説明

メラノコルチン−4受容体作動薬としてのアシル化ピペリジン誘導体

【課題】肥満、糖尿病、勃起不全および女性性的機能不全のような性的機能不全などのMC−4Rの活性化に対して応答性の疾患および障害の治療、管理または予防において有用な化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される新規な4−置換N−アシル化ピペリジン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシル化ピペリジン誘導体、それの合成およびそれのメラノコルチン受容体(MC−R)作動薬としての使用に関する。詳細には本発明の化合物は、メラノコルチン−4受容体(MC−4R)の選択的作動薬であることで、肥満、糖尿病、男性性的機能不全および女性性的機能不全などのMC−4Rの活性化に応答する障害の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
プロオピオメラノコルチン(POMC)由来ペプチド類は、食物摂取に影響することが知られている。いくつかの系統の証拠が、メラノコルチン受容体(MC−R)ファミリー(そのうちのいくつかは脳で発現される)のG−蛋白結合受容体(GPCR)が、食物摂取および代謝の制御に関与するPOMC由来ペプチドの標的であるという認識を裏付けている。肥満抑制の標的とすることができる具体的な1種類のMC−Rが確認されているわけではないが、MC−4R信号伝達が摂取行動において重要であることを示す証拠が示されている(S. Q. Giraudo et al.,″Feeding effects of hypothalamic injection of melanocortin-4 receptor ligands,″Brain Research, 80 : 302-306 (1998))。
【0003】
肥満におけるMC−R類の関与を示す証拠には、i)異所的にMC−1R、MC−3Rおよび−4Rの拮抗薬を発現するアグーチ(Avy)マウスが肥満であり、それら3種類のMC−Rの作用の遮断が過食症および代謝障害を生じ得ることを示していること;ii)MC−4Rノックアウトマウス(D. Huszar et al., Cell, 88 : 131-141 (1997))が、アグーチマウスの表現型を反復し、それらのマウスが肥満であること;iii)齧歯類において脳室内注射(ICV)した環状ヘプタペプチドMT−II(非選択的MC−1R、−3R、−4Rおよび−5R作動薬)がいくつかの動物飼料飼育モデル(NPY、ob/ob、アグーチ、絶食)で飼料摂取を低下させ、ICV注射SHU−9119(MC−3Rおよび4R拮抗薬;MC−1Rおよび−5R作動薬)がその効果を逆転させて、過食症を誘発し得ること;iv)ズッカー(Zucker)肥満ラットに対するα−NDP−MSH誘導体(HP228)の慢性腹腔内投与が、MC−1R、−3R、−4Rおよび−5Rを活性化し、12週間にわたって飼料摂取および体重増を低下させることが報告されていること(I. Corcos et al.,″HP228 is a potent agonist of melanocortin receptor-4 and significantly attenuates obesity and diabetes in Zucker fatty rats,″Society for Neuroscience abstracts, 23 : 673 (1997))などがある。
【0004】
そうして5種類の異なるMC−Rが確認されており、それらは異なる組織で発現される。MC−1Rは最初に、チロシナーゼ制御を介してフェオメラニンからオイメラニンへの変換を制御することで毛色に影響する、延長(Extension)座での機能突然変異の優性取得を特徴とするものであった。MC−1Rは主として、メラニン細胞で発現される。MC−2Rは副腎で発現され、ACTH受容体を代表する。MC−3Rは、脳、腸および胎盤で発現され、食物摂取および熱発生の制御に関与し得る。MC−4Rは脳で独特の発現をされ、その失活が肥満を引き起こすことが明らかになった(A. Kask, et al.,″Selective antagonist for the melanocortin-4 receptor (HS014) increases food intake in free-feeding rats,″Biochem. Biophys. Res. Commun., 245 : 90-93 (1998))。MC−5Rは、白色脂肪、胎盤および外分泌腺などの多くの組織で発現される。脳でも低レベルの発現が認められる。MC−5Rノックアウトマウスでは、皮脂腺脂質産生の低下が明らかになっている(Chen et al., Cell, 91 : 789-798 (1997))。
【0005】
勃起不全は、性交を奏功させるだけの陰茎勃起を得ることができない医学的状態を指す。「インポテンツ」という用語が、この一般的な状態を説明するのに用いられる場合が多い。世界中で約1億4000万人の男性、そして国立衛生研究所の研究によれば約3000万人の米国男性がインポテンツまたは勃起不全を患っている。後者の数字は、2000年までに4700万人に増えている可能性があると推定されている。勃起不全は、器官的または心因的原因によって生じ得るものであり、そのような症例の約20%が純粋に心因的なものが発端となっている。勃起不全は、40歳で40%から、75歳で67%と増加し、50歳を超えた男性の75%強を占める。この状態の発生頻度は高いにも拘わらず、注入療法、陰茎補綴具埋込および真空ポンプなどの既存の治療選択肢が一様に不愉快なものであったことから、治療を受けているのはごく少数の患者である[考察については、″ABC of sexual health-erectile dysfunction,″Brit. Med. J. 318 : 387-390 (1999)参照)。最近になってやっとより実行可能性の高い治療法が利用できるようになり、特に例えばバイアグラ(登録商標)の商品名でファイザー(Pfizer)が販売しているクエン酸シルデナフィル(sildenafil)などの経口活性薬剤がある(″Emerging pharmacological therapies for erectile dysfunction″, Exp. Opin. Ther. Patents 9: 1689-1696 (1999)参照)。シルデナフィルは、サイクリック−GMP特異的ホスホジエステラーゼアイソ酵素であるV型ホスホジエステラーゼ(PDE−V)の選択的阻害薬である[R. B. Moreland et al., ″Sildenafil : A Novel Inhibitor of Phosphodiesterase Type 5 in Human Corpus Cavernosum Smooth Muscle Cells,″Life Sci., 62 : 309-318 (1998)参照)。バイアグラが上市される以前では、勃起不全を患う患者で治療を受けていたのは10%未満であった。シルデナフィルは、女性性的機能不全の治療用にも診療所で評価を受けつつある。
【0006】
勃起不全の経口治療用でのバイアグラ(登録商標)の規制当局による承認によって、さらに有効な勃起不全の治療方法の発見に向けた研究に拍車がかかった。いくつかの別の選択的PDE−V阻害薬が臨床試験中である。UK−114542は、恐らく特性が改善されたファイザーからのシルデナフィルの予備薬剤である。タダラフィル(Tadalafil)またはIC−351(ICOS社)は、シルデナフィルよりPDE−VIと比較したPDE−Vに関する選択性が高いことが特許請求されている。他のPDE−V阻害薬には、バイエル社(Bayer)からのバルデナフィル(vardenafil)、持田製薬からのM−54033およびM−54018、ならびにエーザイからのE−4010などがある。
【0007】
勃起不全の治療に対する他の薬理的手法についても報告がある[例えば、″Latest Findings on the Diagnosis and Treatment of Erectile Dysfunction,″Drug News & Perspectives, 9 : 572-575 (1996) ; ″Oral Pharmacotherapy in Erectile Dysfunction,″Current Opinion in Urology, 7 : 349-353 (1997)参照]。ゾナゲン社(Zonagen)が臨床開発中の製品は、バソマックス(Vasomax;登録商標)の商品名でのα−アドレナリン受容体拮抗薬であるフェントラミンメシレートの経口製剤である。バソマックス(登録商標)は、女性性的機能不全の治療についても評価を受けつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
勃起不全の治療薬は、末梢神経または中枢神経のいずれかに作用する。その薬剤は、事前の刺激に対して性的応答を「開始する」か、性的応答を「促進する」かに従っても分類される[考察については、″A Therapeutic Taxonomy of Treatments for Erectile Dysfunction : An Evolutionary Imperative,″Int. J. Impotence Res., 9 : 115-121 (1997)参照]。シルデナフィルおよびフェントラミンは末梢神経で作用し、性的刺激に対する性的応答の「増強剤」または「促進剤」と考えられるが、シルデナフィルは軽度の器質性および心因性の両方の勃起不全において有効であるように思われる。シルデナフィルは、経口投与から30〜60分後に作用開始し、その効果が約4時間持続するが、フェントラミンは開始までに5〜30分間を要し、期間は2時間である。シルデナフィルは大多数の患者において有効であるが、その化合物が所望の効果を示すには比較的長い時間を要する。シルデナフィルと比較して相対的に速効性のフェントラミンは効果が低いように思われ、作用期間が短いように思われる。経口シルデナフィルは、それを服用する男性の約70%で有効であるが、フェントラミンで十分な応答が認められるのは患者のうちの35〜40%でしかない。いずれの化合物も、効力を発揮するには性的刺激が必要である。シルデナフィルは、一酸化窒素の平滑筋弛緩効果を促進することで、全身循環における血流を間接的に増加させることから、不安定性の心臓状態または心血管疾患の患者、特に狭心症治療のためにニトログリセリンなどの硝酸化合物を服用している患者にはその薬剤は禁忌である。シルデナフィルの臨床使用に関連する他の有害効果には、頭痛、潮紅、消化不良および「異常視力」などがあり、後者は、網膜で濃縮されているサイクリック−GMP特異的ホスホジエステラーゼであるVI型ホスホジエステラーゼイソ酵素(PDE−VI)の阻害の結果である。「異常視力」とは、視覚への軽度かつ一過性の「青みがかった」着色と定義されるが、光に対する感受性亢進またはかすみ目もある。
【0009】
合成メラノコルチン受容体作動薬(メラノトロピック(melanotropic)ペプチド)は、心因性勃起不全の男性において勃起を生じさせることが認められている[H. Wessells et al.,″Synthetic Melanotropic Peptide Initiates Erections in Men With Psychogenic Erectile Dysfunction : Double-Blind, Placebo Controlled Crossover Study,″J. Urol., 160 : 389-393 (1998) ; Fifteenth American Peptide Symposium, June 14-19, 1997 (Nashville TN)参照]。脳のメラノコルチン受容体の活性化が、性的刺激の正常な刺激を生じるように思われる。上記の試験では、中枢作用性α−メラニン細胞刺激ホルモン類縁体であるメラノタン(melanotan)−II(MT−II)が、心因性勃起不全の男性に対して筋肉注射または皮下注射した場合に、アポモルヒネで得られる結果と同様、75%の応答率を示した。MT−IIは、合成環状ヘプタペプチドであるAc−Nle−c[Asp−His−DPhe−Arg−Trp−Lys]−NHであり、α−MSHおよび副腎皮質刺激ホルモンに共通するがラクタム架橋を有する4〜10個のメラノコルチン受容体結合領域を有する。それは非選択的MC−1R、−3R、−4Rおよび−5R作動薬である(Dorr et al., Life Sciences, Vol. 58, 1777-1784, 1996)。MT−II(PT−14とも称される)(エレクチド(Erectide;登録商標)が現在、非陰茎皮下注射製剤として、パラチン・テクノロジーズ社(Palatin Technologies, Inc.)およびテラテク社(TheraTech, Inc.)によって臨床開発中である。それは性的応答の「開始剤」であると考えられている。この薬剤による勃起開始までの時間は比較的短く(10〜20分)、作用期間は約2.5時間である。MT−IIで認められる有害反応には、吐き気、潮紅、食欲減退、伸張およびあくびなどがあり、MC−1R、MC−2R、MC−3Rおよび/またはMC−5Rの活性化の結果である可能性がある。MT−IIは、経口経路で投与した場合に全身循環中に吸収されないことから、皮下経路、静脈経路または筋肉経路などの非経口経路で投与しなければならない。
【0010】
MT−IIの勃起誘発特性は、各種の器質的危険因子を有する男性がその化合物の皮下注射によって陰茎勃起を起こし、さらにはプラシーボ投与後と比較して、MT−投与後の方が性欲レベルが有意に高くなったという点で、心因性勃起不全の場合に限定されないように思われる(H. Wessells, ″Effect of an Alpha-Melanocyte Stimulating Hormone Analog on Penile Erection and Sexual Desire in Men with Organic Erectile Dysfunction″, Urology, 56: 641-646 (2000)参照)。
【0011】
心因性勃起不全治療のためのメラノトロピックペプチド類の組成物および方法が、コンペティティブ・テクノロジーズ(Competitive Technologies)に譲渡された米国特許第5576290号に開示されている。メラノトロピックペプチドを用いた女性における性的応答の刺激方法が、米国特許第6051555号に開示されている。
【0012】
スピロピペリジン誘導体およびピペリジン誘導体が、メラノコルチン受容体の作動薬として、特にはMC−4R受容体の選択的作動薬としてWO 99/64002(1999年12月16日);WO 00/74679(2000年12月14日);WO 01/70708(2001年9月27日);WO 01/70337(2001年9月27日);およびWO 01/91752(2001年12月6日)に開示されており、それにより、肥満、糖尿病ならびに勃起不全および女性性的機能不全などの性的機能不全のような疾患および障害の治療において有用である。
【0013】
上記の各種薬剤の未解決の欠点のため、心因性および/または器質性の性的機能不全を患う個人を治療するための改善された方法および組成物が、医薬業界では現在もなお必要とされている。そのような方法は、現在利用可能な薬剤と比較して、広い利用可能性、高い簡便性および服用遵守の容易さ、短い作用開始時間、妥当に長い作用期間、ほとんど禁忌のない最小限の副作用を有するものでなければならない。
【0014】
従って本発明の目的は、メラノコルチン受容体作動薬であることで、肥満、糖尿病ならびに男性性的機能不全および女性性的機能不全の治療において有用であるアシル化ピペリジン誘導体を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、メラノコルチン−4(MC−4R)受容体の選択的作動薬であるアシル化ピペリジン誘導体を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、薬学的に許容される担体とともに、本発明のメラノコルチン受容体作動薬を含む医薬組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、本発明の化合物および医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物においてメラノコルチン−4受容体の活性化に応答する障害、疾患または状態の治療または予防方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、処置を必要とする哺乳動物に対して本発明の化合物および医薬組成物を投与することで、肥満、糖尿病、男性性的機能不全および女性性的機能不全を治療または予防する方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、処置を必要とする哺乳動物に対して本発明の化合物および医薬組成物を投与することで、勃起不全を治療する方法を提供することにある。
【0020】
上記および他の目的は、以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、下記構造式Iの新規な4−置換N−アシル化ピペリジン類に関する。
【0022】
【化5】

これらのアシル化ピペリジン誘導体は、メラノコルチン受容体作動薬として有効であり、選択的メラノコルチン−4受容体(MC−4R)作動薬として特に有効である。従ってこれらは、肥満、糖尿病ならびに男性および女性の性的機能不全、特に男性の勃起不全などのMC−4Rの活性化に応答する障害の治療および/または予防において有用である。
【0023】
本発明はさらに、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0024】
本発明はさらに、本発明の化合物および医薬組成物の投与による、処置を必要とする哺乳動物でのメラノコルチン−4受容体活性化に応答する障害、疾患または状態の治療または予防方法に関する。
【0025】
本発明はさらに、本発明の化合物および医薬組成物の投与による、肥満、糖尿病、男性性的機能不全および女性性的機能不全の治療または予防方法に関する。
【0026】
本発明はさらに、本発明の化合物および医薬組成物の投与による勃起不全の治療方法に関する。
【0027】
本発明はさらに、勃起不全状態の治療に有用であることが知られている治療上有効量の別の薬剤との併用で本発明の化合物を投与することによる、勃起不全の治療方法に関する。
【0028】
本発明はさらに、肥満状態の予防または治療に有用であることが知られている治療上有効量の別の薬剤との併用で本発明の化合物を投与することによる、肥満の治療または予防方法に関する。
【0029】
本発明はさらに、状態の予防または治療において有用であることが知られている治療上有効量の別の薬剤と組み合わせて、本発明の化合物を投与することで、糖尿病を治療または予防する方法に関するものでもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、メラノコルチン受容体作動薬として、特に選択的MC−4R作動薬として有用な4−置換N−アシル化ピペリジン誘導体に関する。本発明の化合物は、下記構造式Iによって表されるか、それの薬学的に許容される塩である。
【0031】
【化6】

式中、
rは1または2であり;
sは0、1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2であり;
は、
水素、
アミジノ、
1−4アルキルイミノイル、
1−10アルキル、
(CH−C3−7シクロアルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチルおよび
(CH−ヘテロアリールからなる群から選択され;ヘテロアリールは、
(1)ピリジニル、
(2)フリル、
(3)チエニル、
(4)ピロリル、
(5)オキサゾリル、
(6)チアゾリル、
(7)イミダゾリル、
(8)ピラゾリル、
(9)イソオキサゾリル、
(10)イソチアゾリル、
(11)ピリミジニル、
(12)ピラジニル、
(13)ピリダジニル、
(14)キノリル、
(15)イソキノリル、
(16)ベンズイミダゾリル、
(17)ベンゾフリル、
(18)ベンゾチエニル、
(19)インドリル、
(20)ベンゾチアゾリルおよび
(21)ベンゾオキサゾリルからなる群から選択され;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
は、
フェニル、
ナフチルおよび
ヘテロアリール
からなる群から選択され;ヘテロアリールは、
(1)ピリジニル、
(2)フリル、
(3)チエニル、
(4)ピロリル、
(5)オキサゾリル、
(6)チアゾリル、
(7)イミダゾリル、
(8)ピラゾリル、
(9)イソオキサゾリル、
(10)イソチアゾリル、
(11)ピリミジニル、
(12)ピラジニル、
(13)ピリダジニル、
(14)キノリル、
(15)イソキノリル、
(16)ベンズイミダゾリル、
(17)ベンゾフリル、
(18)ベンゾチエニル、
(19)インドリル、
(20)ベンゾチアゾリルおよび
(21)ベンゾオキサゾリルからなる群から選択され;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
NO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)−ヘテロアリール
(CHC(O)NRN(R
(CHC(O)NRNRC(O)R
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)炭素原子は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキルおよび
(CH3−7ビシクロアルキル
からなる群から選択され;
アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリールおよび
(CH3−7シクロアルキルからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
Xは、
1−8アルキル、
(CH3−8シクロアルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CHヘテロシクリル、
(CHC≡N、
(CHCON(R)、
(CHCO
(CHCOR
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)N(R
(CHNRSO
(CHS(O)
(CHSON(R)(R)、
(CHOR
(CHOC(O)R
(CHOC(O)OR
(CHOC(O)N(R
(CHN(R)(R)および
(CHNRSON(R)(R)からなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;アルキル、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;Xにおけるメチレン(CH)は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;
Yは、
水素、
1−8アルキル、
2−6アルケニル、
(CH3−8シクロアルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリールおよび
(CH−ヘテロシクリルからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;アルキル、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;Yにおけるメチレン(CH)は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されている。
【0032】
構造式Iの化合物の1実施形態では、Rは、水素、C1−6アルキル、(CH0−13−6シクロアルキルおよび(CH0−1−フェニルからなる群から選択され;フェニルは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良い。
【0033】
構造式Iの化合物の第2の実施形態ではRは、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルまたはチエニルである。この実施形態の1群ではRは、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルである。
【0034】
構造式Iの化合物の第3の実施形態ではXは、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH3−8シクロアルキルおよび
(CH−ヘテロシクリル
からなる群から選択され;
ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;Xにおけるメチレン(CH)基は、未置換であるかハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で置換されている。この実施形態の1群ではXは、(CH0−1−フェニル、(CH0−1−ヘテロアリール、(CH0−1−ヘテロシクリルからなる群から選択され;フェニルおよびヘテロアリールは、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;ヘテロシクリルは、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;CHは未置換であるかハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で置換されている。この群の1小群ではXは、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良い。
【0035】
式Iの化合物の第4の実施形態では、Yは水素である。
【0036】
構造式Iの化合物のさらに別の実施形態では、rは1または2であり、sは1である。
【0037】
本発明の化合物のさらに別の実施形態では、R置換基およびピペリジンカルボニル置換基のトランス配置を有する指定の相対立体化学配置の構造式IIaもしくはIIbの化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩が提供される。
【0038】
【化7】

式中、
rは1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2であり;
は、水素、アミジノ、C1−4アルキルイミノイル、C1−6アルキル、C5−6シクロアルキル、(CH0−1フェニル、(CH0−1ヘテロアリールからなる群から選択され;フェニルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
は、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルまたはチエニルであり;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)−ヘテロアリール
(CHC(O)NRN(R
(CHC(O)NRNRC(O)R
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)基は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
フェニル、
ヘテロアリール、
(CH0−1ヘテロシクリルおよび
3−6シクロアルキル
からなる群から選択され;アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4員〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
Xは、Rから独立に選択される1〜3個の基でそれぞれ置換されていても良いフェニルまたはヘテロアリールである。
【0039】
本発明の化合物のさらに別の実施形態では、フェニル置換基およびピペリジンカルボニル置換基のトランス配置を有する指定の相対立体化学配置の構造式IIIaもしくはIIIbの化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩が提供される。
【0040】
【化8】

式中、
rは1または2であり;
は、水素、C1−4アルキルまたは(CH0−1フェニルであり;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH0−1−ヘテロアリール、
(CH0−1−ヘテロシクリル、
ハロゲン、
OR
(CH0−1N(R
(CH0−1C≡N、
(CH0−1CO
(CH0−1NRSO
(CH0−1SON(R
(CH0−1S(O)
(CH0−1NRC(O)N(R
(CH0−1C(O)N(R
(CH0−1NRC(O)R
(CH0−1NRCO
(CH0−1NRC(O)−ヘテロアリール
(CH0−1C(O)NRN(R
(CH0−1C(O)NRNRC(O)R
O(CH0−1C(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)基は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
フェニル、
ヘテロアリール、
(CH0−1−ヘテロシクリルおよび
3−6シクロアルキル
からなる群から選択され;
アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4〜8員の単環式または二環式環系を形成している。
【0041】
メラノコルチン−4受容体作動薬として有用である本発明の化合物の例は、下記の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化9】




【0043】
本発明のさらに別の例は、下記のものからなる群から選択される化合物またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0044】
【化10】

【0045】
構造式Iの化合物は、メラノコルチン受容体作動薬として有効であり、MC−4Rの選択的作動薬として特に有効である。従ってそれらの化合物は、肥満、糖尿病ならびに男性および/または女性の性的機能不全、特に勃起不全、さらに詳細には男性勃起不全などのMC−4Rの活性化に応答する障害の治療および/または予防に有用である。
【0046】
本発明の別の態様は、処置を必要とする哺乳動物における肥満または糖尿病の治療または予防方法であって、前記哺乳動物に治療上もしくは予防上有効量の構造式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0047】
本発明の別の態様は、勃起不全などの男性もしくは女性性的機能不全の治療または予防方法であって、そのような治療または予防を必要とする哺乳動物に対して、治療上もしくは予防上有効量の構造式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0048】
本発明の別の態様は、構造式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、勃起不全などの男性もしくは女性の性的機能不全の治療または予防方法であって、そのような治療または予防を必要とする哺乳動物に対して、その状態の治療に有用であることが知られている治療上有効量の別の薬剤との併用で、治療上もしくは予防上有効量の構造式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、肥満の治療または予防方法であって、そのような治療または予防を必要とする哺乳動物に対して、その状態の治療に有用であることが知られている治療上有効量の別の薬剤との組み合わせで治療上または予防上有効量の構造式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0051】
本願を通じて、以下の用語は下記に示した意味を有する。
【0052】
上記のアルキル基は、直鎖または分岐の配置を有する指定の長さのアルキル基を含むものである。そのようなアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどがある。
【0053】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子であるフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含むものである。
【0054】
「C1−4アルキルイミノイル」という用語は、C1−3C(=NH)−を意味する。
【0055】
「アリール」という用語には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0056】
「ヘテロアリール」という用語には、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を有する単環式および二環式芳香環などがある。「5員または6員ヘテロアリール」とは単環式ヘテロ芳香環を表し、その例にはチアゾール、オキサゾール、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどがある。二環式ヘテロ芳香環には、ベンゾチアジアゾール、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、イソキノリン、プリン、フロピリジンおよびチエノピリジンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
「5員または6員炭素環」という用語は、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどの炭素原子のみを有する非芳香環を含むものである。
【0058】
「5員および6員複素環」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を有する非芳香族複素環を含むものである。5員もしくは6員複素環の例としては、ピペリジン、モルホリン、チアモルホリン、ピロリジン、イミダゾリジン、テトラヒドロフラン、ピペラジンなどがある。
【0059】
上記で定義された用語のある種のものは、上記式において複数回出てくることがあるが、そのような場合、各用語は他のものとは独立に定義されるものとする。そこで例えば、NRはNH、NHCH、N(CH)CHCHなどを表すことができる。
【0060】
「処置を必要とする哺乳動物」の1実施形態は、「処置を必要とするヒト」であり、そのヒトは男性または女性のいずれかである。
【0061】
医薬組成物での場合のような「組成物」という用語は、有効成分、および担体を構成する不活性成分、ならびにいずれか2種類以上の成分の組み合わせ、錯形成もしくは凝集から、または1以上の成分の解離から、または1以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接または間接に生じる生成物を含む製造物を包含するものである。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を混合することで製造される組成物を包含するものである。
【0062】
「勃起不全」とは、雄哺乳動物の勃起、射精または両方の不全が関与する障害である。勃起不全の症状には、勃起の達成または維持の不能、射精不首尾、早漏またはオルガスム達成不能などがある。勃起不全の増加は加齢に伴う場合が多く、通常は身体疾患によって、または薬剤投与の副作用として生じる。
【0063】
メラノコルチン受容体「作動薬」とは、メラノコルチン受容体と相互作用し、メラノコルチン受容体の薬理応答特性を開始することができる内因性または薬剤物質もしくは化合物を意味する。メラノコルチン受容体「拮抗薬」とは、通常別の生理活性薬剤によって誘発されるメラノコルチン受容体関連応答に対抗する薬剤または化合物を意味する。本発明の化合物の「作動薬」特性とは、以下に記載の機能アッセイで測定したものである。その機能アッセイは、メラノコルチン受容体拮抗薬からメラノコルチン受容体作動薬を区別するものである。
【0064】
「結合アフィニティ」とは、生体標的に化合物/薬剤が結合する能力を意味し、本願の場合には構造式Iの化合物がメラノコルチン受容体と結合する能力である。本発明の化合物についての結合アフィニティは、下記の結合アッセイで測定したものであり、IC50として表している。
【0065】
「効力」とは、作動薬が同数の受容体を同じアフィニティで占有する場合であっても、それが生じさせる応答において変動する相対的強度を表すものである。効力とは、薬剤が応答を生じさせることができる特性である。化合物/薬剤の特性は2つの群に分類することができ、それらを受容体と会合させる特性(結合アフィニティ)および刺激を生じる特性(効力)である。「効力」という用語は、作動薬が誘発する最大応答レベルを特徴づけるのに用いられる。受容体の作動薬が全て、同じレベルの最大応答を誘発できるわけではない。最大応答は、受容体結合の効率、すなわち、受容体への薬剤の結合から望ましい生理効果を生じる一連の事象からの効率によって決まる。
【0066】
特定濃度での本発明の化合物におけるEC50として表現される機能的活性および「作動薬効力」は、以下に記載の機能アッセイで測定した。
【0067】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
構造式Iの化合物は1以上の不斉中心を有することから、ラセミ体およびラセミ混合物、単独のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして得られる場合がある。本発明は、構造式Iの化合物のそのような全ての異性体を包含するものである。
【0068】
本明細書に記載の化合物の一部はオレフィン系二重結合を有し、別段の断りがない限り、EおよびZの幾何異性体の両方を含むものである。
【0069】
本明細書に記載の化合物の一部は、ケト−エノール互変異性体などの互変異性体として存在することができる。個々の互変異性体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物に包含される。
【0070】
構造式Iの化合物は、例えばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物などの好適な溶媒からの分別結晶によって、あるいは光学活性固定相を用いるキラルクロマトグラフィーを用いて、個々のジアステレオマーに分離することができる。絶対立体化学は、必要に応じて、既知の絶対配置の不斉中心を有する試薬で誘導体化した結晶生成物または結晶中間体のX線結晶解析によって決定することができる。
【0071】
別法として、一般式I、IIa、IIb、IIIaおよびIIIbの化合物のジアステレオマーは、絶対配置が既知である光学的に純粋な原料または試薬を用いる立体特異的合成によって得ることができる。
【0072】

「薬学的に許容される塩」という用語は、無機もしくは有機塩基および無機もしくは有機酸などの薬学的に許容される無毒性の塩基もしくは酸から製造される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などがある。特に好ましいものとしては、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。薬学的に許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級および3級アミン塩、天然置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミン塩および塩基性イオン交換樹脂の塩などがあり、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂類、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩がある。
【0073】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸および有機酸などの薬学的に許容される無毒性酸から製造することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などがある。特に好ましいものは、クエン酸、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0074】
本明細書で使用する場合に、式Iの化合物についての言及は、薬学的に許容される塩をも含むことは明らかであろう。
【0075】
用途
式Iの化合物はメラノコルチン受容体作動薬であることから、MC−1、MC−2、MC−3、MC−4またはMC−5など(これらに限定されるものではない)の1以上のメラノコルチン受容体の活性化に応答する疾患、障害または状態の治療、制御または予防において有用である。そのような疾患、障害または状態には、肥満(食欲低下、代謝速度上昇、脂肪摂取低減または炭水化物欲求低下による)、糖尿病(耐糖能促進、インシュリン耐性低下による)、高血圧、高脂血症、骨関節炎、癌、胆嚢疾患、睡眠無呼吸、抑鬱、不安、強迫、神経症、不眠症/睡眠障害、薬物乱用、疼痛、男性および女性性的機能不全(インポテンツ、性欲減退および勃起不全など)、発熱、炎症、免疫調節、慢性関節リウマチ、日焼け、アクネおよび他の皮膚障害、アルツハイマー病治療などの神経保護および認識および記憶促進などがあるが、それらに限定されるものではない。式Iによって包含される一部の化合物は、MC−1R、MC−2R、MC−3RおよびMC−5Rと比較してメラノコルチン−4受容体(MC−4R)に対して高選択的アフィニティを示すことから、肥満ならびに勃起不全などの男性および/または女性性的機能不全の予防および治療において特に有用である。
【0076】
「男性性的機能不全」には、インポテンツ、性欲減退および勃起不全などがある。
【0077】
「勃起不全」は、雄哺乳動物の勃起、射精またはその両方が得られない状態が関与する障害である。勃起不全の症状には、勃起の達成または維持の不能、射精不首尾、早漏またはオルガスム達成不能などがある。勃起不全および性的機能不全の増加には多くの基礎原因があり得るものであり、それには(1)加齢、(b)外傷、手術および末梢血管疾患などの基礎身体機能不全、ならびに(3)薬剤投与によって生じる副作用、抑鬱および他のCNS障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
「女性性的機能不全」は、性欲、性的刺激、性的受容力ならびにクリトリス、膣、尿道周囲腺(glans)および他の性的機能誘発箇所での障害に関係するオルガスムにおける機能不全などの複数の要素から生じるのが認められる場合がある。詳細には、そのような誘発箇所の解剖学的および機能的変化によって、乳癌患者および婦人科癌患者でのオルガスム能力が消失する場合がある。女性性的機能不全をMC−4受容体作動薬で治療することで、血流の改善、潤滑の改善、感覚改善、オルガスム到達の促進、オルガスム間の不応期の短縮ならびに刺激および性欲における改善を生じさせることができる。比較的広い意味で、「女性性的機能不全」には、性的疼痛、早産および月経困難症も含まれる。
【0079】
投与および用量範囲
哺乳動物、特にヒトに有効な用量の本発明の化合物を投与するのに、いずれか好適な投与経路を用いることができる。例えば、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与、眼球投与、肺投与、経鼻投与などを用いることができる。製剤には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、液剤、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどがある。好ましくは式Iの化合物は、経口投与または局所投与する。
【0080】
使用する有効成分の有効用量は、使用される特定の化合物、投与形態、治療対象の状態および治療対象の状態の重度に応じて変動し得る。そのような用量は、当業者であれば容易に確定することができる。
【0081】
糖尿病および/または高血糖とともにあるいは単独で肥満を治療する場合、本発明の化合物を約0.001mg〜約100mg/kg動物体重の1日用量で投与した場合、好ましくは単回投与または1日2〜6回の分割投与にてあるいは徐放剤の形で投与した場合に、ほぼ満足できる結果が得られる。体重70kgの成人の場合、総1日用量は約0.07mg〜約3500mgとなる。この投与法を調節して、至適な治療応答を得ることができる。
【0082】
糖尿病および/または高血糖、ならびに式Iの化合物が有用である他の疾患または障害を治療する場合、本発明の化合物を約0.001mg〜約100mg/kg動物体重の1日用量で投与した場合、好ましくは単回投与または1日2〜6回の分割投与にてあるいは徐放剤の形で投与した場合に、ほぼ満足できる結果が得られる。体重70kgの成人の場合、総1日用量は約0.07mg〜約3500mgとなる。この投与法を調節して、至適な治療応答を得ることができる。
【0083】
性的機能不全の治療の場合、本発明の化合物は、0.001mg〜約100mg/kgの用量範囲で、好ましくは経口での単回投与であるいは経鼻噴霧として投与する。
【0084】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用である疾患または状態の治療/予防/抑制または改善において用いられる他薬剤と併用することができる。そのような他薬剤は、それに関して一般的に使用される経路および量で、式Iの化合物と同時または順次投与することができる。式Iの化合物を1以上の他薬剤と同時使用する場合、式Iの化合物以外にそのような他薬剤を含む医薬組成物が好ましい。従って本発明の医薬組成物には、式Iの化合物以外に、1以上の他の有効成分を含むものが包含される。
【0085】
別個に投与されるか同じ医薬組成物中にて、肥満および/または糖尿病の治療または予防を目的として式Iの化合物と併用することができる他の有効成分の例としては、
(a)(i)グリタゾン類(例:トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、BRL49653など)およびWO97/27857、97/28115、97/28137および97/27847に開示の化合物などのPPARγ作動薬;(ii)メトホルミンおよびフェンホルミンなどのビグアニド類のようなインシュリン増感剤;
(b)インシュリンまたはインシュリン様作用剤;
(c)トルブタミドおよびグリピジドなどのスルホニル尿素類;
(d)α−グルコシダーゼ阻害薬(アカルボースなど);
(e)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチンおよび他のスタチン類)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポールおよび架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(ii)ニコチニルアルコールニコチン酸またはそれの塩、(iii)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびベンザフィブレート(benzafibrate))などの増殖因子−活性化因子受容体α作動薬、(iv)例えばβ−シトステロールなどのコレステロール吸収阻害薬および例えばメリナミドなどの(アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)阻害薬、(v)プロブコール、(vi)ビタミンEおよび(vii)甲状腺様作用剤(thyromimetics)のようなコレステロール降下剤;
(f)WO97/28149に開示のものなどのPPARδ作動薬;
(g)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンチラミンおよびスルビトラミンなどの抗肥満セロトニン作動薬;
(h)β−アドレナリン受容体作動薬;
(i)オルリスタット(orlistat)などの膵リパーゼ阻害薬;
(j)WO97/19682、WO97/20820、WO97/20821、WO97/20822、WO97/20823、WO01/14376および米国特許第6191160号に開示のものなどの神経ペプチドY1およびY5拮抗薬;WO01/21577およびWO01/21169に開示のものなどのメラニン濃縮ホルモン(MCH)受容体拮抗薬;ならびにオレキシン−1受容体拮抗薬などの摂食行動調節剤;
(k)グラクソ(Glaxo)によってWO97/36579に記載のようなPPARα作動薬;
(l)WO97/10813に記載のようなPPARγ拮抗薬;
(m)フルオキセチン、パロキセチンおよびセルトラリン(sertraline)などのセロトニン再取り込み阻害薬;
(n)MK−0677などの成長ホルモン分泌促進剤;
(o)カンナビノイドCB受容体拮抗薬または逆作動薬などのカンナビノイド受容体リガンド;
(p)蛋白チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害薬
などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
式Iの化合物と併用することができる抗肥満薬の例は、文献に開示されている(“Patent focus on new anti-obesity agents”, Exp. Opin. Ther. Patents, 10: 819-831 (2000); “Novel anti-obesity drugs”, Exp. Opin. Invest. Drugs, 9: 1317-1326 (2000); and “Recent advances in feeding suppressing agents: potential therapeutic strategy for the treatment of obesity”, Exp. Opin. Ther. Patents, 11: 1677-1692 (2001))。肥満における神経ペプチドYの役割について、文献に記載されている(Exp. Opin. Invest. Drugs, 9: 1327-1346 (2000))。カンナビノイド受容体リガンドについて、文献に記載されている(Exp. Opin. Invest. Drugs, 9:1553-1571 (2000))。
【0087】
別個にまたは同じ医薬組成物中で投与される、男性または女性の性的機能不全、特に男性勃起不全の治療または予防のために式Iの化合物と併用することができる他の有効成分の例には、(a)シルデナフィルおよび(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ[2′,1′:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351)などのV型サイクリック−GMP特異的ホスホジエステラーゼ(PDE−V)阻害薬;(b)フェントラミンおよびヨヒンビンまたはそれらの薬学的に許容される塩などのα−アドレナリン受容体拮抗薬;(c)アポモルヒネまたはそれの薬学的に許容される塩などのドーパミン受容体作動薬;ならびに(d)一酸化窒素(NO)供与体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
医薬組成物
本発明の別の態様は、式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、有効成分としての式Iの化合物またはそれの薬学的に許容される塩を含有し、薬学的に許容される担体および場合によって他の治療成分を含むこともできる。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基もしくは酸および有機塩基もしくは酸を含む薬学的に許容される無毒性塩基もしくは酸から製造される塩を指す。
【0089】
その組成物には、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下投与、筋肉投与および静脈投与など)、眼球投与(点眼)、肺投与(経鼻または口腔内吸入)または経鼻投与に好適な組成物などがある。ただし、いずれか特定の場合に最も適した経路は、治療対象の状態の性質および重度ならびに有効成分の性質よって決まる。それらは簡便には単位製剤で提供することができ、製薬業界で公知の方法によって製造することができる。
【0090】
実際の使用では、従来の医薬調合法に従って、式Iの化合物を医薬担体と十分に混合して組み合わせることができる。その担体は、投与に望ましい剤型、例えば経口製剤または非経口製剤(静脈投与を含む)に応じて多様な形態をとり得る。経口製剤用組成物の製造では、懸濁液、エリキシル剤および液剤などの経口液体製剤の場合には例えば水、グリコール類、オイル類、アルコール類、香味剤、保存剤、着色剤などの通常の医薬媒体を用いることができ、あるいは粉剤、硬および軟カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の場合には例えば、デンプン、糖類、微結晶セルロール、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、液体製剤より固体経口製剤の方が好ましい。 投与が容易であることから、錠剤およびカプセルが最も有利な経口単位製剤を代表するものであり、その場合は明らかに、固体の医薬担体を用いる。所望に応じて、標準的な水系もしくは非水系法によって錠剤をコーティングすることができる。そのような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むものでなければならない。当然のことながら、これら組成物中の活性化合物のパーセントは変動し得るものであり、簡便には単位重量の約2%〜約60%であることができる。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量が得られるようなものとする。活性化合物は、例えば液体滴剤または噴霧剤として鼻腔内投与することもできる。
【0091】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびショ糖、乳糖またはサッカリンなどの甘味剤を含むこともできる。単位製剤がカプセルである場合、それは上記の種類の材料以外に、脂肪油などの液体担体を含むことができる。
【0092】
他の各種材料が、コーティングとして存在したり、あるいは単位製剤の物理的形態を変えるために存在しても良い。例えば錠剤は、シェラック、糖またはその両方でコーティングされていても良い。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分以外に、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素ならびにチェリー香味もしくはオレンジ香味などの香味剤を含有することができる。
【0093】
式Iの化合物はまた、非経口投与することもできる。これら活性化合物の液剤または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合した水中で調製することができる。分散液も、グリセリン、液体ポリエチレングリコール類およびそれらのオイル中混合物中で調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は微生物成長を防止するために保存剤を含有する。
【0094】
注射用途に好適な医薬製剤には、無菌の水系液剤または分散液ならびに無菌注射液もしくは注射分散液の即時調製のための無菌粉剤などがある。いずれの場合も、その製剤は無菌でなければならず、容易に注射器注入できる程度の流動性を有するものでなければならない。それは、製造および保管条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例:グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒体であることができる。
【0095】
本発明の化合物の製造
本発明の構造式Iの化合物は、適切な材料を用いて以下の図式および実施例の手順に従って製造することができ、下記の具体的な実施例によってさらに例示される。さらに、本明細書に含まれる開示内容とともに、PCT国際出願公開WO99/64002(1999年12月16日)およびWO00/74679(2000年12月14日)(それらは参照によって本明細書に組み込まれる)に詳細に記載の手順を用いることで、当業者であれば、本明細書で特許請求される本発明の別の化合物を容易に製造することができる。しかしながらこれら実施例に示した化合物は、本発明と見なされる唯一の属を形成するものと解釈すべきではない。以下の実施例は、本発明の化合物の製造についての詳細をさらに説明するものである。当業者であれば、以下の製造手順の条件および工程についての公知の変更を用いてこれら化合物を製造可能であることは明らかであろう。本発明の化合物は概して、本明細書で前述したものなどの薬学的に許容される塩の形態で単離される。単離された塩に相当する遊離アミン塩基は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液などの好適な塩基による中和、ならびに生じたアミン遊離塩基の有機溶媒への抽出とそれに続く溶媒留去によって得ることができる。このようにして単離されたアミン遊離塩基はさらに、有機溶媒に溶解させ、次に適切な酸を加え、その後溶媒留去、沈殿または結晶化を行うことで、別の薬学的に許容される塩に変換することができる。別段の断りがない限り、温度は全て摂氏単位である。質量分析(MS)は、電子スプレーイオン質量分析によって測定した。
【0096】
「標準的なペプチドカップリング条件」という表現は、HOBTなどの触媒存在下に、塩化メチレンなどの不活性溶媒中、EDC、DCCおよびBOPなどの酸活性化剤を用いてカルボン酸とアミンをカップリングさせることを意味している。アミン官能基およびカルボン酸官能基用の保護基を用いて所望の反応を促進し、望ましくない反応を低減する方法は確立されている。保護基を外すのに必要な条件は、標準的な教科書に記載されている(例えば、Greene, T, and Wuts. P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1991)。CBZおよびBOCは、有機合成において一般的に使用される保護基であり、それらの脱離条件は当業者には公知である。例えばCBZは、メタノールまたはエタノールなどのプロトン性溶媒中、パラジウム/活性炭などの貴金属またはそれの酸化物存在下に、接触水素化することで脱離させることができる。他の反応性であり得る官能基が存在するために接触水素化が禁忌である場合、CBZ基の脱離は、酢酸中臭化水素溶液での処理によって、あるいはTFAとジメチルスルフィドとの混合物で処理することで行うこともできる。BOC保護基の脱離は、トリフルオロ酢酸、塩酸または塩化水素ガスなどの強酸を用いて、塩化メチレン、メタノールもしくは酢酸エチルなどの溶媒中で行う。
【0097】
本発明の化合物の製造についての説明で使用される略称
BOC(boc):t−ブチルオキシカルボニル、
BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、
Bu:ブチル、
calc.:計算値、
CBZ(Cbz):ベンジルオキシカルボニル、
c−hex:シクロヘキシル、
c−pen:シクロペンチル、
c−pro:シクロプロピル、
DEAD:アゾジカルボン酸ジエチル、
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン、
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン、
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)3−エチルカルボジイミドHCl、
eq.:当量、
ES−MS:電子噴霧イオン−質量分析、
Et:エチル、
EtOAc:酢酸エチル、
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート、
HOAt:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物、
HPLC:高速液体クロマトグラフィー、
LDA:リチウムジイソプロピルアミド、
MC−χR:メラノコルチン受容体(χは数字である)、
Me:メチル、
MF:分子式、
MS:質量分析スペクトラム、
Ms:メタンスルホニル、
OTf:トリフルオロメタンスルホニル、
Ph:フェニル、
Phe:フェニルアラニン、
Pr:プロピル、
prep.:分取、
PyBrop:ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、
r.t.:室温、
TFA:トリフルオロ酢酸、
THF:テトラヒドロフラン、
TLC:薄層クロマトグラフィー。
【0098】
反応図式A〜Lには、構造式Iの本発明の化合物の合成で用いられる方法を示してある。置換基はいずれも、別段の断りがない限り上記で定義の通りである。
【0099】
反応図式Aには、本発明の構造式Iの新規な化合物の合成における重要な段階を示してある。反応図式Aに示したように、の4−置換ピペリジンもしくは4−置換テトラヒドロピリジンと式のカルボン酸誘導体との反応によって、構造式Iの標題化合物を得る。反応図式Aに示したアミド結合カップリング反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレンなどの適切な不活性溶媒中で行い、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)またはベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジンホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)などのアミドカップリング反応に好適な各種試薬を用いて行うことができる。反応図式Aに示したアミド結合カップリング反応の好ましい条件は、有機合成の当業者には公知である。そのような変法には、トリエチルアミン(TEA)またはN−メチルモルホリン(NMM)などの塩基性試薬の使用、あるいは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などの添加剤の添加などがあり得るが、これらに限定されるものではない。別法として、式の4−置換ピペリジンまたは4−置換テトラヒドロピリジンを、活性エステルまたはカルボン酸から誘導される酸塩化物で処理することができ、それによっても構造式Iの化合物が得られる。反応図式Aに示したアミド結合カップリングは通常、0℃〜室温の温度で、場合によって高温で行われ、カップリング反応は代表的には1〜24時間の期間で行われる。
【0100】
が4−置換テトラヒドロピリジンである場合、酸化白金(IV)、パラジウム/炭素または水酸化パラジウムなどの貴金属触媒/炭素を用いて、エタノール、酢酸エチル、酢酸またはそれらの混合物などの溶媒中において水素化を行うことでアミドカップリング生成物を還元して、相当するピペリジン誘導体(I)を形成することができる。
【0101】
が水素である構造式Iの化合物を製造することが望まれる場合、構造式IのN−BOC類縁体をその合成で用いることができ、例えば室温で塩化メチレンなどの溶媒中でのトリフルオロ酢酸または酢酸エチルなどの溶媒中での塩化水素を用いる等の酸性条件下で脱保護することができる。
【0102】
が水素ではない構造式Iの化合物を製造することが望まれる場合、下記の反応図式Mで記載の方法を用いて、一般式Iの化合物(R=H)をさらに修飾することができる。
【0103】
【化11】

【0104】
反応図式B〜Iには、反応図式Aに示したアミド結合カップリング反応で利用される一般式のカルボン酸の合成方法を示してある。反応図式J〜Lには、同じ段階で用いられる一般式の4−置換ピペリジンの別の合成方法を示してある。
【0105】
反応図式Bには、rが2であり、sが1であることで、得られる複素環が3−アリール−4−ピペリジンカルボン酸誘導体10である一般式の化合物の好ましい合成方法を示してある。10の合成は、などの市販のβ−ケトエステルを原料として行う。通常、N−ベンジル基のN−BOC基による保護基交換を最初に行う。そうして、式のβ−ケトエステルについて、水素雰囲気下、1:1エタノール−水などの溶媒系中、パラジウム/炭素触媒を用いる水素化分解による脱ベンジル化を行う。得られるピペリドンを、塩基および好適な溶媒の存在下に、無水BOCを用いてそれのtert−ブチルカーバメートとして保護する。例えばそれは、図示のようなクロロホルムおよび重炭酸ナトリウム水溶液の2相混合物中で行うことができる。次に、2段階で3−アリール置換基の組み込みを行う。最初にβ−ケトエステル基を、塩化メチレンなどの非プロトン性溶媒中、無水トリフルオロメタンスルホン酸およびN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基を用いて相当するビニルトリフレートに変換する。次に、得られるビニルトリフレートについて、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などのパラジウム(II)触媒を用いて、アリールボロン酸()とのパラジウム触媒交差カップリング反応を行う。この反応の好ましい条件は、2〜24時間の期間にわたる、例えば50〜100℃という高温でのトルエン−エタノール−炭酸ナトリウム水溶液という溶媒系の使用である。得られるアリール置換テトラヒドロピリジン誘導体は、各種公知の方法を用いて還元して、などのピペリジンとすることができ、選択される方法は生成物の立体化学的結果を決定する。例えば、エタノールなどの溶媒中でのパラジウム/炭素触媒によるの水素化によって、一般式のシス−3,4−ジ置換ピペリジンを得る。別法として、メタノール中マグネシウムなどの金属を用いる溶解金属還元によっての二重結合を還元し、式のシスおよびトランスの両方の3,4−ジ置換ピペリジンの混合物を製造する。得られるシスおよびトランスジアステレオマーの混合物はクロマトグラフィーによって分離することができるか、あるいはその混合物をメタノール中ナトリウムメトキシドなどの塩基で処理することでエピマー化して、の純粋なトランス異性体を得ることができる。最後に、シスまたはトランス3−アリール−4−ピペリジンカルボン酸エステルの加水分解によって、rが2でありsが1である一般式の酸に相当する一般式10の、シスまたはトランス3−アリール−4−ピペリジンカルボン酸を得る。一般式10のシスまたはトランスカルボン酸はラセミ体として製造され、いずれも有機合成で公知の方法によって分割して、エナンチオマー的に純粋な化合物を得ることができる。好ましい方法には、酸10およびキラルアミン塩基から誘導されるジアステレオマー塩の結晶化による分割またはキラル固定相液体クロマトグラフィーカラムの使用などがある。
【0106】
【化12】


【0107】
反応図式Cには、rが1でありsが2であることで、得られる複素環が4−アリール−3−ピペリジン−カルボン酸誘導体17である一般式2の化合物の好ましい合成方法を示してある。17の合成は、反応図式Bに示したものと同様であり、市販のβ−ケトエステル11または12を原料とすることができる。これらの原料のいずれかのN−BOC−保護ピペリジン13への変換は示したように行い、得られるβ−ケトエステルについて、前述の2段階アリール化プロトコールを行って15を得る。シスまたはトランス17を得るのに適切な条件を用いる15の二重結合の還元後、エステル加水分解を行って、rが1でありsが2である一般式の酸に相当する一般式17のシスまたはトランス4−アリール−3−ピペリジン−カルボン酸を得る。一般式17のシスまたはトランスカルボン酸はラセミ体として得られ、いずれも有機合成で公知の方法によって分割して、エナンチオマー的に純粋な化合物を得ることができる。好ましい方法には、酸17とキラルアミン塩基から誘導されるジアステレオマー塩の結晶化あるいはキラル固定相液体クロマトグラフィーカラムの使用による分割などがある。
【0108】
【化13】

【0109】
反応図式BおよびCに示した一般式10および17のN−BOC保護カルボン酸の合成は、上記の各種R置換基を有する構造式Iの標題化合物の製造に有用である。構造式Iのある種の標題化合物の合成において、例えばRがtert−ブチル基であることが望まれる場合に、合成の早期の段階でそのR置換基を組み込むことが好ましい。1−置換−3−ケトピペリジン−4−カルボン酸エステル(21)の合成を反応図式Dに示してある。tert−ブチル基などの望ましいR置換基を有する1級アミン18を、溶媒の不存在下に高温で4−ブロモ酪酸エチルと反応させて、N−置換4−アミノ酪酸エチル19を得る。次に、アミノエステル19について、トルエンなどの高沸点不活性溶媒中、粉末炭酸カリウムなどの塩基存在下に、ブロモ酢酸エチルを用いて2回目のアルキル化を行う。得られた一般式20のアミノジエステルを、分子内ディークマン反応を用いて環化させて、21などのピペリジンを得る。このディークマン反応は、室温から溶媒沸点の間の温度で、THFなどの非プロトン性溶媒中、カリウムtert−ブトキシドなどの強塩基を用いて行う。得られる1−置換−3−ケトピペリジン−4−カルボン酸エステル21は、BOC基が所望のR置換基で置き換わった反応図式Bに示した一般式の化合物に相当する。次に、反応図式Bに示した反応手順を用いて、一般式21の化合物を、R置換基をBOC基に置き換えた一般式の化合物に変換することができる。
【0110】
【化14】

【0111】
BOC基が置換基Rで置き換わった一般式17の化合物を合成することが望ましい場合、反応図式Cに示したものと同様の反応手順を、反応図式Eに示したように用いることができる。最初に、所望のR置換基を有するアミン18について、THFまたはエタノールなどの溶媒存在下にて、過剰のアクリル酸エチルとのマイケル付加を行う。次に、反応図式Cに示したものと同様の条件下での分子内ディークマン反応を用いて、得られたジエステル22を1−置換−4−ケトピペリジン−3−カルボン酸エステル23に変換する。置換ピペリジン23は、BOC基が所望のR置換基で置き換わった反応図式Cに示した一般式13の化合物に相当する。次に反応図式Cに示した方法を用いて、一般式23の化合物を、R置換基をBOC基に置き換えた一般式の化合物に変換することができる。
【0112】
【化15】

【0113】
反応図式Fには、得られる複素環が3−アリール−4−ピロリジンカルボン酸誘導体(29)となるようにrおよびsの値を選択した場合の、一般式の化合物の合成戦略を示してある。一般式29の化合物の好ましい合成方法では、一般式25のアゾメチンイリド前駆体と置換ケイ皮酸エステル24のアゾメチンイリド3+2付加環化反応を行う。24および25のアゾメチン付加環化反応によって3,4−ジ置換ピロリジン26が得られ、新たに形成されたピロリジン環上の置換基の立体化学的関係は、ケイ皮酸エステル24における二重結合の立体化学によって決まる。そこで、トランスエステル24から、図示のように式26のトランス3,4−ジ置換ピロリジンが得られる。相当するシスケイ皮酸エステルから、一般式26のシス3,4−ジ置換ピロリジンが得られる。一般式26のシスまたはトランス3−アリールピロリジン−4−カルボン酸エステルは、26およびキラルカルボン酸から誘導されるジアステレオマー塩の結晶化による分割などの方法を用いて、あるいはキラル固定相液体クロマトグラフィーカラムを用いることで直接分割して、エナンチオマー的に純粋な化合物を得ることができる。反応図式Fには、トランスケイ皮酸エステル24をトランス3,4−ジ置換ピロリジン26に変換し、それの分割によってエナンチオマー的に純粋なトランスピロリジンエステル27および28を得る場合を示してある。最後に、反応図式Fの下で示した方法に従って、一般式26のエステル(またはそれの純粋なエナンチオマー27および28)を加水分解して、一般式29の対応するアミノ酸塩酸塩とする。
【0114】
一般式29のアミノ酸は、両性イオン性である。従って場合によっては、水系の反応または後処理からこれらの化合物を効果的に分離および精製することが困難である。その場合、ジエチルエーテル中カリウムトリメチルシラノレートなどの試薬を用いて加水分解を行うことが好ましい。その条件下では、カルボン酸のカリウム塩が形成され、それがエーテル中で容易に単離される沈殿を与える。次に、酢酸エチルなどの好適な溶媒中過剰の塩化水素で処理することで、得られた塩を対応するアミノ酸塩酸塩に変換する。別法として、酸性加水分解条件下で、26などのエステルを直接アミノ酸塩酸塩29に変換することができる。エステル26の加水分解は、高温下で濃塩酸と長時間反応させることで行う。例えばその反応は、8M塩酸中にて終夜還流することで行うことができる。次に、反応混合物を冷却し、減圧下に溶媒留去してアミノ酸塩酸塩29を得る。一般式29のアミノ酸塩酸塩は、rとsの両方が1である一般式のアミノ酸塩酸塩に相当し、反応図式Aに示したアミド結合カップリング段階で直接用いて、構造式Iの本発明の化合物を製造することができる。
【0115】
【化16】


【0116】
エナンチオマー的に純粋な3−アリールピロリジン−4−カルボン酸誘導体の別の好ましい合成方法を、反応図式Gに示してある。この合成方法では、最初に一般式29の置換ケイ皮酸を、(S)−(−)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(30)などのキラル補助剤で誘導体化する。キラル補助剤30の式29のケイ皮酸によるアシル化は、最初に酸を活性化させて混成無水物を得ることで行う。代表的には、トリエチルアミンなどの塩基存在下に、THFなどの好適な非プロトン性溶媒中で、一般式29の酸をピバロイルクロライドなどの酸塩化物と反応させる。塩化リチウム、トリエチルアミンなどのアミン塩基の存在下に、THFなどの溶媒中、オキサゾリジノン30との反応によって、中間体であるシンナミル−ピバロイル無水物を、生成物31に変換し、その反応は1〜24時間の期間にわたり、−20℃〜室温の温度で行う。別法として、オキサゾリジノン30を、−78℃などの低温で、THF中n−ブチルリチウムなどの強塩基で脱プロトン化し、上記のように酸29およびピバロイルクロライドなどの酸塩化物から得られた混成無水物と反応させることができる。次に、これらのいずれかの方法によって製造される一般式31のシンナミルオキサゾリジノンを、反応図式Fに記載のものと同様にして、アゾメチンイリド前駆体25と反応させ、その反応の生成物は、図示した一般式33および34の置換ピロリジンである。生成物33および34は互いにジアステレオマーであることから、再結晶などの標準的な方法によって、あるいはシリカゲルなどの固体担体での液体クロマトグラフィーによって分離することができる。上記のように、一般式29のケイ皮酸のトランス異性体を反応図式Gの最初の段階で用いる場合、置換シンナミルオキサゾリジノン31のトランス異性体が製造される。そのようなトランスシンナミルオキサゾリジノンについて式25のアゾメチンイリド前駆体とのアゾメチンイリド環状付加を行う場合、生成物は、33および34に関連するジアステレオマートランス−ジ置換ピロリジンである。
【0117】
【化17】

【0118】
反応図式FおよびGに示したアゾメチンイリド付加環化反応は通常、市販のアゾメチンイリド前駆体N−(メトキシメチル)−N−(トリメチルシリルメチル)−ベンジルアミン(25、R=−CHPh)を用いて行う。構造式Iの標題化合物におけるR置換基を、ベンジル以外の基となるように選択した場合、その時点で置換ピロリジン化合物からベンジル基を脱離させ、それをN−BOC基などのより容易に脱離される保護基に置き換えることが好ましい。反応図式Hには、式32の汎用3,4−ジ置換ピロリジンを用いた場合のこの方法を示してある。一般式32の化合物からのN−ベンジル基の脱離の好ましい方法は、R置換基が何であるかによって決まる。その置換基が水素化条件によって影響されない場合、N−ベンジル基は、エタノールなどの溶媒中、水素ガスまたはギ酸などの水素供与体の存在下で、パラジウム/炭素触媒を用いる水素化分解によって脱離させることができる。場合によっては、置換基Rのうちの一つがハロゲンであるか、水素化条件下で反応性であると考えられる上記で定義の別の置換基であることが好ましいことがある。その場合、室温〜110℃の温度で、トルエンなどの不活性溶媒中、一般式32の化合物をクロルギ酸1−クロロエチルと反応させる(Olafson, R. A. et al. J. Org. Chem. 1984, 49, 2081)。次に、トルエンを除去し、残留物を15〜60分間にわたってメタノール中で加熱すると、生成物は一般式35の脱ベンジル化ピロリジンである。得られたピロリジン35を、塩基および好適な溶媒存在下でBOC無水物を用いて、それのtert−ブチルカーバメート(36)として保護する。例えばそれは、反応図式Hに示したように、クロロホルムと重炭酸ナトリウム水溶液の2相混合物中で行うことができる。
【0119】
次に、オキサゾリジノンキラル補助部を、反応図式Hの下に示したように一般式36のピロリジンから加水分解する。その加水分解反応は、水酸化リチウムおよび30%過酸化水素水からin situで発生するリチウムヒドロペルオキシドを用いて行う。その反応は代表的には、含水THFなどの溶媒系中で行い、その反応は1〜6時間にわたり、0℃〜室温の温度で行う。得られる一般式37のカルボン酸は、rおよびsの両方が1である一般式のカルボン酸に相当する。反応図式Aに示した方法を用いて、一般式37の化合物を構造式Iの本発明の化合物に変換することができる。
【0120】
【化18】

【0121】
反応図式Dの説明で前述したように、例えば、Rがtert−ブチル基であることが望まれる場合、合成の比較的初期の段階で、一般式37の置換ピロリジンにR置換基を組み込むことが好ましい場合があり得る。そのような場合、反応図式FおよびGに示した付加環化反応で、所望のR置換基を有するアゾメチンイリド前駆体(25)を用いることが可能である。反応図式Iには、一般式18のアミンを原料とする式25のアゾメチン前駆体の製造が示してある。高温および溶媒非存在下でのクロロメチルトリメチルシランと式18のアミンとの反応によって、一般式38のN−トリメチルシリルメチル−置換アミンが得られる。その後のメタノールおよび炭酸カリウムなどの塩基存在下でのホルムアルデヒド水溶液と38との反応によって、上記の付加環化反応で利用することが可能な汎用のイリド前駆体25が得られる。
【0122】
【化19】

【0123】
反応図式J〜Lには、反応図式Aで示したアミド結合カップリング段階で必要な一般式の4−置換ピペリジンの別の合成方法を示してある。反応図式Jに示したように、6〜24時間に期間にわたり、不活性雰囲気下で約80℃にて、メチルスルホキシドなどの極性の不活性有機溶媒中、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(DPPF)Cl)などの好適なパラジウム(II)触媒および酢酸カリウム存在下にて、エノールトリフレート39(Rohr, M.; Chayer, S.; Garrido, F.; Mann, A.; Taddei, M.; Wermuth, C-G. Heterocycles 1996, 43, 2131-2138に記載の方法に従って製造)をビス(ピナコラト)ジボロン試薬で処理することで、ビニルジオキサボロラン40を得た。ボロラン40はさらに、N,N−ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(Ph)などのパラジウム触媒およびリン酸カリウムの存在下にて、41などのアリールハライドと反応させて、カップリングさせた4−アリールテトラヒドロピリジン生成物42を得ることができる。tert−ブチルオキシカルボニル保護基を酢酸エチルなどの不活性有機溶媒中塩化水素などのプロトン性酸または塩化メチレン中トリフルオロ酢酸で処理する等の公知の方法によって脱離させて、アミン43を得ることができる。別法として、合成中間体42における二重結合を還元することが望ましい場合がある。これを、エタノール、酢酸エチル、酢酸またはそれらの混合物などの不活性有機溶媒中、水素大気圧または高圧の水素およびパラジウム(0)もしくは酸化白金(IV)などの貴金属触媒/炭素で処理することで行って、4−アリールピペリジン44を得ることができる。上記の方法によるtert−ブチルオキシカルボニル保護基の脱離によって、アミン45が得られる。両方のアミン中間体43および45を、反応図式Aでのカップリング相手化合物として用いることができる。
【0124】
【化20】

【0125】
反応図式Kに示したように、酸性水素を有する置換基を含むアリール基(例:46および48)を、公知のプロトコール下にアルキル化によって修飾することができる。例えば、テトラヒドロフランなどの不活性有機溶媒中で低温にて、リチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基でエステル46または48を処理することで、中間体のエノレートを形成することができ、それを第2段階で、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモエタンなどのアルキル化剤(B−LG)と反応させて、対応するアルキル化生成物を形成することができる。エステル基以外に、関連するアミドおよび安定なアニオンの形成を促進する官能基を、同様のプロトコール下でアルキル化することができる。
【0126】
【化21】

【0127】
47および49などのエステル中間体を対応するカルボン酸への変換によってさらに修飾し、反応図式Lに記載の方法に従ってアミンとカップリングさせてアミドを形成することができる。約1〜約24時間の期間にわたり、テトラヒドロフランなどの不活性有機溶媒中で室温にてのカリウムトリメチルシラノレートを用いる脱アルキル化によって、メチルエステル47および49のカルボン酸への変換を行って、酸性とした後に、相当するカルボン酸を得ることができる。ある場合には、当業者には公知の塩基触媒加水分解を用いて、この同じ変換を行うことができる。これらの酸をさらに、図式Aに記載のような各種のアミドカップリングプロトコール下に1級または2級アミンで処理することで反応させてアミドを形成して、中間体50および51を得ることができる。
【0128】
【化22】

【0129】
反応図式Mには、反応図式Aに記載の構造式I(R=BOC)の化合物の組立後におけるR置換基の一般的形成方法を示してある。最初に、酢酸エチル中の塩化水素による処理、または塩化メチレン中でのトリフルオロ酢酸による等の酸性条件下で、構造式IのN−BOC保護化合物を脱保護する。次に、得られた構造式I(R=H)の複素環化合物について、有機化学で公知のいくつかのアルキル化戦略のいずれかを行うことができる。例えば、化合物(I)(R=H)を好適なカルボニル含有反応相手(52)との還元的アミノ化反応で用いることができる。この還元的アミノ化は最初に、式I(R=H)のアミンと式52のアルデヒドもしくはケトンとの間でのイミン形成によって行う。次に、中間体イミンを水素化ホウ素シアノナトリウムまたは水素化ホウ素トリアセトキシナトリウムなどの炭素−窒素二重結合の還元を行うことができる還元剤で処理し、構造式Iのアルキル化生成物を製造する。別法として、構造式(I)(R=H)の複素環化合物を、DMFなどの極性非プロトン性溶媒中、53などのアルキル化剤を用いて直接アルキル化することができる。この反応では化合物53の置換基Zは、ハライド、メシレートまたはトリフレートなどの良好な脱離基であり、生成物はR置換基を有する構造式Iの化合物である。
【0130】
【化23】

【0131】
下記の実施例は本発明を説明するために提供されるものであり、いかなる様式でも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。中間体1−7は、図式Fに示した一般手順に従って図式Nに示した方法で製造した。
【0132】
【化24】

段階A:N−tert−ブチル−N−(トリメチルシリルメチル)アミン(N−1)の製造
tert−ブチルアミン(18.0mL、171mmol)および(クロロメチル)トリメチルシラン(7.00g、57.1mmol)の混合物を、肉厚ガラス管中にて200℃で終夜加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を1N NaOHに投入し、ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、揮発分を減圧下に留去した。残留液体の蒸留(大気圧;約135℃)によって、標題化合物を無色液体として得た(7.67g)。
【0133】
段階B:N−tert−ブチル−N−(メトキシメチル)−N−(トリメチルシリルメチル)アミン(N−2)の製造
ホルムアルデヒド水溶液(37重量%水溶液5.98mL、79.7mmol)を0℃(氷冷)で撹拌しながらそれに、圧平衡型滴下漏斗を用いてN−tert−ブチル−N−(トリメチルシリルメチル)アミン(N−1)(8.47g、53.1mmol)を30分間かけて滴下した。45分後、メタノール(6.45mL、159.3mmol)を加え、得られた溶液を炭酸カリウムで飽和させた。約5時間激しく撹拌した後、水相を除去した。有機相を炭酸カリウムで飽和させ、終夜撹拌した。反応混合物を水に投入し、ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、揮発分を減圧下に留去した。残留液体の蒸留(高真空;約70℃)によって、標題化合物を無色液体として得た(3.50g)。
【0134】
段階C:(3R,4S)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸メチルおよび(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸メチル(N−3)の製造
段階Bの生成物(3.07g、15.1mmol)および(2E)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)プロプ−2−エン酸メチル(2.99g、15.1mmol)の塩化メチレン(60mL)溶液に室温で、トリフルオロ酢酸(116μL、1.51mmol)を加えた。18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでの順相中圧液体クロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から9%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウム含有)/塩化メチレン)によって残留物を精製して、標題化合物を無色液体として得た(3.50g、78%)。キラルパック(CHIRALPAK)AD相での分取キラル高圧液体クロマトグラフィー(溶離液として5%イソプロパノール/ヘプタン)を用いて、ラセミ体の標題化合物をそれのエナンチオマー成分に分割して、溶出順に無色油状物としての(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸メチルエナンチオマー(1.37g)と次に無色油状物としての(3R,4S)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸メチルエナンチオマー(1.18g)を得た。
【0135】
段階D:(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸塩酸塩(1−7)の製造
段階Cの(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸メチルエナンチオマー(1.37g、4.61mmol)およびカリウムトリメチルシラノレート(0.68g、5.30mmol)のジエチルエーテル(23mL)中混合物を室温で終夜撹拌した。塩化水素の飽和酢酸エチル溶液を加え、揮発分を留去し、残留固体をそれ以上精製せずに、以下で詳述する製造例で用いた。
【0136】
【化25】



【0137】
(実施例1)
2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニルピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]−N−メチルアセトアミド(1−11)
段階A:(2−ブロモ−5−クロロフェニル)酢酸メチル(1−2)の製造
(2−ブロモ−5−クロロフェニル)酢酸(1−1)(15.0g、60.1mmol)、濃硫酸(36N溶液0.150mL)のメタノール(120mL)溶液を、約15時間加熱還流した。冷却して室温とした後、反応混合物を減圧下に濃縮し、残留物を塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層を分液し、水相を塩化メチレンで2回再抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、揮発分を留去した。残留無色液体(15.9g)を、それ以上精製せずに下記の段階Cで用いた。
【0138】
段階B:4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−4)の製造
4−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−3)(1.00g、3.02mmol;Rohr, M.; Chayer, S.; Garrido, F.; Mann, A.; Taddei, M.; Wermuth, C-G. Heterocycles 1996, 43, 2131-2138に記載の方法に従って製造)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.844g、3.32mmol)、酢酸カリウム(0.889g、9.06mmol)および[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(塩化メチレンとの1:1錯体0.123g、0.151mmol)のメチルスルホキシド(20mL)懸濁液を激しく撹拌しながら、減圧/窒素導入のサイクルを3回行って脱気し、80℃で約15時間加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を多量の酢酸エチルで溶離を行うセライト(登録商標)濾過した。濾液を水/ブライン(1:1)に投入し、有機相を分液した。水相を酢酸エチルで3回再抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から25%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、1−4を白色固体として得た(0.660g)。
【0139】
段階C:4−[4−クロロ−2−(2−メトキシ−2−オキソエチル)フェニル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−5)の製造
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−4)(1.40g、4.53mmol)、(2−ブロモ−5−クロロフェニル)酢酸メチル(1−2)(1.31g、4.98mmol)、リン酸三カリウム(2.85g、13.6mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.262g、0.227mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(22mL)中混合物を激しく撹拌しながら、減圧/窒素導入サイクルを3回行うことで脱気し、100℃で約18時間加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から25%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、1−5(0.967g)を無色油状物として得た。
【0140】
段階D:[5−クロロ−2−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)フェニル]酢酸メチル塩酸塩(1−6)の製造
4−[4−クロロ−2−(2−メトキシ−2−オキソエチル)フェニル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−5)(0.950g、2.60mmol)の塩化メチレン(6mL)溶液に0℃で、塩化水素の飽和酢酸エチル溶液(6mL)を加えた。1時間後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、1−6(0.690g)を綿毛状淡黄色固体として得た(m/z(ES)266(MH))。
【0141】
段階E:[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸メチル(1−8)の製造
(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸(1−7)(0.831g、2.60mmol)、[5−クロロ−2−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)フェニル]酢酸メチル塩酸塩(1−6)(0.690g、2.60mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(1.19g、3.12mmol)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(0.425g、3.12mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5.2mL)懸濁液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.36mL、7.80mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から15%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウム含有)/塩化メチレン)によって粗残留物を精製することで、1−8を淡黄色油状物として得た(m/z(ES)531(MH))。
【0142】
段階F:[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸メチル(1−9)の製造
[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸メチル(1−8)(2.60mmol)および酸化白金(IV)(0.300g)のエタノール/氷酢酸(1:1、20mL)中混合物を、約15時間にわたって大気圧で水素化した。得られた混合物を、多量のエタノールで溶離を行うセライト(登録商標)の短いカラムで濾過した。濾液を溶媒留去し、残留物を塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層を分液し、水相を塩化メチレンで2回再抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から15%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウム含有)/塩化メチレン)によって粗残留物を精製して、1−9(1.25g)を無色泡状物として得た(m/z(ES)533(MH))。
【0143】
段階G:[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸(1−10)の製造
[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸メチル(1−9)(1.25g、2.35mmol)のテトラヒドロフラン(24mL)溶液を室温で撹拌しながら、それにカリウムトリメチルシラノレート(0.900g、7.05mmol)を加えた。約15時間後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を塩化水素の飽和酢酸エチル溶液で処理した。約5分後、反応混合物を減圧下に濃縮し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、1−10を非晶質白色固体として得た(m/z(ES)519(MH))。
【0144】
段階H:2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]−N−メチルアセトアミド(1−11)の製造
[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]酢酸(1−10)(40.0mg)、メチルアミン・HCl(42.9mg、0.635mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(48.3mg、0.127mmol)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(17.3mg、0.127mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.65mL)懸濁液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.166mL、0.953mmol)を加えた。約15時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。YMCパックプロC18相での分取逆相高圧液体クロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から100%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって残留物を精製して、1−11を淡黄白色固体として得た(m/z(ES)532(MH))。
【0145】
実施例1に記載のものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造した。
【0146】
【表1】





【0147】
【化26】


【0148】
(実施例62)
4−[2−(2−アゼチジン−1−イル−1−メチル−2−オキソエチル)−4−クロロフェニル]−1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン(2−7)
段階A:2−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)プロパン酸メチル(2−1)の製造
ジイソプロピルアミン(0.61mL、4.36mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を−78℃で撹拌しながら、それにn−ブチルリチウム溶液(2.5Mヘキサン溶液1.67mL、4.17mmol)を注射器を用いて滴下した。約10分後、反応混合物を昇温させて0℃とし、さらに10分間熟成させた。再度冷却して−78℃とした後、(2−ブロモ−5−クロロフェニル)酢酸メチル(1−2)(1.00g、3.79mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を注射器を用いて滴下し、得られた黄色混合物を−78℃で約30分間撹拌した。ヨウ化メチル(0.35mL、5.69mmol)を加え、1時間後、反応混合物を昇温させて室温とし、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止した。得られた混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から20%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製して、2−1を無色油状物として得た(1.00g)。
【0149】
段階B:4−[4−クロロ−2−(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)フェニル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(2−2)の製造
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,2,3−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.01g、3.27mmol)、2−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)プロパン酸メチル(2−1)(1.00g、3.60mmol)、リン酸三カリウム(2.08g、9.81mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.189g、0.164mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(13mL)中混合物を激しく撹拌しながら、減圧/窒素導入のサイクルを3回行うことで脱気し、100℃で18時間加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から25%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、2−2(0.73g)を無色油状物として得た。
【0150】
段階C:2−[5−クロロ−2−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)フェニル]プロパン酸メチル(2−3)の製造
4−[4−クロロ−2−(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)フェニル]−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(0.730g、1.92mmol)の塩化メチレン(6mL)溶液に0℃で、塩化水素の飽和酢酸エチル溶液(6mL)を加えた。1時間後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、2−3(0.605g)を得た(m/z(ES)280(MH))。
【0151】
段階D:2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸メチル(2−4)の製造
(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸(1−7)(0.614g、1.92mmol)、2−[5−クロロ−2−(1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)フェニル]プロパン酸メチル(2−3)(0.605g、1.92mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(0.876g、2.30mmol)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(0.314g、2.30mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(3.8mL)懸濁液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.00mL、5.76mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から15%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウム含有)/塩化メチレン)によって粗残留物を精製することで、2−4を淡黄色油状物として得た(m/z(ES)545(MH))。
【0152】
段階E:2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸メチル(2−5)の製造
2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸メチル(2−4)(1.92mmol)および酸化白金(IV)(0.350g)のエタノール/氷酢酸(1:1、20mL)中混合物を、約15時間にわたって大気圧で水素化した。得られた混合物を、多量のエタノールで溶離を行うセライト(登録商標)の短いカラムで濾過した。濾液を溶媒留去し、残留物を塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層を分液し、水相を塩化メチレンで2回再抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から15%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウム含有)/塩化メチレン)によって粗残留物を精製して、2−5(0.95g)を無色泡状物として得た(m/z(ES)547(MH))。
【0153】
段階F:2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸(2−6)の製造
2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸メチル(2−5)(1.10g、2.01mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を室温で撹拌しながら、それにカリウムトリメチルシラノレート(0.645g、5.03mmol)を加えた。約15時間後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を塩化水素の飽和酢酸エチル溶液で処理した。約5分後、反応混合物を減圧下に濃縮し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、2−6を非晶質白色固体として得た(m/z(ES)533(MH))。
【0154】
段階G:4−[2−(2−アゼチジン−1−イル−1−メチル−2−オキソエチル)−4−クロロフェニル]−1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン(2−7)の製造
2−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]プロパン酸(2−6)(50.0mg)、アゼチジン・HCl(72.6mg、0.776mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(59.0mg、0.155mmol)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(21.1mg、0.155mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.8mL)懸濁液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.162mL、0.931mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。YMCパックプロC18相での分取逆相高圧液体クロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から100%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって粗残留物を精製して、2−7をトリフルオロ酢酸塩として得た(m/z(ES)572(MH))。
【0155】
実施例62に記載のものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造した。
【0156】
【表2】




【0157】
【化27】


【0158】
(実施例104)
N−{(1S)−1−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]エチル}アセトアミド(3−10)
段階A:2−ブロモ−5−クロロ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド(3−2)の製造
2−ブロモ−5−クロロ安息香酸(3−1)(0.500g、2.12mmol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン・HCl(0.310g、3.18mmol)およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(1.21g、3.18mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(8.5mL)溶液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.10mL、6.36mmol)を加えた。3時間後、反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から25%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、3−2(0.56g)を無色固体として得た。
【0159】
段階B:1−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)エタノン(3−3)の製造
2−ブロモ−5−クロロ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド(3−1)(0.554g、1.99mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を約0℃で撹拌しながら、それにメチルマグネシウムブロマイド(1.4Mテトラヒドロフラン/トルエン溶液4.26mL、5.97mmol)を滴下した。1時間後、1N塩酸(5mL)を加え、得られた二相混合物を約10分間激しく撹拌した。反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から10%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製して、3−3(0.44g)を無色油状物として得た。
【0160】
段階C:(1R)−1−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)エタノール(3−4)の製造
(S)−(−)−α,α−ジフェニル−2−ピロリジンメタノール(3.24g、12.8mol)のテトラヒドロフラン(350mL)溶液を室温で撹拌しながら、それにホウ酸トリメチル(1.74mL、15.4mmol)を加えた。1.25時間後、ボラン−メチルスルフィド錯体(2Mテトラヒドロフラン溶液70.4mL、0.141mol)をゆっくり加えたところ、緩やかな発泡が認められた。得られた溶液を冷却して約0℃とし、1−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)エタノン(3−3)(30.0g、0.128mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)溶液を均等に1時間かけて加えた。添加後、得られた混合物を昇温させて室温とし、終夜熟成させた。反応混合物を減圧下に濃縮して最初の容量の約1/4とし、1N塩酸に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液として9%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、3−4を無色固体として得た(25.8g;98:2S/Rエナンチオマー比)。
【0161】
段階D:4−{4−クロロ−2−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]フェニル}−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(3−5)の製造
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,2,3−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1−4)(34.0g、0.110mol)、(1R)−1−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)エタノール(3−4)(25.8g、0.110mmol)、リン酸三カリウム(70.0g、0.330mol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.54g、2.20mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(440mL)中混合物を激しく撹拌しながら、減圧/窒素導入サイクルを3回行うことで脱気し、100℃で約18時間加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を氷/水(約1:1)に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液として25%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、3−5(27.7g)を淡黄色泡状物として得た。
【0162】
段階E:4−{4−クロロ−2−[(1S)−1−(アジド)エチル]フェニル}−3,6−ジヒドロピリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−6)の製造
4−{4−クロロ−2−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]フェニル}−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−カルボン酸tert−ブチル(3−5)(26.7g、78.9mmol)、Zn(N・2Py(Viaud, M-C; Rolin, P., Synthesis, 1990: 130-131に記載の方法に従って製造)(48.5g、0.158mol)、トリフェニルホスフィン(82.7g、0.315mol)およびイミダゾール(21.5g、0.315mol)の塩化メチレン中混合物を約0℃で撹拌しながら、それにアゾジカルボン酸ジエチルの溶液(49.6mL、0.315mol)を滴下した。滴下後、得られた混合物を昇温させて室温とし、3日間激しく撹拌した。適切な容量の塩化メチレンで溶離を行うシリカゲルの短いカラムで反応混合物を濾過して、過剰の塩および極性副生成物を除去した。濾液を減圧下に濃縮し、粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液として12.5%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、3−6(23.9g)を粘稠淡黄色油状物として得た。
【0163】
段階F:4−{2−[(1S)−1−アミノエチル]−4−クロロフェニル}ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−7)の製造
4−{4−クロロ−2−[(1S)−1−(アジド)エチル]フェニル}−3,6−ジヒドロピリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−6)(22.9g、63.1mmol)および酸化白金(IV)(1.08g、4.73mmol)のエタノール/氷酢酸(1:1、200mL)中混合物を、大気圧下で約15時間水素化した。得られた混合物を減圧/水素導入のサイクルを3回行うことで脱気して発生した窒素を除去し、水素化をさらに24時間続けた。反応混合物を多量のエタノールで溶離を行うセライト(登録商標)の短いカラムで濾過した。濾液を溶媒留去し、残留物を塩化メチレンと1N水酸化ナトリウムとの間で分配した。有機層を分液し、水相を塩化メチレンで2回再抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮して粗(純度約70%)3−7を無色泡状物として得た。
【0164】
段階G:4−{2−[(1S)−1−(アセチルアミノ)エチル]−4−クロロフェニル}ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−8)の製造
粗4−{2−[(1S)−1−アミノエチル]−4−クロロフェニル}ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−7)(純度約70%品5.42g、11.2mmol)およびトリエチルアミン(6.69mL、48.0mmol)の塩化メチレン溶液に約0℃で、塩化アセチル(1.71mL、24.0mmol)を加えた。2時間後、反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として35%から50%酢酸エチル/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、4−{2−[(1S)−1−(アセチルアミノ)エチル]−4−クロロフェニル}ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−8)を淡黄色泡状物として得た(4.1g)。所望に応じて、キラルパックAD相での分取キラル高圧液体クロマトグラフィー(溶離液として7.5%エタノール/ヘプタン)を用いて、微量の少量成分R−エナンチオマーを除去して、溶出順に無色固体としてのR−エナンチオマーと、次に無色固体としてのS−エナンチオマーを得ることができると考えられる。
【0165】
段階H:N−[(1S)−1−(5−クロロ−2−ピペリジン−4−イルフェニル)エチル]アセトアミド塩酸塩(3−9)の製造
4−{2−[(1S)−1−(アセチルアミノ)エチル]−4−クロロフェニル}ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(3−8)(3.66g、9.61mmol)の塩化メチレン(15mL)溶液を0℃で撹拌しながら、それに塩化水素の飽和酢酸エチル溶液(15mL)を加えた。3時間後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、3−9(3.05g)を無色固体として得た。
【0166】
段階I:N−{(1S)−1−[2−(1−{[(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}ピペリジン−4−イル)−5−クロロフェニル]エチル}アセトアミド(3−10)の製造
(3S,4R)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸塩酸塩(3−9)(3.07g、9.61mmol)、N−[(1S)−1−(5−クロロ−2−ピペリジン−4−イルフェニル)エチル]アセトアミド塩酸塩(3.05g、9.61mmol)およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(4.38g、11.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)懸濁液を室温で撹拌しながら、それにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.86mL、33.6mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を水に投入し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から9%メタノール(10体積%の水酸化アンモニウムを含有)/塩化メチレン)によって残留物を精製して、3−10(5.2g)を泡状物として得た(m/z(ES)546(MH))。
【0167】
高分解能質量スペクトラム:C3039ClFの計算値:(MH):m/z546.2699;実測値:m/z546.2693。
【0168】
3−10の塩酸塩を以下のように製造した。3−10(5.20g、9.52mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液を0℃で撹拌しながら、それに塩化水素の飽和酢酸エチル溶液(20mL)を加えた。10分後、揮発分を減圧下に留去し、粗残留物を脱水ジエチルエーテルで2回磨砕して、3−10HCl(5.55g)を無色固体として得た。
【0169】
上記および実施例についてのものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造した。
【0170】
【表3】







【0171】
(実施例181〜184)
適切に置換された4−フェニル−ピペリジン中間体とのペプチドカップリング反応において、相当する1−(t−ブチル)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸中間体を用いた以外、実施例1について前述のものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造した。
【0172】
【表4】

【0173】
(実施例185)
【0174】
【化28】

この実施例化合物は、ペプチドカップリング反応において(3R,4S)−1−tert−ブチル−4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピロリジン−3−カルボン酸を用いた以外、実施例1について前述のものと同様の手順に従って製造した。質量スペクトラム:m/z518(M+H)。
【0175】
(実施例186)
実施例1について前述のものと同様の手順に従って、下記の化合物も製造した。
【0176】
【化29】

【0177】
生物学的アッセイ
A.結合アッセイ
膜結合アッセイを用いて、マウスL−またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)−細胞で発現されるクローニングヒトMCRへの125I−NDP−α−MSH結合の競争的阻害薬を確認した。
【0178】
メラノコルチン受容体を発現する細胞系を、L−グルコース4.5g、25mM Hepesを含み、ピルビン酸ナトリウムを含まないダルベッコの調整イーグル培地(DMEM)1リットル(Gibco/BRI);10%加熱失活ウシ胎仔血清(Sigma)100mL;10000単位/mLのペニシリンおよび10000μg/mLのストレプトマイシン(Gibco/BRI)10mL;200mML−グルタミン(Gibco/BRI)10mL;1mg/mLゲネチシン(Geneticin)(G418)(Gibco/BRI)という組成の選択培地の入ったT−180フラスコで成長させた。所望の細胞密度および細胞数が得られるまで、COおよび湿度の管理を行いながら、細胞を37℃で成長させた。
【0179】
培地を注ぎ出し、酵素を含まない解離培地を10mL/単層(Specialty Media Inc.)で加えた。細胞を37℃で、10分間またはフラスコを手に当てた場合に細胞が剥離するまでインキュベートした。
【0180】
細胞を200mL遠心管に回収し、1000rpm、4℃で10分間遠心した。上清を廃棄し、細胞を10mM Tris pH7.2〜7.4;4μg/mLロイペプチン(Sigma);10μMホスホラミドン(Boehringer Mannheim);40μg/mLバシトラシン(Sigma);5μg/mLアプロチニン(Sigma);10mMペファブロック(Pefabloc)(Boehringer Mannheim)という組成を有する5mL/単層膜調製緩衝液に再懸濁させた。細胞を、モーター式ダウンス(dounce)(Talboy setting 40)で、10行程を用いて均質化し、得られたホモジネートを4℃にて6000rpmで15分間遠心した。
【0181】
ペレットを0.2mL/単層膜調製緩衝液に再懸濁させ、小分けサンプルを試験管に入れ(500〜1000μL/管)、液体窒素で急速冷凍し、−80℃で保存した。
【0182】
被験化合物または未標識NDP−α−MSHを、膜結合緩衝液100μLに最終濃度1μMまで加えた。膜結合緩衝液は、50mM Tris pH7.2;2mMCaCl;1mM MgCl;5mM KCl;0.2%BSA;4μg/mLロイペプチン(SIGMA);10μMホスホラミドン(Boehringer Mannheim);40μg/mLバシトラシン(SIGMA);5μg/mLアプロチニン(SIGMA);10mMペファブロック(Pefabloc)(Boehringer Mannheim)という組成を有するものであった。膜蛋白10〜40μgを含む膜結合緩衝液100μLを加え、次に100μM 125I−NDP−α−MSHを最終濃度100pMまで加えた。得られた混合物を短時間渦撹拌し、振盪しながら90〜120分間室温でインキュベートした。
【0183】
混合物を0.1%ポリエチレンイミン(Sigma)を含むパッカードユニフィルター(Packard Unifilter)96ウェルGF/Cフィルターを用いるパッカード・マイクロプレート196フィルター装置で濾過した。フィルターを、50mM Tris−HCl pH7.2および20mM NaClの組成を有する室温のフィルター洗浄液で洗浄した(ウェル当たり10mLの総量で5回)。フィルターを乾燥し、底を封止し、パッカード・マイクロシンチ(Microscint)−20 50μLを各ウェルに加えた。頂部を封止し、パッカード・トップカウント(Topcount)マイクロプレートシンチレーションカウンターで放射能を定量した。
【0184】
B.機能性アッセイ
機能細胞に基づくアッセイを開発して、メラノコルチン受容体作動薬を拮抗薬から区別した。
【0185】
ヒトメラノコルチン受容体を発現する細胞(例:CHO−またはL−細胞あるいは他の真核細胞)(例えば、Yang-YK; Ollmann-MM; Wilson-BD; Dickinson-C; Yamada-T; Barsh-GS; Gantz-I; Mol-Endocrinol. 1997 Mar; 11 (3): 274-80参照)を、CaおよびMgを含まないリン酸緩衝生理食塩水(14190−136、Life Technologies, Gaithersburg, MD)で洗浄することで組織培養フラスコから解離させ、酵素を含まない解離緩衝液(S−014−B、Specialty Media, Lavellette, NJ)とともに、37℃で5分間インキュベートして分離した。細胞を遠心によって回収し、10mM HEPES pH7.5、5mM MgCl、1mMグルタミンおよび1mg/mLウシ血清アルブミンを加えたアールの平衡塩類溶液(14015−069、Life Technologies, Gaithersburg, MD)に再懸濁させた。細胞をカウントし、希釈して1〜5×10/mLとした。ホスホジエステラーゼ阻害薬である3−イソブチル−1−メチルキサンチンを、0.6mMまで細胞に加えた。
【0186】
被験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し(10−5〜10−10M)、化合物溶液0.1容量部を細胞懸濁液0.9容量部に加えた。最終DMSO濃度は1%であった。室温で45分間インキュベーション後、100℃で5分間インキュベーションすることで細胞を溶解させて、蓄積cAMPを放出させた。
【0187】
細胞溶解物の小分けサンプルにおいて、アマシャム(Amersham; Arlington Heights, IL)cAMP検出アッセイ(RPA556)を用いてcAMPを測定した。未知化合物から得られたcAMP産生の量を、100%作動薬と定義されるα−MSHに応答して産生されたcAMPの量と比較した。EC50は、薬剤自体の最大刺激レベルと比較して、最大値の1/2刺激を生じる化合物濃度と定義される。
【0188】
拮抗薬アッセイ
拮抗薬活性は、化合物がα−MSHに応答してcAMP産生を遮断する能力と定義した。上記の方法に従って、被験化合物の溶液および受容体含有細胞の懸濁液を調製し、混合した。混合物を15分間インキュベートし、EC50用量(約10nM α−MSH)を細胞に加えた。アッセイを45分間で終了させ、cAMPを上記の方法に従って定量した。被験化合物非存在下で産生された量と被験化合物の存在下で産生されたcAMPの量を比較することで、阻害パーセントを求めた。
【0189】
C.in vivo飼料摂取モデル
1)終夜飼料摂取
スプレーグ・ドーリーラットに、50%プロピレングリコール/人工脳脊髄液400nL中の被験化合物を脳室内注射してから、1時間後に暗周期を開始する(12時間)。各ラットの飼料をコンピュータでモニタリングする天秤に乗せるコンピュータ化システムを用いて測定する。化合物投与後16時間にわたる累積飼料摂取を測定する。
【0190】
2)食餌誘発肥満マウスでの飼料摂取
4週齢から6.5ヶ月間にわたって高脂肪飼料(60%脂肪カロリー)に維持した雄C57/B16Jマウスに、被験化合物を腹腔内投与する。飼料摂取および体重を8日間にわたって測定する。レプチン、インシュリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸、コレステロールおよび血清グルコースレベルなどの肥満に関係する生化学パラメータを測定する。
【0191】
D.ラットex copulaアッセイ
性的に成熟した雄無菌スプレーグ・ドーリー(CD)ラット(60日齢より上)を用い、提靭帯を手術で切除して、評価の際に陰茎が陰茎包皮に引き込まれないようにする。動物には飼料および飲料水を自由に摂取させ、通常の明/暗周期に維持する。試験は明周期時に行う。
【0192】
1)ex copula反射試験のための仰臥拘束への馴致
この馴致には約4日を要する。第1日に、動物を暗くした拘束装置に入れ、15〜30分間放置する。第2日には動物を、仰臥位で拘束装置に15〜30分間拘束する。第3日には動物を、陰茎包皮を引き込んだ状態での仰臥位で拘束装置に15〜30分間拘束する。第4日には動物を、陰茎応答が認められるまで陰茎包皮を引き込んだ状態で、仰臥位で拘束装置に拘束する。一部の動物では、手順に完全に馴致されるまで、さらに馴致期間が必要な場合がある。応答のない動物をそれ以降の評価から除外する。取り扱いまたは評価後、動物に処置を行って、陽性強化を確認する。
【0193】
2)ex copula反射試験
ラットを、通常の頭部および足の毛づくろいができるだけの大きさの円筒内に前胴部を入れた仰臥位で軽く拘束する。400〜500gのラットの場合、円筒の直径は約8cmである。下側胴部および後足を、非接着性材料(ベトラップ(vetrap))で拘束する。陰茎亀頭が通り抜ける穴を有する別のベトラップを動物上で固定して、包皮を引き込み位置に維持する。陰茎応答を観察し、代表的にはex copula性器反射試験と称する。代表的には、包皮引き込み後数分以内に、一連の陰茎勃起が自然に生じる。通常の反射性勃起応答の種類には、伸長、充血、カップ形状およびピクつきなどがある。伸長は、陰茎本体の膨張と分類される。充血は、陰茎包皮の膨張である。カップ形状は、陰茎包皮の遠位縁部が一瞬開いてカップを形成する強い勃起と定義される。ピクつきとは、陰茎本体の背屈である。
【0194】
基底線および/または媒体評価を行って、動物がどの程度応答するかおよび動物が応答するか否かを確認する。一部の動物では最初の応答があるまで長時間を要するが、他の動物では全く応答がない。この基底線評価の際、初回応答までの潜伏期間、応答の回数および種類を記録する。試験時間枠は初回応答から15分間である。
【0195】
評価間で最低1日間経過した後、上記の同じ動物に20mg/kgで被験化合物を投与し、陰茎反射を評価する。評価はいずれもビデオテープに記録し、後に評点する。データを収集し、個々の動物について、薬剤投与評価に対して比較した基底線および/または媒体評価に対して対応のある両側t検定を用いて解析を行う。最低4匹の動物の群を用いて、変動性を小さくする。
【0196】
陽性基準対照を各試験に含めて、試験の妥当性を確保する。動物には、実施する試験の性質に応じて多くの投与経路によって投与を行うことができる。投与経路には、静脈投与(IV)、腹腔内投与(IP)、皮下投与(SC)および脳室内投与(ICV)などがある。
【0197】
E.女性性的機能不全のモデル
女性性的応答性に関連する齧歯類アッセイには、ロードシスの行動モデルおよび交尾活動の直接観察などがある。雄ラットおよび雌ラットの両方でのオルガスムを測定するための、麻酔背骨切開ラットでの泌尿性器反射モデルもある。上記および他の確立された女性性的機能不全の動物モデルが各種文献に記載されている(McKenna KE et al, A Model For The Study of Sexual Function In Anesthetized Male And Female Rats, Am. J. Physiol. (Regulatory Integrative Comp. Physiol 30) : R1276-R1285, 1991 ; McKenna KE et al, Modulation By Peripheral Serotonin of The Threshold For Sexual Reflexes In Female Rats, Pharm. Bioch. Behav., 40 : 151-156, 1991 ; and Takahashi LK et al, Dual Estradiol Action In The Diencephalon And The Regulation Of Sociosexual Behavior In Female Golden Hamsters, Brain Res., 359 : 194-207, 1985)。
【0198】
本発明の代表的化合物について試験を行ったところ、メラノコルチン−4受容体に結合することが認められた。これらの化合物は概して、2μM未満のIC50値を有することが認められた。本発明の代表的化合物について機能アッセイも行ったところ、EC50値1μM未満でメラノコルチン−4受容体を活性化することが認められた。
【0199】
医薬組成物の例
本発明の組成物の経口組成物の具体的な実施形態として、実施例168の化合物5mgを、十分に微粉砕した乳糖と調合して総量580〜590mgを得て、O型硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0200】
本発明の化合物の経口組成物の別の具体的な実施形態として、実施例104の化合物2.5mgを十分に微粉砕した乳糖と調合して総量580〜590mgを得て、O型硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0201】
本発明の化合物の経口組成物の別の具体的な実施形態として、実施例88の化合物10mgを十分に微粉砕した乳糖と調合して総量580〜590mgを得て、O型硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0202】
以上、本発明のある種の好ましい実施形態を参照しながら、本発明について記載および説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて各種の変更、修正および置き換えを行うことが可能であることは明らかであろう。例えば、吸収によって生じる骨障害の重度あるいは上記で示した本発明の化合物についての他の適応症に関して治療を受ける哺乳動物の応答性における変動の結果として、上記本明細書に記載の好ましい用量以外の有効な用量が適用可能となる場合がある。同様に、認められる具体的な薬理応答は、選択される特定の活性化合物に応じて、あるいは医薬担体が存在するか否かに応じて、さらには使用される製剤の種類および投与形態に応じて変動し得るものであり、そのような結果において予想される変動または差は、本発明の目的および実務により想到されるものである。従って本発明は、添付の特許請求の範囲のみに限定されるものであり、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iの化合物または該化合物の薬学的に許容される塩。
【化1】

[式中、
rは1または2であり;
sは0、1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2であり;
は、
水素、
アミジノ、
1−4アルキルイミノイル、
1−10アルキル、
(CH−C3−7シクロアルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチルおよび
(CH−ヘテロアリールからなる群から選択され;ヘテロアリールは、
(1)ピリジニル、
(2)フリル、
(3)チエニル、
(4)ピロリル、
(5)オキサゾリル、
(6)チアゾリル、
(7)イミダゾリル、
(8)ピラゾリル、
(9)イソオキサゾリル、
(10)イソチアゾリル、
(11)ピリミジニル、
(12)ピラジニル、
(13)ピリダジニル、
(14)キノリル、
(15)イソキノリル、
(16)ベンズイミダゾリル、
(17)ベンゾフリル、
(18)ベンゾチエニル、
(19)インドリル、
(20)ベンゾチアゾリルおよび
(21)ベンゾオキサゾリルからなる群から選択され;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
は、
フェニル、
ナフチルおよび
ヘテロアリール
からなる群から選択され;ヘテロアリールは、
(1)ピリジニル、
(2)フリル、
(3)チエニル、
(4)ピロリル、
(5)オキサゾリル、
(6)チアゾリル、
(7)イミダゾリル、
(8)ピラゾリル、
(9)イソオキサゾリル、
(10)イソチアゾリル、
(11)ピリミジニル、
(12)ピラジニル、
(13)ピリダジニル、
(14)キノリル、
(15)イソキノリル、
(16)ベンズイミダゾリル、
(17)ベンゾフリル、
(18)ベンゾチエニル、
(19)インドリル、
(20)ベンゾチアゾリルおよび
(21)ベンゾオキサゾリルからなる群から選択され;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
NO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)−ヘテロアリール
(CHC(O)NRN(R
(CHC(O)NRNRC(O)R
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)炭素原子は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキルおよび
(CH3−7ビシクロアルキル
からなる群から選択され;
アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリールおよび
(CH3−7シクロアルキルからなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い5〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
Xは、
1−8アルキル、
(CH3−8シクロアルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CHヘテロシクリル、
(CHC≡N、
(CHCON(R)、
(CHCO
(CHCOR
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)N(R
(CHNRSO
(CHS(O)
(CHSON(R)(R)、
(CHOR
(CHOC(O)R
(CHOC(O)OR
(CHOC(O)N(R
(CHN(R)(R)および
(CHNRSON(R)(R)からなる群から選択され;ヘテロアリールは上記で定義の通りであり;フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクリルは未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;Xにおけるメチレン(CH)は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されている。]
ただし、下記のものからなる群から選択される化合物または該化合物の薬学的に許容される塩は、除く。
【化2】




【請求項2】
が、水素、C1−6アルキル、(CH0−13−6シクロアルキルおよび(CH0−1−フェニルからなる群から選択され;フェニルが、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルが、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良い請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルまたはチエニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルである請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH3−8シクロアルキルおよび
(CH−ヘテロシクリル
からなる群から選択され;
フェニル、ナフチルおよびヘテロアリールが、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;シクロアルキルおよびヘテロシクリルが、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;Xにおけるメチレン(CH)基が、未置換であるかハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、
(CH0−1−フェニル、
(CH0−1−ヘテロアリールおよび
(CH0−1−ヘテロシクリル
からなる群から選択され;
フェニルおよびヘテロアリールが、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;ヘテロシクリルが、Rおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良く;CHが未置換であるかハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で置換されている請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Xが、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
rが1または2であり、sが1である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
指定のトランス相対立体化学配置の構造式IIaもしくはIIbの請求項1に記載の化合物または該化合物の薬学的に許容される塩。
【化3】

[式中、
rは1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2であり;
は、水素、アミジノ、C1−4アルキルイミノイル、C1−6アルキル、C5−6シクロアルキル、(CH0−1フェニルまたは(CH0−1ヘテロアリールであり;フェニルおよびヘテロアリールは、未置換であるかRから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;アルキルおよびシクロアルキルは、未置換であるかRおよびオキソから独立に選択される1〜3個の基によって置換されており;
は、Rから独立に選択される1〜3個の基で置換されていても良いフェニルまたはチエニルであり;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
(CHNRC(O)−ヘテロアリール
(CHC(O)NRN(R
(CHC(O)NRNRC(O)R
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)炭素原子は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
フェニル、
ヘテロアリール、
(CH0−1ヘテロシクリルおよび
3−6シクロアルキル
からなる群から選択され;アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;
あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4員〜8員の単環式または二環式環系を形成しており;
Xは、Rから独立に選択される1〜3個の基でそれぞれ置換されていても良いフェニルまたはヘテロアリールである。]
【請求項10】
指定のトランス相対立体化学配置の構造式IIIaもしくはIIIbの請求項1に記載の化合物または該化合物の薬学的に許容される塩。
【化4】

[式中、
rは1または2であり;
は、水素、C1−4アルキルまたは(CH0−1フェニルであり;
各Rは独立に、
1−6アルキル、
(CH0−1−ヘテロアリール、
(CH0−1−ヘテロシクリル、
ハロゲン、
OR
(CH0−1N(R
(CH0−1C≡N、
(CH0−1CO
(CH0−1NRSO
(CH0−1SON(R
(CH0−1S(O)
(CH0−1NRC(O)N(R
(CH0−1C(O)N(R
(CH0−1NRC(O)R
(CH0−1NRCO
(CH0−1NRC(O)−ヘテロアリール
(CH0−1C(O)NRN(R
(CH0−1C(O)NRNRC(O)R
O(CH0−1C(O)N(R
CF
CHCF
OCFおよび
OCHCFからなる群から選択され;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−4アルキル、トリフルオロメチルおよびC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基によって置換されており;Rにおけるメチレン(CH)炭素原子は、未置換であるか独立にハロゲン、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される1〜2個の基によって置換されており;あるいは同一のメチレン(CH)基上にある場合に2個の置換基がそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル基を形成しており;
各Rは独立に、
水素、
1−8アルキル、
フェニル、
ヘテロアリール、
(CH0−1−ヘテロシクリルおよび
3−6シクロアルキル
からなる群から選択され;
アルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは、未置換であるかハロゲン、C1−4アルキル、ヒドロキシおよびC1−4アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されており;あるいは2個のR基が、それらが結合している原子と一体となって、O、SおよびNC1−4アルキルから選択される別のヘテロ原子を有していても良い4〜8員の単環式または二環式環系を形成している。]

【公開番号】特開2008−150394(P2008−150394A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26028(P2008−26028)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【分割の表示】特願2002−567902(P2002−567902)の分割
【原出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】