説明

リニアアクチュエータ

【課題】本発明は、シリンダを出入りさせるスピンドル軸とギアホイールを樹脂一体成形することにより、安価でかつ簡単な構造を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明によるリニアアクチュエータは、ケース(1)内にスラスト軸受け(5)を介して出入自在なシリンダ(6)の後端にナット(7)を設け、このナット(7)に螺合してシリンダ(6)内に内挿されたスピンドル軸(8)の後端にギアホイール(10)と保持軸部(9)を形成し、前記ギアホイール(10)の端面(10a)を軸受け(12)で軸受けし、前記ギアホイール(10)をステッピングモータ(15)のウォームギア(14)で駆動し、前記シリンダ(6)をケース(1)から出入りさせる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータに関し、特に、シリンダを出入りさせるスピンドル軸とギアホイールを樹脂一体成形することにより、安価でかつ簡単な構造を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のリニアアクチュエータとしては、例えば、特許文献1に示されるリニアアクチュエータを挙げることができる。
すなわち、この特許文献1に記載のリニアアクチュエータにおいては、図示していないが、クイックリリースユニットを有し、このクイックリリースユニットは、作動要素を電動機とし、この電動機からクイックリリースユニットまで配置された伝動装置の部分から係合を離脱させるために、作動要素と可逆電動機との間の伝動装置に導入される。
このクイックリリースユニットは、軸方向に延びて相互に係合するトルク伝達手段を備えた2つの筒状連結部を備え、2つの連結部は相互に軸方向に変位可能であり、ばねによって相互係合状態を維持している。
この2つの連結部は、各連結部間のトルク伝達接続が遮断されるように、リリース機構によってばねに抗して相互に変位することができ、クイックリリースユニットは、ウォームホイールを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−517570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリニアアクチュエータは、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、スピンドルとギアホイールとが別々の部品として構成され、スピンドルの軸端に軸受けが配置され、そのために、スピンドルとギアホイールを一体化するために、多大な組立工数がかかると共に、部品の製造コストを下げることが難しく、かつ、スピンドルとギアホイールの同芯度を保つことが困難であった。
また、減速手段としてのギア機構を可逆電動機によって駆動しているため、例えば、アクチュエータが異物を挟み込んだ場合等による過負荷時の安全機構として、駆動電流の監視及び過電流時に駆動回路をオフとするための機構等を付加する必要があり、小型化及び低コスト化等への障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるリニアアクチュエータは、筒部及び基部を一体に有するケースと、前記筒部内にスラスト軸受けを介して直動自在に設けられたシリンダと、前記シリンダ内に設けられナットを介して前記シリンダと結合するスピンドル軸と、前記スピンドル軸の一端に一体形成され前記基部内に位置するギアホイールと、前記ギアホイールと一体に形成され前記基部内に位置する保持軸部と、前記ギアホイールの端面を回転自在に軸支するため前記基部内に位置する軸受けと、前記基部内に位置し前記ギアホイールと噛合するウォームギアを有するステッピングモータと、からなり、前記ウォームギアの回転により、前記スピンドル軸が回転し、前記シリンダが軸方向に沿って出入りし、前記スピンドル軸と前記ギアホイールは樹脂一体成形によりなる構成であり、また、前記基部内に設けられ前記ギアホイールの軸方向と直交する方向に沿ってストッパ面を有する輪状段部内に、前記軸受けを配設した構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるリニアアクチュエータは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒部及び基部を一体に有するケースと、前記筒部内にスラスト軸受けを介して直動自在に設けられたシリンダと、前記シリンダ内に設けられナットを介して前記シリンダと結合するスピンドル軸と、前記スピンドル軸の一端に一体形成され前記基部内に位置するギアホイールと、前記ギアホイールと一体に形成され前記基部内に位置する保持軸部と、前記ギアホイールの端面を回転自在に軸支するため前記基部内に位置する軸受けと、前記基部内に位置し前記ギアホイールと噛合するウォームギアを有するステッピングモータと、からなり、前記ウォームギアの回転により、前記スピンドル軸が回転し、前記シリンダが軸方向に沿って出入りし、前記スピンドル軸と前記ギアホイールは樹脂一体成形によりなる構成されていることにより、スピンドル軸とギアホイールの形成が容易で、軸芯を容易に一致させることができ、かつ、安価にできる。また、過負荷時には、ステッピングモータが脱調するため、規定値以上の推力の発生がなくなり、安全機構の省略が可能で小型化に寄与できる。
また、前記基部内に設けられ前記ギアホイールの軸方向と直交する方向に沿ってストッパ面を有する輪状段部内に、前記軸受けを配設したことにより、シリンダの圧縮方向の外力に対しては、輪状段部のストッパ面に軸受けが付勢を受けて当接するため、大きい外力を受けた場合でもスピンドル軸及びギアホイールの損傷等を防止して安全な直動動作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明によるリニアアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、シリンダを出入りさせるスピンドル軸とギアホイールを樹脂一体成形することにより、安価でかつ簡単な構造からなるリニアアクチュエータを得ることを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明によるリニアアクチュエータの好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、先端側に筒部2を有し後端側に中空状の保持凹部3を有する基部4で形成された長手状のケースであり、前記筒部2内には、スラスト軸受け5を介してシリンダ6がその長手方向(軸方向)Aに沿って出入り自在に設けられている。
【0010】
前記シリンダ6内の後端には、ナット7が固定して設けられ、このシリンダ6内に設けられたスピンドル軸8は、前記ナット7に螺合した状態で後方に貫通し、このスピンドル軸8の後端には、後方に突出する保持軸部9を有するギアホイール10が一体に形成されている。
【0011】
前記保持軸部9は前記基部4内の保持凹部3内に位置しており、この保持凹部3の内壁に形成された輪状段部11内には軸受け12が設けられ、この軸受け12は、前記輪状段部11に形成されたストッパ面13に当接している。
前記ストッパ面13の面方向は、前記ギアホイール10の軸方向Bと直交する方向に沿って形成され、前記軸受け12は前記ギアホイール10の端面10aを回転自在に軸支するように構成されている。
【0012】
前記基部4の下部位置には、ウォームギア14を有するステッピングモータ15が内設され、このウォームギア14は前記ギアホイール10に螺合され、このステッピングモータ15の駆動により、前記ウォームギア14を介して前記ギアホイール10及びスピンドル軸8を回転駆動することができるように構成されている。
【0013】
前述の構成において、前記ステッピングモータ15を駆動することにより、ウォームギア14を介してギアホイール10を回転させ、スピンドル軸8が回転する。
前記スピンドル軸8の回転により、ナット7を介してシリンダ6が長さ方向Aに沿って出入りし、このシリンダ6はスラスト軸受け5により回転することなく直動のみが行われるように構成されている。
【0014】
前述の状態において、前記シリンダ6の先端6aが、被押圧部材(図示せず)に対して当接し、その後もステッピングモータ15を駆動してシリンダ6を前進させようとすると、シリンダ6を前進させるステッピングモータ15は圧縮力を受ける過負荷状態となるが、この過負荷状態は、可逆回転型の前記ステッピングモータ15が脱調(周知)することにより、規定値以上の推力を発生することがなくなり、従来、リニアアクチュエータに採用されていた安全機構の省略が達成できた。
【0015】
また、前記軸受け12は、前記保持軸部9を軸支するのではなく、前記ギアホイール10の端面10aを軸支しているため、前記圧縮力によりシリンダ6に軸方向Bによる過負荷が付加された場合、前記軸受け12が前記輪状段部11のストッパ面13に当接して押圧され、過負荷に対して十分な作動安全性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によるリニアアクチュエータは、リニアアクチュエータのみではなく、ジャッキ装置等への応用も可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 ケース
2 筒部
3 保持凹部
4 基部
5 スラスト軸受け
6 シリンダ
6a 先端
7 ナット
8 スピンドル軸
9 保持軸部
10 ギアホイール
10a 端面
11 輪状段部
12 軸受け
13 ストッパ面
14 ウォームギア
15 ステッピングモータ
A 長手方向
B 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部(2)及び基部(4)を一体に有するケース(1)と、前記筒部(2)内にスラスト軸受け(5)を介して直動自在に設けられたシリンダ(6)と、前記シリンダ(6)内に設けられナット(7)を介して前記シリンダ(6)と結合するスピンドル軸(8)と、前記スピンドル軸(8)の一端に一体形成され前記基部(4)内に位置するギアホイール(10)と、前記ギアホイール(10)と一体に形成され前記基部(4)内に位置する保持軸部(9)と、前記ギアホイール(10)の端面(10a)を回転自在に軸支するため前記基部(4)内に位置する軸受け(12)と、前記基部(4)内に位置し前記ギアホイール(10)と噛合するウォームギア(14)を有するステッピングモータ(15)と、からなり、
前記ウォームギア(14)の回転により、前記スピンドル軸(8)が回転し、前記シリンダ(6)が軸方向(B)に沿って出入りし、前記スピンドル軸(8)と前記ギアホイール(10)は樹脂一体成形により構成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記基部(4)内に設けられ前記ギアホイール(10)の軸方向(B)と直交する方向に沿ってストッパ面(13)を有する輪状段部(11)内に、前記軸受け(12)を配設したことを特徴とする請求項1記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−281391(P2010−281391A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135363(P2009−135363)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】