説明

メラミン系樹脂成形被覆用組成物及び該組成物で被覆された成型物

【課題】グレーズ法での工業的製法として容易に得ることが可能なメラミン樹脂を単独で用いた場合は、耐水性、可撓性(耐クラック性)や汚染性に乏しくなるという問題点と、これらの性能を満足することが出来るグアナミン樹脂及びメラミン−グアナミン共縮合樹脂が工業的に製造することが難しいと言う問題点を解消し、更には、得られた被覆成型品が透明色又は単色で意匠性に乏しいという欠点を解消する。
【解決手段】メラミン系樹脂100重量部に対して、被覆顔料1〜30重量部を含有するメラミン系樹脂成形被覆用組成物であって、メラミン系樹脂がメラミン樹脂100重量部に対してグアナミン類5〜100重量部の混合物であり、被覆顔料がマイカやアルミナ粒子表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した顔料であり、且つ、該組成物が硬化触媒、離型剤を含有することを特徴とするメラミン系樹脂成形被覆用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿、茶碗、盆等のアミノ樹脂成形品の表面装飾に適した成形被覆用組成物に関し、特に、該成形被覆用組成物を使用して被覆成形された耐クラック性と意匠性に優れた被覆成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン系樹脂成形材料は、耐熱性、耐溶剤性、耐摩耗性および電気絶縁性等に優れ、皿、茶碗、盆、お椀等の食器類、机、たんす、げた箱等における化粧板類および接続器、転換器、配電盤、絶縁がい子等の電気機器部品類等の各種の分野で成型されて使用されている。
中でも、皿、茶碗、盆、お椀等の食器類は、色や柄模様等の意匠性を要求される分野であり、従来より、着色顔料を配合した成形材料を用いて着色成型物を成型する方法で用いられている。また、成型物を更に成形被覆して表面特性を改善する方法、いわゆるグレーズ法が適用されている。
【0003】
グレーズ法の例としては、特許文献1には、着色成型物をメラミン及び/又はグアナミン類とホルムアルデヒドとの反応物からなるアミノ系樹脂と硬化触媒等を配合した透明性の被覆成形材料で被覆して、表面保護と意匠性(透明性)を兼備した食器を得る方法が開示されている。
しかしながら、メラミン樹脂は、工業的製法で容易に製造することが可能ではあるが、メラミン樹脂だけでは、耐水性、可撓性(耐クラック性)や汚染性にやや乏しく、また、グアナミン樹脂及びメラミン−グアナミン共縮合樹脂は、耐水性、可撓性(耐クラック性)や汚染性は改善されるものの、製造工程に於いて板状物又は固形状物を粉砕する作業等が必要であり、該作業に多大の労力を要するため、工業的に製造することが難しいという問題点があった。
また、従来のいわゆるグレーズ法では、被覆樹脂が透明色又は単色であり、多様な色彩を揃えることも困難であった。
【0004】
【特許文献1】特公昭43−028610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記グレーズ法での工業的製法として容易に得ることが可能なメラミン樹脂を単独で用いた場合は、耐水性、可撓性(耐クラック性)や汚染性に乏しくなるという問題点と、これらの性能を満足することが出来るグアナミン樹脂及びメラミン−グアナミン共縮合樹脂が工業的に製造することが難しいと言う問題点を解消すること目的とする。
更には、得られた被覆成型品が透明色又は単色で意匠性に乏しいという欠点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、メラミン樹脂に、グアナミン類を配合することにより、工業的製法で極めて容易に成形被覆用組成物を得ることが出来、メラミン樹脂単独では劣る物性をカバーし、更には本発明の被覆組成物に被覆顔料を必須成分として配合することにより、意匠性に乏しい不利益性を解消するだけでなく、耐クラック性が更に向上することを見出したことにより達成されたものである。
即ち本発明は、メラミン樹脂100重量部に対して、グアナミン類を5〜100重量部含有させたメラミン系樹脂100重量部に対して、マイカ粒子及び/又はアルミナ粒子表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した被覆顔料を1〜30重量部配合することにより、高光沢、耐クラック性及び意匠性に優れたメラミン系樹脂成形被覆用組成物を得ることが出来、該被覆組成物を被覆した耐クラック性及び意匠性に優れた成型物を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明におけるメラミン系樹脂成形被覆用組成物は、工業的製法で容易に製造することが可能であり、光沢、耐水性、耐クラック性等の物性にも優れた被覆用組成物であり、更に多彩な色調が得られると共に、この組成物を被覆した成型品もまた、多彩な紋様、色調を有する優れた成型品となり得るというものである。
【0008】
以下、本発明のメラミン系樹脂成形被覆用組成物、及び該被覆用組成物を被覆した成型物について詳しく説明する。
本発明でいうメラミン樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドとを反応せしめて得られるメラミン/ホルムアルデヒド樹脂(以下「メラミン樹脂」と略称することがある。)である。
該メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとをモル比1:1.5〜1:4.5、好ましくは1:2〜1:3の範囲で、水溶液中で反応させて初期縮合物水溶液を製造する。その際、メラミン濃度20〜60%、反応温度40〜100℃、弱酸性〜弱アルカリ性で反応させことにより、10〜100分間程度で反応は完了する。得られた初期縮合物水溶液をスプレードライ等の工業的な製法で固形粉末状メラミン樹脂とする。
その際、メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比が1.5モル未満では、加工性が低下すると共に、反応速度が遅くて好ましくなく、また4.5モル超では、メラミン樹脂がややもろくなるので好ましくない。
【0009】
メラミン樹脂に配合するグアナミン類としては、例えば、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン、フェニルアセトグアナミン、CTUグアナミン等を挙げることができ、中でも耐水性や光沢等の特性からベンゾグアナミンが好ましい。
メラミン樹脂へのグアナミン類の配合量は、メラミン樹脂100重量部に対してグアナミン類5〜100重量部である。グアナミン類が5重量部未満では、耐汚染性や可撓性が悪くなるので好ましくなく、100重量部超では、表面硬度や流動性が低下し、成形性が悪くなるので好ましくない。
【0010】
本発明のメラミン系樹脂成形被覆用組成物は、前記のメラミン系樹脂100重量部に対して、更にマイカ粒子及び/又はアルミナ粒子の表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した被覆顔料を1〜30重量部配合する。該配合量が1重量部未満では、耐クラック性等の効果に乏しく、30重量部超では、被覆成形材料の流動性が悪くなり、その結果、耐汚染性や耐水性等に悪影響を及ぼす。
マイカ粒子及び/又はアルミナ粒子の表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した被覆顔料は、酸化チタンの被覆率で14〜68%、酸化鉄の被覆率で4〜58%である。被覆率や該被覆顔料の粒度の違いにより、様々な色調の顔料が得られる。
前記被覆顔料の粒度は1〜180μm、好ましくは10〜150μmが用いられ、大きな粒子はキラキラした光沢をもたらし、小さな粒子は柔らかい光沢をもたらす。更には被覆層を透過した光線と反射光線の違いにより見る角度によって、多彩な色調をもたらすのでこれらの粒子を目的、用途により適宜選択、併用して使用する。
【0011】
例えば、酸化チタンの被覆率が29%で主たる粒度が10〜60μの顔料(Iriodin 100 )では標準パール光沢であり、酸化チタンの被覆率が43%で主たる粒度が<15μの顔料(Iriodin 111 )ではより穏やかなパール光沢であり、酸化チタンの被覆率が14%で主たる粒度が20〜180μの顔料(Iriodin 163 )ではよりキラキラしたメタリック調である。
また、酸化チタンの被覆率が57%で主たる粒度が5〜25μの顔料(Iriodin 201 )では金色で穏やかなパール光沢を有し、酸化チタンの被覆率が62%で主たる粒度が5〜25μの顔料(Iriodin 221 )では青色で穏やかなパール光沢を有し、酸化チタンの被覆率が68%で主たる粒度が5〜25μの顔料(Iriodin 231 )では緑色で穏やかなパール光沢を有する。
更に、酸化チタンの被覆率が48%、酸化鉄被覆率が10%で主たる粒度が5〜25μの顔料(Iriodin 302 )では穏やかな赤味のある金色を呈し、酸化チタンの被覆率が38%、酸化鉄被覆率が4%で主たる粒度が10〜60μの顔料(Iriodin 320 )ではやや濃い金色を呈し、酸化鉄被覆率が58%で主たる粒度が5〜25μの顔料(Iriodin 524 )では穏やかな赤の金属光沢を有する。
【0012】
これら被覆顔料の例としてはマイカ粒子を基材とした被覆顔料として、例えば、酸化チタンの被覆率14〜43%、主な粒度(μ)1〜180で銀白色光沢のIriodin 100 シリーズ(100,103,103WNT,111,111WNT,120,121WNT,123,151,153,163,173)、例えば、酸化チタンの被覆率29〜68%、主な粒度(μ)5〜125で色彩効果を有するIriodin 200 シリーズ(201,201WNT,211,211WNT,221,221WNT,223,223WNT,231,205,205WNT,215,215WNT,217,219WNT,225,225WNT,235,235WNT,249,259,289,299)、例えば、酸化チタンの被覆率15〜48%、酸化鉄の被覆率4〜26%、主な粒度(μ)5〜100でパール光沢とカラーが一体となったIriodin 300 シリーズ(300,302,303,303WNT,306,309,320,323,323WNT,351,355)、例えば、酸化鉄の被覆率26〜58%、主な粒度(μ)5〜125で着色力、光沢共に強い効果を有するIriodin 500 シリーズ(500,502,502WNT,504,504WNT,505,505WNT,507,507WNT,508WNT,520,522,522WNT,524,524WNT,525WNT,527WNT,530,532,534)等(いずれもMERCK社の登録商標)が挙げられる。
また、アルミナ粒子を基材とした被覆顔料の例としては、シラリック(xirallic)T60-10WNT、T60-20WNT、T60-21WNT、T60-23WNT、T60-24WNT、F60-50WNT、F60-51WNT(いずれもMERCK社の登録商標で粒径5〜30μ)が挙げられる。これらの被覆顔料は単独でも複数でも用いることができる。
また、これら被覆顔料は、エポキシシラン系、アミノシラン系、メタクリロキシシラン系等やエポキシ樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂で表面処理して、ぬれ性やメラミン系樹脂との接着強度を改善したものや、超微粒子をカットしたもの等も使用可能である。
【0013】
本発明のメラミン系樹脂成形被覆用組成物は、前記のメラミン系樹脂、被覆顔料の他に、例えば、無水フタル酸、p−トルエンスルホン酸等の硬化触媒、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等の滑剤、その他の添加剤等を含有させることができる。
本発明のメラミン系樹脂成形被覆用組成物を製造するには、メラミン樹脂、グアナミン類、被覆顔料及びその他の添加剤を均一に混合し得る任意の混合手段が採用できる。例えば、ニーダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ロール練り、らいかい機、タンブラー等の混合機を用いて製造する。
【実施例】
【0014】
以下に実施例などを挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例などによりなんら限定されるものではない。
(製造例1)
メラミン(三菱化学株式会社製:油化メラミン)1260g(10モル)とホルマリン(37%濃度水溶液)1379g(17モル;1.7F/M)、及び水900gを還流冷却器付きフラスコに入れ、攪拌しつつ90℃で加熱反応させて、白濁点が60℃になった時、0.3gのNaOHを導入して冷却しメラミン樹脂初期縮合物を得た。
得られたメラミン樹脂水溶液をスプレードライヤー装置を用いて、約200℃で乾燥して、粉末状メラミン樹脂が簡単に得られた。
【0015】
〔実施例1〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin (登録商標)111WNT(酸化チタン被覆率=43%、主な粒度<15μ)を10.4重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して8重量部)添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Aを得た。
得られた組成物Aを用いて、下記の試験片の作製条件で作製した成型物を下記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、下地の色目を損なうことなくパール調の光沢を持った意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−1に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0016】
〔実施例2〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末50重量部、及び無水フタル酸0.5重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。均一に分散された前記内容物に被覆顔料としてMERCK社製Iriodin (登録商標)221WNT(酸化チタン被覆率=62%、主たる粒度5〜25μ)を22.5重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して15重量部)添加し、ヘンシェルミキサーを用いて5分間混合することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Bを得た。
得られた被覆用組成物Bを用いて、下記の試験片の作製条件で作製した成型物を下記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、下地の色目を損なうことなくパール調の光沢を持ち、また、見る角度により青味を帯びて見える意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−1に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0017】
〔比較例1〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合させる。その後被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)111WNT(酸化チタン被覆率=43%、主な粒度<15μ)を0.5重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して0.4重量部)添加し、更に30分間運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Cを得た。
得られた被覆用組成物Cを用いて、下記の試験片の作製条件で作製した成型物を下記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、パール調の光沢が充分には得られないものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−1に示すように良好な耐クラック性は得られなかった。
【0018】
〔比較例2〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合させることにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Dを得た。
得られた被覆用組成物Dを用いて、下記の試験片の作製条件で作製した成型物を下記の被覆成形条件で被覆成形した成型物を用いて耐クラック性試験を実施した結果、表−1に示すように良好な耐クラック性は得られなかった。
【0019】
〔比較例3〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合させた。その後、酸化チタンを10重量部添加し、更に30分間運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Eを得た。
得られた被覆用組成物Eを用いて、下記の試験片の作製条件で作製した成型物を下記の被覆成形条件で被覆成形した成型物を用いて耐クラック性試験を実施した結果、表−1に示すように良好な耐クラック性は得られなかった。
【0020】
(試験片の作製)
以下の条件により、成形被覆に供する試験片を作製した。
成形機:45Tonプレス機
金型:汁椀
下地の成形材料:ニカレットMC CE3180F〔日本カーバイド工業株式会社製〕
金型温度(上型/下型):165℃/165℃
型締め速度:5秒
初圧および時間:8.8MPa×2秒
ガス抜き:0.7秒
成形圧および時間:11.8MPa×120秒
【0021】
(被覆成形条件)
上記条件にて下地の成形材料を成形後、以下の条件により、試験片上に成形被覆して試験片を作製した。
成形機:45Tonプレス機
金型:汁椀
金型温度(上型/下型):165℃/165℃
型締め速度:5秒
初圧および時間:8.8MPa×2秒
ガス抜き:0.7秒
成形圧および時間:15.7MPa×30秒
【0022】
(試験方法)
耐クラック試験
沸騰水中で1時間煮沸した後、80℃で1時間乾燥する工程を1サイクルとし、9サイクルまでの試験を実施した。煮沸後の試験片について、グレーズ層のクラックを確認することにより耐クラック性の優劣を判定した。
【0023】
【表1】

【0024】
〔実施例3〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)163(酸化チタン被覆率=14%、主たる粒度20〜180μ)を10.4重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して8重量部)添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Fを得た。
得られた被覆用組成物Fを用いて、上記の試験片の作製条件で作製した成型物を上記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、下地の色目を損なうことなくキラキラしたメタリック調の光沢を持った意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−2に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0025】
〔実施例4〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)231(酸化チタン被覆率=68%、主たる粒度5〜25μ)を10.4重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して8重量部)添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Gを得た。
得られた被覆用組成物Gを用いて、上記の試験片の作製条件で作製した成型物を上記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、下地の色目を損なうことなく穏やかなパール調の光沢を持った意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−2に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0026】
〔実施例5〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.5重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)302(酸化チタン被覆率=48%、酸化鉄被覆率=10%、主たる粒度5〜25μ)を10.4重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して8重量部)添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Hを得た。
得られた被覆用組成物Hを用いて、上記の試験片の作製条件で作製した成型物を上記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、穏やかな赤味のある金色を示す意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−2に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0027】
〔実施例6〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末30重量部、及び無水フタル酸0.4重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)524(酸化鉄被覆率=58%、主たる粒度5〜25μ)を10.4重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して8重量部)添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Iを得た。
得られた被覆用組成物Iを用いて、上記の試験片の作製条件で作製した成型物を上記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、穏やかな赤の金属光沢を持った意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−2に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0028】
〔実施例7〕
製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂100重量部、ベンゾグアナミン粉末50重量部、及び無水フタル酸0.5重量部、ステアリン酸亜鉛0.6重量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合した。その後、被覆顔料としてMERCK社製Iriodin(登録商標)163(酸化チタン被覆率=14%、主たる粒度20〜180μ)を22.5重量部(メラミン系樹脂100重量部に対して15重量部)添加し、ヘンシェルミキサーを用いて5分間運転することにより、メラミン系樹脂成形被覆用組成物Jを得た。
得られた被覆用組成物Jを用いて、上記の試験片の作製条件で作製した成型物を上記の被覆成形条件で被覆成形した成型物は、下地の色目を損なうことなくキラキラしたメタリック調の光沢を持った意匠性に優れたものであった。
また、耐クラック性試験の結果、表−2に示すように非常に良好な耐クラック性を示すことが判った。
【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によるメラミン系樹脂成形被覆用組成物は、皿、茶碗、盆、お椀等の食器類の成型品の被覆用として用いられ、耐クラック性に優れ、多彩な色彩の意匠性にも優れた食器類等の成型品を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン系樹脂100重量部に対して、被覆顔料1〜30重量部を含有するメラミン系樹脂成形被覆用組成物であって、メラミン系樹脂がメラミン樹脂100重量部に対してグアナミン類5〜100重量部の混合物であり、被覆顔料がマイカ粒子及び/又はアルミナ粒子表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した顔料であり、且つ、該組成物が硬化触媒、離型剤を含有することを特徴とするメラミン系樹脂成形被覆用組成物。
【請求項2】
マイカ粒子及び/又はアルミナ粒子表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した被覆顔料が、酸化チタンの被覆率が14〜68%、及び/又は酸化鉄の被覆率が4〜58%であり、主たる粒度が1〜180μmであることを特徴とする請求項1に記載のメラミン系樹脂成形被覆用組成物。
【請求項3】
グアナミン類がベンゾグアナミンであることを特徴とする請求項1に記載のメラミン系樹脂成形被覆用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のメラミン系樹脂成形被覆用組成物を用いて、メラミン系樹脂成形材料から成型された成型物の表面を加熱加圧して被覆層を形成せしめてなることを特徴とする耐クラック性と意匠性に優れたメラミン系樹脂成形被覆用組成物で被覆された成型物。

【公開番号】特開2007−182524(P2007−182524A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3712(P2006−3712)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】