説明

モータ

【課題】ギヤハウジングに収容される制御回路部材が発生する熱を外部に効率良く放熱することができるモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、回転軸10を有するモータ本体2と、モータ本体2に組み付けられ、回転軸10の回転を減速するためのウォーム22及びウォームホイール23を収容するギヤハウジング21と、電気回路部品を有しギヤハウジング21内に収容される制御回路部材25とを備える。ギヤハウジング21には、制御回路部材25の一部がギヤハウジング21の外部に突出するように開口部21fが形成され、且つ、該開口部21fを閉塞すべく外部に突出した制御回路部材25の一部を収容する収容部26aを有した金属製のカバー26が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路部材を備えるモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーウインドウ装置等に用いられるモータとしては、モータ本体と、モータ本体における回転軸の回転を減速するための減速機構がギヤハウジングに収容されてなる減速部と、ギヤハウジングに収容され電気回路部品を有する制御回路部材とを備えたものがある。
【0003】
そして、このようなモータとしては、ギヤハウジングの外部に露出される冷却フィンを制御回路部材に一方から対向配置して、制御回路部材が発生する熱を外部に放熱させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】独国特許出願公開第10020017号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなモータでは、冷却フィンが制御回路部材に対して一方から対向されるのみであるため、十分な放熱効果を得ることが困難であるという問題がある。尚、このことは、制御回路部材が有する電気回路部品の熱による破壊を発生させる原因となる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ギヤハウジングに収容される制御回路部材が発生する熱を外部に効率良く放熱することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、回転軸を有するモータ本体と、前記モータ本体に組み付けられ、前記回転軸の回転を減速するための減速機構を収容するギヤハウジングと、前記ギヤハウジング内に収容され電気回路部品を有する制御回路部材とを備えたモータにおいて、前記ギヤハウジングには、前記制御回路部材の少なくとも一部が前記ギヤハウジングの外部に突出するように開口部が形成され、且つ、該開口部を閉塞すべく外部に突出した前記制御回路部材の少なくとも一部を収容する収容部を有した金属製のカバーが取り付けられた。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のモータにおいて、前記制御回路部材は、前記ギヤハウジングに対して組み付けられた状態で前記モータ本体に対して電気的に接続可能とされる本体接続端子を有し、前記開口部は、その開口方向が前記モータ本体の軸方向及びその直交方向に対して傾斜し、前記本体接続端子は、前記制御回路部材を組み付けた状態で、前記開口部の開口方向外側から見て露出する位置に設定された。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のモータにおいて、前記カバー又は前記ギヤハウジングには、前記開口部と前記カバーとの間をシールするシール部材が設けられた。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記モータ本体は、給電用ブラシを支持可能なブラシホルダを有し、前記ブラシホルダには外部コネクタが嵌着されるコネクタ部が設けられ、前記制御回路部材は、前記ギヤハウジングに対して組み付けられた状態で前記コネクタ部に対して電気的に接続可能とされるコネクタ接続端子を有する。
【0010】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ギヤハウジングには、その開口部から突出した制御回路部材の少なくとも一部を収容する金属製のカバーが取り付けられる。このカバーは、熱源となる制御回路部材の少なくとも一部の周囲を複数の角度から取り囲むように収容するため、制御回路部材が発生する熱が外部に効率良く放熱される。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、制御回路部材は、ギヤハウジングに対して組み付けられた状態でモータ本体に対して電気的に接続可能とされる本体接続端子を有するため、制御回路部材をギヤハウジングに対して組み付けた状態でモータ本体と制御回路部材の電気回路部品とを容易に接続することができる。又、開口部は、その開口方向がモータ本体の軸方向及びその直交方向に対して傾斜し、本体接続端子は、制御回路部材を組み付けた状態で、開口部の開口方向外側から見て露出する位置に設定されるため、開口部を段差の無い簡単な形状としながら、本体接続端子の溶接やその接続箇所の確認を容易に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、カバー又はギヤハウジングには、開口部とカバーとの間をシールするシール部材が設けられるため、制御回路部材(電気回路部品)が被水することが防止される。特に、請求項2に記載の構成にこの構成が適用されることで、シール部材を段差のない部分に設けることができ、その製造が容易になるといった作用効果を得ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、コネクタ部はブラシホルダに設けられる(制御回路部材に設けられない)ため、コネクタ部の位置が制御回路部材の固定位置に応じた範囲に規制されない。即ち、制御回路部材の固定位置は、ギヤハウジング内に収容させる構造上、制限が多いが、この制限を受けることなくコネクタ部の位置を設定することができる。よって、コネクタ部を所望の位置(例えば、ブラシホルダと隣接した位置)に容易に配置することができる。又、コネクタ部の位置に制限されることなく制御回路部材の固定位置(固定構造)を設定することができるため、例えば、制御回路部材をギヤハウジングにおけるデッドスペースに容易に配置することが可能となる。又、制御回路部材は、ギヤハウジングに対して組み付けられた状態でコネクタ部に対して電気的に接続可能とされるコネクタ接続端子を有するため、制御回路部材をギヤハウジングに対して組み付けた状態でコネクタ部と制御回路部材の電気回路部品とを容易に接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ギヤハウジングに収容される制御回路部材が発生する熱を外部に効率良く放熱することができるモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を車両におけるパワーウインドウ装置のモータ1に具体化した一実施の形態を図1〜図3に従って説明する。図1に示すように、モータ1は、モータ本体2と、該モータ本体2の回転を減速して出力するための減速部3とを備えている。
【0016】
モータ本体2は、図1及び図2に示すように、扁平の略有底筒状に形成されたヨークハウジング(以下、単にヨークという)4と、該ヨーク4内面に固定された一対のマグネット5(図2参照)と、該ヨーク4内で回転可能に支持されるアーマチャ(電機子)6と、ブラシホルダ7と、一対のブラシ8とを備えている。
【0017】
ブラシホルダ7は、樹脂材料よりなり、ホルダ本体7aと、延出部7bと、コネクタ部7cとが一体形成されている。ホルダ本体7aは、前記ヨーク4の開口部内に略収容されるように形成されている。ホルダ本体7aの中央孔には軸受9が固定され、該軸受9にはアーマチャ6における回転軸10の先端側が回転可能に支持される。又、ホルダ本体7aにおけるヨーク4の内部側には給電用ブラシとしてのブラシ8が保持され、該ブラシ8は前記回転軸10に固定された整流子11に押圧接触されている。延出部7bは、前記ホルダ本体7aにフランジ状に延出されている。
【0018】
コネクタ部7cは、前記延出部7bの先端に設けられている。詳しくは、コネクタ部7cは、延出部7bにおけるヨーク4の扁平面4a(図1参照、図1及び図2中、紙面と平行な面)に沿った一方(図1及び図2中、右方)の端部に形成されている。そして、コネクタ部7cは、前記扁平面4aの直交方向(図1及び図2中、紙面直交方向であって紙面手前側)から図示しない外部コネクタが嵌着可能に形成されている。
【0019】
又、ブラシホルダ7には、それぞれ複数のブラシ側ターミナル12とコネクタ側ターミナル13とがインサート成形されている。ブラシ側ターミナル12は、ホルダ本体7aにおけるヨーク4の内部側から延出部7bに延びるとともに、その先端部である内部接続端子12aが延出部7bからモータ本体2の軸方向(図2中、下方向)に突出(露出)して形成されている。このブラシ側ターミナル12の基端部にはピッグテールを介して前記ブラシ8が電気的に接続される。コネクタ側ターミナル13は、コネクタ部7cから延出部7bに延びるとともに、その先端部である内部接続端子13aが延出部7bからモータ本体2の軸方向(図2中、下方向)に突出(露出)して形成されている。このコネクタ側ターミナル13の基端部は、コネクタ部7cにおいて露出して外部接続端子13bを形成し、コネクタ部7cに外部コネクタが嵌着されることで該外部コネクタのターミナルに電気的に接続されることになる。又、本実施の形態のコネクタ側ターミナル13において、内部接続端子13aと外部接続端子13bとの間には、コネクタ部7c内に収容されたチョークコイルCが接続されている。又、前記内部接続端子12a,13aは、前記扁平面4aの直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って並設される。尚、図2では、内部接続端子12a,13aが紙面直交方向に並設されるため、1つしか図示されない。又、ブラシホルダ7において、延出部7b及びコネクタ部7c(チョークコイルCと対応した部分)は、コネクタ部7cの外部接続端子13bと対応した部分等を除いて、エラストマよりなる防水部材14にて略覆われる。
【0020】
減速部3は、ギヤハウジング21と、ウォーム軸22と、ウォームホイール23と、クラッチ24と、制御回路部材25と、カバー26とを備える。尚、本実施の形態では、ウォーム軸22とウォームホイール23とが減速機構を構成している。
【0021】
ギヤハウジング21は、樹脂材料よりなる。ギヤハウジング21は、固定部21aと、ウォーム収容部21bと、ホイール収容部21cと、回路収容部21dとを備える。
固定部21aは、ヨーク4の開口部に形成されたフランジ部4bと対応した形状に形成されて該フランジ部4bにネジ27にて固定され、該フランジ部4bとともに前記ブラシホルダ7の延出部7bを(防水部材14を介して)挟持する。
【0022】
ウォーム収容部21bは、前記回転軸10の延長線上で筒状に延びて形成され、その内部にウォーム軸22を回転可能に支持する。又、ウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側には、ウォーム軸22と回転軸10とを駆動連結するクラッチ24が設けられている。クラッチ24は、回転軸10からの駆動力をウォーム軸22に伝達し、逆にウォーム軸22からの駆動力が回転軸10に伝達されないようウォーム軸22の回転をロックするように作動する。つまり、このクラッチ24は、負荷側から加わる力によるモータ1の回転を防止するために設けられている。又、このクラッチ24には、回転軸10と一体回転するセンサ用マグネット24aが設けられている。
【0023】
ホイール収容部21cは、ウォーム収容部21bと直交する方向で扁平の円盤形状に形成され、その内部にウォームホイール23を回転可能に支持する。尚、ウォーム収容部21bとホイール収容部21cとはその内部が一部で連通し、該連通部分でウォーム軸22とウォームホイール23とが歯合される。又、ホイール収容部21cは、前記ウォーム収容部21bに対して前記コネクタ部7cの反対側(図1及び図2中、左側)に形成されている。又、ホイール収容部21cの扁平面21eは前記ヨーク4の扁平面4a(図1参照)に沿って形成され、ギヤハウジング21全体としては、その扁平面21eの直交方向から見た面がギヤハウジング21の扁平面ということになる。
【0024】
回路収容部21dは、前記内部接続端子12a,13aと対応した位置であって、その内部に内部接続端子12a,13aが配置されるように形成されている。詳しくは、回路収容部21dは、ウォーム収容部21bに対してホイール収容部21cの反対側であって、ウォーム収容部21bとコネクタ部7cとの間に形成されている。回路収容部21dは、その内部がウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側(前記センサ用マグネット24aと対応した部分)と連通している。又、回路収容部21dには、制御回路部材25を回転軸10の軸方向に沿った方向から挿入可能とする開口部21fが形成されている。この開口部21fは、ギヤハウジング21に対して組み付けられた状態の制御回路部材25の少なくとも一部がギヤハウジング21の外部に突出するように形成されている。尚、本実施の形態の開口部21fは、図2中、制御回路部材25における右側の面の一部と、左側の面の一部と、紙面手前側の面の一部と、紙面奥側の面の一部と、下側の面とが(即ち5つの面が)露出するように、形成されている。又、開口部21fは、その開口方向(開口部21fと直交する方向)が回転軸10の軸方向及びその直交方向に対して傾斜するように設定されている。本実施の形態の開口部21fは、ギヤハウジング21の扁平面の直交方向から見てコネクタ部7cとウォーム収容部21bの先端側(モータ本体2の反対側)とを結ぶ傾斜した直線状に(段差の無いように)形成されている。尚、前記ブラシ側ターミナル12とコネクタ側ターミナル13の各内部接続端子12a,13aは、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置されている。そして、回路収容部21dには、制御回路部材25が(その一部が開口部21fからギヤハウジング21の外部に突出するように)略収容される。
【0025】
制御回路部材25は、図2及び図3(a)〜(c)に示すように、ベース部材31、ヒートシンク32、モールドIC33、コンデンサ34、ホール素子35及び複数の本体接続端子及びコネクタ接続端子としての接続端子36(図3(c)参照)等を備える。尚、本実施の形態では、モールドIC33、コンデンサ34及びホール素子35が電気回路部品を構成している。ベース部材31は、樹脂材よりなり、略板状に形成されている。ベース部材31において、一方の面(図2及び図3(b)中、左側の面)には、板状のヒートシンク32を介して略板状のモールドIC33が固定され、他方の面(図2及び図3(b)中、右側の面)には、略円柱形状のコンデンサ34が固定されている。尚、本実施の形態では、ヒートシンク32とモールドIC33とは接着剤にて接着されている。又、ベース部材31において、一方の面(図2及び図3(b)中、左側の面)の前記センサ用マグネット24aと対応する位置には、ホール素子35(図3(a)参照)が固定されている。又、ベース部材31において、他方の面(図2及び図3(b)中、右側の面)の前記ブラシ側ターミナル12及びコネクタ側ターミナル13の内部接続端子12a,13aと対応する位置には、モールドIC33等に電気的に接続された複数の接続端子36(図3(c)参照)が配設されている。尚、本実施の形態では、制御回路部材25が駆動回路部としてのリレーを備えず、モールドIC33がその内部に駆動回路部としてのパワーMOSFETを含んでいる。又、モールドIC33は、ホール素子35にて検出されるセンサ用マグネット24a(回転軸10)の回転速度等に応じて車両ウインドウガラスに挟み込みが発生したと判断すると、ブラシ8(モータ本体2)に逆回転電流を供給するといった、挟み込み防止制御を行う回路である。
【0026】
このように形成される制御回路部材25は、モータ本体2と減速部3とが組み付けられた状態で前記開口部21fからギヤハウジング21(回路収容部21d)内に、その一部が外部に突出するように組み付けられる。そして、このように組み付けられることで、複数の接続端子36がブラシ側ターミナル12及びコネクタ側ターミナル13の内部接続端子12a,13a(ブラシ8及びコネクタ部7c)に対してそれぞれ電気的に接続可能に(当接するように)配置される。尚、勿論、この状態で複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aと同様に、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置される。又、勿論、この状態で複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aと同様に、ギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って並設される。そして、本実施の形態では、開口部21fの開口方向外側から見て露出した複数の接続端子36が、内部接続端子12a,13aにそれぞれレーザ溶接されて電気的に接続される。又、この状態でモールドIC33は、その扁平面33aがギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って設けられる。又、本実施の形態では、この状態で制御回路部材25の一部であるモールドIC33の一部やコンデンサ34の部分が、回路収容部21d(開口部21f)の外部に突出して配置される。
【0027】
ギヤハウジング21の開口部21fには、制御回路部材25を組み付けた状態で、開口部21fを閉塞すべく金属製のカバー26が固定される。カバー26は、前記制御回路部材25の一部(モールドIC33の一部やコンデンサ34の部分)を収容可能な収容部26aを有し、前記開口部21fと対応した開口部を有する形状に形成される。尚、本実施の形態のカバー26は、収容部26aの内壁面が、制御回路部材25の一部を5つの角度から取り囲むように(5つの方向から対向するように)設定されている。又、本実施の形態における前記5つの方向は、図2中、右方向と、左方向と、紙面手前方向と、紙面奥方向と、下方向である。又、カバー26の開口部には点かしめ部26bが形成され、ギヤハウジング21に対して点かしめにて固定される。
【0028】
このように構成されるモータ1は、モータ本体2と減速部3とが組み付けられた状態で開口部21fからギヤハウジング21内に制御回路部材25が組み付け可能であるため、モータ本体2と減速部3とが組み付けられたもの(制御回路部材25を除いたもの)に、電気回路部品の異なる制御回路部材25を組み付けることができる。即ち、モータ本体2と減速部3とが組み付けられたもの(制御回路部材25を除いたもの)を共通の部材としながら、種々の仕様(電気回路部品の構成が異なる仕様)のモータを容易に得ることができるため、その部品管理等が容易となり製造コスト等を低減することができる。
【0029】
このように構成されたパワーウインドウ装置のモータ1は、図示しない車両ドアのインナパネルとアウタパネルとの間に配置され、その扁平面(扁平面4a,21e)がインナパネルと対向されて固定される。そして、この状態で、コネクタ部7c(外部接続端子13b)には、インナパネルに形成されたコネクタ用孔を介してドアトリム側から電源装置に接続された外部コネクタが嵌着される。尚、このとき、コネクタ用孔は、防水部材14のコネクタ部7cと対応した部分にて隙間が塞がれ、インナパネルとアウタパネルとの間からドアトリム側への液体の浸入が防止される。
【0030】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)ギヤハウジング21には、その開口部21fから突出した制御回路部材25の一部を収容する金属製のカバー26が取り付けられる。このカバー26は、熱源となる制御回路部材25の一部の周囲を複数の角度から取り囲むように収容するため、制御回路部材25が発生する熱が外部に効率良く放熱される。よって、例えば、制御回路部材25が有する電気回路部品の熱による破壊を低減することができる。
【0031】
(2)制御回路部材25は、ギヤハウジング21に対して組み付けられた状態でモータ本体2(ブラシ8)及びコネクタ部7cに対して電気的に接続可能とされる接続端子36を有する。よって、制御回路部材25をギヤハウジング21に対して組み付けた状態でモータ本体2(ブラシ8)及びコネクタ部7cと制御回路部材25の電気回路部品(モールドIC33等)とを容易に接続することができる。
【0032】
又、開口部21fは、その開口方向(開口部21fと直交する方向)がモータ本体2(回転軸10)の軸方向及びその直交方向に対して傾斜するように設定されている。又、接続端子36は、制御回路部材25を組み付けた状態で、内部接続端子12a,13aと同様に、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置される。このようにすることで、開口部21fを段差の無い簡単な形状としながら、接続端子36のレーザ溶接やその接続箇所の確認を容易に行うことが可能となる。
【0033】
(3)コネクタ部7cはブラシホルダ7に設けられる(制御回路部材に設けられない)ため、コネクタ部7cの位置が制御回路部材25の固定位置に応じた範囲に規制されない。即ち、制御回路部材25の固定位置は、ギヤハウジング21内に収容させる構造上、制限が多いが、この制限を受けることなくコネクタ部7cの位置を設定することができる。よって、コネクタ部7cを所望の位置、本実施の形態では、ヨーク4とギヤハウジング21との連結部の側方(ブラシホルダ7と隣接した位置)に容易に配置することができる。又、コネクタ部7cの位置に制限されることなく制御回路部材25の固定位置(固定構造)を設定することができる。即ち、本実施の形態のように、制御回路部材25をウォーム収容部21bとコネクタ部7cとの間のギヤハウジング21におけるデッドスペースに容易に配置することが可能となる。よって、モータ1の小型化等を図ることができる。
【0034】
(4)複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aと同様に、ギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って並設されるため、それら複数の接続端子36がギヤハウジング21の扁平面の直交方向から見た投影面積を増大してしまうことが防止される。又、並設したことにより、レーザ溶接による接続作業を容易に行うことができる。
【0035】
(5)モールドIC33は、その扁平面33aがギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って設けられるため、そのモールドIC33がギヤハウジング21の扁平面の直交方向から見た投影面積を増大してしまうことが防止される。
【0036】
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態のギヤハウジング21(回路収容部21d)は、制御回路部材の少なくとも一部がギヤハウジング21の外部に突出するように開口部が形成されれば、他の形状に変更してもよい。又、カバー26は、開口部21fを閉塞すべく固定され、外部に突出した制御回路部材の少なくとも一部を収容する収容部を有した金属製のものであれば、他の形状のものに変更してもよい。
【0037】
例えば、図4に示すように、変更してもよい。即ち、図4に示す例では、開口部21gは、上記実施の形態(開口部21f)とは若干異なり、図4中、制御回路部材41における右側の面の一部と、紙面手前側の面の一部と、紙面奥側の面の一部と、下側の面とが(即ち4つの面が)露出するように、形成されている。又、この例では、回路収容部21hにおける扁平面の外表面に、係合爪21iが形成されている。又、この例における制御回路部材41では、上記実施の形態とは逆に、ベース部材42にモールドIC43が固定され、そのモールドIC43にヒートシンク44が接着剤により固定されている。又、この例における金属製のカバー45は、前記係合爪21iに係合される被係合凹部45aを備える。即ち、カバー45は、その被係合凹部45aが係合爪21iと係合されることでギヤハウジング21に対して固定される。又、カバー45には、前記開口部21gと自身の開口部との間をシールするシール部材45bが設けられている。このシール部材45bは、ブチルゴムよりなり、前記開口部21gと対応したカバー45の開口部全面に配設されている。又、カバー45は、その収容部45cの内壁面が、制御回路部材41の一部を4つの角度から取り囲むように(4つの方向から対向するように)設定されている。又、この例における前記4つの方向は、図4中、右方向と、紙面手前方向と、紙面奥方向と、下方向である。又、カバー45には、弾性を有し制御回路部材41のモールドIC43に(ヒートシンク44を介して)押圧接触される金属製の当接部及び弾性接触部としての押圧片46が設けられている。尚、図4では、押圧接触される前(組み付け前)の状態の押圧片46を実線で図示し、押圧接触された状態の押圧片46を2点鎖線で図示している。このようにしても、カバー45は、熱源となる制御回路部材41の一部の周囲を複数(4つ)の角度から取り囲むように収容するため、制御回路部材41が発生する熱が外部に効率良く放熱される。又、このようにすると、制御回路部材41に押圧片46が当接されるため、放熱を更に効率良く行うことができる。又、制御回路部材41のがたつきを低減することができる。更に、押圧片46は、弾性を有し制御回路部材41に押圧接触されるため、各寸法精度や組み付け精度を高精度としなくても(寸法誤差や組み付け誤差等が生じても)制御回路部材41、詳しくはヒートシンク44に自身を容易且つ確実に当接させることができる。又、押圧片46が制御回路部材41に追従するように弾性変形可能であることから、制御回路部材41が振動したとしても、その破損を防止することができるとともに、当接状態(放熱機能)を維持させることができる。又、カバー45には、前記開口部21gと自身の開口部との間をシールするシール部材45bが設けられるため、制御回路部材41(電気回路部品)が被水することが防止される。尚、開口部21gは段差の無い簡単な形状であるため、シール部材45bをも段差のない部分に設けることができ、その製造が容易となる。又、勿論、押圧片46を省略してもよい。又、勿論、上記ヒートシンク44を省略して、押圧片46をモールドIC43に直接押圧接触させてもよい。又、押圧片46を、制御回路部材(モールドIC)に押圧接触される他の弾性接触部(例えば、ウェーブワッシャやゴム材等)に変更してもよい。
【0038】
又、例えば、図5に示すように、変更してもよい。即ち、図5に示す例では、開口部21jは、上記実施の形態とは若干異なり、その開口方向(開口部21jと直交する方向)が回転軸10の軸方向と一致するように設定されている。これにより、制御回路部材(図示略)は、図5中、右側の面の一部と、左側の面の一部と、紙面手前側の面の一部と、紙面奥側の面の一部とが、軸方向に同じ量だけ露出されることになる。又、勿論、金属製のカバー51は、外部に突出した制御回路部材の少なくとも一部を収容する収容部を有し、開口部21jと対応した開口部(その開口方向が回転軸10の軸方向と一致する開口部)を有する形状(略有底4角筒状)に形成される。尚、図5では、ギヤハウジング21に組み付けられたカバー51を実線で図示し、組み付けられる前の状態のカバー51を2点鎖線で図示している。このようにしても、カバー51は、熱源となる制御回路部材の一部の周囲を複数(5つ)の角度から取り囲むように収容するため、制御回路部材が発生する熱が外部に効率良く放熱される。
【0039】
又、例えば、図6(a)(b)に示すように、変更してもよい。即ち、図6(a)に示す例では、上記別例(図5参照)の開口部21jを有するギヤハウジング21と、上記別例(図5参照)のカバー51と同様に前記開口部21jと対応した開口部を有する樹脂製の略有底4角筒状の樹脂カバー61とを備える。そして、樹脂カバー61には、軸直交方向(図6(a)中、右方向)に切り欠かれた形状の開口部61aが形成される。この開口部61aは、制御回路部材(図示略)の少なくとも一部がギヤハウジング21の外部に突出するように、詳しくは、図6(a)中、制御回路部材における右側の面の一部と、紙面手前側の面の一部と、紙面奥側の面の一部とが(即ち3つの面が)露出するように、形成されている。そして、この例における金属製のカバー62(図6(b)参照)は、前記開口部61aを閉塞すべく形状(断面略コ字形状)に形成され、その収容部62aの内壁面が、制御回路部材の一部を3つの角度から取り囲むように(3つの方向から対向するように)設定されている。尚、この例における前記3つの方向は、図6(a)中、右方向と、紙面手前方向と、紙面奥方向である。このようにしても、カバー62は、熱源となる制御回路部材の一部の周囲を複数(3つ)の角度から取り囲むように収容するため、制御回路部材が発生する熱が外部に効率良く放熱される。
【0040】
・上記実施の形態では、制御回路部材25は、ギヤハウジング21に対して組み付けられた状態で接続端子36が内部接続端子12a,13aに対して電気的に接続可能に当接するように配置され、レーザ溶接にて電気的に接続されるとしたが、他の方法にて電気的に接続してもよい。例えば、電子ビーム溶接やTIG溶接にて接続してもよい。又、制御回路部材25が組み付けられることで接続端子36と内部接続端子12a,13aとが電気的に接続された状態となるように、接続端子36及び内部接続端子12a,13aの形状を(例えば、軸方向に挿着される(雄雌)形状に)変更してもよい。又、例えば、ギヤハウジング21に対して組み付けられた状態とされても、単純には接続可能に配置されないように(別部材等を用いて接続する構成となるように)、接続端子36及び内部接続端子12a,13aを変更してもよい。
【0041】
・上記実施の形態では、コネクタ部7cはブラシホルダ7に設けられる(制御回路部材25に設けられない)としたが、制御回路部材に設けられる構成に変更してもよい。
・上記実施の形態では、内部接続端子12a,13a及び複数の接続端子36は、ギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って並設されるとしたが、他の方向に沿って並設してもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、モールドIC33は、その扁平面33aがギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図2中、紙面直交方向)に沿って設けられるとしたが、他の方向に沿って設けてもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、回転軸10とウォーム軸22とがクラッチ24を介して駆動連結されるとしたが、クラッチ24を省略して回転軸10とウォーム軸22とを駆動連結(一体形成)してもよい。
【0044】
・上記実施の形態では、チョークコイルCを、コネクタ部7cに設けたが、コンデンサ34と同様に(まとめて)電気回路部品として制御回路部材に設けた構成としてもよい。このようにすると、モータ本体2と減速部3とが組み付けられたもの(制御回路部材を除いたもの)を共通の部材としながら、チョークコイルの仕様の異なるモータをも容易に得ることができる。又、コンデンサ34をコネクタ部7c側に設けた構成に変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態の制御回路部材25(41)におけるベース部材31(42)は、回路基板に変更してもよい。
・上記実施の形態のカバー26(45,51,62)に、ギヤハウジング21(モータ)内外を連通する呼吸孔を設けてもよい。このようにすると、熱気を排出できるため、放熱が更に効率良く行われる。又、駆動時の発熱等に基づくギヤハウジング21の内部における気圧の変化が低減される。しかも、モータ1の設置方向(設置するドア)が異なる場合等、呼吸孔の開口方向を異なる方向(例えば防水に適した方向)としたい場合であっても、カバーのみを変更するだけで(カバーを除いた部材を共通の部材として)それらモータを得ることができる。よって、ギヤハウジング21の汎用性が向上し、モータの製造コスト等を低減することができる。
【0046】
・上記実施の形態の制御回路部材25(41)が備えるホール素子35をモータ本体2や(制御回路部材を除く)減速部3側(例えば、ブラシホルダ7のホルダ本体7a)に設けてもよい。尚、この場合、ホール素子に接続されるホール素子ターミナルの端子を前記内部接続端子12a,13aと同様に設け(並設し)、制御回路部材25(41)に前記ホール素子ターミナルの端子に対応した接続端子を前記接続端子36と同様に設け(並設し)てもよい。
【0047】
・上記実施の形態では、センサ用マグネット24aをクラッチ24に設けたが、これに限定されず、例えば、センサ用マグネットを金属プレート上に配置し、該金属プレートに回転軸を圧入した構成としてもよい。又、例えばセンサ用マグネットをウォーム軸22の先端側(図2中、下方側)に設け、ホール素子を制御回路部材25の前記センサ用マグネットと対向する位置(図2中、下方側)に設けてもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、パワーウインドウ装置に用いられるモータに具体化したが、例えば、サンルーフモータやドアクローザモータ等、他の装置用のモータに具体化してもよい。
【0049】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記カバーは、前記制御回路部材と当接する当接部を有することを特徴とするモータ。このようにすると、制御回路部材のがたつきを低減することができる。又、放熱を更に効率良く行なうことができる。
【0050】
(ロ)上記(イ)に記載のモータにおいて、前記当接部は、前記制御回路部材に押圧接触される弾性接触部を有することを特徴とするモータ。このようにすると、寸法精度や組み付け精度を高精度としなくても(寸法誤差や組み付け誤差等が生じても)制御回路部材に当接部を容易に当接させることができ、制御回路部材のがたつきを低減することができる。又、制御回路部材が振動したとしても、その破損を防止することができる。又、弾性接触部が制御回路部材に追従するように弾性変形可能であることから、制御回路部材と当接部との当接状態(放熱機能)を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態におけるモータの平面図。
【図2】本実施の形態におけるモータの一部断面分解図。
【図3】(a)〜(c)本実施の形態の制御回路部材を説明するための説明図。
【図4】別例におけるモータの一部断面分解図。
【図5】別例におけるモータの平面図。
【図6】(a)別例におけるモータの平面図。(b)同じくカバーの斜視図。
【符号の説明】
【0052】
2…モータ本体、7…ブラシホルダ、7c…コネクタ部、8…ブラシ(給電用ブラシ)、10…回転軸、21…ギヤハウジング、21f,21g,21j,61a…開口部、22…減速機構の一部を構成するウォーム軸、23…減速機構の一部を構成するウォームホイール、25,41…制御回路部材、26,45,51,62…カバー、26a,45c,62a…収容部、33,43…電気回路部品の一部を構成するモールドIC、34…電気回路部品の一部を構成するコンデンサ、35…電気回路部品の一部を構成するホール素子、36…接続端子(本体接続端子及びコネクタ接続端子)、45b…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータ本体と、
前記モータ本体に組み付けられ、前記回転軸の回転を減速するための減速機構を収容するギヤハウジングと、
前記ギヤハウジング内に収容され電気回路部品を有する制御回路部材と
を備えたモータにおいて、
前記ギヤハウジングには、前記制御回路部材の少なくとも一部が前記ギヤハウジングの外部に突出するように開口部が形成され、且つ、該開口部を閉塞すべく外部に突出した前記制御回路部材の少なくとも一部を収容する収容部を有した金属製のカバーが取り付けられたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記制御回路部材は、前記ギヤハウジングに対して組み付けられた状態で前記モータ本体に対して電気的に接続可能とされる本体接続端子を有し、
前記開口部は、その開口方向が前記モータ本体の軸方向及びその直交方向に対して傾斜し、
前記本体接続端子は、前記制御回路部材を組み付けた状態で、前記開口部の開口方向外側から見て露出する位置に設定されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記カバー又は前記ギヤハウジングには、前記開口部と前記カバーとの間をシールするシール部材が設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記モータ本体は、給電用ブラシを支持可能なブラシホルダを有し、
前記ブラシホルダには外部コネクタが嵌着されるコネクタ部が設けられ、
前記制御回路部材は、前記ギヤハウジングに対して組み付けられた状態で前記コネクタ部に対して電気的に接続可能とされるコネクタ接続端子を有することを特徴とするモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−34073(P2006−34073A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213469(P2004−213469)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】