説明

ラミネート装置およびこれを用いたプラスチックシート作製装置

【課題】高い生産性でプラスチックシートを作製することができるラミネート装置を提供すること。
【解決手段】周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、2シート以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、前記第1の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置と、前記第2の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置とが、回転時に対面一致するように位置合わせ行う位置合わせ機構を備えたことを特徴とするラミネート装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2以上のシートを貼り合わせて作製される顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り情報媒体、さらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いられるプラスチックシートの作製に用いられるラミネート装置、および、電子写真方式の画像形成装置によって直接画像形成(記録)されてなるフィルムを、前記ラミネート装置を利用してラミネートしたプラスチックシートを作製するプラスチックシート作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の発達に伴って、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、グラビヤ印刷及びスクリーン印刷などの様々な印刷法により、同一品質の画像を、大量かつ安価に形成する手段が知られている。そして、このような印刷法は、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれらが組み合わさったカードなど、所定の情報を納め、外部装置と接触又は非接触に交信可能な情報媒体の表面印刷にも多く用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば上記スクリーン印刷は、印刷しようとする画像の数に応じた印刷版が多数必要であり、カラー印刷の場合には、さらにその色の数だけ印刷版が必要となる。そのため、これら印刷方法は、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。
【0004】
上記問題点に対して、現在もっとも主流となっている画像形成手段は、インクリボン等を用いた昇華型や溶融型の熱転写方式を採用したプリンタ等による画像形成方法である。しかし、これらは個人の識別情報を容易に印字することはできるが、印刷速度を上げると解像度が低下し、解像度を上げると印刷速度が低下するという問題を依然抱えている。
【0005】
これに対して、電子写真方式による画像形成(印刷)は、像担持体表面を一様に帯電させ、画像信号に応じて露光し、露光部分と非露光部分との電位差による静電潜像を形成させ、その後、前記帯電と反対(あるいは同一)の極性を持つトナーと呼ばれる色粉(画像形成材料)を静電現像させることにより、前記像担持体表面に可視画像(トナー画像)を形成させる方法で行われる。カラー画像の場合は、この工程を複数回繰り返すこと、あるいは画像形成器を複数並配置することによりカラーの可視画像を形成し、これらを画像記録体に転写、定着(固定化:主に熱による色粉の溶融と冷却による固化)することによりカラー画像を得る方法で行われる。
【0006】
上述のように、電子写真方式では、像担持体表面の静電潜像を画像信号により電気的に形成するため、同じ画像を何度でも形成できるだけでなく、異なる画像に対しても容易に対応でき画像形成することが可能である。また、像担持体表面のトナー画像は、ほぼ完全に画像記録体表面に転移させることができ、像担持体表面にわずかに残存するトナー画像も、樹脂ブレードやブラシ等により容易に除去することができるため、多品種少量生産に向けた印刷物を容易に作製することが可能である。
【0007】
また、上記トナーは、通常、熱溶融性樹脂及び顔料、並びに場合によっては帯電制御剤などの添加剤を溶融混合し、この混練物を粉砕、微粒子化して形成される。さらに、前記電子写真方式における静電潜像は、上記微粒子化されたトナーに比べてかなり高い解像度を持っており、前記スクリーン印刷やインクリボンの熱転写方式の解像度と比べても十分な解像度が期待できる。
【0008】
カラー画像についても、カラートナーとしてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四原色を用い、これらを混合することにより、理論的に印刷と同様の色を再現できる。また、上記カラートナーでは、トナー樹脂と顔料とを比較的自由に配合できるため、トナーによる画像隠蔽性を増加させることは容易である。
【0009】
前述の電子写真装置を使用して、各種カードの印字を行った例としては以下のものが挙げられる。
例えば、各種個人情報の他に、不可視バーコードを厚さ250μmの塩化ビニルシートや厚さ280μmのポリエステルシートに電子写真法で印字し、それぞれ印字面にオーバーフィルムを重ね、熱プレス機でラミネートする方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、上記塩化ビニルシート等においてはシート間摩擦係数が大きすぎ、シート間で密着するためシート搬送性が悪く、電子写真装置が止まってしまったり、上記のような250μm以上の厚さの絶縁物(シート)には、画像形成材料(トナー)が十分に転写しにくく画像欠陥が増大してしまったりする。また、前記比較的低温で軟化する樹脂フィルムを電子写真装置に使用して印字しようとすると、定着工程において、定着温度がフィルムの軟化温度より高いため粘着性が発現し、定着装置に巻き付きジャムが発生する問題がある。さらに、画像形成材料が定着装置にオフセットしたり、前記250μm厚のシートの定着を続けると、シートのエッジ(角)で定着装置を必要以上に痛めてしまったりする場合もある。
【0011】
また、光透過性のラミネートシートに個人識別情報を印字し、さらに、上記印字は鏡像で行うことも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、光透過性のラミネートシートに関しては、少なくとも一部が2軸延伸ポリエステルフィルム、又はABS、又はポリエステルからなるフィルム/2軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましいが、塩化ビニルでもよい、と記載されているだけである。
【0012】
したがって、この仕様ではフィルムが単なる絶縁体なので、フィルム表面への画像形成材料の転写不良などが起こり、熱転写方式などと同等な解像度を得ることはできない。また、生産性向上に重点をおいたこの装置においては、使用されるラミネートシートはロール状であるため、カード一人分から数人分の異なる印字を行うなどの、緊急又は多品種生産等に対応するためには、多くのロスや無駄を生じてしまう問題がある。
【0013】
さらに、前記フィルムへの画像形成だけでなく、画像が形成されたフィルムとコアとなるコアシート(基材)とを搬送・積層する工程やラミネートする工程の自動化については、検討がほとんどなされておらず、生産性向上の観点から、上記各工程や製造装置を設計する必要がある。
【0014】
ラミネートの工程を自動化する製造装置としては、例えば、上下一対の入り口側ローラと上下一対の出口側ローラとを平行に担持し、少なくとも下側の入り口ローラと出口側のローラとの間に無端ベルトを掛け渡し、入り口側ローラを加熱装置、出口側ローラを冷却装置とした方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、一般にラミネートされてなるプラスチックシートを作製する場合には、平面性を出すために、例えば2つの無端ベルトを圧接したベルト対を用いてラミネートすることが好ましい。
【0015】
【特許文献1】特開2001−92255号公報
【特許文献2】特開平11−334265号公報
【特許文献3】特開平2−25331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記のような装置に使用される無端ベルトにおいては、ステンレス等金属板を溶接することで無端状に形成することが一般的である。このようにして得られた無端ベルトは、幅方向に溶接された接合部が残り、この接合部は凹凸を有している。
従って、ラミネート時にフィルムおよびコアシートからなる積層体表面と、無端ベルト外周面に存在する接合部とが接触した状態で加熱加圧してしまうと、ラミネートされた積層体(すなわち、プラスチックシート)表面には接合部の凹凸による痕が残り、不良品になってしまうという問題が生じる。
【0017】
この問題を解決するためには、無端ベルト周面上の接合部の位置を検出しこの接合部を避けてプラスチックシートを作製する必要がある。更に、高い生産性を確保する観点からは、双方の無端ベルトの外周面側の接合部は、周方向に対して回転時に双方の無端ベルトの外周面同士が対向する領域で、必ず対面一致することが必要がある。
しかし、一対の無端ベルト各々のベルト周長の差、ラミネート部の入口側や出口側に設けられた一対のローラ各々の外周長の差等によって、2つの接合部の位置ずれが生じてくる。このため、接合部の位置を検出し接合部を避けてプラスチックシートを作製しようとすると、2つの接合部の位置ずれが大きくなると共にラミネート時に接合部と積層体とが接触しないようにタイミングを取る時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0018】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、高い生産性でプラスチックシートを作製することができるラミネート装置、および、このラミネート装置を備え、画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、高解像度のプラスチックシートを製造することができるプラスチックシートの作製装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、
前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、
2シート以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、
前記第1の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置と、前記第2の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置とがずれた場合に、回転時に対面一致するように位置合わせ行う位置合わせ機構を備えたことを特徴とするラミネート装置である。
【0020】
<2>
前記一対の無端ベルトの接合部の周方向の位置を検出する検出センサを備えたことを特徴とする<1>に記載のラミネート装置である。
【0021】
<3>
前記一対の無端ベルトの各々に独立して駆動力を伝達する2つの駆動モータを含むことを特徴とする<1>または<2>に記載のラミネート装置である。
【0022】
<4>
前記駆動モータの駆動力が伝達される一対のロールのうち、いずれか一方のロールへの前記駆動力の伝達を解除する駆動力伝達解除手段を設けたことを特徴とする<1>または<2>に記載のラミネート装置。
【0023】
<5>
1つの駆動モータと、前記二対以上のロールのいずれか一対のロールの一方のロールと連動可能に連結され、前記駆動モータの駆動力が伝達される駆動ギアと、前記一対のロールの他方のロールと連動可能に連結され、前記駆動ギアと直接または間接的に勘合した被動ギアとを含む<4>に記載のラミネート装置であって、
前記駆動ギアまたは前記被動ギアのいずれか一方のギアと、該ギアと連結されたロールとが、クラッチを介して連結されていることを特徴とするラミネート装置である。
【0024】
<6>
1つの駆動モータと、前記二対以上のロールのいずれか一対のロールの一方のロールと連動可能に連結され、前記駆動モータの駆動力が伝達される駆動ギアと、前記一対のロールの他方のロールと連動可能に連結され、前記駆動ギアと直接または間接的に勘合した被動ギアとを含む<4>に記載のラミネート装置であって、
前記駆動ギアと前記被動ギアとの勘合を解除する勘合解除手段を設けたことを特徴とするラミネート装置である。
【0025】
<7>
周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、
前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、
2以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、
前記二対以上のロールのうち、前記駆動モータの駆動力が伝達される少なくとも一対のロールと、前記一対の無端ベルトとが、互いに勘合可能な勘合部を備えていることを特徴とするラミネート装置である。
【0026】
<8>
前記一対の駆動ロールがギア部を備え、前記一対の無端ベルトの内周面周方向に、前記ギア部と勘合する凸部が設けられていることを特徴とする<7>に記載のラミネート装置である。
【0027】
<9>
前記一対の駆動ロールがギア部を備え、前記一対の無端ベルトの周方向に、前記ギア部と勘合する穴部が設けられていることを特徴とする<7>に記載のラミネート装置である。
【0028】
<10>
フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記フィルムでラミネートするラミネート部とを含んでなる、プラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のラミネート装置を含むことを特徴とするプラスチックシート作製装置である。
【発明の効果】
【0029】
以上に説明したように本発明によれば、高い生産性でプラスチックシートを作製することができるラミネート装置、および、このラミネート装置を備え、画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、高解像度のプラスチックシートを製造することができるプラスチックシートの作製装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明を説明するにあたり、理解を容易とするために、まず、従来のプラスチックシートの作製装置や、この装置のラミネート部を構成するラミネート装置の構成等の概要や、積層体をラミネートして得られる積層体の構成等を説明する。次に、上述の知見を踏まえて、本発明について詳細に説明する。
【0031】
−プラスチックシートの構成−
図1に、プラスチックシートの作製装置により作製されるプラスチックシートの一構成例を示す模式断面図を示す。図1に示すプラスチックシートは、コアシート1と画像2、4が形成された表面フィルム3及び裏面フィルム5(共に光透過性フィルム)とが、画像2、4が形成された側の面がコアシート1と各々と対向するように重ねられ、ラミネートされた構成を有するものである。
【0032】
なお、後述する本発明のラミネート装置を用いて作製されるプラスチックシートの構成は、図1に示す例のように3層構成で、且つ、フィルムやコアシート等の各シートの界面に電子写真法により形成された画像が設けられた構成のみに限定されるものではない。
例えば、単に2枚のシートをラミネートしたものであってもよい。また、いずれかのシートの表面に電子写真法やその他の画像形成法を利用して形成された画像が形成されたシートと、このシートの画像形成面がラミネート面となるように他のシートとラミネートしてプラスチックシートを作製してもよい。
【0033】
また、図1に示す構成からなるプラスチックシートにおいても、単に、表面フィルム3および裏面フィルム5のいずれか一方が非光透過性フィルムであってもよいし、画像2,4のうち、いずれか一方の画像の形成を省略してもよい。また、表面フィルム3および/または裏面フィルム5(例えば、光非透過性フィルム)の片面に画像を形成し、その非画像面を対向させてラミネートする形態であってもよい。この場合、フィルムの画像面をさらに保護用フィルムでラミネートしてもよい。
【0034】
−プラスチックシート作製装置−
このような図1に例示したようなプラスチックシートは、図2に示すようなプラスチックシートの作製装置により作製される。以下、図1に示すプラスチックシートを作製することを前提としてプラスチックシートの作製装置の構成を図面を用いて説明する。
図2は、プラスチックシートの作製装置の一構成例を示す概略構成図である。
図2に示すプラスチックシートの作製装置は、画像形成装置(フィルム収納部、画像形成部)10、丁合い装置20と、ラミネート装置(ラミネート部)30と、から構成されている。
【0035】
画像形成装置10は、例えば、フィルムスタッカー11(フィルム収納部)と、画像形成部12と、フィルムスタッカー11から画像形成部12へ光透過性フィルムを搬送する搬送路13と、画像形成部12から排出口14へ画像形成後の光透過性フィルムを搬送する搬送路15とから構成されている。その他の構成は省略する。
【0036】
画像形成部12は、図示しないが、潜像を形成する潜像担持体と、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー画像を得る現像器と、現像されたトナー画像を光透過性フィルムに転写する転写器、光透過性フィルムに転写されたトナー画像を加熱・加圧して定着する定着器などを含む、公知の電子写真方式のカラー画像形成装置で構成されている。
【0037】
搬送路13、15は、駆動ローラ対を含む複数のローラ対やガイド(図示せず)から構成されており、さらに搬送路15には、光透過性フィルムの搬送方向を180°反転させる反転路16が設けられている。搬送路15と反転路16との分岐付近には、光透過性フィルムの案内方向を変更するカム17が設けられている。この反転路16で光透過性フィルムを往復させ、再び搬送路15に戻すと、光透過性フィルムの搬送方向が180°反転されると共に、光透過性フィルムの表裏が反転して搬送される。
【0038】
丁合い装置20は、コアシートスタッカー22と、丁合いトレイ(位置決め部)25、コアシートスタッカー22から丁合いトレイ25へコアシート1を供給する搬送路24と、画像形成装置10の排出口14から排出された光透過性フィルムを、丁合いトレイ25へ供給する搬送路21と、から構成されている。
【0039】
また、コアシート1を丁合いトレイ25へ供給する搬送路24の排出部と、光透過性フィルムを丁合いトレイ25へ供給する搬送路21の排出部は、高さ方向に並列して設けられている。
【0040】
上記搬送路21としては、例えば、平滑な板状部材と、その表面を光透過性フィルムを搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また回転するベルト状の搬送体で構成されていてもよい。そして光透過性フィルムが画像形成装置10から排出されるタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、光透過性フィルムを丁合いトレイ25に搬送する。
【0041】
また、コアシートスタッカー22には、通常の給紙装置に備えられているようなピックアップロールや給紙ロールが備えられており、丁合いトレイ25がコアシートスタッカー22の排出口の位置に移動した直後のタイミングで給紙ロール等が回転し、丁合いトレイ25にコアシート1を搬送する。
【0042】
丁合いトレイ25は、例えば、搬送路24の排出部と搬送路21の排出部からコアシート1及び光透過性フィルムがそれぞれ供給されるように、例えば、その端部の一部が図中上下に張架されたベルト外壁に連結されており、当該ベルトの回転駆動に伴い昇降するよう構成されている。このような昇降手段に限らず、モーター駆動方式など、公知の昇降手段を適用させることができる。また、図示しないが、積層されたコアシート1及び表面フィルム3、裏面フィルム5の端部を揃えて、位置決めする手段が設けられている。
【0043】
丁合いトレイ25には、コアシート1を介して2つの光透過性フィルムを積層した積層体を仮留めする仮留め装置26が設けられている。この仮留め装置26は、例えば、ヒータなどにより加熱されるよう金属からなる一対の突片で構成されており、この加熱された一対の突片により積層体の端部を挟むことで、積層体の端部が熱溶着されて仮留めされる。
【0044】
なお、上記仮留め装置26は、図2に示すように丁合いトレイ25からラミネート装置30への積層体の搬送路上に設けられる場合には、仮留め装置26は、仮留め時のみ丁合いトレイ25の端部に配置され、それ以外のときは上記搬送路から退避できる構造をとる必要がある。
【0045】
仮留め装置26で端部が仮留めされた積層体は、丁合いトレイ25から、ラミネート装置30へと搬送され、このラミネート装置30内に配置されたラミネート部(符号31〜35に示される部材で構成される部分)にてラミネートされることによりプラスチックシートが形成され、その後、排出トレイ41へと排出される。
【0046】
−ラミネート装置−
図8は、図2に示すプラスチックシート作製装置内に配置された従来のラミネート装置の一構成例の詳細を示す構成図である。なお、駆動モータで生じた駆動力をロールに伝達するギア等の駆動力伝達部材は省略してある。
ラミネート部は、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)31から構成されるベルトニップ方式を採用することにより、プラスチックシートを容易にオンラインで作製できる構成となっている。
【0047】
前記一対の無端ベルト31は、第1の無端ベルト内周面と第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールにより張架・支持される。図8に示す例では、一対のテンションロール32および一対のインレットロール35とによりそれぞれ張架されている。また、一対のテンションロール32には、一対のインレットロールが設けられた側と略反対方向に一対のテンションロールを引っ張るテンションバネ36が設けられており、これにより一対の無端ベルト31に歪みが生じることを防止している。
【0048】
そして、一対の無端ベルト31の内周面側には、テンションロール32とインレットロール35との間に、テンションロール32が設けられた側からインレットロール35が設けられた側へと、一対の加熱加圧ロール(加熱加圧ロール対)34及び一対の冷却ロール33が、これら二対のロール33、34はニップ部を形成するように一対の無端ベルト31の内周面を押圧するように順に配置されている。
なお、テンションロール32と、インレットロール35とはぞれぞれのロール対を圧接させず、一対の無端ベルト31間に間隙が設けられるように設置されている。これにより、連続稼動により一対の無端ベルト31が蛇行しても稼動させながらベルトを所定の位置に戻すことが可能である。
【0049】
一対の無端ベルト31が蛇行した際に所定の位置に復帰させる方法としては図示しないが、一対の無端ベルト31が所定の位置よりずれないようにストッパーを設置してもよいし、左右に設置したテンションバネのバネ力をコントロールして一対の無端ベルト31の蛇行を防止するようにしてもよい。
【0050】
ラミネート装置30における積層体の熱融着(ラミネート)は、インレットーロール35の後方(テンションロール32が配置された側)に配置された加熱加圧ロール34によりより形成されたニップ部を積層体が通過する際に加熱加圧されることにより行われる。
上記のようにして熱融着された積層体は、加熱加圧ロール34と冷却ロール34との間で変形を生じないように保持されており、平面性を維持したまま冷却ロール34を通過することとなる。尚、積層体の冷却を促進させるため、ここでは、加熱加圧ロール34と冷却ロール33との間に冷却ファン37を設置している(冷却ファン37を設置しない場合は自然冷却となる)。また、連続稼動による一対の無端ベルト31外周面の汚れ等を除去するためクリーニング装置38、外周面に近接して設置されている。
【0051】
なお、一対の無端ベルト31には、図8に示されるように、駆動モータ60を含む駆動装置で生じた駆動力が一対のインレットロール35を介して伝達され、これにより一対の無端ベルト31は回転することができる。
ここで、駆動モータ60で生じた駆動力は、駆動モータ60と一対のインレットロール35の一方のロール(第1のロール)とを接続している駆動力伝達系50により第1のロールに伝達されると同時に、駆動力伝達系51を介して、更に一対のインレットロール35の他方のロール(第2のロール)へも駆動力が伝達される。すなわち、図8に示す構成では、一対のインレットロール35が駆動ロールとしても機能することになる。
【0052】
なお、図8中の符号50、51等で示されるような駆動力伝達系とは、1個ないし複数個の駆動力伝達部材(例えば、ギア等)から構成されるものであり、例えば、図9に示すような構成が挙げられる。
図9は、図8に示すラミネート装置の駆動力伝達系の一構成例を示す概略模式図であり、50’が駆動力伝達系、70が駆動ギア、71が被動ギアを表し、60は図8中に示す駆動モータである。駆動ギア70および被動ギア71は、互いに直接勘合していると共に、一対のインレットロール35各々のロールに連動可能に連結されている。また、駆動ギア70は、駆動力伝達系50’を介して駆動モータ60の駆動力が伝達される。このため駆動モータ60で発生した駆動力の伝達は駆動力伝達系50’を介して駆動ギア70に伝達されると同時に、駆動ギア70と勘合する被動ギア71へも伝達されるため、一対のインレットロール35が同時に回転することができる。なお、図8中の駆動力伝達系50が、図9中の駆動力伝達系50’および駆動ギア70に相当し、駆動力伝達系51が図9中の駆動ギア70および被動ギア71に相当する。
【0053】
また、ラミネート装置30に用いられる一対の無端ベルト31は、双方ともに一枚の金属等からなるシートの端部同士を溶接等により接合したもので、幅方向には接合部39a,39bが存在する。このため、一対の無端ベルト31の各々には、接合部が1周に1個所存在することになる。このため、積層体をラミネートする際に、この接合部分と積層体とが重なると、プラスチックシートの表面に凹凸が発生してしまう。
【0054】
この問題を防止するためには、各々の無端ベルトの接合部を検出する検出センサ40を設け、ニップ部を通過する積層体が接合部39a,39bと接触しないよう、積層体のニップ部への突入のタイミングを調整する方法が考えられる。
なお、図8に示す例では、検出センサ40として、一対の無端ベルト39の外周面上に、光学式の非接触型検出センサが各々設けられている。
また、積層体のニップ部への突入のタイミングを調整するタイミング調整手段としては特に限定されない。例えば、丁合トレイ25から、ラミネート部へと積層体を搬送するベルトを利用した搬送路(図2中不図示)を設けた場合には、ベルトの回転速度を調整したり、搬送路上に積層体の移動を強制的に阻止するゲートを設けることで、積層体のニップ部への突入のタイミングを調整することができる。これにより、プラスチックシートの表面に、接合部に起因する凹凸の無い高品質なプラスチックシートを得ることが可能である。
【0055】
上記のように従来のラミネート装置ではベルトの接合部を避けて、積層体のラミネートを実施することができるので、品質の優れたプラスチックシートが得られる。
しかし、一対のインレットロール35やテンションロール32双方の外周長差、一対の無端ベルト31双方の周長差等により、接合部39a、39bの位置は初期状態(図8)では、外周面が対向する領域で対面一致するように位置が設定されていても、長時間、ラミネート装置30を駆動した場合には図10に示すように接合部39a、39bの位置にずれが生じてくる。
【0056】
このような状態になると、積層体がラミネート装置30へ突入するために、タイミング調整を行う時間が長くなり、生産性の低下という問題が生じてくる。また、接合部の凹凸により、一対の無端ベルト31の一方のベルトの外周面側の接合部が他方のベルトの外周面を傷つけたり凹ませたりする等の問題が発生することが懸念される。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、このような問題を解消するには、接合部39aと接合部39bとの位置ずれを定期的に調整するか、あるいは、接合部39aと接合部39bとの位置ずれそのものが起こらないようにする必要があると考え、以下の2つの発明を見出した。
【0057】
(第1の発明)
すなわち、第1の本発明のラミネート装置は、周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも1本のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動装置とを含み、前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、2シート以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、前記第1の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置と、前記第2の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置とがずれた場合に、回転時に対面一致するように位置合わせ行う位置合わせ機構を備えていることを特徴とする。
【0058】
第1の本発明のラミネート装置は、2つの接合部の周方向の位置合わせを行う位置合わせ機構を備えたところに特徴があり、これ以外の構成は、例えば、図8に示したような構成を有することができる。
このため、一対の無端ベルトの外周面に存在する2つの接合部の周方向の位置が、図10に示されるようにずれた状態となった場合に、位置合わせ機構により位置合わせを行うことにより、一対の無端ベルトの外周面側の接合部同士が、外周面同士が対向する領域において対面一致できる状態(図8)に戻すことができる。このため、高い生産性でプラスチックシートを作製することができる。
【0059】
ここで、「位置合わせ機構」は、無端ベルト周面の接合部の位置を検出し、接合部を検出した際に検出信号を発する「接合部位置確認手段」、制御信号を受けて接合部の位置合わせを行う「接合部位置合わせ手段」、および、接合部位置確認手段が接合部を検出した際に発する検出信号を感知して、2つの接合部の位置のズレ具合を判断し、2つの接合部の位置が一定量以上ずれた場合に、接合部位置合わせ手段に制御信号を送信して位置合わせを実行するように制御する「制御部」、以上3つの部分から構成される。
以下、制御部、接合部位置確認手段、および、接合部位置合わせ手段の順に位置合わせ機構の詳細を説明する。
【0060】
−制御部−
制御部は、制御回路や制御プログラム等から構成されるもので、接合部の位置合わせ以外の各種制御を行う制御部に含まれていてもよいし、接合部位置合わせ手段内に内蔵されていてもよい。
なお、位置合わせは、無端ベルトの周長が約1mの場合、2つの接合部が最も離れた状態(位置ずれが最大となった状態)を100%としたときに、2つの接合部の位置ずれ量が2%〜40%の範囲内となった時点で実施することが好ましく、5%〜10%の範囲内で実施することがより好ましい。
【0061】
2つの接合部の位置ずれ量が2%未満で位置合わせを実施する場合には、頻繁に位置合わせを行わなければならず、位置合わせに要する時間が増大するため、生産性が低下してしまう場合がある。また、40%を超えてから位置合わせを実施する場合には、積層体がラミネート装置へ突入するために、タイミング調整を行う時間が長くなり、生産性が低下してしまう場合がある。
【0062】
−接合部位置確認手段−
接合部位置確認手段は、無端ベルト周面の接合部の位置を検出し、接合部を検出した際に制御部に検出信号を発信する機能を有するものであり、公知の検出センサが利用できる。例えば、赤外光等を利用した光学的な非接触式センサや触針型の接触式センサ等が利用できるが、無端ベルト外周面側の接合部を検出するために検出センサを設ける場合には、外周面の傷等の発生を防ぐために非接触式の検出センサを用いることが好ましい。また、接合部は、無端ベルトの外周面および内周側に存在するため、検出センサは、図8に示すように無端ベルトの外周面側に設置してもよいが、内周面に設置することもできる。
なお、検出センサは、図8に示すように、通常は、一対の無端ベルトそれぞれに対して設けることができるが、例えば、光学的な非接触式センサを利用する場合には、光ファイバー等を利用して分岐させた2つの受光部からの受光信号を検出する検出センサを1つ設けるだけであってもよい。
【0063】
また、検出センサは、接合部の位置合わせを行う目的以外にも、従来と同様に積層体のラミネート装置への突入のタイミングを調整する目的にも利用できる。この場合は、接合部が検出された際に、位置合わせを制御する制御部以外に、例えば、ラミネート装置へと積層体へ搬送する搬送系等を制御する制御部に検出信号を同時に送信することができる。
【0064】
−接合部位置合わせ手段−
第1の位置合わせ方式における接合部位置合わせ手段は、制御部からの制御信号を受けて接合部の位置合わせを行う機能を有するものであり、1つあるいは複数の機械的要素の組み合わせからなるものであれば特に限定されないが、好適には、以下の第1〜第3の実施形態が挙げられる。
まず、一対の無端ベルトの各々に独立して駆動力を伝達する駆動モータを2つ設ける場合(第1の実施形態)が挙げられる。
【0065】
また、駆動モータの駆動力が伝達される一対のロールのうち、いずれか一方のロールへの駆動力の伝達を解除する駆動力伝達解除手段を設ける場合も挙げられる。
この場合、駆動力伝達解除手段は、駆動モータから1対のロール各々へと駆動力を伝達する駆動系のいずれかの部分に駆動力の伝達を解除する機構を設けることで実現でき、一対の無端ベルトを回転させる駆動系の構成に応じて様々な構成が考えられる。
【0066】
例えば、一対の無端ベルトを回転させる駆動系が、1つの駆動モータと、前記二対以上のロールのいずれか一対のロールの一方のロールと連動可能に連結され、前記駆動モータの駆動力が伝達される駆動ギアと、前記一対のロールの他方のロールと連動可能に連結され、前記駆動ギアと直接または間接的に勘合した被動ギアとを含む構成からなる場合には、以下2つの実施形態が挙げられる。
【0067】
すなわち、駆動ギアあるいは被動ギアのいずれか一方のギアと、これに連結されたロールとの間の連結を解除する駆動力伝達解除手段(ギアとロールとをクラッチを介して連結)を設ける場合(第2の実施形態)や、駆動ギアと被動ギアと間の駆動力の伝達を解除する駆動力伝達解除手段(駆動ギアと被動ギアと間の勘合解除手段)を設ける場合(第3の実施形態)が挙げられる。以下の第1〜第3の実施形態を、図面を用いてより詳細に説明する。
【0068】
−第1の実施形態−
図3は、第1の本発明のラミネート装置の第1の実施形態に係わる構成例を示す模式図であり、図8に示した例に対して、一対の無端ベルト31の各々に独立して駆動力を伝達する2つの駆動モータ60、61が装備されているところに特徴がある。すなわち、駆動モータ60の駆動力は駆動力伝達系50を介して一対のインレットロール35の一方のロールに伝達され、駆動モータ61の駆動力は駆動力伝達系52を介して一対のインレットロール35の他方のロールに伝達される構成となっている。
【0069】
第1の実施形態においては、通常、積層体をラミネートする時(以下、「ラミネートモード」と略す場合がある)には、一対の無端ベルトの各々は、周方向に同速度で回転するように駆動モータ60および駆動モータ61から駆動力が伝達される。
しかし、接合部39a、39bの位置ずれが発生し、位置合わせが必要となった場合(以下、「位置合わせモード」と略す場合がある)には、一対の加熱加圧ロール34および一対の冷却ロール33により形成されるニップ部を開放した状態で、いずれか一方の無端ベルトの回転を止めるか、双方の回転速度・回転方向を異なるものとすることによって、接合部39aおよび39bの位置を対面一致できるように調整することが可能である。
【0070】
−第2の実施形態−
第2の実施形態は、駆動ギアまたは前記被動ギアのいずれか一方のギアと、該ギアと連結されたロールとが、クラッチを介して連結されているところに特徴があり、例えば、図4に示す構成が挙げられる。
図4は、第1の本発明のラミネート装置の第2の実施形態に係わる構成例を示す模式図であり、図9に示した例に対して、クラッチを設けた構成を示したものである。図4中、72はクラッチ(ワンウェイクラッチ)を表し、他は図9に示すものと同様の機能を有するものである。
【0071】
被動ギア71と、これに連動可能に連結されるロールは、第2の実施形態では、クラッチ72を介して連結されるため、ラミネートモードではクラッチ72を繋げた状態とすることにより、一対の無端ベルト31双方を同速度で回転させることができる。
一方、位置合わせモードでは、一対の加熱加圧ロール34および一対の冷却ロール33により形成されるニップ部を開放した状態で、クラッチ72を切ることによって、一対の無端ベルト31の一方の回転を完全に停止させることができるため、接合部39aおよび39bの位置を対面一致できるように調整することが可能である。また、必要に応じて、駆動モータ60を逆転させればより早く位置合わせを行うことができる。
【0072】
なお、図4に示す例では、クラッチ72を用いて、駆動モータ60の駆動力がかかり続ける駆動ギア70側の駆動力が、被動ギア71に連結されたロールに伝達されないようにしているが、クラッチ72を被動ギア71側でなく、駆動ギア70側に設けてもよい。
【0073】
−第3の実施形態−
第3の実施形態は、前記駆動ギアと前記被動ギアとの(直接的または間接的な)勘合を解除する勘合解除手段を設けたところに特徴があり、例えば、図5に示す例が挙げられる。
図5は、第1の本発明のラミネート装置の第3の実施形態に係わる構成例を示す模式図であり、図9に示した例において、駆動ギア70と被動ギア71との勘合が解除された状態を示したものである。
すなわち、位置合わせモードでは、一対の加熱加圧ロール34および一対の冷却ロール33により形成されるニップ部を開放すると共に、図5に示すように駆動ギア70と被動ギア71との勘合をかみ合わない位置まで離して解除した状態とし、駆動モータ60により駆動ギア70のみに駆動力を伝達することができるため、接合部39aおよび39bの位置を対面一致できるように調整することが可能である。
【0074】
なお、図5に示す例では、駆動ギア70と被動ギア71との勘合を解除する勘合解除手段としては特に図示していないが、例えば、駆動ギア70および被動ギア71の双方の回転軸の間に、これら2つの回転軸に接触し、互いに回転軸方向に対して垂直な方向へと離れるように移動させることが可能な偏芯カムを設けたり、あるいは、ソレノイド等を用いて駆動ギア70と被動ギア71とが噛み合わないように、被動ギア71のみを移動できるような構成にする等の手段が利用できる。
【0075】
また、図5に示す例は、ラミネートモードでは図9に示すように駆動ギア70と被動ギア71とが直接勘合していることを前提としたものであるが、第3の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、駆動ギア70と被動ギア71との間に回転軸方向にスライド可能な伝達ギア(不図示)を設け、駆動ギア70と被動ギア71とを伝達ギアを介して間接的に勘合させてもよい(なお、第2の実施形態においても同様に2つのギア70、71を間接的に勘合させてもよい)。
この場合、位置合わせモードでは、一対の加熱加圧ロール34および一対の冷却ロール33により形成されるニップ部を開放すると共に、駆動ギアと被動ギアとの間に設けられた伝達ギアを回転軸方向にスライドさせて、駆動ギアと被動ギアとの間の伝達ギアを介した間接的な勘合を解除した状態とし、駆動モータ60により駆動ギア70のみに駆動力を伝達することができるため、接合部39aおよび39bの位置を対面一致できるように調整することが可能である。
【0076】
(第2の発明)
一方、第2の本発明のラミネート装置は、周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、2以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、前記二対以上のロールのうち、前記駆動モータの駆動力が伝達される少なくとも一対のロールと、前記一対の無端ベルトとが、互いに勘合可能な勘合部を備えていることを特徴とする。
【0077】
第2の本発明のラミネート装置は、駆動力が伝達される一対の駆動ロールと、一対の無端ベルトとが互いに勘合可能な勘合部を備えているところに特徴があり、これ以外の構成は、例えば、図8に示したような構成を有することができる。
すなわち、無端ベルトと駆動ロールとが凹状勘合部と凸状勘合部との組み合わせや穴状勘合部と凸状勘合部との組み合わせにより互いに勘合することによって、2つの接合部の位置が無端ベルトの回転と共にずれていくことを抑制することができる。従って、ラミネート装置の組み立てに際して2つの接合部の位置を、外周面同士が対向する領域内において対面一致するように無端ベルトを取り付ければ、長時間ラミネート装置を駆動させても接合部の位置ずれそのものの発生を抑制することができ、それゆえ、高い生産性でプラスチックシートを作製することができる。
【0078】
なお、一対の無端ベルトと互いに勘合可能な勘合部を備えたロールは、必ず駆動モータからの駆動力が伝達される一対の駆動ロールである必要があるが、これ以外のロールが無端ベルトと互いに勘合可能な勘合部を有していてもよい。
また、第2の本発明のラミネート装置では、接合部の位置ずれが起こらないので、第1の本発明のラミネート装置のように接合部の位置合わせを目的として接合部を検出する検出センサを設ける必要はないが、積層体のラミネート装置への突入のタイミングを調整する目的で検出センサを設けることが好ましい。
以下に第2の本発明のラミネート装置の実施形態を図面を用いてより詳細に説明する。
【0079】
第2の発明のラミネート装置の実施形態としては、駆動ロール側の勘合部として凸部(ギア部)を設けることが好ましい。この場合、ギア部は駆動ロールと一体型でもよいし、ロール本体と連動する外付けのギアであってもよい。
また、駆動ロール側の凸部と勘合する勘合部を備えた無端ベルトとしては、図6に示すように駆動ロールの凸部(ギア部)と勘合する凸部を内周面周方向に設けた場合(第1の実施形態)や、図7に示すように駆動ロールの凸部(ギア部)と勘合する穴部を周方向に設けた場合(第2の実施形態)が挙げられる。なお、図6および図7中、31a、31bは無端ベルト、80は無端ベルト31aの内周面周方向に沿って設けられた勘合部(凸部)、81は無端ベルト31bの周方向に沿って設けられた勘合部(穴部)を表す。
【0080】
また、1対の駆動ロールを駆動する駆動系の構成は、図9に示すように1つの駆動モータを有するだけでよい。また、無端ベルトと勘合する駆動ロール側のギア部は、駆動ギア70や被動ギア71とは別々に設けることが好ましい。
【0081】
また、図7に示す第2の実施形態の場合では、穴部81に勘合する駆動ロール側のギア部(凸部)の形状を適切化することで、2つの接合部のずれを発生させないばかりでなく、無端ベルト31bの蛇行をも規制することができるため、第1の本発明の第1〜第3の実施形態および第2の本発明の第1の実施形態では、使用することが好ましい無端ベルトの蛇行防止用のストッパーや、左右に設置したテンションバネのバネ力をコントロールするといった機構が不要となる等の効果も期待できる。
【0082】
(プラスチックシートの作製装置)
以上に説明したような本発明のラミネート装置は、図1に示したようなフィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記フィルムでラミネートするラミネート部とを含んでなる、プラスチックシートの作製装置のラミネート部として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】プラスチックシートの作製装置により作製されるプラスチックシートの一構成例を示す模式断面図である。
【図2】プラスチックシートの作製装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図3】第1の本発明のラミネート装置の第1の実施形態に係わる構成例を示す模式図である。
【図4】第1の本発明のラミネート装置の第2の実施形態に係わる構成例を示す模式図である。
【図5】第1の本発明のラミネート装置の第3の実施形態に係わる構成例を示す模式図である。
【図6】第2の本発明のラミネート装置の第1の実施形態に用いられる無端ベルトの構成例を示す斜視図である。
【図7】第2の本発明のラミネート装置の第2の実施形態に用いられる無端ベルトの他の構成例を示す斜視図である。
【図8】図2に示すプラスチックシート作製装置内に配置された従来のラミネート装置の一構成例の詳細を示す構成図である。
【図9】図8に示すラミネート装置の駆動力伝達系の一構成例を示す概略模式図である。
【図10】図8に示すラミネート装置において、一対の無端ベルトの接合部の位置がずれた状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1 コアシート
2、4 画像
3 表面フィルム(フィルム)
5 裏面フィルム(フィルム)
10 画像形成装置
11 フィルムスタッカー
12 画像形成部
13、15、21、24 搬送路
14 排出口
16 反転路
17 カム
20 丁合い装置
22 コアスタッカー
23 裏面フィルムスタッカー
25 丁合いトレイ(位置決め部)
26 仮留め装置
30 ラミネート装置
31 無端ベルト対
31a、31b 無端ベルト
32 テンションロール対
33 冷却ロール対
34 加熱加圧ロール対
35 インレットロール対
36 テンションバネ
37 冷却ファン
38 ベルトクリーニング装置
39a、39b 接合部
40 検出センサ
41 排出トレイ
50、50’、51、52 駆動力伝達系
60、61 駆動モータ
70 駆動ギア
71 被動ギア
72 クラッチ
80 勘合部(凸部)
81 勘合部(穴部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、
前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、
2シート以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、
前記第1の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置と、前記第2の無端ベルト外周面側接合部の周方向の位置とがずれた場合に、回転時に対面一致するように位置合わせ行う位置合わせ機構を備えたことを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記一対の無端ベルトの接合部の周方向の位置を検出する検出センサを備えたことを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記一対の無端ベルトの各々に独立して駆動力を伝達する2つの駆動モータを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記駆動モータの駆動力が伝達される一対のロールのうち、いずれか一方のロールへの前記駆動力の伝達を解除する駆動力伝達解除手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のラミネート装置。
【請求項5】
1つの駆動モータと、前記二対以上のロールのいずれか一対のロールの一方のロールと連動可能に連結され、前記駆動モータの駆動力が伝達される駆動ギアと、前記一対のロールの他方のロールと連動可能に連結され、前記駆動ギアと直接または間接的に勘合した被動ギアとを含む請求項4に記載のラミネート装置であって、
前記駆動ギアまたは前記被動ギアのいずれか一方のギアと、該ギアと連結されたロールとが、クラッチを介して連結されていることを特徴とするラミネート装置。
【請求項6】
1つの駆動モータと、前記二対以上のロールのいずれか一対のロールの一方のロールと連動可能に連結され、前記駆動モータの駆動力が伝達される駆動ギアと、前記一対のロールの他方のロールと連動可能に連結され、前記駆動ギアと直接または間接的に勘合した被動ギアとを含む請求項4に記載のラミネート装置であって、
前記駆動ギアと前記被動ギアとの勘合を解除する勘合解除手段を設けたことを特徴とする記載のラミネート装置。
【請求項7】
周面幅方向に接合部を有し、少なくとも外周面の一部が互いに圧接されニップ部を形成する一対の無端ベルト(第1の無端ベルトおよび第2の無端ベルト)と、前記第1の無端ベルト内周面と前記第2の無端ベルト内周面とに各々接して対向配置された二対以上のロールと、該二対以上のロールの少なくとも一対のロールを介して前記一対の無端ベルトを回転させる駆動モータとを含み、
前記二対以上のロールの少なくとも一対のロールが、前記ニップ部を形成すると共に前記ニップ部を加熱する加熱加圧ロールであり、
2以上のシートを積層した積層体を、加熱加圧しながら前記ニップ部を挿通させることによりラミネートしプラスチックシートを作製するラミネート装置において、
前記二対以上のロールのうち、前記駆動モータの駆動力が伝達される少なくとも一対のロールと、前記一対の無端ベルトとが、互いに勘合可能な勘合部を備えていることを特徴とするラミネート装置。
【請求項8】
前記一対の駆動ロールがギア部を備え、前記一対の無端ベルトの内周面周方向に、前記ギア部と勘合する凸部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のラミネート装置。
【請求項9】
前記一対の駆動ロールがギア部を備え、前記一対の無端ベルトの周方向に、前記ギア部と勘合する穴部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のラミネート装置。
【請求項10】
フィルムの表面に、電子写真方式により画像を形成する画像形成部と、コアシートを介して、前記フィルムを互いに対面するように積層した積層体を位置決めする位置決め部と、位置決めされた前記積層体を加熱・加圧することにより、前記コアシートを前記フィルムでラミネートするラミネート部とを含んでなる、プラスチックシートの作製装置であって、
前記ラミネート部が、請求項1〜9のいずれか1つに記載のラミネート装置を含むことを特徴とするプラスチックシート作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−7693(P2006−7693A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190986(P2004−190986)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】