メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの塩
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートおよびそれを含有する医薬組成物を開示する。また、それらの調製のためのプロセスおよびそれらの使用のための方法についても開示する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
固体の経口投与される医薬化合物の開発可能な形態の追求では、多くの特定の特徴が求められる。アモルファス形態の医薬化合物が開発され得るが、高い結晶性を有する化合物が、一般的に好適である。しばしば、そのような高結晶性化合物は塩である。そのような塩はまた、次の特徴を所有することが大いに所望される:良好な安定性、良好な水溶解度(好ましくは、>1mg/mL)、良好なインビボでの経口バイオアベイラビリティ、および良好な収率で得られる能力(好ましくは、>50%)。
【0002】
国際公開第2008/036247号パンフレットは、アスパラギン酸プロテアーゼ、特に、レニンに対して阻害活性を有することが示されおり、そしてアスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害の治療において有用であることが示されている一連の化合物について記載している。具体的には、その出願では、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのトリフルオロ酢酸塩およびパモ酸塩(2:1)について説明している。
【0003】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの2:1パモ酸塩は、良好な収率で得られ、そして高結晶性であったが、この材料は、インビボで経口バイオアベイラビリティが低いことが実証された。多くの従来の酸を用いた有意な数のスクリーニング実験後、L−(+)−酒石酸は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの結晶塩を提供することが見出された。しかし、多様な条件下において、得られた酒石酸塩(それは結晶性であったが、高い程度のアモルファスの特徴が実証された)の収率は低かった(15〜20%)。L−(+)−酒石酸によるさらなる実験では、良好な収率(約80%)で塩形態が提供されたが、この材料は、少なくとも異なる3つの結晶形態の複雑な混合物であった。従って、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの開発可能な塩形態が求められた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの塩である新規の化合物に関する。本発明の化合物は、以下の構造(I)によって表される:
【化1】
【0005】
具体的には、X−Hがジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニンまたはシュウ酸である化合物について説明する。本発明の化合物は、アスパラギン酸プロテアーゼ、特に、レニンを阻害するのに、ならびに高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害のような疾患を治療するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、化合物A型I.のX線粉末回折パターンを示す。
【図2】図2は、化合物A型IIのX線粉末回折パターンを示す。
【図3】図3は、化合物B型IのX線粉末回折パターンを示す。
【図4】図4は、化合物C型IのX線粉末回折パターンを示す。
【図5】図5は、化合物A型I.の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図6】図6は、化合物A型IIの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図7】図7は、化合物B型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図8】図8は、化合物C型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図9】図9は、化合物A型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図10】図10は、化合物A型IIの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図11】図11は、化合物B型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図12】図12は、化合物C型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
数百のスクリーニング実験を鋭意行った後、開発可能な固体形態の特徴を実証するメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの3種類の酸付加塩を同定した。用いた条件下で、結晶塩を提供することができなかった酸の例には、酢酸、(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、グルクロン酸、馬尿酸、臭化水素酸、L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、リン酸、重硫酸ナトリウム、および硫酸がある。用いた条件下では量が不十分でさらなる考慮を要する結晶塩を提供した酸の例には、アジピン酸、安息香酸、ヘプタン酸、L−(+)−乳酸、マレイン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸、およびp−トルイル酸がある。開発可能な固体形態の特徴を実証したメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの塩を提供した酸は、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、およびシュウ酸である。ジ−p−トルオイル−L−酒石酸およびN−アセチル−L−フェニルアラニンは、米国で市販されている医薬化合物にはこれまで含まれていなかった。シュウ酸エスシタロプラムおよびオキサリプラチンは、シュウ酸を含むFDA承認医薬品の例である。
【0008】
本発明の一実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のジ−p−トルオイル−L−酒石酸または可変量のジ−p−トルオイル−L−酒石酸を含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態は、2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(以降、「化合物A」)(ここで、化合物は、2:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチル−アミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチル−カルバメート対ジ−p−トルオイル−L−酒石酸を含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのN−アセチル−L−フェニルアラニン塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のN−アセチル−L−フェニルアラニンまたは可変量のN−アセチル−L−フェニルアラニンを含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(以降「化合物B」)(ここで、化合物は、1:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対N−アセチル−L−フェニルアラニンを含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0012】
本発明のもう1つの実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのシュウ酸塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のシュウ酸または可変量のシュウ酸を含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0013】
本発明のもう1つの実施形態は、1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(以降、「化合物C」)(ここで、化合物は、1:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチル−アミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチル−カルバメート対シュウ酸を含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0014】
用語「溶媒和物」は結晶形態を指し、ここで、溶媒分子は、結晶化中に結晶格子に組み入れられる。溶媒和物は、水を含んでもよく、またはエタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸、エタノールアミン、および酢酸エチルのような非水性溶媒を含んでもよい。水が結晶格子に組み入れられる溶媒分子である溶媒和物を、典型的に、「水和物」と称する。水和物として、化学量論的量の水和物(例えば、一水和物)、ならびに可変量の水を含有する組成物(例えば、半水和物)が挙げられる。
【0015】
開示された化合物を命名する場合、その溶媒和物(特に、水和物)を含む化合物が結晶形態で存在し得ることが理解されるべきである。化合物、またはその溶媒和物(特に、水和物)はまた、多型性(即ち、異なる結晶形態で存在する能力)を示してもよい。これらの異なる結晶形態は、典型的に、「多型」として公知である。命名する場合、開示された化合物、またはその溶媒和物(特に、水和物)もまた、そのすべての多型を含むことが理解されるべきである。多型は、同じ化学組成を有するが、結晶固体状態の充填、幾何学的配置、および他の記述的特性が異なる。従って、多型は、形状、密度、硬度、変形能、安定性、および溶解特性のような異なる物理特性を有し得る。典型的に、多型は、同定に使用され得る異なる融点、IRスペクトル、およびX線粉末回折パターンを示す。当業者は、例えば、化合物を結晶化/再結晶化するのに使用される条件を変更または調整することによって、異なる多型が生成され得ることを理解するであろう。
【0016】
本発明のもう1つの実施形態は、図1に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物A(以降、「化合物A型I」)の結晶形態に関する。
【0017】
本発明のもう1つの実施形態は、約5.9、6.6、8.7、8.9、11.8、12.4、13.1、13.6、14.2、14.5、15.3、16.1、17.3、17.9、18.6、18.9、19.8、20.2、20.8、21.3、21.7、22.1、22.3、22.5、23.0、23.6、24.1、25.1、25.8、26.2、26.9、29.4、29.9、および32.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約5.9、6.6、8.7、8.9、および14.2で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約5.9、6.6、14.2、17.3、18.9、19.8、20.8、および21.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態は、図5に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図9に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。
【0019】
本発明のもう1つの実施形態は、図2に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物A(以降、「化合物A型II」)の結晶形態に関する。
【0020】
本発明のもう1つの実施形態は、約5.3、6.6、7.4、7.9、10.1、11.1、11.8、12.2、12.5、13.2、13.7、14.7、15.3、16.4、17.6、17.8、18.7、18.9、19.6、20.6、21.1、22.2、22.8、および23.6で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約5.3、6.6、7.9、11.1、および11.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約5.3、6.6、11.8、17.6、17.8、20.6、および21.1で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態は、図6に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図10に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態は、図3に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物B(以降、「化合物B型I」)の結晶形態に関する。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態は、約4.8、5.0、6.5、8.4、9.6、10.0、11.3、12.9、14.3、15.0、16.2、16.8、17.6、18.1、18.9、20.1、20.5、21.2、22.1、22.3、22.7、23.0、23.6、24.2、24.9、25.7、26.2、27.2、27.8、および31.5で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約4.8、6.5、11.3、14.3、15.0、および16.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約6.5、16.8、18.1、および20.1で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。
【0024】
本発明のもう1つの実施形態は、図7に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図11に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。
【0025】
本発明のもう1つの実施形態は、図4に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物C(以降、「化合物C型I」)の結晶形態に関する。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は、約9.9、11.2、15.0、15.7、16.4、16.8、17.6、17.9、19.8、20.1、20.9、22.0、22.3、23.2、23.6、24.9、25.9、26.3、27.4、29.9、および36.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約9.9、15.7、16.8、17.6、17.9、および19.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約16.8、17.6、19.8、20.9、22.0、22.3、および24.9で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態は、図8に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図12に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。
【0028】
X線粉末回折(XRPD)パターンの入手に関係する用いられる装置、湿度、温度、粉末結晶の配向、および他のパラメータは、回折パターンにおけるラインの出現、強度、および位置においていくつかのばらつきが生じ得ることが、当業者に周知であり、そして理解されている。本明細書において提供される図1、2、3、または4のX線粉末回折パターンに「実質的に従う」X線粉末回折パターンは、図1、2、3、または4のXRPDパターンを提供した化合物と同じ結晶形態を所有する化合物を表すことが当業者によって考慮されるXRPDパターンである。即ち、XRPDパターンは、図1、2、3、または4のXRPDパターンに同一であり得、またはより高い可能性で、それは若干異なり得る。そのようなXRPDパターンは、必ずしも本明細書において示す回折パターンのラインのそれぞれを示さなくてもよく、および/またはデータの入手に関係する条件の差異から生じる前記ラインの出現、強度、またはシフトに僅かな変化を示してもよい。当業者は、結晶化合物のサンプルが、それらのXRPDパターンの比較によって、本明細書において開示された形態と同じ形態を有するか、または異なる形態を有するかどうかを決定することが可能である。例えば、当業者は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩のサンプルのXRPDパターンに図1をオーバーレイし、そして当該技術分野における専門的技能および知識を使用して、サンプルのXRPDパターンが化合物A型I.のXRPDパターンに実質的に従うかどうかを容易に決定することができる。XRPDパターンが図1に実質的に従う場合、サンプル形態は、化合物A型Iと同じ形態を有することを、容易かつ正確に同定することができる。同様に、当業者は、XRPDパターンから得られる所与の回折角(°2θで表される)が、本明細書において示す値とほぼ同じであるかどうかを決定することができる。
【0029】
「本発明の化合物」は、本明細書において上記のようなメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)−メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、および/またはシュウ酸塩、および溶媒和物(特に、水和物)、ならびに前記化合物のすべての結晶形態、具体的には、化合物A型I、化合物A型II、化合物B型I、もしくは化合物C型Iとして本明細書において定義する結晶形態を意味する。
【0030】
本発明の化合物を調製するためのプロセスもまた、本発明の範囲内にある。例示のために、本発明のプロセスは、酢酸エチルまたはアセトンのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液と、そのままの状態かまたは酢酸エチルのような適切な溶媒中の溶液もしくは懸濁液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、およびシュウ酸から選択される酸とを混合し、続いて、加熱し、室温まで冷却し、場合によりさらに、室温で静置または撹拌し、ろ過し、そして乾燥することを含んでなる。
【0031】
本発明のさらなるプロセスは、酢酸エチルのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、酢酸エチルのような適切な溶媒中のジ−p−トルオイル−L−酒石酸の溶液で処理し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、酢酸エチルのような適切な溶媒で洗浄し、そして乾燥することを含んでなる。
【0032】
本発明のもう1つのプロセスは、酢酸エチルのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、酢酸エチルのような適切な溶媒中のN−アセチル−L−フェニルアラニンの溶液に添加し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、酢酸エチルのような適切な溶媒で洗浄し、そして乾燥することを含んでなる。
【0033】
本発明のもう1つのプロセスは、アセトンのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、シュウ酸で処理し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、そして乾燥することを含んでなる。
【0034】
本発明の化合物は、アスパラギン酸プロテアーゼ産物のレベルを減少させることが、病態の治療、もしくは感染因子がアスパラギン酸プロテアーゼの活性に依存する感染の治療に有効である障害または疾患を改善あるいは治療するのに有用である。高血圧症では、アンジオテンシンI、アンジオテンシノーゲンのレニンによって触媒される切断の産物のレベルの上昇が認められる。それ故、本発明の化合物は、高血圧症;(急性および慢性)鬱血性心不全のような心不全;左心室機能不全;心肥大;心線維症;心筋症(例えば、糖尿病性心筋症および梗塞後心筋症);上室性および心室性不整脈;心房細動;心房粗動;有害な血管リモデリング;心筋梗塞およびその続発症;アテローム硬化症;アンギーナ(不安定性または安定性のいずれであろうと);糖尿病性腎症のような腎不全状態;糸球体腎炎;腎線維症;強皮症;糸球体硬化症;細小血管合併症、例えば、糖尿病網膜症;腎血管性高血圧症;脈管障害;ニューロパチー;腎症、脈管障害、網膜症およびニューロパチーを含む糖尿病から生じる合併症;冠血管の疾患;タンパク尿;アルブミン尿症(albumenuria);術後高血圧症;メタボリックシンドローム;肥満;血管形成術後の再狭窄;眼内圧亢進、緑内障、網膜症、異常な血管増殖およびリモデリングを含む眼疾患および関連する異常;新生血管を伴う加齢黄班変性症のような血管新生関連障害;高アルドステロン症;不安状態;ならびに認知障害の治療において使用することができる(Fisher N.D.;Hollenberg N.K.Expert Opin.Investig.Drugs.2001,10,417−26)。
【0035】
高レベルのβ−アミロイド(アミロイド前駆体タンパク質に対する良好に特徴付けられたアスパラギン酸プロテアーゼの活性、β−セクレターゼ(BACE)活性の産物)は、アルツハイマー病患者の脳におけるアミロイドプラークの発達および進行を担うものと広く考えられている。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の分泌されたアスパラギン酸プロテアーゼは、その病原性ビルレンスに関連する(Naglik,J.R.;Challacombe,S.J.;Hube,B.Microbiology and Molecular Biology Reviews2003,67,400−428)。ウイルスHIVおよびHTLVは、ウイルス成熟に対するそれらのそれぞれのアスパラギン酸プロテアーゼに依存する。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は、プラスメプシンIおよびIIを使用して、ヘモグロビンを分解する。
【0036】
本発明は、本発明の化合物の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる、それを必要とする被験体においてアスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害を治療または改善するための治療方法を含む。
【0037】
「アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害または疾患」は、アスパラギン酸プロテアーゼの高発現もしくは過剰発現に関連する障害または疾患およびそのような疾患を伴う病態を含む。
【0038】
投与方法は、治療経過中の異なる時間においてか、または組み合わせ形態で同時に本発明の化合物または組成物の有効量を投与する工程を含む。本発明の方法は、すべての既知の治療的処置レジメンを含む。
【0039】
「有効量」は、被験体において所望される生物学的応答を誘発する原薬(即ち、本発明の化合物)の量を意味する。そのような応答として、治療する疾患の障害の徴候の緩和が挙げられる。そのような治療方法における本発明の化合物の有効量は、約0.01mg/kg/日〜約10mg/kg/日、好ましくは、約0.5mg/kg/日〜5mg/kg/日である。
【0040】
本発明の実施形態は、α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、ナトリウム利尿因子、塩類利尿薬、中枢作動性降圧薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、二重ACEおよび中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、またはエンドセリン受容体アンタゴニストを含む高血圧症の治療のための1つ以上のさらなる薬剤と共に、組み合わせ療法において本発明の化合物を投与することを含む(米国特許第5,821,232号明細書、米国特許第6,716,875号明細書、米国特許第5,663,188号明細書、Fossa,A.A.;DePasquale,M.J.;Ringer,L.J.;Winslow,R.L.”Synergistic effect on reduction in blood pressure with coadministration of a renin inhibitor or an angiotensin−converting enzyme inhibitor with an angiotensin II receptor antagonist”Drug Development Research1994,33(4),422−8を参照のこと(上記の記事および特許は、本明細書において参考として援用される))。
【0041】
α遮断薬として、ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、およびテラゾシンが挙げられる。
【0042】
組み合わせ療法のためのβ遮断薬は、アテノロール、ビソプロール(bisoprol)、メトプロロール、アセツトロール(acetutolol)、エスモロール、セリプロロール、タリプロロール(taliprolol)、アセブトロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロパノロール、ブプラノロール、ペンブトロール、メピンドロール、カルテオロール、ナドロール、カルベジロール、およびそれらの薬学的に許容できる塩から選択される。
【0043】
カルシウムチャンネル遮断薬として、ジヒドロピリジン(DHP)系薬剤および非DHP系薬剤が挙げられる。好適なDHP系薬剤は、アムロジピン、フェロジピン、リョシジン(ryosidine)、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルピジン(nigulpidine)、ニルジピン、ニモジフィン(nimodiphine)、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびニバルジピンならびにそれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。非DHP系薬剤は、フルナリジン、プレニラミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミル、およびベランピミル(verampimil)ならびにそれらの薬学的に許容できる塩から選択される。
【0044】
利尿薬は、例えば、アミロライド、クロロサイアザイド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロロジアジド、およびクロロタリドン(chlorothalidon)から選択されるチアジド誘導体である。
【0045】
中枢作動性降圧薬として、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシンおよびメチルドーパが挙げられる。
【0046】
ACE阻害薬として、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナザプリラート(benazaprilat)、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシピリル(moexipiril)、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラート、ラミプリル、ラミプリラート、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、およびゾフェノプリルが挙げられる。好適なACE阻害薬には、ベナゼプリル、エナルプリル(enalpril)、リシノプリル、およびラミプリルがある。
【0047】
二重ACE/NEP阻害薬には、例えば、オマパトリラート、ファシドトリル、およびファシドトリラート(fasidotrilat)がある。
【0048】
好適なARBとして、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、およびバルサルタンが挙げられる。
【0049】
好適なアルドステロンシンターゼ阻害薬は、アナストロゾール、ファドロゾール、およびエキセメスタンである。
【0050】
好適なアルドステロン受容体アンタゴニストは、スピロノラクトンおよびエプレレノンである。
【0051】
好適なエンドセリンアンタゴニストは、例えば、ボセンタン、エンラセンタン、アトラセンタン、ダルセンタン、シタキセンタン、およびテゾセンタンならびにそれらの薬学的に許容できる塩である。
【0052】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、AIDSの治療のための1つ以上のさらなる薬剤、逆転写酵素阻害薬、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、他のHIVプロテアーゼ阻害薬、HIVインテグラーゼ阻害薬、(付着、共受容体および融合阻害薬を含む)侵入阻害薬、アンチセンス薬、ならびに免疫刺激因子との組み合わせ療法において投与することを含む。
【0053】
好適な逆転写酵素阻害薬は、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、およびエムトリシタビンである。
【0054】
好適な非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬は、ネビラピン、デラビリジン(delaviridine)、およびエファビレンツである。
【0055】
好適なHIVプロテアーゼ阻害剤は、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、およびホスアンプレナビルである。
【0056】
好適なHIVインテグラーゼ阻害薬は、L−870,810およびS−1360である。
【0057】
侵入阻害薬として、CD4受容体、CCR5受容体またはCXCR4受容体に結合する化合物が挙げられる。侵入阻害薬の具体例として、エンフュービルタイド(gp41におけるHR2ドメインのペプチド模倣体)およびシフルビチド(sifurvitide)が挙げられる。
【0058】
好適な付着および融合阻害薬はエンフュービルタイドである。
【0059】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、およびメマンチンを含むアルツハイマー病の治療のための1つ以上のさらなる薬剤との組み合わせ療法で投与することを含む。
【0060】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、アルテミシニン、クロロキン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、メフロキン、プリマキン、ピリメタミン、キニーネ、スルファドキシンを含むマラリアの治療のための1つ以上のさらなる薬剤との組み合わせ療法で投与することを含む。
【0061】
組み合わせ療法は、本発明の化合物と前記他の薬剤との同時投与、本発明の化合物および他の薬剤の連続投与、本発明の化合物および他の薬剤を含有する組成物の投与、または本発明の化合物および他の薬剤を含有する個別の組成物の同時投与を含む。
【0062】
本発明の化合物はまた、遅延放出組成物を介して投与してもよく、ここで、組成物は、本発明の化合物および生分解性徐放性キャリア(例えば、高分子キャリア)または薬学的に許容できる非生分解性徐放性キャリア(例えば、イオン交換キャリア)を含む。
【0063】
生分解性および非生分解性遅延放出キャリアは、当該技術分野において周知である。生分解性キャリアは、原薬(即ち、本発明の化合物)を保持し、そして適切な環境(例えば、水性、酸性、塩基性など)において緩徐に分解/溶解して、原薬を放出する粒子またはマトリックスを形成させるために使用される。そのような粒子は、体液中で分解/溶解して、そこで原薬(即ち、本発明の化合物)を放出する。粒子は、好ましくは、ナノ粒子(例えば、直径で約1〜500nmの範囲、好ましくは、直径で約50〜200nm、最も好ましくは、直径で約100nm)である。徐放性組成物を調製するためのプロセスでは、最初に、徐放性組成物および本発明の化合物を有機溶媒に溶解するか、または分散させる。得られる混合物を、随意の界面活性剤を含有する水溶液に添加して、エマルジョンを生成させる。次いで、有機溶媒を、エマルジョンからエバポレートして、徐放性キャリアおよび本発明の化合物を含有する粒子のコロイド懸濁液を提供する。
【0064】
本発明の化合物は、経口的または注入による投与のために、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性もしくは油性の懸濁液、綿実油、ゴマ油、ヤシ油もしくはピーナツ油などのような食用油による風味付けされたエマルジョンのような水性形態、またはエリキシルもしくは類似の薬学的ビヒクルに組み入れてもよい。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁剤として、トラガント、アカシア、アルギン酸、デキストラン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびゼラチンのような合成ならびに天然のゴムが挙げられる。適切に風味付けされた懸濁剤または分散剤中の液体形態はまた、合成および天然のゴムを含んでもよい。非経口投与では、滅菌懸濁液および溶液が所望される。一般的に、適切な保存剤を含有する等張性調製物は、静脈内投与が所望される場合、用いられる。
【0065】
本発明の化合物は、注入を介して非経口的に投与してもよい。非経口製剤は、適切な不活な液体キャリア中に溶解されたかまたは混合された原薬(即ち、本発明の化合物)からなり得る。許容できる液体キャリアは、通常、溶解度または保存を援助するための水性溶媒および他の随意の成分を含んでなる。そのような水性溶媒として、滅菌水、リンゲル液、または等張水性生理食塩溶液が挙げられる。他の随意の成分として、植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、およびゴマ油)、ならびに有機溶媒(例えば、ソルケタール、グリセロール、およびホルミル)が挙げられる。滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁剤として用いてもよい。非経口製剤は、原薬(即ち、本発明の化合物)を液体キャリアに溶解または懸濁することによって調製され、それによって、最終用量単位は、原薬(即ち、本発明の化合物)の0.005〜10重量%を含有する。他の添加剤として、保存剤、等張化剤(isotonizer)、溶解剤、安定剤、および鎮痛剤(pain−soothing agent)が挙げられる。適切な液体キャリア、懸濁剤などが用いられ得る場合、注入可能な懸濁液を調製してもよい。
【0066】
本発明の化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルを使用して、鼻腔内に投与してもよい。
【0067】
本発明の化合物はまた、適切な局所経皮ビヒクルまたは経皮パッチを使用して、局所的に投与してもよい。
【0068】
眼内投与では、本発明の化合物を含有する医薬組成物は、好ましくは、眼用組成物の形態である。眼用組成物は、好ましくは、点眼製剤として処方され、そして眼への投与を容易にするのに適切な容器、例えば、適切なピペットが装着された滴瓶に充填される。好ましくは、組成物は、滅菌されており、そして精製水を使用する水性基剤をベースとする。本発明の化合物に加えて、眼用組成物は、次のものの1つ以上を含有してもよい:a)ポリオキシエチレン脂肪酸エステルのような界面活性剤;b)典型的に、約0.05〜約5.0%(wt/vol)の範囲の濃度のセルロース、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、およびポリビニルピロリドンのような増粘剤;c)(窒素を含有する容器への組成物の貯蔵、場合により、Feのような脱酸素剤の封入の代替物として、またはそれらに加えて)約0.00005〜約0.1%(wt/vol)の濃度のブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、またはブチル化ヒドロキシトルエンのような抗酸化剤;d)約0.01〜0.5%(wt/vol)の濃度のエタノール;ならびにe)等張剤、緩衝液、保存剤、および/またはpH制御剤のような他の賦形剤。眼用組成物のpHは、望ましくは、4〜8の範囲内にある。
【0069】
本発明は、それを必要とする被験体におけるアスパラギン酸プロテアーゼ仲介慢性障害もしくは疾患または感染を治療または改善するための組成物の調製のための本発明の化合物の使用を含み、ここで、組成物は、本発明の化合物および随意の薬学的に許容できるキャリアの1つ以上の混合物をさらに含んでなる。
【0070】
本発明は、特に、アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害の治療における有効な治療物質としての本発明の化合物の使用をさらに含む。特に、本発明は、高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害の治療における本発明の化合物の使用を含む。
【0071】
もう1つの態様では、本発明は、上記の障害の治療に使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用を含む。
【0072】
「薬学的に許容できるキャリア」は、ヒトに適切に投与する場合、有害な反応を生じず、そして原薬(即ち、本発明の化合物)のビヒクルとして使用される本発明の化合物の処方に使用するのに十分な純度および量であるいずれか1つ以上の化合物および/または組成物を意味する。
【0073】
本発明は、本発明の化合物の1つ以上と随意の薬学的に許容できるキャリアとを混合することを含んでなる組成物を作製するためのプロセスをさらに含み;そしてそのようなプロセスから生じるそれらの組成物を含み、このプロセスは、従来の薬学的技術を含む。例えば、本発明の化合物を、処方前にナノミル処理してもよい。本発明の化合物はまた、当該技術分野において公知の粉砕、微粉化または他の粒度減少方法によって、調製してもよい。そのような方法として、米国特許第4,826,689号明細書、同第5,145,684号明細書、同第5,298,262号明細書、同第5,302,401号明細書、同第5,336,507号明細書、同第5,340,564号明細書、同第5,346,702号明細書、同第5,352,459号明細書、同第5,354,560号明細書、同第5,384,124号明細書、同第5,429,824号明細書、同第5,503,723号明細書、同第5,510,118号明細書、同第5,518,187号明細書、同第5,518,738号明細書、同第5,534,270号明細書、同第5,536,508号明細書、同第5,552,160号明細書、同第5,560,931号明細書、同第5,560,932号明細書、同第5,565,188号明細書、同第5,569,448号明細書、同第5,571,536号明細書、同第5,573,783号明細書、同第5,580,579号明細書、同第5,585,108号明細書、同第5,587,143号明細書、同第5,591,456号明細書、同第5,622,938号明細書、同第5,662,883号明細書、同第5,665,331号明細書、同第5,718,919号明細書、同第5,747,001号明細書、PCT出願国際公開第93/25190号パンフレット、国際公開第96/24336号パンフレット、および国際公開第98/35666号パンフレット(それらのそれぞれは、本明細書において参考として援用される)に記載の方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、当業者に既知の技術および方法を使用して、調製してもよい。当該技術分野において一般に使用される方法のいくつかについては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)(それらの全教示内容は、本明細書において参考として援用される)に記載されている。
【0074】
本発明の組成物は、経眼、経口、点鼻、経皮、閉塞を伴うまたは伴わない局所、静脈内(ボーラスおよび輸注の両方)、ならびに注入(腹腔内、皮下、筋肉内、腫瘍内、もしくは非経口的)を含む。組成物は、経眼、経口、鼻腔内、舌下、非経口的、もしくは直腸内、あるいは吸入または通気(insufflation)投与のための錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、リポソーム、イオン交換樹脂、滅菌点眼溶液、または経眼送達デバイス(例えば、即時放出、時限放出、または持続放出を容易にするコンタクトレンズなど)、非経口溶液または懸濁液、計量エアゾルまたは液体スプレー、滴下、アンプル、自動注入デバイス、または坐剤のような投薬単位であってもよい。
【0075】
経口投与に適切な本発明の組成物として、ピル、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ、即時放出、時限放出、および持続放出処方を含む)、顆粒および粉末のような固体形態;ならびに溶液、シロップ、エリキシル、エマルジョン、および懸濁液のような液体形態が挙げられる。経眼投与に有用な形態として、滅菌溶液または経眼送達デバイスが挙げられる。非経口投与に有用な形態として、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が挙げられる。
【0076】
本発明の化合物を含有する剤形は、治療および/または予防効果を提供するのに必要な有効量の原薬(即ち、本発明の化合物)を含有する。組成物は、約5,000mg〜約0.5mg(好ましくは、約1,000mg〜約0.5mg)の本発明の組成物を含有してもよく、そして選択される投与形態に適切な任意の形態に構成してもよい。本発明の組成物は、1週間に1回または1箇月に1回の投与に適切な形態で投与してもよい。連日投与または間欠投与(post−periodic dosing)もまた使用してもよく、ここで、組成物は、1日あたり約1〜約5回投与してもよい。
【0077】
経口投与では、組成物は、好ましくは、例えば、1000〜0.5ミリグラム、より具体的には、500mg〜5mgの原薬(即ち、本発明の化合物)を含有する錠剤またはカプセルの形態である。用量は、治療する特定の患者に関連する因子(例えば、年齢、重量、食事、および投与の時間)、治療する病態の重症度、用いる化合物、投与形態、および調製物の強度に依存して変動する。
【0078】
経口組成物は、好ましくは、均質な組成物として処方され、ここで、原薬(即ち、本発明の化合物)は、混合物中に一様に分散され、これは、本発明の化合物の等量を含有する用量単位に容易に細分することができる。好ましくは、組成物は、本発明の化合物と、1つ以上の場合により存在する薬学的キャリア(例えば、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、グライダント、結合剤、および崩壊剤)、1つ以上の場合により存在する不活な薬学的賦形剤(例えば、水、グリコール、油、アルコール、風味付け剤、保存剤、着色剤、およびシロップ)、1つ以上の場合により存在する従来の錠剤化成分(例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、および多様なゴムのいずれか)、ならびに随意的な希釈剤(例えば、水)とを混合することによって、調製される。
【0079】
結合剤として、デンプン、ゼラチン、天然の糖(例えば、グルコースおよびβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味料並びに天然および合成のゴム(例えば、アカシアおよびトラガント)が挙げられる。崩壊剤として、デンプン、メチルセルロース、寒天、およびベントナイトが挙げられる。
【0080】
錠剤およびカプセルは、有利な経口剤形の代表である。錠剤は、標準的な技術を使用して、糖衣コーティングまたはフィルムコーティングすることができる。錠剤はまた、コーティングするか、またはそうでなければ、調合して、持続性制御放出性の治療効果を提供することもできる。剤形は、内部剤形および外部剤形成分を含んでなり得、ここで、外部成分は、内部成分上の外被の形態である。2種の成分は、胃において崩壊に抵抗し(例えば、腸溶層)、そして内部成分が無傷のまま十二指腸を通過することを可能にする層、または放出を遅延もしくは持続させる層によってさらに分離され得る。多様な腸溶および非腸溶層またはコーティング材料(例えば、ポリマー酸、セラック、アセチルアルコール、および酢酸セルロースもしくはそれらの組み合わせ)を使用することができる。
【0081】
これ以上詳細に述べるまでもなく、当業者であれば、上記の説明を使用して、その最も完全な程度で本発明を利用することができると考えられる。従って、以下の実施例は、単なる例示であって、いかなる方法においても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの調製
200mLのジクロロメタン中(国際公開第2008/036247号パンフレットにおけるよう調製した)メチル{2−[((R)−(3−クロロフェニル){(3R)−1−[({(2S)−2−(メチル−アミノ)−3−[(3R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]プロピル}アミノ)カルボニル]−3−ピペリジニル}メチル)オキシ]エチル}カルバメートのトリフルオロ酢酸塩(10.0g、15.65mmol)の溶液を、1N水酸化ナトリウム水溶液、水、および塩水で首尾よく洗浄した。有機部分をNa2SO4上で乾燥し、そして減圧下で濃縮して、灰白色の泡(7.50g、91%)として表題化合物を得た。1H NMR(CD3OD,400 MHz)δppm7.38−7.31(m,3H),7.24(m,1H),4.23(dd,J=13.1,3.6Hz,1H),4.03(d,J=8.8Hz,1H),3.84(m,3H),3.64(s,3H),3.42(ddd,Ja=5.8Hz,Jb=7.8Hz,Jc=11.1Hz,1H),3.24−3.30(m,5H),3.16(dd,Ja=6.3Hz,Jb=13.9Hz,1H),3.10 (dd,Ja=10Hz,Jb=H Hz,1H),2.88(m,2H),2.66(m,1H),2.42(s,3H),1.97(m,1H),1.75(m,2H),1.65−1.61(m,3H),1.40−1.09(m,6H);MS(m/z)525.3(M+H+)。
【0083】
実施例2
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
0.325mLの酢酸エチル中ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.048g、0.124mmol)の溶液に、0.325mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.130g、0.248mmol)を添加した。得られる溶液を、600RPMで撹拌しながら、50℃まで加熱した。80分間後、白色固体が形成され始めた。50℃でさらに2時間後、サンプルを6時間で周囲温度まで冷却し、そして周囲温度で1晩保持した。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0084】
実施例3
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
0.750mLの酢酸エチル中ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.110g、0.284mmol)の溶液に、0.750mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.300g、0.572mmol)を添加した。得られる溶液を、一定の撹拌(500RPM)で50℃まで加熱した。90分間後、種結晶(実施例2由来)を溶液に添加し、そして撹拌を継続した一方、混合物を50℃で維持した。種結晶の添加の約20分間以内に、白色の沈殿物が出現し始めた。スラリーを50℃で2時間保持し、続いて、緩徐に室温まで冷却した。スラリーを室温で1晩、放置した。スラリーをろ過し、酢酸エチルで洗浄し、そして減圧オーブン中50℃で約3時間、乾燥して、白色固体(0.354g、86%)として表題化合物を得た。
【0085】
実施例4
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
2.5mLの酢酸エチル中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(1.0g、1.904mmol)の溶液に、2.5mLの酢酸エチル中の溶液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.368g、0.952mmol)を添加した。得られる溶液を50℃で90分間、撹拌した。この時、種結晶(実施例3由来)を添加した。さらなる10分間の撹拌後、もはや撹拌ができなくなるほどの量で白色沈殿が形成した。次いで、混合物をろ過し、そして酢酸エチルで洗浄する前に、混合物を、室温で、4日間、置いた。固体を、減圧下で、2時間、室温で乾燥し、続いて、50℃で、3時間、乾燥して、白色固体(1.24g、91%)として表題化合物を得た。1H NMR(CD3OD,400MHz)δppm8.07(d,J=8.3Hz,2H),7.36−7.21(m,7H),5.87(s,1H),4.20(d,J=12.4Hz,1H),4.01(d,J=8.9Hz,1H),3.87−3.74(m,3H),3.63(s,3H),3.53(dd,Ja=2.4Hz,Jb=14.7Hz,1H),3.41(ddd,Ja=2.5Hz,Jb=4.3Hz,Jc=11Hz,1H),3.29−3.19(m,7H),3.10(dd,Ja=9.5Hz,Jb=11Hz,1H),2.92−2.82(m,2H),2.67(s,3H),2.42(s,3H),1.95(m,1H),1.73(m,2H),1.65−1.57(m,3H),1.43(t,J=7.0Hz,2H),1.31−1.09(m,4H);13C NMR(CD3OD,100MHz)δppm174.1,167.9,160.3,159.6,145.0,144.2,135.6,131.2,131.0,129.2,129.1,128.4,127.1,84.9,76.9.74.0,69.4,69.1,59.0,52.5,48.1,45.8,43.9,41.9,41.5,33.6,31.7,31.2,29.7,28.0,26.4,25.5,21.7;MS(m/z)525.0(M+H+)。この材料のX線粉末回折パターンを図1に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表Iに示す。以下のパラメータに従ってデータを獲得した:
スキャン範囲:2−40°2θ
発電力:40kV,40mA
線源:Cu Ka
スキャンタイプ:連続
1工程あたりの時間:10秒間
工程サイズ:1工程あたり0.017°2θ
サンプルの回転:1秒間回転時間
入射ビーム光学:0.04ラジアンソーラースリット、0.25°発散スリット、10mmビームマスク、0.5°散乱線除去スリット
回折ビーム光学:固定スリット(X’celeratorモジュール)、0.04ラジアンソーラースリット
検出タイプ:Philips X’Celerator RTMS(実時間マルチストリップ)
【0086】
【表1】
【0087】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図5に示す。データは、TA instruments Q1000Differential Scanning Calorimeter上で獲得した。サンプルを、30℃〜300℃、10℃/分で加熱した。この材料の熱重量分析トレースを図9に示す。データは、TA instruments Q500Thermogravimetric Analyzer上で獲得した。サンプルを、30℃〜300℃、10℃/分で加熱した。
【0088】
実施例5
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型II)の調製
35mLの酢酸エチル中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(14.0g、26.7mmol)の溶液に、35mLの酢酸エチル中の溶液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸(5.15g、13.33mmol)を添加した。得られる溶液を50℃で54分間、撹拌した。次いで、混合物をろ過し、そして酢酸エチルで洗浄する前に、混合物を、室温で、1晩、静置した。固体を週末の間凍結乾燥し、続いて、減圧下、50℃で3時間、乾燥して、白色固体(17.56g、92%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図2に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IIに示す。
【0089】
【表2】
【0090】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図6に示す。この材料の熱重量分析トレースを図10に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0091】
実施例6
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(化合物B型I)の調製
0.325mLの酢酸エチル中N−アセチル−L−フェニルアラニン(0.051g、0.248mmol)の懸濁液に、0.325mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.130g、0.248mmol)を添加した。得られる澄明な溶液を、600RPMで撹拌しながら、50℃まで加熱した。80分間後、ヘプタン(0.1mL)を溶液に添加し、そして約20分間以内に白色固体が形成し始めた。50℃で2時間後、サンプルを6時間で周囲温度まで冷却し、そして周囲温度で1晩保持した。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0092】
実施例7
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(化合物B型I)の調製
0.750mLの酢酸エチル中N−アセチル−L−フェニルアラニン(0.207g、1.00mmol)の懸濁液に、0.750mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.300g、0.571mmol)を添加した。バイアルを、一定の撹拌(500RPM)で50℃まで加熱し、澄明な溶液を得た。90分間後、種結晶(実施例6由来)を溶液に添加し、そして撹拌を継続した一方、混合物を50℃で維持した。種結晶の添加の約20分間以内に、濃白色の沈殿物が出現し始めた。酢酸エチルのさらなるアリコート(0.750mL)を添加して、撹拌を容易にし、そしてスラリーを50℃で2時間、保持した。次いで、スラリーを、緩徐に室温まで冷却し、続いて、1晩保持した。スラリーをろ過し、酢酸エチルで洗浄し、そして真空用フィルター上で30分間、空気乾燥して、白色固体(0.288g、69%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図3に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IIIに示す。
【0093】
【表3】
【0094】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図7に示す。この材料の熱重量分析トレースを図11に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0095】
実施例8
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(化合物C型I)の調製
アセトン中シュウ酸(2等量)の溶液に、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(1等量)を添加した。混合物を約1分間音波処理し、澄明な溶液を得た。ヘイズが形成されるまで、溶液にヘキサンを添加した。次いで、澄明な溶液が持続するまで、混合物をアセトンで逆滴定した。溶液を、周囲温度で10日間、放置したが、その間に沈殿物が形成された。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0096】
実施例9
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(化合物C型I)の調製
50.0mLのアセトン中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(2.43g、4.62mmol)の溶液に、シュウ酸(0.457g、5.08mmol)を添加した。得られる溶液を40℃まで加熱し、そして種結晶(実施例8由来)を添加した。スラリーが生じ、そして撹拌を40℃で継続した。約1時間後、スラリーが顕著に厚くなり、そして撹拌をさらに約3時間、継続した。スラリーを20℃まで0.25℃/分で冷却し、そして20℃で3日間、撹拌した。固体をろ過し、そして50℃、減圧下で、週末の間乾燥して、白色固体(1.49g、52%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図4に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IVに示す。
【0097】
【表4】
【0098】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図8に示す。この材料の熱重量分析トレースを図12に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0099】
実施例10
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートフマル酸(以降、「化合物D」)の調製
エタノール(1.0mL)中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.0342g、0.065mmol)の溶液に、フマル酸(0.0076g、0.065mmol)を添加した。完全に澄明になるまで得られる溶液を撹拌し、そして溶媒を減圧下で取り出した。残渣を水(0.5mL)に溶解し、そして凍結乾燥して、白色固体(0.03024g、72%)として表題化合物を得た。
【0100】
実施例11
経口バイオアベイラビリティ
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの2:1パモ酸塩(以降、「化合物E」)は、国際公開第2008/036247号パンフレットに記載の通りに調製することができる。
【0101】
Sprague−Dawleyラットにおける経口バイオアベイラビリティ
雄性Sprague−Dawleyラットにおける経口薬物動態データを、化合物Dの溶液処方物および微粒子化した化合物Eの懸濁処方物について得た。化合物Dを、10mg/kgの用量(1kgあたり5mLの用量溶液)で水中0.5%メチルセルロースを伴う処方物中澄明な無色の溶液として、強制経口投与した。次の時間間隔で、採血を行った:0、5、15、30、60、120、180、240、360、480、および1440分間。化合物Eを、5mg/kgの用量(1kgあたり10mLの用量溶液)で水中1%メチルセルロースを伴う処方物中の懸濁液として、胃ボーラスによって投与した。次の時間間隔で、採血(50μL)を行った:0、20、40、60、120、180、240、360、480、720、960、1200、および1440分間。
【0102】
ビーグル犬における経口バイオアベイラビリティ
雄性ビーグル犬における経口薬物動態データを、化合物Dの処方物の溶液ならびに化合物A型I、化合物B型I、および化合物C型I.の処方物のカプセルについて得た。化合物Dを、投与前に、0.22μmのMILLEX−GVフィルターを使用してろ過した2%DMSOを含有する水中澄明な無色の溶液(最終pH=3.5)として、強制投与した。上記の化合物A、B、およびCを、ゼラチンカプセル(1.37mL)中5mg/kgの用量でそれぞれ投与した。次の時間間隔で、採血(50μL)を行った:0、20、40、60、120、180、240、360、480、600、および1440分間。
【0103】
各化合物の濃度を、これらのサンプルのアリコート(25μLの血液+25μLの水)のLC/MS/MS分析および濃度対時間プロットのDose−Normalized Area Under the Curve (DNAUC)として報告される全血液暴露によって定量し、そして1リットルあたりキログラム時間(kg・時/L)の単位で表した。すべての経口バイオアベイラビリティを、経口セグメント由来のDNAUCをi.v.セグメント由来のDNAUCで割り、100を掛けることによって計算した。データを以下の表Vにまとめる。
【0104】
【表5】
【背景技術】
【0001】
固体の経口投与される医薬化合物の開発可能な形態の追求では、多くの特定の特徴が求められる。アモルファス形態の医薬化合物が開発され得るが、高い結晶性を有する化合物が、一般的に好適である。しばしば、そのような高結晶性化合物は塩である。そのような塩はまた、次の特徴を所有することが大いに所望される:良好な安定性、良好な水溶解度(好ましくは、>1mg/mL)、良好なインビボでの経口バイオアベイラビリティ、および良好な収率で得られる能力(好ましくは、>50%)。
【0002】
国際公開第2008/036247号パンフレットは、アスパラギン酸プロテアーゼ、特に、レニンに対して阻害活性を有することが示されおり、そしてアスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害の治療において有用であることが示されている一連の化合物について記載している。具体的には、その出願では、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのトリフルオロ酢酸塩およびパモ酸塩(2:1)について説明している。
【0003】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの2:1パモ酸塩は、良好な収率で得られ、そして高結晶性であったが、この材料は、インビボで経口バイオアベイラビリティが低いことが実証された。多くの従来の酸を用いた有意な数のスクリーニング実験後、L−(+)−酒石酸は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの結晶塩を提供することが見出された。しかし、多様な条件下において、得られた酒石酸塩(それは結晶性であったが、高い程度のアモルファスの特徴が実証された)の収率は低かった(15〜20%)。L−(+)−酒石酸によるさらなる実験では、良好な収率(約80%)で塩形態が提供されたが、この材料は、少なくとも異なる3つの結晶形態の複雑な混合物であった。従って、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの開発可能な塩形態が求められた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの塩である新規の化合物に関する。本発明の化合物は、以下の構造(I)によって表される:
【化1】
【0005】
具体的には、X−Hがジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニンまたはシュウ酸である化合物について説明する。本発明の化合物は、アスパラギン酸プロテアーゼ、特に、レニンを阻害するのに、ならびに高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害のような疾患を治療するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、化合物A型I.のX線粉末回折パターンを示す。
【図2】図2は、化合物A型IIのX線粉末回折パターンを示す。
【図3】図3は、化合物B型IのX線粉末回折パターンを示す。
【図4】図4は、化合物C型IのX線粉末回折パターンを示す。
【図5】図5は、化合物A型I.の示差走査熱量測定トレースを示す。
【図6】図6は、化合物A型IIの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図7】図7は、化合物B型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図8】図8は、化合物C型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図9】図9は、化合物A型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図10】図10は、化合物A型IIの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図11】図11は、化合物B型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【図12】図12は、化合物C型Iの示差走査熱量測定トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
数百のスクリーニング実験を鋭意行った後、開発可能な固体形態の特徴を実証するメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの3種類の酸付加塩を同定した。用いた条件下で、結晶塩を提供することができなかった酸の例には、酢酸、(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、グルクロン酸、馬尿酸、臭化水素酸、L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、リン酸、重硫酸ナトリウム、および硫酸がある。用いた条件下では量が不十分でさらなる考慮を要する結晶塩を提供した酸の例には、アジピン酸、安息香酸、ヘプタン酸、L−(+)−乳酸、マレイン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸、およびp−トルイル酸がある。開発可能な固体形態の特徴を実証したメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの塩を提供した酸は、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、およびシュウ酸である。ジ−p−トルオイル−L−酒石酸およびN−アセチル−L−フェニルアラニンは、米国で市販されている医薬化合物にはこれまで含まれていなかった。シュウ酸エスシタロプラムおよびオキサリプラチンは、シュウ酸を含むFDA承認医薬品の例である。
【0008】
本発明の一実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のジ−p−トルオイル−L−酒石酸または可変量のジ−p−トルオイル−L−酒石酸を含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態は、2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(以降、「化合物A」)(ここで、化合物は、2:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチル−アミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチル−カルバメート対ジ−p−トルオイル−L−酒石酸を含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのN−アセチル−L−フェニルアラニン塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のN−アセチル−L−フェニルアラニンまたは可変量のN−アセチル−L−フェニルアラニンを含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(以降「化合物B」)(ここで、化合物は、1:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対N−アセチル−L−フェニルアラニンを含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0012】
本発明のもう1つの実施形態は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのシュウ酸塩に関する。本発明は、さらに、それらの調製のためのプロセス、それらを含んでなる医薬製剤、およびそれら、またはそれらの医薬製剤の投与によってアスパラギン酸プロテアーゼによって、仲介される疾患を治療する方法に関する。示された化合物は、化学量論的量のシュウ酸または可変量のシュウ酸を含有し得ることが理解されるべきである。上記の示された化合物を命名する場合、化合物の溶媒和物(例えば、水和物)も含まれることが理解されるべきである。
【0013】
本発明のもう1つの実施形態は、1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(以降、「化合物C」)(ここで、化合物は、1:1比のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチル−アミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチル−カルバメート対シュウ酸を含有する)、その調製のためのプロセス、この化合物を含んでなる医薬製剤、およびこの化合物、またはその医薬製剤の投与によって、アスパラギン酸プロテアーゼにより仲介される疾患を治療するための方法に関する。
【0014】
用語「溶媒和物」は結晶形態を指し、ここで、溶媒分子は、結晶化中に結晶格子に組み入れられる。溶媒和物は、水を含んでもよく、またはエタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸、エタノールアミン、および酢酸エチルのような非水性溶媒を含んでもよい。水が結晶格子に組み入れられる溶媒分子である溶媒和物を、典型的に、「水和物」と称する。水和物として、化学量論的量の水和物(例えば、一水和物)、ならびに可変量の水を含有する組成物(例えば、半水和物)が挙げられる。
【0015】
開示された化合物を命名する場合、その溶媒和物(特に、水和物)を含む化合物が結晶形態で存在し得ることが理解されるべきである。化合物、またはその溶媒和物(特に、水和物)はまた、多型性(即ち、異なる結晶形態で存在する能力)を示してもよい。これらの異なる結晶形態は、典型的に、「多型」として公知である。命名する場合、開示された化合物、またはその溶媒和物(特に、水和物)もまた、そのすべての多型を含むことが理解されるべきである。多型は、同じ化学組成を有するが、結晶固体状態の充填、幾何学的配置、および他の記述的特性が異なる。従って、多型は、形状、密度、硬度、変形能、安定性、および溶解特性のような異なる物理特性を有し得る。典型的に、多型は、同定に使用され得る異なる融点、IRスペクトル、およびX線粉末回折パターンを示す。当業者は、例えば、化合物を結晶化/再結晶化するのに使用される条件を変更または調整することによって、異なる多型が生成され得ることを理解するであろう。
【0016】
本発明のもう1つの実施形態は、図1に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物A(以降、「化合物A型I」)の結晶形態に関する。
【0017】
本発明のもう1つの実施形態は、約5.9、6.6、8.7、8.9、11.8、12.4、13.1、13.6、14.2、14.5、15.3、16.1、17.3、17.9、18.6、18.9、19.8、20.2、20.8、21.3、21.7、22.1、22.3、22.5、23.0、23.6、24.1、25.1、25.8、26.2、26.9、29.4、29.9、および32.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約5.9、6.6、8.7、8.9、および14.2で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約5.9、6.6、14.2、17.3、18.9、19.8、20.8、および21.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態は、図5に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図9に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物A型Iの結晶形態に関する。
【0019】
本発明のもう1つの実施形態は、図2に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物A(以降、「化合物A型II」)の結晶形態に関する。
【0020】
本発明のもう1つの実施形態は、約5.3、6.6、7.4、7.9、10.1、11.1、11.8、12.2、12.5、13.2、13.7、14.7、15.3、16.4、17.6、17.8、18.7、18.9、19.6、20.6、21.1、22.2、22.8、および23.6で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約5.3、6.6、7.9、11.1、および11.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約5.3、6.6、11.8、17.6、17.8、20.6、および21.1で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態は、図6に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図10に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物A型IIの結晶形態に関する。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態は、図3に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物B(以降、「化合物B型I」)の結晶形態に関する。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態は、約4.8、5.0、6.5、8.4、9.6、10.0、11.3、12.9、14.3、15.0、16.2、16.8、17.6、18.1、18.9、20.1、20.5、21.2、22.1、22.3、22.7、23.0、23.6、24.2、24.9、25.7、26.2、27.2、27.8、および31.5で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約4.8、6.5、11.3、14.3、15.0、および16.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約6.5、16.8、18.1、および20.1で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。
【0024】
本発明のもう1つの実施形態は、図7に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図11に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物B型Iの結晶形態に関する。
【0025】
本発明のもう1つの実施形態は、図4に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する化合物C(以降、「化合物C型I」)の結晶形態に関する。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は、約9.9、11.2、15.0、15.7、16.4、16.8、17.6、17.9、19.8、20.1、20.9、22.0、22.3、23.2、23.6、24.9、25.9、26.3、27.4、29.9、および36.7で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。より詳細には、本発明のもう1つの実施形態は、約9.9、15.7、16.8、17.6、17.9、および19.8で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。本発明のさらなる実施形態は、約16.8、17.6、19.8、20.9、22.0、22.3、および24.9で回折角(°2θ)を提供するX線粉末回折パターンを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態は、図8に実質的に従う示差走査熱量測定トレースおよび/または図12に実質的に従う熱重量分析トレースを提供する化合物C型Iの結晶形態に関する。
【0028】
X線粉末回折(XRPD)パターンの入手に関係する用いられる装置、湿度、温度、粉末結晶の配向、および他のパラメータは、回折パターンにおけるラインの出現、強度、および位置においていくつかのばらつきが生じ得ることが、当業者に周知であり、そして理解されている。本明細書において提供される図1、2、3、または4のX線粉末回折パターンに「実質的に従う」X線粉末回折パターンは、図1、2、3、または4のXRPDパターンを提供した化合物と同じ結晶形態を所有する化合物を表すことが当業者によって考慮されるXRPDパターンである。即ち、XRPDパターンは、図1、2、3、または4のXRPDパターンに同一であり得、またはより高い可能性で、それは若干異なり得る。そのようなXRPDパターンは、必ずしも本明細書において示す回折パターンのラインのそれぞれを示さなくてもよく、および/またはデータの入手に関係する条件の差異から生じる前記ラインの出現、強度、またはシフトに僅かな変化を示してもよい。当業者は、結晶化合物のサンプルが、それらのXRPDパターンの比較によって、本明細書において開示された形態と同じ形態を有するか、または異なる形態を有するかどうかを決定することが可能である。例えば、当業者は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩のサンプルのXRPDパターンに図1をオーバーレイし、そして当該技術分野における専門的技能および知識を使用して、サンプルのXRPDパターンが化合物A型I.のXRPDパターンに実質的に従うかどうかを容易に決定することができる。XRPDパターンが図1に実質的に従う場合、サンプル形態は、化合物A型Iと同じ形態を有することを、容易かつ正確に同定することができる。同様に、当業者は、XRPDパターンから得られる所与の回折角(°2θで表される)が、本明細書において示す値とほぼ同じであるかどうかを決定することができる。
【0029】
「本発明の化合物」は、本明細書において上記のようなメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)−メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、および/またはシュウ酸塩、および溶媒和物(特に、水和物)、ならびに前記化合物のすべての結晶形態、具体的には、化合物A型I、化合物A型II、化合物B型I、もしくは化合物C型Iとして本明細書において定義する結晶形態を意味する。
【0030】
本発明の化合物を調製するためのプロセスもまた、本発明の範囲内にある。例示のために、本発明のプロセスは、酢酸エチルまたはアセトンのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液と、そのままの状態かまたは酢酸エチルのような適切な溶媒中の溶液もしくは懸濁液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸、N−アセチル−L−フェニルアラニン、およびシュウ酸から選択される酸とを混合し、続いて、加熱し、室温まで冷却し、場合によりさらに、室温で静置または撹拌し、ろ過し、そして乾燥することを含んでなる。
【0031】
本発明のさらなるプロセスは、酢酸エチルのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、酢酸エチルのような適切な溶媒中のジ−p−トルオイル−L−酒石酸の溶液で処理し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、酢酸エチルのような適切な溶媒で洗浄し、そして乾燥することを含んでなる。
【0032】
本発明のもう1つのプロセスは、酢酸エチルのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、酢酸エチルのような適切な溶媒中のN−アセチル−L−フェニルアラニンの溶液に添加し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、酢酸エチルのような適切な溶媒で洗浄し、そして乾燥することを含んでなる。
【0033】
本発明のもう1つのプロセスは、アセトンのような適切な溶媒中のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの遊離塩基の溶液を、シュウ酸で処理し、続いて、加熱し、究極的に室温まで冷却し、室温で静置または撹拌し、ろ過し、そして乾燥することを含んでなる。
【0034】
本発明の化合物は、アスパラギン酸プロテアーゼ産物のレベルを減少させることが、病態の治療、もしくは感染因子がアスパラギン酸プロテアーゼの活性に依存する感染の治療に有効である障害または疾患を改善あるいは治療するのに有用である。高血圧症では、アンジオテンシンI、アンジオテンシノーゲンのレニンによって触媒される切断の産物のレベルの上昇が認められる。それ故、本発明の化合物は、高血圧症;(急性および慢性)鬱血性心不全のような心不全;左心室機能不全;心肥大;心線維症;心筋症(例えば、糖尿病性心筋症および梗塞後心筋症);上室性および心室性不整脈;心房細動;心房粗動;有害な血管リモデリング;心筋梗塞およびその続発症;アテローム硬化症;アンギーナ(不安定性または安定性のいずれであろうと);糖尿病性腎症のような腎不全状態;糸球体腎炎;腎線維症;強皮症;糸球体硬化症;細小血管合併症、例えば、糖尿病網膜症;腎血管性高血圧症;脈管障害;ニューロパチー;腎症、脈管障害、網膜症およびニューロパチーを含む糖尿病から生じる合併症;冠血管の疾患;タンパク尿;アルブミン尿症(albumenuria);術後高血圧症;メタボリックシンドローム;肥満;血管形成術後の再狭窄;眼内圧亢進、緑内障、網膜症、異常な血管増殖およびリモデリングを含む眼疾患および関連する異常;新生血管を伴う加齢黄班変性症のような血管新生関連障害;高アルドステロン症;不安状態;ならびに認知障害の治療において使用することができる(Fisher N.D.;Hollenberg N.K.Expert Opin.Investig.Drugs.2001,10,417−26)。
【0035】
高レベルのβ−アミロイド(アミロイド前駆体タンパク質に対する良好に特徴付けられたアスパラギン酸プロテアーゼの活性、β−セクレターゼ(BACE)活性の産物)は、アルツハイマー病患者の脳におけるアミロイドプラークの発達および進行を担うものと広く考えられている。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の分泌されたアスパラギン酸プロテアーゼは、その病原性ビルレンスに関連する(Naglik,J.R.;Challacombe,S.J.;Hube,B.Microbiology and Molecular Biology Reviews2003,67,400−428)。ウイルスHIVおよびHTLVは、ウイルス成熟に対するそれらのそれぞれのアスパラギン酸プロテアーゼに依存する。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は、プラスメプシンIおよびIIを使用して、ヘモグロビンを分解する。
【0036】
本発明は、本発明の化合物の有効量を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる、それを必要とする被験体においてアスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害を治療または改善するための治療方法を含む。
【0037】
「アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害または疾患」は、アスパラギン酸プロテアーゼの高発現もしくは過剰発現に関連する障害または疾患およびそのような疾患を伴う病態を含む。
【0038】
投与方法は、治療経過中の異なる時間においてか、または組み合わせ形態で同時に本発明の化合物または組成物の有効量を投与する工程を含む。本発明の方法は、すべての既知の治療的処置レジメンを含む。
【0039】
「有効量」は、被験体において所望される生物学的応答を誘発する原薬(即ち、本発明の化合物)の量を意味する。そのような応答として、治療する疾患の障害の徴候の緩和が挙げられる。そのような治療方法における本発明の化合物の有効量は、約0.01mg/kg/日〜約10mg/kg/日、好ましくは、約0.5mg/kg/日〜5mg/kg/日である。
【0040】
本発明の実施形態は、α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、ナトリウム利尿因子、塩類利尿薬、中枢作動性降圧薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、二重ACEおよび中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、またはエンドセリン受容体アンタゴニストを含む高血圧症の治療のための1つ以上のさらなる薬剤と共に、組み合わせ療法において本発明の化合物を投与することを含む(米国特許第5,821,232号明細書、米国特許第6,716,875号明細書、米国特許第5,663,188号明細書、Fossa,A.A.;DePasquale,M.J.;Ringer,L.J.;Winslow,R.L.”Synergistic effect on reduction in blood pressure with coadministration of a renin inhibitor or an angiotensin−converting enzyme inhibitor with an angiotensin II receptor antagonist”Drug Development Research1994,33(4),422−8を参照のこと(上記の記事および特許は、本明細書において参考として援用される))。
【0041】
α遮断薬として、ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、およびテラゾシンが挙げられる。
【0042】
組み合わせ療法のためのβ遮断薬は、アテノロール、ビソプロール(bisoprol)、メトプロロール、アセツトロール(acetutolol)、エスモロール、セリプロロール、タリプロロール(taliprolol)、アセブトロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロパノロール、ブプラノロール、ペンブトロール、メピンドロール、カルテオロール、ナドロール、カルベジロール、およびそれらの薬学的に許容できる塩から選択される。
【0043】
カルシウムチャンネル遮断薬として、ジヒドロピリジン(DHP)系薬剤および非DHP系薬剤が挙げられる。好適なDHP系薬剤は、アムロジピン、フェロジピン、リョシジン(ryosidine)、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルピジン(nigulpidine)、ニルジピン、ニモジフィン(nimodiphine)、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびニバルジピンならびにそれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。非DHP系薬剤は、フルナリジン、プレニラミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミル、およびベランピミル(verampimil)ならびにそれらの薬学的に許容できる塩から選択される。
【0044】
利尿薬は、例えば、アミロライド、クロロサイアザイド、ヒドロクロロチアジド、メチルクロロジアジド、およびクロロタリドン(chlorothalidon)から選択されるチアジド誘導体である。
【0045】
中枢作動性降圧薬として、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシンおよびメチルドーパが挙げられる。
【0046】
ACE阻害薬として、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナザプリラート(benazaprilat)、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシピリル(moexipiril)、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラート、ラミプリル、ラミプリラート、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、およびゾフェノプリルが挙げられる。好適なACE阻害薬には、ベナゼプリル、エナルプリル(enalpril)、リシノプリル、およびラミプリルがある。
【0047】
二重ACE/NEP阻害薬には、例えば、オマパトリラート、ファシドトリル、およびファシドトリラート(fasidotrilat)がある。
【0048】
好適なARBとして、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、およびバルサルタンが挙げられる。
【0049】
好適なアルドステロンシンターゼ阻害薬は、アナストロゾール、ファドロゾール、およびエキセメスタンである。
【0050】
好適なアルドステロン受容体アンタゴニストは、スピロノラクトンおよびエプレレノンである。
【0051】
好適なエンドセリンアンタゴニストは、例えば、ボセンタン、エンラセンタン、アトラセンタン、ダルセンタン、シタキセンタン、およびテゾセンタンならびにそれらの薬学的に許容できる塩である。
【0052】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、AIDSの治療のための1つ以上のさらなる薬剤、逆転写酵素阻害薬、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、他のHIVプロテアーゼ阻害薬、HIVインテグラーゼ阻害薬、(付着、共受容体および融合阻害薬を含む)侵入阻害薬、アンチセンス薬、ならびに免疫刺激因子との組み合わせ療法において投与することを含む。
【0053】
好適な逆転写酵素阻害薬は、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、テノフォビル、およびエムトリシタビンである。
【0054】
好適な非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬は、ネビラピン、デラビリジン(delaviridine)、およびエファビレンツである。
【0055】
好適なHIVプロテアーゼ阻害剤は、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、およびホスアンプレナビルである。
【0056】
好適なHIVインテグラーゼ阻害薬は、L−870,810およびS−1360である。
【0057】
侵入阻害薬として、CD4受容体、CCR5受容体またはCXCR4受容体に結合する化合物が挙げられる。侵入阻害薬の具体例として、エンフュービルタイド(gp41におけるHR2ドメインのペプチド模倣体)およびシフルビチド(sifurvitide)が挙げられる。
【0058】
好適な付着および融合阻害薬はエンフュービルタイドである。
【0059】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、およびメマンチンを含むアルツハイマー病の治療のための1つ以上のさらなる薬剤との組み合わせ療法で投与することを含む。
【0060】
本発明の実施形態は、本発明の化合物またはそれを含有する医薬組成物を、アルテミシニン、クロロキン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、メフロキン、プリマキン、ピリメタミン、キニーネ、スルファドキシンを含むマラリアの治療のための1つ以上のさらなる薬剤との組み合わせ療法で投与することを含む。
【0061】
組み合わせ療法は、本発明の化合物と前記他の薬剤との同時投与、本発明の化合物および他の薬剤の連続投与、本発明の化合物および他の薬剤を含有する組成物の投与、または本発明の化合物および他の薬剤を含有する個別の組成物の同時投与を含む。
【0062】
本発明の化合物はまた、遅延放出組成物を介して投与してもよく、ここで、組成物は、本発明の化合物および生分解性徐放性キャリア(例えば、高分子キャリア)または薬学的に許容できる非生分解性徐放性キャリア(例えば、イオン交換キャリア)を含む。
【0063】
生分解性および非生分解性遅延放出キャリアは、当該技術分野において周知である。生分解性キャリアは、原薬(即ち、本発明の化合物)を保持し、そして適切な環境(例えば、水性、酸性、塩基性など)において緩徐に分解/溶解して、原薬を放出する粒子またはマトリックスを形成させるために使用される。そのような粒子は、体液中で分解/溶解して、そこで原薬(即ち、本発明の化合物)を放出する。粒子は、好ましくは、ナノ粒子(例えば、直径で約1〜500nmの範囲、好ましくは、直径で約50〜200nm、最も好ましくは、直径で約100nm)である。徐放性組成物を調製するためのプロセスでは、最初に、徐放性組成物および本発明の化合物を有機溶媒に溶解するか、または分散させる。得られる混合物を、随意の界面活性剤を含有する水溶液に添加して、エマルジョンを生成させる。次いで、有機溶媒を、エマルジョンからエバポレートして、徐放性キャリアおよび本発明の化合物を含有する粒子のコロイド懸濁液を提供する。
【0064】
本発明の化合物は、経口的または注入による投与のために、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性もしくは油性の懸濁液、綿実油、ゴマ油、ヤシ油もしくはピーナツ油などのような食用油による風味付けされたエマルジョンのような水性形態、またはエリキシルもしくは類似の薬学的ビヒクルに組み入れてもよい。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁剤として、トラガント、アカシア、アルギン酸、デキストラン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびゼラチンのような合成ならびに天然のゴムが挙げられる。適切に風味付けされた懸濁剤または分散剤中の液体形態はまた、合成および天然のゴムを含んでもよい。非経口投与では、滅菌懸濁液および溶液が所望される。一般的に、適切な保存剤を含有する等張性調製物は、静脈内投与が所望される場合、用いられる。
【0065】
本発明の化合物は、注入を介して非経口的に投与してもよい。非経口製剤は、適切な不活な液体キャリア中に溶解されたかまたは混合された原薬(即ち、本発明の化合物)からなり得る。許容できる液体キャリアは、通常、溶解度または保存を援助するための水性溶媒および他の随意の成分を含んでなる。そのような水性溶媒として、滅菌水、リンゲル液、または等張水性生理食塩溶液が挙げられる。他の随意の成分として、植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、およびゴマ油)、ならびに有機溶媒(例えば、ソルケタール、グリセロール、およびホルミル)が挙げられる。滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁剤として用いてもよい。非経口製剤は、原薬(即ち、本発明の化合物)を液体キャリアに溶解または懸濁することによって調製され、それによって、最終用量単位は、原薬(即ち、本発明の化合物)の0.005〜10重量%を含有する。他の添加剤として、保存剤、等張化剤(isotonizer)、溶解剤、安定剤、および鎮痛剤(pain−soothing agent)が挙げられる。適切な液体キャリア、懸濁剤などが用いられ得る場合、注入可能な懸濁液を調製してもよい。
【0066】
本発明の化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルを使用して、鼻腔内に投与してもよい。
【0067】
本発明の化合物はまた、適切な局所経皮ビヒクルまたは経皮パッチを使用して、局所的に投与してもよい。
【0068】
眼内投与では、本発明の化合物を含有する医薬組成物は、好ましくは、眼用組成物の形態である。眼用組成物は、好ましくは、点眼製剤として処方され、そして眼への投与を容易にするのに適切な容器、例えば、適切なピペットが装着された滴瓶に充填される。好ましくは、組成物は、滅菌されており、そして精製水を使用する水性基剤をベースとする。本発明の化合物に加えて、眼用組成物は、次のものの1つ以上を含有してもよい:a)ポリオキシエチレン脂肪酸エステルのような界面活性剤;b)典型的に、約0.05〜約5.0%(wt/vol)の範囲の濃度のセルロース、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、およびポリビニルピロリドンのような増粘剤;c)(窒素を含有する容器への組成物の貯蔵、場合により、Feのような脱酸素剤の封入の代替物として、またはそれらに加えて)約0.00005〜約0.1%(wt/vol)の濃度のブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、またはブチル化ヒドロキシトルエンのような抗酸化剤;d)約0.01〜0.5%(wt/vol)の濃度のエタノール;ならびにe)等張剤、緩衝液、保存剤、および/またはpH制御剤のような他の賦形剤。眼用組成物のpHは、望ましくは、4〜8の範囲内にある。
【0069】
本発明は、それを必要とする被験体におけるアスパラギン酸プロテアーゼ仲介慢性障害もしくは疾患または感染を治療または改善するための組成物の調製のための本発明の化合物の使用を含み、ここで、組成物は、本発明の化合物および随意の薬学的に許容できるキャリアの1つ以上の混合物をさらに含んでなる。
【0070】
本発明は、特に、アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害の治療における有効な治療物質としての本発明の化合物の使用をさらに含む。特に、本発明は、高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害の治療における本発明の化合物の使用を含む。
【0071】
もう1つの態様では、本発明は、上記の障害の治療に使用するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用を含む。
【0072】
「薬学的に許容できるキャリア」は、ヒトに適切に投与する場合、有害な反応を生じず、そして原薬(即ち、本発明の化合物)のビヒクルとして使用される本発明の化合物の処方に使用するのに十分な純度および量であるいずれか1つ以上の化合物および/または組成物を意味する。
【0073】
本発明は、本発明の化合物の1つ以上と随意の薬学的に許容できるキャリアとを混合することを含んでなる組成物を作製するためのプロセスをさらに含み;そしてそのようなプロセスから生じるそれらの組成物を含み、このプロセスは、従来の薬学的技術を含む。例えば、本発明の化合物を、処方前にナノミル処理してもよい。本発明の化合物はまた、当該技術分野において公知の粉砕、微粉化または他の粒度減少方法によって、調製してもよい。そのような方法として、米国特許第4,826,689号明細書、同第5,145,684号明細書、同第5,298,262号明細書、同第5,302,401号明細書、同第5,336,507号明細書、同第5,340,564号明細書、同第5,346,702号明細書、同第5,352,459号明細書、同第5,354,560号明細書、同第5,384,124号明細書、同第5,429,824号明細書、同第5,503,723号明細書、同第5,510,118号明細書、同第5,518,187号明細書、同第5,518,738号明細書、同第5,534,270号明細書、同第5,536,508号明細書、同第5,552,160号明細書、同第5,560,931号明細書、同第5,560,932号明細書、同第5,565,188号明細書、同第5,569,448号明細書、同第5,571,536号明細書、同第5,573,783号明細書、同第5,580,579号明細書、同第5,585,108号明細書、同第5,587,143号明細書、同第5,591,456号明細書、同第5,622,938号明細書、同第5,662,883号明細書、同第5,665,331号明細書、同第5,718,919号明細書、同第5,747,001号明細書、PCT出願国際公開第93/25190号パンフレット、国際公開第96/24336号パンフレット、および国際公開第98/35666号パンフレット(それらのそれぞれは、本明細書において参考として援用される)に記載の方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、当業者に既知の技術および方法を使用して、調製してもよい。当該技術分野において一般に使用される方法のいくつかについては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)(それらの全教示内容は、本明細書において参考として援用される)に記載されている。
【0074】
本発明の組成物は、経眼、経口、点鼻、経皮、閉塞を伴うまたは伴わない局所、静脈内(ボーラスおよび輸注の両方)、ならびに注入(腹腔内、皮下、筋肉内、腫瘍内、もしくは非経口的)を含む。組成物は、経眼、経口、鼻腔内、舌下、非経口的、もしくは直腸内、あるいは吸入または通気(insufflation)投与のための錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、リポソーム、イオン交換樹脂、滅菌点眼溶液、または経眼送達デバイス(例えば、即時放出、時限放出、または持続放出を容易にするコンタクトレンズなど)、非経口溶液または懸濁液、計量エアゾルまたは液体スプレー、滴下、アンプル、自動注入デバイス、または坐剤のような投薬単位であってもよい。
【0075】
経口投与に適切な本発明の組成物として、ピル、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ、即時放出、時限放出、および持続放出処方を含む)、顆粒および粉末のような固体形態;ならびに溶液、シロップ、エリキシル、エマルジョン、および懸濁液のような液体形態が挙げられる。経眼投与に有用な形態として、滅菌溶液または経眼送達デバイスが挙げられる。非経口投与に有用な形態として、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が挙げられる。
【0076】
本発明の化合物を含有する剤形は、治療および/または予防効果を提供するのに必要な有効量の原薬(即ち、本発明の化合物)を含有する。組成物は、約5,000mg〜約0.5mg(好ましくは、約1,000mg〜約0.5mg)の本発明の組成物を含有してもよく、そして選択される投与形態に適切な任意の形態に構成してもよい。本発明の組成物は、1週間に1回または1箇月に1回の投与に適切な形態で投与してもよい。連日投与または間欠投与(post−periodic dosing)もまた使用してもよく、ここで、組成物は、1日あたり約1〜約5回投与してもよい。
【0077】
経口投与では、組成物は、好ましくは、例えば、1000〜0.5ミリグラム、より具体的には、500mg〜5mgの原薬(即ち、本発明の化合物)を含有する錠剤またはカプセルの形態である。用量は、治療する特定の患者に関連する因子(例えば、年齢、重量、食事、および投与の時間)、治療する病態の重症度、用いる化合物、投与形態、および調製物の強度に依存して変動する。
【0078】
経口組成物は、好ましくは、均質な組成物として処方され、ここで、原薬(即ち、本発明の化合物)は、混合物中に一様に分散され、これは、本発明の化合物の等量を含有する用量単位に容易に細分することができる。好ましくは、組成物は、本発明の化合物と、1つ以上の場合により存在する薬学的キャリア(例えば、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、グライダント、結合剤、および崩壊剤)、1つ以上の場合により存在する不活な薬学的賦形剤(例えば、水、グリコール、油、アルコール、風味付け剤、保存剤、着色剤、およびシロップ)、1つ以上の場合により存在する従来の錠剤化成分(例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、および多様なゴムのいずれか)、ならびに随意的な希釈剤(例えば、水)とを混合することによって、調製される。
【0079】
結合剤として、デンプン、ゼラチン、天然の糖(例えば、グルコースおよびβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味料並びに天然および合成のゴム(例えば、アカシアおよびトラガント)が挙げられる。崩壊剤として、デンプン、メチルセルロース、寒天、およびベントナイトが挙げられる。
【0080】
錠剤およびカプセルは、有利な経口剤形の代表である。錠剤は、標準的な技術を使用して、糖衣コーティングまたはフィルムコーティングすることができる。錠剤はまた、コーティングするか、またはそうでなければ、調合して、持続性制御放出性の治療効果を提供することもできる。剤形は、内部剤形および外部剤形成分を含んでなり得、ここで、外部成分は、内部成分上の外被の形態である。2種の成分は、胃において崩壊に抵抗し(例えば、腸溶層)、そして内部成分が無傷のまま十二指腸を通過することを可能にする層、または放出を遅延もしくは持続させる層によってさらに分離され得る。多様な腸溶および非腸溶層またはコーティング材料(例えば、ポリマー酸、セラック、アセチルアルコール、および酢酸セルロースもしくはそれらの組み合わせ)を使用することができる。
【0081】
これ以上詳細に述べるまでもなく、当業者であれば、上記の説明を使用して、その最も完全な程度で本発明を利用することができると考えられる。従って、以下の実施例は、単なる例示であって、いかなる方法においても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの調製
200mLのジクロロメタン中(国際公開第2008/036247号パンフレットにおけるよう調製した)メチル{2−[((R)−(3−クロロフェニル){(3R)−1−[({(2S)−2−(メチル−アミノ)−3−[(3R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]プロピル}アミノ)カルボニル]−3−ピペリジニル}メチル)オキシ]エチル}カルバメートのトリフルオロ酢酸塩(10.0g、15.65mmol)の溶液を、1N水酸化ナトリウム水溶液、水、および塩水で首尾よく洗浄した。有機部分をNa2SO4上で乾燥し、そして減圧下で濃縮して、灰白色の泡(7.50g、91%)として表題化合物を得た。1H NMR(CD3OD,400 MHz)δppm7.38−7.31(m,3H),7.24(m,1H),4.23(dd,J=13.1,3.6Hz,1H),4.03(d,J=8.8Hz,1H),3.84(m,3H),3.64(s,3H),3.42(ddd,Ja=5.8Hz,Jb=7.8Hz,Jc=11.1Hz,1H),3.24−3.30(m,5H),3.16(dd,Ja=6.3Hz,Jb=13.9Hz,1H),3.10 (dd,Ja=10Hz,Jb=H Hz,1H),2.88(m,2H),2.66(m,1H),2.42(s,3H),1.97(m,1H),1.75(m,2H),1.65−1.61(m,3H),1.40−1.09(m,6H);MS(m/z)525.3(M+H+)。
【0083】
実施例2
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
0.325mLの酢酸エチル中ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.048g、0.124mmol)の溶液に、0.325mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.130g、0.248mmol)を添加した。得られる溶液を、600RPMで撹拌しながら、50℃まで加熱した。80分間後、白色固体が形成され始めた。50℃でさらに2時間後、サンプルを6時間で周囲温度まで冷却し、そして周囲温度で1晩保持した。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0084】
実施例3
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
0.750mLの酢酸エチル中ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.110g、0.284mmol)の溶液に、0.750mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.300g、0.572mmol)を添加した。得られる溶液を、一定の撹拌(500RPM)で50℃まで加熱した。90分間後、種結晶(実施例2由来)を溶液に添加し、そして撹拌を継続した一方、混合物を50℃で維持した。種結晶の添加の約20分間以内に、白色の沈殿物が出現し始めた。スラリーを50℃で2時間保持し、続いて、緩徐に室温まで冷却した。スラリーを室温で1晩、放置した。スラリーをろ過し、酢酸エチルで洗浄し、そして減圧オーブン中50℃で約3時間、乾燥して、白色固体(0.354g、86%)として表題化合物を得た。
【0085】
実施例4
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型I)の調製
2.5mLの酢酸エチル中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(1.0g、1.904mmol)の溶液に、2.5mLの酢酸エチル中の溶液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸(0.368g、0.952mmol)を添加した。得られる溶液を50℃で90分間、撹拌した。この時、種結晶(実施例3由来)を添加した。さらなる10分間の撹拌後、もはや撹拌ができなくなるほどの量で白色沈殿が形成した。次いで、混合物をろ過し、そして酢酸エチルで洗浄する前に、混合物を、室温で、4日間、置いた。固体を、減圧下で、2時間、室温で乾燥し、続いて、50℃で、3時間、乾燥して、白色固体(1.24g、91%)として表題化合物を得た。1H NMR(CD3OD,400MHz)δppm8.07(d,J=8.3Hz,2H),7.36−7.21(m,7H),5.87(s,1H),4.20(d,J=12.4Hz,1H),4.01(d,J=8.9Hz,1H),3.87−3.74(m,3H),3.63(s,3H),3.53(dd,Ja=2.4Hz,Jb=14.7Hz,1H),3.41(ddd,Ja=2.5Hz,Jb=4.3Hz,Jc=11Hz,1H),3.29−3.19(m,7H),3.10(dd,Ja=9.5Hz,Jb=11Hz,1H),2.92−2.82(m,2H),2.67(s,3H),2.42(s,3H),1.95(m,1H),1.73(m,2H),1.65−1.57(m,3H),1.43(t,J=7.0Hz,2H),1.31−1.09(m,4H);13C NMR(CD3OD,100MHz)δppm174.1,167.9,160.3,159.6,145.0,144.2,135.6,131.2,131.0,129.2,129.1,128.4,127.1,84.9,76.9.74.0,69.4,69.1,59.0,52.5,48.1,45.8,43.9,41.9,41.5,33.6,31.7,31.2,29.7,28.0,26.4,25.5,21.7;MS(m/z)525.0(M+H+)。この材料のX線粉末回折パターンを図1に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表Iに示す。以下のパラメータに従ってデータを獲得した:
スキャン範囲:2−40°2θ
発電力:40kV,40mA
線源:Cu Ka
スキャンタイプ:連続
1工程あたりの時間:10秒間
工程サイズ:1工程あたり0.017°2θ
サンプルの回転:1秒間回転時間
入射ビーム光学:0.04ラジアンソーラースリット、0.25°発散スリット、10mmビームマスク、0.5°散乱線除去スリット
回折ビーム光学:固定スリット(X’celeratorモジュール)、0.04ラジアンソーラースリット
検出タイプ:Philips X’Celerator RTMS(実時間マルチストリップ)
【0086】
【表1】
【0087】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図5に示す。データは、TA instruments Q1000Differential Scanning Calorimeter上で獲得した。サンプルを、30℃〜300℃、10℃/分で加熱した。この材料の熱重量分析トレースを図9に示す。データは、TA instruments Q500Thermogravimetric Analyzer上で獲得した。サンプルを、30℃〜300℃、10℃/分で加熱した。
【0088】
実施例5
2:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートジ−p−トルオイル−L−酒石酸(化合物A型II)の調製
35mLの酢酸エチル中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(14.0g、26.7mmol)の溶液に、35mLの酢酸エチル中の溶液としてのジ−p−トルオイル−L−酒石酸(5.15g、13.33mmol)を添加した。得られる溶液を50℃で54分間、撹拌した。次いで、混合物をろ過し、そして酢酸エチルで洗浄する前に、混合物を、室温で、1晩、静置した。固体を週末の間凍結乾燥し、続いて、減圧下、50℃で3時間、乾燥して、白色固体(17.56g、92%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図2に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IIに示す。
【0089】
【表2】
【0090】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図6に示す。この材料の熱重量分析トレースを図10に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0091】
実施例6
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(化合物B型I)の調製
0.325mLの酢酸エチル中N−アセチル−L−フェニルアラニン(0.051g、0.248mmol)の懸濁液に、0.325mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.130g、0.248mmol)を添加した。得られる澄明な溶液を、600RPMで撹拌しながら、50℃まで加熱した。80分間後、ヘプタン(0.1mL)を溶液に添加し、そして約20分間以内に白色固体が形成し始めた。50℃で2時間後、サンプルを6時間で周囲温度まで冷却し、そして周囲温度で1晩保持した。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0092】
実施例7
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートN−アセチル−L−フェニルアラニン(化合物B型I)の調製
0.750mLの酢酸エチル中N−アセチル−L−フェニルアラニン(0.207g、1.00mmol)の懸濁液に、0.750mLの酢酸エチル中の溶液としてのメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.300g、0.571mmol)を添加した。バイアルを、一定の撹拌(500RPM)で50℃まで加熱し、澄明な溶液を得た。90分間後、種結晶(実施例6由来)を溶液に添加し、そして撹拌を継続した一方、混合物を50℃で維持した。種結晶の添加の約20分間以内に、濃白色の沈殿物が出現し始めた。酢酸エチルのさらなるアリコート(0.750mL)を添加して、撹拌を容易にし、そしてスラリーを50℃で2時間、保持した。次いで、スラリーを、緩徐に室温まで冷却し、続いて、1晩保持した。スラリーをろ過し、酢酸エチルで洗浄し、そして真空用フィルター上で30分間、空気乾燥して、白色固体(0.288g、69%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図3に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IIIに示す。
【0093】
【表3】
【0094】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図7に示す。この材料の熱重量分析トレースを図11に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0095】
実施例8
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(化合物C型I)の調製
アセトン中シュウ酸(2等量)の溶液に、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(1等量)を添加した。混合物を約1分間音波処理し、澄明な溶液を得た。ヘイズが形成されるまで、溶液にヘキサンを添加した。次いで、澄明な溶液が持続するまで、混合物をアセトンで逆滴定した。溶液を、周囲温度で10日間、放置したが、その間に沈殿物が形成された。サンプルの遠心分離に続いて、上清を取り出した。残留する固体を回収し、そして以後の実験において種結晶として使用した。
【0096】
実施例9
1:1のメチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートシュウ酸(化合物C型I)の調製
50.0mLのアセトン中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(2.43g、4.62mmol)の溶液に、シュウ酸(0.457g、5.08mmol)を添加した。得られる溶液を40℃まで加熱し、そして種結晶(実施例8由来)を添加した。スラリーが生じ、そして撹拌を40℃で継続した。約1時間後、スラリーが顕著に厚くなり、そして撹拌をさらに約3時間、継続した。スラリーを20℃まで0.25℃/分で冷却し、そして20℃で3日間、撹拌した。固体をろ過し、そして50℃、減圧下で、週末の間乾燥して、白色固体(1.49g、52%)として表題化合物を得た。この材料のX線粉末回折パターンを図4に示し、そして回折角、面間隔d、および相対強度のまとめを表IVに示す。
【0097】
【表4】
【0098】
この材料の示差走査熱量測定トレースを図8に示す。この材料の熱重量分析トレースを図12に示す。データは、実施例4のとおりに獲得した。
【0099】
実施例10
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートフマル酸(以降、「化合物D」)の調製
エタノール(1.0mL)中メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート(0.0342g、0.065mmol)の溶液に、フマル酸(0.0076g、0.065mmol)を添加した。完全に澄明になるまで得られる溶液を撹拌し、そして溶媒を減圧下で取り出した。残渣を水(0.5mL)に溶解し、そして凍結乾燥して、白色固体(0.03024g、72%)として表題化合物を得た。
【0100】
実施例11
経口バイオアベイラビリティ
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートの2:1パモ酸塩(以降、「化合物E」)は、国際公開第2008/036247号パンフレットに記載の通りに調製することができる。
【0101】
Sprague−Dawleyラットにおける経口バイオアベイラビリティ
雄性Sprague−Dawleyラットにおける経口薬物動態データを、化合物Dの溶液処方物および微粒子化した化合物Eの懸濁処方物について得た。化合物Dを、10mg/kgの用量(1kgあたり5mLの用量溶液)で水中0.5%メチルセルロースを伴う処方物中澄明な無色の溶液として、強制経口投与した。次の時間間隔で、採血を行った:0、5、15、30、60、120、180、240、360、480、および1440分間。化合物Eを、5mg/kgの用量(1kgあたり10mLの用量溶液)で水中1%メチルセルロースを伴う処方物中の懸濁液として、胃ボーラスによって投与した。次の時間間隔で、採血(50μL)を行った:0、20、40、60、120、180、240、360、480、720、960、1200、および1440分間。
【0102】
ビーグル犬における経口バイオアベイラビリティ
雄性ビーグル犬における経口薬物動態データを、化合物Dの処方物の溶液ならびに化合物A型I、化合物B型I、および化合物C型I.の処方物のカプセルについて得た。化合物Dを、投与前に、0.22μmのMILLEX−GVフィルターを使用してろ過した2%DMSOを含有する水中澄明な無色の溶液(最終pH=3.5)として、強制投与した。上記の化合物A、B、およびCを、ゼラチンカプセル(1.37mL)中5mg/kgの用量でそれぞれ投与した。次の時間間隔で、採血(50μL)を行った:0、20、40、60、120、180、240、360、480、600、および1440分間。
【0103】
各化合物の濃度を、これらのサンプルのアリコート(25μLの血液+25μLの水)のLC/MS/MS分析および濃度対時間プロットのDose−Normalized Area Under the Curve (DNAUC)として報告される全血液暴露によって定量し、そして1リットルあたりキログラム時間(kg・時/L)の単位で表した。すべての経口バイオアベイラビリティを、経口セグメント由来のDNAUCをi.v.セグメント由来のDNAUCで割り、100を掛けることによって計算した。データを以下の表Vにまとめる。
【0104】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩である、化合物。
【請求項2】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対ジ−p−トルオイル−L−酒石酸の比が2:1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、図1に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、図2に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのN−アセチル−L−フェニルアラニン塩である、化合物。
【請求項6】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対N−アセチル−L−フェニルアラニンの比が1:1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、図3に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのシュウ酸塩である、化合物。
【請求項9】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対シュウ酸の比が1:1である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、図4に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できるキャリアを含んでなる、医薬組成物。
【請求項12】
α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、ナトリウム利尿因子、塩類利尿薬、中枢作動性降圧薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、二重アンジオテンシン変換酵素および中性エンドペプチダーゼ阻害薬、アンジオテンシン−受容体遮断薬、二重アンジオテンシン受容体遮断薬およびエンドセリン受容体アンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、またはエンドセリン受容体アンタゴニストをさらに含んでなる、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の有効量を被験体に投与する工程を含んでなる、それを必要とする被験体において、1つ以上のアスパラギン酸プロテアーゼをアンタゴナイズする方法。
【請求項14】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはレニンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の有効量を被験体に投与する工程を含んでなる、被験体において、アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害を治療する方法。
【請求項16】
前記障害は、高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、二重アンジオテンシン変換酵素および中性エンドペプチダーゼ阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、二重アンジオテンシン受容体遮断薬およびエンドセリン受容体アンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、ならびにエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1つ以上のさらなる薬剤を投与する工程をさらに含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはβ−セクレターゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはプラスメプシンである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはHIVプロテアーゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩である、化合物。
【請求項2】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対ジ−p−トルオイル−L−酒石酸の比が2:1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、図1に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、図2に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのN−アセチル−L−フェニルアラニン塩である、化合物。
【請求項6】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対N−アセチル−L−フェニルアラニンの比が1:1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、図3に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメートのシュウ酸塩である、化合物。
【請求項9】
前記塩は、メチル2−((R)−(3−クロロフェニル)((R)−1−((S)−2−(メチルアミノ)−3−((R)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)プロピルカルバモイル)ピペリジン−3−イル)メトキシ)エチルカルバメート対シュウ酸の比が1:1である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、図4に実質的に従うX線粉末回折パターンを提供する結晶化合物である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できるキャリアを含んでなる、医薬組成物。
【請求項12】
α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、ナトリウム利尿因子、塩類利尿薬、中枢作動性降圧薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、二重アンジオテンシン変換酵素および中性エンドペプチダーゼ阻害薬、アンジオテンシン−受容体遮断薬、二重アンジオテンシン受容体遮断薬およびエンドセリン受容体アンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、またはエンドセリン受容体アンタゴニストをさらに含んでなる、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の有効量を被験体に投与する工程を含んでなる、それを必要とする被験体において、1つ以上のアスパラギン酸プロテアーゼをアンタゴナイズする方法。
【請求項14】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはレニンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の有効量を被験体に投与する工程を含んでなる、被験体において、アスパラギン酸プロテアーゼ仲介障害を治療する方法。
【請求項16】
前記障害は、高血圧症、鬱血性心不全、心肥大、心線維症、梗塞後心筋症、腎症、脈管障害およびニューロパチー、冠血管の疾患、術後高血圧症、血管形成術後の再狭窄、眼内圧亢進、緑内障、異常な血管増殖、高アルドステロン症、不安状態、または認知障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
α遮断薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、二重アンジオテンシン変換酵素および中性エンドペプチダーゼ阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、二重アンジオテンシン受容体遮断薬およびエンドセリン受容体アンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害薬、アルドステロン受容体アンタゴニスト、ならびにエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1つ以上のさらなる薬剤を投与する工程をさらに含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはβ−セクレターゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはプラスメプシンである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記アスパラギン酸プロテアーゼはHIVプロテアーゼである、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−525933(P2011−525933A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516560(P2011−516560)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048389
【国際公開番号】WO2009/158377
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(509235556)ヴァイティー ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048389
【国際公開番号】WO2009/158377
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(509235556)ヴァイティー ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】
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