説明

モータ制御回路

【課題】モータの速度を可変制御するモータ制御回路において、設定されるモータの速度に応じた適切な制御ゲインを自動的に設定可能なモータ制御回路を提供する。
【解決手段】本発明に係るモータ制御回路10は、速度検出手段FGから入力される検出信号の周期FG_countと外部から入力される基準信号EXCの周期EXC_countとの差に応じた周期誤差信号を出力する周期誤差信号出力手段20と、周期誤差信号に速度ゲインを乗算して得られる速度誤差信号を出力する速度誤差信号出力手段22と、基準信号EXCの周期EXC_countに対する補正基準周期Ref_countの比を補正量とし、その補正量を2乗して速度誤差信号出力手段22が備える所定の速度ゲインKfに乗算することにより、所定の速度ゲインKfを補正するゲイン補正手段28、30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転速度を可変制御するモータ制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やページプリンタ等のOA機器は、カラー化、精細化、デジタル化が進んでおり、それに伴って、これらの機器に使用されるモータは、広い回転速度範囲で、かつ、高い回転速度精度で動作することが求められている。このようなモータを制御する制御回路には、広い回転速度範囲内の各回転数において、最適な制御性能を備えることが要求される。
【0003】
従来、モータの速度及び位相をデジタル的に制御するために、図3に示すようなデジタルサーボ回路100が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図3に示すデジタルサーボ回路100は、VTRに用いられるドラムモータ102及びキャプスタンモータ103の速度及び位相を制御するモータ制御回路の例である。
このデジタルサーボ回路100が備えるサーボIC117には、端子104a、104bから、ドラムモータ102の速度及び位相と対応する検出信号がそれぞれ供給され、スピードサーボ回路119からの出力が乗算器123を介してミキサー127に供給されるとともに、位相サーボ回路120の出力がデジタルフィルタ及び乗算器24を介してミキサー127に供給される。そして、ミキサー127の出力に現れるPWM信号がローパスフィルタ109及びドライブアンプ115を介してドラムモータ102に加えられる(尚、キャプスタンモータ103についても同様であるため、その説明は省略する)。
【0004】
そして、デジタルサーボ回路100では、スピードサーボ回路119、121及び位相サーボ回路120、122に対する、VTRの動作状態に応じた制御ゲイン(すなわち、係数KDS、KDP、KOS、KOP)を、外部のマイクロプロセッサ118から与える構成とすることによって、サーボIC117の出力側での調整箇所をなくして部品点数を低減し、また、デジタルサーボ回路100の高性能化及び調整の自動化を達成することが図られている。
【0005】
さらに、モータ制御回路において、広範囲に変化する速度の制御を行う場合、速度可変範囲内の各速度に対して、それぞれ最適な制御ゲインを設定する必要があることが知られている。図4を参照して、このような制御ゲインの設定の典型的な例を説明すれば、次の通りである。
【0006】
図4に示すモータ制御回路200は、検出されたモータの回転速度と目標速度との偏差に対応する速度誤差信号SDと、検出されたモータの位相と基準位相との偏差に対応する位相誤差信号PDとを、それぞれ速度入力抵抗RPD及び位相入力抵抗RSDを介して加算した後、加算後の信号を積分アンプ201により積分することによって、後続のモータ駆動回路(図示は省略する)に対する制御信号(例えば、トルク指令信号)を得るものである。
【0007】
そして、モータ制御回路200は、モータの低速回転時の制御ゲインを決定する低速側積分定数回路(抵抗RZ1及びコンデンサCZ1)と、モータの高速回転時の制御ゲインを決定する高速側積分定数回路(抵抗RZ2及びコンデンサCZ2)を備えている。低速側積分定数回路の一端は低速用積分出力端子INTO1に接続され、高速側積分定数回路の一端は高速用積分出力端子INTO2に接続されており、低速側積分定数回路の他端及び高速側積分定数回路の他端は、共通の積分入力端子INTIに接続されている。また、モータ制御回路200は、積分アンプ201に対して低速用積分出力端子INTO1と高速用積分出力端子INTO2のいずれが接続されるかを切替える選択スイッチ202を備えている。
【0008】
ここで、モータ制御回路200では、通常、そのインタフェースを通じて外部から入力される信号により制御ゲインが選択されるように構成されており、外部から入力される信号に連動する切替え信号SWに応じて、選択スイッチ202が低速用積分出力端子INTO1と高速用積分出力端子INTO2とが切替わることにより、モータの低速回転時及び高速回転時において、それぞれ適切な制御ゲインが設定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−76909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図3に示すデジタルサーボ回路100では、制御ゲインを設定するために、外部のマイクロプロセッサ118(または、メモリ)を要するものである。また、図4に示すモータ制御回路200では、対応する速度域(例えば、高速域及び低速域)毎に専用の積分定数回路を備えているため、積分定数回路毎にそれを構成する抵抗及びコンデンサが必要となるとともに、例えば、更に高精度な制御を実行することを目的として速度域を細分化する等の理由により速度域数を増加させた場合、対応する積分定数回路も増加させざるを得ない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、モータの速度を可変制御するモータ制御回路において、設定されるモータの速度に応じた適切な制御ゲインを自動的に設定可能なモータ制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0013】
(1)モータに取り付けられた速度検出手段から前記モータの速度に比例する周波数の検出信号が入力されるとともに、外部から目標速度に相当する周波数を有する基準信号が入力され、前記検出信号の周期と前記基準信号の周期とを比較して前記モータの速度を可変制御するモータ制御回路であって、前記検出信号の周期と前記基準信号の周期との差に応じた周期誤差信号を出力する周期誤差信号出力手段と、前記周期誤差信号に速度ゲインを乗算して得られる速度誤差信号を出力する速度誤差信号出力手段と、前記基準信号の周期に対する補正基準周期の比を補正量とし、該補正量を2乗して前記速度誤差信号出力手段が備える所定の速度ゲインに乗算することにより前記所定の速度ゲインを補正するゲイン補正手段と、を備えることを特徴とするモータ制御回路(請求項1)。
【0014】
本項に記載のモータ制御回路によれば、外部から入力される基準信号の周期(目標速度)の変動に応じて、速度ゲインを自動的に補正することが可能となり、モータの速度を可変制御するモータ制御回路において、目標速度の変動に伴ってモータの速度が変動する際に、それぞれの速度における制御特性を最適化することが可能となる。
また、本項に記載のモータ制御回路では、目標速度に応じた速度ゲインの補正がモータ制御回路の内部で自動的に行われるため、速度ゲインの切替信号を外部から入力するためのインタフェース等を要することなく、簡素かつ安価な構成により、制御特性の最適化を実施することができる。
【0015】
(2)(1)項に記載のモータ制御回路において、前記基準信号の位相と前記検出信号の位相の差に応じた位相差信号に位相ゲインを乗算して得られる位相誤差信号を出力する位相誤差信号出力手段をさらに備え、前記補正手段は、前記補正量を前記位相誤差信号出力手段が備える所定の位相ゲインに乗算することにより前記所定の位相ゲインを補正することを特徴とするモータ制御回路(請求項2)。
【0016】
本項に記載のモータ制御回路によれば、外部から入力される基準信号の周期の変動に応じて、速度ゲイン及び位相ゲインを自動的に補正することが可能となり、モータの速度を可変制御するモータ制御回路において、目標速度の変動に伴ってモータの速度が変動する際に、それぞれの速度における制御特性を、さらに効果的に最適化することが可能となる。
【0017】
(3)(2)項に記載のモータ制御回路において、前記検出信号が入力され、基準クロックに基づいて計数された前記検出器信号の周期に相当する検出周期カウント値を出力する周期検出カウンタと、前記基準信号が入力され、前記基準クロックに基づいて計数された前記基準信号の周期に相当する基準周期カウント値を出力する周期検出カウンタと、前記検出器信号と前記基準信号が入力され、前記基準クロックに基づいて計数された前記基準信号の位相と前記検出器信号の位相の差に相当する位相差カウント値を出力する位相検出カウンタと、を備えており、前記周期誤差出力手段は、前記検出周期カウント値と前記基準周期カウント値との差分演算により前記周期誤差信号を算出する差分演算手段を有し、前記ゲイン補正手段は、前記補正基準周期を、該補正基準周期に対応する補正基準カウント値として有するとともに、前記補正基準カウント値を前記基準周期カウント値で除算することにより前記補正量を算出する除算手段と、算出された前記補正量を2乗する2乗演算手段とを有することを特徴とするモータ制御回路(請求項3)。
【0018】
本項に記載のモータ制御回路によれば、外部から入力される基準信号の周期の変動に応じて、速度ゲイン及び位相ゲインを自動的に補正することが可能なモータ制御回路を、アナログ回路(例えば、積分アンプ、抵抗、コンデンサ)を使用しない完全なデジタル処理回路として構成することが可能となる。特に、モータ制御回路を集積回路(IC)とする場合、より多くのデジタル回路を少ない面積で構成する微細加工プロセスを活用して、高性能のモータ制御回路を、チップ面積が小さくかつ低コストのICにより実現することが可能となる。
【0019】
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のモータ制御回路において、前記ゲイン補正手段は、複数の前記補正基準周期を有することを特徴とするモータ制御回路(請求項4)。
【0020】
本項に記載のモータ制御回路によれば、速度可変範囲が広いモータについて、柔軟かつ容易に最適な速度ゲイン及び位相ゲインの補正を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るモータ制御回路は、以上のように構成したため、モータの速度を可変制御するモータ制御回路において、設定されるモータ速度に応じた適切な制御ゲインが自動的に設定され、その制御特性を最適化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態におけるモータ制御回路を含むモータ駆動システムを模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるモータ制御回路の要部を示す機能ブロック図である。
【図3】従来のモータ制御回路の一例を示す回路構成図である。
【図4】従来のモータ制御回路の別の例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるモータ制御回路10が好適に適用されるモータ駆動システムを模式的に示す図である。図1に示すモータ駆動システムは、モータ(例えば、ブラシレスモータ)12とモータ制御回路10とを含み、モータ12には、速度検出手段として周波数発電機(Frequency Generator。以下、FGともいう)14が取り付けられている。モータ制御回路10には、FG14からモータ12の速度(回転速度)に比例する周波数の検出信号(以下、FG信号ともいう)が入力されるとともに、外部(例えば、モータ制御回路10の上位システム)から基準信号EXCが入力される。
【0024】
図1に示すモータ駆動システムにおいて、基準信号EXCは、モータの目標速度に相当する周波数を有する信号であり、例えばモータ12の様々な動作状況に応じて、この周波数(すなわち、目標速度)を変動させることが想定されている。そして、モータ制御回路10は、FG信号の周期と基準信号EXCの周期とを比較して、モータ10の速度を可変制御するものであり、以下、図2を参照して、モータ制御回路10の構成について詳述する。
【0025】
図2は、本実施形態におけるモータ制御回路10の要部を示す機能ブロック図である。モータ制御回路10は、FG信号が入力される周期検出カウンタ16、基準信号EXCが入力される周期検出カウンタ18、FG信号及び基準信号EXCが入力される位相検出カウンタ24を備えており、周期検出カウンタ16、18及び位相検出カウンタ24には、一定周期の共通の基準クロックCLKが供給される。
ここで、モータ制御回路10は、好ましくは、その内部に基準クロックCLKの発生手段(図示は省略する)を備えるものであるが、本発明に係るモータ制御回路10は、その外部から基準クロックCLKが入力されるものであってもよい。
【0026】
モータ制御回路10は、また、差分演算手段20からなる周期誤差信号出力手段、所定の速度ゲインKfを備える乗算手段22からなる速度誤差信号出力手段、所定の位相ゲインKpを備える乗算手段26からなる位相誤差信号出力手段を備え、さらに、除算手段28及び2乗演算手段30を含むゲイン補正手段を備えている。
【0027】
本実施形態において、周期検出カウンタ16、18は、入力信号の周期を基準クロックCLKに基づいて計数し、計数された値(カウント値)を出力するものである限り、その具体的構成は、任意の適切な構成とすることができる。例えば、周期検出カウンタ16、18は、基準クロックCLKを構成する各パルス信号の入力毎にカウントアップされるフリーランカウンタと、入力信号の立ち上がりを検出して、その時点におけるフリーランカウンタのカウント値を保持するインプットキャプチャレジスタを備えており、引き続く2つの時点に保持されたカウント値の差を算出することによって、入力信号の1周期間に入力された基準クロックCLKのパルス数を、入力信号の周期に相当するカウント値として出力するものであってもよい。
【0028】
同様に、本実施形態において、位相検出カウンタ24は、2つの入力信号の位相差を基準クロックCLKに基づいて計数し、計数された値(カウント値)を出力するものである限り、その具体的構成は、任意の適切な構成とすることができる。例えば、位相検出カウンタ24は、周期検出カウンタ16、18と同様のフリーランカウンタとインプットキャプチャレジスタを備え、一方の入力信号の立ち上がり時と他方の入力信号の立ち上がり時におけるカウント値の差を算出し、その算出された値を、2つの入力信号の位相差に相当するカウント値として出力するものであってもよい。
【0029】
モータ制御回路10では、FG信号が入力される周期検出カウンタ16から、FG信号の周期に相当する検出周期カウント値FG_countが出力され、基準信号EXCが入力される周期検出カウンタ18から、基準信号EXCの周期に相当する基準周期カウント値EXC_countが出力される。そして、検出周期カウント値FG_countと基準周期EXC_countは差分演算手段20に入力され、差分演算手段20は、検出周期カウント値FG_countと基準周期カウント値EXC_countの差分を算出し、得られた値を周期誤差信号として出力する。次いで、この周期誤差信号は、乗算手段22に入力され、乗算手段22は、周期誤差信号に(後述するように補正された)速度ゲインを乗算して得られた値を、速度誤差信号として出力する。
【0030】
また、モータ制御回路10において、位相検出カウンタ24からは、位相差信号として、FG信号と基準信号EXCとの位相差に相当する位相差カウント値PH_countが出力される。次いで、この位相差信号は、乗算手段26に入力され、乗算手段26は、位相差信号に(後述するように補正された)位相ゲインを乗算して得られた値を、位相誤差信号として出力する。
【0031】
尚、モータ制御回路10は、乗算手段22及び乗算手段26からそれぞれ出力される速度誤差信号及び位相誤差信号に基づいて、モータ12を駆動する周知の駆動回路(図示は省略する)を備えるものであってもよい。
【0032】
ここで、モータ制御回路10のゲイン補正手段は、予め設定された補正基準周期を有しており、基準信号EXCの周期に対する補正基準周期の比(すなわち、補正基準周期/基準信号EXCの周期)である補正量を用いて、乗算手段22が備える所定の速度ゲインKfに対して補正量の2乗を乗算することによって速度ゲインを補正し、かつ、乗算手段26が備える所定の位相ゲインKpに対して補正量を乗算することによって位相ゲインを補正するものである。
【0033】
具体的には、モータ制御回路10において、ゲイン補正手段は、補正基準周期を、対応する補正基準カウント値Ref_countとして保持している。そして、ゲイン補正手段において、基準周期カウント値EXC_countと補正基準カウント値Ref_countが除算手段26に入力され、除算手段26では、「Ref_count/EXC_count」により補正量が算出される。そして、この補正量は、2乗演算手段30により2乗された後、乗算手段22が備える速度ゲインKfに対して乗算され、これによって、速度ゲインKfが補正される。また、乗算手段26については、位相ゲインKpに対して直接補正量が乗算され、これによって、位相ゲインKpが補正される。
【0034】
このように、モータ制御回路10では、速度ゲインKf及び位相ゲインKpが、基準信号EXCの周期(基準周期カウント値EXC_count)に応じて自動的に補正されるため、基準信号EXCの周期(すなわち、外部から入力される目標速度)が変動する場合でも、それぞれの速度に対して適切な速度ゲイン及び位相ゲインが設定され、その制御特性を最適化することができる。
【0035】
尚、本発明は、理論によって限定されるものではないが、速度ゲインKfを上記補正量の2乗により補正する点について説明すれば、次の通りである。
一般に、速度誤差は、速度誤差=モータ速度−目標速度として定義され、
速度誤差=モータ速度−目標速度
=(1/FG信号の周期−1/基準信号EXCの周期)×係数
=(周期誤差/(FG信号の周期×基準信号EXCの周期))×係数
と表される(但し、周期誤差=(基準信号EXCの周期−FG信号の周期))。
したがって、乗算手段22において、そのゲインに「1/(FG信号の周期×基準信号EXCの周期)」の因子を含めることにより、単に周期誤差に対して所定のゲインを乗算するよりも、高精度に速度誤差を得ることができる。
そこで、本発明では、モータ速度が目標速度に近い定常状態では、1/(FG信号の周期×基準信号EXCの周期)≒1/(基準信号EXCの周期)と近似できることに基づいて、上記補正量を2乗するという簡易な手段により、望ましい速度ゲインKfの補正を達成するものである。
【0036】
さらに、モータ制御回路10のゲイン補正手段では、上述したように、速度ゲインKf及び位相ゲインKp補正する補正量として、「1/基準信号EXCの周期」自体ではなく、「補正基準周期/基準信号EXCの周期」(Ref_count/EXC_count)が用いられている(これは、「1/補正基準周期」に比例する補正基準速度を設定し、「1/基準信号EXCの周期」に比例する目標速度を補正基準速度により正規化した値を、補正における目標速度として用いることに相当する)。この構成は、以下に説明するように、特に、速度可変範囲の広いモータの制御において有利なものである。
【0037】
すなわち、速度可変範囲の広いモータの制御では、目標速度が属する複数の速度域(例えば、低速域、中速域、高速域等)のそれぞれに応じて、モータ制御回路に異なる制御特性が要求される場合がある。このような要求に対して、モータ制御回路10は、複数の速度域のそれぞれに応じて適切な複数の補正基準周期(例えば、低速域用、中速域用、高速域用のそれぞれの補正基準周期)を備え、目標速度が属する速度域に応じて、補正量の算出に使用する補正基準周期(具体的には、対応する補正基準カウント値Ref_count)を切替えるように構成されるものであってもよい。
その際、モータ制御回路10は、補正基準周期の切替えを、基準信号EXCの周期(基準周期カウント値EXC_count)と連動して、自動的に行うように構成されていることが望ましい。
【0038】
これによって、目標速度が広範囲に変動する場合でも、モータ制御回路10の制御特性が最適化されるように、制御ゲイン(速度ゲイン及び位相ゲイン)の補正量を柔軟かつ容易に切替えることが可能となる。しかも、速度域数が増加した場合でも、モータ制御回路10の部品点数を増加させる必要はなく、ゲイン補正手段にデータとして保持される補正基準周期を増加させることにより、容易に対応可能である。
【0039】
以上のように構成されたモータ制御回路10は、FG信号の周期、基準信号EXCの周期、及び、FG信号と基準信号EXCの位相差を、カウント値(すなわち、数値データ)として取り込み、以後の処理は、全て数値データの演算処理として実行可能なものであるため、アナログ回路を使用しない、完全なデジタル処理回路として実現することができる。その際、モータ制御回路10の各構成要素は、図2を参照して説明した各機能ブロックの機能を果たす限り、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、あるいはその組合せによって実現することが可能である。モータ制御回路10のこのような特徴は、特にモータ制御回路10を集積回路(IC)とする場合、高性能のモータ制御回路を、チップ面積が小さくかつ低コストのICにより実現する上で、有利なものである。
【0040】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、モータ制御回路の任意の構成要素を、同等の機能を有するアナログ回路により構成する場合を含むものである。
【符号の説明】
【0041】
10:モータ制御回路、12:モータ、14:周波数発電機(速度検出手段)、16,18:周期検出カウンタ、20:差分演算手段(周期誤差信号出力手段)、22:乗算手段(速度誤差信号出力手段)、24:位相検出カウンタ、26:乗算手段(位相誤差信号出力手段)、28:除算手段、30:2乗演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに取り付けられた速度検出手段から前記モータの速度に比例する周波数の検出信号が入力されるとともに、外部から目標速度に相当する周波数を有する基準信号が入力され、前記検出信号の周期と前記基準信号の周期とを比較して前記モータの速度を可変制御するモータ制御回路であって、
前記検出信号の周期と前記基準信号の周期との差に応じた周期誤差信号を出力する周期誤差信号出力手段と、前記周期誤差信号に速度ゲインを乗算して得られる速度誤差信号を出力する速度誤差信号出力手段と、前記基準信号の周期に対する補正基準周期の比を補正量とし、該補正量を2乗して前記速度誤差信号出力手段が備える所定の速度ゲインに乗算することにより前記所定の速度ゲインを補正するゲイン補正手段と、を備えることを特徴とするモータ制御回路。
【請求項2】
前記基準信号の位相と前記検出信号の位相の差に応じた位相差信号に位相ゲインを乗算して得られる位相誤差信号を出力する位相誤差信号出力手段をさらに備え、前記補正手段は、前記補正量を前記位相誤差信号出力手段が備える所定の位相ゲインに乗算することにより前記所定の位相ゲインを補正することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御回路。
【請求項3】
前記検出信号が入力され、基準クロックに基づいて計数された前記検出器信号の周期に相当する検出周期カウント値を出力する周期検出カウンタと、前記基準信号が入力され、前記基準クロックに基づいて計数された前記基準信号の周期に相当する基準周期カウント値を出力する周期検出カウンタと、前記検出信号と前記基準信号が入力され、前記基準クロックに基づいて計数された前記基準信号の位相と前記検出信号の位相の差に相当する位相差カウント値を出力する位相検出カウンタと、を備えており、
前記周期誤差出力手段は、前記検出周期カウント値と前記基準周期カウント値との差分演算により前記周期誤差信号を算出する差分演算手段を有し、前記ゲイン補正手段は、前記補正基準周期を、該補正基準周期に対応する補正基準カウント値として有するとともに、前記補正基準カウント値を前記基準周期カウント値で除算することにより前記補正量を算出する除算手段と、算出された前記補正量を2乗する2乗演算手段とを有することを特徴とする請求項2に記載のモータ制御回路。
【請求項4】
前記ゲイン補正手段は、複数の前記補正基準周期を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125061(P2012−125061A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273927(P2010−273927)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】