説明

メラニン生合成阻害活性を有するテレイン(TERREIN)化合物及びその製造方法

本発明は、テレイン化合物を含んだメラニン生合成阻害剤及びテレイン化合物の製造方法に関するものである。前記テレイン化合物は、韓国国内の土壌に棲息するカビペニシリウム属KCTC26245菌株を通じて容易に製造でき、特に、チロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないけれどメラニン色素細胞内でERK(extracellular signal-regulated kinase)活性を促進してMITF(microphthalmia-associated transcription factor)の発現を抑制することによって美白効果を示すもので、メラニン生合成の抑制作用が既存の物質より強力で、作用機序が相異するので配合適用時に相乗効果を期待でき、皮膚疾患治療剤、皮膚美白剤または褐変防止剤に有用に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビ由来のメラニン生合成阻害活性を有する物質の新規な用途とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、自然界に広く分布するフェノール類の生高分子物質で、黒い色素と蛋白質の複合体で、ある環境に対する生存力と競争力を高める物質である。しかし、メラニンの過剰生産は人体にしみ、そばかす等を形成して皮膚老化を促進したり皮膚癌の誘発に関与すると報告されている。また、オゾン層の破壊で紫外線に対する露出が酷くなり生じる過剰のメラニン生合成は、人体の皮膚老化に致命的な害をもたらす。そのため、強力なメラニン生合成阻害活性物質の開発に多くの努力が傾けられてきた。
【0003】
メラニンの生合成代謝は、皮膚癌と関連して最近集中的に研究されていて、多様なメラニン生合成阻害剤等が開発され、医薬品産業では皮膚疾患治療剤、化粧品産業では、しみ、そばかす等を予防及び治療する皮膚美白剤または食品産業では、褐変防止剤等として適用されている。また、最近では環境問題と関連してその需要が急激に増加している。
【0004】
メラニン生合成に関連する様々な要因は、大きく2つに分けられる。その一つは、メラニン生合成の速度調節工程酵素のチロシナーゼ(tyrosinase)を直接抑制する要因である。
【0005】
チロシナーゼは、銅と結合した酵素で、動物、植物、微生物及びヒト等に広く分布していて、モノヒドロキシまたはジヒドロキシフェニルアラニン(dihydorxy-phenylalanine, DOPA)等のフェノール化合物で好気的酸化を促進させて、紫外線に酷く露出した皮膚にメラニンを沈着させて皮膚の老化と損傷を誘発する作用をする。また、野菜または果実類でもチロシナーゼ等のようなポリフェノールオキシダーゼが食品の褐変化現象を招来する。
【0006】
今まで、メラニン生合成阻害剤の研究は、主にチロシナーゼ阻害剤を開発する方向に集中されてきており、代表的なチロシナーゼ阻害剤としては、チロシナーゼ活性部位の銅イオンに対するキレート形成物質、キノン類をフェノール類に還元させるアスコルビン酸等の還元剤、そしてチロシナーゼ自体を変性させる非スルフィト製剤等を挙げられる。
【0007】
このように、チロシナーゼ阻害剤が多様な美白剤等として開発されて現在使用されているが、様々な問題点も同時に提起されている。しみ、そばかす、斑点及び妊娠期の高色素沈着のような過剰色素症治療に局部的に使用されている、例えば、4-ヒドロキシアニソール及びヒドロキノンは、強力なメラニン生合成阻害活性を有しているが、同時に色素細胞の変性または致死を誘発して細胞本来の機能を損傷させる等の副作用を示す。特に、ヒドロキノン系列の化合物はメラニン生合成を阻害する美白用クリームとして開発され使用されているが、細胞毒性による皮膚刺激または皮膚病を誘発することが報告され、現在は一部の国家でのみ使用が許可されているのが実情である。
【0008】
また、メラニン生合成に関連したもう一つの要因は、チロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないが、メラニン色素細胞内でチロシナーゼの発現に作用する転写因子を調節する。
【0009】
最近のERKの抑制実験のレポートによれば、メラニン細胞でのメラニン生合成がERKの活性化によって抑制され得 (Englaro W, 等 Inhibition of the mitogen-activated protein kinase pathway triggers B16 melanoma cell differentiation. J Biol Chem, 1998年, 第273巻, 9966-9970頁)、さらに、ERKの活性化により生じるMITFの分解により、メラニン生合成が抑制され得る(Wu M, 等, c-Kit triggers dual phosphorylations, which couple activation and degradation of the essential melanocyte factor Mi. Genes Dev 2000年,第14巻,301-312頁)。
【0010】
このような要因を利用したメラニン生合成阻害剤は、チロシナーゼの直接抑制に伴って生じる副作用を引き起こさず、従来のメラニン生合成阻害剤と共に使用するときに、作用機序が相異するので、効果を挙げ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、チロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないが、ERK(extracellular signal-regulated kinase)活性を促進することにより、MITF(microphthalmia-associated transcription factor)の発現を抑制する、メラニン生合成阻害物質及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明はテレイン(TERREIN)化合物を有効成分とするメラニン生合成阻害剤を提供する。
【0013】
また、前記の目的を達成するために、本発明はメラニン合成阻害特性を有するテレイン化合物を、ペニシリウム属カビ菌株から分離する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記本発明のテレイン化合物は、チロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないけれど、メラニン色素細胞内でERK活性を促進してMITFの発現を抑制することによって美白効果を示す。また、細胞に対する毒性が低く、その結果、従来のチロシナーゼを直接抑制するメラニン生合成阻害剤と比べて副作用が少なく、皮膚疾患治療剤、皮膚美白剤または褐変防止剤の有望な候補であることを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記の化学式1で表示されるテレイン化合物を有効成分として含有するメラニン生合成阻害剤を提供する。
【0016】
【化1】

【0017】
前記化学式1で表示されるテレイン化合物は、メラニン生合成阻害効果を示す。図5〜7に示されるように、本発明のテレイン化合物は、従来のメラニン生合成阻害剤であるコウジ酸のように、メラニン生合成を阻害し、コウジ酸に比べて10倍以上の強いメラニン生合成阻害効果を示すことが分かる。
【0018】
特に、本発明のテレイン化合物はチロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないけれど、メラニン色素細胞内でERK(extracellular signal-regulated kinase)活性を促進してMITF(microphthalmia-associated transcription factor)の発現を抑制することにより、美白効果を示す。低い細胞毒性のため、チロシナーゼを直接抑制する従来のメラニン生合成阻害剤に比べて副作用が少ない。さらに、作用機序が相異するので、従来の阻害剤と組み合わせて用いるときに、美白効果が向上する。従って、本発明の化合物は、皮膚疾患治療剤、皮膚美白剤または褐変防止剤として有用に使用できる。
【0019】
また、本発明はペニシリウム属(Penicillium sp)菌株からテレイン化合物を分離する方法を提供する。
【0020】
詳細には、ペニシリウム属(Penicillium sp)菌株を培養する工程(工程1)、前記工程で得た菌株またはその培養液を得る工程(工程2)、前記工程で得た菌株またはその培養液をエチルアセテートで抽出してエチルアセテート抽出物を得る工程(工程3)、及び前記エチルアセテート抽出物をカラムクロマトグラフィーを遂行して前記化学式 1のテレイン化合物を得る工程(工程4)をからなるテレイン化合物の製造方法を提供する。
【0021】
前記工程1では、ペニシリウム属菌株を培養する。
【0022】
前記ペニシリウム属菌株は、土壌から分離することができる。ここで、好ましくは、ペニシリウム属KCTC26245が用いられた。工程1では、ペニシリウム属 KCTC26245を、酵母麦芽抽出(yeast-malt extract, YM)培地で、28℃、140rpmで8日間培養した。
【0023】
前記新菌株のペニシリウム属KCTC 26245を、土壌から分離した後、菌株のメラニン生合成阻害活性を調査して1次活性菌株を選抜した。エチルアセテートによって抽出される活性物質を有する、選抜した活性菌株の中から、最も活性が高い菌株を選抜した。選抜された菌株を「カビペニシリウム属F020135」と命名して、2003年8月24日付で韓国生命工学研究院内遺伝子銀行に寄託した(寄託番号KCTC26245)。
【0024】
工程2では、菌株またはその培養液を得た。詳細には、菌株、または菌株の代謝物を含有した培養液を、培養したペニシリウム属KCTC26245のアセトン抽出物から得た。
【0025】
工程3では、前記菌株またはその培養液から、エチルアセテート抽出物を得た。前記菌株から得たアセトン抽出物または菌株の培養液に、エチルアセテートを使用して分画を抽出した後、減圧濃縮した。
【0026】
工程4では前記得られたエチルアセテート抽出物からカラムクロマトグラフィーを使用してテレイン化合物を得た。詳細には、本工程は以下の2工程を含む。
【0027】
工程3で得られたエチルアセテート抽出物を、CHCl3及びメタノールの混合溶媒を移動相に使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して分画を得る工程(工程4-1)及び、
前記分画を、メタノールを移動相に使用して、セファデックス-LH20 カラムクロマトグラフィーで分離して本発明のテレイン化合物を得る工程(工程4-2)
【0028】
工程4-1では、移動相にCHCl3及びメタノールの混合溶媒を用い、ここで、好ましくは、混合比率は、CHCl3:メタノール=20:1〜1:1した。
【0029】
工程4-2では、移動相にメタノールを用い、このとき、最初のカラムクロマトグラフィーには、好ましくは、100%メタノールを用い、その後に、70%メタノールを使用して再びカラムクロマトグラフィーを遂行した。
[実施例]
【0030】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例 1:本発明のテレイン化合物の製造
土壌から分離したカビ菌株ペニシリウム属(Penicillium sp)培養液から本発明のメラニン生合成阻害物質化合物を分離した。
【0032】
詳細には、土壌から分離したカビ菌株ペニシリウム属(Penicillium sp)F020135菌株(寄託番号KCTC26245)を、500ml三角フラスコ中、酵母麦芽抽出(yeast-malt extract, YM)培地 100mlで、28℃、140rpmで8日間培養した。フィルターペーパーを使用し菌体と培養液を分離後、菌体を同量のアセトンを入れて一晩静置した後、再びフィルターペーパーを使用して菌体は捨てて減圧濃縮してアセトン抽出物を得た。このアセトン抽出物と培養液を同量のエチルアセテートで抽出して減圧濃縮してエチルアセテート抽出物を得た。
【0033】
前記で得られたエチルアセテート抽出物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画を得た。まず、溶出溶媒として、CHCl3:タノール=20:1の比の混合溶媒を調製した。そして、混合溶媒中のメタノールの比率を、CHCl3:メタノール=1:1 混合溶媒まで次第に高め極性を上げた。各分画中、メラニン生合成阻害活性を示す分画だけを集めた。
【0034】
前記で得られた分画を、100%メタノール溶媒で飽和させたセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィーを使用し精製した。ここで、メタノールを溶出溶媒として使用し、活性分画だけを集めて化学式1のテレイン化合物を得た(図1参照)。
【0035】
本発明メラニン生合成阻害物質の物理化学的特性
前記化合物の物理化学的特性(physico-chemical property)を調査した結果、白色の粉末状態と確認された。
【0036】
前記化合物の質量(Mass)分析の結果、分子量は154であることが分かった。以上の物理・化学的性質と1H、13C核磁気共鳴スペクトル(NMR スペクトル)データ分析結果を根拠に、本発明の化合物の分子式をC8H10O3と決定した。
【0037】
本発明化合物の化学構造
前記化合物の化学構造を解明するために、1H NMR スペクトル、13C NMR スペクトルを含む1次元NMR及びHMBCスペクトルのような2次元NMR実験を測定した。
【0038】
本発明の化合物を重水素メタノール(CD3OD)に溶解して、1H NMRスペクトル及び13C NMRを測定した。その結果、化学式 1の4,5-ジヒドロキシ-3-プロペニル-2-シクロペンテン-1-オン(4,5-dihydroxy-3-propenyl-2-cyclopenten-1-one)の化学構造を有するテレイン(terrein)化合物であることを確認した。
【0039】
NMRデータ分析、13C NMRスペクトル分析の結果、19.2(CH3)、78.0(CH)、82.5(CH)、125.0(CH)、126.1(CH)、145.0 (CH)、170、205.5ppmで8個のカーボンピークが観察された。1H-NMRスペクトル分析から、1.94ppm(3H, dd, J=6.9,1.5Hz)、4.07ppm(1H, d, J=2.7Hz)、4.67ppm(1H, d, J=2.7Hz)、6.0ppm(1H, s)、6.44ppm(1H, dd, J=15.6, 1.5)、6.81ppm(1H, aq, J=6.9,15.6)で他のピークが観察された。分子量とNMRデータから、化合物の構造を、化学式1のテレイン(terrein)であると最終的に決定した。
【0040】
製剤例1:本発明のテレイン化合物を含有したクリーム剤の製造
ステアリン酸、セトステアリルアルコール、カプリリック/カプリックトリグリセリド(carlyric/capric triglyceride)、鉱油、ブチレングリコールを、水浴槽内のビーカーに加えて、75℃に加温して油相に製造した。前もって準備した実施例1のテレイン化合物、水、グリセリン、ツイーン60、ツイーン80、水酸化カリウムを混合して水相とし、そこに前記油相を加えた。前記溶液を1200〜1500rpmで10〜20分間撹拌した後、冷却した。溶液を常温で1〜2日間放置した。下記の表1に前記クリーム剤内物質の含量を記載した(ここで、総重量は100gにした)。
【0041】
【表1】

【0042】
実験例1:本発明化合物の細胞毒性実験
本発明テレインの細胞毒性効果を測定するために、Mel-Ab細胞をテレイン化合物で処理した。
【0043】
詳細には、Mel-Abメラニン細胞は、5%のCO2、37℃条件下で、10%の牛胎児血清(FBS)、100nM phobol 12-myristate 13-acetate, 1 nMのcholera toxin, 50μg/mLのストレプトマイシン及び50U/mLのペニシリンを添加したDMEMで培養した。
【0044】
前記のように培養したMel-Abメラニン細胞に、テレイン化合物を0、10、25、50、75、100uMの種々の濃度で24時間処理して、さらに培養した。その後、培養培地を除去した。0.5mLの0.1%クリスタルバイオレット(crystal violet)で染色して、Mel-Abメラニン細胞に及ぼす影響を測定した。クリスタルバイオレットは、数回洗浄して除去した。細胞に残存するクリスタルバイオレットを95%エタノール1.0mLを使用して抽出した。抽出したクリスタルバイオレットのOD590は、エリーザ(ELISA)リーダーで測定し、細胞の生存力程度を測定した。結果は、図4に示した。
【0045】
図4に示されるように、本発明のテレイン化合物は、100uM濃度までMel-Abメラニン細胞に毒性が見られないので、人体に安全に投与できることを示している。
【0046】
実験例2:本発明化合物のメラニン生合成抑制実験
前記実験例1で培養したMel-Abメラニン細胞に本発明のテレイン化合物と、標準美白原料のコウジ酸(kojic acid)とを、テレイン化合物を0、10、25、50、75、100uM及びコウジ酸を0、1、10、100uMとして、それぞれ処理した。その後、それぞれの処置から得られるメラニンの生合成を比較してその結果を図5、及び6に示した。
【0047】
また、一般培養条件で培養したMel-Abメラニン細胞と、本発明のテレイン化合物で処理したMel-Abメラニン細胞とを、比較のため顕微鏡で観察して、その結果を図7に示した。
【0048】
図5、及び6に示されるように、テレイン化合物とコウジ酸は、用量依存的にメラニン生合成を抑制した。しかし、テレイン化合物の10uM濃度でのメラニン生合成抑制効果は、コウジ酸100uMの濃度での効果より非常に優れていて、テレイン化合物はコウジ酸に比べて10倍以上の強いメラニン生合成抑制効果を示すことを確認できた。
【0049】
また、図7に示されるように、一般培養条件で培養したMel-Abメラニン細胞の黒いメラニンが、本発明のテレイン化合物の処理により、用量依存的にはっきりと減少することが観察され、このことからテレイン化合物がMel-Abメラニン細胞でメラニン生合成を抑制することを知ることができた。
【0050】
実験例3:Mel-Abメラニン細胞のERK活性及びMITF分解実験
本発明のテレイン化合物のメラニン生合成阻害機序を確認するために、培養したMel-Abメラニン細胞に100uM濃度のテレイン化合物を処理した。そして、0、2、10、30、60、180、360分が経過するにつれて、ERK(extracellular signal-regulated kinase)の活性化と、MITF(microphthalmia-associated transcription factor)の分解をウエスタンブロット分析を通じて観察した。その結果は図8に示した。
【0051】
図8に示したように、Mel-Abメラニン細胞にテレイン化合物を処理した後、2乃至10分が経過するにつれて、ERK1とERK2が急激に活性化され少なくても6時間活性化状態が持続した。しかし、ERKの活性化につれてMITFの発現が減少した。
【0052】
最近のERKの抑制実験によると、メラニン細胞でメラニン生合成は、ERKの活性化によって抑制され得(Englaro W, 等. Inhibition of the mitogen-activated protein kinase pathway triggers B16 melanoma cell differentiation. J Biol Chem, 1998年, 第273巻, 9966-9970頁)、さらに、ERKの活性化によるMITFの分解により抑制され得る(Wu M, 等. c-Kit triggers dual phosphorylations, which couple activation and degradation of the essential melanocyte factor Mi. Genes Dev 2000年, 第14巻,301-312頁)。
【0053】
したがって、図8に示されるように、本発明の美白組成物に包まれるテレイン化合物が、ERKを活性化させてMITFを調節し、そして該化合物は、メラニン細胞のメラニン生合成を抑制することにより美白効果を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上述したように、本発明はテレイン化合物を有効成分とするするメラニン生合成阻害剤に関するものである。前記テレイン化合物は、韓国国内の土壌に棲息するカビペニシリウム属KCTC26245菌株から容易に分離できる。それは、チロシナーゼに対して直接的な抑制効果を示さないけれど、メラニン色素細胞内でのERK活性を促進してMITFの発現を抑制して、美白効果を示す。本発明の化合物のメラニン生合成抑制作用は、既存の物質より強力であり、さらに作用機序が相異するので、その効果は、本発明の化合物を通常の阻害剤と共に用いるときに、効果を向上させ得る。従って、本発明の化合物は、皮膚疾患治療剤、皮膚美白剤または褐変防止剤の製造に、有用に使用できる。
【0055】
当業者は、上記した概念および特定の態様が、本発明と同じ目的を遂行するために、他の態様に修正する、または設計することの基本として、容易に利用することができると理解するであろう。また、当業者は、相応する態様が、特許請求の範囲に記載した発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】カビ菌株ペニシリウム属(Penicillium sp) KCTC26245の代謝産物(metabolite)からテレインを分離する過程を示した模式図である。
【図2】本発明のテレイン化合物の1H-NMR(600MHz)スペクトルを測定したグラフである。
【図3】本発明のテレイン化合物のHMBC(600MHz)スペクトルを測定したグラフである。
【図4】本発明のテレイン化合物に対する細胞毒性結果を示したグラフである。
【図5】本発明のテレイン化合物のメラニン生合成抑制作用を示したグラフである。
【図6】標準物質のコウジ酸のメラニン生合成抑制作用を示したグラフである。
【図7】本発明のテレイン化合物のメラニン生合成抑制作用を示した写真である。
【図8】本発明のテレイン化合物がERK信号伝達経路とMITFの発現に及ぼす影響に対する実験結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表示されるテレイン化合物を有効成分とするメラニン生合成阻害剤。
【化1】

【請求項2】
メラニン生合成阻害剤が皮膚疾患治療剤に使用される、請求項1に記載のメラニン生合成阻害剤。
【請求項3】
メラニン生合成阻害剤が皮膚美白剤に使用される、請求項1に記載のメラニン生合成阻害剤。
【請求項4】
前記メラニン生合成阻害剤が褐変防止剤に使用される、請求項1に記載のメラニン生合成阻害剤。
【請求項5】
ペニシリウム属(Penicillium sp)菌株KCTC26245を培養する工程(工程1)、前記工程で得られた菌株またはその培養液を得る工程(工程2)、前記工程で得られた菌株またはその培養液をエチルアセテートで抽出してエチルアセテート抽出物を得る工程(工程3)、及び前記エチルアセテート抽出物をカラムクロマトグラフィーを遂行して請求項1のテレイン化合物を得る工程(工程4)からなるテレイン化合物の製造方法。
【請求項6】
工程4が、以下の2工程を含む
工程3で得られたエチルアセテート抽出物をCHCl3及びメタノールの混合溶媒を移動相に使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して分画を得る工程(工程4-1)、及び前記分画を、メタノールを移動相に使用してセファデックス-LH20カラムクロマトグラフィーで分離して本発明のテレイン化合物を得る工程(工程4-2)
請求項5に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−513941(P2007−513941A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543731(P2006−543731)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002677
【国際公開番号】WO2005/055995
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(501245997)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (15)
【出願人】(506198861)ウェルスキン カンパニー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】WELSKIN CO., LTD.
【Fターム(参考)】