説明

ラダー型化合物及び有機半導体材料

【課題】ラダー型化合物を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、環構造A及びBは、同一又は相異なり、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、それぞれ単環もしくは複数環が縮環していてもよい;X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素、セレン、テルル原子、SO、(R)−C−(R)、(R)−Si−(R)、又はN−(R)で表される基を表し、Zは、N−(R)で表される基を表す。但し、下記の式(2)


で表される化合物は除く。)で表されるラダー型化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体等の電子材料への展開が可能なラダー型化合物、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルなどの有機分子ならではの特徴を生かして、電子ペーパーや大画面フラットパネルディスプレイなどの次世代の技術への応用可能な素子として期待されている。有機薄膜トランジスタは、有機半導体活性層、基板、絶縁層、電極等数種類の部材から構成されるが、特にキャリア輸送を担う有機半導体活性層はデバイスの中で重要な役割を有している。トランジスタの特性は、この有機半導体活性層を構成する有機材料のキャリア輸送能に大きく依存する。
【0003】
有機トランジスタに用いられる有機半導体材料としては、種々の有機化合物が提案されている。例えば、銅フタロシアニン及びペンタセンなどの低分子系材料、チオフェン6量体などの芳香族5員環や6員環を連結したオリゴマー材料、及びポリアルキルチオフェンなどのようなポリマー材料が報告されている。
【0004】
有機薄膜のトランジスタ特性はアモルファスシリコン程度の特性を目指して研究が行われている。その他の要求特性としては、安定駆動性、高寿命、塗布性などが挙げられる。しかし、これまでのところ、全ての条件を満たす有機材料の開発には至っていない。
【0005】
例えば、ペンタセンはアモルファスシリコン並みの高いキャリア移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンは凝集性が強く、難溶解性であり、また安定駆動性や寿命にも問題を抱えている。一方、オリゴマーやポリマー系の材料は、塗布性は比較的高いもののキャリア移動度が1桁程度低いのが現状である(非特許文献2、3参照)。
【0006】
ペンタセンのような多環縮環化合物が高特性デバイスを示す活性層材料に成り得る、という分子設計が知られているが、多環縮環化合物は合成上の問題から報告例は少ない。さらに、ペンタセンが有する問題点(低溶解性・空気酸化性)を克服した多環縮環化合物は限られている。
【0007】
一方、多環縮環化合物のπ共役系骨格内にヘテロ元素を組み込むことは、有機半導体材料の構造的、電子的、光学的、及び物理的性質を制御するための手法の一つとなっている。例えば、π共役系骨格内に硫黄原子を組み込んだジナフトチエノチオフェンは、高いキャリア移動度及び高安定性のトランジスタであることが報告されている(非特許文献4)。また、窒素原子上に長鎖アルキル基を有するインドロ[3,2−b]カルバゾールは、塗布性・安定性を有する有機半導体材料として報告されている(非特許文献5、6)。これらの例にみられるように、多環縮環化合物にヘテロ元素を組み込むことは、有機半導体材料の分子設計において有効な手段であるといえる。
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライド フィジックス」、(米国) 、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2004年、126巻、13859−13874頁
【非特許文献3】「サイエンス」、(米国) 、1998年、280巻、1741−1744頁
【非特許文献4】「ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2007年、129巻、2224−2225頁
【非特許文献5】「ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2005年、127巻、614−618頁
【非特許文献6】「ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー」、(米国)、2007年、129巻、9125−9136頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、高特性・高安定性を有する有機半導体材料の開発が望まれている。
本発明は、π共役鎖の中心に置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を有することを特徴とし、高い溶解性から加工性に優れたヘテロアセン骨格を基本構造とする新規ラダー型化合物、その製造方法、該化合物を用いる有機半導体材料及び有機薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規な含ピロールヘテロアセン化合物、及びその製造方法を見出した。加えて、含ピロールヘテロアセン化合物からなる有機半導体材料及びその薄膜を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
式(1)

(式中、環構造A及びBは、同一又は相異なり、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、それぞれ単環もしくは複数環が縮環していてもよい;
X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素、セレン、テルル原子、SO、(R)−C−(R)、(R)−Si−(R)、又はN−(R)で表される基を表し、
Zは、N−(R)で表される基を表し、
〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルキル基を有する基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、又はハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、
は、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を表す。
但し、下記の式(2)

で表される化合物は除く。)
で表されるラダー型化合物、その製造方法及び用途を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、溶解性に優れたラダー型化合物及び有機半導体材料を提供できる。また、本発明の製造方法ではπ共役鎖の中心に置換基を導入したラダー型化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の式(1)で表されるラダー型化合物(以下、ラダー型化合物(1)と称する。)において、
環構造A及びBは、同一又は相異なり、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、それぞれ単環もしくは複数環が縮環していてもよい。「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「アリール」及び「ヘテロアリール」としては、具体的には、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環、ナフタレン環が挙げられ、好ましくは単環又は二環性のものであり、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、チアゾール環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環、ナフタレン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、2,3位で縮環したチオフェン環、2,3位で縮環したフラン環、2,3位で縮環したベンゾ[b]チオフェン環、2,3位で縮環したベンゾ[b]フラン環が例示され、最も好ましくはベンゼン環であり、これらの環は置換されていてもよい。
【0012】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基としては、具体的には、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基、ハロゲンで置換されていてもよいアリールオキシ基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン、フッ素で置換されていてもよいアルキル基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基が挙げられる。
【0013】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、臭素、ヨウ素があげられる。
【0014】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル又は環状のアルキルがあげられる。炭素原子数1〜30のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、及びn−トリアコンチル基が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0015】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」としては、アルコキシ基、アルキル置換アリール基、アルコキシ置換アリール基、アルキル置換ヘテロアリール基、アルキル置換アルケニル基、アルキル置換アルキニル基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアミノ基等が挙げられ、好ましくは、アルコキシ基、アルキル置換アリール基、アルコキシ置換アリール基、アルキル置換ヘテロアリール基が挙げられる。
【0016】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」がアルコキシ基を表す場合、「アルコキシ基」としては、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、例えば、炭素数が通常1〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルコキシがあげられる。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、2−n−ヘキシル−n−オクチルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−ヘンイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−ヘキサコシルオキシ基、n−ヘプタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−ノナコシルオキシ基、n−トリアコンチルオキシ基などが例示され、好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基が挙げられ、より好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基が挙げられる。
【0017】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基」の「アルコキシ置換アリール基」及び「アルコキシカルボニル基」の「アルコキシ」としては、環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」の「アルコキシ基」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0018】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基」としては、環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0019】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」の置換基の「アリール基」としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、フルオレニルなどが挙げられ、好ましくは、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0020】
環構造A、Bの「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」の「置換されていてもよい」の置換基の「フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基」の置換基の「ヘテロアリール基」としては、例えば、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環などが挙げられ、好ましくは単環又は二環性のものであり、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環が挙げられ、より好ましくは、チオフェン環、フラン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環が例示される。
【0021】
X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素、セレン、テルル原子、SO、(R)−C−(R)、(R)−Si−(R)、又はN−(R)で表される基を表し、好ましくは、硫黄、酸素原子、(R)−C−(R)、(R)−Si−(R)が挙げられ、より好ましくは、硫黄、酸素原子、最も好ましくは、硫黄原子が挙げられる。
【0022】
〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルキル基を有する基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、又はハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。ここで「アルキル基」の「アルキル」としては、具体的に、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基又は環状のアルキル基があげられる。炭素原子数1〜30のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、及びn−トリアコンチル基が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基が挙げられ、及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0023】
〜Rにおける「アルキル基を有する基」としては、アルコキシ基、アルキル置換アリール基、アルコキシ置換アリール基、アルキル置換ヘテロアリール基、アルキル置換アルケニル基、アルキル置換アルキニル基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアミノ基等が挙げられ、好ましくはアルキル置換アリール基、アルコキシ置換アリール基、アルキル置換ヘテロアリール基が挙げられる。
【0024】
〜Rにおける「置換されていてもよいアルキル基を有する基」の「置換されていてもよいアルキル基」としては、R〜Rにおける「置換されていてもよいアルキル基」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0025】
〜Rの「アルキル置換アリール基」の「アリール」としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、フルオレニルなどが挙げられ、好ましくは、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0026】
〜Rの「アルコキシ置換アリール基」の「アリール」としては、R〜Rの「アルキル置換アリール基」の「アリール」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0027】
〜Rの「アルキル置換ヘテロアリール基」の「ヘテロアリール」としては、具体的に、例えば、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環が挙げられ、好ましくは単環又は二環性のものであり、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、フロ[3,2−b]フラン環、チエノ[3,2−b]フラン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環が挙げられ、より好ましくは、チオフェン環、フラン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾ[b]フラン環が例示される。
【0028】
〜Rにおける「ハロゲンで置換されていてもよいアリール基」の「ハロゲン」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
〜Rの「ハロゲンで置換されていてもよいアリール基」の「アリール」としては、R〜Rの「アルキル置換アリール基」の「アリール」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0030】
〜Rにおける「ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基」の「ハロゲン」としては、R〜Rにおける「ハロゲンで置換されていてもよいアリール基」の「ハロゲン」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0031】
〜Rにおける「ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基」の「ヘテロアリール」としては、R〜Rの「アルキル置換ヘテロアリール基」の「ヘテロアリール」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0032】
における「置換されていてもよいアルキル基」の「アルキル」としては、R〜Rの「アルキル基」の「アルキル」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0033】
における「置換されていてもよいアルキル基を有する置換基」の「アルキル」としては、R〜Rの「アルキル基」の「アルキル」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0034】
における「置換されていてもよいアルキル基を有する置換基」の「アルキル基を有する置換基」としては、R〜Rの「アルキル基を有する置換基」と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0035】
本発明のラダー型化合物(1)の具体例としては、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、nは同一又は相異なり、0〜30までの整数を表す。
【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】
ラダー型化合物(1)としては、好ましくは、(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−6)、(1−7)、(1−11)、(1−12)、(1−14)、(1−16)、(1−17)、(1−21)、(1−22)、(1−24)、(1−26)、(1−27)、(1−29)、(1−31)、(1−32)、(1−36)、(1−37)、(1−41)、(1−42)、(1−46)、(1−47)、(1−49)、(1−51)、(1−52)、(1−54)、(1−56)、(1−57)、(1−61)、(1−62)、(1−64)、(1−66)、(1−67)、(1−69)、(1−71)、(1−72)、(1−74)、(1−76)、(1−78)、(1−83)、(1−87)、(1−91)、(1−93)、(1−96)、(1−98)、(1−101)、(1−106)、(1−108)、(1−109)、(1−115)、(1−117)、(1−120)、(1−122)、(1−125)、(1−128)、(1−130)、(1−128)、(1−130)、(1−157)、(1−159)、(1−160)、(1−161)、(1−162)、(1−164)、(1−165)、(1−169)、(1−172)、(1−173)が挙げられ、さらに好ましくは、1−1)、(1−2)、(1−6)、(1−7)、(1−11)、(1−12)、(1−16)、(1−17)、(1−21)、(1−22)、(1−26)、(1−27)、(1−31)、(1−32)、(1−36)、(1−37)、(1−41)、(1−42)、(1−46)、(1−47)、(1−51)、(1−52)、(1−56)、(1−57)、(1−61)、(1−62)、(1−66)、(1−67)、(1−71)、(1−72)、(1−157)、(1−159)、(1−161)、(1−164)、(1−169)が挙げられる。
【0044】
ラダー型化合物(1)は、例えば、式(3)

(式中、環構造A及びB、X、Yは、前記式(1)で説明したものと同様であり、R及びR10は、同一又は相異なり、ハロゲン原子を表す。)
で表わされるジハロゲン化合物(以下、ジハロゲン化合物(3)と称す。)と置換されていてもよい一級アミンとを反応させることにより製造することができる。
【0045】
より詳しくは、ジハロゲン化合物(3)と置換されていてもよい一級アミンとをパラジウム化合物、配位子、塩基性試薬存在下で反応させることによりラダー型化合物(1)を製造することができる。
【0046】
ジハロゲン化合物(3)と置換されていてもよい一級アミン(R−NH)の反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶媒であればよく、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ジメトキシエタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、例えばメタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒又は脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0047】
反応に用いられる置換されていてもよい一級アミン(R−NH)のRは、式(1)におけるRの説明で記載したものと同じものであり、同様のものが好ましい。
【0048】
かかる置換されていてもよい一級アミン(R−NH)の使用量は、ジハロゲン化合物(3)に対して、通常0.1〜10モル倍であり、好ましくは0.5〜5モル倍である。
【0049】
ジハロゲン化合物(3)の反応溶液の濃度は特に限定されないが、通常溶媒1リットル当たり0.0001モルから20モル、好ましくは0.001モルから10モル、更に好ましくは0.01モルから5モルの範囲である。
【0050】
配位子としては、パラジウムに配位可能なものであればよく、例えば単座ホスフィン系配位子、分子内にパラジウムに配位可能な窒素原子、リン原子等の原子を少なくとも二つ有する多座配位子、カルベン系配位子等が挙げられ、単座配位子が好ましく、単座ホスフィン系配位子がより好ましい。
【0051】
単座ホスフィン系配位子としては、例えばトリ(n−ブチル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジシクロヘキシルナフチルホスフィン等が挙げられる。
二座配位子としては、例えば2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、5,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビ(1,3−ベンゾジオキソール)等のパラジウムに配位可能なリン原子を2つ有する二座ホスフィン系配位子、例えば2−(N,N−ジメチルアミノ)−2’−(ジシクロヘキシルアミノ)ビフェニル等のパラジウムに配位可能な窒素原子及びリン原子をそれぞれ一つずつ有する二座アミノホスフィン系配位子等が挙げられ、単座ホスフィン系配位子が好ましく、中でもトリ(tert−ブチル)ホスフィンが好ましい。
【0052】
かかる配位子は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0053】
かかる配位子の使用量は、パラジウム化合物のパラジウムに対して、通常0.5〜20モル倍である。
【0054】
反応に用いられるパラジウム化合物としては、例えば酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム、ジブロモビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(π−アリル)ジパラジウム、ジクロロビス(ピリジン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ−[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン錯体等の2価のパラジウム化合物、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム化合物等が挙げられ、中でもトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム錯体が好ましい。かかるパラジウム化合物は、通常市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0055】
有機溶媒に可溶な配位子とパラジウム化合物とからなる均一系パラジウム触媒は、前記有機溶媒に可溶な配位子と前記パラジウム化合物とを、予め有機溶媒中で接触させることにより調製したものを用いてもよいし、反応系内でその両者を接触させ、調製してもよい。
【0056】
かかる均一系パラジウム触媒の使用量は、パラジウム換算で、ジハロゲン化合物(3)に対して、通常0.001〜20モル%である。
【0057】
反応に用いられる塩基性試薬としては、例えば水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えばリン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシドが挙げられ、より好ましくは、アルカリ金属アルコキシドが挙げられる。塩基性試薬は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。
【0058】
塩基性試薬の使用量は、ジハロゲン化合物(3)に対して、通常、0.1モル倍から25モル倍、好ましくは1モル倍から15モル倍、更に好ましくは1.5モル倍から5モル倍である。塩基性試薬の使用量が少なすぎると、未反応の一級アミンの割合が増加する。
【0059】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度の範囲、好ましくは40℃〜反応液の還流温度の範囲である。反応時間は特に制限されないが、通常、1分から120時間である。
【0060】
本反応を停止させる場合は、反応液に例えば、水、希塩酸などを添加する。反応停止後、通常の後処理、例えば抽出、洗浄等の操作を行うことで、ラダー型化合物の粗生成物を得ることができる。ラダー型化合物の粗生成物は、晶析、昇華、各種クロマトグラフィーなどの操作をすることにより精製を行ってもよい。
【0061】
ジハロゲン化合物(3)は、例えば非特許文献7のように、入手可能な原料からホモカップリング反応を経て合成することができる。
「非特許文献7」:「アドバンスト マテリアルズ」、(ワイリー社)、2007年、19巻、3008−3011頁
【0062】
次に、有機薄膜デバイスについて説明する。本発明による有機薄膜デバイスは、有機薄膜トランジスタ、すなわち、ラダー型化合物を含む有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタを含んでいる。本発明によれば、高いキャリア移動度を有する有機薄膜トランジスタを含む有機薄膜デバイスを提供することができる。
【0063】
本発明の有機トランジスタとしては、有機電界効果トランジスタが挙げられる。該有機電界効果トランジスタの構造としては、通常は、ソース電極及びドレイン電極が高分子からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば、
(1)基板/ゲート電極/ 絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/半導体層 という構造、
(2)基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極 という構造
(3)基板/ソース電極(又はドレイン電極)/半導体層+絶縁体層+ゲート電極/ドレイン電極(又はソース電極)という構造などがあげられる。このとき、ソース電極,ドレイン電極,ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
【0064】
本発明の有機半導体材料を有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタの半導体層に設置する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシャル成長法などの真空プロセスでの形成法が挙げられ、好ましくは真空蒸着法が挙げられる。
【0065】
真空蒸着法による有機半導体層の設置方法は、有機半導体材料をルツボや金属ボート中で真空下、加熱し、蒸発した有機半導体材料を基板もしくは絶縁体材料に蒸着させる方法である。蒸着時の真空度は、通常1×10−1Pa以下、好ましくは1×10−3Pa以下である。蒸着時の基板温度は通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃である。蒸着速度は、通常0.001nm/sec〜10nm/secであり、好ましくは0.01nm/sec〜1nm/secである。有機半導体材料から形成される有機半導体層の膜厚は、通常1nm〜10μmであり、好ましくは5nm〜1μmである。
【0066】
また有機半導体膜の設置の方法として、溶液プロセスを用いてもよい。溶液プロセスは、有機半導体材料を溶媒に溶解又は分散し、基板もしくは絶縁体層に塗布する方法である。塗布の方法としては、キャスティング法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などが挙げられる。これらの手法は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0067】
本発明において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO、炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。これらの電極材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。電極の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。また、ゲート電極と基板を兼ねる場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
【0068】
電極膜の形成方法としては、上記のものを原料として種々の方法を用いることができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。成膜時又は成膜後に、パターニングを必要に応じて行うことが好ましい。パターニングの方法としても、種々の方法を用いることができる。具体的には、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法なども挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してパターニングを行うことも可能である。
【0069】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられ、好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物が挙げられる。有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルランなどが挙げられ、好ましいのは、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの絶縁層材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。絶縁層の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
【0070】
絶縁層の形成方法としては、上記のものを原料として種々の方法を用いることができる。具体的には、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットなどの印刷法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコンの熱酸化膜のように金属上に酸化物膜を形成する方法などが挙げられる。
【0071】
基板材料としては、ガラス、紙、石英、セラミック、フレキシブルな樹脂製シートなどが挙げられる。樹脂フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などが挙げられる。基板の厚さとしては、通常1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。
【0072】
有機半導体層と接触する絶縁体層や基板の部分において、絶縁体層や基板上に表面処理を行ってもよい。有機半導体層が積層される絶縁体層上に表面処理を行うことにより、素子のトランジスタ特性を向上させることができる。表面処理としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシランなどによる疎水化処理、塩酸、硫酸、過酸化水素水などによる酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどによるアンモニア処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどのプラズマ処理、ラングミュラー・ブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、繊維などを利用したラビング処理などが挙げられる。
【0073】
表面処理を行う方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。
【0074】
また、有機半導体層上に樹脂もしくは無機化合物からなる保護膜を設けてもよい。保護膜の形成により、外気の影響を抑制してトランジスタの駆動を安定化することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実験例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
<化合物1の製造>
3,3’−ジブロモ−2,2’−ビ−1−ベンゾチオフェン(0.095g、0.22mmol)、4−ヘキシルアニリン(0.044g、0.25mmol)、トリス( ジベンジリデンアセトン) ジパラジウム(0.021g、0.022mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.098g、0.22mmol)及びトルエン(1.0mL)の混合液を窒素雰囲気下で48時間還流させた。室温まで放冷した後、反応混合液に水を加え、クロロホルムにより抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧下留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、下記で示される化合物1(0.049g、0.11mmol)を収率50%で得た。

【0077】
化合物1の物性は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl、δppm):7.83(d、2H)、7.56(d、2H)、7.45(d、2H)、7.09−7.25(m、6H)、2.82(t、2H)、1.73−1.84(m、2H)、1.38−1.45(m、6H)、0.94(t、3H)
HRMS(EI+):calcd for C28H25N1S2、439.14284;found 439.14151
【0078】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、より高いキャリア移動度を有する有機薄膜トランジスタ、及び前記有機薄膜トランジスタの製造方法、並びに前記有機薄膜トランジスタを含む有機薄膜デバイスに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、環構造A及びBは、同一又は相異なり、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、それぞれ単環もしくは複数環が縮環していてもよい;
X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素、セレン、テルル原子、SO、(R)−C−(R)、(R)−Si−(R)、又はN−(R)で表される基を表し、
Zは、N−(R)で表される基を表し、
〜Rは、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルキル基を有する基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、又はハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、
は、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を表す。
但し、下記の式(2)

で表される化合物は除く。)
で表されるラダー型化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、環構造A及びBが、同一又は相異なり、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するアリール基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するヘテロアリール基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するアリール基、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するヘテロアリール基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、又はハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール基を表し、それぞれ単環が縮環していてもよい請求項1に記載のラダー型化合物
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、環構造A、Bは、同一又は相異なり、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するベンゼン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するベンゼン環、ハロゲンで置換されていてもよいベンゼン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するナフタレン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するナフタレン環、ハロゲンで置換されていてもよいナフタレン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するベンゾ[b]チオフェン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するベンゾ[b]チオフェン環、ハロゲンで置換されていてもよいベンゾ[b]チオフェン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するベンゾ[b]フラン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するベンゾ[b] フラン環、ハロゲンで置換されていてもよいベンゾ[b] フラン環である請求項1に記載のラダー型化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、環構造A及びBは、同一又は相異なり、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有するベンゼン環、フッ素で置換されていてもよいアルキル基を有する基を有するベンゼン環、又はハロゲンで置換されていてもよいベンゼン環である請求項1に記載のラダー型化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素原子、(R)−C−(R)又は(R)−Si−(R)で表される基である請求項1から4のいずれかに記載のラダー型化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、X及びYは、同一又は相異なり、硫黄、酸素原子で表される基である請求項1から4のいずれかに記載のラダー型化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、R〜Rが、同一又は相異なり、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいチエニル基である請求項1〜6のいずれかに記載のラダー型化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、Rが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基である請求項1〜7のいずれかに記載のラダー型化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、環構造A及びBは、同一又は相異なり、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾ[b]チオフェン環、又はベンゾ[b]フラン環であり、X及びYは、同一で、硫黄又は酸素原子である請求項1又は8に記載のラダー型化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の式(1)で表されるラダー型化合物において、環構造A及びBは、ベンゼン環であり、X及びYは、硫黄原子である請求項1又は8に記載のラダー型化合物。
【請求項11】
式(3)

(式中、環構造A及びB、X、Yは請求項1に記載の定義と同様であり、R及びRは、同一又は相異なり、ハロゲン原子を表す。)
で表わされるジハロゲン化合物とR−NH
(Rは請求項1に記載の定義と同様である)
とを反応させることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のラダー型化合物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のラダー型化合物を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のラダー型化合物を含有する導電性薄膜。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のラダー型化合物を含有する発光性薄膜。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のラダー型化合物を含有する有機半導体薄膜。
【請求項16】
キャリア移動度が10−6cm/Vs以上であることを特徴とする請求項15に記載の有機半導体薄膜。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の有機半導体薄膜を有することを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項18】
請求項14に記載の発光性薄膜を有することを特徴とする発光素子。

【公開番号】特開2010−43038(P2010−43038A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209534(P2008−209534)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】