。しかしながらこの方法では実装厚を薄くできないという欠点がある。最近では、実装厚を薄くでき、量産にも対応できる実装形態として、導電性のダイパッドをハーフエッチングしたメタル基材(メタルサブストレート)上にICチップをマウントし、ボンディングワイヤにてメタルサブストレートの端子部へ接続する形態が提案されている。
【0006】
このような形態のICモジュールにおいては、単位のメタルサブストレートは、加工用素材を加工してなり、ICチップを搭載するための領域(ダイパッド部)と、アンテナ回路との接続用の領域と、入出力端子の領域とを有し、これら複数の領域が一部繋がった状態で分割形成されている。ICモジュールを作製する際、これらの領城は繋ぎ部で加工用素材に接続され、加工用素材は単位のメタルサブストレートが多面付けされている。各単位のメタルサブストレートにICチップを搭載して樹脂封止した後に、所定の繋ぎ部が切断分離される。
【0007】
単位のメタルサブストレートをリードあるいはリードフレームと言う場合がある。また、単位のメタルサブストレートが多面付けされ、加工用素材に直接、あるいは枠部を設けて枠部に、繋ぎ部で繋がった状態のものを、リードフレームと言う場合もある。
【0008】
このような、メタルサブストレートをプレスにて作製すると、プレス加工時にバリ911が発生し、図9(a)に示すように、樹脂封止した場合、裏面への樹脂漏れ931が発生してしまうため、エッチング加工方法が採られる。エッチング加工方法による場合には、図9(b)に示すように、樹脂漏れを起こさずに封止ができる。
【0009】
尚、図9(a)(b)において、910はメタルサブストレート、920はICチップ、930は封止用樹脂、931は樹脂漏れ、940はボンディングワイヤである。
【0010】
エッチング加工方法においては、加工用素材として、薄いCu材、あるいは42合金(42%Ni−Fe合金)が用いられ、また通常、製版処理、エッチング処理がリール・トウー・リールで行なわれる(リール方式)。
【0011】
そして、加工用素材をエッチング加工してメタルサブストレートを面付けした後、面付け状態のまま、順に、部分銀めっきまたは部分パラジュームめっき処理あるいは全面パラジュームめっき処理、ICチップマウント、ワイヤボンディング、個別樹脂封止等の処理が連続して、あるいは、分けて、リール方式で行なわれる。
【0012】
そして、従来、加工用素材をエッチング加工することにより、ICモジュール用のメタルサブストレートを面付けしてリール方式で作製する場合、図7(a)に示すように、1面毎に、その絵柄がオーバラップしないように配列して作製していた。
【0013】
尚、図7(b)は、図7(a)のように面付けされてエッチングされた、メタルサブストレート部材の各ダイパッド部621にICチップを搭載し、更にトランスファー方式で樹脂封止した状態を示している。
【0014】
その後、所定の位置をカットすることにより、個片化されたICカードモジュールが得られる。
【0015】
図7(a)(b)において、611は加工用素材、620は単位のメタルサブストレート、621はダイパッド、621Hはハーフエッチング部、622A、622Bは(アンテナと接続する)端子、625は貫通孔部、626は繋ぎ部、628はスプロケット、640は封止用樹脂である。
【0016】
ここで従来のメタルサブストレートの作製方法として、特開2000−174176号公報に示すものを挙げることができる。
【0017】
上記のように、最近、ICモジェール用にメタルサブストレートを用いる形態が提案され、エッチング加工により、ICモジュール用のメタルサブストレートを面付けして、リール方式で作製する作製方法が知られている。この場合、特に、非接触型のICカード用のICモジュールにおいては、更なる、量産化、低コスト化が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、非接触型のICカード用のICモジュールを、更に量産性良く製造できるメタル基材装置およびICカードモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、非接触ICカードモジュール用の多数のメタル基材を有するメタル基材装置において、長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っていることを特徴とするメタル基材装置である。
【0020】
本発明は、各メタル基材は、長手方向に沿う2本の連結線に設けられた連結部により加工用素材に連結され、この2本の連結線に沿ってカットすることにより各メタル基材は加工用素材の他の部分から分離されることを特徴とするメタル基材装置である。
【0021】
本発明は、各メタル基材は、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって、長手方向に沿う両側に各々突出された二対のアンテナ端子を有することを特徴とするメタル基材装置である。
【0022】
本発明は、各メタル基材のダイパッドは、ICチップより大形状となっており、かつダイパッドのICチップ搭載領域は加工用素材をハーフエッチングすることにより加工用素材の厚みより薄く形成されていることを特徴とするメタル基材装置である。
【0023】
本発明は、各メタル基材の樹脂封止領域に、樹脂との密着性を向上させるための凹部または貫通孔部を設けたことを特徴とするメタル基材装置である。
【0024】
本発明は、各メタル基材は、ダイパッドとアンテナ端子との間に設けられた内部端子を有することを特徴とするメタル基材装置である。
【0025】
本発明は、加工用素材はCu材あるいは42合金からなることを特徴とするメタル基材装置である。
【0026】
本発明は、非接触ICカードモジュール用の多数のメタル基材を有するメタル基材装置であって、長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っていることを特徴とするメタル基材装置を準備する工程と、各メタル基材のダイパッド上にICチップを搭載する工程と、ICチップとメタル基材の所定部分とをワイヤを用いてワイヤボンディングにより接続する工程と、各メタル基材の樹脂封止領域に、ICチップとワイヤを覆って樹脂を設けて樹脂封止する工程と、ICチップ毎に加工用素材をカットする工程と、を備えたことを特徴とするICカードモジュールの製造方法である。
【0027】
本発明は、加工用素材はCu材あるいは42合金からなることを特徴とするメタル基材方法である。
【0028】
本発明は、長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っているメタル基材装置と、各メタル基材のダイパッド上に搭載されたICチップと、ICチップとメタル基材の所定部分とをワイヤボンディングにより接続するワイヤと、各メタル基材の樹脂封止領域に、ICチップとワイヤを覆って設けられた封止樹脂とを備え、加工用素材上に、封止樹脂に連結するとともに幅方向に延びるモールドゲート部が設けられていることを特徴とするICカードモジュール体である。
【0029】
本発明は、メタル基材は加工用素材の幅方向に多列に配置され、加工用素材上に各メタル基材の封止樹脂同志を連結するとともに幅方向に延びるモールドスルーゲート部が設けられていることを特徴とするICカードモジュール体である。
【0030】
本発明は、加工用素材の各メタル基材の一対のアンテナ端子の近傍に、各アンテナ端子を加工用素材の他の部分から絶縁する開口が設けられていることを特徴とするICカードモジュール体である。
【0031】
本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置は、このような構成にすることにより、非接触型のICカード用のICモジュールを、更に量産性良く製造できる。
【0032】
具体的には、単位のメタル基材は、ICチップを搭載するためのダイパッドを有し、アンテナコイルと接続するためのアンテナ端子がダイパッドおよび樹脂封止領域よりも外側に、アンテナコイル1ループ用として2個あるいはアンテナコイル2ループ用として4個を設けられている。帯状の加工用素材の長手方向に隣接する単位のメタル基材同志のアンテナ端子領域が幅方向の共通領域としてオーバラップするよう、単位のメタル基材が加工用素材の長手方向に面付けされている。各単位のメタル基材は樹脂封止した後に、その外側(2箇所)において加工用素材の長手方向に所定幅のカットを入れるだけで、樹脂封止した後に加工用素材の他の部分から分離できる。
【0033】
詳しくは、本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置を、リール・トウー・リールで、製版処理、エッチング処理を行い作製することを可能とし、更に、本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置を用いて、ICカードモジュールを、量産性良く、リール・トウー・リールで各種の処理を行うことを可能としている。
【0034】
また、ICチップを搭載するため、ICチップより大サイズのダイパッドを有し、該ダイパッドのICチップ搭載領域はハーフエッチングにより、メタルサブストレートの基材厚よりも薄く形成されている。このことにより、特に、ICモジュールを薄型化要求に対応できる。
【0035】
また、金属からなる帯状の薄い加工用素材としては、導電性、処理性、汎用性等から、通常は、Cu材あるいは42合金(42%Ni−Fe合金)が用いられるが、これらに限定はされない。
【0036】
尚、金属からなる帯状の薄い加工用素材の厚さは、ICモジュールの薄化要求に対応できる厚さであれば良く、0.1mm厚程度の薄いものが、特に、薄化要求からは、好ましい。
【0037】
また、ダイパッド領域の外側に、封止樹脂の密着性を向上させるための凹部または貫通孔部を設け、前記アンテナ端子と一体的に接続する封止用樹脂支持部を設けることができ、樹脂封止を信頼性の良いものとしている。
【0038】
本発明のICカードモジュールの作製方法は、このような構成にすることにより、非接触型のICカード用のICモジュールを、量産性良く製造できる。
【0039】
即ち、各処理をリール・トウー・リールで行うことにより、これを達成している。
【0040】
金属からなる帯状の薄い加工用素材としては、導電性、処理性、汎用性等から、通常は、Cu材あるいは42含金(42%Ni−Fe合金)が用いられるが、これらに限定はされない。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、上記のように、非接触型のICカード用のICモジュールに用いられるメタルサブストレート部材を、更に、量産性良く製造できる。同時に、そのような、メタルサブストレート部材を用いたICモジュールの製造を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0043】
図1(a)は本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置の実施の形態の第1の例の一部を示した概略構成図、図1(b)は図1(a)における単位のメタル基材を示した図、図2(a)は図1(a)に示すICカードモジュール用のメタル基材装置の各単位のメタル基材のダイパッド上にICチップを搭載し、ワイヤボンディング結線した図、図2(b)は図2(a)における単位のメタル基材を示した図、図3は図2(a)に示すメタル基材装置にトランスファモールド処理を施した図、図4は本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置の実施の形態の第2の例の一部を示した概略構成図、図5は図4に示すICカードモジュール用のメタル基材装置の各単位のメタル基材のダイパッド上にICチップを搭載し、ワイヤボンディング結線した図、図6は図5に示すメタル基材装置にトランスファモールド処理を施した図である。
【0044】
図1〜図6において、111は加工用素材、120は単位のメタル基材、121はダイパッド、121Hはハーフエッチング部、122A、122Bは(アンテナと接続する)端子、123A、123Bは内部端子、124は貫通孔、125は貫通孔部、126は繋ぎ部、128はスプロケット、130はICチップ、131は端子、135はボンディングワイヤ、140は封止用樹脂、221はダイパッド、221Hはハーフエッチング部、222A、222B、222C、222Dは(アンテナと接続する)端子、223A、223B、223C、223Dは内部端子、225は貫通孔部、226は繋ぎ部、228はスプロケット、230はICチップ、231は端子、235はボンディングワイヤ、240は封止用樹脂である。
【0045】
本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置(メタルサブストレート部材)の実施の形態の第1の例を、図1(a)(b)および図2(a)(b)に基づいて説明する。
【0046】
第1の例のICカードモジュール用のメタル基材装置(メタルサブストレート部材)は、トランスファモールドタイプの非接触型ICカード用のICカードモジュールであって、アンテナを1ループで配するICモジュールに用いられる多数の単位のメタル基材(メタルサブストレート)120(図1(b)参照)を有している。このメタルサブストレート部材は導電性の金属からなる帯状の薄い加工用素材111をエッチングしてなり、単位のメタルサブストレート120の各部は繋ぎ部126で互いに保持されている。
【0047】
すなわち、メタル基材装置(メタルサブストレート部材)は、長手方向に延びる加工用素材111をエッチングすることにより加工形成された多数の単位のメタル基材装置(メタルサブストレート)120を有し、一対のリール100A,100B間に延びている。
【0048】
メタルサブストレート120は加工用素材111に、幅方向に4列にかつ長手方向に連続して形成されている。
【0049】
各メタルサブストレート120はICチップ搭載用のダイパッド121と、ダイパッド121を含む樹脂封止領域140Aとを有し、ダイパッド121および樹脂封止領域140Aの外側であって、長手方向に沿う両側に一対のアンテナ端子122A、122Bが突設されている。一対のアンテナ端子122A、122Bは、樹脂封止領域140Aの対角に配設されている。封止用樹脂140のアンテナ端子122B側の角部は面取りされ、アンテナ端子122B側の極地のインデックスとして使用される。
【0050】
また一のメタルサブストレート120のアンテナ端子122Aと、このメタルサブストレート120の長手方向に隣接するメタルサブストレート120のアンテナ端子122Bは、加工用素材111の幅方向において共通の領域111A内に入っている。
【0051】
そして、各単位のメタルサブストレート120は、長手方向に沿う2本の連結線L1、L2に設けられた繋ぎ部(連結部)126により加工用素材111の他の部分111Bに連結され(図1(b))、樹脂封止した後、図1(b)の連結線L1、L2に沿って、加工用素材111の長手方向に所定幅のカットを入れるだけで、メタルサブストレート120は加工用素材111の他の部分111Bから分離され、所望の外形を有する。
【0052】
本例では、メタルサブストレート120のダイパッド121とアンテナ端子122A、122Bとの間に、アンテナ端子122A、122Bとそれぞれ一体的に接続する内部端子123A、123Bが設けられている。この内部端子123A、123Bは樹脂封止領域140A内にあり、この内部端子123A、123Bに樹脂との密着性を向上させるための貫通孔124が設けられている。この貫通孔124は凹部として機能するが、凹部は貫通していなくてもよい。
【0053】
加工用素材111としては、通常は、Cu材あるいは42合金(42%Ni−Fe合金)が、導電性や処理性、処理性、汎用性から用いられるが、これらに限定はされない。
【0054】
金属からなる帯状の薄い加工用素材の厚さは、ICモジュールの薄化要求に対応できる厚さであれば良い。
【0055】
第1の例の変形例としては、メタルサブストレート120は端子面を上側にしてICチップを搭載するための、ICチップ130より大サイズのダイパッド121を有し、該ダイパッド121のICチップ搭載領域130Aはハーフエッチングにより加工用素材111の厚みよりも薄く形成されている。
【0056】
この変形例の場合は、薄型化を第1の例より一層可能とすることができる。
【0057】
本発明のICカードモジュール用のメタル基材装置の実施の形態の第2の例を、図4(a)(b)〜図6に基づいて、簡単に説明する。
【0058】
第2の例は、メタル基材装置(メタルサブストレート部材)はトランスファモールドタイプの非接触型ICカード用のICカードモジュールであって、アンテナコイルを2ループで配するICモジュールに用いられる多数の単位のメタル基材(メタルサブストレート)220有している。このメタルサブストレート部材は、導電性の金属からなる帯状の薄い加工用素材211をエッチングしてなり、単位のメタルサブストレート220の各部は繋ぎ部226で互いに保持されている。
【0059】
第2の例においては、各メタルサブストレート220は端子面を上側にしてICチップ230を搭載するため、ICチップ230より大サイズのダイパッド221を有し、該ダイパッド221のICチップ搭載領域221Hはハーフエッチングにより加工用素材211の厚みよりも薄く形成されている。
【0060】
この第2の例の場合も、薄型化を第1の例より一層可能とすることができる。
【0061】
ここで、図4は、加工用素材211の長手方向に隣接する単位のメタルサブストレート2個の状態を拡大して示したものである。
【0062】
図4において、各単位のメタルサブストレート220は、ダイパッド221と、アンテナ端子222A、222B、222C、222Dと、内部端子223A、223B、223C、223Dと、これらを加工用素材211の他の部分211Bに連結するための繋ぎ部226とからなっている。加工用素材211の長手方向に隣接する単位のサブストレート220同志のアンテナ端子部222A、222B、222C、222Dが、加工用素材211の幅方向の共通領域211A内でオーバラップするよう単位のメタルサブストレート220が、加工用素材211の長手方向に面付けされている。
【0063】
第2の例は、アンテナコイル2ループ用のもので、ダイパッド221および封止領域240の外側であって、長手方向に沿う両側に二対のアンテナ端子222A、222B、222C、222Dが突設されている。
【0064】
尚、第2の例では、第1の例のように、内部端子に貫通孔(図1の124に相当)が設けていないが、適宜設けても良い。図4に示すように、各単位のメタルサブストレート120は長手方向に沿う2本の連結線L3、L4に設けられた繋ぎ部226により加工用素材211の他の部分211Bに連結され、樹脂封止した後に連結線L3、L4に沿って加工用素材211の長手方向に所定幅のカットを入れることにより、メタルサブストレート220は加工用素材211の他の部分211Bから分離され、所望の外形を有する。
【0065】
次に、本発明のICカードモジュールの製造方法の1例を、図1〜図3に基づいて簡単に説明する。
【0066】
本例のICカードモジュールの製造方法は、図1に示す第1の例のメタルサブストレート部材を用いて作製するものである。
【0067】
本例は、非接触型のICカードに用いられるトランスファモールドタイプのICカードモジュールの製造方法で、金属からなる薄い加工用素材111に対し、リール・トウー・リールで、製版処理、エッチング処理を行い、図1に示す第1の例のメタルサブストレート部材を形成する。(図1)
加工用素材111としては、通常、厚さ0.1mm程度の帯状のCu材あるいは42含金(42%Ni−Fe合金)材を用い、製版処理により、その両面に耐エッチング性のレジストパターンを形成した後、所定のエッチング液を用い、両面からスプレーエッチングを行い、メタルサブストレート部材をエッチング形成する。
【0068】
尚、ハーフエッチングをより精度良く行うために、エッチングを2段に分け、ハーフエッチング形成面側に第1のエッチングを行った後、所定の充填材をエッチング形成された孔部に埋め込んだ状態で、反対側から第2のエッチングを行う方法を採っても良い。
【0069】
次いで、リール・トウー・リールで、エッチング形成されたメタルサブストレート部材(図1(a))の各単位のメタルサブストレート120の所定の領城に銀メッキ処理を施し、メタルサブストレート部材の各単位のメタルサブストレート120のダイパッド121上のICチップ搭載領域130AにICチップ130を搭載する。メタルサブストレート120の所定の領域へ銀メッキ処理する代わりに、メタルサブストレート120の全面にパラジュームめっきを施しても良い。
【0070】
その後、ICチップ130の端子(図示していない)と内部端子123A、123Bとをワイヤ135によりワイヤボンディング接続する(図2(a))。
【0071】
次いで、トランスファ方式により、ICチップ130、ボンディングワイヤ135を含む樹脂封止領域140Aを封止用樹脂140により樹脂封止する(図3)。
【0072】
このようにしてメタル基材装置と、各メタルサブストレート120のダイパッド121上に搭載されたICチップ130と、ICチップ130と内部端子123A、123Bとを接続するワイヤ135と、ICチップ130とワイヤ135を覆う封止用樹脂140とからなるICカードモジュール体150aが得られる(図3)。この場合、加工用素材111上に、メタルサブストレート120が幅方向に4列配置され、これに伴なってICチップ130を覆う封止用樹脂140も幅方向に4列配置されている。
【0073】
加工用素材111上に、封止用樹脂140同志を連結するとともに幅方向に延びるモールドスルーゲート部140bが設けられ、さらに加工用素材111側部の封止用樹脂140と加工用素材111の側縁との間には、モールドゲート部140aが設けられている。これらモールドゲート部140aとモールドスルーゲート部140bは加工用素材111上にわずかの厚みで形成されている。封止用樹脂140は、加工用素材111の側方からモールドゲート部140aおよびモールドスルーゲート部140bを通って流れる樹脂により形成される。
【0074】
さらに図3に示すように、各メタルサブストレート120の一対のアンテナ端子122A、122B近傍には、各アンテナ端子122A、122Bを加工用素材111の他の部分から絶縁する開口140cが設けられている。
【0075】
このように開口140cを設けて各アンテナ端子122A、122Bを加工用素材111の他の部分から絶縁することにより、多数のICチップ130を有するICカードモジュール体150aの状態で、ICチップ130に対してアンテナ端子122A、122Bを利用して一対の測定端子(図示せず)により電気的特性を一括して測定することができる。このため、ICチップ130毎に加工用素材111を切断してICモジュール150を得た後、各ICモジュール150毎にICチップ130の電気的特性を測定する場合に比べて迅速かつ容易にICチップ130の電気的特性を測定することができる。
【0076】
その後、所定のカッターにて、図1(b)の連結線L1、L2に沿って、繋ぎ部126を切断し、加工用素材111を個片化し、それぞれ、ICモジュール150を得る。
【0077】
上記の方法において、図4に示す第2の例のメタルサブストレート部材を用いた場合も、同様に、リール・トウー・リールで、エッチング形成されたメタルサブストレート部材(図4)の各単位のメタルサブストレート220の所定の領域に銀めっきまたはパラジュームめっき処理を施す。次にメタルサブストレート部材の各単位のメタルサブストレート220のタイパッド221上に、ICチップ230を搭載した後、ワイヤ235によりワイヤボンディング接続する(図5)。その後、トランスファ方式により、ICチップ230、ボンディングワイヤ235を含む樹脂封止領域240Aを封止樹脂240により樹脂封止する(図6)。
【0078】
そして、この後、所定のカッターにて、図4の連結線L3、L4に沿って、繋ぎ部226を切断し、加工用素材111を個片化し、それぞれ、ICモジュール250を得る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のICカードモジュール用のメタルサブストレート部材の実施の形態の第1の例の一部および単位のメタルサブストレートを示した図。
【図2】図1(a)に示すICカードモジュール用のメタルサブストレート部材の各単位のメタルサブストレートのダイパッド上にICチップを搭載し、ワイヤボンディング結線した状態、および単位のメタルサブストレート部を示した図。
【図3】図2(a)に示す部材にトランスファモールド処理を施した図。
【図4】本発明のICカードモジュール用のメタルサブストレート部材の実施の形態の第2の例の一部を示した概略構成図。
【図5】図4に示すICカードモジュール用のメタルサブストレート部材の各単位のメタルサブストレートのダイパッド上にICチップを搭載し、ワイヤボンディング結線した図。
【図6】図5に示す部材にトランスファモールド処理を施した図。
【図7】従来のメタルサブストレートとICモジュールの作製方法を説明するための図。
【図8】非接触式のICカードにおけるICモジュールとその回路構成を説明するための図。
【図9】メタルサブストレートの加工方法と樹脂漏れとの関係を説明するための図。
【符号の説明】
【0080】
100A、100B リール
111 加工用素材
120 メタルサブストレート
121 ダイパッド
122A、122B アンテナ端子
123A、123B 内部端子
124 貫通孔
125 貫通孔部
130 ICチップ
135 ボンディングワイヤ
140 封止用樹脂
220 メタルサブストレート
221 ダイパッド
222A、222B、222C、222D アンテナ端子
223A、223B、223C、223D 内部端子
225 貫通孔部
230 ICチップ
235 ボンディングワイヤ
240 封止用樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードモジュール用の多数のメタル基材を有するメタル基材装置において、
長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、
各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、
一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っていることを特徴とするメタル基材装置。
【請求項2】
各メタル基材は、長手方向に沿う2本の連結線に設けられた連結部により加工用素材に連結され、
この2本の連結線に沿ってカットすることにより各メタル基材は加工用素材の他の部分から分離されることを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項3】
各メタル基材は、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって、長手方向に沿う両側に各々突出された二対のアンテナ端子を有することを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項4】
各メタル基材のダイパッドは、ICチップより大形状となっており、かつダイパッドのICチップ搭載領域は加工用素材をハーフエッチングすることにより加工用素材の厚みより薄く形成されていることを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項5】
各メタル基材の樹脂封止領域に、樹脂との密着性を向上させるための凹部または貫通孔部を設けたことを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項6】
各メタル基材は、ダイパッドとアンテナ端子との間に設けられた内部端子を有することを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項7】
加工用素材はCu材あるいは42合金からなることを特徴とする請求項1記載のメタル基材装置。
【請求項8】
非接触ICカードモジュール用の多数のメタル基材を有するメタル基材装置であって、長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っていることを特徴とするメタル基材装置を準備する工程と、
各メタル基材のダイパッド上にICチップを搭載する工程と、
ICチップとメタル基材の所定部分とをワイヤを用いてワイヤボンディングにより接続する工程と、
各メタル基材の樹脂封止領域に、ICチップとワイヤを覆って樹脂を設けて樹脂封止する工程と、
ICチップ毎に加工用素材をカットする工程と、を備えたことを特徴とするICカードモジュールの製造方法。
【請求項9】
加工用素材はCu材あるいは42合金からなることを特徴とする請求項8記載のメタル基材方法。
【請求項10】
長手方向に延びる帯状の加工用素材をエッチングすることにより長手方向に連続して形成された多数のメタル基材を備え、各メタル基材はICチップ搭載用のダイパッドと、ダイパッドを含む樹脂封止領域と、ダイパッドおよび樹脂封止領域の外側であって長手方向に沿う両側に各々突設された少なくとも一対のアンテナ端子とを有し、一のメタル基材のアンテナ端子と、このメタル基材の長手方向に隣接するメタル基材のアンテナ端子は、加工用素材の幅方向の共通の領域内に入っているメタル基材装置と、
各メタル基材のダイパッド上に搭載されたICチップと、
ICチップとメタル基材の所定部分とをワイヤボンディングにより接続するワイヤと、
各メタル基材の樹脂封止領域に、ICチップとワイヤを覆って設けられた封止樹脂とを備え、
加工用素材上に、封止樹脂に連結するとともに幅方向に延びるモールドゲート部が設けられていることを特徴とするICカードモジュール体。
【請求項11】
メタル基材は加工用素材の幅方向に多列に配置され、加工用素材上に各メタル基材の封止樹脂同志を連結するとともに幅方向に延びるモールドスルーゲート部が設けられていることを特徴とする請求項10記載のICカードモジュール体。
【請求項12】
加工用素材の各メタル基材の一対のアンテナ端子の近傍に、各アンテナ端子を加工用素材の他の部分から絶縁する開口が設けられていることを特徴とする請求項10記載のICカードモジュール体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−179512(P2006−179512A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368041(P2004−368041)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】