説明

ラクトン化合物の製造方法、並びに、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、この方法により得られる組成物、この組成物を用いたレジスト膜及びパターンの形成方法

【課題】酸分解性基を含有するラクトン化合物を高収率で得ることができる製造方法、及び、レジスト性能が改善された感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供すること
【解決手段】下記一般式(IB)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(IA)で表される化合物を用いる製造方法。
【化1】


式中、Qは、重合性基を表す。Lは、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。Lcはラクトン構造を有する基を表す。Aは酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。mは0以上の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトン化合物の製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂の製造方法、この方法により得られる組成物、この組成物を用いたレジスト膜、及びパターンの形成方法に関する。より詳細には、本発明は、超LSI及び高容量マイクロチップ、半導体デバイスの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス並びに高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、並びにその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる高機能性ポリマーなどの原料として有用なラクトン化合物の製造方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造方法、この方法により得られる組成物、この組成物を用いたレジスト膜、及びパターンの形成方法に関する。
【0002】
なお、ここで「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外(EUV)線、X線又は電子線(EB)を意味している。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味している。
【0003】
また、ここで「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、遠紫外線、X線及びEUV光等による光照射のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画をも意味している。
【背景技術】
【0004】
化学増幅レジスト組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部との現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0005】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分に使用するため、高感度、高解像度で、且つ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0006】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。
【0007】
このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきている。ところが、レジストとしての総合性能の観点から、使用される樹脂、酸発生剤、添加剤及び溶剤等の適切な組み合わせを見出すことは極めて困難である。特には、線幅が100nm以下の微細なパターンを形成する際には、ラインパターンのラフネス特性及び解像力の改良が求められていた。
【0008】
近年、上記の脂環炭化水素構造を有する樹脂に、特定のラクトン構造を備えた繰り返し単位を含有させることにより、ラインエッジラフネス(Line Edge Roughness)等のラフネス特性を向上させ得ることが見出されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、ラクトン構造の特定の位置に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)が結合した構造を有する繰り返し単位を含んだ樹脂、及びそれを含んだレジスト組成物が記載されている。同文献には、このような組成物を用いることにより、パターン形状及び露光マージン等を改善することができる旨が記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、特許文献1と同じラクトン構造の特定の位置に酸分解性基が結合した構造を有するモノマーが記載されている。同文献には、このようなモノマーをフォトレジスト用樹脂原料として用いた場合、レジストとしてのアルカリ可溶性が向上し、さらに、アルカリ分解後の揮発成分の生成が抑制される旨が記載されている。
【0011】
このように、酸分解性基を含有するラクトン化合物をレジスト用樹脂原料として用いることが行われているが、従来、ラクトン化合物に直接的に酸分解性基を導入する方法については十分な知見が蓄積されていなかった。上記先行文献では、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を用いて酸分解性基を導入した後にラクトン環を形成することにより、目的とする酸分解性基含有ラクトン化合物を製造する手法が見出されている(特許文献1の段落0027及び特許文献2の段落0039を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4288518号公報
【特許文献2】特開2005−8531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、酸分解性基を含有するラクトン化合物を高収率で得ることができる製造方法、及び、レジスト性能が改善された感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、例えば、以下の通りである。
【0015】
〔1〕 下記一般式(IB)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(IA)で表される化合物を用いる製造方法。
【化1】

【0016】
式中、
Qは、重合性基を表す。
は、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。
Lcはラクトン構造を有する基を表す。
は酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
mは0以上の整数を表す。
【0017】
〔2〕 一般式(IA)における−COOH基、及び、一般式(IB)における−COOA基が、Lcにより表されるラクトン構造を構成するエステル基に隣接する2つの炭素原子の一方に結合していることを特徴とする〔1〕に記載の製造方法。
【0018】
〔3〕 一般式(IA)及び(IB)が、下記一般式(IIA)及び(IIB)で表される〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
【化2】

【0019】
式中、
Xはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、nが2以上の場合には各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アラルキル基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
Q、L、A及びmは、一般式(IA)及び(IB)における各基と同義である。
【0020】
〔4〕 一般式(IA)及び(IB)が、下記一般式(IIIA)及び(IIIB)で表される〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
【化3】

【0021】
式中、
Xはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、nが2以上の場合には各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アラルキル基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
Q、L、A及びmは、一般式(IA)及び(IB)におけるものと同義である。
【0022】
〔5〕 Aにより表される、酸の作用により離脱する基が下記一般式(S1−1)で表され、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基が下記一般式(S1−2)により表される〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
【化4】

【0023】
式中、
は、アルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。RとRとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。上記組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、上記2以上の基は、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、及びこれらを組み合わせた基からなる群より選択される連結基を介して連結されていてもよい。
〔6〕 下記一般式(IC)で表される中間体を得ることを含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
【化5】

【0024】
式中、
は、Cl、BrまたはIを表す。
Q、L、Lc及びmは、一般式(IA)及び(IB)におけるものと同義である。
【0025】
〔7〕 金属を含む化合物の存在下で製造する〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
【0026】
〔8〕 前記金属を含む化合物が下記から選択される〔7〕に記載の製造方法。
【化6】

【0027】
式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、シアノ基、アミノ基、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表す。
M1及びM2は金属を表す。
【0028】
〔9〕 M1がLi、Na、K、Ag又はTlであり、M2がZnである〔8〕に記載の製造方法。
【0029】
〔10〕 金属を含む化合物が、n−ブチルリチウムまたはNaHである〔8〕又は〔9〕に記載の製造方法。
【0030】
〔11〕 下記一般式(IB)で表される単量体由来の繰り返し単位を含む樹脂を含有する感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の製造方法であり、該単量体を下記一般式(IA)で表される単量体を用いて製造することを特徴とする製造方法。
【化7】

【0031】
式中、
Qは、重合性基を表す。
は、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。
Lcはラクトン構造を表す。
は、酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
mは0以上の整数を表す。
【0032】
〔12〕 〔11〕に記載の製造方法により得られた感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
〔13〕 〔12〕に記載の組成物を用いて形成されたレジスト膜。
〔14〕 〔12〕に記載の組成物を用いて膜を形成すること、前記膜を露光すること、及び、露光された前記膜を現像することを含むパターン形成方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、酸分解性基を含有するラクトン化合物を高収率で得ることが可能となる。また、本発明によると、レジスト性能が改善された組成物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、ここでは、置換又は無置換を明示していない基及び原子団には、置換基を有していないものと置換基を有しているものとの双方が含まれることとする。例えば、置換又は無置換を明示していない「アルキル基」は、置換基を有していないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有しているアルキル基(置換アルキル基)をも包含することとする。
【0035】
〔ラクトン化合物〕
本発明では、下記一般式(IB)で表される構造を有する酸分解性基含有ラクトン化合物が製造され、その原料として下記一般式(IA)で表される構造を有する化合物が用いられる。本発明者らは、ラクトン構造を含んだ環(以下、ラクトン環ともいう)に酸分解性基を導入する方法について種々の検討を行った結果、原料として一般式(IA)で表される、ラクトン環にカルボキシル基が置換したモノマーを用いることにより、得られるラクトン化合物の収率が向上することを見出した。
【化8】

【0036】
一般式(IA)及び(IB)において、Qは、重合性基を表す。Lは、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。Lcはラクトン構造を有する基を表す。Aは酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。mは0以上の整数を表す。
各符号の詳細な説明は後述する。
【0037】
本発明に係るラクトン化合物の製造方法において、ラクトン化合物は、例えば以下のスキーム(I)又は(II)に従い合成される。
【化9】

【0038】
スキーム(I)により例示される反応系において、一般式(IB)により表される化合物は、一般式(IA)により表される化合物と、W−Aにより表される化合物とを、好ましくは金属を含む化合物Mの存在下、溶媒中で攪拌して反応させることにより合成することができる。反応終了後、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン及びテトラヒドロフラン等の有機溶媒と水とで分液・洗浄操作をする。
【0039】
ここで、W−AにおけるAは、一般式(IA)及び(IB)におけるAと同義であり、酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
は脱離基を表す。Wは脱離基であれば限定されないが、具体例として、F、Cl、Br、I、OTs、OMs、OTfなどを挙げることができる。Cl、Br、OTs、OMsであることがより好ましく、Br、OTsであることが最も好ましい。ここで、Tsはp−トルエンスルホニル、Msはメタンスルホニル、Tfはトリフルオロメタンスルホニルを表す。
【0040】
(反応剤)
上記スキーム(I)においてMは金属を含む化合物を表し、上記反応系において反応剤として用いられる。すなわち、金属を含む化合物は、上記反応系においてプロトン引き抜き剤として作用し、目的とするラクトン化合物の収率を上げることができる。
使用することができる金属を含む化合物は、金属を含んでいればよく、金属単体であってもよいし、あるいは、アルコキシ金属のような有機金属化合物などであってもよい。
金属化合物として、例えば、下式により表されるものを使用することができる。
【化10】

【0041】
式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、シアノ基、アミノ基、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表す。
M1及びM2は、金属を表す。
【0042】
M1により表される金属として、例えば、Li、Na、K、Ag又はTlが挙げられ、M2により表される金属として、例えば、Znが挙げられる。
【0043】
金属化合物として、具体的には、フェノールリチウム(PhLi)、n−ブチルリチウム(BuLi)、sec−BuLi、t−BuLi、LDA(LiN−i−Pr)、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド)、LiHMDS(ヘキサメチルジシラザンリチウム)、KHMDS(ヘキサメチルジシラザンカリウム)、炭酸カリウム、Li、Na、K、Cs、Zn、NaH、KH、Al、AgCN、TlOEtなどが挙げられ、その他の化合物は実験化学講座(丸善株式会社)を参照することができる。
【0044】
金属を含む化合物として、n−BuLi、NaH、KH、LiHMDS、KHMDS、Zn、AgCN、TlOEt、LDAであることが好ましく、n−BuLi、NaH、LiHMDS、LDAがより好ましく、n−BuLi、NaHであることが最も好ましい。
金属を含む化合物は、東京化成工業(株)、和光純薬工業(株)、シグマアルドリッチ、STREM社などから購入することができる。
【化11】

【0045】
スキーム(II)により例示される反応系では、一般式(IC)により表される中間体を得ることを含む。
一般式(IC)において、Xは、例えば、Cl、BrまたはIを表し、Q、L、Lc及びmは、一般式(IA)及び(IB)におけるものと同義である。
【0046】
上記反応系では、一般式(IA)により表される化合物と、ハロゲン化剤(W−Xにより表される化合物)とを、溶媒中で攪拌して反応させることにより、一般式(IC)により表される中間体化合物を合成する。次いで、得られた中間体化合物と、W−Aにより表される化合物とを、好ましくは金属を含む化合物Mの存在下、溶媒中で攪拌し反応させることにより、目的とする一般式(IB)で表される化合物を合成することができる。反応終了後、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン及びテトラヒドロフラン等の有機溶媒と水とで分液・洗浄操作をする。
【0047】
ここで、ハロゲン化剤としてのW−XにおけるXは、例えばCl、BrまたはIを表し、ClまたはBrであることが好ましく、Clであることがより好ましい。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンを挙げることができ、好ましくは、塩化チオニル、塩化スルフリル、三臭化リンであり、より好ましくは、塩化チオニルである。
【0048】
また、W−AにおけるWは、例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミン基等を表し、水酸基であることがより好ましい。Aは、一般式(IA)及び(IB)におけるAと同義であり、酸の作用により脱離する基、又は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
上記スキーム(II)において、Mは、スキーム(I)により例示される反応系と同様、金属を含む化合物を表す。
【0049】
本技術分野において、半導体デバイスの動作を不安定にさせることなどから、低金属化が必要とされている。本発明の製造方法は、一態様において金属を含む化合物を用いているが、生産物における金属含有率は低く、低金属化も達成している。
生産物における金属含有率としては、500ppb以下であることが好ましく、300ppb以下であることがより好ましく、100ppb以下であることが最も好ましい。
ここで、金属含有率を測定する手法としては、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)、原子吸光分析装置によって、分析することができる。
【0050】
(溶媒)
上記の反応系において用い得る溶媒としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、鎖状又は環状アルカン、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、環状ラクトン、鎖状又は環状のケトン、アルキレンカーボネート、カルボン酸アルキル、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、アルコール、鎖状又は環状のエーテル、ラクタム、芳香族炭化水素、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
鎖状又は環状アルカンとしては、例えば、n−ペンタン、n−へキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンが好ましく挙げられる。
【0051】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
【0052】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0053】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルが好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルが好ましく挙げられる。
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0054】
鎖状又は環状のケトンとしては、例えば、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0055】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
カルボン酸アルキルとしては、例えば、酢酸ブチルが好ましく挙げられる。
【0056】
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
【0057】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノールが好ましく挙げられる。
【0058】
鎖状または環状のエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが好ましく挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンが好ましく挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンが好ましく挙げられる。
ハロゲン系溶剤としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素が好ましく挙げられる。
その他に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が好ましく挙げられる。
【0059】
より好ましく使用できる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アセトン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、シクロヘキサノン、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0060】
さらに好ましい溶剤としては、アセトン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルが挙げられる。
【0061】
特に好ましい溶剤としては、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。最も好ましい溶剤としては、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンが挙げられる。
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、溶媒を用いずに反応を行なってもよい。
【0062】
反応系の濃度は、通常は1〜100質量%であり、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。反応温度は、通常は−70℃〜150℃であり、好ましくは−50℃〜120℃であり、更に好ましくは−50〜100℃である。反応時間は、通常は1〜72時間であり、好ましくは1〜24時間であり、更に好ましくは1〜12時間である。
【0063】
一般式(IA)及び(IB)について更に詳細に説明する。
一般式(IA)及び(IB)において、Qにより表される重合性基とは、付加重合性不飽和結合を有する基であればよく、具体例としては、一般式(IA)及び(IB)により表される化合物が、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ノルボルネン類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、クロトン酸エステル類等であるために必要な付加重合性不飽和結合を有する基を表す。これらの中でも、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ノルボルネン類、スチレン類であるために必要な付加重合性不飽和結合を有する基が好ましく、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類である場合のエチレン性不飽和基がより好ましい。
【0064】
により表される連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルフィド基、スルホン基、−COO−,−CONH−,−SO2NH−,−CF2−,−CF2CF2-,−OCF2O−,−CF2OCF2-,−SS−,−CH2SO2CH2−,−CH2COCH2−,−COCF2CO−,−COCO−,−OCOO−.−OSO2O−、エーテル基(酸素原子)、チオエーテル基(硫黄原子)、アミノ基(窒素原子)、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−,−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基等、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。また、これらの基は置換基を有しても良い。Lとしては、アリーレン基、スルホン基、−COO−、−CONH−、エーテル基(酸素原子)であることが好ましく、アリーレン基、−COO−、−CONH−であることがより好ましく、−COO−であることが最も好ましい。
【0065】
mは、0〜5の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましい。
【0066】
一般式(IA)中の−COOH基、及び、一般式(IB)中の−COOA基は、上記ラクトン構造を構成しているエステル基に隣接した2つの炭素原子の少なくとも一方に結合していることが好ましい。即ち、一般式(IA)及び(IB)により表される化合物は、下記一般式(S−1)又は一般式(S−2)により表される構造を含んでいることが好ましい。特に、エステル基中のカルボニル炭素のα位にある炭素原子に置換している、下記一般式(S−1)により表される構造を含んでいることがより好ましい。
【化12】

【0067】
式中、Raは、一般式(IA)中の−COOH基、又は、一般式(IB)中の−COOA基を表す。破線部は、エステル基と共にラクトン環Lcを形成するために必要な原子団を表す。
【0068】
以上のような構成を採用することにより、例えば、本発明により得られるラクトン単量体由来の繰り返し単位を含む樹脂の加水分解性及び組成物のラフネス特性、露光ラチチュード(EL)、デフォーカスラチチュード(DOF)及び現像欠陥性能を更に向上させることが可能となる。
【0069】
Lcにより表されるラクトン構造として、好ましくは5〜7員環ラクトン構造である。また、この5〜7員環ラクトン構造に、ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で、他の環構造が縮環していてもよい。
【0070】
ラクトン構造としては、例えば、下記一般式(KA−1−1)〜(KA−1−17)で表される構造が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。これらのうち、(KA−1−1)、(KA−1−3)〜(KA−1−6)、又は(KA−1−13)で表される構造が好ましく、(KA−1−4)〜(KA−1−6)で表される構造がより好ましく、(KA−1−4)で表される構造が特に好ましい。
【化13】

【0071】
一般式(IB)中のAは、上記の通り、酸の作用により脱離する基、または酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。ここで、−COOA基は、例えば、「−COO−(酸の作用により脱離する基)」、又は、「−COO−(連結基)−(アルカリ可溶性基から水素原子を除いた基)−(酸の作用により脱離する基)」の態様で表される。
なお、双方の態様を含め、ここでは−COOA基を「酸分解性基」という。
【0072】
このアルカリ可溶性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。
【0073】
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボキシ基、フッ素化アルコール基及びスルホン酸基が挙げられる。フッ素化アルコール基としては、ヘキサフルオロイソプロパノール基が特に好ましい。
【0074】
一般式(IB)中の、Aにおける酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)及び−C(R01)(R02)(OR39)により表される基が挙げられる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成していてもよい。R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
好ましい酸分解性基としては、例えば、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基及び第3級のアルキルエステル基が挙げられる。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基が挙げられる。
【0075】
酸分解性基の−COOAは、脂環構造を含んでいることが好ましい。一般式(IB)中の−COOAが脂環構造を含むラクトン化合物由来の繰り返し単位を含む樹脂を用いてレジスト組成物を製造した場合に、例えば、エッチング耐性及び解像性を更に向上させることが可能となる。ここで、酸分解性基−COOAが含み得る脂環構造は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
【0076】
が酸の作用により脱離する基であるとき、Aは、一態様において、下記一般式(S1−1)により表される。また、Aが酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基であるとき、Aは、一態様において、下記一般式(S1−2)により表される。
【化14】

【0077】
式中、
は、アルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。RとRとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。上記組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、上記2以上の基は、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、及びこれらを組み合わせた基からなる群より選択される連結基を介して連結されていてもよい。
【0078】
一般式(S1−1)及び(S1−2)について更に詳細に説明する。
一般式(S1−2)中のLにおけるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基などの炭素数1〜8のものが挙げられる。Lにおけるアルキレン基は、炭素数1〜6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0079】
におけるアルケニレン基としては、上で説明したアルキレン基の任意の位置に二重結合を有する基が挙げられる。
におけるシクロアルキレン基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このシクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基及びジアマンタニレン基などの炭素数3〜17のものが挙げられる。Lにおけるシクロアルキレン基は、炭素数5〜12のシクロアルキレン基であることがより好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキレン基であることが特に好ましい。
【0080】
における2価の芳香環基としては、フェニレン基、トリレン基及びナフチレン基などの炭素数6〜14のアリーレン基、又は、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール及びチアゾールなどのヘテロ環を含んだ2価の芳香環基が挙げられる。これら2価の芳香環基は、置換基を有していてもよい。
【0081】
としての−NR−において、Rにより表されるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、このアルキル基は、置換基を有していてもよい。Rにより表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基などの炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。Rとしては、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0082】
また、2価の窒素含有非芳香族複素環基とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、好ましくは3〜8員の非芳香族複素環基を意味する。具体的には、例えば、下記構造の2価の連結基が挙げられる。
【化15】

【0083】
としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基とシクロアルキレン基とを組み合わせた基、又はアルキレン基と2価の芳香環基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基又はシクロアルキレン基がより好ましく、アルキレン基が特に好ましい。
【0084】
一般式(S1−1)及び(S1−2)中のR、R及びRにおけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。R又はRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基などの炭素数20以下のアルキル基、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0085】
又はRのシクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、アダマンチル基、ジアダマンチル基、テトラシクロデカニル基、及びテトラシクロドデカニル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、炭素数5〜10のものがより好ましい。
【0086】
とRとが互いに結合して形成し得る環としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基などの単環式のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基及びテトラシクロドデカニル基などの多環式のものであってもよい。RとRとが互いに結合して環を形成する場合、Rは炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0087】
及びRの一方は、アダマンチル基であることが好ましい。即ち、Aにおける酸の作用により脱離する基は、下式により表される構造を有していることが好ましい。なお、下式は、Rがアダマンチル基である場合の構造を示している。
【化16】

【0088】
式中、R及びRは、一般式(S1−1)及び(S1−2)における各々と同義である。
【0089】
また、RとRとは、互いに結合して環を形成していることも好ましい。この環は、例えば、下式により表される構造を有している。
【化17】

【0090】
式中、Rは、一般式(S1−1)及び(S1−2)におけるRと同義である。
nは、1〜5の整数である。nは、好ましくは、3又は4である。即ち、RとRとが互いに結合して形成される環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0091】
−COOAの具体例を以下に示す。
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
一般式(IA)及び(IB)は、一態様において、下記一般式(IIA)及び(IIB)により表される。
【化20】

【0094】
式中、
Xはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xは、好ましくはメチレン基、エチレン基又は酸素原子である。
Zは、nが2以上の場合には各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アラルキル基を表す。
nは0〜5の整数を表す。nは、0〜2であることが好ましく、0〜1であることがより好ましく、0であることが最も好ましい。
Q、L、及びmは、一般式(IA)及び(IB)における各基と同義である。
は、一般式(IB)におけるAと同義である。Aは、例えば、上掲の一般式(S1−1)又は(S1−2)で表される。
【0095】
一般式(IIA)及び(IIB)は、好ましくは、下記一般式(IIa)及び(IIb)により表される。
【化21】

【0096】
式中、Q、L、X、Z、A、n及びmは、一般式(IIA)及び(IIB)における各基と同義である。
【0097】
また、一般式(IIA)及び(IIB)は、他の態様において、下記一般式(IIIA)及び(IIIB)により表される。
【化22】

【0098】
式中、
、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基,ニトロ基,アシル基,アシロキシ基,シクロアルキル基,アリール基、カルボキシル基,アルキルオキシカルボニル基,アルキルカルボニルオキシ基,又はアラルキル基を表す。
は、m≧2の場合には各々独立に、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
【0099】
は、m≧2の場合には各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、0〜5の整数を表す。
X、Z、A及びnは、一般式(IIA)又は(IIB)における各基と同義である。
【0100】
一般式(IIIA)及び(IIIB)は、好ましくは、下記一般式(IIIa)及び(IIIb)により表される。
【化23】

【0101】
式中、R〜R、R、L、X、Z、A、m及びnは、一般式(IIIA)又は(IIIB)における各基と同義である。
【0102】
また、一般式(IIA)及び(IIB)は、他の態様において、下記一般式(IVA)及び(IVB)により表される。
【化24】

【0103】
式中、
1aは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。R1aは水素原子またはメチル基であることが好ましい。
lは、1〜5の整数を表す。lは、1であることが好ましい。
X、Z、A、m、及びnは、一般式(IIA)又は(IIB)における各基と同義である。
【0104】
また、一般式(IVA)及び(IVB)は、一態様において、下記一般式(IVa)及び(IVb)により表される。
【化25】

【0105】
式中、R1a、X、Z、A、l、m、及びnは、一般式(IVA)又は(IVB)における各基と同義である。
以下に、本発明により製造される一般式(IB)で表される化合物の具体例を示す。
具体例中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Rは、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子である。
【化26】

【0106】
【化27】

【0107】
【化28】

【0108】
【化29】

【0109】
〔感活性光線性または感放射線性樹脂組成物〕
[1]酸分解性樹脂
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう。)Pを含有する。
〔繰り返し単位(A)〕
樹脂Pは、酸分解性基を有する繰り返し単位(A)を含む。
繰り返し単位(A)は、上掲の一般式(IB)により表される単量体由来の繰り返し単位である。すなわち、繰り返し単位(A)は、ラクトン構造(Lc)に酸分解性基(−COOA)が結合した下記構造を有する繰り返し単位であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、オレフィン誘導体、又はスチレン誘導体等の形態である。
【化30】

【0110】
(式中のL、Lc、A及びmは、一般式(IB)における各基と同義である。)
ここで用いられる一般式(IB)により表される化合物は、上掲の一般式(IA)により表される化合物を用いて上掲の製造方法により製造されたものが用いられる。
【0111】
繰り返し単位(A)として、具体的には、上掲の一般式(IB)、(IIB)、(IIb)、(IIIB)、(IIIb)、(IVB)、及び(IVb)により表される化合物に対応する繰り返し単位、並びに、一般式(IB)の化合物の具体例に対応する繰り返し単位が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0112】
繰り返し単位(A)の含有率は、樹脂P中の全繰り返し単位に対し、10〜100mol%であることが好ましく、20〜100mol%であることがより好ましく、30〜100mol%であることが更に好ましい。
【0113】
〔繰り返し単位(B)〕
樹脂(P)は、繰り返し単位(A)とは異なる、酸分解性基を有する繰り返し単位(B)を有していてもよい。
酸分解性基が分解して発生するアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
【0114】
好ましいアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
【0115】
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
【0116】
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
【0117】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0118】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。
【0119】
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
繰り返し単位(B)としては、下記一般式(V)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【化31】

【0120】
一般式(V)において、R51、R52、R53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環(好ましくは、5員もしくは6員環)を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表わす。
は、単結合または2価の連結基を表し、R52と環を形成する場合には3価の連結基
を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基または1価の芳香環基を表す。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。但し、R55とR56とが同時に水素原子であることはない。
【0121】
一般式(V)について、更に詳細に説明する。
一般式(V)におけるR51〜R53のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0122】
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R51〜R53におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0123】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0124】
またR52がアルキレン基でありLと環を形成する場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が特に好ましい。
【0125】
式(V)におけるR51及びR53としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)が特に好ましい。R52としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキレン基(Lと環を形成)がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)、メチレン基(Lと環を形成)、エチレン基(Lと環を形成)が特に好ましい。
【0126】
で表される2価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香環基、−COO−L−、−O−L−、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基等が挙げられる。ここで、Lはアルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、アルキレン基と2価の芳香環基を組み合わせた基を表す。
【0127】
は、単結合、−COO−L−で表される基又は2価の芳香環基が好ましい。ArFエキシマレーザーで露光する場合には、193nm領域の吸収低減の観点から、単結合又は−COO−L−であることが好ましい。Lは炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、メチレン、プロピレン基がより好ましい。
【0128】
54〜R56のアルキル基としては炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが特に好ましい。
【0129】
55及びR56で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。
【0130】
また、R55及びR56が互いに結合して形成される環としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。R55及びR56が互いに結合して環を形成する場合、R54は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0131】
55及びR56で表される1価の芳香環基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R55及びR56のどちらか一方が水素原子の場合、他方は1価の芳香環基であることが好ましい。
【0132】
ArFエキシマレーザーで露光する場合には、193nm領域の吸収低減の観点から、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基であることが好ましい。
【0133】
一般式(V)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、一般的な重合性基含有エステルの合成法を適用することが可能であり、特に限定されることはない。
以下に、繰り返し単位(B)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化32】

【0134】
【化33】

【0135】
【化34】

【0136】
【化35】

【0137】
本発明の樹脂(P)が繰り返し単位(B)を含有する場合、その含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対して、1〜70モル%の範囲が好ましく、5〜50モル%の範囲がより好ましい。
【0138】
〔繰り返し単位(C)〕
樹脂(P)は、繰り返し単位(A)とは異なる、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(C)を有していてもよい。
【0139】
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基としては、ラクトン構造、フェニルエステル構造などが挙げられる。
繰り返し単位(C)としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【化36】

【0140】
一般式(AII)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0141】
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂肪族炭化水素環構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される2価の連結基である。
Abは、直鎖又は分岐アルキレン基、単環または多環の脂肪族炭化水素環基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
【0142】
Vは、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を表す。好ましくはエステル結合を有する基であり、中でもラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0143】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。Vとしては、先に挙げた一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基がより好ましい。また、樹脂(P)は、繰り返し単位(C)以外に更にラクトン構造が主鎖に直接結合した繰り返し単位を含有していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)である。特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥性能が良好になる。
【0144】
一般式(AII)により表される繰り返し単位は、下記一般式(III−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化37】

【0145】
一般式(III−1)に於いて、
は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
【化38】

【0146】
又はウレア結合
【化39】

【0147】
を表す。ここで、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。
【0148】
nは、−R−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜5の整数を表す。
7は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0149】
のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
【0150】
9は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコ
キシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのR9が結合し、環を形成していてもよい。
【0151】
Xは、アルキレン基、酸素原子または硫黄原子を表す。
mは、置換基数であって、0〜5の整数を表す。mは0または1であることが好ましい。
【0152】
9のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、がより好ましく、メチル基が最も好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。R9はメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、シアノ基であることがさらに好ましい。
【0153】
Xのアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。Xは酸素原子またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることがさらに好ましい。
【0154】
mが1以上である場合、少なくとも1つのRはラクトンのカルボニル基のα位またはβ位に置換することが好ましく、特にα位に置換することが好ましい。
【0155】
本発明の樹脂(P)が繰り返し単位(C)を含有する場合、その含有率は、全繰り返し単位に対して、1〜60モル%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜50モル%の範囲であり、さらに好ましくは5〜50モル%の範囲である。繰り返し単位(C)は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
以下に、樹脂(P)中の繰り返し単位(C)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rxは、H,CH,CHOH,またはCFを表す。
【化40】

【0157】
〔繰り返し単位(D)〕
樹脂(P)は、前述の繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)及び繰り返し単位(C)以外の水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を更に有していても良い。これにより基板密着性、現像液親和性を向上させることができる。
【0158】
繰り返し単位(D)は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【化41】

【0159】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、R2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cの内の1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R2c〜R4cの内の2つが水酸基で、残りが水素原子である。
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【化42】

【0160】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、R1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R2c〜R4cと同義である。
【0161】
本発明の樹脂(P)が、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位(D)を含有する場合、その含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜40mol%が好ましく、より好ましくは2〜30mol%、更に好ましくは5〜25mol%である。
【0162】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位(D)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【化43】

【0163】
本発明の樹脂(P)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有してもよい。アルカリ可溶性基としてはフェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられる。
【0164】
ArFエキシマレーザーで露光する場合には、カルボキシ基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0165】
樹脂(P)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含んでいる場合、この繰り返し単位の含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは1〜15mol%、更に好ましくは2〜10mol%である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH、CHOH,又はCFを表す。
【化44】

【0166】
樹脂(P)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を更に有していてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、一般式(VII)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化45】

【0167】
一般式(VII)中、Rは少なくとも一つの脂環炭化水素構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0168】
が有する脂環炭化水素構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3から12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3から12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0169】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0170】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0171】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
【0172】
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0173】
樹脂(P)が、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有する場合、この繰り返し単位の含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは2〜20モル%である。
【0174】
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【化46】

【0175】
本発明の樹脂(P)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的に必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これにより、本発明の組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0176】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0177】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0178】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0179】
また、本発明の組成物が、後述する疎水性樹脂を含んでいる場合、樹脂(P)は、疎水性樹脂との相溶性の観点から、フッ素原子及びケイ素原子を含んでいないことが好ましい。
【0180】
本発明の樹脂(P)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
樹脂(P)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
【0181】
例えば、一般的合成方法としては、不飽和モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に不飽和モノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0182】
重合に使用される溶媒としては、例えば、後述の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤等を挙げることができ、より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0183】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシ基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0184】
反応の濃度は通常5〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
【0185】
反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である。
【0186】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0187】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0188】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0189】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0190】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0191】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0192】
樹脂(P)は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、単量体およびオリゴマー成分の残存量が0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましく、0〜1質量%であることが更に好ましい。これにより、液中異物の量を減少させ、感度等の経時変化を低減することが可能となる。
【0193】
本発明に係わる樹脂(P)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜200000の範囲であることが好ましく、2000〜60000の範囲であることがより好ましく、2000〜30000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量を1000〜200000の範囲とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0194】
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.03〜3.50であり、更に好ましくは、1.05〜2.50である。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0195】
本発明の樹脂(P)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂(P)の含有率は、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、30〜99質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。
【0196】
樹脂(P)のより好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化47】

【0197】
【化48】

【0198】
【化49】

【0199】
【化50】

【0200】
[2]活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明に係る組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含んでいる。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0201】
酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン及びo−ニトロベンジルスルホネートが挙げられる。
【0202】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、及び特開昭63−146029号等の各公報に記載の化合物を用いてもよい。
【0203】
さらに、米国特許第3,779,778号明細書及び欧州特許第126,712号明細書等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0204】
酸発生剤の好ましい例として、下記一般式(ZI)、(ZII)及び(ZIII)により表される化合物が挙げられる。
【化51】

【0205】
一般式(ZI)中、R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的には1〜30であり、好ましくは1〜20である。R201、R202及びR203の有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)又は(ZI−4)における対応する基が挙げられる。
【0206】
201〜R203のうち2つは、単結合又は連結基を介して互いに結合して、環構造を形成してもよい。この場合の連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。R201〜R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0207】
-は、非求核性アニオンを表す。この非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンが挙げられる。
【0208】
なお、非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンである。このようなアニオンを用いると、分子内求核反応による経時分解を抑制することができる。それゆえ、こうすると、組成物及びそれを用いて形成した膜の経時安定性が向上する。
【0209】
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン及びカンファースルホン酸アニオンが挙げられる。
【0210】
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンが挙げられる。
【0211】
脂肪族スルホン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜30であることが好ましく、シクロアルキル基の炭素数は3〜30であることが好ましい。このようなアルキル基又はシクロアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及びボルニル基が挙げられる。
【0212】
芳香族スルホン酸アニオンにおける芳香族基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基及びナフチル基が挙げられる。
【0213】
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、及びシクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)が挙げられる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を更に挙げることができる。
【0214】
脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位としては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオンおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0215】
芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のアリール基が挙げられる。
【0216】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、炭素数が6〜12のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基及びナフチルブチル基が挙げられる。
【0217】
脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基等が挙げられる。
【0218】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンが挙げられる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン及びトリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンにおけるアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基及びネオペンチル基が挙げられる。これらのアルキル基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、及びシクロアルキルアリールオキシスルホニル基が挙げられる。これらのうち、フッ素原子で置換されたアルキル基が特に好ましい。
【0219】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、BF、PF及びSbFが挙げられる。
【0220】
-の非求核性アニオンとしては、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換された脂肪族
スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、又はアルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。Z-の非求核性アニオンとしては、炭素数4〜8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン又はフッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン及び3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
【0221】
の好ましい有機アニオンとしては、例えば、下記の有機アニオンが挙げられる。
【化52】

【0222】
式中、Rcは有機基を表す。
この有機基としては、炭素数が1〜30のものが挙げられる。この有機基は、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はこれらの複数が単結合若しくは連結基を介して連結された基である。この連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−S−、−SO−及び−SON(Rd)−が挙げられる。ここで、Rdは、水素原子又はアルキル基を表す。なお、上記の有機基は、置換基を更に有していてもよい。
【0223】
Rc、Rc及びRcは、各々独立に、有機基を表す。
これら有機基としては、例えば、先にRcについて説明したのと同様の基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のパーフロロアルキル基が特に好ましい。
【0224】
なお、RcとRcとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。RcとRcとが結合して形成し得る基としては、例えば、アルキレン基及びアリーレン基が挙げられる。この基は、好ましくは、炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
【0225】
Rc、Rc、Rc及びRcの有機基としては、1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基が特に好ましい。これら有機基にフッ素原子又はフロロアルキル基を含有させることにより、光照射によって発生する酸の酸性度が上がり、感度を向上させることが可能となる。
【0226】
また、Zとして、下記一般式(A2)により表されるアニオンが挙げられる。
【化53】

【0227】
式(A2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
【0228】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、y≧2の場合には、複数の前記R及びRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、z≧2の場合には、複数の前記Lは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Aは、環状構造を有する基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0229】
以下、一般式(A2)により表されるアニオンについて、更に詳細に説明する。
Xfは、上述したように、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜4のものが好ましい。また、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0230】
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH又はCHCHである。これらのうち、フッ素原子又はCFが特に好ましい。
【0231】
及びRの各々は、上述したように、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。このフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。また、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基は、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。具体的には、例えば、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH及びCHCHが挙げられる。これらのうち、CFが特に好ましい。
【0232】
Lは、上述したように、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。これらのうち、−COO−、−OCO−、−CO−又は−O−が好ましく、−COO−又は−OCO−がより好ましい。
【0233】
Aは、上述したように、環状構造を有する基を表す。環状構造を有する基としては、例えば、脂環基、アリール基及び複素環構造を有する基が挙げられる。環状構造を有する基としては、例えば、テトラヒドロピラニル基及びラクトン基が挙げられる。なお、複素環構造を有する基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。
【0234】
Aとしての脂環基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。
単環構造を有した脂環基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。
【0235】
多環構造を有した脂環基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、炭素数が7以上の多環のシクロアルキル基が好ましい。このような嵩高い構造を有する脂環基を採用すると、PEB工程での酸の膜中拡散性が抑制され、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)を更に向上させることが可能となる。
【0236】
Aとしてのアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基又はアントリル基である。これらのうち、波長が193nmの光に対する吸光度が低いナフチルを用いることが特に好ましい。
【0237】
Aとしての複素環構造を有する基としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びピリジン環が挙げられる。これらのうち、フラン環、チオフェン環及びピリジン環が特に好ましい。
【0238】
Aとしての脂環基、アリール基又は複素環構造を有する基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。
【0239】
xは、1〜8であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
yは、0〜4であることが好ましく、0であることがより好ましい。
zは、0〜8であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
【0240】
なお、酸発生剤としては、一般式(ZI)により表される構造を複数有する化合物を使用してもよい。例えば、一般式(ZI)により表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)により表されるもう1つの化合物のR201〜R203の少なくとも1つと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0241】
一般式(ZI)により表される化合物の好ましい例としては、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)が挙げられる。
【0242】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である。即ち、化合物(ZI−1)は、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0243】
化合物(ZI−1)は、R201〜R203の全てがアリール基であってもよく、R201〜R203の一部がアリール基であり、それら以外がアルキル基であってもよい。なお、化合物(ZI−1)が複数のアリール基を有する場合、これらアリール基は互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0244】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0245】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等を有する複素環を備えたアリール基であってもよい。複素環構造としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェンが挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合、これら複数のアリール基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0246】
化合物(ZI−1)が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0247】
201〜R203のアリール基、アルキル基又はシクロアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基及びフェニルチオ基が挙げられる。
【0248】
好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。より好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0249】
置換基は、3つのR201〜R203のうちの何れか1つ又は2つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203の何れかフェニル基である場合、置換基は、フェニル基のp−位に置換していることが好ましい。
【0250】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。なお、ここで「芳香環」とは、ヘテロ原子を含有する芳香環をも包含するものである。
【0251】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、炭素数が例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0252】
201〜R203は、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であることが好ましい。更に好ましくは、直鎖、分岐鎖若しくは環状の2−オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基であり、特に好ましくは、直鎖又は分岐鎖の2−オキソアルキル基である。
【0253】
201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペ
ンチル基)、及び、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はノルボニル基)が挙げられる。
【0254】
より好ましいアルキル基としては、2−オキソアルキル基及びアルコキシカルボニルメチル基が挙げられる。より好ましいシクロアルキル基としては、2−オキソシクロアルキル基が挙げられる。
【0255】
2−オキソアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。好ましい2−オキソアルキル基としては、例えば、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基が挙げられる。
【0256】
好ましい2−オキソシクロアルキル基としては、例えば、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0257】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられる。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペントキシ基が挙げられる。
【0258】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0259】
次に、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)は、下記一般式(ZI−3)により表される化合物である。
【化54】

【0260】
一般式(ZI−3)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、または単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、または単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
-は、非求核性アニオンを表す。Z-は、先に一般式(ZI)について説明したものと同義である。
【0261】
一般式(ZI−3)について更に詳細に説明する。
13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0262】
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
【0263】
13及びR14のアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基及びn−デシルオキシ基が挙げられる。これらのうち、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びn−ブトキシ基が特に好ましい。
【0264】
13及びR14のアルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。このアルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜11であることが好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基及びn−デシルオキシカルボニル基が挙げられる。これらのうち、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0265】
13及びR14により表される単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基は、総炭素数が7以上であることが好ましく、総炭素数が7以上15以下であることがより好ましい。
【0266】
単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基としては、例えば、単環もしくは多環のシクロアルキルオキシ基、及び、単環もしくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、単環のシクロアルキル骨格を有する基であることが好ましい。これら基は、置換基を更に有していてもよい。
【0267】
単環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基及びシクロドデカニルオキシ基が挙げられる。これら基は、置換基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びiso−アミル基等のアルキル基;水酸基:フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;アミド基;スルホンアミド基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基等のアシル基;アセトキシ基及びブチリルオキシ基等のアシロキシ基;又はカルボキシ基を更に有していてもよい。
【0268】
多環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、ノルボニルオキシ基及びアダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0269】
単環もしくは多環のシクロアルキルオキシ基は、上述したように、総炭素数が7以上であることが好ましい。即ち、先に挙げたシクロアルキルオキシ基の炭素数と上記の置換基の炭素数との合計が7以上である構成を採用することが好ましい。
【0270】
単環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、iso−アミルオキシ基等のアルコキシ基に、単環のシクロアルキル基が置換したものが挙げられる。この単環のシクロアルキル基は、先に挙げた置換基を更に有していてもよい。たとえば、シクロヘキシルメトキシ基、シクロペンチルエトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基等が挙げられ、シクロヘキシルメトキシ基が好ましい。
【0271】
多環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、ノルボニルオキシ基及びアダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0272】
単環もしくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基は、上述したように、総炭素数が7以上であることが好ましい。即ち、先に挙げたアルコキシ基の炭素数と単環のシクロアルキル基の炭素数と上記の置換基の炭素数との合計が7以上である構成を採用することが好ましい。
【0273】
14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13〜R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
【0274】
14のアルキルスルホニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。このようなアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、tert−ブタンスルホニル基、n−ペンタンスルホニル基、ネオペンタンスルホニル基、n−ヘキサンスルホニル基、n−ヘプタンスルホニル基、n−オクタンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、n−ノナンスルホニル基、n−デカンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が挙げられる。これらのうち、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
【0275】
上記の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基及びシクロアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子がより好ましい。このハロゲン原子としては、フッ素原子が特に好ましい。
【0276】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数が1〜20のものが挙げられる。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数が4〜20のものが挙げられる。
【0277】
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基及び2−エトキシエチル基等の炭素数が2〜21のものが挙げられる。
【0278】
シクロアルコキシアルキル基としては、例えば、シクロペンチルオキシメチル基及びシクロペンチルオキシメチルエトキシ基が挙げられる。
【0279】
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基及びt−ブトキシカルボニル基等の炭素数が2〜21のものが挙げられる。
シクロアルコキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数が4〜21のものが挙げられる。
【0280】
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基及びt−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数が2〜21のものが挙げられる。
シクロアルコキシカルボニルオキシ基としては、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数が4〜21のものが挙げられる。
【0281】
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、一般式(ZI−3)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が挙げられる。
【0282】
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0283】
15としては、メチル基、エチル基、1−ナフチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
【0284】
上記lは、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
上記rは、0〜2であることが好ましい。
【0285】
次に、化合物(ZI−4)について説明する
化合物(ZI−4)は、下記一般式(ZI−4)により表される化合物である。
【化55】

【0286】
一般式(ZI−4)中、Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、または炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
x及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
x及びRyが結合して環を形成してもよい。
M、R1c及びR2cの少なくとも2つが結合して環を形成してもよく、該環構造に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
-は、非求核性アニオンを表す。Z-は、先に一般式(ZI)について説明したものと同義である。
【0287】
一般式(ZI−4)について更に詳細に説明する。
Mは、上述したように、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル原子、アミド結合または炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0288】
Mとしてのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜12であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基を挙げることができる。
【0289】
Mとしてのシクロアルキル基は、炭素数が3〜12個のであることが好ましい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などを挙げることができる。
【0290】
Mとしてのアリール基は、炭素数が5〜15であることが好ましい。このようなアリール基としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0291】
Mとしての各基は、置換基として、シクロアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子、フェニルチオ基等を有していてもよい。Mとしてのシクロアルキル基及びアリール基は、置換基として、アルキル基を有していてもよい。これら置換基の炭素数は、15以下であることが好ましい。
【0292】
Mがフェニル基である場合、置換基として、少なくとも1つのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、又はフェニルチオ基を有することが好ましい。また、この場合、置換基の炭素数の和が2〜15であることが更に好ましい。このような構成を採用すると、酸発生剤の溶剤への溶解性が向上し、保存時におけるパーティクルの発生を更に抑制することが可能となる。
【0293】
1c及びR2cの各々は、上述したように、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましく、炭素数が1〜5であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、及び直鎖又は分岐鎖プロピル基が挙げられる。
【0294】
シクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキル基であり、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などを挙げることができる。
【0295】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0296】
1c及びR2cとしてのアリール基としては、好ましくは炭素数5〜15であり、例えば、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
【0297】
1c及びR2cの好ましい態様として、R1c及びR2cの両方ともがアルキル基である場合が挙げられる。このアルキル基として特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基、とりわけ好ましくはメチル基である。
【0298】
また、上述したように、M、R1c及びR2cのうち少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環としては、好ましくは3〜12員環、より好ましくは3〜10員環、更に好ましくは3〜6員環が挙げられる。この環は、炭素−炭素二重結合を備えていてもよい。
【0299】
1cとR2cとが結合して環を形成する場合に、R1cとR2cとが結合して形成する基としては、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などを挙げることができる。また、R1cとR2cとが結合して形成する環は、環内に酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0300】
及びRの各々は、上述したように、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルコキシカルボニルメチル基、アリル基、又はビニル基を表す。
【0301】
アルキル基としては、例えば、先にR1c及びR2cのアルキル基として説明したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜12のものが好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロデシル基が挙げられる。
【0302】
2−オキソアルキル基としては、例えば、上記アルキル基の2位に>C=Oを備えた基が挙げられる。
【0303】
アルコキシカルボニルメチル基のアルコキシ基部分は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基部分は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜5であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、及び直鎖又は分岐ペントキシ基が挙げられる。
【0304】
シクロアルコキシカルボニルアルキル基のシクロアルコキシ基部分は、炭素数が3〜8であることが好ましい。このようなシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。また、アルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5の直鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基を挙げることができる。
【0305】
上述したように、RxとRyとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。Rx及びRyが互いに結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0306】
アリル基としては、特に制限は無いが、無置換の単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換されたアリル基であることが好ましい。
【0307】
ビニル基としては、特に制限は無いが、無置換の単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換されたビニル基であることが好ましい。
【0308】
x及びRyの各々は、炭素数4以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数6以上のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8以上のアルキル基であることが更に好ましい。
【0309】
一般式(ZI−4)中のZとしては、先に一般式(ZI−3)において説明したのと同様のアニオンが挙げられる。
【0310】
続いて、一般式(ZII)又は(ZIII)により表される化合物について説明する。
一般式(ZII)、(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0311】
204〜R207のアリール基としては、フェニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基が更に好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等を有する複素環を備えたアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、及びベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合、これら複数のアリール基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0312】
204〜R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は、炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が挙げられる。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びノルボニル基が挙げられる。
【0313】
204〜R207のアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基が挙げられる。
【0314】
-は、非求核性アニオンを表す。この非求核性アニオンとしては、例えば、一般式(ZI)におけるX-として説明したものが挙げられる。
酸発生剤として、下記一般式(ZIV)、(ZV)又は(ZVI)により表される化合物を更に挙げることができる。
【化56】

【0315】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。R208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
以上に挙げた酸発生剤の中でも、一般式(ZI)〜(ZIII)により表される化合物が特に好ましい。
【0316】
また、酸発生剤として、スルホン酸基又はイミド基を1つ有する酸を発生する化合物を用いることが好ましい。特には、1価のパーフルオロアルカンスルホン酸を発生する化合物、1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含有する基で置換された芳香族スルホン酸を発生する化合物、又は1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含有する基で置換されたイミド酸を発生する化合物を用いることが好ましい。更には、フッ化置換アルカンスルホン酸、フッ素置換ベンゼンスルホン酸、フッ素置換イミド酸又はフッ素置換メチド酸のスルホニウム塩を用いることがより好ましい。
【0317】
酸発生剤は、発生する酸のpKaが−1以下であることが好ましい。このような酸発生剤を用いると、組成物の感度を更に向上させることができる。酸発生剤としては、pKa≦−1であるフッ化置換アルカンスルホン酸、フッ化置換ベンゼンスルホン酸又はフッ化置換イミド酸を発生する化合物を用いることが特に好ましい。
以下に、特に好ましい酸発生剤の具体例を挙げる。
【化57】

【0318】
【化58】

【0319】
【化59】

【0320】
【化60】

【0321】
【化61】

【0322】
【化62】

【0323】
【化63】

【0324】
酸発生剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0325】
本発明に係る組成物が酸発生剤を含んでいる場合、その含有率は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは7〜40質量%最も好ましくは10〜40質量%である。
【0326】
本発明に係る組成物が酸発生剤として化合物(ZI−3)を含んでいる場合、その含有率は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは10〜35質量%であり、更に好ましくは15〜30質量%である。こうすると、例えば、ラフネス特性及び露光ラチチュードを更に良化させることが可能となる。
【0327】
<その他の成分>
本発明に係る組成物は、疎水性樹脂、溶剤、塩基性化合物、界面活性剤、カルボン酸オニウム塩、溶解阻止化合物、及び/又は、その他の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0328】
(疎水性樹脂)
本発明に係る組成物は、上述したように、疎水性樹脂を更に含んでいてもよい。疎水性樹脂を更に含有させると、この組成物を用いて形成した膜の表層に疎水性樹脂が偏在化し、液浸液として水を使用した場合の液浸液に対する膜の後退接触角を向上させることが可能となる。これにより、膜の液浸液追随性を向上させることができる。
【0329】
疎水性樹脂は、典型的には、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含んでいる。これらフッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0330】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、この樹脂は、フッ素原子を含んだ部分構造として、フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基、又はフッ素原子を含んだアリール基を備えていることが好ましい。
【0331】
フッ素原子を含んだアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基である。このアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましい。このフッ素原子を含んだアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
【0332】
フッ素原子を含んだシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環式又は多環式のシクロアルキル基である。このフッ素原子を含んだシクロアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
【0333】
フッ素原子を含んだアリール基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。このフッ素原子を含んだアリール基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
【0334】
フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基及びフッ素原子を含んだアリール基の好ましい例として、下記一般式(F2)〜(F4)により表される基が挙げられる。
【化64】

【0335】
一般式(F2)〜(F4)中、R57〜R68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62〜R64のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R65〜R68のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。これらアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましい。
【0336】
57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。
62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。なお、R62とR63とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0337】
一般式(F2)により表される基としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基が挙げられる。
【0338】
一般式(F3)により表される基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、及びパーフルオロシクロヘキシル基が挙げられる。これらのうち、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基又はパーフルオロイソペンチル基がより好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基又はヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
【0339】
一般式(F4)により表される基としては、例えば、−C(CF32OH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、及び−CH(CF3)OHが挙げられる。これらのうち、−C(CF32OHが特に好ましい。
【0340】
以下に、フッ素原子を含んだ繰り返し単位の具体例を示す。
【0341】
具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。X2は、−F又は−CF3を表す。
【化65】

【0342】
疎水性樹脂がケイ素原子を含んでいる場合、この樹脂は、ケイ素原子を含んだ部分構造として、アルキルシリル構造又は環状シロキサン構造を備えていることが好ましい。このアリキルシリル構造は、好ましくは、トリアルキルシリル基を含んだ構造である。
【0343】
アルキルシリル構造及び環状シロキサン構造の好ましい例として、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基が挙げられる。
【化66】

【0344】
一般式(CS−1)〜(CS−3)中、R12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。このアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。このシクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
【0345】
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、又はこれらの組合せが挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
【0346】
以下に、一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基を備えた繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
【化67】

【0347】
疎水性樹脂は、下記(x)乃至(z)からなる群より選択される少なくとも1つの基を更に含んでいてもよい。
(x)アルカリ可溶性基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基
(z)酸分解性基
(x)アルカリ可溶性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基、スルホンイミド基及びビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。好ましいフッ素化アルコール基としては、ヘキサフルオロイソプロパノール基が挙げられる。
【0348】
アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位は、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、アルカリ可溶性基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、アルカリ可溶性基を備えた重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
【0349】
アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位にを基準として、1〜50モル%であることが好ましく、3〜35モル%であることがより好ましく、5〜20モル%であることが更に好ましい。
以下に、アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位の具体例を示す。
【化68】

【0350】
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン構造を備えた基、酸無水物基、及び酸イミド基が挙げられる。これらのうち、ラクトン構造を備えた基が特に好ましい。
【0351】
この基を含んだ繰り返し単位は、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接この基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、この基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、この基を備えた重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
【0352】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を備えた繰り返し単位としては、例えば、先に[1]樹脂の項で説明したラクトン構造を備えた繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0353】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜40モル%であることが好ましく、3〜30モル%であることがより好ましく、5〜15モル%であることが更に好ましい。
【0354】
(z)酸分解性基としては、例えば、先に[1]樹脂の項で説明したのと同様のものが挙げられる。
酸分解性基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、20〜60モル%であることが更に好ましい。
【0355】
疎水性樹脂は、下記一般式(III)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【化69】

【0356】
一般式(III)中、Rc31は、水素原子、アルキル基、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基、シアノ基又は−CH2−O−Rac2基を表す。ここで、Rac2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
【0357】
c31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0358】
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を含んだ基を表す。これら基は、フッ素原子及び/又はケイ素原子で置換されていてもよい。
【0359】
c32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
アルケニル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20であることが好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が好ましく、これらは置換基を有していてもよく、その置換基としては直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。
【0360】
シクロアルケニル基は、炭素数が3〜20であるシクロアルケニル基が好ましい。
【0361】
c32は、無置換のアルキル基又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。
【0362】
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、例えば、エステル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、及びエステル結合(−COO−により表される基)が挙げられる。
【0363】
疎水性樹脂は、下記一般式(CII−AB)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【化70】

【0364】
式(CII−AB)中、
c11'及びRc12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Zc’は、Rc11'及びRc12'が結合している2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するために必要な原子団を表す。
以下に、一般式(III)又は(CII−AB)により表される繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。
【化71】

【0365】
以下に、疎水性樹脂の具体例を挙げる。また、下記表1に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、及び分散度を纏める。
【化72】

【0366】
【化73】

【0367】
【化74】

【0368】
【表1】

【0369】
なお、疎水性樹脂は、先に説明した繰り返し単位(A)を更に含んでいてもよい。この場合、疎水性樹脂に占める繰り返し単位(A)の含有率は、全繰り返し単位に対して、好ましくは5〜50%であり、より好ましくは10〜30%である。
【0370】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂の分子量を基準として、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含んだ繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂の全繰り返し単位を基準として、10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
【0371】
疎水性樹脂がケイ素原子を含んでいる場合、ケイ素原子の含有量は、疎水性樹脂の分子量を基準として、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、ケイ素原子を含んだ繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂の全繰り返し単位を基準として、10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
【0372】
疎水性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは2,000〜15,000である。
【0373】
疎水性樹脂の分散度は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。こうすると、より優れた解像度、パターン形状及びラフネス特性を達成することが可能となる。
【0374】
疎水性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
疎水性樹脂の含有量は、組成物中の全固形分を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜8質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
【0375】
疎水性樹脂のアルカリ現像液に対する加水分解速度は、0.001nm/秒以上であることが好ましく、0.01nm/秒以上であることがより好ましく、0.1nm/秒以上であることが更に好ましく、1nm/秒以上であることが特に好ましい。なお、疎水性樹脂のアルカリ現像液に対する加水分解速度は、23℃の2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液に対して、疎水性樹脂のみで樹脂膜を製膜した際の膜厚が減少する速度である。
【0376】
疎水性樹脂としては、市販品を使用してもよく、常法に従って合成したものを使用してもよい。この樹脂の一般的な合成方法としては、例えば、先に酸分解性樹脂について説明したのと同様の方法が挙げられる。
【0377】
疎水性樹脂は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、単量体及びオリゴマー成分の残存量が0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましく、0〜1質量%であることが更に好ましい。これにより、液中異物の量を減少させ、感度等の経時変化を低減することが可能となる。
【0378】
(溶剤)
本発明に係る組成物は、溶剤を更に含んでいてもよい。
この溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含んでいてもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0379】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0380】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0381】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルが挙げられる。
【0382】
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル及び3−メトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。
【0383】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン及びα−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0384】
環を含んでいてもよいモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン及び3−メチルシクロヘプタノンが挙げられる。
【0385】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びブチレンカーボネートが挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、及び酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びピルビン酸プロピルが挙げられる。
【0386】
溶剤としては、常温常圧下における沸点が130℃以上であるものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、PGMEA、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
これら溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。後者の場合、水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との混合溶剤を使用することが好ましい。
【0387】
水酸基を含んだ溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及び乳酸アルキルが挙げられる。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル又は乳酸エチルがより好ましい。
【0388】
水酸基を含んでいない溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン及び酢酸アルキルが好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート又は2−ヘプタノンが特に好ましい。
【0389】
水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との混合溶剤を使用する場合、これらの質量比は、好ましくは1/99〜99/1とし、より好ましくは10/90〜90/10とし、更に好ましくは20/80〜60/40とする。
【0390】
なお、水酸基を含んでいない溶剤を50質量%以上含んだ混合溶剤を用いると、特に優れた塗布均一性を達成し得る。また、溶剤は、PGMEAと他の1種以上の溶剤との混合溶剤であることが特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと他の少なくとも1種類の溶剤との混合溶剤であることが好ましい。
【0391】
(塩基性化合物)
本発明に係る組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)により表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化75】

【0392】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)、又はアリール基(炭素数6〜20)を表す。R201とR202とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
203、R204、R205及びR206は、各々独立に、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
【0393】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。これらアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0394】
好ましい塩基性化合物としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン及びピペリジンが挙げられる。更に好ましい塩基性化合物としては、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、並びに水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体が挙げられる。
【0395】
イミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、イミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール及び2−フェニルベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0396】
ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エンが挙げられる。
【0397】
オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド及び2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシドが挙げられる。より具体的には、トリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド及び2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0398】
オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としては、例えば、アニオンとしてカルボキシレートを備えたオニウムヒドロキシド構造を有する化合物が挙げられる。このカルボキシレートとしては、例えば、アセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート及びパーフロロアルキルカルボキシレートが挙げられる。
【0399】
トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、例えば、トリ(n−ブチル)アミン及びトリ(n−オクチル)アミンが挙げられる。
【0400】
アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、及びN,N−ジヘキシルアニリンが挙げられる。
【0401】
水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、及びトリス(メトキシエトキシエチル)アミンが挙げられる。
水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリンが挙げられる。
【0402】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0403】
これら化合物では、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合していることが好ましい。また、このアルキル基の鎖中に酸素原子が含まれ、オキシアルキレン基が形成されていることがより好ましい。このオキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上であることが好ましく、3〜9個であることがより好ましく、4〜6個であることが更に好ましい。これらオキシアルキレン基のうち、−CHCHO−、−CH(CH)CHO−又は−CHCHCHO−により表される基が特に好ましい。
【0404】
これら化合物の具体例としては、例えば、US2007/0224539Aの[0066]に例示されている化合物(C1-1)〜(C3-3)が挙げられる。
【0405】
塩基性化合物の合計量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜5質量%である。
【0406】
酸発生剤の合計量の塩基性化合物の合計量に対するモル比は、好ましくは2.5〜300であり、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。このモル比を過度に小さくすると、感度及び/又は解像度が低下する可能性がある。このモル比を過度に大きくすると、露光と加熱(ポストベーク)との間において、パターンの太りが生ずる場合がある。
【0407】
(界面活性剤)
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
【0408】
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(大日本インキ化学工業(株)製);サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製);GF−300若しくはGF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0409】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
【0410】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
【0411】
ポリ(オキシアルキレン)基としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基及びポリ(オキシブチレン)基が挙げられる。また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)及びポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等の、同じ鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するユニットであってもよい。
【0412】
さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体は、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー及び異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート等を同時に共重合してなる3元系以上の共重合体であってもよい。
【0413】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476及びF−472(大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。さらに、C613基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C613基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C817基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、及び、C817基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0414】
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0415】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%、更に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0416】
(カルボン酸オニウム塩)
本発明に係る組成物は、カルボン酸オニウム塩を更に含んでいてもよい。カルボン酸オニウム塩を含有させると、波長が220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度及び解像力が更に向上し、疎密依存性及び露光マージンが更に改良される。
【0417】
カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩が好ましい。そのアニオンとしては、例えば、炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐鎖アルキル又は単環式若しくは多環式シクロアルキルカルボン酸アニオンを用いることが好ましい。特には、これらアルキル基又はシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたカルボン酸アニオン(以下、フッ素置換カルボン酸アニオンともいう)が好ましい。なお、アルキル又はシクロアルキル鎖中に、酸素原子を含んでいてもよい。
【0418】
フッ素置換カルボン酸アニオンとしては、例えば、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、及び2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオンが挙げられる。
【0419】
本発明に係る組成物がカルボン酸オニウム塩を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、一般的には0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜7質量%である。
【0420】
(溶解阻止化合物)
本発明に係る組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の化合物である。
【0421】
この溶解阻止化合物としては、波長が220nm以下の光に対する透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724, 355 (1996) に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基及び脂環構造としては、例えば、先に説明したのと同様のものが挙げられる。
【0422】
なお、本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
【0423】
本発明に係る組成物が溶解阻止化合物を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
以下に、溶解阻止化合物の具体例を挙げる。
【化76】

【0424】
(その他の添加剤)
本発明に係る組成物は、必要に応じて、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又はカルボキシ基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0425】
分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210号、及び欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
【0426】
カルボキシ基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物としては、例えば、コール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸等のステロイド構造を含んだカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0427】
<パターン形成方法>
本発明に係る組成物を用いて膜を形成する場合、この膜の膜厚は、30〜250nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。こうすると、解像度を更に向上させることが可能となる。このような膜厚を有した膜は、組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定することにより粘度を調節し、塗布性及び製膜性を向上させることによって形成可能である。
【0428】
組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%であり、好ましくは1〜8.0質量%であり、更に好ましくは1.0〜6.0質量%である。
【0429】
本発明に係る組成物は、典型的には、以下のようにして用いる。即ち、上記の各成分を、所定の溶剤(好ましくは上記の混合溶剤)に溶解させ、得られた溶液をフィルター濾過した後、所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは、0.1μm以下であり、より好ましくは0.05μm以下であり、更に好ましくは0.03μm以下である。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製又はナイロン製であることが好ましい。
【0430】
この組成物は、例えば、精密集積回路素子の製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等を用いて塗布される。その後、これを乾燥させて、感活性光線性又は感放射線性の膜(以下、感光性膜ともいう)を形成する。なお、公知の反射防止膜を予め塗設することもできる。
【0431】
次いで、上記の感光性膜に活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行った後、現像する。ベークを行うことにより、更に良好なパターンを得ることが可能となる。
【0432】
活性光線又は放射線としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外(EUV)光、X線及び電子線が挙げられる。これらのうち、波長が好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmである遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、EUV光(13nm)、X線又は電子ビームが好ましい。特には、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光、又は電子ビームが好ましい。
【0433】
上記の反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0434】
本発明に係る組成物を用いて形成した膜に対しては、液浸露光を行ってもよい。即ち、膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体を満たした状態で、活性光線又は放射線の照射を行ってもよい。これにより、解像性を更に高めることが可能となる。
【0435】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。特に、露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ及び取り扱いのし易さといった点から、水を用いるのが好ましい。
また、更なる短波長化を図るべく、屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液であってもよく、有機溶剤であってもよい。
【0436】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加してもよい。
【0437】
その添加剤としては、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0438】
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理がされていることが望ましい。
【0439】
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を向上させるための添加剤を水に加えてもよく、水の代わりに重水(DO)を用いてもよい。
【0440】
レジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜と液浸液との接触を避けるために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト層上への塗布適正、放射線、特には193nmの波長を有した放射線に対する透明性、及び液浸液難溶性が挙げられる。トップコートとしては、レジストと混合せず、レジスト層上に均一に塗布できるものを用いることが好ましい。
【0441】
トップコートは、193nmにおける透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー及びフッ素含有ポリマーが挙げられる。上述した疎水性樹脂は、トップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染されるため、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は、少ない方が好ましい。
【0442】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジストへの浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジストの現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性であることが好ましいが、レジストとの非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
【0443】
トップコートと液浸液との間には、屈折率の差がないか又は小さいことが好ましい。この場合、解像力を向上させることが可能となる。露光光源がArFエキシマレーザー(波長:193nm)の場合には、液浸液として水を用いることが好ましいため、ArF液浸露光用トップコートは、水の屈折率(1.44)に近いことが好ましい。
【0444】
また、透明性及び屈折率の観点から、トップコートは、薄膜であることが好ましい。トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。また、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0445】
現像工程におけるアルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩の水溶液が用いられるが、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン及び環状アミン等の他のアルカリ水溶液も使用可能である。アルカリ現像液には、適当量のアルコール類及び/又は界面活性剤を添加してもよい。
【0446】
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常は0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常は10.0〜15.0である。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
【実施例】
【0447】
本発明の態様を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下に示す金属含有量は原子吸光分析装置にて分析した。
【0448】
<合成例1:化合物(3)の合成>
【化77】

【0449】
31.79gの化合物(2)を170gのN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。得られた溶液を0℃に冷却し、23.36gのKCOと30.00gの化合物(1)を入れた。その後、室温で4時間撹拌した後、再び0℃まで冷却して、400gの蒸留水を30分かけて滴下した。反応溶液に酢酸エチルを加えて3回抽出し、併せた有機層を蒸留水で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、43.49g(収率:86%)の化合物(3)を得た。金属含有量は100ppb以下であった。
【0450】
化合物(3)のH−NMR(ppm、CDCl3):0.87(3H、t)、1.50−1.85(7H、m)、1.88−2.18(6H、m)、1.94(3H、s)、2.58−2.71(2H、m)、3.68(1H、d)、4,52(1H、d)、4.65(1H、d)、4.68(1H、brs)、4.74(1H、s)、5.62(1H、s)、6.11(1H、s)。
【0451】
<合成例2:化合物(4)の合成>
【化78】

【0452】
42.63gの化合物(5)を170gのNMPに溶解させた。得られた溶液を0℃に冷却し、23.36gのKCOと30.00gの化合物(1)を入れた。その後、室温で6時間撹拌した後、再び0℃まで冷却して、200gの蒸留水を30分かけて滴下した。反応溶液に酢酸エチルを加えて3回抽出し、併せた有機層を蒸留水で3回洗浄した後、有機層に10gの活性炭素を加えて、1時間撹拌した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を取り出し、溶媒を留去し、49.04g(収率:87%)の化合物(4)を得た。金属含有量は100ppb以下であった。
【0453】
化合物(4)の1H−NMR(ppm、CDCl3):1.47(6H、s)、1.54−1.84(14H、m)、1.90−2.09(4H、m)、1.94(3H、s)、2.58−2.71(2H、m)、3.69(1H、d)、4.51(1H、d)、4.64(1H、d)、4.68(1H、brs)、4.73(1H、d)、5.62(1H、s)、6.10(1H、s)。
【0454】
<合成例3:化合物(8)の合成>
【化79】

【0455】
148.70gの化合物(1)に9.60mLのDMF、183.00gの塩化チオニルを加え、75℃で4時間撹拌した。塩化チオニルを留居し、154.23gの化合物(6)を得た。
窒素雰囲気下、30.00gの化合物(7)を脱水テトラヒドロフラン(THF)350mLに溶解させた。得られた溶液を−50℃に冷却し、90.43mLのnBuLi(2.76mol/L、ヘキサン溶液)を30分かけて滴下した。−50℃で1時間撹拌した後、49.86gの化合物(6)と脱水THF150mLの溶液を、30分かけて滴下した。その後、6時間かけて−10℃まで昇温し、100gの1規定塩酸を30分かけて滴下した。反応溶液に酢酸エチルを加えて、有機層を重曹水と蒸留水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、32.54g(収率:51%)の化合物(8)を得た。金属含有量は100ppb以下であった。
【0456】
化合物(8)のH−NMR(ppm、CDCl3):0.89(3H、t)、1.52−1.82(7H、m)、1.82−2.23(6H、m)、1.93(3H、s)、2.53(1H、dd)、2.63(1H、brs)、3.48(1H、d)、4.51−4.54(2H、m)、5.61(1H、s)、6.09(1H、s)。
【0457】
<合成例4:化合物(10)の合成>
【化80】

【0458】
窒素雰囲気下、30.00gの化合物(9)を脱水THF350mLに溶解させた。得られた溶液を−50℃に冷却し、53.14mLのnBuLi(2.76mol/L、ヘキサン溶液)を30分かけて滴下した。−50℃で2時間撹拌した後、31.40gの化合物(6)と脱水THF150mLの溶液を、30分かけて滴下した。その後、5時間かけて−5℃まで昇温し、100gの1規定塩酸を30分かけて滴下した。反応溶液に酢酸エチルを加えて、有機層を重曹水と蒸留水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、21.43g(収率:44%)の化合物(10)を得た。金属含有量は100ppb以下であった。
【0459】
化合物(10)のH−NMR(ppm、CDCl3):1.48(3H、s)、1.50(3H、s)、1.52−1.78(14H、m)、1.84−2.08(4H、m)、1.94(3H、s)、2.51(1H、dd)、2.64(1H、drs)、3.49(1H、d)、4.52−4.54(2H、m)、5.61(1H、s)、6.09(1H、s)。
【0460】
<合成例5:ポリマー(1)の合成>
【化81】

【0461】
窒素気流下、27.94質量部のPGMEA/PGME混合溶媒(質量比:8/2)を3つ口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。この溶媒中に、上記のモノマーを左から順に13.74質量部、1.18質量部、10.87質量部、5.25質量部と、1.50質量部(モノマーに対し6.5mol%)の2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V-601、和光純薬工業(株)製〕とを、65.18質量部のPGMEA/PGME混合溶媒(質量比:8/2)に溶解させた溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に85℃で2時間に亘って反応させた。反応液を放冷後、反応液に31.00質量部のPGMEAを加え、700質量部のヘプタンと300質量部の酢酸エチルとの混合液に30分かけて滴下し、粉体を析出させた。析出した粉体をろ取及び乾燥して、24.92質量部のポリマー(1)を得た。得られたポリマー(1)のGPC法による重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で10700であり、分散度(Mw/Mn)は、1.62であった。
【0462】
ポリマー(1)と同様にして、下記ポリマー(2)〜(27)を合成した。下記表2に、各々の組成比(モル%;各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量及び分散度を示す。
【化82】

【0463】
【化83】

【0464】
【表2】

【0465】
疎水性樹脂としては、上記(HR−1)〜(HR−65)又は下記(B−1)を用いた。なお、樹脂(B−1)の重量平均分子量は15000であり、分散度は1.5であり、組成比は50/50(モル比)であった。
【化84】

【0466】
光酸発生剤としては、以下の化合物を用いた。
【化85】

【0467】
<ArFドライ露光>
(レジストの調製)
下記表3に示す成分を、同表に示す溶剤に溶解させて、固形分濃度5.0質量%の溶液を調製した。その後、得られた溶液を、ポアサイズ0.1μmのポリエチレンフィルターを用いてろ過して、ポジ型レジスト溶液を調製した。
【0468】
(レジスト評価)
シリコンウエハー上に、有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間に亘ってベークした。これにより、シリコンウエハー上に、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に、上記のポジ型レジスト溶液を塗布し、90℃で60秒間に亘ってベークした。これにより、膜厚が120nmのレジスト膜を形成した。
【0469】
得られたレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用いて、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=75nmであり且つライン:スペース=1:1である6%ハーフトーンマスクを用いた。次いで、95℃で60秒間加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いた30秒間の現像処理に供した。その後、純水を用いてリンスし、スピン乾燥して、レジストパターンを得た。
【0470】
〔ラフネス特性:LWR〕
線幅75nmのラインパターン(ライン:スペース=1:1)を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて観察した。ラインパターン長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σを算出した。この値3σを「LWR」とした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0471】
〔露光ラチチュード(EL)〕
線幅が75nmのラインアンドスペース(ライン:スペース=1:1)のマスクパターンを再現する露光量を求め、これを最適露光量Eoptとした。次いで線幅が目的の値である75nmの±10%(即ち、67.5nm及び82.5nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さい。
【0472】
[EL(%)]=[(線幅が67.5nmとなる露光量)−(線幅が82.5nmとなる露光量)]/Eopt
〔現像欠陥性能〕
ケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに、また閾値を20に設定して、ランダムモードで測定し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される現像欠陥を検出した。単位面積あたりの現像欠陥数(個数/cm)を算出し、以下の基準で、現像欠陥性能の評価を行った。
【0473】
○(良好)…値が0.5未満の場合;
△(やや良好)…値が0.5以上0.8未満の場合;
×(不良)…値が0.8以上の場合。
【0474】
〔パターン形状〕
線幅75nmのラインパターン(ライン:スペース=1:1)のパターン断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察し、以下の基準でパターン形状の評価を行った。
【0475】
○(良好)…断面形状が「矩形」であり且つ「裾引き」が観測されなかった場合;
△(やや良好)…断面形状が「矩形」であるが、「裾引き」が観察された場合;
×(不良)…断面形状が「ラウンドトップ」又は「T−トップ」であった場合。
【0476】
〔デフォーカスラチチュード(DOF)〕
レジスト膜に対し、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用いて、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、スペースサイズ=100nmであり且つライン:スペース=2:1である6%ハーフトーンマスクを用いた。次いで、95℃で60秒間加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いた30秒間の現像処理に供した。その後、純水を用いてリンスし、スピン乾燥して、レジストパターンを得た。
【0477】
線幅100nmのスペースパターン(ライン:スペース=2:1)を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて観察した。100nm±10%の線幅を再現する焦点深度幅をDOF(μm)として測定した。この値が大きい方が、焦点ズレの許容度が大きく望ましい。
下記表3に、これらの評価結果を示す。
【表3−1】

【0478】
【表3−2】

【0479】
表中における略号は以下の通りである。また、これら略号は、後掲の実施例に関しても共通である。
【0480】
(塩基性化合物)
DIA:2,6−ジイソプロピルアニリン
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
TMEA:トリス(メトキシエトキシエチル)アミン
PEA:N−フェニルジエタノールアミン
TOA:トリオクチルアミン
PBI:2−フェニルベンゾイミダゾール
DHA:N,N−ジヘキシルアニリン
TEA:トリエタノールアミン
DBA:N,N−ジブチルアニリン。
【0481】
(界面活性剤)
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
W−4:PF656(OMNOVA社製;フッ素系)
W−5:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)。
【0482】
(溶剤)
A1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
A2:シクロヘキサノン
A3:γ−ブチロラクトン
B1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
B2:乳酸エチル。
【0483】
(溶解阻止化合物)
D−1:リトコール酸t−ブチル
表3から分かるように、実施例に係る組成物は、比較例に係る組成物と比較して、ラフネス特性、露光ラチチュード、焦点深度、及び現像欠陥性能により優れていた。また、実施例に係る組成物を用いた場合は、比較例に係る組成物を用いた場合と比較して、より良好な形状のパターンを形成することができた。
【0484】
<ArF液浸露光>
(レジスト調製)
下記表4に示す成分を、同表に示す溶剤に溶解させて、固形分濃度5.0質量%の溶液を調製した。その後、得られた溶液を、ポアサイズ0.1μmのポリエチレンフィルターを用いてろ過して、ポジ型レジスト溶液を調製した。
【0485】
(レジスト評価)
シリコンウエハー上に、有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間に亘ってベークした。これにより、シリコンウエハー上に、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、上記のポジ型レジスト溶液を塗布し、90℃で60秒間に亘ってベークした。これにより、膜厚が120nmのレジスト膜を形成した。
【0486】
得られたレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.960、インナーシグマ0.709、XY偏向)を用いて、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=50nmであり且つライン:スペース=1:1である6%ハーフトーンマスクを用いた。また、液浸液としては、超純水を用いた。
次いで、露光後の膜を、95℃で60秒間加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いた30秒間の現像処理に供した。その後、純水を用いてリンスし、スピン乾燥して、レジストパターンを得た。そして、先に説明したのと同様にして、LWR、EL、パターン形状及び現像欠陥数を評価した。デフォーカスラチチュードは、スペースサイズ=75nm(ライン:スペース=2:1)のパターンで評価した以外は、先に説明したのと同様にして評価した。
【0487】
これらの測定結果を、下記表4に示す。
なお、表4中の「添加形態」の列には、疎水性樹脂の添加形態を「添加」又は「TC」として記載している。「添加」と記載した例では、疎水性樹脂は、レジスト溶液中に含まれている。「TC」と記載した例では、疎水性樹脂を含んでいないレジスト溶液を用いてレジスト膜を形成した後、その上層に、疎水性樹脂を含んだトップコート(TC)保護膜を設けている。
【0488】
疎水性樹脂の添加形態が「TC」である場合、レジスト膜を形成した後、下記の操作を行った。なお、「TCの場合の溶媒」の列に挙げた溶媒は、以下の通りである。
S−1:2−エチルブタノール。
【0489】
<トップコートの形成方法>
表4に示す疎水性樹脂を溶剤に溶解させ、得られた溶液を、スピンコータを用いて、上記レジスト膜上に塗布した。その後、これを115℃で60秒間に亘って加熱乾燥して、膜厚が0.05μmのトップコート層を形成させた。形成後、トップコート層の塗布ムラを観察し、トップコート層が均一に塗布されていることを確認した。
【表4−1】

【0490】
【表4−2】

【0491】
表4から分かるように、実施例に係る組成物は、比較例に係る組成物と比較して、ラフネス特性、露光ラチチュード、焦点深度、及び現像欠陥性能により優れていた。また、実施例に係る組成物を用いた場合は、比較例に係る組成物を用いた場合と比較して、より良好な形状のパターンを形成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(IB)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(IA)で表される化合物を用いる製造方法。
【化1】

式中、
Qは、重合性基を表す。
は、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。
Lcはラクトン構造を有する基を表す。
は酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
mは0以上の整数を表す。
【請求項2】
一般式(IA)における−COOH基、及び、一般式(IB)における−COOA基が、Lcにより表されるラクトン構造を構成するエステル基に隣接する2つの炭素原子の一方に結合していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(IA)及び(IB)が、下記一般式(IIA)及び(IIB)で表される請求項1又は2に記載の製造方法。
【化2】

式中、
Xはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、nが2以上の場合には各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アラルキル基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
Q、L、A及びmは、一般式(IA)及び(IB)における各基と同義である。
【請求項4】
一般式(IA)及び(IB)が、下記一般式(IIIA)及び(IIIB)で表される請求項1又は2に記載の製造方法。
【化3】

式中、
Xはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、nが2以上の場合には各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アラルキル基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
Q、L、A及びmは、一般式(IA)及び(IB)におけるものと同義である。
【請求項5】
により表される、酸の作用により離脱する基が下記一般式(S1−1)で表され、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基が下記一般式(S1−2)により表される請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【化4】

式中、
は、アルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。RとRとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。上記組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、上記2以上の基は、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、及びこれらを組み合わせた基からなる群より選択される連結基を介して連結されていてもよい。
【請求項6】
下記一般式(IC)で表される中間体を得ることを含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【化5】

式中、
は、Cl、BrまたはIを表す。
Q、L、Lc及びmは、一般式(IA)及び(IB)におけるものと同義である。
【請求項7】
金属を含む化合物の存在下で製造することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属を含む化合物が下記から選択される請求項7に記載の製造方法。
【化6】

式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、シアノ基、アミノ基、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表す。
M1及びM2は金属を表す。
【請求項9】
M1がLi、Na、K、Ag又はTlであり、M2がZnである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
金属を含む化合物が、n−ブチルリチウムまたはNaHである請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(IB)で表される単量体由来の繰り返し単位を含む樹脂を含有する感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の製造方法であり、該単量体を下記一般式(IA)で表される単量体を用いて製造することを特徴とする製造方法。
【化7】

式中、
Qは、重合性基を表す。
は、mが2以上の場合は各々独立に、連結基を表す。
Lcはラクトン構造を表す。
は、酸の作用により脱離する基、又は酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する基を表す。
mは0以上の整数を表す。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により得られた感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項14】
請求項12に記載の組成物を用いて膜を形成すること、
前記膜を露光すること、及び
露光された前記膜を現像すること
を含むパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−213840(P2011−213840A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82700(P2010−82700)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】