説明

ラダー型フィルタ装置

【課題】絶縁抵抗をさほど悪化させることなく、サージ耐圧を高めることが可能とされているラダー型フィルタ装置を提供する。
【解決手段】弾性波共振子P5及び弾性波共振子P6が互いに直列に接続されており、少なくとも1つの弾性波共振子P5に並列に抵抗14が接続されており、残りの弾性波共振子P6に抵抗が接続されていない弾性波装置を有し、入力端子と出力端子との間に延びる直列腕に設けられた複数の直列腕共振子と、前記直列腕とグラウンド電位との間に延びる少なくとも1つの並列腕に設けられた並列腕共振子とを備え、前記並列腕共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子が上記弾性波装置からなる、ラダー型フィルタ装置3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の弾性波共振子が直列に接続されている弾性波装置を用いたラダー型フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などにおいては、弾性表面波などの弾性波を利用した共振子やフィルタ装置が広く用いられている。弾性波を利用した共振子やフィルタ装置は、弾性波を励振するためのIDT電極を有する。
【0003】
IDT電極の電極指ピッチは非常に小さいため、弾性波装置に耐圧を上回る電圧が加わると、IDT電極が破壊することがある。例えば、弾性波装置の製造工程において、あるいは弾性波装置を携帯電話機の基板などに実装する工程において、弾性波装置や設備において静電気が発生しがちであった。静電気を帯びた弾性波装置が設備の金属に接触したり、あるいは静電気を帯びた設備に弾性波装置の端子が接触すると、共振子に大きな電圧が加わり、IDT電極が破壊することがあった。
【0004】
これらの問題を解決するものとして、例えば下記の特許文献1には、図10に示す回路が開示されている。ここでは、弾性表面波フィルタ101に並列に抵抗Rが接続されている。この並列に接続された抵抗Rを介して、弾性表面波フィルタ101と静電気帯電部分の接触時に、放電電流を流すことができる。それによって静電気による破壊を防止することができるとされている。ここでは、並列に接続される抵抗Rの値は、弾性表面波フィルタ101のIDT電極のインピーダンスよりも大きくなければならないとされている。具体的には、抵抗Rは、1.5〜3kΩの範囲内にある場合に、静電気による破壊を防止することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO94/21040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば携帯電話機のRF段で用いられる弾性波フィルタ装置の後段には、ICが接続される。そして、このICを正常に動作させるには、弾性波フィルタ装置は、10〜10Ω以上の絶縁抵抗を有することが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、並列抵抗Rの値が1.5〜3kΩの範囲内にある場合に、静電気による破壊防止効果が得られるとされている。従って、特許文献1に記載の構成を採用した場合、後段に接続されるICを正常に動作させることができなくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、出力側における絶縁抵抗をさほど低くすることなく、静電気による破壊を確実に防止することが可能とされている弾性波装置を用いたラダー型フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、互いに直列に接続された複数の弾性波共振子と、前記複数の弾性波共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子に並列に接続された抵抗とを備え、前記複数の弾性波共振子のうち、前記少なくとも1つの弾性波共振子を除いた残りの弾性波共振子には並列に抵抗が接続されていない弾性波装置を有し、入力端子と、出力端子と、前記入力端子と出力端子との間に延びる直列腕に設けられた複数の直列腕共振子と、前記直列腕とグラウンド電位との間に延びる少なくとも1つの並列腕に設けられた並列腕共振子とを備え、前記並列腕共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子が上記弾性波装置からなる、ラダー型フィルタ装置が提供される。
【0009】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記抵抗が並列に接続された少なくとも1つの前記弾性波共振子のインピーダンスの総和が、前記残りの弾性波共振子のインピーダンスの総和よりも大きい。この場合には、静電気による破壊をより一層確実に防止することができる。
【0010】
本発明に係るラダー型フィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、前記入力端子と出力端子との間に延びる直列腕に設けられた複数の直列腕共振子と、前記直列腕とグラウンド電位との間に延びる少なくとも1つの並列腕に設けられた並列腕共振子とを備え、前記直列腕共振子及び並列腕共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子が、本発明の弾性波装置からなる。従って、ラダー型フィルタ装置の静電気による破壊を防止することができる。
【0011】
本発明に係るラダー型フィルタ装置のある特定の局面では、前記並列腕共振子が、前記入力端子と前記グラウンド電位との間及び前記出力端子と前記グラウンド電位との間の少なくとも一方に設けられた第1の並列腕共振子と、隣り合う直列腕共振子との間の接続点のうちの少なくとも1つの接続点とグラウンド電位との間に設けられた第2の並列腕共振子とを有し、前記第1の並列腕共振子が前記弾性波装置からなる。この場合には、静電気により破壊が生じやすい第1の並列腕共振子が本発明の弾性波装置からなるため、静電気による破壊をより効果的に防止することができる。
【0012】
もっとも、本発明においては、複数の直列腕共振子の一部の直列腕共振子が本発明の弾性波装置により構成されていてもよい。その場合においても、本発明に従って静電気による破壊を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る弾性波装置では、互いに直列に接続されている複数の弾性波共振子において、少なくとも1つの弾性波共振子に並列に抵抗が接続されており、残りの共振子に抵抗が接続されていないため、絶縁抵抗の低下をさほど招くことなく、静電気による破壊を効果的に防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るラダー型フィルタ装置では、直列腕共振子及び並列腕共振子のうち少なくとも一部の共振子が本発明の弾性波装置からなるため、静電気による破壊を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係る弾性波装置を含む送信フィルタを有するデュプレクサの回路図であり、(b)は、本発明の一実施形態の弾性波装置を説明するための回路図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【図3】図3は、本発明の弾性波装置が構成される弾性表面波装置の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、従来のデュプレクサの模式的回路図である。
【図5】図5は、比較例として用意したデュプレクサの回路構成を示す図である。
【図6】図6は、比較例及び実施形態のデュプレクサにおける送信フィルタの周波数特性を示す図である。
【図7】図7は、本発明の弾性波フィルタ装置の変形例の電極構造を示す平面図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明の弾性波フィルタ装置の回路構成の各変形例を示す回路図である。
【図9】図9は、本発明の弾性波装置に用いられる共振子構造の一例としての圧電薄膜共振子を示す断面図である。
【図10】図10は、従来の弾性表面波装置の一例を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置を有するデュプレクサの回路図である。(b)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置を示す回路図である。
【0018】
本実施形態のデュプレクサ1は、携帯電話機のRF段に用いられるものである。
【0019】
デュプレクサ1は、アンテナ端子2を有する。アンテナ端子2に、送信フィルタ3及び受信フィルタ4が接続されている。より具体的には、送信フィルタ3の一端である出力端子6が接続点5に接続されている。送信フィルタ3の他端は送信端子7である。受信フィルタ4の入力端子8が、接続点5に接続されている。受信フィルタ4の他端は第1,第2の受信端子9,10である。接続点5がアンテナ端子2に接続されており、アンテナ端子2とグラウンド電位との間にインダクタンス11が接続されている。
【0020】
送信フィルタ3は、入力端子である送信端子7と、出力端子6との間に延びる直列腕と、該直列腕とグラウンド電位との間に延びる複数の並列腕とを有するラダー型フィルタ装置である。送信フィルタ3は、複数の直列腕共振子S1〜S7を有する。直列腕共振子S1〜S7は互いに直列に接続されており、出力端子6から送信端子7に向けて順に配置されている。直列腕共振子S3,S4に並列にコンデンサC1が接続されている。
【0021】
直列腕共振子S2と直列腕共振子S3との間の接続点12とグラウンド電位との間に延びる並列腕に、並列腕共振子P1,P2が設けられている。並列腕共振子P1と並列腕共振子P2とは互いに直列に接続されている。
【0022】
同様に、直列腕共振子S5と直列腕共振子S6との間の接続点13とグラウンド電位との間に延びる並列腕に、並列腕共振子P3及び並列腕共振子P4が設けられている。並列腕共振子P3,P4は直列に接続されている。
【0023】
さらに、送信端子7とグラウンド電位との間に延びる並列腕に、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6が設けられている。並列腕共振子P5と並列腕共振子P6とは直列に接続されている。
【0024】
また、並列腕共振子P1,P2に直列にインダクタンスL1が接続されている。同様に、並列腕共振子P3及びP4に直列にインダクタンスL2が接続されており、並列腕共振子P5及びP6に直列にインダクタンスL3が接続されている。インダクタンスL1,L2のグラウンド電位側端部は共通接続されており、インダクタンスL4を介してグラウンドに接続されている。ここで、インダクタンスL1〜L4は、配線パターンやボンディングワイヤーなどの引き回し配線により形成されるインダクタンス部分である。
【0025】
なお、直列腕共振子S7に並列にインダクタンスL5及びコンデンサC2が電気的に接続されている。
【0026】
図3に示すように、並列腕共振子P5は、本実施形態では、弾性表面波共振子からなる。弾性表面波共振子は、圧電基板17上に、電極構造18が形成されており、電極構造18を覆うように、SiOからなる誘電体19が積層されている構造を有する。SiOの規格化膜厚が0.4より小さくされており、弾性表面波が励振される。電極構造18は、図2に示した並列腕共振子P5や並列腕共振子P6などの電極構造を有するものである。弾性表面波共振子では、IDT電極に交流電圧を印加した場合、誘電体19と圧電基板17で構成された積層体の表面部分にエネルギーを集中させて伝搬する弾性表面波が励振され、該弾性表面波に基づく共振特性が利用され得る。
【0027】
送信フィルタ3では、並列腕共振子P5に並列に抵抗14が接続されており、並列腕共振子P6に並列には抵抗は接続されていない。この並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6と抵抗14とからなる回路部分が、本発明の弾性波装置の一実施形態に相当する。
【0028】
本実施形態では、並列腕共振子P5と並列腕共振子P6のインピーダンス比は2:1とされている。すなわち、並列腕共振子P5と並列腕共振子P6とが直列接続されている部分において、送信端子7側に位置する並列腕共振子P5のインピーダンスがグラウンド電位側の並列腕共振子P6のインピーダンスよりも高くされている。
【0029】
図2は、この弾性波装置の具体的な電極構造を示す模式的平面図である。本実施形態では、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6は、それぞれ、1ポート型弾性波共振子からなる。並列腕共振子P5は、IDT電極21と、IDT電極21の弾性波伝搬方向両側に配置された反射器22,23とを有する。同様に、並列腕共振子P6は、IDT電極24と、反射器25,26とを有する。並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6の各一方のバスバーが共通バスバー27により共通化されている。この共通バスバー27に、ミアンダ状の導電パターンからなる抵抗14の一端が接続されている。抵抗14の他端は、IDT電極21の共通バスバー27とは反対側のバスバー29に電気的に接続されている。従って、並列腕共振子P5に並列に抵抗14が接続されている。なお、抵抗14は、ミアンダ状の導電パターンに限らず、他の形状の導電パターンにより形成されてもよい。さらに、抵抗性材料を用いて抵抗14を形成してもよい。
【0030】
また、並列腕共振子P5と並列腕共振子P6は共通バスバー27を設けることにより、両者の一方のバスバーが共通化されている。そのため、小型化を進めることができる。もっとも、並列腕共振子P5のバスバーと、並列腕共振子P6のバスバーは共通化されておらずともよい。
【0031】
なお、受信フィルタ4は、入力端子8と、出力端子としての第1,第2の受信端子9,10とを有する平衡−不平衡変換機能を有する弾性波フィルタ装置である。ここでは、入力端子8に、1ポート型弾性波共振子31を介して、第1,第2の3IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部32,33が接続されている。また、第1,第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部32,33の後段には、第3,第4の3IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部34,35が接続されている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部34,35が、それぞれ、第1,第2の受信端子9,10に接続されている。
【0032】
本実施形態の特徴は、送信フィルタ3において、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6と抵抗14とからなる弾性波装置が構成されているため、絶縁抵抗の低下をさほど招くことなく、耐サージ性を高めることができる。これを、図4及び図5の従来例及び比較例と比較することにより明らかにする。
【0033】
図4は、上記抵抗14が接続されておらず、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6のインピーダンスが等しいことを除いては、上記実施形態と同様に構成された従来のデュプレクサ201の回路図を示す。ここでは、並列腕共振子P5及びP6のインピーダンスは等しく、直列接続構造のインピーダンスZは、上記実施形態の場合の直列接続構造のインピーダンスZと等しくした。すなわち、上記実施形態では、並列腕共振子P5のインピーダンスを(2/3)Zとし、並列腕共振子P6のインピーダンスを(Z/3)とした。
【0034】
他方、図5に示す比較例のデュプレクサ202では、抵抗203を送信端子とグラウンド電位との間に接続し、従って、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6の双方に並列に抵抗203を接続した。その他の点については、デュプレクサ202は上記実施形態のデュプレクサ1と同様とした。
【0035】
本実施形態によれば、従来例及び比較例に比べ、耐サージ性を高めることができる。図4の従来例では、並列腕共振子P5及びP6に抵抗が並列に接続されていない。この場合、送信端子とグラウンド電位との間に、サージ電圧V0が負荷されると、並列腕共振子P5のインピーダンスをZA、並列腕共振子P6のインピーダンスをZBとすると、各並列腕共振子に印加される電圧VAは、VA=ZA/(ZA+ZB)×V0及びVB=ZB/(ZA+ZB)×V0となる。従って、両者のインピーダンスに差を付けた場合、インピーダンスの高い共振子には、V0/2よりも高い電圧が印加されることになる。
【0036】
これに対して、上記実施形態では、抵抗14が並列腕共振子P5に並列に接続されているため、抵抗14を介して放電電流を流すことができる。それによって、並列腕共振子P5が破壊し難い。他方、並列腕共振子P6では、印加される電圧は、V0/3となるため、上記従来例の場合に比べてより低い電圧が印加されることになる。そのため、上記実施形態によれば、該耐サージ性を効果的に高めることができる。
【0037】
上記のように、並列に抵抗が接続されている並列腕共振子P5のインピーダンスを、抵抗14が接続されていない並列腕共振子P6のインピーダンスよりも大きくすることが望ましい。この場合、抵抗が並列に接続されている弾性波共振子が複数存在し、抵抗が並列に接続されていない弾性波共振子も1または2以上である場合には、抵抗が並列に接続された少なくとも1つの弾性波共振子のインピーダンスの総和が、残りの弾性波共振子のインピーダンスの総和より大きいことが好ましい。
【0038】
また、上記比較例では、送信端子とグラウンド電位との間に抵抗203が接続されている。耐サージ性を改善するには、このような抵抗203としては、10〜10Ωの抵抗を特許文献1に記載のように接続するのが好ましい。しかしながら、この場合には、絶縁抵抗が高くなり、デュプレクサ202に接続されるICを正常に動作させることが困難となる。
【0039】
これに対して、上記実施形態では、並列に抵抗が接続されていない並列腕共振子P6を有するため、絶縁抵抗IRはあまり劣化しない。
【0040】
加えて、比較例に比べ、上記実施形態によれば、送信帯域における挿入損失も小さくすることができる。
【0041】
図6は、各デュプレクサにおける送信フィルタの周波数特性を示す。ここで、送信フィルタの通過帯域は1850〜1910MHzであり、受信フィルタの通過帯域は1930〜1990MHzである。
【0042】
図6に示す特性は、並列腕共振子を以下の要領で形成した場合の結果である。
【0043】
使用した圧電基板は、126°LiNbOであり、IDT電極は、SiO層に埋め込む構造とした。すなわち、圧電基板上に、SiO層を110nmの厚みに形成し、IDT電極形成部分をパターニングにより開口し、該開口部分に、上方から順にAl/Cu/NiCr=10/80/10nmの厚みとなるようにこれらの金属を積層してなるIDT電極を形成し、最上層に500nmのSiO層を誘電体層として全面に形成した。
【0044】
並列腕共振子P5及びP6におけるIDT電極の電極指の対数=125対
IDT電極の交叉幅重み付け:中央における交叉幅が120μmであり、弾性波伝搬方向両端にいくにつれて交叉幅が小さくなり、両端における交叉幅を、12μmとした。
【0045】
上記従来例では、並列腕共振子P5,P6の電極指の対数は100対とし、交叉幅重み付けについては、中央における交叉幅は100μmであり、弾性表面波伝搬方向両端にいくにつれて小さくなり、両端における交叉幅を10μmとした。
【0046】
その他の点は全て共通とし、以下の通りとした。
【0047】
IDT電極における電極指ピッチで定まる波長λ=3.9μm、IDT電極の電極指のデューティ=0.5
反射器の電極指の本数=20本
反射器の電極指の開口長=20μm
反射器の電極指のピッチで定まる波長λ=3.9μm
反射器の電極指のデューティ=0.5
【0048】
抵抗14については、IDT電極と同じ金属材料で、IDT電極と同時に形成した。線幅は0.5μm、膜厚は100nmとし、実施例では、全長は7500μmの長さとした。すなわち、150μmの長さの直線状の部分50本で構成されたミアンダ状の導電パターンとした。
【0049】
図6の実線は上記実施形態のフィルタ特性を、破線は比較例のフィルタ特性を示す。なお、上記従来例のデュプレクサ201の特性は、上記実施形態とほぼ同様であり、図6の実線と重なっているため、図6ではその特性は独立には示していない。
【0050】
図6から明らかなように、比較例では、抵抗202の値は1.5kΩとしたが、この場合、通過帯域における最小挿入損失は1.56dBであった。
【0051】
これに対して、上記実施形態によれば、抵抗14の抵抗値を1kΩとした場合、最小挿入損失が1.41dBと小さくなっていることがわかる。従って、比較例のデュプレクサ202に比べ、上記実施形態によれば、並列腕共振子P5にのみ抵抗を接続したため、通過帯域内における挿入損失を小さくすることができる。
【0052】
よって、本実施形態によれば、送信端子7に最も近く、静電気等による影響が生じやすい並列腕共振子P5において、並列腕共振子P5に並列に抵抗14が接続されており、並列腕共振子P6に並列に抵抗が接続されていないため、絶縁抵抗の増大を招くことなく、耐サージ性を効果的に高めることが可能となる。
【0053】
なお、図2では、共通バスバー27に抵抗14の一端を接続したが、図7に示す変形例のように、共通バスバー27を反射器22に接続し、反射器22の共通バスバー27とは反対側の端部に抵抗14の一端を接続してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、並列腕共振子P5に並列に抵抗14が接続されていたが、図8(a)に示すように、並列腕共振子P6に並列に抵抗14を接続し、並列腕共振子P5に並列に抵抗を接続しない構成であってもよい。
【0055】
さらに、図8(b)〜(d)に示すように、3個の並列腕共振子P5〜P7を直列に接続した構造を有していてもよい。図8(b)は、並列腕共振子P5に並列には抵抗は接続されておらず、並列腕共振子P6及びP7に並列に抵抗14が接続されている。図8(c)では、並列腕共振子P5及びP6に並列に抵抗14が接続されており、グラウンド電位側の並列腕共振子P7に並列には抵抗は接続されていない。
【0056】
図8(d)では、送信端子側の並列腕共振子P5と、グラウンド電位側に位置する並列腕共振子P7に並列に、それぞれ、抵抗14,14が接続されており、中央に位置する並列腕共振子P6には抵抗は並列に接続されていない。このように複数の弾性波共振子が直列に接続されている構造において、少なくとも1つの弾性波共振子に並列に抵抗が接続されており、残りの弾性波共振子に抵抗が並列に接続されていない構成であれば、様々な形態で本発明の弾性波装置を構成することができる。上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、図3に示した弾性表面波装置からなる弾性波共振子を用いた。図3の構造においてSiOの規格化膜厚を1より大きくし、それによって、圧電基板と誘電体との境界を伝搬する弾性境界波を利用した弾性波共振子を用いてもよい。また、本発明は、図9に示す圧電薄膜を用いた弾性波としてのバルク波を用いた共振子を用いてもよい。
【0058】
図9に示す弾性波共振子41では、基板42上に空洞43を隔てて圧電薄膜44が配置されている。圧電薄膜44の上面に、第1の共振電極45が、下面に第2の共振電極46が形成されている。第1,第2の共振電極45,46が圧電薄膜44を介して重なり合っている部分が共振部であり、交流電圧を印加することにより弾性波としてのバルク波が励振される。このバルク波の励振に基づく共振特性が得られる。なお、上記圧電薄膜44は、支持膜47により支持されている。このような弾性波としてのバルク波を用いた圧電薄膜共振子からなる弾性波共振子41もまた、弾性波共振子として周知の構造であり、本発明における弾性波共振子として用いることができる。この場合、並列腕共振子P5及び並列腕共振子P6のように、両者のインピーダンスを異ならせる場合には、第1,第2の共振電極45,46の対向面積を異ならせればよい。
【0059】
なお、上記実施形態のように、並列腕共振子P5のインピーダンスを、並列腕共振子P6のインピーダンスよりも大きくすることが好ましいが、抵抗が並列に接続される弾性波共振子と、抵抗が並列に接続されない残りの弾性波共振子のインピーダンスは同一であってもよい。その場合であっても、抵抗がサージ低下を逃がす効果を果たすため、抵抗が接続されていない場合に比べて、高いサージ電圧に耐えることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、送信フィルタ3の直列腕において、送信端子7に接続されている並列腕において、抵抗14が並列に接続された並列腕共振子P5が配置されていたが、他の並列腕共振子において、少なくとも1つの並列腕共振子に抵抗が並列に接続されており、残りの並列腕共振子に抵抗が接続されていない構成であってもよい。
【0061】
もっとも、好ましくは、送信端子7側から送信フィルタ3において、大きなサージ電圧が加わりやすいため、上記実施形態のように、送信端子7に接続されている並列腕共振子P5及びP6からなる並列腕において、本発明の弾性波装置を形成することが望ましい。
【0062】
また、上記少なくとも1つの弾性波共振子に並列に抵抗が接続されており、残りの共振子に抵抗が接続されていない本発明の弾性波装置は、直列腕に形成されていてもよい。例えば、直列腕共振子S6及びS7において、少なくとも1つの直列腕共振子に並列に抵抗を接続し、残りの直列腕共振子に抵抗を接続しない構成を採用してもよい。その場合においても、上記実施形態と同様に、サージ耐圧を高めることができる。
【0063】
また、本発明に係る上記抵抗が並列に接続された弾性波共振子と、残りの弾性波共振子とが直列に接続されている構成は、ラダー型フィルタ装置に限らず、様々な弾性波フィルタ装置に適用することができ、同様にサージ耐圧を効果的に高めることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…デュプレクサ
2…アンテナ端子
3…送信フィルタ
4…受信フィルタ
5…接続点
6…出力端子
7…送信端子
8…入力端子
9,10…第1,2の受信端子
11…インダクタンス
12,13…接続点
14…抵抗
17…圧電基板
18…電極構造
19…誘電体
21…IDT電極
22,23…反射器
24…IDT電極
25,26…反射器
27…共通バスバー
29…バスバー
31…弾性波共振子
32,33…縦結合共振子型弾性波フィルタ部
34,35…縦結合共振子型弾性波フィルタ部
41…圧電薄膜共振子
42…基板
43…空洞
44…圧電薄膜
45…第1の共振電極
46…第2の共振電極
47…支持膜
C1,C2…コンデンサ
L1〜L5…インダクタンス
P1〜P7…並列腕共振子
S1〜S7…直列腕共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続された複数の弾性波共振子と、前記複数の弾性波共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子に並列に接続された抵抗とを備え、前記複数の弾性波共振子のうち、前記少なくとも1つの弾性波共振子を除いた残りの弾性波共振子には並列に抵抗が接続されていない弾性波装置を有し、
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と出力端子との間に延びる直列腕に設けられた複数の直列腕共振子と、
前記直列腕とグラウンド電位との間に延びる少なくとも1つの並列腕に設けられた並列腕共振子とを備え、
前記並列腕共振子のうち少なくとも1つの弾性波共振子が上記弾性波装置からなる、ラダー型フィルタ装置。
【請求項2】
前記並列腕共振子が、前記入力端子と前記グラウンド電位との間及び前記出力端子と前記グラウンド電位との間の少なくとも一方に設けられた第1の並列腕共振子と、隣り合う直列腕共振子との間の接続点のうちの少なくとも1つの接続点とグラウンド電位との間に設けられた第2の並列腕共振子とを有し、前記第1の並列腕共振子が前記弾性波装置からなる、請求項1に記載のラダー型フィルタ装置。
【請求項3】
前記直列腕共振子のうち少なくとも1つの直列腕共振子が前記弾性波装置からなる、請求項1に記載のラダー型フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−9408(P2013−9408A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182017(P2012−182017)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2010−519625(P2010−519625)の分割
【原出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】