説明

メディカル・オートフィットネス・システム

【課題】主として生活習慣病の懸念されるトレーニーについて専門医師の診断に係る処方データにより安全かつ適切にフィットネス機器をコンピュータ制御により駆動させて、
医師の処方した運動種類と運動量を過不足なく実行消化することができる画期的なメディカル・オートフィットネス・システムを提供する。
【解決手段】 特定トレーニーTについて医師Dの診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーTが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号としてICチップ等のコンパクト記録板体又は制御コンピュータに記録蓄積し、記録された前記フィットネス機器制御信号により所定のフィットネス機器を駆動し、運動中のトレーニーの呼吸数・心拍数・血圧値・心筋電圧等を電子測定器により計測して当該測定値が正常範囲を超えたとき、フィットネス機器を停止する手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディカル・オートフィットネス・システムに関し、さらに詳しくは、運動療法に通じた医師が特定のトレーニー(trainee) を個別的に診断して必要とされる運動の種類や負荷値、運動量を処方し、これを具体的なフィットネス機器(fitness machine) の制御信号として所定の記憶装置に電磁記録して、この電磁記憶装置によって指定された
フィットネス機器を電子的に駆動制御することにより個々のトレーニーに安全かつ適切に処方運動量を実行消化させることをできるようにした合理的な健康増進システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、戦後60年を経て我国おける食糧事情は飽食との批判を受ける程までに豊かになる一方、自家用車の普及や各種交通機関の発達とも相俟って我国民は運動不足に陥って、多くの者には糖尿病、肥満症、高脂血症、心臓病などの生活習慣病の不安が忍び寄っている。このような情況から、健康に留意する人々の間には日常における運動励行の必要性が自覚されるようになり、各種のフィットネス機器を様々に装備したフィットネスクラブが繁盛するようになった。
【0003】
しかしながら、従来一般的に見られるフィットネスクラブは、精々、インストラクターと呼ばれる訓練指導員を置いて一応の機器の使用法の指導をしている程度で健康運動療法に関する専門的な医学知識は素人に等しい。それゆえ、健康人が身体の鍛練を目的としてフィットネス機器をしている場合には問題はないのであるが、生活習慣病の治療を目的に通っている人にとっては些か危険が伴う。本人の健康保全に必要とされる身体運動の種類や運動強度と運動量を的確に判断できないし、その本人がフィットネス機器を実際に使用したときに本人が受けている身体的負担の危険度も殆ど判別できないからである。
【0004】
このような事情に応じて、生活習慣病等の健康異常者を対象とした会員組織を形成する一方、定量的・統計的な会員の身体リスクの判定と医師・管理栄養士・トレーナーによるカウンセリングの実施と意見を反映させた最適運動プログラムと栄養プログラムを自動的に抽出・作成できるようにした特許文献1記載の“メディフィットシステム”が提案されるようになった(特許文献1の段落[0005]、[0006]参照)。
【0005】
しかして、この特許文献1記載の“メディフィットシステム”によれば、「・…、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリングを行うことにより医療と栄養とフィットネス分野のプロのチェックの基に運動・…プログラムが提供され、且つメティフィット会員自身でトレーニング後の効果分析結果を確認しながら適切な運動・…プログラムを実施することができ、身体的リスクの改善を図ることができる」といったシステム使用上の効果(段落[0009])が得られるというのである。
【特許文献1】特開2004−355617号公報
【0006】
なるほど、特許文献1記載の“メディフィットシステム”を利用すると、医師ら専門家のカウンセリングを経て運動プログラムが提供されることになるので、そのプログラムは当該会員にとり運動処方となるかも知れない。しかしながら、交付される運動処方としての運動プログラムが如何に精緻であっても、その運動プログラムに基いて実行される運動が適切かつ安全でなければ意味がない。
【0007】
しかるに、特許文献1記載の“メディフィットシステム”における実際の運動は、担当トレーナー(インストラクター)の指導の下に行われることになるので、処方提供された運動プログラムが間違いなく忠実に実行されるにはトレーナーにも高度の専門知識と熟練とが要求され、そのようなトレーナーを常勤させておくとなると人件費負担も大きくならざるを得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来におけるフィットネス施設に前述の如き難点があったのに鑑みて為されたものであり、その解決すべき技術的課題は、主として生活習慣病の懸念されるトレーニーについて医師処方のコンピュータ制御によって安全かつ適切にフィットネス機器を駆動させて、医師の処方した運動種類と運動量を過不足なく実行消化することができる画期的なメディカル・フィットネス・システムを提供するにある。
【0009】
また、本発明の次なる技術的課題は、運動中のトレーニーの呼吸・心拍・血圧・心筋電圧などに異常な兆候が顕れたときに直ちにフィットネス機器を停止して、安全に待機させることができる頗る安全なメディカル・フィットネス・システムを提供するにある。
【0010】
つぎに、本発明に附帯する技術的課題は、無意味な単純動作の連続に怏々しさを感ずる階層の人達を対象とする場合にはモラール増進機能を付加することにより筋肉鍛練作用に加えて、行動の動機を満足させることができる実用性の高いメディカル・フィットネス・システムを提供するにある。
【0011】
さらに、本発明の次なる技術的課題は、必要に応じてフィットネス機器の使用に際して案内アナウンス機能を持たせることができて頗る使い勝手の良い実用的メディカル・フィットネス・システムを提供するにある。
【0012】
そして、本発明の更なる具体的課題と効用は、後述する実施例の説明を通じ明確にしてゆくものとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した基本的な手段を、添附図面に示す符号を引用して説明すれば、次のとおりである。
【0014】
即ち、本発明は、特定トレーニーTに対し医師Dの診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーTが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録されているコンパクト記録媒体1と;この記録媒体1に記録された特定トレーニーの制御信号を読み取るリーダ手段2と;このリーダ手段2が読み取った制御信号の入力により駆動して、当該トレーニーTに対する制御信号に応じた負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器3と;この運動中のトレーニーTの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器4と;この電子測定器4の出力する測定値を受信して記録するとともに、当該測定値が正常範囲を超えたとき前記フィットネス機器の停止信号を発する制御コンピュータ5とを基本的な要素として採用してメディカル・オートフィットネス・システムを構成した点に特徴がある。
【0015】
また、本発明が上記課題を解決するために採用した他の手段は、次のとおりである。
特定トレーニーTについて医師Dの診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーTが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録蓄積されている制御コンピュータ5と;特定のトレーニーTを識別するためのIDコードが記録されたコンパクト記録媒体1と;この記録媒体1に記録された特定トレーニーTのIDコードを読み出して、読み出したIDコードを前記制御コンピュータ5に送るリーダ手段2と;このリーダ手段2から送られた特定トレーニーTのIDコードに基いて制御コンピュータ5が該当するトレーニーTの記録を検出し、当該トレーニーTに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号を出力して当該トレーニーTに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器3と;この運動中のトレーニーTの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器4と;この電子測定器4の出力する測定値を受信して記録すると共に、当該測定値が正常範囲を超えたときに前記制御コンピュータ5が当該フィットネス機器3に停止信号を発して停止せしめるように構成した点に特徴がある。
【0016】
そこで、本発明を構成する技術要素について注釈しておくならば、次のとおりである。(1) まず、本発明において採用されるコンパクト記録媒体1としては、ICチップまたは メモリーを内蔵したリストバンドやタグ(tag) 、ICカードを例示することができ、 好ましくは非接触タイプのものが使い勝手がよい。この記録媒体1には医師Dの処方 に基づく運動種類や運動負荷値などトレーニーTの実行消化すべき運動項目と運動量 等の運動処方データが端末パソコン6によりフィットネス機器制御信号として電磁記 録される。
(2) 本発明においては、上記ICタイプのコンパクト記録媒体1に代えて、特定のトレーニーを識別するためのIDコードを単に記録しておくだけの記録容量の小さい磁気カードをコンパクト記録媒体1として採用することもある。この磁気カードを使用する場合には、制御コンピュータに特定トレーニーTについて医師Dの診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーTが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録蓄積される。この方式にあっては、医師Dの診察室などに設置された端末パソコン6からインターネットやLAN回線などの電気通信回線を介して下記運動処方に基づくフィットネス制御信号が記録蓄積されることになる。
(3) そして、本発明において、ICタイプのコンパクト記録媒体1や制御コンピュータ5に記録されるフィットネス制御信号は、医師の診断処方したフィットネス機器の種類を特定する各機器の種類に与えられたコード番号と、当該指定機器を処方の負荷値で指定時間駆動させるNC(numerical control)言語による数値指令信号によって構成される。他方、本発明において採用されるフィットネス機器3は、例えば、サーボモータ、ディジタルモータ、ロータリエンコーダ、ボールネジ機構など周知の制御系機構部品が組み込まれており、歩行・ランニング運動を支援するトレッドミルにしても、脚部の屈伸運動を支援するレッグカールにしても、医師Dの処方した駆動速度やウェイトヤスロープ勾配などの負荷値は全てNC化されて数値制御により駆動するように構成した機器を採用する。かくして、前記コンパクト記録媒体1に記録された運動種類と運動量に関する制御信号は、リーダ手段2を介し、指定のフィットネス機器3(3a・3b・…3nの内の指定されたもの)の駆動プログラムに作用して医師指定に係るフィットネス機器を当該制御信号に応じた負荷値にて指定時間にわたり駆動させ特定トレーニーTに指定種類の運動を所定時間分だけ行わせてタスク(task)運動量を実行消化せしめる。
(4) そして、本発明のメディカル・オートフィットネス・システムにおいては、運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧など運動継続によるエネルギー消耗に応じて変動する人体の生理的な変動値を電子的に測定するため電子測定器4が使用される。トレーニーの呼吸数を測定する電子測定器としてはトレーニーの胸部横隔膜近傍に圧電センサーを対設して起電パルス数をカウントする圧電式呼吸計測器、電子心拍計、電子血圧計、小型の電子マイクロ心電計など周知の電子測定器が採択可能である。しかして、これらの電子測定器4の出力する電気的な測定値はコンピュータである制御コンピュータ5に入力されて自動的に記録される一方、入力された測定値が正常範囲を越えたときには作動中の当該フィットネス機器に対して停止信号を発して停止させ、必要に応じてパイロットランプPを点灯させたり、警報音を鳴らしたりする。
(3) また、本発明のメディカル・オートフィットネス・システムにあっては、その制御コ ンピュータ5とトレーニー担当の医師Dの端末パソコン6とをインターネットやLA Nなどの電気通信回線にて連繋して両者を通信可能に構成することによって、電子測 定器4で測定された運動中の特定トレーニーTの生理変動量が前記制御コンピュータ から医師Dの端末パソコン6に送信されて当該トレーニーのカルテ情報として記録蓄 積可能であるし、さらに制御コンピュータ5から送信されてくる当該トレーニーTの 運動の影響による生理変動量を、医師Dが端末パソコン6に既に記録蓄積されている 当該トレーニーの蓄積データに照らして診断し、このトレーニーのコンパクト記録媒 体1のフィットネス機器制御信号を制御コンピュータ5を介して書換え更新できるよ うにすることも可能である。
(4) さらに、本発明システムにおいては、常連トレーニーTに携帯端末器7を交付してお き、これら各携帯端末器7と制御コンピュータ5との間に通信ネットを構築しておく 一方、この制御コンピュータ5には、各フィットネス機器の空き時間、予約時間、
使用時間などを管理する予約プログラムを格納させて、常連トレーニーTの携帯端末 器7を介して制御コンピュータ5に使用希望のフィットネス機器3について使用時間 の予約連絡が入ったとき、対象とされたフィットネス機器3(3a・3b・…3n)の 空き時間を当該制御コンピュータ5が自動検索して受諾可能な場合に受付け予約して 爾後の該当機器の予約および使用を予約連絡を拒絶できるようにも構成可能である。(5) そして、本発明システムについては、所望に応じて、コンパクト記録媒体1、リーダ 手段2、フィットネス機器3、電子測定器4、制御コンピュータ5に加えて、さらに オーディオ機器8を付設して、このオーディオ機器8をフィットネス機器の駆動に
同調して起動するように構成して、学習または娯楽用の録音の再生を通じてトレーニ ーTの聴覚に訴求できるようにすることによって、フィットネス機器使用時の無意味 な単純動作の連続に怏々しさを感ずる階層の人達に達成感や趣味満足感を付与できる ようになる。
(6) かつまた、上記オーディオ機器8にはアナウンス機能を付帯させることもできるので あり、このオーディオ機器8は、前記リーダ手段2がトレーニーTのコンパクト記録 媒体1に反応したとき運動開始の案内メッセージをアナウンスして該当するフィット ネス機器3(例えば、3a)への案内指示を行い、一つのフィットネス機器3による 運動実行が終了したときは順次処方指定された種類のフィットネス機器3(例えば、 3b)への案内指示を行うように構成できる。
【発明の効果】
【0017】
かくして、本発明によれば、フィットネス機器が医師の診断処方したとおりに忠実に駆動して対象トレーニーに対して必要な運動種類、運動負荷値などで的確に健康運動を支援できるので、高度の医学知識を体得したインストラクターを指導要員として採用しておく必要もなく、対象トレーニーの健康維持に必要な身体部位に専門医師の処方に基づく適切な健康運動を支援することが可能である。
【0018】
また、本発明のシステムによる場合には、この運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量は電子測定器によって適時測定されて制御コンピュータにて自動監視されて記録されると共に、電子測定器の測定値が正常範囲を超えたときには前記フィットネス機器に対して停止信号を発して、場合によっては必要に応じてパイロットランプを点灯させたり、警報音を鳴らしたりして周囲の注意を喚起させたりすることも可能であるので、トレーニーにとっては頗る安全である。
【0019】
即ち、本発明のメディカル・オートフィットネス・システムは、基本的にはコンパクト記録媒体、リーダ手段、フィットネス機器、電子測定器、制御コンピュータを連関統合して構成されるのであるが、必要があれば、担当医師の端末パソコンと前記制御コンピュータとをデータ通信可能に連繋させたり、あるいは常連のトレーニーに対し携帯端末器を
交付して、この携帯端末器と前記制御コンピュータとの間に通信ネットを構築したり、
さらには当該システムにオーディオ機器を付設することによりモラール(morale)増進機能やアナウンス機能を持たせることも可能であって、そのシステム構成は簡素で安価に提供できるにも拘わらず、その技術上の効果は頗る大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施例を添附図面に例示して、本発明システムの構成・作用について更に詳しく説明するものとする。
【実施例】
【0021】
〔実施例1〕
図1〜図3において、符号1にて指示するものはICカード形式のコンパクト記録媒体である。このICカード(記録媒体)1には、図2に示されるように、医師Dの健康診断を通じて処方された運動の種類や運動負荷値など特定トレーニーTが実行消化すべき運動項目(例えば、トレッドミル運動など)や運動量(トレッドミル機を使用する場合には、ベルトコンベアの傾斜度、歩行又はランニングの時速、および時間など)がフィットネス機器制御信号として電磁記録されている。
【0022】
また、図面上、符号2で指示するものは、上記ICカード形式のコンパクト記録媒体1に記録されているフィットネス制御信号を読み込んで後述の制御コンピュータに送致するリーダ手段2としての周知のICカード・リーダ・ライタである。
【0023】
一方、符号3で指示するものは、サーボモータ、ディジタルモータ、ロータリエンコーダ、ボールネジ機構など周知の制御系機構部品が組み込んで構成したフイットネス機器である。本実施例では速度および勾配を上記ICカード1の制御信号による制御の下に循環運動するベルトコンベア上を歩行、ランニングできるように構成されたトレッドミル3a、足の屈伸を支援するレッグ・カール3b、胸・肩・腕の筋肉の鍛練運動を支援するチェストプレス3c・…その他3nなど複数種類のフィットネス機器がn台(nは整数)配列されている。そして、これらフィットネス機器3(3a・3b・3c・…3n) は後述の制御コンピュータ5に電気的に連繋されて一定の制御関係の下にある。
【0024】
符号4で指示するものは電子測定器であり、実施例では、上膊部に巻き付けて心拍数と血圧を測定する電子心拍・血圧計41 、横隔膜の位置する胸部に取り付けて圧電センサーにより呼吸数を測定する電子呼吸計測器42 、心臓の位置する胸部に取り付けて心筋電圧の変化を経時的に電子マイクロ心電計43 が用いられている。しかして、これら電子測定器4(41 ・42 ・43 )の出力する測定値信号はLANを介して後述の制御コンピュータに送致されることになる。
【0025】
符号5にて指示するものは、前述のリーダ手段2、フィットネス機器3、およびLANを介し電子測定器4に通信可能に連繋されたCPU、メモリー、通信機能、データ処理能力、データ検索プログラムを備えたオフコン・クラスの制御コンピュータである。即ち、この制御コンピュータ5はリーダ手段2の読み取ったコンパクト記録媒体(ICカード)の制御信号を指定されたフィットネス機器3(例えば、トレッドミル3a)に送致して、このフィットネス機器3aを指定の負荷値(トレッドミル・コンベアの傾斜度、歩行又はランニングの時速、および時間など)にセットする。当該フィットネス機器はトレーニーTが乗載してスタートさせると指定通りに駆動することになる。そして、このトレーニーTの運動中の呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧など生理的変動量の変化は、トレーニーTの装着している電子測定器4が電子信号として検出し、LANを介し制御コンピュータ5に送信される。そして、制御コンピュータ5に送信された前記呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧など生理的変動量の変化はインターネットを介して担当医師Dの端末パソコン6に送信されて担当医師Dのカルテ情報としてハードディスクに記録される一方、担当医師Dは当該トレーニーTのICカード1に記録されたフィットネス機器制御信号の書き換えが必要と判断したときにはインターネットを介して制御コンピュータ5に書き換えデータを送信し、トレーニーTにはICカード1をリーダ手段(ICカードリーダ・ライタ)2に挿入させることにより記録を更新することが可能である(図2参照)。
【0026】
また、図1中に符号7にて指示されるものは、常連トレーニーTに交付される携帯端末器7である。この携帯端末器7は、制御コンピュータ5への情報交信を可能にするプログラムを搭載した実質的に携帯電話機である。他方、制御コンピュータ5には、各フィットネス機器の空き時間、予約時間、使用時間などを管理する予約プログラムが格納されており、常連トレーニーTから携帯端末器7を介し制御コンピュータ5に使用希望のフィットネス機器3に対し使用時間の予約連絡が入ったとき、予約対象のフィットネス機器3(3a・3b・…3n)の空き時間を自動検索して受諾可能な場合に受付け予約して爾後の該当機器の予約および使用を予約連絡を拒絶することになる。
【0027】
さらに、図1中に符号8にて指示するものはオーディオ機器である。このオーディオ機器8は、カセットテープやコンパクトディスクなどに録音した音楽、声援、掛声、講義、講演など鼓舞・学習音声や音楽・講談・落語などの娯楽音声を再生し運動中のトレーニーTに聞かせることによって時間の有効活用を増進したり、あるいは図示しない記憶部に予め所定の案内メッセージを記憶させておいてリーダ手段2にトレーニーTのICカード1が反応したときに運動開始の案内メッセージをアナウンスして該当するフィットネス機器3(例えば、3a)への案内指示をしたり、一つのフィットネス機器3による運動実行が終了したときは順次処方指定された種類のフィットネス機器3(例えば、3b)への案内指示をしたりする。
【0028】
〔実施例2〕
次に、図4には、本発明の適用例である実施例2が示される。図4において符号1は、健康運動を必要とする個別のトレーニーTを識別するためのIDコードが記録された周知の磁気カードからなるコンパクト記録媒体である。符号2は、前記磁気カード1に記録されているトレーニーのIDコードを読み出す周知のカード・リーダ・ライタ、符号3(3a・3b・3c・…3n)は複数種類のフィットネス機器、符号4は電子測定器、符号5は制御コンピュータ、符号6は医師Dが自己の診察室に設置している端末パソコンであり、前記制御コンピュータとインターネットを介して相互にデータ通信可能である。符号8は前記各フィットネス機器3に付設されたオーディオ機器である。しかして、実施例2におけるフィットネス機器、電子測定器4、制御コンピュータ5、端末パソコン6、オーディオ機器8は、実施例1において採用したものと基本的に同じである。
【0029】
そして、本実施例2においては、当該トレーニーTについて必要とされるところの医師Dの診断処方に基づく指定の運動種類、運動負荷値などの運動量を実行消化するためのフィットネス機器制御信号は、制御コンピュータ5のメモリーに記録蓄積される。本実施例2においては特定のトレーニーに必要とされる運動の種類、運動時における付加値などは医師Dが個々のトレーニーTを個別的に診察して処方することになっており、処方した結果は、医師Dのパソコン6によりインターネットを介してフイットネスセンター(以下、FCと略称)に設置された制御コンピュータ5に送致される仕組みを採用している。
【0030】
図4において特定のトレーニーTが磁気カード1をリーダ手段であるカードリーダライタ2に通すと、このリーダ手段2は磁気カード1に記録されたIDコードを読み出して
制御コンピュータ5に送致する。すると、IDコードが入力された制御コンピュータ5はこのIDコードに対応するトレーニーTの処方データを検出して処方された種類のフィットネス機器3(例えば、トレッドミル3a)に制御信号を送る。制御信号を受信した該当のフィットネス機器3aは、制御コンピュータ5に記録されている医師Dの処方に係る既定の負荷値(トレッドミル・コンベアの傾斜度、歩行又はランニングの時速、および時間等)にセットされることになる。かくして、トレーニーTが乗載すると、当該フィットネス機器は指定通りに駆動することになる。この際、このトレーニーTの運動中の呼吸数、
心拍数、血圧値、心筋電圧など生理的変動量の変化は、トレーニーTの装着している電子測定器4が電子信号として検出し、LANを介し制御コンピュータ5に送信される。そして、制御コンピュータ5に送信された前記呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧など生理的変動量の変化はインターネットを介して担当医師Dの端末パソコン6に送信されて担当医師Dのカルテ情報として課題端末パソコンのハードディスクに記録される一方、担当医師Dは制御コンピュータに記録された対象トレーニーTのフィットネス機器制御信号の書き換えが必要と判断したときにはインターネットを介して制御コンピュータ5に書き換えデータを送信して、適切な最新の処方データに書き換え変更することができる。
【0031】
[実施例1システムの利用例]
まず、糖尿病や肥満症などの生活習慣病の予防又は改善を望む人が所定の病院・診療所へ行って医師Dの専門診察を受け運動処方を貰う。この運動処方は、コンパクト記録媒体(例えば、ICカード)1に必要とされる運動の種類、運動の負荷値、運動量などが電子データから成るフィットネス機器制御信号として記録され、前記診察を受けたトレーニーに交付される。
【0032】
このICカード1の交付を受けたトレーニーTは、直接、FCへ行くか、携帯端末器7を介し予約して指定時間にFCへ行く。FCにおいてトレーニーTがICカード1をリーダ手段2にフィットさせると、処方指定されたフィットネス機器3(トレッドミル3a)のパイロットランプPが点灯してトレーニーTを其処へ誘導すると共に、オーディオ機器8が「MKさん。ようこそ御越し下さいました。本日は、1番のトレッドミル3aと、2番のレッグカール3bです。まず1番目のトレッドミル3aから始めましょう。」と予定をアナウンスし、それに引き続き、このトレッドミル3aでは運動開始に先立って「本日は傾斜度8レベル、時速6kmで20分頑張って下さい。では、スタートボタン(図示せず)を押して下さい」と案内アナウンスをする。
【0033】
そこで、トレッドミル3aに乗ってスタートボタンを押すと、トレッドミル3aは、ICカード1に記録された制御信号の指令に従って傾斜度8レベルに合わされ、ロードベルトが時速6kmで循環運動を開始し、と同時に本利用例ではオーディオ機器8が“エドワード・エルガー”の行進曲『威風堂々』の演奏する。すると、トレーニーTは、栄光の勝者気分で歩行鍛練を行えるのであって、20分のトレーニング時間を快適に過ごすことができる(なお、音響が辺りの雰囲気を害する惧れがあるときはオーディオ機器8はヘッドフォン <図示せず> に切り換えておくものとする)。そして、トレッドミル3aが止まると、オーディオ機器8は「お疲れさまでした。次は、2番のレッグカール3bにどうぞ」と案内アナウンスする。
【0034】
2番の2番のレッグカール3bへ移ると、其処のオーディオ機器8が「MKさん。お疲れさまでした。今度はレッグカールです。5kgで10回、2セットですね。どうぞ !! 」と案内アナウンスをする。ついで、レッグカール3bは、ICカード1に記録された制御信号の指令に従って自動的にレッグカール3bに5kgのウェイトがセットされると共に足のポジションも合せられる。
【0035】
トレーニーTがレッグカール3bで運動を開始すると、其処のオーディオ機器8が足曲げ運動のタイミングに合わせて「ワッセ! ワッセ! ・…」といった掛声を流して疲れてきたトレーニーTを励ましてので、トレーニーは疲れを忘れて運動に夢中になりレッグカール運動の2セットを難なく終えることができる。トレーニーTのレッグカール運動が終了すると、オーディオ機器8は「MKさん。本日は、お疲れさまでした。」と労いのメッセージを流して、爾後の更なる運動努力を促す。
【0036】
他方、上記のフィットネス機器3による運動中にトレーニーTの血圧や心筋電圧などに異常が生じたときには電子測定器4が血圧値、心筋電圧値、心拍数値の変化を即時に検出し制御コンピュータ5に送致して、駆動中のフィットネス機器3を直ちに停止するとともに、パイロットランプPを点滅させて係員に報知する。同時に、そのトレーニーの生理的変動のデータは担当医師Dの端末パソコン6に送信されカルテ情報として記録蓄積されることになる。
【0037】
また、担当医師Dは、自己の端末パソコン6に送信されたトレーニーの生理的変動値を従前の蓄積データに照らして診断し、当該トレーニーTに交付してあるICカード1の記録を変更する必要があると認めたときには、自己の端末パソコン6のデータを書き換えると共に、トレーニーTのICカード1の記録も可能な限り早急に書き換えるものとする。
【0038】
なお、上記の如きシステム利用形態は、実施例2の「メディカル・オートフィットネス・システム」を使う場合にも概ね同様の事が行える。もっとも、データ記録容量の小さい磁気カードを使用する実施例2にあっては、コンパクト記録媒体2の処方データの書き換えは行わないものとする。
【0039】
本明細書と図面に具体例として例示する実施例とその利用例は上述のとおりであるが、本発明は上述の具体例に限定されるものではなく、特許請求の記載の範囲内において種々の設計変更が可能である。例えば、上述の実施例においては、フィットネス機器3にテレビジョンのごとき映像機器を明示的に説明をしていないが、上記構成のシステムにあってフィットネス機器3の駆動と同時に映像機器を同調させて画像を映出させることも可能であって、そうすることによって、フィットネス機器3で運動するトレーニーTの眼前に愛くるしい動物や登山コースの山頂に至る景色を映し出してトレーニーTを楽しませたり、あるいは模範となるインストラクターの正しい演技を眼前に見ながらトレーニーが自己の運動姿勢を是正したりすることも可能であり、当然に本発明の技術的範囲に属することは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したとおり、本発明によれば、専門医師の診断処方に基づく適切な運動種類と運動量を極めて簡素な電子的制御システムによってトレーニーに実行させることが可能であって、現代病ともいうべき生活習慣病の予防と改善に有効であるばかりではなく、スポーツ選手や健常者の身体鍛練にも有効であって、フィットネス産業やスポーツ医学の発展に寄与するところは誠に大と云える。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、実施例1として本発明を適用して構成した「メディカル・オートフィットネス・システム」を表わすブロック線図である。
【図2】図2は、本発明の実施例システムと担当医師の端末パソコンとの連繋関係を表わす説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施例システムのフィットネス機器としてトレッドミルを採用した場合の斜視説明図である。
【図4】図4は、実施例2として本発明を適用して構成した「メディカル・オートフィットネス・システム」を表わすブロック線図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コンパクト記録媒体(ICカード、又は磁気カード)
2 リーダ手段(ICカードリーダ・ライタ、又は磁気カードリーダ・ライタ) 3 フイットネス機器
4 電子測定器
5 制御コンピュータ
6 (医師の)端末パソコン
7 (常連の)携帯端末器
8 オーディオ機器
P パイロットランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定トレーニーについて医師の診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録されているコンパクト記録媒体と;この記録媒体に記録された特定トレーニーの前記制御信号を読み取るリーダ手段と;このリーダ手段が読み取った制御信号の入力により駆動し、当該トレーニーに対する制御信号に応じた負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器と;この運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器と;この電子測定器の出力する測定値を受信して記録するとともに、当該測定値が正常範囲を超えたとき前記フィットネス機器の停止信号を発する制御コンピュータとを少なくとも含んで構成されることを特徴とするメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項2】
制御コンピュータが、病院に設置された医師の端末パソコンとデータ通信可能に連繋されていて、電子測定器により測定された運動中の特定トレーニーの生理変動量が前記制御コンピュータから医師の端末パソコンに送信されて当該トレーニーのカルテ情報として当該医師端末パソコンに記録蓄積可能であることを特徴とする請求項1記載のメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項3】
特定トレーニーについて医師の診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録蓄積されている制御コンピュータと;特定のトレーニーを識別するためのIDコードが記録されたコンパクト記録媒体と;この記録媒体に記録された特定トレーニーのIDコードを読み出して、読み出したIDコードを前記制御コンピュータに送るリーダ手段と;このリーダ手段から送られた特定トレーニーのIDコードに基いて制御コンピュータが該当するトレーニーの記録を検出し、当該トレーニーに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号を出力して当該トレーニーに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器と;この運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器と;この電子測定器の出力する測定値を受信して記録するとともに、当該測定値が正常範囲を超えたときに前記制御コンピュータが当該フィットネス機器に停止信号を発して停止せしめることを特徴とするメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項4】
制御コンピュータから送信されてくる特定トレーニーの生理的変動量を、医師が記録蓄積された医師側の端末パソコンの当該トレーニーに関する従前の蓄積データに照らして診断して、このトレーニーのコンパクト記録媒体のフィットネス機器制御信号を制御コンピュータを介し書換え更新可能に構成したことを特徴とする請求項2記載のメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項5】
常連のトレーニーに携帯端末器を交付して、これら各携帯端末器と制御コンピュータとの間に通信ネットを構築しておく一方、この制御コンピュータには各フィットネス機器の空き時間、予約時間、使用時間などを管理する予約プログラムを格納せしめて、常連トレーニーの携帯端末器を介して制御コンピュータに使用希望のフィットネス機器について
使用時間の予約連絡が入ったとき、対象とされたフィットネス機器の空き時間を当該制御コンピュータが自動検索して受諾可能な場合に受付け予約して爾後の該当機器の予約および使用を予約連絡を拒絶できるように構成したことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項6】
コンパクト記録媒体、リーダ手段、フィットネス機器、電子測定器、制御コンピュータに加えて、さらにオーディオ機器が付設されており、このオーディオ機器はフィットネス機器の駆動に同調して学習または娯楽用の録音を再生してトレーニーの聴覚を刺戟可能であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のメディカル・オートフィットネス・システム。
【請求項7】
オーディオ機器には、リーダ手段がトレーニーのコンパクト記録媒体に反応したとき運動開始の案内メッセージをアナウンスして該当するフィットネス機器の案内指示を行い、一つのフィットネス機器による運動実行が終了したときには、順次処方指定された種類のフィットネス機器への案内指示を行うアナウンス機能が付帯されていることを特徴とする請求項6記載のメディカル・オートフィットネス・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−345973(P2006−345973A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173437(P2005−173437)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(394024477)福井コンピュータ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】