説明

モータ制御装置

【課題】確実にモータを起動することが可能であり、低コストのモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置100は、3相モータ10の起動時に、予め設定された周波数を有するPWM信号でインバータ11が有するトランジスタQ1−Q6を制御するPWM制御部1と、3相モータ10が有する各端子41−43の端子電圧と、予め設定された基準電圧Vrefとを比較する比較部5と、当該比較部5の比較結果に基づいて3相モータ10が有するロータの位置を検出する検出部3と、当該検出部3が周波数に対応する時間内にロータの位置が検出できなかった場合に、PWM信号の周波数を、検出できなかった場合のPWM信号の周波数と異なる周波数に設定する周波数設定部2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを確実に起動するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の動力源として、ステータコイルを有するステータと、永久磁石を有するロータと、を備えた3相モータが用いられてきた。このようなロータの回転は、ステータコイルに通電して生じる磁束と永久磁石の磁束との間に作用する引力及び斥力により制御される。このような制御を行うには、ロータの正確な位置を特定し、当該ロータの位置に応じた適切なステータコイルへの通電が必要となる。ロータの正確な位置を検出するために回転センサを設けることが考えられるが、このような方法はコストアップの要因となる。そこで、回転センサを設けずに、ロータの位置を検出する技術が検討されてきた(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の制御装置は、油圧ポンプを駆動するセンサレスモータを起動するために、温度センサにより測定された作動油温度が第1設定温度より高い場合に、センサレスモータを第1始動転流周波数でのオープンループ制御により起動制御し、起動制御によりセンサレスモータの回転子の回転数が所定回転数に到達した場合にセンサレスモータをクローズドループ制御する。また、作動油温度が第1設定温度より低い場合は、第1始動転流周波数と同一又はそれより低い第2始動転流周波数でのオープンループ制御により起動制御と運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−110345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の制御装置は、上述のように作動油温度を測定し、作動油温度が低い場合には転流周波数を下げてセンサレスモータの起動を行っている。このため、作動油の温度を測定する温度センサが必要となり、コストアップの要因ともなる。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、確実にモータを起動することが可能であり、低コストのモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るモータ制御装置の特徴構成は、3相モータの起動時に、予め設定された周波数を有するPWM信号でインバータが有するスイッチング素子を制御するPWM制御部と、前記3相モータが有する各端子の端子電圧と、予め設定された基準電圧とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づいて前記3相モータが有するロータの位置を検出する検出部と、前記検出部が前記周波数に対応する時間内に前記ロータの位置が検出できなかった場合に、前記PWM信号の周波数を、前記検出できなかった場合のPWM信号の周波数と異なる周波数に設定する周波数設定部と、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、予め設定された周波数を有するPWM信号に基づき3相モータが起動しなかった場合には、異なる周波数を有するPWM信号をインバータに供給するので、確実に3相モータを起動することができる。また、本特徴構成であれば、温度センサを備える必要がないので、コストアップすることがない。したがって、モータ制御装置を低コストで実現できる。また、上記のように温度センサを備えずに構成されるので、温度センサに付随する配線等が不要となる。したがって、材料コストも低減できる。
【0009】
また、前記周波数設定部は、前記PWM信号の周波数を、前記検出できなかった場合のPWM信号の周波数よりも順次高い周波数に設定すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、3相モータが起動しない場合には、3相モータが起動するまで、PWM信号の周波数を予め設定された周波数から順次高くしていくので、確実に3相モータを起動することができる。
【0011】
或いは、前記周波数設定部は、前記PWM信号の周波数を、前記予め設定された周波数を基準に、高い周波数及び低い周波数に順次切り替える構成としても良い。
【0012】
このような構成とすれば、3相モータが起動しない場合には、3相モータが起動するまで、PWM信号の周波数を予め設定された周波数を基準に変更するので、確実に3相モータを起動することができる。
【0013】
また、前記予め設定された周波数が、前記3相モータに関する環境因子に基づき設定される構成としても良い。
【0014】
このような構成とすれば、3相モータが起動しない場合には、例えば環境温度や、3相モータが停止されてから現在までの時間や、オイルポンプのオイル量等に基づき設定された周波数を基準に変更するので、3相モータが起動する周波数をいち早く見つけ易い。したがって、3相モータを確実に、且つ、素早く起動することが可能となる。
【0015】
ここで、オイルポンプにより流通されるオイルは、温度により粘度が変化する。このため、本発明によれば、前記3相モータが、オイルポンプの動力源として使用される場合であっても、確実に3相モータを起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】モータ制御装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】PWM信号の一例を示す図である。
【図3】各端子の電圧波形の一例を示す図である。
【図4】各コンパレータの出力を示す図である。
【図5】ロータ位置検出信号の一例を示す図である。
【図6】理想状態におけるロータ位置の検出結果である。
【図7】PWM信号の周波数の変更例について模式的に示す図である。
【図8】その他の実施形態に係るPWM信号の周波数の変更例について模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明に係るモータ制御装置100は、センサレスモータを確実に起動する機能を備えている。図1には、このようなモータ制御装置100の構成を模式的に示した図が示される。本実施形態では、センサレスモータとして、ロータに永久磁石が備えられ、ステータにステータコイルが備えられている3相モータを例に挙げて説明する。モータ制御装置100は、PWM制御部1、周波数設定部2、検出部3、基準電圧生成部4、比較部5を備えて構成される。
【0018】
3相モータ10は、図示はしないが永久磁石を備えるロータと、当該ロータに回転力を与えるための磁束を発生させるステータとを備える。このステータは、U相、V相、W相の3相のステータコイル7U、7V、7Wを備える。各ステータコイルはΔ結線で接続され、インバータ11に接続される。本実施形態における3相モータ10は、オイルポンプ30の動力源として使用される。
【0019】
インバータ11は3相モータ10を制御対象とし、直流電圧を交流電圧に変換する。このため、インバータ11は周波数変換部として機能する。直流電圧はインバータ11に接続される電源12から供給される。インバータ11は電源12の正端子側に接続されたハイサイドのトランジスタQ1、Q3、Q5と、電源12の負端子側に接続されたローサイドのトランジスタQ2、Q4、Q6と、の合計6つのトランジスタQ1−Q6で構成される。
【0020】
例えば、トランジスタQ1及びトランジスタQ4のみを同時にオンさせると、3相モータ10が有する3つの端子のうち2つの端子間に通電が行われる。3つの端子とは、U相端子41、V相端子42、及びW相端子43である。トランジスタQ1及びトランジスタQ4のみを同時にオンさせた場合に係る2つの端子とは、V相端子42及びW相端子43である。したがって、トランジスタQ1及びトランジスタQ4のみを同時にオンさせると、V相端子42とW相端子43との間に通電される。この通電により、トランジスタQ1、ステータコイル7V、トランジスタQ4を介して電流が流れると共に、トランジスタQ1、ステータコイル7U、ステータコイル7W、トランジスタQ4を介して電流が流れる。
【0021】
一方、トランジスタQ3及びトランジスタQ2のみを同時にオンさせた場合にも、V相端子42とW相端子43との間に通電される。この場合には、トランジスタQ3、ステータコイル7V、トランジスタQ2を介して電流が流れると共に、トランジスタQ3、ステータコイル7W、ステータコイル7U、トランジスタQ2を介して電流が流れる。
【0022】
ここで、トランジスタQ1及びトランジスタQ4のみをオンさせた場合と、トランジスタQ3及びトランジスタQ2のみをオンさせた場合とでは、各ステータコイルに流れる電流の方向が異なる。そのため、各ステータコイルには電流の流れる方向に応じた磁束が生じ、当該磁束とロータが備える永久磁石との間で引力及び斥力が発生することとなる。したがって、トランジスタQ1−Q6の中から選択されたハイサイドのトランジスタとローサイドのトランジスタとで形成される上下対トランジスタを順次オンさせることにより、ロータが回転力を得ることができる。
【0023】
なお、トランジスタQ1−Q6には、コレクタ端子にカソード端子が、またエミッタ端子にアノード端子が接続されるように夫々ダイオードD1−D6が配設されている。ここで、各ステータコイルには、通電中にエネルギーが蓄えられるが、これらのダイオードD1−D6は各ステータコイルの通電を停止した際に当該エネルギーに起因して発生する逆起電力によって周辺部品に悪影響を及ぼさないようにするために配設されるものである。
【0024】
このようなトランジスタQ1−Q6に対する一連の制御は、PWM制御部1により行われる。PWM制御部1は、予め設定された周波数を有するPWM信号でインバータ11が有するスイッチング素子を制御する。インバータ11が有するスイッチング素子とは、本実施形態では上述のトランジスタQ1−Q6が相当する。したがって、PWM制御部1は、インバータ11が有するトランジスタQ1−Q6をPWM制御によって動作させる。
【0025】
PWM制御部1から出力されるPWM信号の一例が図2に示される。(a)はトランジスタQ1に対するPWM信号であり、(b)はトランジスタQ3に対するPWM信号であり、(c)はトランジスタQ5に対するPWM信号である。また、(d)はトランジスタQ2に対するPWM信号であり、(e)はトランジスタQ4に対するPWM信号であり、(f)はトランジスタQ6に対するPWM信号である。特に、トランジスタQ1、Q3、及びQ5に対するPWM信号は、複数のパルスを含んで構成され、このようなパルスに応じて各トランジスタの導通状態(オン/オフ)が制御される。
【0026】
PWM制御部1は、例えば、2.5Vや3.3V等の低電圧で動作するマイクロコンピュータによって構成される。そのため、トランジスタQ1−Q6に流れる電流やトランジスタQ1−Q6の電気的特性によっては、トランジスタQ1−Q6をオンさせるためのドライブ能力が不足する虞がある。したがって、PWM制御部1とインバータ11との間には、PWM制御部1のPWM信号のドライブ能力を上げるドライバ(図示せず)が配設される。尚、ドライバは、ドライバICで構成しても良いし、トランジスタで組まれたプッシュプル回路で構成しても良い。もちろん、PWM制御部1から出力されるPWM信号のドライブ能力が高い場合には、ドライバを備えずに構成することも当然に可能である。
【0027】
比較部5は、3相モータ10が有する各端子の端子電圧と、予め設定された基準電圧Vrefとを比較する。3相モータ10が有する各端子とは、上述のU相端子41、V相端子42、及びW相端子43が相当する。このような端子の電圧波形が、図3に示される。図3(a)はU相端子41の電圧波形であり、図3(b)はV相端子42の電圧波形であり、図3(c)はW相端子43の電圧波形である。
【0028】
基準電圧Vrefは、基準電圧生成部4により生成され、本実施形態では電源12の出力電圧の1/2が相当する。より具体的には、基準電圧生成部4は、電源12の正端子と負端子との間に、同一の抵抗値を有する一対の抵抗器Rを備えて構成される。基準電圧Vrefは、一対の抵抗器Rにより分圧して生成される。このような基準電圧Vrefは、図3(a)−(c)においては破線で示される。
【0029】
比較部5は、3つのコンパレータ5U,5V,5Wから構成され、各コンパレータ5U,5V,5Wの反転端子には基準電圧Vrefが入力される。一方、非反転端子には、夫々U相端子41、V相端子42、及びW相端子43の電圧が入力される。これにより、コンパレータ5Uは基準電圧VrefとU相端子41の端子電圧との大小関係を比較する。また、コンパレータ5Vは基準電圧VrefとV相端子42の端子電圧との大小関係を比較する。更に、コンパレータ5Wは基準電圧VrefとW相端子43の端子電圧との大小関係を比較する。各コンパレータ5U,5V,5Wは、図4に示されるように、夫々の端子電圧が、基準電圧Vrefよりも大きい場合にHighを出力し、各コンパレータ5U,5V,5Wは、夫々の端子電圧が、基準電圧Vrefよりも小さい場合にLowを出力する。各出力信号は、後述する検出部3に伝達される。
【0030】
検出部3は、比較部5の比較結果に基づいて3相モータ10が有するロータの位置を検出する。ここで、各コンパレータ5U,5V,5Wの出力は、図4に示されるように、PWM信号と同様にスイッチングする波形となる。検出部3は、このような波形に基づき、ロータが特定の位置に達したことを検出する。このような検出は、公知の技術を利用することにより容易に行うことができる。したがって、ここでは説明は省略する。検出部3により得られた検出結果は、図5に示されるようなロータ位置検出信号として、PWM制御部1に伝達される。図5(a)はU相端子41の電圧波形に基づいて検出されたロータ位置検出信号であり、図5(b)はV相端子42の電圧波形に基づいて検出されたロータ位置検出信号であり、図5(c)はW相端子43の電圧波形に基づいて検出されたロータ位置検出信号である。PWM制御部1は、検出部3からの検出結果に基づきインバータ11が有するトランジスタQ1−Q6のオン/オフを制御する。この制御についても、周知技術であるので説明は省略する。
【0031】
ここで、上述のように、本実施形態では、3相モータ10はオイルポンプ30の動力源として用いられる。オイルポンプ30の制御対象であるオイルは、環境温度により粘度が著しく異なる。すなわち、オイルの粘度は、環境温度が高い場合より低い場合の方が高くなる。したがって、3相モータ10は、環境温度により負荷が異なることになる。例えば、PWM信号の切り替えタイミングがオイルの粘度に対して適切であれば、3相モータ10は適切に回転制御される。しかしながら、PWM信号の切り替えタイミングがオイルの粘度に対して適切でなければ、回転し過ぎたり、回転しなかったりする場合がある。このため、本実施形態に係るモータ制御装置100は、所定の周波数のPWM信号で3相モータ10が適切に起動しない場合には、異なる周波数のPWM信号での起動を試みるように構成されている。以下、このような構成について説明する。
【0032】
まず、PWM制御部1は、3相モータ10の起動時に、予め設定された周波数を有するPWM信号でインバータ11が有するトランジスタQ1−Q6を制御する。トランジスタQ1−Q6の制御については、上述の通りであるので、ここでは説明は省略する。予め設定された周波数とは、本実施形態では、PWM制御部1がインバータ11に供給可能な最も低い周波数である。PWM制御部1は、このような最も低い周波数からなるPWM信号をインバータ11に供給する。
【0033】
最も低い周波数からなるPWM信号をインバータ11に供給した結果、所定の時間内に、ロータ位置検出信号の立上り及び立下りが14回検出できた場合に、3相モータ10は適切に起動したことになる。所定の時間とは、後述する「PWM信号の周波数に対応する時間」であり、本実施形態では、図2(a)−(f)に示されるPWM制御を二通り行うのに要する時間(図6のT1)と、図2(a)−(f)に示されるPWM制御を一通り行うのに要する時間の1/3の時間(図6のT2)との和(図6のT3)である。例えば、PWM信号の周期がf0〔Hz〕の場合には、(7/3)×(1/f0)〔秒〕となる。ここで、3相モータ10が適切に回転していれば、PWM信号の1周期分(T1の1/2の間)においてロータ位置検出信号の立上り及び立下りが6回(#01−#06)検出される。したがって、3相モータ10が適切に起動されれば、図6に示されるように、時間T3の間に、ロータ位置検出信号の立上り及び立下りが14回(#01−#14)検出される。
【0034】
一方、検出部3がPWM信号の周波数に対応する時間内にロータの位置が検出できなかった場合に、周波数設定部2はPWM信号の周波数を、ロータの位置が検出できなかった場合のPWM信号の周波数と異なる周波数に設定する。周波数に対応する時間とは、図6のT3である。検出部3は、3相モータ10が4極6スロットのモータであれば、ロータが1回転した時を起動したと定義した場合、時間T3の間にロータ位置検出信号の立上り及び立下りが14回検知できなければ、周波数設定部2に検出できなかったことを示す未検出信号を後述する周波数設定部2に伝達する。
【0035】
周波数設定部2は、検出部3から未検出信号が伝達されると、PWM信号の周波数を、検出できなかった場合のPWM信号の周波数よりも順次高い周波数に設定する。周波数設定部2は、検出できなかった場合のPWM信号の周波数をf0〔Hz〕とすると、PWM信号の周波数をf0〔Hz〕よりも高い周波数f1〔Hz〕に設定する(図7参照)。ここで、f1〔Hz〕は、例えばf0〔Hz〕の1.1倍とすると好適である。このように、PWM信号の周波数を僅かに高くすることにより、3相モータ10が回り過ぎることを防止できる。周波数設定部2により設定された周波数は、PWM制御部1に伝達される。PWM制御部1は、設定された周波数で、再度、PWM信号を供給し、上記と同様に、周波数f1〔Hz〕に対応する時間の間に、ロータ位置検出信号の立上り及び立下りを検出する。このように変更した場合でも14回検出できない場合には、更に高い周波数f2〔Hz〕に設定する。以下、時間T3の間にロータ位置検出信号を14回検出するまで処理を繰り返す。図7には、周波数f4〔Hz〕の場合に、ロータ位置検出信号の立上り及び立下りが14回検出できたことが示されている(図7(a))。このように周波数を順次高くすることにより、確実に3相モータ10を起動させることが可能となる。
【0036】
このように本モータ制御装置100によれば、予め設定された周波数を有するPWM信号に基づき3相モータ10が起動しなかった場合には、異なる周波数を有するPWM信号をインバータ11に供給するので、確実に3相モータ10を起動することができる。また、本特徴構成であれば、温度センサを備える必要がないので、コストアップすることがない。したがって、モータ制御装置を低コストで実現できる。また、上記のように温度センサを備えずに構成されるので、温度センサに付随する配線等が不要となる。したがって、材料コストも低減できる。
【0037】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、周波数設定部2は、PWM信号の周波数を、ロータ位置検出信号が検出できなかった場合のPWM信号の周波数よりも順次高い周波数に設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、周波数設定部2が、PWM信号の周波数を、予め設定された周波数を基準に、高い周波数及び低い周波数に順次切り替える構成とすることも可能である。係る場合、上述の予め設定された周波数は、3相モータ10の起動に適した理論上の周波数等を設定しておくと好適である。このような周波数として、例えば3相モータ10に関する環境因子に基づき設定すると好適である。
【0038】
環境因子に基づき設定するとは、上述のような環境温度や、3相モータ10が停止されてから現在までの時間、オイルポンプ30のオイル量等に基づき設定すると好適である。このような環境因子に基づき設定された周波数f0〔Hz〕で適切にロータ位置検出信号を検出できなかった場合には、当該周波数f0〔Hz〕よりも高く(例えばf1〔Hz〕)設定し、それでも起動しない場合には低く(例えばf2〔Hz〕)設定すると好適である(図8参照)。このような制御を繰り返すことにより、確実に3相モータ10を起動することができる。もちろん、適切にロータ位置検出信号を検出できなかった場合には、当該理論上の周波数f0〔Hz〕よりも低く(例えばf2〔Hz〕)設定し、それでも起動しない場合には高く(例えばf1〔Hz〕)設定することも可能である。このように、周波数を発散方向に設定することも可能であるし、例えば特定の周波数に対して収束するように設定することも可能である。
【0039】
上記実施形態では、3相モータ10は、オイルポンプ30の動力源として使用されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。3相モータ10が、オイルポンプ30以外の機器の動力源として用いられる場合であっても、本発明を適用することは当然に可能である。
【0040】
上記実施形態では、3相モータ10のステータコイル7U,7V,7Wが、Δ結線されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。ステータコイル7U,7V,7WがY結線されている3相モータ10に本発明を適用することも当然に可能である。
【0041】
上記実施形態では、基準電圧Vrefが、電源12の出力電圧の1/2が相当するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。基準電圧生成部4は、異なる抵抗値を有する2つの抵抗器Rを備えて構成することにより、電源12の出力電圧の1/2と異なる基準電圧Vrefを設定することが可能である。
【0042】
上記実施形態では、比較部5が、3つのコンパレータ5U,5V,5Wで構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、U相端子41、V相端子42、及びW相端子43の電圧波形を一つの波形に合成することで、比較部5を一つのコンパレータで構成することも当然に可能である。
【0043】
上記実施形態では、PWM制御を二通り行うのに要する時間T1と、PWM制御を一通り行うのに要する時間の1/3の時間T2との和の時間T3中に、ロータ位置検出信号の立上り及び立下りが14回検出できた場合に3相モータ10が起動したことが確認されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。時間T3における14回のロータ位置検出信号の立上り及び立下りは、単なる例示であり、他の条件で設定することも当然に可能である。また、PWM制御を一通り行うのに要する時間を基準に設定することも可能であるし、三通り以上行うのに要する時間を基準に設定することも可能である。更には、PWM制御を一通り行うのに要する時間の1/3の時間T2を付加しない時間を基準に設定することも当然に可能である。
【0044】
本発明は、モータを確実に起動するモータ制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:PWM制御部
2:周波数設定部
3:検出部
5:比較部
10:3相モータ
11:インバータ
30:オイルポンプ
41:U相端子
42:V相端子
43:W相端子
100:モータ制御装置
Q1−Q6:トランジスタ(スイッチング素子)
Vref:基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相モータの起動時に、予め設定された周波数を有するPWM信号でインバータが有するスイッチング素子を制御するPWM制御部と、
前記3相モータが有する各端子の端子電圧と、予め設定された基準電圧とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて前記3相モータが有するロータの位置を検出する検出部と、
前記検出部が前記周波数に対応する時間内に前記ロータの位置が検出できなかった場合に、前記PWM信号の周波数を、前記検出できなかった場合のPWM信号の周波数と異なる周波数に設定する周波数設定部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記周波数設定部は、前記PWM信号の周波数を、前記検出できなかった場合のPWM信号の周波数よりも順次高い周波数に設定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記周波数設定部は、前記PWM信号の周波数を、前記予め設定された周波数を基準に、高い周波数及び低い周波数に順次切り替える請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記予め設定された周波数が、前記3相モータに関する環境因子に基づき設定される請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記3相モータは、オイルポンプの動力源として使用される請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−253972(P2012−253972A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126360(P2011−126360)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】