説明

リチウムイオン二次電池、及び、電池システム

【課題】安定した出力特性を得ることができ、過放電及び過充電の少なくともいずれかを防止することが可能とされたリチウムイオン二次電池、及び電池システムを提供する。
【解決手段】正極活物質が、主成分として2相共存型の充放電を行う第1正極活物質(LiMnPO4)と、副成分として2相共存型の充放電を行う第2正極活物質(LiFePO4)とを含み、放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット部FDA1と電圧低下部DVと第2放電フラット部FDB2とが現れる特性を有するリチウムイオン二次電池、及び電池システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、及び、リチウムイオン二次電池を備える電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。現在、リチウムイオン二次電池としては、LiMO2(Mは、Co,Ni,Mn,V,Al,Mgなど)からなる正極活物質と、炭素材料からなる負極活物質と、Li塩と非水溶媒からなる非水電解液とを有するものが主流となっている(例えば、特許文献1〜3参照)。このリチウムイオン二次電池は、高い放電電圧を示し、高出力であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−336000号公報
【特許文献2】特開2003−100300号公報
【特許文献3】特開2003−059489号公報
【特許文献4】特開2003−36889号公報
【特許文献5】特開2006−12613号公報
【0004】
ところで、特許文献1〜3に開示されているリチウムイオン二次電池は、充電時には充電するにしたがって徐々に電池電圧が上昇し、逆に、放電時には放電するにしたがって徐々に電池電圧が低下する特性を有している。このため、充放電時の電池電圧の変化が大きくなるので、出力変動が大きく、電池の充電状態(放電深度)により出力特性が変化して使いにくいという課題があった。
【0005】
これに対し、特許文献4,5には、正極活物質として、組成式LiFePO4等で表されるオリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた二次電池が提案されている。LiFePO4等で表されるオリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物は、充放電電位が充放電の際にも略一定であり、リチウムイオンを脱離・吸蔵してもほとんど変化しない。その理由は、例えば、LiFePO4で表されるオリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物は、Liの吸蔵・脱離時に、LiFePO4とFePO4との2相共存状態となるからであると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、LiFePO4等の2相共存型の充放電を行う正極活物質を用いることで、充電状態の変化に伴う入力密度や出力密度の変化が少なく、出力特性の安定したリチウム二次電池を構成することが可能となる。しかしながら、このようなリチウムイオン二次電池は、充放電の際、電池電圧の変化が極めて小さくなる。
具体的には、このようなリチウムイオン二次電池を放電すると、放電末期に至るまで電池電圧値がほとんど変化しない。このため、放電時に、電池電圧に基づいて放電末期(または放電末期に近づいていること)を検知することが難しく、過放電となる虞があった。
また、このようなリチウムイオン二次電池を充電すると、充電末期に至るまで電池電圧値がほとんど変化しない。このため、充電時に、電池電圧に基づいて充電末期(または充電末期に近づいていること)を検知することが難しかった。しかも、充電末期には電池電圧値が急上昇して、直ちに満充電状態に至ってしまう。このため、電池電圧に基づいて、満充電状態に至るまでに充電末期を検知することが難しく、過充電となる虞があった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、安定した出力特性を得ることができるリチウムイオン二次電池であって、当該リチウムイオン二次電池の過放電及び過充電の少なくともいずれかを防止することが可能とされたリチウムイオン二次電池、及び、安定した出力特性を得ることができるリチウムイオン二次電池を備え、当該リチウムイオン二次電池の過放電及び過充電の少なくともいずれかを防止することが可能な電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、正極活物質と、負極活物質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、上記正極活物質は、主成分として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質と、副成分として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質と、を含み、上記第1正極活物質は、当該第1正極活物質と上記負極活物質とを用いた第1リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1放電フラット線が現れる特性を有し、上記第2正極活物質は、当該第2正極活物質と上記負極活物質とを用いた第2リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第2正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2放電フラット線が現れ、上記第2放電フラット線の平均電圧値が、上記第1放電フラット線の平均電圧値よりも低くなる特性を有し、上記リチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、上記第1放電フラット線のうち放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、上記第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、上記第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、上記第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、上記第1放電フラット部から上記第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、上記第1放電フラット部及び上記第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有するリチウムイオン二次電池である。
【0009】
上述のリチウムイオン二次電池は、正極活物質の主成分(例えば、80wt%)として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質の副成分(例えば、20wt%)として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を含んでいる。
【0010】
正極活物質として第1正極活物質のみを用い、負極活物質として上述のリチウムイオン二次電池と同等の負極活物質を用いた第1リチウムイオン二次電池では、この第1リチウムイオン二次電池を放電させたとき、その電池電圧変動曲線において、第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(例えば、理論電気容量の95%〜5%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1放電フラット線が現れる。このように広い容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1リチウムイオン二次電池では、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0011】
正極活物質として第2正極活物質のみを用い、負極活物質として上述のリチウムイオン二次電池と同等の負極活物質を用いた第2リチウムイオン二次電池では、この第2リチウムイオン二次電池を放電させたとき、その電池電圧変動曲線において、第2正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(例えば、理論電気容量の95%〜5%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2放電フラット線が現れる。このように広い容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2リチウムイオン二次電池では、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0012】
しかしながら、第1リチウムイオン二次電池及び第2リチウムイオン二次電池では、放電末期に至るまでの全体の50%以上の容量範囲(例えば、理論電気容量の95%〜5%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる。すなわち、放電途中から放電末期に至るまで、電池電圧値がほとんど変化しない。このため、放電時に、電池電圧に基づいて放電末期(または放電末期に近づいていること)を検知することが難しく、過放電となる虞があった。
【0013】
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質の主成分(例えば、80wt%)として2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質の副成分(例えば、20wt%)として2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を含んでいる。このようなリチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット線のうち放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、第1放電フラット部から第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、第1放電フラット部及び第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有する。
【0014】
第1放電フラット部と第2放電フラット部との間に位置する電圧低下部では、第1放電フラット部及び第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下するため、上述のリチウムイオン二次電池の放電時に、電池電圧の検知により、電圧低下部に至ったことを容易に検知することができる。電圧低下部は、電池電圧変動曲線のうち放電末期に近い部位である。このため、上述のリチウムイオン二次電池の放電時に、電圧低下部の電池電圧値(例えば、電圧低下部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、放電末期に近づいていることを検知することができる。これにより、過放電を防止するための処理(例えば、電池の残電気量が少ないことを警告する処理、放電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することが可能となる。
【0015】
しかも、上述のリチウムイオン二次電池では、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の95%〜25%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となるので、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0016】
(2)さらに、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記正極活物質は、副成分として、LiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)を含み、前記第1正極活物質は、前記第1リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、前記理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線と、上記第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって、上記第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部と、が現れ、前記負極活物質として炭素材料を用いた場合の上記第1充電フラット線の平均電圧値が4.5V以下となる特性を有し、上記リチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、上記第1充電フラット線のうち充電初期側の端部及び充電末期側の端部を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、上記第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、上記第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有するリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0017】
第1リチウムイオン二次電池では、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(例えば、理論電気容量の5%〜95%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線が現れる。従って、第1リチウムイオン二次電池では、充電途中から充電末期に至るまで、電池電圧値がほとんど変化しない。このため、充電時に、電池電圧に基づいて充電末期(または充電末期に近づいていること)を検知することが難しかった。しかも、第1リチウムイオン二次電池では、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって、第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部が現れる。すなわち、充電末期には電池電圧値が急上昇し、直ちに満充電状態に至ってしまう。このため、電池電圧に基づいて、満充電状態に至るまでに充電末期を検知することが難しく、過充電となる虞があった。
【0018】
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質の主成分として第1正極活物質を含み、正極活物質の副成分として、第2正極活物質に加えてLiMO2 を(例えば、1〜5wt%)含んでいる。このようなリチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット線のうち充電初期側の端部及び充電末期側の端部を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有する。
【0019】
上述のリチウムイオン二次電池の充電末期(第2充電末期部)では、第1リチウムイオン二次電池の充電末期(第1充電末期部)に比べて、広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する。すなわち、充電末期において、電池電圧値が急上昇することなく、比較的ゆっくりと満充電状態に至る。このため、上述のリチウムイオン二次電池の充電時に、電池電圧の検知により、第2充電末期部に至ったことを容易に検知することができる。従って、上述のリチウムイオン二次電池の充電時に、第2充電末期部の電池電圧値(例えば、第2充電末期部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、満充電状態に近づいていることを検知することができる。これにより、過充電を防止するための処理(例えば、充電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することが可能となる。
【0020】
しかも、上述のリチウムイオン二次電池では、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の25%〜95%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となるので、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
なお、LiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)は、Mとして、Ni,Co,Mnのうち少なくとも1種以上(1種または複数種の組み合わせ)の元素を含み、さらに、Ni,Co,Mnとは異なる他の元素(例えば、V,Al,Mgなど)を含んでいても良い。
【0021】
(3)本発明の他の態様は、正極活物質と、負極活物質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、上記正極活物質は、主成分として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質と、副成分として、LiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)と、を含み、上記第1正極活物質は、当該第1正極活物質と上記負極活物質とを用いた第1リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、当該第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線と、上記第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって上記第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部と、が現れ、上記負極活物質として炭素材料を用いた場合の上記第1充電フラット線の平均電圧値が4.5V以下となる特性を有し、上記リチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、上記第1充電フラット線のうち充電末期側の部位を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、上記第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、上記第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有するリチウムイオン二次電池である。
【0022】
上述のリチウムイオン二次電池は、正極活物質の主成分(例えば、95wt%)として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質の副成分(例えば、5wt%)として、LiMO2 を含んでいる。
【0023】
正極活物質として第1正極活物質のみを用い、負極活物質として上述のリチウムイオン二次電池と同等の負極活物質を用いた第1リチウムイオン二次電池では、この第1リチウムイオン二次電池を充電したとき、その電池電圧変動曲線において、第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(例えば、理論電気容量の5%〜95%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線が現れる。このように広い容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1リチウムイオン二次電池では、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0024】
しかしながら、第1リチウムイオン二次電池では、充電したときの電池電圧変動曲線において、充電末期に至るまでの全体の50%以上の容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる。すなわち、充電途中から充電末期に至るまで、電池電圧値がほとんど変化しない。このため、充電時に、電池電圧に基づいて充電末期(または充電末期に近づいていること)を検知することが難しかった。しかも、第1リチウムイオン二次電池では、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって、第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部が現れる。すなわち、充電末期には電池電圧値が急上昇し、直ちに満充電状態に至ってしまう。このため、電池電圧に基づいて、満充電状態に至るまでに充電末期を検知することが難しく、過充電となる虞があった。
【0025】
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質の主成分(例えば、95wt%)として2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質の副成分(例えば、5wt%)としてLiMO2 を含んでいる。このようなリチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット線のうち充電末期側の部位を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有する。
【0026】
上述のリチウムイオン二次電池の充電末期(第2充電末期部)では、第1リチウムイオン二次電池の充電末期(第1充電末期部)に比べて、広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する。すなわち、充電末期において、電池電圧値が急上昇することなく、比較的ゆっくりと満充電状態に至る。このため、上述のリチウムイオン二次電池の充電時に、電池電圧の検知により、第2充電末期部に至ったことを容易に検知することができる。従って、上述のリチウムイオン二次電池の充電時に、第2充電末期部の電圧値(例えば、第2充電末期部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、満充電状態に近づいて
いることを検知することができる。これにより、過充電を防止するための処理(例えば、充電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することが可能となる。
【0027】
しかも、上述のリチウムイオン二次電池では、第1充電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の25%〜95%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる。このようなリチウムイオン二次電池では、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0028】
(4)さらに、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記正極活物質は、副成分として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を含み、前記第1正極活物質は、前記第1リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、前記理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1放電フラット線が現れる特性を有し、上記第2正極活物質は、当該第2正極活物質と上記負極活物質とを用いた第2リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第2正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2放電フラット線が現れ、上記第2放電フラット線の平均電圧値が、上記第1放電フラット線の平均電圧値よりも低くなる特性を有し、上記リチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、上記第1放電フラット線のうち放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、上記第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、上記第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、上記第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、上記第1放電フラット部から上記第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、上記第1放電フラット部及び上記第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有するリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0029】
第1リチウムイオン二次電池及び第2リチウムイオン二次電池では、放電させたとき、理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の容量範囲(例えば、理論電気容量の5%〜95%に相当する容量範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる。すなわち、放電途中から放電末期に至るまで、電池電圧値がほとんど変化しない。このため、第1リチウムイオン二次電池及び第2リチウムイオン二次電池では、放電時に、電池電圧に基づいて放電末期(または放電末期に近づいていること)を検知することが難しく、過放電となる虞があった。
【0030】
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質の主成分として2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質の副主成分として、LiMO2 に加えて、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を(例えば、5〜20wt%)含んでいる。このようなリチウムイオン二次電池は、当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット線のうち放電初期側の端部及び放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、第1放電フラット部から第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、第1放電フラット部及び第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有する。
【0031】
第1放電フラット部と第2放電フラット部との間に位置する電圧低下部では、第1放電フラット部及び第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下するため、上述のリチウムイオン二次電池の放電時に、電池電圧の検知により、電圧低下部に至ったことを容易に検知することができる。電圧低下部は、電池電圧変動曲線のうち放電末期に近い部位である。このため、上述のリチウムイオン二次電池の放電時に、電圧低下部の電圧値(例えば、電圧低下部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、放電末期に近づいていることを検知することができる。これにより、過放電を防止するための処理(例えば、電池の残電気量が少ないことを警告する処理、放電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することが可能となる。
【0032】
しかも、上述のリチウムイオン二次電池では、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の25%〜95%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となるので、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0033】
(5)さらに、前記いずれかのリチウムイオン二次電池であって、前記第1正極活物質は、LiFePO4であり、前記第2正極活物質は、Li3Fe2(PO43であるリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0034】
上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質の主成分(第1正極活物質)としてLiFePO4 を含み、正極活物質の副成分(第2正極活物質)としてLi3Fe2(PO43でを含んでいる。また、正極活物質の副成分としてLiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)も含んでいる。
【0035】
このようなリチウムイオン二次電池は、放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット部と電圧低下部と第2放電フラット部とが現れる特性を有する。このため、リチウムイオン二次電池の放電時に、電圧低下部の電圧値(例えば、電圧低下部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、放電末期に近づいていることを検知することができる。これにより、過放電を防止するための処理(例えば、電池の残電気量が少ないことを警告する処理、放電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することが可能となる。
【0036】
さらに、このリチウムイオン二次電池は、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット部と第2充電末期部とが現れる特性を有する。このため、リチウムイオン二次電池の充電時に、第2充電末期部の電圧値(例えば、第2充電末期部の範囲内の特定の電圧値)を検知することで、満充電状態に近づいていることを検知することができる。これにより、過充電を防止するための処理(例えば、充電停止の処理など)を行うことが可能となり、適切に、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することが可能となる。
【0037】
しかも、上述のリチウムイオン二次電池では、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の25%〜95%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となるので、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0038】
(6)また、本発明の他の態様は、前記(1)、(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池と、上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を検知する電圧検知装置と、前記電圧低下部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、上記電圧検知装置によって検知された上記電圧低下部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う処理装置と、を備える電池システムである。
【0039】
上述の電池システムは、前述の(1)、(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池を備えている。これらのリチウムイオン二次電池は、前述のように、放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット部と電圧低下部と第2放電フラット部とが現れる特性を有する。しかも、これらのリチウムイオン二次電池では、前述のように、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の95%〜25%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる。このため、上述の電池システムでは、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0040】
さらに、上述の電池システムは、リチウムイオン二次電池の放電時に、電圧検知装置によって検知された電圧低下部の電池電圧値に基づいて、リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う処理装置を備えている。従って、リチウムイオン二次電池の放電末期に近づいたとき、処理装置により、リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理(例えば、電池の残電気量が少ないことを警告する処理、放電停止の処理など)が行われる。これにより、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することが可能となる。
【0041】
(7)さらに、上記の電池システムであって、前記電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして上記電気自動車に搭載されてなり、前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理を行う電池システムとすると良い。
【0042】
上述の電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして電気自動車に搭載されている。この電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の放電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理(例えば、警告ランプを点灯させる処理)を行う。この警告により、電気自動車の運転者は、リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを知ることができる。これにより、電気自動車の運転者は、リチウムイオン二次電池に電気が残存している間に、電気自動車を停止させ、リチウムイオン二次電池を充電することができる。従って、上述の電池システムによれば、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することができる。
【0043】
(8)また、前記の電池システムであって、前記電池システムは、モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、上記自動車に搭載されてなり、上記自動車は、上記エンジンを駆動させることなく前記リチウムイオン二次電池の放電により供給される電力を用いた上記モータの駆動により走行するEVモード、及び、上記モータの駆動と上記エンジンの駆動の組み合わせにより走行するHVモード、のいずれかにより走行可能に構成されてなり、前記処理装置は、上記EVモードにより上記自動車が走行を開始した後、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、上記HVモードにより上記自動車が走行するように、前記所定の処理として、上記エンジンを始動させる処理を行う電池システムとすると良い。
【0044】
上述の電池システムは、モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、プラグインハイブリッド自動車に搭載されている。プラグインハイブリッド自動車は、外部電源から供給される電力を用いて、当該自動車に搭載されている電池システムに含まれるリチウムイオン二次電池を充電可能とする構成を有するハイブリッド自動車である。このプラグインハイブリッド自動車は、エンジンを駆動させることなくリチウムイオン二次電池の放電により供給される電力を用いたモータの駆動により走行するEVモード(電気自動車モード)、及び、モータの駆動とエンジンの駆動の組み合わせにより走行するHVモード(ハイブリッド自動車モード)のいずれかにより走行可能に構成されている。
【0045】
上述の電池システムでは、プラグインハイブリッド自動車がEVモードで走行を開始した後、処理装置が、リチウムイオン二次電池の放電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、HVモードによりプラグインハイブリッド自動車が走行するように、エンジンを始動させる処理を行う。これにより、プラグインハイブリッド自動車が、モータの駆動とエンジンの駆動の組み合わせにより走行するようになるので、リチウムイオン二次電池の放電を抑制する(さらには、リチウムイオン二次電池を充電する)ことができる。これにより、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することができる。
【0046】
(9)さらに、前記いずれかの電池システムであって、前記リチウムイオン二次電池は、前記(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池であり、前記処理装置は、前記第2充電末期部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理を行う電池システムとすると良い。
【0047】
上述の電池システムは、前述の(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池を備えている。これらのリチウムイオン二次電池は、前述のように、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット部と第2充電末期部とが現れる特性を有する。
【0048】
さらに、上述の電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の充電時に、電圧検知装置によって検知された第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理を行う。従って、リチウムイオン二次電池の充電末期に至ったとき、処理装置により、リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理(例えば、充電停止の処理)が行われる。これにより、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することが可能となる。
【0049】
(10)さらに、上記の電池システムであって、前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記第2充電末期部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う電池システムとすると良い。
【0050】
上述の電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の充電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う。これにより、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することができる。
【0051】
(11)また、本発明の他の態様は、前記(2)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池と、上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を検知する電圧検知装置と、前記第2充電末期部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の充電時に、上記電圧検知装置によって検知された上記第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過充電を防
止するための所定の処理を行う処理装置と、を備える電池システムである。
【0052】
上述の電池システムは、前述の(2)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池を備えている。これらのリチウムイオン二次電池は、前述のように、充電したときの電池電圧変動曲線において、第1充電フラット部と第2充電末期部とが現れる特性を有する。しかも、これらのリチウムイオン二次電池では、前述のように、第1放電フラット部が含まれる広い容量範囲(例えば、理論電気容量の25%〜95%に相当する容量範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下となる。このため、上述の電池システムでは、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0053】
さらに、上述の電池システムは、リチウムイオン二次電池の充電時に、電圧検知装置によって検知された第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理を行う処理装置を備えている。従って、リチウムイオン二次電池の充電末期に至ったとき、処理装置により、リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理(例えば、充電停止の処理)が行われる。これにより、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することが可能となる。
【0054】
(12)さらに、上記の電池システムであって、前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記第2充電末期部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う電池システムとすると良い。
【0055】
上述の電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の充電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う。これにより、リチウムイオン二次電池の過充電を防止することができる。
【0056】
(13)さらに、上記いずれかの電池システムであって、前記リチウムイオン二次電池は、前記(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池であり、前記処理装置は、前記電圧低下部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記電圧低下部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う電池システムとすると良い。
【0057】
上述の電池システムは、前述の(2)、(4)、または(5)に記載のリチウムイオン二次電池を備えている。これらのリチウムイオン二次電池は、前述のように、放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット部と電圧低下部と第2放電フラット部とが現れる特性を有する。
【0058】
さらに、上述の電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の放電時に、電圧検知装置によって検知された電圧低下部の電池電圧値に基づいて、リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う。従って、リチウムイオン二次電池の放電末期に近づいたとき、処理装置により、リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理(例えば、電池の残電気量が少ないことを警告する処理、放電停止の処理など)が行われる。これにより、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することが可能となる。
【0059】
(14)さらに、上記の電池システムであって、前記電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして上記電気自動車に搭載されてなり、前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理を行う電池システムとすると良い。
【0060】
上述の電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして電気自動車に搭載されている。この電池システムでは、処理装置が、リチウムイオン二次電池の放電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理を行う。この警告により、電気自動車の運転者は、リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを知ることができる。これにより、電気自動車の運転者は、リチウムイオン二次電池に電気が残存している間に、電気自動車を停止させ、リチウムイオン二次電池を充電することができる。従って、上述の電池システムによれば、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することができる。
【0061】
(15)また、前記の電池システムであって、前記電池システムは、モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、上記自動車に搭載されてなり、上記自動車は、上記エンジンを駆動させることなく前記リチウムイオン二次電池の放電により供給される電力を用いた上記モータの駆動により走行するEVモード、及び、上記モータの駆動と上記エンジンの駆動の組み合わせにより走行するHVモード、のいずれかにより走行可能に構成されてなり、前記処理装置は、上記EVモードにより上記自動車が走行を開始した後、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、上記HVモードにより上記自動車が走行するように、前記所定の処理として、上記エンジンを始動させる処理を行う電池システムとすると良い。
【0062】
上述の電池システムは、モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、プラグインハイブリッド自動車に搭載されている。この電池システムでは、プラグインハイブリッド自動車がEVモードで走行を開始した後、処理装置が、リチウムイオン二次電池の放電時に、リチウムイオン二次電池の電池電圧値が電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、HVモードによりプラグインハイブリッド自動車が走行するように、エンジンを始動させる処理を行う。これにより、プラグインハイブリッド自動車が、モータの駆動とエンジンの駆動の組み合わせにより走行するようになるので、リチウムイオン二次電池の放電を抑制する(さらには、リチウムイオン二次電池を充電する)ことができる。これにより、リチウムイオン二次電池の過放電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】電気自動車の概略図である。
【図2】実施例1にかかる電池システムの概略図である。
【図3】実施例1にかかるリチウムイオン二次電池の断面図である。
【図4】同リチウムイオン二次電池の電極体の断面図である。
【図5】同電極体の部分拡大断面図であり、図4のB部拡大図に相当する。
【図6】他のリチウムイオン二次電池Aを放電させたときの電池電圧変動曲線である。
【図7】他のリチウムイオン二次電池Aを充電したときの電池電圧変動曲線である。
【図8】他のリチウムイオン二次電池Bを放電させたときの電池電圧変動曲線である。
【図9】他のリチウムイオン二次電池Bを充電したときの電池電圧変動曲線である。
【図10】実施例1にかかるリチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線である。
【図11】実施例1にかかる放電制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】プラグインハイブリッド自動車の概略図である。
【図13】実施例2にかかる電池システムの概略図である。
【図14】実施例2にかかる放電制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例1の電池システム6は、電気自動車1の駆動用電源システムとして、電気自動車1に搭載されている(図1参照)。電気自動車1は、図1に示すように、車体2、フロントモータ4、リヤモータ5、電池システム6、ケーブル7、及び電源プラグ8を有している。詳細には、この電気自動車1は、電池システム6をフロントモータ4及びリヤモータ5の駆動用電源として搭載し、フロントモータ4及びリヤモータ5の駆動により走行できるように構成されている。
【0065】
電池システム6は、電気自動車1の車体2に取り付けられており、ケーブル7によりフロントモータ4及びリヤモータ5に接続されている。この電池システム6は、図2に示すように、組電池30と、変換装置44と、処理装置70と、電圧検知装置50とを備えている。組電池30は、電気的に直列に接続された複数(例えば、100個)のリチウムイオン二次電池100を有している。なお、組電池30を構成する全てのリチウムイオン二次電池100の充電状態は等しくされている。
【0066】
電圧検知装置50は、組電池30を構成する複数のリチウムイオン二次電池100から選択した1つのリチウムイオン二次電池100電池電圧値(端子間電圧値)を検知する。なお、本実施例1では、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値として、リチウムイオン二次電池100の正極端子120と負極端子130との端子間電圧を検知する。
【0067】
処理装置70は、図示しないROM、CPU、RAM等を有し、スイッチ41,42を介して、組電池30に電気的に接続されている。この処理装置70は、スイッチ41,42をONにした状態で、組電池30の放電を制御する。例えば、電気自動車1の運転中に、組電池30からインバータ(モータ)への電力供給を制御する。なお、処理装置70は、電気自動車1の制御を司るコントロールユニット60(図2参照)に接続され、コントロールユニット60との間で電気信号を送受信する。
【0068】
また、この処理装置70は、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力する。処理装置70のROM(図示省略)には、予め、後述する電圧低下部DV(図10参照)におけるリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が記憶されている。なお、本実施例1では、電圧低下部DVの電池電圧値として、電圧低下部DVにおける電池電圧範囲(約3.9V〜3.4Vの範囲、図10参照)から3.7Vを選択して、処理装置70のROM(図示省略)に記憶させている。
【0069】
さらに、処理装置70は、リチウムイオン二次電池100の放電時に、所定のタイミング毎に、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力する。そして、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が、電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例1では3.7V)に達しているか否かを判断する。リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が、電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例1では3.7V)に達していると判断した場合、リチウムイオン二次電池100の過放電を防止するための処理を行う。具体的には、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを警告する処理を行う。詳細には、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを警告するための警告ランプ47(図2参照)を点灯させる処理を行う。
【0070】
なお、この警告ランプ47は、電気自動車1の運転者が視認できる位置(例えば、インストルメントパネル)に配置されている。このため、電気自動車1の運転者は、警告ランプ47の点灯を確認することで、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを知ることができる。これにより、電気自動車1の運転者は、リチウムイオン二次電池100に電気が残存している間に、電気自動車1を停止させ、リチウムイオン二次電池100を充電することができる。従って、本実施例1の電池システム6によれば、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100の過放電を防止することができる。
【0071】
変換装置44は、AC/DCコンバータにより構成されており、商用電源46の電圧を、一定電圧値を有する直流定電圧に変換することができる。この変換装置44は、ケーブル7に含まれるケーブル71を通じて、電源プラグ8に電気的に接続されている。さらに、変換装置44は、スイッチ43を介して、組電池30に電気的に接続されている。
【0072】
電源プラグ8は、商用電源46に電気的に接続可能に構成されている。この電源プラグ8は、変換装置44と電気的に接続されている。従って、電源プラグ8を通じて、変換装置44と商用電源46とを電気的に接続することができる。なお、本実施例1では、電源プラグ8と共にケーブル71を電気自動車1の外部に引き出すことができ、電気自動車1から離れた商用電源46に電源プラグ8を接続できるようになっている。
【0073】
このため、本実施例1の電気自動車1では、電気自動車1の停止期間中に、電源プラグ8を商用電源46に電気的に接続することで、商用電源46から供給される電力を用いて、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100を充電することができる。処理装置70は、変換装置44を監視しており、商用電源46から電源プラグ8を通じて変換装置44に電力が供給されたことを検知すると、スイッチ41,42をOFFにすると共に、スイッチ43をONにする。これにより、商用電源46から供給される電力を用いて、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100を充電することができる。具体的には、商用電源46の電圧を、変換装置44により、所定の一定電圧値を有する直流定電圧に変換しつつ、商用電源46から供給される電力を、変換装置44を通じて、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100に供給する。
【0074】
リチウムイオン二次電池100は、図3に示すように、直方体形状の電池ケース110と、正極端子120と、負極端子130とを備える、角形密閉式のリチウムイオン二次電池である。このうち、電池ケース110は、金属からなり、直方体形状の収容空間をなす角形収容部111と、金属製の蓋部112とを有している。電池ケース110(角形収容部111)の内部には、電極体150、正極集電部材122、負極集電部材132などが収容されている。
【0075】
電極体150は、断面長円状をなし、シート状の正極板155、負極板156、及びセパレータ157を捲回してなる扁平型の捲回体である(図4、図5参照)。この電極体150は、その軸線方向(図3において左右方向)の一方端部(図3において右端部)に位置し、正極板155の一部のみが渦巻状に重なる正極捲回部155bと、他方端部(図3において左端部)に位置し、負極板156の一部のみが渦巻状に重なる負極捲回部156bとを有している。正極板155には、正極捲回部155bを除く部位に、正極活物質153を含む正極合材152が塗工されている(図5参照)。同様に、負極板156には、負極捲回部156bを除く部位に、負極活物質154を含む負極合材159が塗工されている(図5参照)。正極捲回部155bは、正極集電部材122を通じて、正極端子120に電気的に接続されている。負極捲回部156bは、負極集電部材132を通じて、負極端子130に電気的に接続されている。
【0076】
本実施例1のリチウムイオン二次電池100では、正極活物質153の主成分(具体的には、80wt%)として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質を含み、正極活物質153の副成分(具体的には、20wt%)として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を含んでいる。なお、本実施例1では、第1正極活物質としてLiMnPO4を用い、第2正極活物質としてLiFePO4を用いている。従って、正極活物質153は、80wt%のLiMnPO4と20wt%のLiFePO4により構成されている。
また、負極活物質154として、炭素材料(詳細には、天然黒鉛)を用いている。
【0077】
ここで、本実施例1のリチウムイオン二次電池100とは異なり、正極活物質としてLiMnPO4(実施例1の第1正極活物質)のみを用い、負極活物質として負極活物質154(天然黒鉛)を用いたリチウムイオン二次電池Aについて説明する。このリチウムイオン二次電池Aを放電させたときの電池電圧変動曲線(放電深度と電池電圧値の関係を表す曲線)を、図6に示す。また、リチウムイオン二次電池Aを充電したときの電池電圧変動曲線(充電状態と電池電圧値の関係を表す曲線)を、図7に示す。
【0078】
図6に示すように、リチウムイオン二次電池Aでは、放電させたときの電池電圧変動曲線において、LiMnPO4(実施例1の第1正極活物質)が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲(図6において放電深度0〜100%の範囲)のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(詳細には、理論電気容量の98%〜6%に相当する容量範囲、図6において放電深度2〜94%の範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下(詳細には約0.1V)となる放電フラット線FDAが現れる。このように広い容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下(詳細には約0.1V)となるリチウムイオン二次電池Aでは、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0079】
また、本実施例1のリチウムイオン二次電池100とは異なり、正極活物質としてLiFePO4(実施例1の第2正極活物質)のみを用い、負極活物質として負極活物質154(天然黒鉛)を用いたリチウムイオン二次電池Bについて説明する。このリチウムイオン二次電池Bを放電させたときの電池電圧変動曲線(放電深度と電池電圧値の関係を表す曲線)を、図8に示す。また、リチウムイオン二次電池Bを充電したときの電池電圧変動曲線(充電状態と電池電圧値の関係を表す曲線)を、図9に示す。
【0080】
図8に示すように、リチウムイオン二次電池Bでは、放電させたときの電池電圧変動曲線において、LiFePO4(実施例1の第2正極活物質)が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲(図8において放電深度0〜100%の範囲)のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲(詳細には、理論電気容量の98%〜6%に相当する容量範囲、図8において放電深度2〜94%の範囲)にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下(詳細には約0.1V)となる放電フラット線FDBが現れる。このように広い容量範囲にわたって電池電圧値の変動が0.2V以下(詳細には約0.1V)となるリチウムイオン二次電池Bでは、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。なお、放電フラット線FDBの平均電圧値(3.35V)は、放電フラット線FDAの平均電圧値(4.0V)よりも低くなる(図6及び図8参照)。
【0081】
なお、上記の例では、リチウムイオン二次電池Aが第1リチウムイオン二次電池に相当し、リチウムイオン二次電池Bが第2リチウムイオン二次電池に相当する。また、放電フラット線FDAが第1放電フラット線に相当し、放電フラット線FDBが第2放電フラット線に相当する。
【0082】
ところで、リチウムイオン二次電池A,Bでは、図6,図8に示すように、放電初期(放電深度2%)から放電末期(放電深度94%)に至るまで、電池電圧値がほとんど変化しない。このため、リチウムイオン二次電池A,Bでは、その放電時に、電池電圧値に基づいて放電末期(または放電末期に近づいていること)を検知することが難しく、過放電となる虞があった。
【0083】
次に、本実施例1のリチウムイオン二次電池100を放電させたときの電池電圧変動曲線(放電深度と電池電圧値の関係を表す曲線)を、図10に示す。図10に示すように、リチウムイオン二次電池100では、放電させたときの電池電圧変動曲線において、第1放電フラット部FDA1と、第2放電フラット部FDB2と、第1放電フラット部FDA1から第2放電フラット部FDB2に至るまでの範囲にわたって電池電圧値が低下する電圧低下部DVとが現れる。
【0084】
ここで、第1放電フラット部FDA1は、放電フラット線FDA(図6参照)のうち放電末期側の端部(図6において放電深度72%以上の部分)を除いた部分に相当する。第2放電フラット部FDB2は、放電フラット線FDB(図8参照)の放電末期側の端部(図8において放電深度80〜94%の部分)に相当し、第1放電フラット部FDA1よりも放電末期側(放電深度が大きい側)に位置し、第1放電フラット部FDA1の電圧値よりも低い電圧値を示す(図10参照)。電圧低下部DVは、第1放電フラット部FDA1及び第2放電フラット部FDB2に比べて電池電圧値が大きく低下する。
【0085】
このような電池電圧変動曲線が現れる理由は、リチウムイオン二次電池100では、前述のように、正極活物質153の主成分(具体的には、80wt%)としてLiMnPO4(第1正極活物質)を含み、正極活物質153の副成分(具体的には、20wt%)としてLiFePO4(第2正極活物質)を含んでいるからである。
【0086】
第1放電フラット部FDA1と第2放電フラット部FDB2との間に位置する電圧低下部DVでは、第1放電フラット部FDA1及び第2放電フラット部FDB2に比べて電池電圧が大きく低下する。このため、リチウムイオン二次電池100の放電時に、電圧検知装置50によってリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を検知することで、電圧低下部DVに至ったことを容易に検知することができる。具体的には、前述のように、処理装置70により、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が、電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例1では3.7V)に達したか否かを判断することで、電圧低下部DVに至ったか否かを判断できる。
【0087】
ところで、電圧低下部DVは、図10に示すように、電池電圧変動曲線のうち放電末期に近い部位である。このため、処理装置70により、リチウムイオン二次電池100の放電時に、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例1では3.7V)に達したと判断されたときは、放電末期に近づいていると判断することができる。従って、このときに、処理装置70により、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを警告する処理(警告ランプ47を点灯させる処理)が行われることで、前述のように、リチウムイオン二次電池100の過放電を防止することが可能となる。
【0088】
しかも、リチウムイオン二次電池100では、第1放電フラット部FDA1が含まれる広い容量範囲(具体的には、理論電気容量の98%〜28%に相当する容量範囲、図10において放電深度2〜72%の範囲)にわたって電池電圧値の変動が0.1V以下となるので、出力変動の小さい安定した出力特性を得ることができる。
【0089】
次に、本実施例1のリチウムイオン二次電池100の製造方法について説明する。
まず、LiMnPO4とLiFePO4を用意する。次いで、LiMnPO4の表面に、導電性の炭素被膜を形成する。同様に、LiFePO4の表面に、導電性の炭素被膜を形成する。なお、炭素被膜の形成方法は、例えば、特開2008−311067に開示されている方法を用いることができる。次いで、炭素被膜を有するLiMnPO4とLiFePO4を、80:20の割合(重量比)で混合し、正極活物質混合体(正極活物質153に相当する)とする。その後、正極活物質153とアセチレンブラック(導電助剤)とポリフッ化ビニリデン(バインダ樹脂)とを、85:5:10(重量比)の割合で混合し、これにN−メチルピロリドン(分散溶媒)を混合して、正極スラリを作製した。次いで、この正極スラリを、アルミニウム箔151の表面に塗布し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、アルミニウム箔151の表面に正極合材152が塗工された正極板155を得た(図5参照)。
【0090】
また、天然黒鉛(負極活物質154)と、スチレン−ブタジエン共重合体(バインダ樹脂)と、カルボキシメチルセルロース(増粘剤)とを、95:2.5:2.5(重量比)の割合で水中で混合して、負極スラリを作製した。次いで、この負極スラリを、銅箔158の表面に塗布し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、銅箔158の表面に負極合材159が塗工された負極板156を得た(図5参照)。
なお、本実施例1では、正極の理論容量と負極の理論容量との比が1:1.5となるように、正極スラリ及び負極スラリの塗布量を調整している。
【0091】
次に、正極板155、負極板156、及びセパレータ157を積層し、これを捲回して断面長円状の電極体150を形成した(図4,図5参照)。但し、正極板155、負極板156、及びセパレータ157を積層する際には、電極体150の一端部から、正極板155のうち正極合材152を塗工していない未塗工部が突出するように、正極板155を配置しておく。さらには、負極板156のうち負極合材159を塗工していない未塗工部が、正極板155の未塗工部とは反対側から突出するように、負極板156を配置しておく。これにより、正極捲回部155b及び負極捲回部156bを有する電極体150(図3参照)が形成される。なお、本実施例1では、セパレータ157として、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層構造複合体多孔質膜を用いている。
【0092】
次に、電極体150の正極捲回部155bと正極端子120とを、正極集電部材122を通じて接続する。さらに、電極体150の負極捲回部156bと負極端子130とを、負極集電部材132を通じて接続する。その後、これを角形収容部111内に収容し、角形収容部111と蓋体112とを溶接して、電池ケース110を封止した。次いで、蓋体112に設けられている注液口(図示しない)を通じて電解液を注液した後、注液口を封止することで、本実施例1のリチウムイオン二次電池100が完成する。なお、本実施例1では、電解液として、EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)とを、4:6(体積比)で混合した溶液中に、六フッ化燐酸リチウム(LiPF6
を1mol/Lの割合で溶解したものを用いている。
【0093】
次に、本実施例1にかかる組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電制御について説明する。
例えば、電気自動車1の運転者がアクセルペダルを踏み込むと、コントロールユニット60は、処理装置70に対し、組電池30(リチウムイオン二次電池100)を放電させる指令(信号)を送信する。処理装置70は、コントロールユニット60から、組電池30(リチウムイオン二次電池100)を放電させる指令を受けると、スイッチ41,42をONにした状態で、組電池30(リチウムイオン二次電池100)を放電させて、インバータ(モータ)に電力を供給する。これにより、電気自動車1は、フロントモータ4及びリヤモータ5の駆動により走行する。
【0094】
処理装置70は、組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電を開始すると、図11に示すように、ステップS1において、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力(検出)する。次いで、ステップS2に進み、処理装置70は、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7V(電圧低下部DVの電池電圧値)に達しているか否かを判断する。リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7Vに達していない(No)と判断した場合は、再びステップS1に戻り、上述の処理を行う。
【0095】
一方、ステップS2において、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7Vに達している(Yes)と判断した場合は、ステップS3に進み、処理装置70は、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを警告するための警告ランプ47を点灯させる。電気自動車1の運転者は、警告ランプ47の点灯を確認することで、リチウムイオン二次電池100の残電気量が少ないことを知ることができる。これにより、電気自動車1の運転者は、リチウムイオン二次電池100に電気が残存している間に、電気自動車1を停止させ、リチウムイオン二次電池100を充電することが可能となる。このように、警告ランプ47を点灯させて、電気自動車1の運転者に対し、リチウムイオン二次電池100の充電を促すことで、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100の過放電を防止することが可能となる。
【0096】
その後、ステップS4に進み、処理装置70は、リチウムイオン二次電池100の放電が停止しているか否かを判断する。処理装置70が、コントロールユニット60から組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電を停止させる指令を受けて、リチウムイオン二次電池100の放電を停止させている場合は、リチウムイオン二次電池100の放電が停止していると判断できる。リチウムイオン二次電池100の放電が停止している(Yes)と判断した場合は、一連の処理を終了する。なお、処理装置70が、コントロールユニット60から組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電を停止させる指令を受けて、リチウムイオン二次電池100の放電を停止させる場合としては、例えば、運転者がアクセルペダルから足を離して、電気自動車1を停止させるときを挙げることができる。
【0097】
一方、処理装置70は、リチウムイオン二次電池100の放電が停止していない(No)と判断した場合は、ステップS5に進み、新たに、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力(検出)する。次いで、ステップS6に進み、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.0Vに達しているか否かを判断する。リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.0Vに達していない(No)と判断した場合は、ステップS4に戻り、再び、リチウムイオン二次電池100の放電が停止しているか否かを判断する。このようにして、リチウムイオン二次電池100の放電停止が確認できるまで、ステップS4〜S6の処理を繰り返し行う。
【0098】
図10に示すように、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.0Vに達したときは、放電末期(放電深度98%)に至っており、これ以上リチウムイオン二次電池100の放電を継続した場合には過放電となってしまう。このため、処理装置70は、ステップS6において、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.0Vに達している(Yes)と判断した場合は、ステップS7に進み、リチウムイオン二次電池100の放電を停止する。これにより、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100の過放電を防止することができる。
【0099】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しつつ説明する。なお、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、実施例1と同様な点については説明を省略または簡略化する。
【0100】
本実施例2の電池システム16は、プラグインハイブリッド自動車11の駆動用電源システムとして、プラグインハイブリッド自動車11に搭載されている(図12参照)。電池システム16は、図12に示すように、車体2、エンジン3、フロントモータ4、リヤモータ5、電池システム16、ケーブル7、及び電源プラグ8を有している。このプラグインハイブリッド自動車11は、エンジン3を駆動させることなく電池システム16を構成する組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電により供給される電力を用いたモータ(フロントモータ4及びリヤモータ5)の駆動により走行するEVモード、及び、モータ(フロントモータ4及びリヤモータ5)の駆動とエンジン3の駆動の組み合わせにより走行するHVモードのいずれかにより走行するように構成されている。
【0101】
電池システム16は、図13に示すように、組電池30と、変換装置44と、処理装置270と、電圧検知装置50とを備えている。
処理装置270は、図示しないROM、CPU、RAM等を有し、スイッチ41,42を介して、組電池30に電気的に接続されている。この処理装置270は、スイッチ41,42をONにした状態で、組電池30の充放電を制御する。例えば、プラグインハイブリッド自動車11の運転中に、組電池30とインバータ(モータ)との間での電力のやりとりを制御する。なお、処理装置270は、プラグインハイブリッド自動車11の制御を司るコントロールユニット260に接続され、コントロールユニット260との間で電気信号を送受信する。
【0102】
また、この処理装置270は、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力する。処理装置270のROM(図示省略)には、予め、電圧低下部DV(図10参照)におけるリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が記憶されている。なお、本実施例2でも、実施例1と同様に、電圧低下部DVの電池電圧値として3.7Vを選択して、処理装置270のROM(図示省略)に記憶させている。
【0103】
さらに、処理装置270は、プラグインハイブリッド自動車11がEVモードで走行を開始した後、リチウムイオン二次電池100の放電時に、所定のタイミング毎に、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力する。そして、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が、電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例2では3.7V)に達しているか否かを判断する。リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が、電圧低下部DVの電池電圧値(本実施例2では3.7V)に達していると判断した場合、リチウムイオン二次電池100の過放電を防止するための処理を行う。具体的には、プラグインハイブリッド自動車11がHVモードで走行するように、エンジン3を始動させる処理を行う。
【0104】
これにより、プラグインハイブリッド自動車11が、モータ(フロントモータ4及びリヤモータ5)の駆動とエンジン3の駆動の組み合わせにより走行するようになるので、リチウムイオン二次電池100の放電を抑制する(さらには、リチウムイオン二次電池100を充電する)ことができる。これにより、リチウムイオン二次電池100の過放電を防止することができる。
【0105】
また、本実施例2のプラグインハイブリッド自動車11でも、プラグインハイブリッド自動車11の停止期間中に、電源プラグ8を商用電源46に電気的に接続することで、商用電源46から供給される電力を用いて、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100を充電することができる。処理装置270は、変換装置44を監視しており、商用電源46から電源プラグ8を通じて変換装置44に電力が供給されたことを検知すると、スイッチ41,42をOFFにすると共に、スイッチ43をONにする。これにより、実施例1の電気自動車1と同様に、商用電源46から供給される電力を用いて、組電池30を構成するリチウムイオン二次電池100を充電することができる。
【0106】
次に、本実施例2にかかる組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電制御について説明する。
例えば、上述のようにして、商用電源46から供給される電力を用いて、プラグインハイブリッド自動車11に搭載されている組電池30(リチウムイオン二次電池100)の充電を完了した後、プラグインハイブリッド自動車11の主電源(メインスイッチ)をONにすると、コントロールユニット260により、EVモードが選択される。その後、プラグインハイブリッド自動車11の運転者がアクセルペダルを踏み込むと、処理装置270は、スイッチ41,42をONにした状態で、組電池30(リチウムイオン二次電池100)を放電させて、インバータ(モータ)に電力を供給する。これにより、プラグインハイブリッド自動車11は、フロントモータ4及びリヤモータ5の駆動により走行する。なお、EVモードでは、エンジン3は駆動しない。
【0107】
処理装置270は、組電池30(リチウムイオン二次電池100)の放電を開始すると、図13に示すように、ステップT1において、電圧検知装置50によって検知されたリチウムイオン二次電池100の電池電圧値を入力(検出)する。次いで、ステップT2に進み、処理装置270は、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7V(電圧低下部DVの電池電圧値)に達しているか否かを判断する。リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7Vに達していない(No)と判断した場合は、再びステップT1に戻り、上述の処理を行う。
【0108】
一方、ステップT2において、リチウムイオン二次電池100の電池電圧値が3.7Vに達している(Yes)と判断した場合は、ステップT3に進み、処理装置270は、エンジン3を始動させる。このとき、コントロールユニット260により、EVモードからHVモードへの切り替えが行われる。これにより、プラグインハイブリッド自動車11が、モータ(フロントモータ4及びリヤモータ5)の駆動とエンジン3の駆動の組み合わせにより走行するので、リチウムイオン二次電池100の放電を抑制する(さらには、リチウムイオン二次電池100を充電する)ことができる。これにより、リチウムイオン二次電池100の過放電を防止することができる。
【0109】
以上において、本発明を実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0110】
1 電気自動車
3 エンジン
4 フロントモータ
5 リヤモータ
6,16 電池システム
11 プラグインハイブリッド自動車
30 組電池
50 電圧検知装置
70,270 処理装置
100 リチウムイオン二次電池
153 正極活物質
154 負極活物質
DV 電圧低下部
FDA1 第1放電フラット部
FDB2 第2放電フラット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と、負極活物質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
上記正極活物質は、
主成分として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質と、
副成分として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質と、を含み、
上記第1正極活物質は、
当該第1正極活物質と上記負極活物質とを用いた第1リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1放電フラット線が現れる特性を有し、
上記第2正極活物質は、
当該第2正極活物質と上記負極活物質とを用いた第2リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第2正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2放電フラット線が現れ、上記第2放電フラット線の平均電圧値が、上記第1放電フラット線の平均電圧値よりも低くなる特性を有し、
上記リチウムイオン二次電池は、
当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、
上記第1放電フラット線のうち放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、
上記第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、上記第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、上記第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、
上記第1放電フラット部から上記第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、上記第1放電フラット部及び上記第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有する
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記正極活物質は、
副成分として、LiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)を含み、
前記第1正極活物質は、
前記第1リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、
前記理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線と、
上記第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって、上記第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部と、が現れ、
前記負極活物質として炭素材料を用いた場合の上記第1充電フラット線の平均電圧値が4.5V以下となる特性を有し、
上記リチウムイオン二次電池は、
当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、
上記第1充電フラット線のうち充電初期側の端部及び充電末期側の端部を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、
上記第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、上記第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有する
リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
正極活物質と、負極活物質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
上記正極活物質は、
主成分として、2相共存型の充放電を行う第1正極活物質と、
副成分として、LiMO2(Mは、Ni,Co,Mnの少なくともいずれかを含む)と、を含み、
上記第1正極活物質は、
当該第1正極活物質と上記負極活物質とを用いた第1リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、
当該第1正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち充電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1充電フラット線と、
上記第1充電フラット線に隣接する充電末期部であって上記第1充電フラット線に比べて電池電圧値が急上昇する第1充電末期部と、が現れ、
上記負極活物質として炭素材料を用いた場合の上記第1充電フラット線の平均電圧値が4.5V以下となる特性を有し、
上記リチウムイオン二次電池は、
当該リチウムイオン二次電池を充電したときの電池電圧変動曲線において、
上記第1充電フラット線のうち充電末期側の部位を除いた部分に相当する第1充電フラット部と、
上記第1充電フラット部に隣接する充電末期部であって、上記第1充電末期部に比べて広い容量範囲にわたって電池電圧値が緩やかに上昇する第2充電末期部と、が現れる特性を有する
リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記正極活物質は、
副成分として、2相共存型の充放電を行う第2正極活物質を含み、
前記第1正極活物質は、
前記第1リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、前記理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第1放電フラット線が現れる特性を有し、
上記第2正極活物質は、
当該第2正極活物質と上記負極活物質とを用いた第2リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、当該第2正極活物質が理論的に最大限蓄積できる理論電気容量を上限とした電気容量の範囲のうち放電末期に至るまでの全体の50%以上の範囲にわたって、電池電圧値の変動が0.2V以下となる第2放電フラット線が現れ、上記第2放電フラット線の平均電圧値が、上記第1放電フラット線の平均電圧値よりも低くなる特性を有し、
上記リチウムイオン二次電池は、
当該リチウムイオン二次電池を放電させたときの電池電圧変動曲線において、
上記第1放電フラット線のうち放電末期側の端部を除いた部分に相当する第1放電フラット部と、
上記第2放電フラット線の放電末期側の端部に相当する第2放電フラット部であって、上記第1放電フラット部よりも放電末期側に位置し、上記第1放電フラット部の電圧値よりも低い電圧値を示す第2放電フラット部と、
上記第1放電フラット部から上記第2放電フラット部に至るまでの範囲にわたって電池電圧が低下する電圧低下部であって、上記第1放電フラット部及び上記第2放電フラット部に比べて電池電圧が大きく低下する電圧低下部と、が現れる特性を有する
リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記第1正極活物質は、LiFePO4であり、
前記第2正極活物質は、Li3Fe2(PO43である
リチウムイオン二次電池。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5に記載のリチウムイオン二次電池と、
上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を検知する電圧検知装置と、
前記電圧低下部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、上記電圧検知装置によって検知された上記電圧低下部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う処理装置と、を備える
電池システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電池システムであって、
前記電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして上記電気自動車に搭載されてなり、
前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理を行う
電池システム。
【請求項8】
請求項6に記載の電池システムであって、
前記電池システムは、
モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、上記自動車に搭載されてなり、
上記自動車は、
上記エンジンを駆動させることなく前記リチウムイオン二次電池の放電により供給される電力を用いた上記モータの駆動により走行するEVモード、及び、上記モータの駆動と上記エンジンの駆動の組み合わせにより走行するHVモード、のいずれかにより走行可能に構成されてなり、
前記処理装置は、
上記EVモードにより上記自動車が走行を開始した後、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、上記HVモードにより上記自動車が走行するように、前記所定の処理として、上記エンジンを始動させる処理を行う
電池システム。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の電池システムであって、
前記リチウムイオン二次電池は、請求項2、請求項4、または請求項5に記載のリチウムイオン二次電池であり、
前記処理装置は、前記第2充電末期部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理を行う
電池システム。
【請求項10】
請求項9に記載の電池システムであって、
前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記第2充電末期部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う
電池システム。
【請求項11】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池と、
上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を検知する電圧検知装置と、
前記第2充電末期部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の充電時に、上記電圧検知装置によって検知された上記第2充電末期部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過充電を防止するための所定の処理を行う処理装置と、を備える
電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の電池システムであって、
前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の充電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記第2充電末期部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記第2充電末期部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の充電を停止する処理を行う
電池システム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の電池システムであって、
前記リチウムイオン二次電池は、請求項2、請求項4、または請求項5に記載のリチウムイオン二次電池であり、
前記処理装置は、前記電圧低下部における上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値を予め記憶しておき、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記電圧低下部の電池電圧値に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の過放電を防止するための所定の処理を行う
電池システム。
【請求項14】
請求項13に記載の電池システムであって、
前記電池システムは、電気自動車の駆動用電源システムとして上記電気自動車に搭載されてなり、
前記処理装置は、前記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、前記所定の処理として、上記リチウムイオン二次電池の残電気量が少ないことを警告する処理を行う
電池システム。
【請求項15】
請求項13に記載の電池システムであって、
前記電池システムは、
モータとエンジンを備えるプラグインハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして、上記自動車に搭載されてなり、
上記自動車は、
上記エンジンを駆動させることなく前記リチウムイオン二次電池の放電により供給される電力を用いた上記モータの駆動により走行するEVモード、及び、上記モータの駆動と上記エンジンの駆動の組み合わせにより走行するHVモード、のいずれかにより走行可能に構成されてなり、
前記処理装置は、
上記EVモードにより上記自動車が走行を開始した後、上記リチウムイオン二次電池の放電時に、前記電圧検知装置によって検知された上記リチウムイオン二次電池の電池電圧値が前記電圧低下部の電池電圧値に達したか否かを判断し、上記電圧低下部の電池電圧値に達したと判断したとき、上記HVモードにより上記自動車が走行するように、前記所定の処理として、上記エンジンを始動させる処理を行う
電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−18547(P2011−18547A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162136(P2009−162136)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】