説明

リアコンビネーションランプ

【課題】リアコンビネーションランプにおいて、効率的に冷却する構造を提供することを目的とする。
【解決手段】第1ランプの光を放射するテール/ストップランプ部と、
第2ランプの光を放射し、前記テール/ストップランプ部の下方に設けられるターンランプ部と、
前記第1ランプと前記第2ランプを収納するハウジングと、を備えるリアコンビネーションランプであって、
前記ハウジング内で前記テール/ストップランプ部と前記ターンランプ部とが連通しており、前記ハウジングは、前記第1ランプの近傍に第1通気孔を有し、前記第2ランプの近傍に第2通気孔を有する、リアコンビネーションランプとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリアコンビネーションランプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具におけるランプユニットの発熱に対して以下の対策がとられている。例えば、特許文献1には、ハウジングとの隙間から取り入れた外気をLEDランプに直接導くことによりLEDランプを冷却する構造が開示されている。また、特許文献2には、ハウジング内外の空気温度差によって生じる自然対流を利用して、ハウジング内を自然換気して冷却する構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−122945号公報
【特許文献2】特開2003−5121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テール/ストップランプとターンランプを一体的に構成したリアコンビネーションランプが使用されている。一般にテール/ストップランプは使用頻度が高く、ターンランプはこれに比べて使用頻度が低い。このような使用頻度の違いにより発生する熱量が異なるため、リアコンビネーションランプのハウジング内において、発熱量の分布に偏りが生じる。このような偏りを考慮した冷却構造とすれば冷却効率の向上が期待できるが、そのような冷却構造は特に検討されていない。
そこで、本発明は、リアコンビネーションランプにおいて、効率的に冷却する構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以上の目的を達成するために、以下に示すリアコンビネーションランプを提供する。即ち、
第1ランプの光を放射するテール/ストップランプ部と、
第2ランプの光を放射し、前記テール/ストップランプ部の下方に設けられるターンランプ部と、
前記第1ランプと前記第2ランプを収納するハウジングと、を備えるリアコンビネーションランプであって、
前記ハウジング内で前記テール/ストップランプ部と前記ターンランプ部とが連通しており、前記ハウジングは、前記第1ランプの近傍に第1通気孔を有し、前記第2ランプの近傍に第2通気孔を有する、リアコンビネーションランプとする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のリアコンビネーションランプでは、第1通気孔が排気孔として機能し、第2通気孔が吸気孔として機能する。即ち、ハウジング内において第2通気孔から第1通気孔への空気の流れが生じ、これによって第1ランプ及び第2ランプが冷却される。ここで、使用頻度の高いテール/ストップランプ部を上方に配置したことにより、テール/ストップランプ部で熱せられた空気は、第1ランプの近傍の第1通気孔から迅速に外部へ放出される。これにより、ハウジング内に熱がこもらず、ハウジング内が外気により効率的に冷却されることとなる。このように本発明の構成よれば、ランプの使用頻度を考慮したことによって、簡易な構成であるにもかかわらず効率的な冷却が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のリアコンビネーションランプにおける構成要素について詳細に説明する。 本発明のリアコンビネーションランプはテール/ストップランプ部とターンランプ部を備える。テール/ストップランプ部は光源として第1ランプを備える。第1ランプの種類は特に限定されないが、LEDランプであることが好ましい。LEDランプは、小型で、振動、衝撃に強いなどの利点を有するからである。LEDランプのタイプは特に限定されず、砲弾型、SMD型等、種々のものを採用できる。複数のLEDランプによって第1ランプを構成してもよい。
一方、ターンランプ部はテール/ストップランプ部よりも下方に設けられる。ターンランプ部は光源として第2ランプを備える。第2ランプは第1ランプと同様にLEDランプであることが好ましい。また、複数のLEDランプによって第2ランプを構成してもよい。
【0008】
ハウジングは第1ランプと第2ランプを収納する。ハウジング内でテール/ストップランプ部とターンランプ部は連通している。ハウジングの材質は特に限定されず、成形性や耐衝撃性、耐候性などを考慮して決定でき、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂などを採用することができる。ハウジングは、第1ランプの近傍に第1通気孔を備える。なお、「第1ランプの近傍に第1通気孔を備える」とは、第1ランプの中心とハウジングとの距離が最短となる位置を中心とする半径10mmの円状の領域、好ましくは半径5mmの円状の領域に第1通気孔の中心が存在する状態をいう。第1通気孔の形状は特に限定されず、スリット状、円形状、楕円形状などとすることができる。第1通気孔の形状は、例えば幅8mm〜10mm、長さ8mm〜10mm、好ましくは幅3mm〜5mm、長さ8mm〜10mmとすることができる。なお、複数の孔を第1通気孔としても良い。第1ランプとして複数のランプを使用する場合は、1個のランプに対して1個の第1通気孔を設けても良い。もちろん、複数のランプに対して1個の第1通気孔を設けても良い。
【0009】
ハウジングは第2ランプの近傍に第2通気孔を備える。なお、「第2ランプの近傍に第2通気孔を備える」とは、第2ランプの中心とハウジングとの距離が最短となる位置を中心とする半径15mmの円状の領域、好ましくは半径8mmの円状の領域に第2通気孔の中心が存在する状態をいう。第2通気孔の形状は特に限定されず、円形状、楕円形状、スリット状などとすることができる。例えば、第2通気孔の開口部を直径8mm〜15mmの円形、好ましくは直径8mm〜10mmの円形とすることができる。第2ランプとして複数のランプを使用する場合は、1個のランプに対して1個の第2通気孔を設けても良い。もちろん、複数のランプに対して1個の第2通気孔を設けても良い。
【0010】
第1通気孔及び第2通気孔には防水処理を施しても良い。防水処理としては、通気性防水フィルムや撥水性メッシュによる被覆など公知のものを採用することができる。第1通気孔又は第2通気孔をハーネス用の孔と併用させても良い。このようにすれば、別途ハーネス用の孔を設ける必要が無い。
【0011】
本発明の一態様では、下端に設けられた第1光入射部を介して第1ランプの光を導入して正面から放出するレンズがテール/ストップランプ部に備えられる。レンズは、下端から離れるほどその厚さが連続的又は段階的に薄くなっている。これにより、第1ランプから離れた領域において光の取り出し効率が高まる結果、正面から放出される光に輝度ムラが発生することが防止される。さらに、レンズの裏面側には下端から離れる方向に複数の反射部と連続部が交互に連なって形成されている。ここでの反射部はそこへ到達した導入光を界面で反射してレンズの正面方向の光を生成する。この構成では、第1ランプの光はレンズに導入された後、連結部を介して連なる複数の反射部によって反射される。これによって生じた光がレンズの正面から放射する。このようにレンズの導光作用と複数の反射部による反射作用が利用される結果、レンズの縁部まで光が行き渡り、レンズの縁部からも発光を得ることができる。なお、レンズ裏面の反射部は、レンズの裏面に光反射処理を施すことにより形成される。光反射処理としては、例えば、金属製材料(アルミ、銀、クロムなど)の蒸着やメッキ、スパッタ、金属フィルムの貼付などを採用することができる。あるいは、粗面加工や所定パターンの溝の形成を採用してもよい。
【0012】
本発明の一態様によれば、リアコンビネーションランプを外部から観察すると、レンズ正面(発光面)が直接(カバーなどを介してではなく)観察される。さらにレンズ正面を通して裏面に形成された反射部が見える。従って、当該反射部は、本発明のリアコンビネーションランプの意匠を構成する重要な要素となる。よって、反射部に高いデザイン性を付与することによって、リアコンビネーションランプの意匠性の向上を図ることができる。例えば、レンズの裏面に所定パターンで連続的に凹部を形成する。このような裏面に対して上記のごとき光反射処理を施せば、凹部が連続的に連なる反射部が構成される。このように光反射部の形状はレンズの裏面形状に依存することから、容易に所望形状の反射部を形成することができる。図1に示すように、反射部を規定する面(反射面)と光入射部を規定する面(光入射面)とがなす角度をθ、導光体正面(意匠面)と光入射面とがなす角度をθ1、光入射面に対する光の入射角度をθ2、導光体の屈折率をnとしたとき、以下の関係式が導き出される。
【数1】

この関係式に基づき、各反射部を規定する面の角度を設計することができる。
【0013】
レンズは、光入射部となる下端の厚さが例えば15mm〜50mm、好ましくは25〜40mmである。この厚さが薄すぎれば光導入効率の低下や導光作用への影響が生じるおそれがあるが、厚すぎればレンズが必要以上に厚肉化し、重量の増加及び製造コストの上昇を引き起こす。一方、上端(下端と反対側)の厚さは例えば3mm〜20mm、好ましくは5mm〜10mmである。このような厚肉のレンズを使用することは、レンズを通して外部より第1ランプが観察されることを防止するのに有効である。さらにレンズが厚肉形状であるため、正面側から観察したときに観察者へ特有の立体感・クリスタル感を与え、意匠性に優れる。
ところで、厚肉のレンズは薄型のレンズに比べて、温度変化に起因した膨張/収縮によってレンズの形状が変化しやすい。レンズの形状が変化すると、その裏面側に形成した反射部の剥離を引き起こすおそれがある。しかし、本発明のリアコンビネーションランプにおいては、装置全体が効率的に冷却されるため、レンズの熱膨張/収縮が抑制され、反射部の剥離が防止される。
【0014】
第1ランプは裏面側にリブ状のフィンを有するヒートシンクを備えることが好ましい。この場合、第1ランプの光放出側がレンズの下面に対向するように、第1レンズを配置し、そしてヒートシンクのフィンがレンズの前後方向に平行になるように構成することが好ましい。このようにすれば、テール/ストップランプ部において第1ランプにより加熱された空気が第1ランプの設置領域の後方に移動しやすく、第1通気孔からの排気がスムーズに行われるため、装置全体の冷却効果が高まる。
一方、第1ランプを、その光放出側がレンズの裏面に対向するようにレンズの裏面側に配置する場合は、ハウジングの第1通気孔を第1ランプの近傍であって、第1ランプよりも上方の位置に設け、ヒートシンクのフィンをレンズの上下方向に平行とすることが好ましい。このようにすれば、ヒートシンクのフィンが、第2通気孔から流入した外気が上方に位置する第1通気孔へ向けて流れるためのガイドとなり、第1通気孔から外部へとスムーズに排気されるため、装置全体の冷却効果が高まる。
【0015】
レンズ内に光散乱剤を含有させてもよい。これにより、レンズ内における光の拡散が促進され、レンズ正面から輝度バランスのよい光が放出される。光散乱剤としては例えば所定の粒径を有するガラス、アルミなどの金属、レンズと光の屈折率の異なる樹脂、シリカなどを用いることができる。
以下に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例であるリアコンビネーションランプ1を備える自動車後部の斜視図を図2に示す。リアコンビネーションランプ1の正面図を図3に示し、図3におけるA−A線断面図を図4に示す。リアコンビネーションランプ1はテールランプ表示及びストップランプ表示を行うテール/ストップランプ部10とターンシグナル表示を行うターンランプ部20を備える。
図4に示すようにリアコンビネーションランプ1は大別してレンズ30、2種類のLEDランプ(第1ランプ40及び第2ランプ45)、及びハウジング50から構成される。リアコンビネーションランプ1ではレンズ30の正面31から放射された光が直接外部を照射する。即ち、レンズ30の正面31がリアコンビネーションランプ1の意匠面となり、これによって特有の立体感・クリスタル感が得られる。
【0017】
ハウジング50は合成樹脂であって、第1通気孔51、第2通気孔52、第1ランプ40の装着部53、第2ランプ45の装着部54を備える。ハウジング50の縁部とレンズ30の裏面側の縁部を熱板溶着することによって、ハウジング50はレンズ30の裏面に取り付けられる。これにより、第1ランプ40と第2ランプ45は互いの設置領域が連通した状態で、レンズ30とハウジング50との間に収納されている。第1通気孔51は、第1ランプ40の設置領域の後方の位置に設けられている。第1通気孔51の形状はスリット状で、幅3mm、長さ8mmであって、3個の第1ランプ40の設置領域に亘って形成されている。ハウジング50の第2ランプ45近傍には第2通気孔52が設けられる。第2通気孔52を通してワイヤーハーネス56が第1ランプ40用の基板及び第2ランプ45用の基板に接続される。
【0018】
第1ランプ40はリブ状のフィンを有するヒートシンク43を備える。ヒートシンク43はアルミ製であって、第1ランプ40の裏面側に取り付けられている。ヒートシンク43のフィンはレンズ30の前後方向(図4では紙面の左右方向)に平行となるように形成されている。
【0019】
レンズ30は屈折率1.5のアクリル樹脂製であり、最も厚い部分の厚さ(正面、裏面間の距離)が約35mmである。レンズ30は上部がテール/ストップランプ部10のレンズとして機能し、下部がターンランプ部20のレンズとして機能する。即ち、レンズ30は2種類のレンズが一体に構成されたレンズである。レンズ30の正面31は全体に亘って緩やかにカーブする凸曲面である。当該凸曲面の曲率半径は400mm〜600mmである。一方、レンズ30の裏面側は以下で詳しく説明するように下部と上部とでその形状が異なる。
尚、レンズの材質については特に限定されるものではなく、屈折率が1.4〜1.8程度の導光材料からなるレンズを採用することができる。具体的には、この実施例で使用したアクリル樹脂の他、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ガラスなどを採用することができる。
【0020】
図4に示すように、レンズ30の上部の下面32はそのほぼ中央を境に裏面側に位置する第1光入射部32aと、正面側に位置する非光入射部32bとに分断されている。第1光入射部32aには第1ランプ40が対向する。このように第1光入射部32aと正面31とが離間するように構成したことによって、レンズ30の厚さを適宜調整することが可能となる。つまり、レンズ30の設計自由度が高められる。なお、第1光入射部32aは光の導入率を高めるために平滑な面となっている。この実施例では3個の第1ランプ40が長手方向(図4では紙面に垂直方向)に沿って等間隔で配置されている。第1ランプ40は赤色発光LEDランプ41を内蔵したLEDユニットであって、LEDランプ41の上方に備えられたレンズ42の作用によって平行光を出射する。
【0021】
レンズ30の上部の裏面側は、第1光入射部32a近傍から上方に向かって規則的な階段状に形成されており、これによって第1反射部33と第1連結部34が交互に連なる。このようにレンズ30の一部を反射部として利用することによって簡素且つ小型の構造を実現している。
第1反射部33は第1ランプ40からの光を界面によって反射して正面31方向の光を生成する領域であり、第1光入射部32aに対して所定の角度で傾斜する凸曲面(反射面)を構成する。断面において、当該凸曲面と第1光入射部32aのなす角度(図4におけるα)が約40°〜50°である。
他方の第1連結部34の面は、断面において、第1光入射部32aに対してほぼ垂直となり、第1反射部33と異なり正面31方向への積極的な反射作用を生じない。
第1反射部33の形状・角度はテール/ストップランプ部10の配光特性を考慮して設定される。尚、全ての第1反射部33に対して、第1ランプ40からの光が照射するように構成している。また、全ての第1反射部33の形状・角度が同一である必要はない。これは第1連結部34についても同様である。
【0022】
上記のように裏面側が階段状に形成されることによってレンズ30の上部は、第1光入射部32aの近傍部位で最も厚く(約35mm)、第1光入射部32aから離れるにつれて規則的に薄くなる。尚、レンズ30の上部の高さは約50mmである。
【0023】
レンズ30の下部の裏面側には、上下方向の中央位置に第2ランプ45に対する光入射部(第2光入射部36)が形成される。第2光入射部36は凹部であり、その中に第2ランプ45の光出射部が内包される。第2光入射部36を構成する凹部の表面は平滑であり、これによって光導入効率が高められている。この実施例では3個の第2ランプ45がレンズ30の左右方向(図4では紙面垂直方向)に沿って等間隔で配置されており、これに伴って第2光入射部36も等間隔で3箇所形成されている。第2ランプ45はアンバー色のLEDランプ46の上方に備えられたレンズ47の作用によって横方向(360°全方向)の光を生成する。
【0024】
レンズ30の下部の裏面側は、第2光入射部36を中心とし周囲に向かって規則的な階段状に形成されている。これによって第2反射部37と第2連結部38が交互に連なる。第2反射部37は第2ランプ45からの光を界面によって反射して正面31方向の光を生成する領域であり、第2ランプ45の中心軸に対する角度(図4におけるβ)が約30°〜約50°の面からなる。
第2連結部38は第2ランプ45の中心軸に対する角度がほぼ90°の面からなり、第2反射部37と異なり正面31方向への積極的な反射作用を生じない。
第2反射部37の形状・角度はターンランプ部20の配光特性を考慮して設定される。全ての第2反射部37の形状・角度が一定である必要はない。第2連結部38についても同様である。
【0025】
上記のように裏面側に階段状に成形されることによってレンズ30の下部は、第2光入射部36近傍位置が最も厚く(約30mm)、第2光入射部36から離れるにつれて規則的に薄くなる。尚、レンズ30の下部の高さは約35mmである。
【0026】
レンズ30の裏面側には、第1光入射部32a、第2光入射部36、及びハウジング50との接続部を除いて光反射処理が施されている。具体的には、アルミ材料の蒸着によって反射層60が形成されている。反射層60を形成することによって、第1反射部33及び第2反射部37における反射効率が向上し、反射光の進行方向も揃う。また、レンズ30の正面側から見たときに反射層60が視認されることによって金属調の質感を与える。
【0027】
レンズ30の上部と下部の境界部にはレンズ30の左右方向(図4では紙面に垂直方向)に沿って連続する光反射拡散領域15が形成される(図2、図4)。リアコンビネーションランプ1ではこの光反射拡散領域15が光に対する障壁として機能し、テール/ストップランプ部10からターンランプ部20への光漏れ、及びその逆方向の光漏れを防止する。
光反射拡散領域15はレーザ加工によって形成され、レンズ30の上下方向に積層した2層から8層の多層構造を有する。各層は微細なクラックの集合からなる。光反射拡散領域15の厚さ(上下方向の長さ)は約5mmである。図4に示すように、光反射拡散領域15はレンズ30の表面近傍まで形成されている。具体的には光反射拡散領域15とレンズ正面31との距離は約3mm、反射拡散領域15とレンズ裏面から3mmの位置まで形成されている。このように境界部を広範にカバーする光反射拡散領域15を設けることによって光漏れを最小限に抑えている。
一方、図2に示す通りレンズ30の上部では、正面からみて右側縁部に面状の乱反射領域16が形成されている。乱反射領域16はレーザ加工によって形成され、微細なクラックの集合からなる。尚、光反射拡散領域15と異なり、乱反射領域16は一層構造であり、その厚さ(左右方向の長さ)は約1mmである。
【0028】
次にリアコンビネーションランプ1における冷却機構を説明する。リアコンビネーションランプ1では、第1通気孔51が排気孔として機能し、第2通気孔52が吸気孔として機能する。即ち、ハウジング50内において第2通気孔52から第1通気孔51への空気の流れが生じ、これによって第1ランプ40及び第2ランプ45が冷却される。ここで、使用頻度の高いテール/ストップランプ部10を上方に配置したことにより、テール/ストップランプ部10の第1ランプ40で熱せられた空気は、第1ランプ40の近傍の第1通気孔51から迅速に外部へ放出される。これと同時に、第2通気孔52から外気が取り込まれる。この結果、ハウジング50内に熱がこもらず、装置全体の冷却が効率的に行われることとなる。このように本発明のリアコンビネーションランプ1によれば、簡易な構成であるにもかかわらず、使用頻度の違うランプをハウジング内に備えることを考慮した効率的な冷却が行われる。さらに、第1ランプ40のヒートシンク43のフィンはレンズ30の前後方向(図4では紙面の左右方向)に平行となるように形成されている。これにより、テール/ストップランプ部10において第1ランプ51により加熱された空気が第1ランプ40の設置領域の後方に移動しやすく、第1通気孔51からの排気がスムーズに行われるため、装置全体が効率的に冷却される。以上のように、装置全体が効率的に冷却されるため、レンズ30の熱膨張/収縮が抑制され、反射層33の剥離が防止される。
【0029】
以下にリアコンビネーションランプ1の点灯態様を説明する。まず、テールランプ表示が行われるときには、車両側から入力信号に応じて第1ランプ40が低輝度で点灯する。第1ランプ40から放射された平行光は第1光入射部32を介してレンズ30の上部へ導入される。導入光は第1反射部33に至り、そこで反射作用を受け、正面31方向の光へと変換される。これによって生じた光がレンズ30の上部の正面(図4において符号31aで示す領域)から放射する。
発光時のテール/ストップランプ部10の状態を図5に模式的に示す。上下方向において、発光してみえる領域(第1反射部33)と発光しない領域(第1連結部34)が交互に表れることがわかる。各第1反射部33には第1ランプ40の鏡像40aを確認できる。ところで、凸曲面を構成する第1反射部33は凸面鏡として機能し、広範囲を映し出すことができる。これによって、各第1反射部33に第1ランプ40の全体の鏡像が見えることになる。即ち、全ての第1反射部33が、第1ランプ40の完全な鏡像を映し出し、デザイン性が向上する。
尚、図5からわかるように、一つの第1反射部33の半分に相当する距離ずつ上下方向にずれながら、第1反射部33が横方向に連なっている。このように構成することによって、レンズ裏面側の段差を小さくすることができ、もってレンズ30の型成形が容易となる。
【0030】
ここで、厚肉のレンズ30が使用されること、及び第1連結部34を介して連なる複数の第1反射部33によって正面31a方向の光が生成することから、レンズ30の上部の正面31aは全体に発光する。
ところで、第1ランプ40から離れた位置の第1反射部33に到達する光量は、第1ランプ40に近い位置の第1反射部33に到達する光量よりも少ない。しかしながら、上記の説明から分かるように、第1ランプ40から離れた位置の第1反射部33では正面31aとの距離が短くなっており、そこで生成された反射光は効率的に正面31aから放射する。このように、第1ランプ40からの距離に起因する光量の減少が光利用率の上昇によって相殺される結果、正面31aから放射される光の輝度が均一化される。尚、全ての第1反射部33に対して第1ランプ40からの光が照射するように構成したことによっても発光輝度の均一化が図られている。
【0031】
レンズ30の上部を導光する光の一部はレンズ30の下部へ向かって進行する。リアコンビネーション1では光反射拡散領域15が当該光に対する障壁となる。即ち、レンズ30の下部へと向かう光が光反射拡散領域15で遮断される。これによって、ターンランプ部20への光漏れが防止され、見切り、即ちレンズ正面31における発光領域と非発光領域の境界が明確となり、意匠性及び視認性に優れた発光表示となる。尚、上記の通り光反射拡散領域15を多層構造にすることで高い光遮断効果を得ている。
【0032】
一方、レンズ30の上部を導光する光の一部は乱反射領域16に至り、そこで乱反射される。これによって、リアコンビネーションランプ1を斜め或いは横からみれば、乱反射部16に起因する光(即ち面状の発光)が観察される。このように視野角の広い発光表示が行われることになる。尚、乱反射領域16を薄くし、且つその形成位置をレンズ30の上部の縁部に設定したことによって、正面からみたときに乱反射領域16が目立つことを防止し、同時に導光作用への影響を低減している。
【0033】
テール/ストップランプ部10では、上記の通り非常に厚肉のレンズ30を使用するとともに、レンズ30の上部の裏面側に第1ランプ40を配置せず(レンズの下端側に第1ランプ40を配置し)、そして正面31より入射する外光の中で第1光入射部32aに直接向かう光が第1光入射部32a部分の界面で全反射されるようにレンズ30を設計しており、レンズ30を通して外部より第1ランプ40が直接観察されることを防止している。即ち、図4のa位置やb位置から観察した場合、レンズ正面31aや第1光入射部32aの全反射によって第1ランプ40が視認されない。c位置から観察した場合にあっては反射層60が見えることになり、a位置又はb位置から観察した場合と同様に第1ランプ40の存在は分からない。このように簡易な構成にもかかわらず第1ランプ40の存在を確実に隠すことに成功しており、意匠性が高く、且つ意外性を演出する灯具となっている。
ところで、上記の全反射が生ずるためには、図6に示すように、レンズの屈折率をnとしたとき、正面31aと第1光入射部32のなす角度θが所定の条件、即ち以下の関係式(第1光入射部32aが平面であることを条件とした場合)を満たす必要がある。
【数2】

【0034】
レンズ上部の全体に渡って以上の条件を満たすようにレンズ30を設計すれば、視点の位置にかかわらず、レンズ正面31を通して第1ランプ40方向(即ち第1光入射部32a方向)を見たときに第1ランプ40が見えない。つまり、レンズ正面31を通して第1ランプ40が直接視認されることがなくなる。このように第1ランプ40の存在を完全に隠すことが好ましいが、リアコンビネーションランプ1の使用時における観察者の視点位置の範囲が限られること(例えば、通常の使用では図4のa位置からリアコンビネーションランプ1が観察されることはない)を考慮すれば、レンズ正面31の一部(例えばレンズ上部の上縁部)が上記条件を満たさなくとも実用上問題はないといえる。そこで、レンズ正面31と第1光入射部32aのなす角度θが所定の条件、即ち以下の関係式を満たすように構成するようにしてもよい。
【数3】

【0035】
そこを通して外部より第1ランプ40が直接見える領域をレンズ正面31に積極的に形成することにしてもよい。当該構成によれば、視点位置の変化に伴い第1ランプ40が突然見えたり、或いは見えていたものが突然隠れたりするという意外性を演出することが可能となる。
【0036】
全反射を生じやすくするためには第1光入射部32aを平滑面とすることが好ましい。第1光入射部32aを平滑面とすれば、第1ランプ40からの光を効率的にレンズ30内に取り込むこともでき、さらには取り込まれた光の進行方向を揃えることもできる。このように第1光入射面32を平滑面にすることは光利用率及び配光制御の点からも好ましい。
この実施例では第1光入射部32aを平面とすることによってレンズ30に取り込まれた光の良好な配光を実現している。尚、第1光入射部32aの形状は平面に限られるものではなく、例えば任意の曲面によって第1光入射部32aを構成することもできる。また、異なる形状の面を組み合わせて第1光入射部32aを構成してもよい。
【0037】
ストップランプ表示については、第1ランプ40が高輝度で点灯される結果として正面31aより高輝度の発光が得られること以外はテールランプ表示と同様の点灯態様となる。
【0038】
ターンシグナル表示が行われるときには、車両側からの入力信号に応じて第2ランプ45が点灯し、レンズ下部に設けられた第2光入射部36を介してレンズ下部にアンバー色の光が導入される。テールランプ表示の場合と同様に、この導入光が第2反射部37によってレンズ正面31b方向の光へと変換されることによってレンズ下部の正面31bが発光し、ターンシグナル表示が行われる。そして、テールランプ/ストップランプ部10と同様、第2ランプ45から離れた領域における光利用率の上昇によって、レンズ正面31bから放射される光の輝度が均一化される。尚、テール/ストップランプ部10が点灯状態のときと同様にターンシグナル部20が点灯状態のときにおいても、反射拡散領域15が良好な遮断効果を発揮し、光漏れを防止する。その結果、意匠性及び視認性の高い発光態様となる。
【0039】
この実施例では、レンズ30の第1光入射部32aと光非入射部32bを平行な関係で形成したが、図7に示すように、光非入射部32bに対して第1光入射部32aが傾斜するように構成することもできる。図7の例では、第1光入射部32aは、光非入射部32bとのなす角度が小さくなる方向に傾斜している。当該二つの面のなす角度γは約160°である。このような構成は、レンズ正面31を介して第1ランプ40が直接観察されることを防止することに有効である。即ち、第1光入射部32aを傾斜させることによって、そこを通して第1ランプ40が直接見えることがない領域を拡大できる。これによってレンズ正面31の設計自由度が高まり、レンズ30の薄型化などが可能となる。また、第1光入射部32aを傾斜させることは第1反射部33の数や面積の増大にも有効である。反射部の増大は輝度均一化に寄与する。尚、第1光入射部32aと光非入射部32bのなす角度は特に限定されないが、例えば120°〜180°である。
【実施例2】
【0040】
本発明の他の実施例であるリアコンビネーションランプ100の正面図を図8に示し、図8におけるB−B線断面図を図9に示す。尚、リアコンビネーションランプ1と同等の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
図9に示すようにリアコンビネーションランプ100は大別してレンズ300、2種類のLEDランプ(第1ランプ400及び第2ランプ45)、及びハウジング500から構成される。リアコンビネーションランプ100ではレンズ300に正面310から放射された光が直接外部を照射する。即ち、レンズ300の正面310がリアコンビネーションランプ100の意匠面となり、これによって特有の立体感・クリスタル感が得られる。尚、リアコンビネーションランプ100は意匠面(正面310)において第1ランプ400及び第2ランプ45を積極的に見せる構成となっている。
【0041】
ハウジング500は合成樹脂であって、第1通気孔510、第2通気孔520、第1ランプ400の装着部530、第2ランプ45の装着部540を備える。ハウジング500の縁部とレンズ300の裏面側の縁部を熱板溶着することによって、下側10a(テール/ストップランプ部10a)と上側20a(ターンランプ部20a)とハウジング500内で連通するように、ハウジング500はレンズ300の裏面に取り付けられる。ハウジング500の第1通気孔510は第1ランプ400の近傍であって、第1ランプ400よりも下方(図9では紙面下方)の位置に設けられている。第1通気孔510の形状は、幅3mm、長さ8mmのスリット状であって、3個の第1ランプ40の背後領域に亘って形成されている。ハウジング500の第2ランプ45近傍には第2通気孔520が設けられる。第2通気孔520を通してワイヤーハーネス56が第1ランプ40用の基板及び第2ランプ45用の基板に接続される。
【0042】
レンズ300の裏面側には、下側10a(テール/ストップランプ部10a)に3個の凹部(第1光入射面320)が等間隔に形成されており、それぞれに第1ランプ40の光出射部が内包される。上側20a(ターンランプ部20a)に3個の凹部(第2光入射部360)が等間隔に形成されており、それぞれに第2ランプ450の光出射部が内包される。第1光入射面320及び第2光入射部360を構成する凹部の表面は平滑面であり、これによって光導入効率が高められている。第1ランプ400は赤色のLEDランプ41の上方に備えられたレンズ420の作用によって横方向(360°全方向)の光を生成する。同様に、第2ランプ45はアンバー色のLEDランプ46の上方に備えられたレンズ47の作用によって横方向(360°全方向)の光を生成する。
【0043】
第1ランプ400はリブ状のフィンを有するヒートシンク430を備える。ヒートシンク430はアルミ製であって、第1ランプ400の裏面側に取り付けられている。ヒートシンク430のフィンはレンズ300の上下方向(図9では紙面の上下方向)に平行となるように形成されている。
【0044】
リアコンビネーションランプ100では、第1ランプ400のヒートシンク430のフィンはレンズ300の上下方向に平行となるように形成されている。これにより、ヒートシンク430のフィンが、第1通気孔510から流入した外気がレンズ300の下方から上方に向けて(図9では紙面下から上へ)流れるためのガイドとなる。これにより、第1通気孔510からハウジング500内に流入した外気は、スムーズに第2通気孔520へと流れるため、第1ランプ400の冷却効果が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は様々な車両(乗用車、バス、トラックなど)用のリアコンビネーションランプに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は反射部を形成する面の角度を説明する図である。
【図2】図2は本発明の実施例であるリアコンビネーションランプ1を備える自動車後部の斜視図である。
【図3】図3はリアコンビネーションランプ1の正面図である。
【図4】図4は図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図5はテール/ストップランプ部10の発光時の状態を模式的に示す平面図である。
【図6】図6はレンズ正面31aと第1光入射部32のなす角度を説明する図である。
【図7】図7は本発明の他の実施例の断面図である。第1光入射部32aは傾斜面として備えられたレンズ30aが示される。
【図8】図8は本発明の他の実施例であるリアコンビネーションランプ100の正面図である。
【図9】図9は図8におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 100 リアコンビネーションランプ
10 10a テール/ストップランプ部
15 光反射拡散領域
16 乱反射領域
20 20a ターンランプ部
30 300 レンズ
31 レンズ正面
31a レンズ下部の正面
31b レンズ上部の正面
32a 320 第1光入射部
32b 非光入射部
32 下面
33 第1反射部
34 第1連結部
36 360 第2光入射部
37 第2反射部
38 第2連結部
40 400 第1ランプ
41、46 LEDランプ
42、47 レンズ
43 430 ヒートシンク
45 第2ランプ
50 ハウジング
51 第1通気孔
52 第2通気孔
53 第1ランプ40の装着部
54 第2ランプ45の装着部
60 反射層
α 第1光入射部32と第1反射部33のなす角度
β 第2LEDユニット46の中心軸と第2反射部37のなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ランプの光を放射するテール/ストップランプ部と、
第2ランプの光を放射し、前記テール/ストップランプ部の下方に設けられるターンランプ部と、
前記第1ランプと前記第2ランプを収納するハウジングと、を備えるリアコンビネーションランプであって、
前記ハウジング内で前記テール/ストップランプ部と前記ターンランプ部とが連通しており、前記ハウジングは、前記第1ランプの近傍に第1通気孔を有し、前記第2ランプの近傍に第2通気孔を有する、リアコンビネーションランプ。
【請求項2】
下端に設けられた光入射部を介して前記第1ランプの光を導入して正面から放出するレンズであって、前記下端から離れるほどその厚さが連続的又は段階的に薄くなり、裏面側には前記下端から離れる方向に複数の反射部と連結部が交互に連なって形成され、該反射部はそこへ到達した導入光を界面で反射して前記正面方向の光を生成するレンズが、前記テール/ストップランプ部に備えられる、請求項1に記載のリアコンビネーションランプ。
【請求項3】
前記レンズの前記正面を介して前記レンズに入射する外光の内、前記レンズの前記下端に直接向かうものが前記下端の界面で全反射される、請求項2に記載のリアコンビネーションランプ。
【請求項4】
前記第1ランプは、その光放出側が前記レンズの下面に対向するように配置され、前記第1ランプはリブ状のフィンを有するヒートシンクを備え、該フィンが前記レンズの前後方向に平行となる、請求項2又は3に記載のリアコンビネーションランプ。
【請求項5】
前記第1ランプ及び前記第2ランプはLEDランプである、請求項1〜4のいずれかに記載のリアコンビネーションランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−171604(P2008−171604A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1874(P2007−1874)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】