説明

モジュール式フェーズドアレイアンテナ

モジュール式フェーズドアレイアンテナは、ビーム形成回路モジュールと、パッチアレイモジュールと、ビーム形成回路およびパッチアレイモジュールを相互に接続するマッチング回路モジュールとを含む。ビーム形成回路は、マッチング回路モジュールを介してトランシーバーアンテナパッチに相互に接続されるバトラーマトリクス構造に構成される懸垂ストリップライン受動ハイブリッドおよびクロスオーバー要素を含み、マッチング回路モジュールは同様に懸垂ストリップライン位相整合トラックおよび複数の逆向きに変更されたマッチング要素からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、セルラー通信ネットワークのアンテナに関する。特に、本発明は、マルチセクターネットワークサイトで使用されるフェーズドアレイアンテナに関する。
【0002】
従来、図11に示されるように、ネットワークアンテナ73は、隣接した3つのネットワークセル70の接合点に置かれる。ネットワークセル71は、アクティブなネットワーク利用者、すなわちセル71内で携帯電話機やその他のネットワーク互換性のある通信端末を操作する者を含む。
【0003】
ここで、ネットワークアンテナ73は利用者に送信する。しかしながら、その際に、ネットワークアンテナ73はセル71全体に送信しなければならない。このようにして、ネットワークアンテナ73は、ネットワークアンテナ73を中心に120°に及ぶ領域に出力を放射する。このネットワークセル内で、送信出力は他の利用者にとって干渉信号として作用する。同様に、携帯電話機や他のアクティブな端末は全方向に送信し、これがセル71内のアクティブな他の利用者達からのすべての他の伝達信号とともに、ネットワークアンテナ73によって受信される。
【0004】
先行技術のシステムは多くの制約を有する。そのような制約の一つは、前述の広域にわたるアンテナ送信出力の広がり、および、その結果として伴うアクティブな利用者達から送信された多数の信号のアンテナによる受信に起因する。この結果として、アクティブな利用者達からのデータスループットは制限され、所定の使用可能な出力に関して、アンテナの範囲が制限される。そして、ネットワークセルの実行可能サイズの上限が与えられる。
【0005】
本発明の目的は、前述の問題に対処するネットワークアンテナを提供すること、および、ネットワークセクターサイト位置での有効データスループットを増加させることができるアンテナを提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、さらに高い有効範囲を有するネットワークアンテナを提供することである。
【0007】
本発明の態様によれば、複数のビーム入力を含むビーム形成回路モジュールと、パッチアレイモジュールと、ビーム形成回路モジュールおよびパッチアレイモジュールを相互に連結させるマッチング回路モジュールを備えるモジュール式フェーズドアレイアンテナが提供される。
【0008】
好ましくは、パッチアレイモジュールは、規則的な周期的アレイおよび第一グランドプレーンを形成する複数のパッチ要素を含む。
【0009】
好適な実施形態において、複数のパッチ要素の各々は、一対の結合された駆動パッチと、一対の結合された駆動パッチから分離した少なくとも一つの寄生パッチとを備える。
【0010】
第一誘電体基板は一対の結合された駆動パッチを分離させ、マッチング回路モジュールは、第一ストリップライントラックを支持する第一表面を有する第二誘電体基板と、第二ストリップライントラックを支持する前記第一表面とは反対の第二表面と、第二グランドプレーンとを備える。
【0011】
好ましくは、ビーム形成回路モジュールは、第三ストリップライントラックを支持する第一表面を有する第三誘電体基板と、第四ストリップライントラックを支持する前記第一表面とは反対の第二表面と、第三グランドプレーンとを備える。
【0012】
好ましくは、第一、第二および第三誘電体基板はエポキシ樹脂ベースの誘電体基板であり、第一、第二および第三グランドプレーンはそれぞれ、各々のエポキシ樹脂ベースの誘電体基板に支持される。
【0013】
さらに好ましくは、アンテナ全体に使用されるエポキシ樹脂ベースの誘電体基板としてFlame-Retardant 4(FR-4)が選択される。
【0014】
ビーム形成回路モジュール、パッチアレイモジュールおよびマッチング回路モジュールは、第一および第二グランドプレーンをそれぞれ支持するFR-4基板の孔を通る導電性のピンによって相互に接続される。さらに、第一ストリップライントラックおよび第二ストリップライントラックは、導電性のビアホールを通って相互に接続され、第一および第二ストリップライントラックは、ビーム形成回路モジュールおよびパッチ要素を互いに接続するマッチング回路を形成する。
【0015】
好ましくは、第三および第四ストリップライントラックは導電性のビアホールを通して相互に接続され、第三および第四ストリップライントラックは受動的ハイブリッド要素および受動的クロスオーバー要素を含む。
【0016】
有利なように、受動的ハイブリッド要素および受動的クロスオーバー要素は、第一偏光の出力を生成するように適合される第一バトラーマトリクスビームフォーマーと、第二偏光の出力を生成するように適合される第二バトラーマトリクスビームフォーマーとを形成するように構成される。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、第一偏光は第二偏光に対して直角である。
【0018】
好ましくは、一対の結合された駆動パッチは、第一偏光の出力を受信する第一入力ピンと、第二偏光の出力を受信する第二ピンとを含む。そして好ましくは、第一偏光は+45°偏向され、第二偏光は−45°偏向される。
【0019】
好適な実施形態では、第三および第四ストリップライントラックは、出力ピンを介してマッチング回路モジュールに接続される位相整合トラックである。
【0020】
好ましくは、受動的ハイブリッド要素および受動的クロスオーバー要素は、トラック幅が可変な懸垂ストリップライン導電性トラックからなる。
【0021】
好ましくは、実質的にアンテナ動作波長の半分に等しい距離で周期的アレイの隣接するパッチ要素が分離され、ここで前記パッチ要素はひし形である。
【0022】
好適な実施形態において、第一グランドプレーンおよび第二誘電体基板は、距離R1で互いに分離される。第二誘電体基板および第二グランドプレーンは、距離R2で互いに分離される。第二グランドプレーンおよび第三誘電体基板は、距離R3で互いに分離される。第三誘電体基板および第三グランドプレーンは、距離R4で互いに分離される。
【0023】
好ましくは、上記距離R1,R2,R3およびR4はそれぞれ、実質的にλ/40<Rn<tの範囲にある。ここで、λはアンテナの動作波長であり、n=1〜4であり、tは誘電体基板厚さである。
【0024】
好適な実施形態において、第一、第二および第三誘電体基板のそれぞれの厚さtは、0.5mm〜2.0mmの範囲である。
【0025】
添付の概略図を参照して、本発明の実施形態を例としてこれから述べる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ネットワーク基地局に結合される本発明のアンテナを示す図である。
【図2】アンテナの3つの主構成要素の誘電体基板の斜視図である(グランドプレーンは図示せず)。
【図3】図2のA−A線断面図である(グランドプレーンを含む)。
【図4】本発明のアンテナのマッチング回路を示す図である。
【図5】マッチング回路モジュールの正のマッチング要素を示す図である。
【図6】マッチング回路モジュールの負のマッチング要素を示す図である。
【図7】ビーム形成回路誘電体基板の平面図である。
【図8】本発明のアンテナによって利用される懸垂ストリップライン構造の断面図である。
【図9】バトラーマトリクスビームフォーマーの受動的ハイブリッド要素を示す図である。
【図10】バトラーマトリクスビームフォーマーの受動的クロスオーバー要素を示す図である。
【図11】従来の3セクターセルラーネットワークサイトを示す図である。
【図12】本発明に従ったセクター形式のセルラーネットワークサイトを示す図である。
【図13】送信モードでのアンテナの配線図である。
【図14】4つのビームを使用するセクター形式のネットワークセルを示す図である。
【図15】受動的ハイブリッド要素の結合された出力を示す図である。
【図16】受動的クロスオーバー要素の出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1、2および3を参照すると、アンテナ1は、パッチアレイモジュール10、マッチング回路モジュール20およびビーム形成回路モジュール30の3つのモジュールからなる。使用するとき、これらのモジュールは金属ハウジング(図示せず)内に収容される。通常、ハウジングは、パッチアレイモジュールの反対側に配置されるマイクロ波透過窓を含む。アンテナは、コミュニケーションリンク3を介して、ネットワーク基地局2にリンクされる。
【0028】
パッチアレイモジュール10は、第一基板15、および、オフセット周期的アレイ状に配置される複数のパッチ要素11からなる。パッチアレイはMパッチ要素のN列からなり、図に示される実施形態では4×4パッチアレイ(N×M)を含む。パッチ要素11の隣接した列は、アンテナ動作波長λの半分に等しい距離で離される。各列内のMパッチ要素の距離間隔は、相互結合効果を最小限にするのに十分大きく、しかしながら、コンパクトさを最大限にするのに十分小さい距離である。示される実施形態では、列内の各パッチ要素の間の距離間隔はλよりも小さい。
【0029】
各パッチ要素11は、一対の導電性駆動パッチ13および一対の寄生パッチ12からなる。しかしながら、別のアンテナの実施形態において、各パッチ要素11に存在する寄生パッチ対が全くないか、一つよりも多いことも構想される。駆動パッチ13は、誘電体基板15上の導電性配線によって形成される。寄生パッチ12もまた、支持基板上に形成される両面の導電性配線として形成される。この支持基板は、ナイロンの留め具または広げられた低損失の発泡体の層によって、誘電体基板15から分離される。
【0030】
図2および図4中の破線で示されるように、パッチ要素11はひし形である。しかしながら、パッチ要素11は、様々な形状のいずれをもとることができ、例えば別のアンテナの実施形態では、要素は正方形である。ひし形アレイ構造は、素子間隔を有利に最大化し、アレイの要素間のカップリングを最小化する。
【0031】
各寄生パッチ12は、ギャップ14によって駆動対から分離される。寄生パッチおよび駆動パッチのアレイは、電磁的に結合される。有利なように、これはアンテナの作動帯域幅の拡大を容易にする。
【0032】
駆動パッチ13は、第一誘電体基板15上の導電性配線として形成される。好適な実施形態では、第一誘電体基板15は、0.5mm〜2.0mmの厚さを有するFR-4基板から作られる。この範囲の厚さを有する基板は、電磁的損失を最小化する一方で、機械的剛性が最適化されることが分かった。
【0033】
別の実施形態では、誘電体基板は、例えばDuroid(登録商標)積層板などの、いくつかの適切な誘電体材料から製造可能である。しかしながら、そのような積層基板は、FR-4基板よりもかなり高価であり、作り出すためにより高価な工具が必要であり、重量比に対しては望ましく有利な配線を維持する一方で、要求される機械的性能を提供することができない。
【0034】
第一誘電体基板15は、ナイロンの留め具(図示せず)を介して、第一グランドプレーン16から分離されている。第一誘電体基板15と第一グランドプレーン16との間の間隙14’は、好ましくは空隙であるが、別な配置は、広げられた低損失の発泡体で基板とグランドプレーンとを分離することである。
【0035】
グランドプレーン16は、これもまたFR-4基板から作られ、導電性のピン50が通る孔60を備える。このような複数のピンにより、パッチ要素11とフィーダーモジュール20とが相互に連結されるが、明確にするために一つのみが示されている。
【0036】
フィーダーモジュール20は、第二誘電体基板21および第二グランドプレーン28を備える。第二誘電体基板21および第二グランドプレーン28は両者ともFR-4基板で構成される。上述のように、基板の厚さは0.5mm〜2.0mmの範囲である。電磁損失を動作許容範囲内に維持するため、第二誘電体基板21の厚さは、第一空隙26の3分の1よりも小さいことが好ましい。
【0037】
第二誘電体基板21は、上面22上の第一ストリップライントラック24、および、下面23の第二ストリップライントラック25を含む。第一および第二ストリップラインの両者とも、周知のリソグラフ印刷および銅エッチング技術を使用して、または、当業者であれば容易に分かるその他のめっき方法を使用して、FR-4基板上に形成される。
【0038】
好適な実施形態では、第一ストリップライントラック24は、第二ストリップライントラック25に完全に同じように対応し、両者とも規則的なパターンを形成する複数のマッチング要素60を含む。第一ストリップライントラック24および第二ストリップライントラック25は、懸垂ストリップライン構造に配置される(図8を参照)。
【0039】
図4は、第一ストリップライントラック24の平面図を示す。マッチング要素60は4個組みのグループに配置され、グループの各要素はフィーダートラック29を介して互いに接続される。4つのマッチング要素の各グループにリンクするフィーダートラック29は、ビーム出力ピン42,43を含む。出力ピン42,43は、ビーム形成回路モジュール30の出力をフィーダーモジュール20のストリップライントラックに結合する。
【0040】
好適な実施形態では、図4に示すように、合計32個のマッチング要素がある。しかしながら、アンテナのいずれの実施形態でもマッチング要素の数の一般的公式は、2×(N×M)である。Nは、パッチ要素の列の数であり、方位(アジマス)平面でアンテナから送信されるビームの数を決定する。Mは、仰角平面での各ビーム幅を決定する。好適な実施形態では、アンテナは4つのビームを生成する。
【0041】
図4に示すように、マッチング回路は16個の正マッチング要素62、および、16個の負マッチング要素63からなる。正マッチング要素62および負マッチング要素63は、互いに左右対称である(図5および6を参照)。正マッチング要素62は所定の偏光の信号入力を受信し、負マッチング要素63は、正マッチング要素63によって受信された信号入力に直交する偏光の信号入力を受信する。
【0042】
各パッチ要素11は、明確にするため破線で2つのみが示されているが、一対の導電性入力ピン(図示せず)を含む。1つのピンは正マッチング要素62に接続され、別のピンは負マッチング要素63に接続される。その結果、各パッチ要素11は、マッチング回路モジュール20から、2つの直交した偏光の入力信号を受信する。示される実施形態では、各パッチ要素11は、マッチング回路モジュール20から、+45°および−45°偏向された入力を受信する。
【0043】
図5および6を参照すると、各マッチング要素62,63は、入力信号をビームフォーマーからパッチ要素11に接続された出力ピンにマッチさせる小型回路として配置されるストリップライントラック64からなる。ストリップライントラック64は、第二基板21の上面および下面に形成され、懸垂配置を形成する(図8を参照)。再び、これは周知のリソグラフ印刷および銅エッチング技術を介して生成される。
【0044】
図7は、ビーム形成回路モジュール30の一部を形成する第三基板31を示す。前述した第一および第二ストリップライントラック24,25と同様に、第四ストリップライントラック35は第三ストリップライントラック34に完全に一致するように対応する。しかしながら、明確にするため、第三ストリップライントラックのみ図示され、第三基板31の裏側は対応するストリップラインパターンを含む。第三ストリップライントラック34および第四ストリップライントラック35は懸垂ストリップライン構造に配置される。前述したように、図8は基本的な懸垂ストリップライン配置を示す。マイクロ波伝送線路として実行されるとき、懸垂ストリップラインは多くの利点を有する。これらの利点のうち最重要のものは、懸垂ストリップラインが広帯域周波数であること、電磁場が空間的に制約され、大きな信号損失を被ることなく導電性トラックを互いに近位に配置できることである。これは同様にコンパクトなモジュール設計を可能にする。
【0045】
第三ストリップライントラック34は2つのビーム形成バトラーマトリクスを含む。第一ビームフォーマーは4つの信号入力40を有し、第二ビームフォーマーは4つの入力41を有する。その結果、ビーム形成モジュール30は合計8つの入力を有する(図14を参照)。一つのビームフォーマーは4つの出力ピン42を提供し、その各々が4つの正マッチング要素62の4つのグループに接続される。第二ビームフォーマーは、同様に4つの負マッチング要素63の4つのグループに接続される4つの出力ピン43を提供する。
【0046】
図7に示されるように、各ビームフォーマーは、4つの受動ハイブリッド要素80と、1つの受動クロスオーバー要素90とからなる。受動クロスオーバー要素90は、ケーブルやワイヤーを相互に連結することを必要とせず、信号の交差を容易にする。ハイブリッド要素80およびクロスオーバー要素90は、4−入力バトラーマトリクスの形で構成される。本発明の2−ビーム実施形態では、各ビームフォーマーは1つの受動ハイブリッド要素80からなり、8−ビームの実施形態では、16個の受動ハイブリッド要素80が要求される。
【0047】
図8は、ビーム形成回路モジュール30およびマッチング回路モジュール20の両方で使用される懸垂ストリップライン構造の断面図を示す。矢印は、懸垂ストリップ配置での典型的な電磁界パターンを示す。
【0048】
ストリップライントラック24,25,34,35は、図示されるように、上グランドプレーン16,28と下グランドプレーン28,38との間につるされる。この懸垂ストリップライン配置の利点は、電磁場が空間的に導電性トラックの近辺に制約されることである。別の利点は、ほんのわずかの比率の電磁場しか誘電体基板21,31内に及ばず、これによりTEM波の伝播に対して基板の影響が最小化されることである。その結果として、アンテナ内で使用するのに適した誘電体基板は、それらの電気特性よりもむしろ、それらの機械特性(例えば、強度、重量、熱膨張係数など)で選ばれる。インピーダンスのような電気特性は、ストリップライントラックの幅を変えることで制御されることができる。
【0049】
図9および15を参照して、各受動ハイブリッド要素80はストリップライントラックセグメント81〜84からなる。各トラックセグメント81〜84は、受動ハイブリッド要素80の所望のインピーダンスによって決定されるトラック幅および長さを有する。受動ハイブリッド要素は、より広い周波数帯域幅で使用可能な点で、従来のハイブリッド要素とは異なる広帯域要素である。
【0050】
ストリップライントラックセグメントの長さは、トラックに沿って伝わるTEM波の速度のために均等にされる。狭いトラックは比較的に高いインピーダンスを有する。しかしながら、これにより、誘電体基板を突き抜ける電磁場の比率が高くなり、高損失と横波速度の低下が生じる。その結果として、トラックに沿って伝わる信号の波長は、低インピーダンストラックの場合よりも短い。
【0051】
トラック長さは動作波長の全体部分であることが望ましく、その結果としてトラックは均等にされなければならない。例えば、トラックセグメントインピーダンスが25Ωの場合、トラック内の信号の実効波長は320mmであり、一方で100Ωのインピーダンスに対して波長は310mmに変わる。
【0052】
図9において、トラックセグメント81,83は、異なるトラック幅を有するので異なるインピーダンスを有する。電気的に、トラックセグメント81,83は同じ動作波長の実効比率を有する。しかしながら、物理的に、それらは異なる長さを有する。有利なように、これはかなり高い性能を可能にさせる。
【0053】
図9および15を参照して、各受動ハイブリッド要素は、一対の入力および一対の出力を有する。それぞれAおよびBのベクトルの大きさを有する所定の一対の入力に対して、出力が図15に示される。このようにして、受動ハイブリッド要素80は入力を結合させ、出力の位相増加を発生させる。波長の半分に等しい位相増加は−180(度)と表示される。他の増加は、適切な360度の倍数で表され、360度は丁度1波長に等しい。
【0054】
同様に、図10および16を参照して、各受動クロスオーバー要素90は、それらの幅および長さが実効誘電率、実効インピーダンスおよび位相を考慮して決定される複数のストリップライントラックセグメントからなる。再度、ハイブリッド要素と同様に、受動クロスオーバー要素は、かなり広い周波数帯域幅で動作される点で、従来のクロスオーバー要素とは異なる。クロスオーバー要素は2つの入力90,91および2つの出力93,94を含む。それぞれAおよびBのベクトルの大きさを有する一対の入力に対して、出力は図16に示されるようになる。ここで、入力はクロスオーバーし、示されるように位相増加が発生する。
【0055】
図13に示すように、送信モードにおいて、アンテナはネットワーク基地局2から信号入力40,41を受信する。入力40,41はそれぞれビームフォーマー51およびビームフォーマー52に取り込まれる。示される実施形態では、入力40は+45°偏向された4つの信号I1〜I4からなり、入力41は−45°偏向された4つの信号I5〜I8からなる。+45/−45は一例に過ぎない。実際は、どのような偏光が採用されてもよいが、入力40は必ず入力41に対して直交する偏光である。
【0056】
ビームフォーマー51は4つの出力S1〜S4を有し、それに対応して、ビームフォーマー52は4つの出力S5〜S8を有する。各入力I1〜I4からの入力電力は出力S1〜S4の間で均等に分割され、それに対応して、各入力I5〜I8からの入力電力は出力S5〜S8の間で均等に分割される。出力の位相増加は表1に示される。
【0057】
【表1】

【0058】
出力S1〜S4はそれぞれ4つの正マッチング要素62’のグループに取り込まれる。出力S5〜S8はそれぞれ4つの負マッチング要素63’のグループに取り込まれる。図13に示されるように、正および負マッチング要素62’,63’の各グループは、4つのパッチ要素11’のグループに接続される。
【0059】
ビーム重みは次式にしたがって決定される。
【0060】
【数1】

【0061】
ここで、S(j)はビームフォーマー出力であり、kは入力40または41を意味する。位相θは表1から決定される。
【0062】
図14に示されるように、アンテナ1の出力は4つのビーム110,120,130,140に分割される。結果として、セル境界は従来のセル71の範囲を超えて広げられ、4つのビーム110,120,130,140のため四分円に区分される。受信モードでは、上述のプロセスが逆に機能する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のビーム入力を含むビーム形成回路モジュールと、
パッチアレイモジュールと、
前記ビーム形成回路モジュールおよび前記パッチアレイモジュールを相互に接続するマッチング回路モジュールとを備えることを特徴とするモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
前記パッチアレイモジュールが規則的な周期的アレイを形成する複数のパッチ要素、および第一グランドプレーンを含むことを特徴とする請求項1に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
前記複数のパッチ要素のそれぞれが一対の結合駆動パッチを備えることを特徴とする請求項2に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記複数のパッチ要素のそれぞれが、前記一対の結合駆動パッチから分離した少なくとも1つの寄生パッチをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
第一誘電体基板が前記一対の結合駆動パッチを分離することを特徴とする請求項3に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
前記マッチング回路モジュールが、第一ストリップライントラックを支持する第一表面を有する第二誘電体基板と、第二ストリップライントラックを支持する前記第一表面とは反対の第二表面と、第二グランドプレーンとを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
前記ビーム形成回路モジュールが、第三ストリップライントラックを支持する第一表面、および、第四ストリップライントラックを支持する前記第一表面とは反対の第二表面を有する第三誘電体基板と、第三グランドプレーンを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項8】
前記第一、第二および第三誘電体基板がエポキシ樹脂ベースの誘電体基板であることを特徴とする請求項7に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項9】
前記第一、第二および第三グランドプレーンがそれぞれ各エポキシ樹脂ベースの誘電体基板上に支持されることを特徴とする請求項7に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂ベースの誘電体基板がFlame-Retardant 4(FR-4)で作られることを特徴とする請求項8または9に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項11】
前記ビーム形成回路モジュール、前記パッチアレイモジュールおよび前記マッチング回路モジュールが、前記第一および第二グランドプレーンをそれぞれ支持するFR-4基板の孔を通る導電性ピンによって相互に接続されることを特徴とする請求項10に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項12】
前記第一ストリップライントラックおよび前記第二ストリップライントラックが導電性のビアホールを通して相互に接続され、前記第一および第二ストリップライントラックは、前記ビーム形成回路モジュールおよび前記パッチ要素を相互に接続するマッチング回路を形成することを特徴とする請求項7に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項13】
前記第三および第四ストリップライントラックは、導電性のビアホールを通して相互に接続され、前記第三および第四ストリップライントラックは受動ハイブリッド要素および受動クロスオーバー要素を含むことを特徴とする請求項12に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項14】
前記受動ハイブリッド要素および前記受動クロスオーバー要素は、第一偏光の出力を生成するのに適合される第一バトラーマトリクスビームフォーマー、および、第二偏光の出力を生成するのに適合される第二バトラーマトリクスビームフォーマーを形成するように構成されることを特徴とする請求項13に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項15】
前記第一偏光は前記第二偏光に直交することを特徴とする請求14に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項16】
前記一対の結合駆動パッチは、第一偏光の出力を受信する第一入力ピン、および第二偏光の出力を受信する第二ピンを含むことを特徴とする請求項15に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項17】
前記第一偏光は+45°偏向され、前記第二偏光は−45°偏向されることを特徴とする請求項16に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項18】
第三および第四ストリップライントラックは、出力ピンを介して前記マッチング回路モジュールに接続される位相整合トラックであることを特徴とする請求項7〜17のいずれか1項に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項19】
前記受動ハイブリッド要素および前記受動クロスオーバー要素は、トラック幅が可変な懸垂ストリップライン導電性トラックからなることを特徴とする請求項13に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項20】
実質的に前記アンテナの動作波長の半分に等しい距離で前記周期的アレイの隣接するパッチ要素が分離され、前記パッチ要素はひし形であることを特徴とする請求項2〜19のいずれか1項に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項21】
前記第一グランドプレーンおよび前記第二誘電体基板は距離R1で互いに分離され、前記第二誘電体基板および前記第二グランドプレーンは距離R2で互いに分離され、前記第二グランドプレーンおよび前記第三誘電体基板は距離R3で互いに分離され、前記第三誘電体基板および前記第三グランドプレーンは距離R4で互いに分離されることを特徴とする請求項7〜20のいずれか1項に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項22】
距離R1,R2,R3およびR4は、実質的にλ/40<Rn<tの範囲内であり、λは前記アンテナの動作波長であり、n=1〜4であり、tは誘電体基板厚さであることを特徴とする請求項21に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。
【請求項23】
前記第一、第二および第三誘電体基板の各厚さtは0.5mm〜2.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項22に記載のモジュール式フェーズドアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−511185(P2013−511185A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538412(P2012−538412)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051883
【国際公開番号】WO2011/058363
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512127235)
【出願人】(512127246)
【Fターム(参考)】