説明

モータ用のコア部材、モータおよび電機子の製造方法

【課題】インナーロータ型のモータに関して、容易に導線を巻回することができるとともに製造工程が煩雑とならない電機子の製造技術を提供する。
【解決手段】インナーロータ型のモータ用の電機子は、複数のコア要素31を有するコア部材30、および、各コア要素31に導線を巻回することにより設けられた複数のコイル35を備える。複数のコア要素31は、界磁用磁石の外周面に沿って設定される仮想的な円周上から放射状に突出する。複数のコア要素31は、固定プレート32を介して、仮想的な円周上において物理的に分離され、磁気的にもほぼ分離されつつ互いに固定される。このため、コア部材30の製造工程を煩雑とすることなく、アウターロータ型のモータの電機子の場合と同様に外側からコア要素31に容易に導線を巻回することができる。その結果、インナーロータ型のモータの製造工程を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーロータ型のモータに関し、特に、電機子のコア部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーロータ型のモータのコア部材では、円筒形のコアバックの内周に内側に向かって突出する複数のティースが設けられ、これらのティースに導線が巻回される。巻線は、コア部材の中心側の開口から手作業により、あるいは、ティース間の狭い溝状のスロットに巻線機のニードルを挿入することにより行われる。さらに、専用のインサータを用いて、予め別途コイル状に巻かれた導線にティースを挿入する手法が採用される場合もある。
【0003】
しかしながら、インナーロータ型のモータでは、ティース間のスロットが中心軸に沿う狭い空間に向かって開口するため、手作業で巻線を行うには熟練を要し、巻線機を使用する場合もニードルを移動する空間を確保するために巻線量が制限されてしまう。インサータを用いる場合は、コイルの形状を変形させながらティースを挿入するため、占積率を十分に大きくすることができず、また、エンドコイル部分にコアからはみ出す余計な部分がある程度必要となってしまう。
【0004】
以上の問題を解決するために、例えば、特許文献1では分離されたティースを内側からリング状の支持部材で一時的に支持し、この状態でアウターロータ型のモータの電機子の場合と同様に効率よく巻線を行い、その後、コアバック(ヨーク部)をティースの外側に嵌め込んで一体化した上で内側の支持部材を外すことにより、インナーロータ側の電機子が製造される。
【特許文献1】特開平2−7851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電機子の製造方法は、容易にコイルを形成することができるという点で優れているが、内側の支持部材の取り付け、外側のコアバックの取り付け、および、支持部材の取り外しの作業が必要であるため、作業工程が煩雑になってしまう。なお、従来のインナーロータ型の電機子では、1つのティースに巻回した導線をコアバックに沿って隣接するティースへと導く際に導線を引っかける突起部をコアバックの上面に設けるために、突起部を有する大型のインシュレータを用いることも必要になる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、インナーロータ型のモータに関して、容易に導線を巻回することができるとともに製造工程が煩雑とならない電機子の製造技術を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、インナーロータ型のモータ用のコア部材であって、所定の円周上から放射状に突出する複数のコア要素と、前記所定の円周上において前記複数のコア要素を磁気的にほぼ分離しつつ前記複数のコア要素を互いに固定する固定部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコア部材であって、前記固定部が、前記所定の円周に沿うリング状の非磁性体である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のコア部材であって、前記固定部が、前記複数のコア要素の上面を互いに固定する上側プレートと、前記複数のコア要素の下面を互いに固定する下側プレートとを備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、インナーロータ型のモータであって、請求項1ないし3のいずれかに記載のコア部材の前記複数のコア要素に導線を巻回した電機子と、前記電機子が取り付けられるステータ部材と、前記コア部材の中央に挿入される界磁用磁石と、前記界磁用磁石が取り付けられ、前記電機子と前記界磁用磁石との間の磁気的作用により前記ステータ部材に対して回転するロータ部材とを備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、インナーロータ型のモータ用の電機子の製造方法であって、所定の円周上から放射状に突出する複数のコア要素と、前記所定の円周上において前記複数のコア要素を磁気的にほぼ分離しつつ前記複数のコア要素を互いに固定する固定部とを備えるコア部材を準備する工程と、前記複数のコア要素に導線を巻回する工程とを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電機子の製造方法であって、前記固定部が、前記所定の円周に沿うリング状の非磁性体である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の電機子の製造方法であって、前記固定部が、前記複数のコア要素と同じ材料にて形成され、前記所定の円周に沿うリング状の磁性体であり、前記コア部材を準備する工程が、板状のコア材料を金型で打ち抜いて磁性体が積層された前記複数のコア要素を形成する工程と、前記コア材料を他の金型で打ち抜いて前記固定部を形成すると共に、前記複数のコア要素を前記固定部に固定する工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、コア部材の製造工程を煩雑とすることなく、コア要素に容易に導線を巻回することができる。請求項2および6の発明では、コア部材の磁力特性を向上することができる。請求項3の発明では、複数のコア要素を容易に固定することができる。
【0015】
請求項4の発明では、モータの製造工程を簡素化することができる。請求項7の発明では、コア部材の形成工程を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るインナーロータ型のモータ1を示す縦断面図である。モータ1は図1中において上側が小さく開口し、下側が大きく開口する円筒状のハウジング11と、下側の開口の中央部以外を塞ぐカバー板12とに覆われ、ハウジング11の上側の開口およびカバー板12の開口にはそれぞれボール軸受131,132が取り付けられ、ボール軸受131,132により、シャフト21が回転可能に支持される。
【0017】
シャフト21にはハウジング11内において円筒状のロータヨーク22が取り付けられ、ロータヨーク22の外周面に多極着磁された界磁用磁石23が固定される。一方、ハウジング11の内周面には電機子3が取り付けられ、電機子3はハウジング11の内周面からシャフト21(および界磁用磁石23)に向かって伸びる複数のコア要素(いわゆる、ティース)31、および、複数のコア要素31のそれぞれに導線を巻回することにより設けられた複数のコイル35を備える。コイル35は、コア要素31の外周に沿って上下方向に向かって導線が巻かれて形成される。その他、電機子3の構造の詳細については後述する。
【0018】
電機子3のカバー板12側にはハウジング11の内周面にインシュレータ51が固定され、界磁用磁石23および電機子3とカバー板12との間に位置するように回路基板52がインシュレータ51に取り付けられる。電機子3と回路基板52とはインシュレータ51に取り付けられた渡り線を介して電気的に接続される。また、インシュレータ51は回路基板52の取付位置を決定する役割も果たす。回路基板52上の界磁用磁石23の真下には、電機子3に与えられる駆動電流を制御する駆動回路やホールセンサ521が取り付けられ、ホールセンサ521にて界磁用磁石23の回転方向および回転位置が検出されて電機子3への駆動電流が制御される。すなわち、モータ1はいわゆるブラシレスモータとなっている。
【0019】
モータ1では、回路基板52を介して電機子3に供給される駆動電流が制御され、電機子3(すなわち、後述のコア部材30)の中央にロータヨーク22と共に挿入される界磁用磁石23と電機子3との間の磁気的作用によって回転力が発生し、ロータヨーク22がシャフト21と共にハウジング11に対して回転する。
【0020】
図2は電機子3のコア部材30を示す平面図である。コア部材30は、図3に示す複数のコア要素31を図4に示す固定プレート32で固定した構造をしている。図3に示すように複数のコア要素31は、界磁用磁石23(図1参照)の外周面に沿って設定される仮想的な円周(以下、「仮想円」と呼ぶ。)30a上から放射状に突出する。各コア要素31は磁性体である珪素鋼板を積層した構造となっており、外周側が周方向に沿って突出し、平面図では略T字状となる。
【0021】
リング状の固定プレート32は、コア要素31と同じ材料である珪素鋼板にて形成され、図4に示すように仮想円30aに沿うリング部321、および、リング部321から放射状に外側に突出する複数の突出部322を有する。複数の突出部322は図2に示すように複数のコア要素31にそれぞれ対応する。
【0022】
図5は1つのコア要素31およびその近傍における固定プレート32を示す斜視図である。板状の磁性体が積層されたコア要素31の上面、下面およびその中間にはそれぞれ固定プレート32が取り付けられる。コア要素31および3つの固定プレート32の突出部322には、ダボ33が挿入される穴が形成されており、ダボ33と上下の突出部322とがカシメにより締結されることにより、複数のコア要素31が、3つの固定プレート32を介して、仮想円30a上において物理的に分離され、磁気的にもほぼ分離されつつ互いに固定される。なお、複数のコア要素31を互いに固定する固定プレート32は磁性体ではあるが、各コア要素31に対して3ヶ所で接触しているのみであるため、コア部材30の磁気的特性は大きく変化することはなく、複数のコア要素31は磁気的にほぼ分離しているといえる。
【0023】
図6は、電機子3の製造工程の流れを示す図である。電機子3が製造される際には、まず、固定プレート32用の金型により珪素鋼板(後述するように、この材料を用いてコア要素31も形成されることから、以下、「コア材料」という。)が打ち抜かれ、固定プレート32が形成されて金型の下方に設けられた可動式の積層部に保持される(ステップS11)。固定プレート32は、コア部材30が形成された際に、複数のコア要素31の下面を互いに固定する下側プレートの役割を果たす。
【0024】
図7は、板状のコア材料から打ち抜かれた直後の固定プレート32を示す平面図である。図7に示すように、固定プレート32のリング部321の内側には中央部323が設けられ、各突出部322と中央部323とは細い接続部3231により接続される。後述するように、中央部323は、コア部材30の形成過程において除去される。
【0025】
続いて、固定プレート32を保持した積層部がコア要素31用の金型の下方へと移動し、コア要素31用の金型によりコア材料が打ち抜かれ、図8に示す部材(以下、「コア要素プレート」という。)310が形成される。コア要素プレート310は、図3に示すコア要素31の前段階の部材である。積層部では、所定の個数だけ形成されたコア要素プレート310が、位置決めされて固定プレート32上に順次積層される(ステップS12)。
【0026】
図8に示すように、コア要素プレート310は、図7に示す固定プレート32の中央部と同一の形状を有する中央部323、および、接続部3231を介して中央部323に接続される複数のコア要素片311を備える。コア要素片311は、仮想円30a上から放射状に突出し、積層部にて積層されることにより各コア要素31(図2参照)を形成する。図7および図8に示すように、固定プレート32の各突出部322、および、コア要素プレート310の各コア要素片311には、固定プレート32およびコア要素プレート310が金型によりコア材料から打ち抜かれる前に、ダボ33(図5参照)が挿入される穴330が予め形成されており、積層部では、固定プレート32および所定の個数のコア要素プレート310を積層する際に、これらの穴330が重なるように適宜位置決めが行われる。
【0027】
所定の個数のコア要素プレート310が積層されると、積層部が固定プレート32用の金型の下方へと移動し、コア材料が金型により打ち抜かれて固定プレート32が形成される(ステップS13)。固定プレート32は、積層部に積層されたコア要素プレート310上に位置決めされて保持され、複数のコア要素31の中間部分を互いに固定する中間プレートの役割を果たす。
【0028】
続いて、積層部が再びコア要素31用の金型の下方へと移動し、ステップS12と同様に、所定の個数のコア要素プレート310がコア材料から打ち抜かれて形成され、中間プレートとなる固定プレート32上に位置決めされて順次積層される(ステップS14)。所定の個数のコア要素プレート310が積層されると、積層部が再び固定プレート32用の金型の下方へと移動し、コア材料が金型により打ち抜かれて固定プレート32が形成される(ステップS15)。形成された固定プレート32は、ステップS14において積層されたコア要素プレート310上に位置決めされて積層され、複数のコア要素31の上面を互いに固定する上側プレートの役割を果たす。
【0029】
上側プレートとなる固定プレート32が積層部に積層されると、固定プレート32の各突出部322、および、コア要素プレート310の各コア要素片311に形成されている穴330(図7および図8参照)にダボ33(図5参照)が挿入され、ダボ33と上下の固定プレート32の各突出部322とがカシメにより締結されることにより、3つの固定プレート32を介して複数のコア要素プレート310が固定される(ステップS16)。そして、一体的に固定された固定プレート32およびコア要素プレート310から中央部323および接続部3231をまとめて打ち抜いて除去することにより、磁性体であるコア要素片311が積層された複数のコア要素31が形成され、これら複数のコア要素31が物理的に分離され、磁気的にもほぼ分離されつつ3つの固定プレート32に固定されたコア部材30が準備される(ステップS17)。
【0030】
そして、図2に示すコア部材30のコア要素31および固定プレート32が樹脂等の絶縁材料により被覆された後、複数のコア要素31のそれぞれに巻線機により(あるいは、他の方法により)コア部材30の外側から導線が巻回されることにより、複数のコイル35が形成されて電機子3の製造が終了する(ステップS18)。
【0031】
モータ1では、リング部321から放射状に突出する複数のコア要素31を固定プレート32により磁気的にほぼ分離しつつ互いに固定することにより、コア部材30の製造工程を煩雑とすることなく、アウターロータ型のモータの電機子の場合と同様に、コア要素31に容易に導線を巻回することができる。その結果、インナーロータ型のモータ1の製造工程を簡素化することができる。また、複数のコア要素31は上面側および下面側から固定プレート32により挟み込んで容易に固定される。
【0032】
モータ1では、固定プレート32とコア要素31とが同一材料(すなわち、珪素鋼板)にて形成されるため、固定プレート32とコア要素プレート310とを同一工程で形成して順次積層することができる。その結果、コア部材30の形成工程を簡素化することができ、モータ1の製造コストを低減することができる。また、固定プレート32とコア要素プレート310とを容易に位置合わせして積層することができる。さらに、モータ1では、複数のコア要素片311が中央部323により接続された状態で(すなわち、コア要素プレート310として)積層され、固定プレート32により固定された後に中央部323が除去されて複数のコア要素31が形成されるため、複数のコア要素31を固定プレート32にさらに容易に、かつ精度良く位置合わせして固定することができる。
【0033】
コア部材30では、1つのコア要素31に巻回された導線を隣接するコア要素31に導く場合に、導線を固定プレート32のリング部321に沿わせて導くことができるため、従来のインナーロータ型のモータにおいてティースの外側のリングであるコアバック上面に必要とされている導線を引っかけるための突起部を省略することができる。
【0034】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るインナーロータ型のモータの電機子の製造工程の流れを示す図である。第2の実施の形態に係るモータでは、3つの固定プレート32がコア要素31と異なる材料であるステンレス等の非磁性体(例えば、SUS303)により形成される。他の構成は、図1に示す第1の実施の形態に係るモータ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0035】
第2の実施の形態に係るモータの電機子3が製造される際には、まず、図10に示すように、コア要素31用の金型により珪素鋼板91から多数のコア要素片311が打ち抜かれて形成され、所定個数のコア要素片311が積層されてブロック状とされる。以下、ブロック状に積層された複数のコア要素片311を「コア要素ブロック」という。本実施の形態では、18個のコア要素ブロックが形成される(ステップS21)。
【0036】
複数のコア要素ブロックが形成されると、図11に示すように、固定プレート32用の金型によりステンレス鋼板92が打ち抜かれ、固定プレート32が形成される(ステップS22)。固定プレート32は、コア部材30(図2参照)が形成された際に、複数のコア要素31の下面を互いに固定する下側プレートの役割を果たす。固定プレート32の各突出部322上には、コア要素ブロックが位置決めされつつ載置される(ステップS23)。図10および図11に示すように、各コア要素片311、および、固定プレート32の各突出部322には、ダボ33(図5参照)が挿入される穴330が予め形成されており、コア要素ブロックが形成される際、および、固定プレート32上にコア要素ブロックが載置される際には、これらの穴330が重なるように適宜位置決めが行われる。
【0037】
固定プレート32上に9個のコア要素ブロックが載置されると、固定プレート32用の金型によりステンレス鋼板92が打ち抜かれて中間プレートとなる固定プレート32が形成され、下側プレートとなる固定プレート32上に載置されたコア要素ブロック上に位置決めしつつ載置される(ステップS24)。続いて、中間プレートとなる固定プレート32の各突出部322上にコア要素ブロックが位置決めされつつ載置される(ステップS25)。次に、固定プレート32用の金型によりステンレス鋼板92が打ち抜かれて上側プレートとなる固定プレート32が形成され、中間プレートとなる固定プレート32上に載置されたコア要素ブロック上に位置決めされつつ載置される(ステップS26)。
【0038】
その後、固定プレート32の各突出部322、および、コア要素ブロックを構成するコア要素片311に形成されている穴330(図10および図11参照)にダボ33が挿入され、ダボ33と上下の固定プレート32の各突出部322とがカシメにより締結されることにより、3つの固定プレート32を介して複数のコア要素ブロックが固定され、物理的に分離されつつ磁気的にもほぼ分離された複数のコア要素31を有するコア部材30が準備される(ステップS27)。
【0039】
そして、コア部材30のコア要素31および固定プレート32が樹脂等の絶縁材料により被覆された後、複数のコア要素31のそれぞれに巻線機により(あるいは、他の方法により)コア部材30の外側から導線が巻回されることにより、複数のコイル35が形成されて電機子3の製造が終了する(ステップS28)。なお、コア要素片311および固定プレート32の形成は、別々のプレス機により並行して行われてもよい。また、コア部材30の形成に必要な全てのコア要素片311および固定プレート32が形成された後に、コア要素ブロックの形成および固定プレート32上への載置が行われてもよい。
【0040】
また、コア要素ブロックを形成して絶縁材料により被覆した後に、非磁性体の固定プレート32上に載置して固定することによりコア部材30が形成されてもよい。この場合、コア要素31および固定プレート32を備える複雑な形状のコア部材30を絶縁材料により均一に被覆する必要が無く、絶縁材料によるコア要素31の被覆工程を簡素化することができる。このようにして形成されたコア部材30に導線を巻回することにより、効率良くモータの電機子3を製造することができる。
【0041】
第2の実施の形態に係るモータの電機子3では、複数のコア要素31を互いに固定する固定プレート32が非磁性体により形成されるため、複数のコア要素31を磁気的に一層分離することができる。その結果、コア部材30の磁気的特性を向上し、モータの駆動効率をさらに向上することができる。
【0042】
また、図10に示すように、多数のコア要素片311を珪素鋼板91上に効率良くレイアウトして打ち抜くことにより、珪素鋼板91を効率良く利用することができる。なお、珪素鋼板91上にレイアウトされる多数のコア要素片311は、必ずしも図10に示すように同じ方向を向く必要はなく、例えば、図10に示す多数のコア要素片311の一部が上下反対向きに配置され、上下方向に隣接するコア要素片311が互いに反対側を向くように配列されてもよい。
【0043】
第2の実施の形態に係るモータの電機子3では、第1の実施の形態に係るモータ1と同様に、リング部321(図2参照)から放射状に突出する複数のコア要素31を固定プレート32により磁気的にほぼ分離しつつ互いに固定することにより、コア部材30の製造工程を煩雑とすることなく、アウターロータ型のモータの電機子の場合と同様に、コア要素31に容易に導線を巻回することができる。その結果、インナーロータ型のモータの製造工程を簡素化することができる。また、複数のコア要素31は上面側および下面側から固定プレート32により挟み込んで容易に固定される。
【0044】
なお、図9に示す電機子の製造方法は、固定プレート32がコア要素片311と同一の材料(すなわち、珪素鋼板)により形成される場合に適用することもできる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0046】
例えば、固定プレート32の各突出部322とコア要素31との固定は、複数のダボ33によるカシメにより行われてもよい。また、さらに他の手法として、固定プレート32およびコア要素片311が積層される際に、順次接着剤等により接着されてもよい。
【0047】
複数のコア要素31の固定は、2つの固定プレート32のみによりコア要素31の上下面側から行われてもよく、その間に複数の固定プレート32が設けられて図5に示す場合よりも強固に固定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施の形態に係るインナーロータ型のモータを示す縦断面図である。
【図2】コア部材を示す平面図である。
【図3】複数のコア要素を示す平面図である。
【図4】固定プレートを示す平面図である。
【図5】1つのコア要素およびその近傍における固定プレートを示す斜視図である。
【図6】電機子の製造工程の流れを示す図である。
【図7】固定プレートを示す平面図である。
【図8】コア要素プレートを示す平面図である。
【図9】第2の実施の形態に係るモータの電機子の製造工程の流れを示す図である。
【図10】複数のコア要素片を示す平面図である。
【図11】固定プレートを示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
3 電機子
11 ハウジング
22 ロータヨーク
23 界磁用磁石
30 コア部材
30a 仮想円
31 コア要素
32 固定プレート
S11〜S18,S21〜S28 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーロータ型のモータ用のコア部材であって、
所定の円周上から放射状に突出する複数のコア要素と、
前記所定の円周上において前記複数のコア要素を磁気的にほぼ分離しつつ前記複数のコア要素を互いに固定する固定部と、
を備えることを特徴とするコア部材。
【請求項2】
請求項1に記載のコア部材であって、
前記固定部が、前記所定の円周に沿うリング状の非磁性体であることを特徴とするコア部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコア部材であって、
前記固定部が、
前記複数のコア要素の上面を互いに固定する上側プレートと、
前記複数のコア要素の下面を互いに固定する下側プレートと、
を備えることを特徴とするコア部材。
【請求項4】
インナーロータ型のモータであって、
請求項1ないし3のいずれかに記載のコア部材の前記複数のコア要素に導線を巻回した電機子と、
前記電機子が取り付けられるステータ部材と、
前記コア部材の中央に挿入される界磁用磁石と、
前記界磁用磁石が取り付けられ、前記電機子と前記界磁用磁石との間の磁気的作用により前記ステータ部材に対して回転するロータ部材と、
を備えることを特徴とするモータ。
【請求項5】
インナーロータ型のモータ用の電機子の製造方法であって、
所定の円周上から放射状に突出する複数のコア要素と、前記所定の円周上において前記複数のコア要素を磁気的にほぼ分離しつつ前記複数のコア要素を互いに固定する固定部とを備えるコア部材を準備する工程と、
前記複数のコア要素に導線を巻回する工程と、
を備えることを特徴とする電機子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電機子の製造方法であって、
前記固定部が、前記所定の円周に沿うリング状の非磁性体であることを特徴とする電機子の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の電機子の製造方法であって、
前記固定部が、前記複数のコア要素と同じ材料にて形成され、前記所定の円周に沿うリング状の磁性体であり、
前記コア部材を準備する工程が、
板状のコア材料を金型で打ち抜いて磁性体が積層された前記複数のコア要素を形成する工程と、
前記コア材料を他の金型で打ち抜いて前記固定部を形成すると共に、前記複数のコア要素を前記固定部に固定する工程と、
を備えることを特徴とする電機子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−50743(P2006−50743A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226965(P2004−226965)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】