説明

リニアモーター

【課題】リニアモーターの制御性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】リニアモーター10は、スライダー20と、ステーター30とを備える。スライダー20は、複数の永久磁石21が、同じ極同士が互いに対向するように直列に配列された磁石列21lを有し、電磁力によって磁石列21lの配列方向に沿って移動する。ステーター30は、スライダー20の移動方向に沿って配列された2相の電磁コイル31a,31bを備える。また、リニアモーター10は、スライダー20の移動を制御するために、磁石列21lの移動に伴う磁束の変化を検出する位置検出センサー40を備える。位置検出センサー40は、電磁コイル31の各相に対応して設けられ、電磁コイル31の外周に配列され、永久磁石21同士の境界における磁束を検出し、各相の電磁コイル31に生じる逆起電圧と等しい位相の波形信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
モーターとしては、電磁力を利用して、可動子を固定子に対して直線的に運動させるリニアモーターが知られている(下記特許文献1)。リニアモーターでは、可動子の移動に伴う磁束の変化を検出し、その磁束の変化に基づいて、電磁コイルによる発生磁界を制御して、可動子の運動を制御する。しかし、これまで、そうした磁束の変化を精度良く検出し、リニアモーターの制御性を向上させることについて十分な工夫がなされてこなかったのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−289344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リニアモーターの制御性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
リニアモーターであって、
複数の永久磁石が、同じ極同士が互いに対向するように直列に配列された磁石列を有し、電磁力によって前記磁石列の配列方向に移動するスライダー部と、
前記スライダー部の移動方向に沿って配列され、相ごとに異なる位相の駆動電流の供給を受ける複数相の電磁コイルを備えるステーター部と、
前記スライダー部の移動を制御するために、前記磁石列の移動に伴う磁束の変化を検出する複数の磁気検出素子と、
を備え、
前記複数の磁気検出素子は、前記複数相の電磁コイルの相に対応して設けられ、前記複数相の電磁コイルの外周側おいて、前記スライダー部の移動方向に沿って配列されることにより、前記磁石列の前記永久磁石同士の境界において前記永久磁石の配列方向に垂直な方向に放射状に延びる磁束を検出し、前記磁石列が移動したときに、前記複数相の電磁コイルのそれぞれに生じる逆起電圧の波形の位相と等しい位相の複数相の信号波形を出力する、リニアモーター。
このリニアモーターによれば、複数の磁気検出素子が、磁石列において永久磁石の配列方向に対して垂直な方向に放射状に延びる磁束を検出するため、複数の磁気検出素子による磁束の変化の検出精度が向上する。また、複数の磁気検出素子が、磁石列の移動に伴い各相の電磁コイルに生じる逆起電圧の波形の位相と等しい位相の信号波形を出力するため、スライダー部の移動の制御をより適切に実行することができ、リニアモーターの制御性が向上する。
【0007】
[適用例2]
適用例1記載のリニアモーターであって、さらに、
複数の磁気検出素子が出力する少なくとも2相の出力信号に基づき、前記リニアモーターの駆動信号を制御するとともに、前記スライダー部の位置を制御するために前記スライダー部の位置を検出する制御部を備える、リニアモーター。
このリニアモーターによれば、電磁コイルの相に対応する磁気検出素子の出力信号に基づいて駆動信号が制御される。また、それらの磁気検出素子の出力信号に基づいて、スライダー部の位置を高精度で検出することができる。従って、リニアモーターの制御性が向上する。
【0008】
[適用例3]
適用例2記載のリニアモーターであって、
前記複数相の電磁コイルは、3相の電磁コイルであり、
前記複数の磁気検出素子は、前記3相の電磁コイルに対応する3相の信号波形を出力し、
前記制御部は、前記3相の信号波形を、前記磁石列における前記永久磁石同士の境界の位置に対応する2相の信号波形に変換して、前記2相の信号波形に基づき前記スライダー部の位置を検出する、リニアモーター。
このリニアモーターによれば、複数の磁気検出素子が出力する3相の信号に基づき、3相の電磁コイルを制御できる。また、複数の磁気検出素子が出力する3相の信号を、磁石列の位置に対応する2相の信号に変換することにより、スライダー部の位置検出が容易となる。従って、リニアモーターの制御性がさらに向上する。
【0009】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか一つに記載のリニアモーターであって、
前記複数の磁気検出素子と、前記複数相の電磁コイルの間には、バックヨークが配置されており、
前記バックヨークには、前記スライダー部の移動方向に沿った複数のスリットが形成されている、リニアモーター。
このリニアモーターによれば、バックヨークよって電磁コイルの磁気効率が向上するとともに、スリットによって、渦電流の発生領域が分割されるため、バックヨークにおける渦電流損が低減される。
【0010】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、リニアモーター、そのリニアモーターを備えたアクチュエーターやマニピュレーター、リニアモーターの制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リニアモーターの構成を示す概略図。
【図2】電磁コイルに対する電流の制御と、その制御に応じたスライダーの移動を説明するための模式図。
【図3】位置検出センサーの内部構成の一例を示す概略図。
【図4】電磁コイルにおいて発生する逆起電力と、位置検出センサーのセンサー出力との関係を説明するための説明図。
【図5】比較例のリニアモーターの構成を示す概略図。
【図6】リニアモーターを制御する制御部の構成を示す概略図。
【図7】PWM制御部の内部構成と動作を示す説明図。
【図8】センサー出力の波形とPWM部で生成される駆動信号の波形の対応関係を示す説明図。
【図9】PWM部の内部構成の一例を示すブロック図。
【図10】スライダーを正方向移動させる時のPWM部の動作を示す説明図。
【図11】スライダーを逆方向移動させる時のPWM部の動作を示す説明図。
【図12】励磁区間設定部の内部構成と動作を示す説明図。
【図13】A相用の符号化部の内部構成とその動作を示す説明図。
【図14】ドライバー回路の構成を示す概略図。
【図15】A相電磁コイル同士およびB相電磁コイル同士の接続構成を示す説明図。
【図16】位置検出部の内部構成を示す概略図。
【図17】2相の信号波形のエンコーダー信号波形への変換を説明するための説明図。
【図18】2つの部分回路の構成および機能を説明するための概略図。
【図19】各信号の変化に応じたカウント値の変化を示す説明図。
【図20】第1実施例の他の構成例としてのリニアモーターの構成を示す概略図。
【図21】リニアモーターにおける電流の制御と、その制御に応じたスライダーの移動とを説明するための説明図。
【図22】第1実施例の他の構成例として、リニアモーターにおけるコイルバックヨークの構成を変えた変形例を説明するための概略図。
【図23】第1実施例の他の構成例としてのリニアモーターの構成を示す概略図。
【図24】第2実施例としてのリニアモーターの構成を示す概略図。
【図25】第2実施例のリニアモーターを制御する制御部の構成を示す概略図。
【図26】第2実施例におけるドライバー回路の構成を示す概略図。
【図27】第2実施例における位置検出部の内部構成を示す概略図。
【図28】3相の位置検出センサーのセンサー出力である3相の信号波形を2相の信号波形へと変換する三相二相変換の一例を説明するための説明図。
【図29】3相の位置検出センサーのセンサー出力である3相の信号波形を2相の信号波形へと変換する三相二相変換の一例を説明するための説明図。
【図30】2相の信号波形のエンコーダー信号波形への変換を説明するための説明図。
【図31】各信号の変化に応じたカウント値の変化を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施例:
A1.リニアモーターの構成
図1(A),(B)は本発明の一実施例としてのリニアモーター10の構成を示す概略図である。図1(A)は、リニアモーター10を側面側から見たときの概略断面図である。図1(B)は、図1(A)のB−B切断におけるリニアモーター10の概略断面図である。
【0013】
リニアモーター10は、略直棒上の可動子20(「スライダー20」とも呼ぶ)と、略円筒状の固定子30(「ステーター30」とも呼ぶ)とを備える。スライダー20は、ステーター30に、自身の中心軸方向に沿って往復移動可能なように挿通されている(白抜き矢印で図示)。
【0014】
スライダー20は、両端が閉塞された略円筒状のケーシング22と、ケーシング22の内部に収容された磁石列21lとを備える。磁石列21lは、複数の永久磁石21が、同じ極同士が互いに対向し合うように、直列的に配列された磁石素子である。なお、図1(A)では、永久磁石21ごとに、N極、S極を示す符号「N」、「S」を図示してある。
【0015】
スライダー20では、この永久磁石21の配列構成によって、永久磁石21の端面同士の境界において、スライダー20の移動方向(永久磁石21の配列方向)に対して垂直な方向へと放射状に広がる磁束が形成される。なお、スライダー20の両端部には、端面の直径方向に突出した鍔部23が形成されている。鍔部23は、スライダー20のステーター30からの脱落を防止するためのストッパーとして機能する。
【0016】
ステーター30は、4個の電磁コイル31と、コイルバックヨーク33と、2つのシャフトベアリング34と、ケーシング35と、位置検出センサー40とを備える。本実施例のリニアモーター10では、4個の電磁コイル31が、スライダー20の外周において、スライダー20の外表面と空隙を有しつつ、スライダー20の移動方向に沿って直列的に配列されている。なお、各電磁コイル31の導電線は、スライダー20の円周方向に沿って巻かれている。
【0017】
ここで、4個の電磁コイル31はそれぞれ、位相の異なる電流が供給されるA相電磁コイル31aと、B相電磁コイル31bとに分類される。図1(A)では、A相電磁コイル31aとB相電磁コイル31bとを、それぞれ異なるハッチングを付すことにより区別して図示してある。
【0018】
A相電磁コイル31aとB相電磁コイル31bとは、スライダー20の移動方向に沿って交互に配置されている。ここで、本実施例のリニアモーター10では、A相電磁コイル31aとB相電磁コイル31bの配列ピッチは、磁石列21lにおける永久磁石21の配列ピッチのほぼ1/2である。
【0019】
なお、本明細書では、紙面左側のA相電磁コイル31aを「第1のA相電磁コイル31a」と呼び、紙面右側のA相電磁コイル31aを「第2のA相電磁コイル31a」と呼ぶ。また、同様に、紙面左側のB相電磁コイル31bを「第1のB相電磁コイル31b」と呼び、紙面右側のB相電磁コイル31bを「第2のB相電磁コイル31b」と呼ぶ。A相電磁コイル31aとB相電磁コイル31bのそれぞれにおける電磁力の制御については後述する。
【0020】
コイルバックヨーク33は、4個の電磁コイル31の外周表面全体を被覆するように配置されており、4個の電磁コイル31の磁気効率を向上させている。コイルバックヨーク33は、例えば、JFEスチール株式会社のJNEXコアや、JNHFコアによって構成することができる。シャフトベアリング34は、ステーター30の両端の開口部にそれぞれ配置されており、スライダー20を摺動可能に保持する。
【0021】
ケーシング35は、両端において開口した略円筒形状の容体である。ケーシング35の内部空間には、上記の電磁コイル31や、コイルバックヨーク33、シャフトベアリング34が収容されている。また、本実施例のリニアモーター10では、ケーシング35の内部空間に、スライダー20の移動に伴う磁束の変化を検出するための位置検出センサー40が収容されている。
【0022】
位置検出センサー40は、電磁コイル31のそれぞれの相に対応して設けられた、A相位置検出センサー40aとB相位置検出センサー40bとを含む。A相位置検出センサー40aおよびB相位置検出センサー40bはそれぞれ、A相電磁コイル31aおよびB相電磁コイル31bのそれぞれに生じる逆起電圧に略線形的に対応する電圧を出力する。なお、電磁コイル31における逆起電圧と位置検出センサー40aの出力との間の相関関係の詳細については後述する。
【0023】
本実施例のリニアモーター10では、A相位置検出センサー40aおよびB相位置検出センサー40bはそれぞれ、コイルバックヨーク33の外側において、以下の位置に設けられている。即ち、A相位置検出センサ−40aは、第1のA相電磁コイル31aの巻幅の中央位置に配置され、第2のB相位置検出センサ−40bは、B相電磁コイル31bの巻幅の中央の位置に配置されている。
【0024】
図2(A)〜(D)は、各電磁コイル31に対する電流の制御と、その制御に応じたスライダー20の移動を説明するための模式図である。図2(A)〜(D)は、スライダー20が、白抜き矢印が示す方向(紙面右方向)に移動する様子を段階的に示している。なお、図2(A)〜(D)では、磁石列21lと、A相およびB相の電磁コイル31a,31bと、位置検出センサー40以外のリニアモーター10の各構成部の図示が省略されている。また、図2(A)〜(D)では、各電磁コイル31に重ねて、各電磁コイル31に流れる電流の方向を示す矢印を図示してある。
【0025】
図2(A)は、第1のA相電磁コイル31aの位置にN極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置し、第2のA相電磁コイル31aの位置にS極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置している状態を示している。このスライダー20の位置のときには、2つのA相電磁コイル31aにはそれぞれ、反対の向きの電流が供給される。具体的には、リニアモーター10をスライダー20の移動方向に沿って見たときに、第1のA相電磁コイル31aには、右回りの電流が流され、第2のA相電磁コイル31aには、左回りの電流が流される。この電流制御により、2つのA相電磁コイル31aの電磁力に従って、スライダー20は矢印方向に移動する。
【0026】
図2(B)は、第1のB相電磁コイル31bの位置にN極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置し、第2のB相電磁コイル31bの位置にS極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置している状態を示している。このときには、リニアモーター10をスライダー20の移動方向に沿って見たときに、第2のB相電磁コイル31bには、右回りの電流が流され、第2のB相電磁コイル31bには、左回りの電流が流される。この電流制御により、2つのB相電磁コイル31bの電磁力に従って、スライダー20は矢印方向にさらに移動する。
【0027】
図2(C)は、第1のA相電磁コイル31aの位置にS極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置しており、第1のA相電磁コイル31aの位置にN極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置している状態を示している。このとき、2つのA相電磁コイル31aにはそれぞれ、図2(A)のときとは反対向きに電流が流される。2つのA相電磁コイル31aの電磁力に従って、スライダー20は矢印方向にさらに移動する。
【0028】
図2(D)は、第1のB相電磁コイル31bの位置にS極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置しており、第1のB相電磁コイル31bの位置にN極同士が対向し合う永久磁石21の境界が位置している状態を示している。このとき、2つのB相電磁コイル31bにはそれぞれ、図2(B)のときとは反対向きに電流が流される。この電流制御により、2つのB相電磁コイル31bの電磁力に従って、スライダー20は矢印方向にさらに移動する。なお、スライダー20を反対向きに移動させるときには、図2(A)〜(B)で説明したのとは反対の順序で、各電磁コイル31に電流が供給される。
【0029】
ここで、前記したとおり、2相の位置検出センサー40a,40bは、スライダー20の移動に伴う磁束の変化を検出する。以下では、位置検出センサー40の構成を説明するとともに、図2(A)〜(D)で説明したスライダー20の移動の際における2相の位置検出センサー40a,40bの出力について説明する。
【0030】
図3(A)は、位置検出センサー40の内部構成の一例を示す概略図である。この位置検出センサー40は、ホール素子41と、バイアス調整部42と、ゲイン調整部43とが直列に接続された構成を有している。ホール素子41は、磁束密度を測定する。バイアス調整部42はホール素子41の出力にバイアス値を加算する。ゲイン調整部43は、バイアス調整部42の出力値にゲイン値を乗ずる。なお、位置検出センサー40では、これらのゲイン値とバイアス値を適切な値に設定することによって、位置検出センサー40の出力(センサー出力)を好ましい波形形状に較正することが可能である。
【0031】
図3(B),(C)は、磁石列21lに対する位置検出センサー40の位置(以後、「センサー位置」と呼ぶ)と、センサー出力との関係を説明するための説明図である。図3(B)には、センサー位置を説明するための模式図が図示されている。図3(B)には、磁石列21lの中の、2つの永久磁石21に挟まれた任意の永久磁石21と、位置検出センサー40とが図示されている。
【0032】
ここで、センサー位置の原点は、永久磁石21における中央の位置とする。また、センサー位置は、磁石列21lにおいてN極同士が対向し合う境界の位置が+Xとして表示され、S極同士が対向し合う境界の位置が−Xとして表示されるものとする。
【0033】
図3(C)には、センサー位置を横軸とし、センサー出力を縦軸とするグラフが図示されている。位置検出センサー40のセンサー出力は、センサー位置が−XのときにGND(グランド電位)となり、センサー位置が+XのときにVDDとなる直線グラフによって表される。なお、センサー位置が0のときには、センサー出力はVDD/2である。
【0034】
図4(A),(B)は、各電磁コイル31において発生する逆起電圧と、位置検出センサー40のセンサー出力との関係を説明するための説明図である。図4(A)は、A相電磁コイル31aにおける逆起電力の変化と、A相位置検出センサー40aにおけるホール素子41の出力の変化と、A相位置検出センサー40aのセンサー出力の変化とを示すグラフである。
【0035】
図4(A)では、A相電磁コイル31aの逆起電圧のグラフを上段に実線で示し、A相位置検出センサー40aのホール素子41の出力のグラフを中段に破線で示し、A相位置検出センサー40aのセンサー出力のグラフを下段に一点鎖線で図示してある。なお、図4(A)の横軸に示された電気角0,π/2,π,3π/2,2πのときに、磁石列21lとA相位置検出センサー40aとの位置関係は、図2(A)〜(D)に図示された位置関係にある。
【0036】
リニアモーター10において、スライダー20に一定速度の直線運動をさせたときに、A相電磁コイル31aの逆起電圧の変化(−Et〜+Et[V])は正弦波に近い波形を示し、スライダー20の移動速度の増加とともにその振幅が増大する。なお、図4(A)の上段には、スライダー20の移動速度の増加に伴ってA相電磁コイル31aの逆起電圧の波形の振幅が増大する軌跡を、複数の破線グラフによって段階的に図示してある。
【0037】
ここで、前記したとおり、A相位置検出センサー40aは、A相電磁コイル31aの外周において、A相電磁コイル31aの巻幅の中央に配置されている。これによって、A相電磁コイル31aの逆起電圧が上記のように正弦波に近い変化を示すとき、A相位置検出センサー40aのホール素子41の出力信号は、A相電磁コイル31aの逆起電圧の変化を示す波形と位相が等しい相似形状の波形信号となる。また、A相位置検出センサー40aの出力信号は、ホール素子41の出力と同様な変化を示す波形信号となる。なお、図では、ホール素子41の出力信号の振幅の範囲は−SV〜+SV[V]であり、A相位置検出センサー40aの出力信号の振幅の範囲は0〜+VDD[V]である。
【0038】
図4(B)は、B相電磁コイル31bにおける逆起電圧の変化と、B相位置検出センサー40bにおけるホール素子41の出力の変化と、B相位置検出センサー40bのセンサー出力の変化とを示すグラフである。図4(B)は、図示された波形の位相が異なる点以外は、図4(A)とほぼ同じである。
【0039】
リニアモーター10において、図2で説明したようにスライダー20を一定速度で直線運動させたとき、B相電磁コイル31bにおける逆起電圧の変化は、A相電磁コイル31aにおける逆起電圧の変化(図4(A))に対してπ/2だけ位相が遅延する。B相位置検出センサー40bは、B相電磁コイル31bの外周において、B相電磁コイル31bの巻幅の中央に配置されている。従って、B相位置検出センサー40bにおけるホール素子41の出力信号と、B相位置検出センサー40bの出力信号も、B相電磁コイル31bの逆起電圧の変化を示す波形と位相が等しい相似形状の波形信号となる。
【0040】
即ち、B相位置検出センサー40bの出力信号は、A相検出センサー40aの出力信号よりπ/2だけ位相が遅延した波形となる。なお、図2で説明したのと逆方向にスライダー20を一定速度で直線運動させたときには、A相検出センサー40aの出力信号が、B相位置検出センサー40bの出力信号よりπ/2だけ位相が遅延した波形となる。
【0041】
ここまでの説明からも理解できるように、これらの2相の位置検出センサー40a,40bの出力信号の波形から、スライダー20の移動方向や移動速度、スライダー20の位置の検出が可能である。また、2相の位置検出センサー40a,40bのセンサー出力に基づいて、各相の電磁コイル31a,31bへの印加電圧を制御することにより、リニアモーター10の駆動効率を向上させることができる。即ち、リニアモーター10では、2相の位置検出センサー40a,40bによる磁束変化の検出精度を向上させることにより、その制御性を向上させることが可能である。
【0042】
図5(A),(B)は、本発明の比較例としてのリニアモーター10aの構成を示す概略図である。図5(A),(B)は、ステーター30の2つの位置検出センサー40a,40bに換えて、ステーター30の外側に位置検出部45が設けられている点以外は、図1(A),(B)とほぼ同じである。
【0043】
比較例のリニアモーター10aでは、ステーター30の一方の開口部の外側に位置検出部45が設けられている。位置検出部45は、A相電磁コイル31aおよびB相電磁コイル31bにおける逆起電圧の波形と相似な波形を出力可能な磁気センサー素子であり、例えば、レゾルバによって構成することができる。このように、比較例のリニアモーター10aにおいても、位置検出部45の出力波形を利用して、電磁コイル31に対する印加電圧の制御を実行することにより、その駆動効率を向上させることができる。しかし、この比較例における位置検出部45では、以下のような問題がある。
【0044】
図5(C)は、スライダー20のストッパーである鍔部23が位置検出部45の端部にまで到達し、比較例のリニアモーター10aの駆動が停止した状態を示す模式図である。前記したとおり、位置検出部45は、ステーター30の開口部外側に設けられている。そのため、位置検出部45は、スライダー20の鍔部23の近傍では、磁石列21lの端部における磁束を検出することとなる。
【0045】
ここで、磁石列21lの端部における磁束は、永久磁石21同士の境界とは異なり、スライダー20の中心軸に対して垂直な方向へと放射状に広がるようには形成されていない。即ち、磁石列21lの端部における磁束の変化は、永久磁石21同士の境界における磁束の変化より不安定となる。従って、スライダー20の鍔部23の近傍では、位置検出部45による磁束の変化の検出精度が低下してしまう。また、比較例のリニアモーター10aでは、スライダー20の移動範囲が、位置検出部45の分だけ狭くなっている。
【0046】
しかし、本実施例のリニアモーター10であれば、2つの位置検出センサー40a,40bによって、磁石列21lにおける永久磁石21同士の境界における磁束の変化のみを検出している。従って、比較例のリニアモーター10aの場合より、2つの位置検出センサー40a,40bによる磁束の変化の検出精度が向上している。即ち、本実施例のリニアモーター10であれば、比較例のリニアモーター10aよりも、その制御性が向上している。また、ステーター30の開口部外側に位置検出部45が設けられていない分だけ、比較例のリニアモーター10aよりもスライダー20の移動範囲が拡大されている。
【0047】
A2.リニアモーターの制御:
図6は、本実施例のリニアモーター10を制御する制御部100の構成を示す概略ブロック図である。この制御部100は、2相の位置検出センサー40a,40bのセンサー出力を用いたPWM制御により、リニアモーター10を制御する。また、制御部100は、2相の位置検出センサー40a,40bのセンサー出力を用いて、ステーター30に対するスライダー20の相対的な位置を検出し、スライダー20の位置制御に用いる。制御部100は、PWM制御部110と、ドライバー回路120、位置検出部130とを備える。
【0048】
PWM制御部110と位置検出部130とは、制御部100の外部に設けられたCPU200とバス101を介して接続されている。また、PWM制御部110と位置検出部130とは、リニアモーター10の2相の位置検出センサー40a,40bのそれぞれと信号線を介して接続されている。PWM制御部110は、A相駆動制御部111と、B相駆動制御部112とを有する。
【0049】
PWM制御部110は、外部のCPU200からの指令によって、ドライバー回路120を介して、リニアモーター10のA相電磁コイル31aまたはB相電磁コイル31bを駆動する。ドライバー回路120は、複数のスイッチング素子を備えたブリッジ回路である。ドライバー回路120は、A相電磁コイル31aを駆動するA相駆動部121と、B相電磁コイル31bを駆動するB相駆動部122とを有している。
【0050】
なお、A相電磁コイル31aおよびB相電磁コイル31bを駆動するとき、PWM制御部110と位置検出部130とは、A相位置検出センサー40aおよびB相位置検出センサー40bからのセンサー出力を受信する。2つの位置検出センサー40a,40bは制御部100からの指令により駆動する。
【0051】
A2-1.PWM制御:
図7は、PWM制御部110の内部構成と動作を示す説明図である。PWM制御部110は、基本クロック生成回路510と、1/N分周器520と、PWM部530と、正逆方向指示値レジスター540とを備える。また、PWM制御部110は、2つの乗算器550,552と、符号化部560,562と、AD変換部570,572と、電圧指令値レジスター580と、励磁区間設定部590とを備える。
【0052】
基本クロック生成回路510は、所定の周波数を有するクロック信号PCLを発生する回路であり、例えばPLL回路で構成される。1/N分周器520は、このクロック信号PCLの1/Nの周波数を有するクロック信号SDCを発生する。Nの値は、CPU200によって、所定の一定値に予め設定される。
【0053】
PWM部530は、乗算器550,552から乗算値Ma,Mbを受信し、正逆方向指示値レジスター540から正逆方向指示値RIを受信する。また、PWM部530は、符号化部560,562から正負符号信号Pa,Pbを受信し、励磁区間設定部590から供給される励磁区間信号Ea,Ebを受信する。
【0054】
PWM部530は、クロック信号PCL,SDCと、乗算値Ma,Mbと、正逆方向指示値RIと、正負符号信号Pa,Pbと、励磁区間信号Ea,Ebとに応じて、交流駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2を生成する。なお、駆動信号DRVA1,DRVA2はA相用の駆動信号であり、駆動信号DRVA3,DRVA4はB相用の駆動信号である。これらの駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2の生成動作については後述する。
【0055】
正逆方向指示値レジスター540内には、スライダー20の移動方向を示す値RIがCPU200によって設定される。なお、本実施例では、正逆方向指示値RIがLレベルのときに、スライダー20は、図1の紙面右側の方向に移動し、Hレベルのときにその逆方向に移動するものとする。以後、正逆方向指示値RIがLレベルのときの移動を「正方向移動」と呼び、正逆方向指示値RIがHレベルのときの移動を「逆方向移動」と呼ぶ。
【0056】
PWM部530に供給される他の信号Ma,Mb,Pa,Pb,Ea,Ebは以下のように決定される。なお、乗算器550と符号化部560とAD変換部570はA相用の回路であり、乗算器552と符号化部562とAD変換部572はB相用の回路である。これらの回路群の動作は同じなので、以下ではA相用の回路の動作について主に説明する。
【0057】
なお、本明細書において、A相とB相とをまとめて指す場合には、符号の末尾「a」「b」(A相とB相を示すもの)を省略している。例えば、A相とB相の乗算値Ma,Mbを区別する必要が無い場合には、これらを合わせて「乗算値M」と呼ぶ。他の符号についても同様である。また、以下では、A相とB相のパラメータ(後述する励磁区間など)は同じ値に設定されるものとして説明するが、A相とB相のパラメータを互いに異なる値に設定することも可能である。
【0058】
A相位置検出センサー40aの出力SSAは、AD変換部570に供給される。なお、図3(B)で説明したとおり、このセンサー出力SSAのレンジは、例えばGND(接地電位)からVDD(電源電圧)までであり、その中位点(=VDD/2)が出力波形の中位点(正弦波の原点を通る点)である。
【0059】
AD変換部570は、このセンサー出力SSAをAD変換して、センサー出力のディジタル値を生成する。AD変換部570の出力のレンジは、例えばFFh〜0h(語尾の”h”は16進数であることを示す)であり、プラス側の中央値を80hとし、マイナス側の中央値を7Fhとしてそれぞれを波形の中位点に対応させる。
【0060】
符号化部560は、AD変換後のセンサー出力値のレンジを変換するとともに、センサー出力値の中位点の値を0に設定する。この結果、符号化部560で生成されるセンサー出力値Xaは、正側の所定の範囲(例えば+127〜0)と負側の所定の範囲(例えば0〜−127)の値を取る。但し、符号化部560から乗算器550に供給されるのは、センサー出力値Xaの絶対値であり、その正負符号は正負符号信号PaとしてPWM部530に供給される。
【0061】
電圧指令値レジスター580は、CPU200によって設定された電圧指令値Yaを格納する。この電圧指令値Yaは、後述する励磁区間信号Eaとともに、リニアモーター10に対する印加電圧を設定するための値として機能するものである。電圧指令値Yaは、典型的には0.0〜1.0の値を取るが、1.0よりも大きな値を設定可能としても良い。但し、以下では電圧指令値Yaが0.0〜1.0の範囲の値を取るものと仮定する。
【0062】
このとき、仮に、非励磁区間を設けずに全区間を励磁区間とするように励磁区間信号Eaを設定した場合には、Ya=0は印加電圧をゼロとすることを意味し、Ya=1.0は印加電圧を最大値とすることを意味する。乗算器550は、符号化部560から出力されたセンサー出力値Xaと、電圧指令値Yaとを乗算して整数化し、その乗算値MaをPWM部530に供給する。
【0063】
図7(B)〜(E)は、乗算値Maが種々の値を取る場合におけるPWM部530の動作を示している。ここでは、全期間が励磁区間であり非励磁区間が無いものと仮定している。PWM部530は、クロック信号SDCの1周期の間に、デューティがMa/Nであるパルスを1つ発生させる回路である。即ち、図7(B)〜(E)に示すように、乗算値Maが増加するに従って、駆動信号DRVA1,DRVA2のパルスのデューティは増加する。
【0064】
なお、第1の駆動信号DRVA1は、センサー出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であり、第2の駆動信号DRVA2はセンサー出力SSAが負のときにのみパルスを発生する信号であるが、図7(B)〜(E)ではこれらを合わせて記載している。また、便宜上、第2の駆動信号DRVA2を負側のパルスとして描いている。
【0065】
図8(A)〜(D)は、センサー出力の波形とPWM部530で生成される駆動信号の波形の対応関係を示す説明図である。図中、「Hiz」はハイインピーダンス状態を意味している。A相用の駆動信号DRVA1,DRVA2はA相センサー出力SSAのアナログ波形をそのまま利用したPWM制御によって生成される。B相用の駆動信号DRVB1,DRVB2も同様である。従って、これらの駆動信号を用いて、A相電磁コイル31aとB相電磁コイル31bに、センサー出力SSA,SSBの変化と対応するレベル変化を示す実効電圧を供給することが可能である。
【0066】
PWM部530は、さらに、励磁区間信号Ea,Ebで示される励磁区間のみに駆動信号を出力し、励磁区間以外の区間(非励磁区間)では駆動信号を出力しないように構成されている。図8(E),(F)は、励磁区間信号Ea,Ebによって励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定した場合の駆動信号波形を示している。
【0067】
励磁区間EPでは、図8(C),(D)の駆動信号パルスがそのまま発生し、非励磁区間NEPでは駆動信号パルスが発生しない。このように、励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定するようにすれば、逆起電力波形の中位点近傍(すなわち、センサー出力の中位点近傍)においてコイルに電圧を印加しないので、リニアモーター10の駆動効率をさらに向上させることが可能である。
【0068】
なお、励磁区間EPは、逆起電力波形(誘起電圧波形)のピークを中心とする対称な区間に設定されることが好ましく、非励磁区間NEPは、逆起電力波形の中位点(中心点)を中心とする対称な区間に設定されることが好ましい。換言すれば、励磁区間EPは、永久磁石21の移動によって電磁コイル31に誘起される誘起電圧の波形で極性が反転する位置をπ位相点としたときのπ/2位相点を中心とする対称な区間に設定することが好ましい。
【0069】
また、非励磁区間NEPは誘起電圧の波形のπ位相点を中心とする対称な区間に設定することが好ましい。なお、電圧に対して電流の位相が遅れる場合には、進角制御を行うことにより、電流波形のピークが誘起電圧波形のピークにほぼ一致するようにすることが好ましい。
【0070】
ここで、前述したように、電圧指令値Yaを1未満の値に設定すれば、乗算値Maが電圧指令値Yaに比例して小さくなる。従って、電圧指令値Yaによっても、実行的な印加電圧を調整することが可能である。
【0071】
上述の説明から理解できるように、本実施例のリニアモーター10では、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaとの両方を利用して印加電圧を調整することが可能である。これは、B相についても同様である。
【0072】
なお、望ましい印加電圧と、電圧指令値Ya及び励磁区間信号Eaとの関係は、予めPWM制御部110内のメモリ(図示は省略)にテーブルとして格納されているものとしても良い。また、印加電圧の調整には、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaの両方を利用する必要はなく、いずれか一方のみを利用するようにしてもよい。
【0073】
図9は、PWM部530(図7(A))の内部構成の一例を示す概略ブロック図である。PWM部530は、カウンター531,532と、EXOR回路533,534と、駆動波形形成部535,536とを備えている。カウンター531とEXOR回路533と駆動波形形成部535はA相用の回路であり、カウンター532とEXOR回路534と駆動波形形成部536はB相用の回路である。これらは以下のように動作する。
【0074】
図10は、スライダー20を正方向移動させる時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。図10には、2つのクロック信号PCL,SDCと、正逆方向指示値RIと、励磁区間信号Eaと、乗算値Maと、正負符号信号Paと、カウンター531内のカウント値CM1と、カウンター531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2とが図示されている。また、図10には、駆動波形形成部535の出力信号DRVA1,DRVA2とが図示されている。
【0075】
カウンター531は、クロック信号SDCの1期間毎に、クロック信号PCLに同期してカウント値CM1を0までダウンカウントする動作を繰り返す。カウント値CM1の初期値は乗算値Maに設定される。なお、図10では、便宜上、乗算値Maとして負の値も示されているが、カウンター531で使用されるのはその絶対値|Ma|である。カウンター531の出力S1は、カウント値CM1が0で無い場合にはHレベルに設定され、カウント値CM1が0になるとLレベルに立ち下がる。
【0076】
EXOR回路533は、正負符号信号Paと正逆方向指示値RIとの排他的論理和を示す信号S2を出力する。前記したとおり、スライダー20が正方向移動する場合には、正逆方向指示値RIがLレベルである。従って、EXOR回路533の出力S2は、正負符号信号Paと同じ信号となる。
【0077】
駆動波形形成部535は、カウンター531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2から、駆動信号DRVA1,DRVA2を生成する。即ち、カウンター531の出力S1のうち、EXOR回路533の出力S2がLレベルの期間の信号を第1の駆動信号DRVA1として出力し、出力S2がHレベルの期間の信号を第2の駆動信号DRVA2として出力する。
【0078】
ここで、図10の右端部付近では、励磁区間信号EaがLレベルに立ち下がり、これによって非励磁区間NEPが設定されている。従って、この非励磁区間NEPでは、いずれの駆動信号DRVA1,DRVA2も出力されず、ハイインピーダンス状態に維持される。
【0079】
上述の説明から理解できるように、カウンター531は、乗算値Maに基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成回路として機能している。また、駆動波形形成部535は、励磁区間信号Eaに応じてPWM信号をマスクするマスク回路として機能している。
【0080】
図11は、スライダー20を逆方向移動させる時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。前記したとおり、スライダー20の逆方向移動時には、正逆方向指示値RIがHレベルに設定される。この結果、2つの駆動信号DRVA1,DRVA2の波形が図10とは入れ替わり、スライダー20の移動方向が逆転する。なお、PWM部530のB相用の回路532,534,536も同様に動作する。
【0081】
図12(A)〜(C)は、励磁区間設定部590の内部構成と動作を示す説明図である。なお、図12では、A相用の回路の構成と動作が図示されており、B相用の回路の構成と動作については便宜上図示が省略されている。励磁区間設定部590は、電子可変抵抗器592と、電圧比較器594,596と、OR回路598とを有している。電子可変抵抗器592の抵抗値Rvは、CPU200によって設定される。
【0082】
電子可変抵抗器592の両端の電圧V1,V2は、電圧比較器594,596の一方の入力端子に与えられている。電圧比較器594,596の他方の入力端子には、A相位置検出センサー40aのセンサー出力SSAが供給されている。電圧比較器594,596の出力信号Sp,Snは、OR回路598に入力され、OR回路598は、出力信号Eaを出力する。
【0083】
図12(B)は、励磁区間設定部590の動作を示している。図12(B)の上段には、センサー出力SSAの出力波形の一例が図示され、図12(B)の中段には、2つの電圧比較器594,596の出力信号の一例が並列に図示されている。また、図12(B)の下段には、OR回路598の出力信号Eaの一例が図示されている。
【0084】
電子可変抵抗器592の両端電圧V1,V2は、抵抗値Rvを調整することによって変更される。具体的には、両端電圧V1,V2は、電圧レンジの中央値(=VDD/2)からの差分が等しい値に設定される(図12(B)の上段)。
【0085】
センサー出力SSAが第1の電圧V1よりも高い場合には第1の電圧比較器594の出力SpがHレベルとなる。一方、センサー出力SSAが第2の電圧V2よりも低い場合には第2の電圧比較器596の出力SnはHレベルとなる(図12(B)の中段)。そして、励磁区間信号Eaは、出力信号Sp,Snの論理和を取った信号となる(図12(B)の下段)。
【0086】
このように、励磁区間信号Eaは、励磁区間EPと非励磁区間NEPとを示す信号として使用することができ、励磁区間EPと非励磁区間NEPの設定は、CPU200による可変抵抗値Rvの調整によって実行することができる。ただし、励磁区間EPと非励磁区間NEPの設定機能は、CPU200以外の他の回路によって実現するものとしてもよい。
【0087】
なお、励磁区間設定部590のB相用の回路の構成は、A相用の回路の構成と同様である。また、B相用の回路での動作は、B相位置検出センサー40bのセンサー出力SSBが、電圧比較器594,596に入力され、OR回路598から出力信号Ebが出力される点以外は、上述のA相用の回路と同様である。
【0088】
図13(A)は、A相用の符号化部560の内部構成を示す概略ブロック図である。なお、B相用の符号化部562の内部構成は、A相用の符号化部560の内部構成と同様であるため、その図示および説明は省略する。符号化部560は、絶対値変換部564を備えている。絶対値変換部564は、AD変換部570(図7(A))においてディジタル信号に変換されたセンサー信号DSSAに応じて、センサー出力値Xaと、正負符号信号Paとを生成する。
【0089】
図13(B)は、符号化部560の動作を示すタイミングチャートである。符号化部560では、センサー出力値Xaと正負符号信号Paの値は、以下のように設定される。なお、B相用の符号化部562においても同様である。
(1a)ディジタル値DSSAが所定値(128)以上の場合:
Xa=DSSA−128
Pa=0(センサー波形が正の範囲であることを示す)
(1b)ディジタル値DSSAが所定値(128)未満の場合:
Xa=127−DSSA
Pa=1(センサー波形が負の範囲であることを示す)
即ち、センサー出力値Xaとして、センサー出力SSAの変化を表す値が生成される。
【0090】
図14(A),(B)は、ドライバー回路120の構成を示す概略図である。図14(A)はA相駆動部121の構成を示しており、図14(B)はB相駆動部122の構成を示している。なお、以下では、図14(A)のA相駆動部121の構成について説明するが、図14(B)のB相駆動部122の構成については、A相駆動部121と同様であるため、その説明は省略する。
【0091】
A相駆動部121は、H型ブリッジ回路を構成する4個のトランジスタTr1〜Tr4と、ダイオードD1〜D4とを備えている。第1と第2のトランジスタTr1,Tr2は互いに直列に接続されている。第3と第4のトランジスタTr3,Tr4も互いに直列に接続されている。第1と第2のトランジスタTr1,Tr2と、第3と第4のトランジスタTr3,Tr4とは、電源とグランドの間において並列に接続されている。
【0092】
第1と第2のトランジスタTr1,Tr2の接続部と、第3と第4のトランジスタTr3,Tr4の接続部との間には、A相電磁コイル31aが接続されている。各ダイオードD1〜D4は、各トランジスタTr1〜Tr4のドレインとソースに接続されている。
【0093】
第1のトランジスタTr1のゲートには、第1の駆動信号DRVA1の反転信号が供給され、 第4のトランジスタTr4のゲートには、第1の駆動信号DRVA1が供給される。一方、第2のトランジスタTr2のゲートには、第2の駆動信号DRVA2が供給され、第3のトランジスタTr3のゲートには、第2の駆動信号DRVA2の反転信号が供給される。
【0094】
A相駆動部121は、第1の駆動信号DRVA1がHレベルであるときに、A相電磁コイル31aに電流IA1を供給する。また、A相駆動部121は、第2の駆動信号DRVA2がHレベルであるときに、A相電磁コイル31aに、電流IA1とは反対方向に流れる電流IA2を供給する。一方、B相駆動部122は、第3の駆動信号DRVB1がHレベルであるときに、B相電磁コイル31bに電流IB1を供給する。そして、B相駆動部122は、第4の駆動信号DRVB2がHレベルであるときに、B相電磁コイル31bに、電流IB1とは反対方向に流れる電流IB2を供給する。
【0095】
図15(A)〜(D)は、2つのA相電磁コイル31a同士および2つのB相電磁コイル31b同士の接続構成を示す説明図である。図15(A),(B)はそれぞれ、2つのA相電磁コイル31aの並列接続および2つのB相電磁コイル31bの並列接続を示している。図15(C),(D)はそれぞれ、2つのA相電磁コイル31aの直列接続および2つのB相電磁コイル31bの直列接続を示している。このように、各相の電磁コイル31a,31bの接続は、並列接続であるものとしても良く、直列接続であるものとしても良い。
【0096】
本実施例の制御部100によれば、リニアモーター10に対して、2相の電磁コイル31a,31bに対応して設けられた2相の位置検出センサー40a,40bのセンサー出力を用いたPWM制御が実行される。そのため、リニアモーター10の高効率な駆動が可能である。
【0097】
A2-2.位置検出処理:
図16は位置検出部130の内部構成を示す概略ブロック図である。位置検出部130は、2つの信号変換部611,612と、A相プラス側微分回路620と、A相マイナス側微分回路630と、パルスカウンター部640と、演算部650とを備える。ここで、図6で説明したとおり、位置検出部130は、A相位置検出センサー40aおよびB相位置検出センサー40bのそれぞれから、波形信号であるセンサー出力SSA,SSBを受信する。以後、これらのセンサー出力SSA,SSBをそれぞれ、「波形信号SSA,SSB」とも呼ぶ。
【0098】
図17は、2つの信号変換部611,612の機能を説明するための概略図である。図17の上段には、波形信号SSA,SSBの一例が図示されており、図17の下段には、それらに対応するA相エンコーダー信号ESAの一例とB相エンコーダー信号ESBの一例とがそれぞれ並列に図示されている。
【0099】
位置検出部130の2つの信号変換部611,612は、2相の波形信号SSA,SSBのそれぞれから、A相エンコーダー信号ESAと、B相エンコーダー信号ESBとを生成する。A相エンコーダー信号ESAとB相エンコーダー信号ESBはそれぞれ、各相の波形信号SSA,SSBから位相と振幅とが抽出されたパルス信号である。2つの信号変換部611,612は、これらのエンコーダー信号ESA,ESBを、A相プラス側微分回路620とA相マイナス側微分回路630の両方に送信する。
【0100】
図18(A)〜(C)は、A相プラス側微分回路620の構成および機能を説明するための概略図である。図18(A)は、A相プラス側微分回路620の内部構成を示している。A相プラス側微分回路620は、NOT素子621と、第1と第2のAND素子622,623とを備える。NOT素子621は、A相エンコーダー信号ESAの入力を受け付け、その反転信号を出力する。第1のAND素子622には、入力a側に、A相エンコーダー信号ESAが入力され、入力b側にNOT素子621の出力信号が入力される。
【0101】
図18(B)は、第1のAND素子622の動作表を示している。第1のAND素子622は、入力a側にロー信号(L)が入力され、入力b側にハイ信号(H)が入力されたときに、ハイ信号(H)を出力する。また、第1のAND素子622は、他の入力信号の組み合わせのときにはいずれもロー信号(L)を出力する。
【0102】
ここで、第1のAND素子622の入力b側には、NOT素子621が介在している。そのため、第1のAND素子622では、入力a側の信号よりわずかに遅延した信号が入力b側に入力される。これによって、第1のAND素子622は、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりのタイミングのときにハイ信号を出力する。
【0103】
第2のAND素子623(図18(A))には、第1のAND素子622の出力信号と、B相エンコーダー信号ESBとが入力される。第2のAND素子623は、B相エンコーダー信号ESBがローであり、かつ、第1のAND素子622の出力信号がハイであるときにハイ信号を出力する。また、第2のAND素子623は、B相エンコーダー信号ESBがハイであるときには常にロー信号を出力する。即ち、第2のAND素子623は、第1のAND素子622から出力されたA相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりのタイミングを表すハイ信号を出力するか否かを、B相エンコーダー信号ESBのパルスに応じて切り替える。
【0104】
図18(C)は、A相プラス側微分回路620の動作を示す説明図である。図18(C)には、スライダー20の正方向移動時における2つのエンコーダー信号ESA,ESBの一例と、それら2つのエンコーダー信号ESA,ESBに基づいて生成される出力信号PUの一例とがそれぞれ図示されている。
【0105】
ここで、リニアモーター10において、スライダー20を正方向移動させるときには、B相エンコーダー信号ESBの位相は、A相エンコーダー信号ESAの位相よりも電気角π/2だけ遅延する。従って、スライダー20の正方向移動時には、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりのときには、B相エンコーダー信号ESBは常にローとなる。そのため、A相プラス側微分回路620は、スライダー20の正方向移動時には、出力信号PUとして、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりタイミングを表すハイ信号を出力する。
【0106】
なお、リニアモーター10では、スライダー20の逆方向移動時には、A相エンコーダー信号ESAの位相の方が、B相エンコーダー信号ESBの位相より電気角π/2だけ遅延する。従って、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりのときには、B相エンコーダー信号ESBは常にハイとなる。そのため、スライダー20の逆方向移動時には、A相プラス側微分回路620は、常にロー信号を出力する。
【0107】
図18(D)〜(F)は、A相マイナス側微分回路630の構成を説明するための概略図である。図18(D)は、A相マイナス側微分回路630の内部構成を示している。A相マイナス側微分回路630は、NOT素子631と、第1と第2のAND素子632,633とを備える。NOT素子631は、A相エンコーダー信号ESAの入力を受け付け、その反転信号を出力する。第1のAND素子632には、入力a側に、A相エンコーダー信号ESAが入力され、入力b側にNOT素子621の出力信号が入力される。
【0108】
図18(E)は、第1のAND素子632の動作表を示している。第1のAND素子632では、入力a側にハイ信号が入力され、入力b側にロー信号が入力されたときに、ハイ信号を出力する。また、第1のAND素子632は、他の入力信号の組み合わせのときにはいずれもロー信号を出力する。この構成により、第1のAND素子632は、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち下がりのタイミングでハイ信号を出力する。
【0109】
第2のAND素子633(図18(D))には、第1のAND素子622の出力信号と、B相エンコーダー信号ESBとが入力される。第2のAND素子633は、B相エンコーダー信号ESBがローであり、かつ、第1のAND素子632の出力信号がハイであるときにハイ信号を出力する。また、第2のAND素子633は、B相エンコーダー信号ESBがハイであるときには常にロー信号を出力する。即ち、第2のAND素子633は、第1のAND素子632から出力されたA相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち下がりのタイミングを表すハイ信号を出力するか否かを、B相エンコーダー信号ESBに応じて切り替える。
【0110】
図18(F)は、A相プラス側微分回路620の動作を示す説明図である。図18(F)には、スライダー20の逆方向移動時における2つのエンコーダー信号ESA,ESBの一例と、それら2つのエンコーダー信号ESA,ESBに基づいて生成される出力信号PDの一例とがそれぞれ図示されている。
【0111】
図18(F)に示すように、スライダー20の逆方向移動時には、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち上がりのときには、B相エンコーダー信号ESBは常にローとなる。そのため、A相プラス側微分回路630は、スライダー20の逆方向移動時には、出力信号PDとして、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち下がりタイミングを表すハイ信号を出力する。なお、スライダー20の正方向移動時には、A相エンコーダー信号ESAのパルスの立ち下がりのときに、B相エンコーダー信号ESBは常にハイとなるため、A相マイナス側微分回路630は、常にロー信号を出力する。
【0112】
パルスカウンター部640(図16)は、A相プラス側微分回路620とA相マイナス側微分回路630とからそれぞれ出力信号PU,PDを受信する。パルスカウンター部640は、出力信号PUにおけるハイ信号を受信したときには、変数であるカウント値Nをインクリメントする(N=N+1)。また、パルスカウンター部640は、スライダー20の移動方向を示すフラグである変数Dを「0」に設定する(D=0)。
【0113】
一方、パルスカウンター部640は、出力信号PDにおけるハイ信号を受信したときには、カウント値Nをデクリメントする(N=N−1)。また、パルスカウンター部640は、変数Dを「1」に設定する(D=1)。なお、パルスカウンター部640は、リセット信号出力部641からの指令により、カウント値Nを初期化することができる。
【0114】
図19(A),(B)はそれぞれ、上述した各信号SSA,SSB,ESA,ESB,PU,PDと、カウント値Nの変化の一例を示すタイミングチャートである。図19(A)は、スライダー20の正方向移動時におけるタイミングチャートであり、図19(B)は、スライダー20の逆方向移動時におけるタイミングチャートである。
【0115】
このように、位置検出部130(図16)では、センサー出力SSA,SSBに基づき生成されるパルス信号PU,PDにおけるパルスの立ち上がり/立ち下がりを検出する度にカウント値Nを変更する。即ち、カウント値Nは、スライダー20のステーター30に対する位置の変化に応じて、その値が変化する。位置検出部130では、このカウント値Nと、センサー出力SSA,SSBとを用いて、演算部650において、スライダー20の位置座標を算出する。
【0116】
演算部650では、以下の演算式(A)を実行し、スライダー20の位置座標を算出する。
Lx=(2π・N+rad(SSA,SSB,D))・L+Loffset …(A)
Lx:スライダー20の位置を表す座標値
N:カウント値
rad(SSA,SSB,D):波形信号SSA,SSBと変数Dに基づき、波形信号SSAの値に対するラジアンを出力する関数
:電気角2πに対するスライダー20の移動距離を表す値(距離値)
offset:スライダー20のオフセット距離値
【0117】
演算部650は、2π乗算器651と、2つのL乗算器652,653と、rad関数部654と、加算機655と、Loffset格納部656とを備える。2π乗算器651は、パルスカウンター部640からカウント値Nを受信し、カウント値Nに2πを乗算して出力する(2π・N)。第1のL乗算器652は、2π乗算器651の出力値にLを乗算して出力する(2π・N・L)。rad関数部654は、2つの波形信号SSA,SSBを受信するとともに、パルスカウンター部640から変数Dを受信する。そして、これらの波形信号SSA,SSBと変数Dとに基づいて、波形信号SSAの値に対するラジアンを出力する。
【0118】
ここで、波形信号SSAは略正弦波状の信号であるため、その値が最大または最小のとき以外には、波形信号SSAの値に対するラジアンとしては、2つの値r1,r2(r1<r2)が、rad関数部654の出力値の候補として得られる。このとき、rad関数部654は、スライダー20の正方向移動時(変数Dの値が0のとき)には、波形信号SSBの値がマイナスであるときに、出力値としてr1を出力し、波形信号SSBの値がプラスであるときに、出力値としてr2を出力する。また、rad関数部654は、スライダー20の逆方向移動時(変数Dの値が1のとき)には、波形信号SSBの値がプラスであるときに出力値としてr1を出力し、波形信号SSBの値がプラスであるときに、出力値としてr2を出力する。
【0119】
第2のL乗算器653は、rad関数部654の出力値にLを乗算した値を出力する(rad(SSA,SSB,D)・L)。加算機655は、第1と第2のL乗算器652,653のそれぞれの出力値を加算して出力する(2π・N・L+rad(SSA,SSB,D)・L)。加算機655は、第1と第2のL乗算器6952,653のそれぞれの出力値と、Loffset格納部656に格納されている値であるLoffsetとを加算して出力する。演算部650は、加算機器655の出力値をスライダー20の座標値Lxとして出力する。
【0120】
位置検出部130は、検出結果である座標値Lxを制御部100やCPU200に送信する。制御部100は、この検出結果に基づき、スライダー20の位置制御を実行する。このように、本実施例の制御部100によれば、レゾルバなどのエンコーダーを省略した場合であっても、位置検出部130が、2相の位置検出センサー40a,40bのセンサー出力SSA,SSBに基づいて、スライダー20の位置を検出する。従って、スライダー20の正確な位置制御が可能であり、より精度の高いリニアモーター10の駆動制御が可能となる。
【0121】
A3.第1実施例の他の構成例1:
図20(A),(B)は第1実施例の他の構成例としてのリニアモーター10Aの構成を示す概略図である。図20(A),(B)は、磁石列21lに換えて、永久磁石21の配列ピッチが異なる磁石列21lAが設けられている点以外は、図1(A),(B)とほぼ同じである。
【0122】
この構成例におけるリニアモーター10Aの磁石列21lAでは、永久磁石21が、第1実施例のリニアモーター10の磁石列21lにおける永久磁石21の配列ピッチのほぼ1/2の配列ピッチで配列されている。即ち、磁石列21lAにおける永久磁石21の配列ピッチは、電磁コイル31の配列ピッチとほぼ等しい。
【0123】
図21(A)〜(D)は、リニアモーター10Aにおける電流の制御と、その制御に応じたスライダー20の移動とを説明するための説明図である。図21(A)〜(D)は、磁石列21lの構成が異なる点と、各相の電磁コイル31a,31bに供給されている電流の向きが異なる点以外は、図2(A)〜(D)とほぼ同じである。
【0124】
この構成例におけるリニアモーター10Aでは、第1と第2のA相電磁コイル31aの位置に、磁石列21lAにおけるN極同士の境界が位置しているときに、第1と第2のA相電磁コイル31aに、同じ向きの電流を流す(図21(A),(C))。即ち、このとき、第1と第2のA相電磁コイル31aには、スライダー20の移動方向に沿って見たときに右回りの電流が流される。これは、第1と第2のB相電磁コイル3bの位置に、磁石列21lAにおけるN極同士の境界が位置しているときも同様である(図21(B),(D))。
【0125】
このように、この構成例のリニアモーター10Aによれば、上記の第1実施例のリニアモーター10よりも単純な電流の制御により、その駆動を制御することができる。
【0126】
A4.第1実施例の他の構成例2:
図22(A)〜(E)は、第1実施例の他の構成例として、リニアモーター10におけるコイルバックヨーク33の構成を変えた変形例を説明するための概略図である。図22(A)〜(E)にはそれぞれ、異なる構成を有するコイルバックヨーク33a〜33eが図示されている。
【0127】
図22(A)は、コイルバックヨーク33に換えてコイルバックヨーク33aが設けられている点以外は、図1(B)とほぼ同じである。この構成例のコイルバックヨーク33aは、上記第1実施例のコイルバックヨーク33の一部が省略された構成であり、電磁コイル31の外周全体を被覆していない。
【0128】
図22(B)は、コイルバックヨーク33aに換えてコイルバックヨーク33bが設けられている点と、ケーシング35の形状が異なる点以外は、図22(A)とほぼ同じである。この構成例のコイルバックヨーク33aは、電磁コイル31を収容する略四角筒形状を有している。また、この構成例では、ケーシング35も、コイルバックヨーク33aの形状に合わせて略四角筒形状に構成されている。
【0129】
図22(C)は、コイルバックヨーク33bに換えてコイルバックヨーク33cが設けられている点以外は、図22(B)とほぼ同じである。この構成例のコイルバックヨーク33cは、図22(B)のコイルバックヨーク33bの角部が省略された構成を有する。即ち、コイルバックヨーク33cは、ケーシング35の4つの内壁面ごとに分離配置された構成を有する。
【0130】
図22(D)は、コイルバックヨーク33cに換えてコイルバックヨーク33dが設けられている点以外は、図22(B)とほぼ同じである。この構成例のコイルバックヨーク33dは、図22(C)のコイルバックヨーク33cのうちの互いに対向し合う1組が省略された構成を有する。即ち、コイルバックヨーク33dは、ケーシング35の互いに対向する1組の内壁面に分離配置された構成を有する。
【0131】
このように、図22(A)〜(D)に示されたコイルバックヨーク33a〜33dのような構成であっても、コイルバックヨーク33a〜33dが設けられていない場合に比較して、電磁コイル31の磁気効率を向上させることができる。従って、リニアモーター10の駆動効率を向上させることができる。ただし、電磁コイル31の外周表面の全体がコイルバックヨーク33によって被覆されている第1実施例の構成例の方が、電磁コイル31の磁気効率をより向上させることができるため好ましい。
【0132】
図22(E)は、他の構成例としてのコイルバックヨーク33eの構成を示す概略図である。図22(E)は、コイルバックヨーク33eを外周方向に展開した展開図である。このコイルバックヨーク33eは、上記の第1実施例におけるコイルバックヨーク33と同様に、電磁コイル31の外周表面の全体を被覆する略円筒形状に構成される。
【0133】
コイルバックヨーク33eには、コイルバックヨーク33eの中心軸方向(紙面左右方向)に延びる複数の並列なスリット33sが、コイルバックヨーク33eの円周方向(紙面上下方向)に渡って一様に配列されている。即ち、コイルバックヨーク33eには、スライダー20の移動方向に沿った複数のスリット33sが形成されている。
【0134】
このようにスリット33sが形成されたコイルバックヨーク33eを用いれば、電磁コイル31やスライダー20による磁界の変化によってコイルバックヨーク33eに発生する渦電流を、スリット33sの間の領域ごとに分散させることができる。従って、このコイルバックヨーク33eをリニアモーター10に適用すれば、リニアモーター10における渦電流損を低減することができ、リニアモーター10の駆動効率を向上させることができる。
【0135】
A5.第1実施例の他の構成例3:
図23は、第1実施例の他の構成例としてのリニアモーター10Bの構成を示す概略図である。図23は、磁石列21lBの永久磁石21同士の間に、磁石ヨーク24が追加されている点以外は、図1(A)とほぼ同じである。この構成例におけるリニアモーター10Bでは、永久磁石21同士の間に磁石ヨーク24が介挿されているため、磁石列21lBを構成する際の接合工程を容易化することができる。ただし、この構成例では、永久磁石21同士の境界における磁束密度が低下し、位置検出センサー40による磁束の変化の検出精度が低下してしまう可能性がある。従って、この点において、第1実施例のリニアモーター10の磁石列21lの構成の方が好ましい。
【0136】
B.第2実施例:
B1.リニアモーターの構成:
図24(A),(B)は、本発明の第2実施例としてのリニアモーター10Cの構成を示す概略図である。図24(A),(B)は、C相電磁コイル31cと、C相位置検出センサー40cとが設けられている点以外は、図1(A),(B)とほぼ同じである。このリニアモーター10Cのステーター30には、3相の電磁コイル31a,31b,31cが2組直列に配列されている。また、リニアモーター10Cのステーター30には、紙面左側の3相の電磁コイル31a,31b,31cのそれぞれの外周に、各相に対応する位置検出センサー40a,40b,40cが配置されている。
【0137】
B2.リニアモーターの制御:
図25は、第2施例のリニアモーター10Cを制御する制御部100Cの構成を示すブロック図である。図25は、PWM制御部110Cに、C相駆動制御部113と、C相駆動部123とが追加され、位置検出部130に換えて位置検出部130Cが設けられている点と、リニアモーター10Cに、C相電磁コイル31cと、C相位置検出センサー40cとが追加されている点以外は、 図6とほぼ同じである。第2実施例のリニアモーター10Cは、この制御部100Cにより、PWM制御されるとともに、スライダー20の位置検出が実行される。
【0138】
B2-1.PWM制御:
第2実施例の制御部100Cでは、PWM制御部110Cが、A相駆動制御部111と、B相駆動制御部112と、C相駆動制御部113とを有している。また、ドライバー回路120Cは、各相の電磁コイル31a,31b,31cを駆動するためのA相駆動部121,B相駆動部122,C相駆動部123を含んでいる。
【0139】
図26は、第2実施例におけるドライバー回路120Cの構成を示す概略ブロック図である。このドライバー回路120Cは、A相駆動部121とB相駆動部122とC相駆動部123の機能が一体化された、3相の電磁コイル31a,31b,31cを駆動するための三相ブリッジ回路である。ドライバー回路120Cは、6個のトランジスタTr1〜Tr6と、6個のダイオードD1〜D6と、3つのレベルシフタ1201〜1203とを備える。
【0140】
ここで、3相の電磁コイル31a,31b,31cはそれぞれ、一方の端子同士がY結線で接続されている。そして、A相電磁コイル31aの他方の端子は、直列に接続された第1と第2のトランジスタTr1,Tr2の間に接続され、B相電磁コイル31bの他方の端子は、直列に接続された第3と第4のトランジスタTr3,Tr4の間に接続されている。また、C相電磁コイル31cの他方の端子は、直列に接続された第5と第6のトランジスタTr5,Tr6の間に接続されている。
【0141】
なお、6個のダイオードD1〜D6はそれぞれ第1ないし第6のトランジスタTr1〜Tr6のドレインとソースとに接続されている。また、3つのレベルシフタ1201〜1203はそれぞれ、第1のトランジスタTr1と、第3のトランジスタTr3と、第5のトランジスタTr5のゲートに接続されている。各レベルシフタ1201〜1203は、各トランジスタTr1,Tr3,Tr5に入力される駆動信号のレベルを調整する。
【0142】
第1と第2のトランジスタTr1,Tr2のゲートにはそれぞれ、A相電磁コイル31aのための第1と第2の駆動信号DRVA1,DRVA2が供給される。第3と第4のトランジスタTr3,Tr4のゲートにはそれぞれ、B相電磁コイル31bのための第1と第2の駆動信号DRVB1,DRVB2が供給される。第5と第6のトランジスタTr5,Tr6のゲートにはそれぞれ、C相電磁コイル31cのための第1と第2の駆動信号DRVC1,DRVC2が供給される。なお、第1と第3と第5のトランジスタTr1,Tr3,Tr5にはそれぞれ、駆動信号DRVA1,DRVB1,DRVC1の反転信号が入力される。
【0143】
制御部100C(図25)は、PWM制御部110Cにおいて、各相の位置検出センサー40a,40b,40cからの出力信号に基づいて、各相ごとの駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2,DRVC1,DRVC2を生成する。そして、ドライバー回路120Cが、それらの駆動信号DRVA1,DRVA2,DRVB1,DRVB2,DRVC1,DRVC2に応じて、各相の電磁コイル31a,31b,31cに駆動電流を供給する。
【0144】
このように、第2実施例のリニアモーター10Cでは、各相の位置検出センサー40a,40b,40cが出力する各相ごとの3相の波形信号に基づいて、各相の電磁コイル31a,31b,31cが駆動される。従って、第1実施例の2相のリニアモーター10に比較して、より精度の高い駆動制御が可能である。
【0145】
B2-2.位置検出処理:
図27は、第2実施例における位置検出部130Cの内部構成を示す概略ブロック図である。図27は、C相波形信号SSCと、三相二相変換部660とが追加されている点と、A相の微分回路620,630に換えてα相の微分回路620C,630Cが設けられている点と、rad関数部654に換えてrad関数部654Cが設けられている点と、送信される信号を表す符号が異なる点以外は、図16とほぼ同じである。
【0146】
位置検出部130Cは、3相の位置検出センサー40a,40b,40cの出力信号である3相の波形信号SSA,SSB,SSCを用いて、スライダー20の位置検出を実行する。具体的には、位置検出部130Cは、電磁コイル31の各相に対応する3相の波形信号SSA,SSB,SSCを、磁石列21lにおける永久磁石21の境界位置に対応する2相の波形信号Sα,Sβに変換して、スライダー20の位置を検出する。この3相の波形信号SSA,SSB,SSCを2相の波形信号Sα,Sβへと変換する処理(三相二相変換処理)は、三相二相変換部660が実行する。
【0147】
図28,図29は、三相二相変換部660が実行する三相二相変換処理の一例を説明するための説明図である。図28の上段には、3相の位置検出センサー40a,40b,40cのそれぞれが出力する信号波形SSA,SSB,SSCをそれぞれ、実線と、一点鎖線と、二点鎖線とで図示してある。また、図28の下段には、上記の3相の波形信号SSA,SSB,SSCから、変換行列を用いた下記の変換式(1)に基づいて得られた2相の波形信号Sα,Sβがそれぞれ実線と一点鎖線とで図示してある。図29には、3相の位置検出センサー40a,40b,40cの出力値a,b,cに対して、下記の変換式(1)に基づいて得られる2つの値α,βをまとめた表が示されている。
【0148】
【数1】

【0149】
このように、変換式(1)を用いることにより、電磁コイル31の各相に対応する3相の波形信号SSA,SSB,SSCを、磁石列21lにおける永久磁石21同士の境界位置に対応する2相(α相とβ相)の波形信号Sα,Sβに変換することが可能である。三相二相変換部660が生成した2相の波形信号Sα,Sβは、2つの信号変換部611,612と、演算部650のrad関数部654Cに送信される(図27)。
【0150】
図30は、2つの信号変換部611,612による2相のエンコーダー信号ESα,ESβの生成処理を説明するための説明図である。図30の上段には、図28の下段に示された2相の波形信号Sα,Sβが図示されている。また、図30の下段には、α相エンコーダー信号ESαと、β相エンコーダー信号ESβとが並列に図示されている。
【0151】
第1と第2の信号変換部611,612はそれぞれ、第1実施例で説明したのと同様な機能を有しており、2相の波形信号Sα,Sβから、α相エンコーダー信号ESαと、β相エンコーダー信号ESβとを生成する。即ち、α相エンコーダー信号ESαと、β相エンコーダー信号ESβは、2相の波形信号Sα,Sβの位相と振幅とが抽出されたパルス信号である。
【0152】
α相プラス側微分回路620Cとα相マイナス側微分回路630C(図27)とはそれぞれ、第1実施例で説明したA相プラス側微分回路620とA相マイナス側微分回路630と同様な構成を有している(図18)。これらの微分回路620C,630Cはともに、2相のエンコーダー信号ESα,ESβを受信する。そして、α相プラス側微分回路620Cは、スライダー20の正方向移動時に、α相エンコーダー信号ESαにおけるパルスの立ち上がりのタイミングを表すパルス信号PUを出力する。また、α相マイナス側微分回路630Cは、スライダー20の逆方向移動時に、α相エンコーダー信号ESαにおけるパルスの立ち下がりのタイミングを表すパルス信号PDを出力する。
【0153】
パルスカウンター部640(図27)は、2つの微分回路620C,630Cからの出力信号PU,PDを受信する。そして、パルスカウンター部640は、第1実施例で説明したのと同様に、それらの出力信号PU,PDにおけるパルスに応じてカウント値Nのインクリメント処理またはデクリメント処理を実行するとともに、変数Dの設定処理を実行する。
【0154】
図31(A),(B)はそれぞれ、上述した各信号Sα,Sβ,ESα,ESβ,PU,PDと、カウント値Nの変化の一例を示すタイミングチャートである。図31(A),(B)は、信号名を表す符号が異なる点以外は、図19(A),(B)とほぼ同じである。このように、この第2実施例においても、波形信号SSAの位相に応じてカウント値Nが変化した第1実施例の場合と同様に、カウント値Nは、三相二相変換部660によって生成された波形信号Sαの位相に応じて変化する。
【0155】
演算部650(図27)は、パルスカウンター部640の出力するカウンター値Nと変数Dと、2相の波形信号Sα,Sβとに基づいて、スライダー20の位置座標Lxを算出する。なお、rad関数部654Cは、第1実施例のrad関数部654と同様の機能を有しており、2つの波形信号Sα,Sβと変数Dとに基づいて、波形信号Sαの値に対するラジアンを出力する。
【0156】
このように、第2実施例の位置検出部130Cは、三相二相変換部660により、3相の波形信号SSA,SSB,SSCを2相の波形信号Sα,Sβに変換した上で、第1実施例で説明したのと同様な演算を実行し、スライダー20の位置を検出することができる。ただし、第1実施例の位置検出部130であれば、三相二相変換処理を実行していないため、この第2実施例の位置検出部130Cより正確な位置制御が可能である。
【0157】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0158】
C1.変形例1:
上記実施例では、リニアモーター10,10A,10B,10Cは、2相または3相の電磁コイル31と、2相または3相の位置検出センサー40とを備えていた。しかし、リニアモーターは、さらに複数相の電磁コイル31と、電磁コイル31の各相に対応する複数個の位置検出センサー40とを備えるものとしても良い。
【0159】
C2.変形例2:
上記第1実施例では、各相の位置検出センサー40a,40bはそれぞれ、第1のA相電磁コイル31aまたは第1のB相電磁コイル31bの外周において、それらの巻幅の中央の位置に配置されていた。しかし、各相の位置検出センサー40a,40bは他の位置に配置されるものとしても良い。各相の位置検出センサー40a,40bは、永久磁石21の配列方向に垂直な方向に放射状に延びる磁束を検出でき、磁石列21lが移動したときに、対応する相の電磁コイル31に生じる逆起電圧の波形の位相と等しい位相の複数相の信号波形を出力できる位置に配置されていれば良い。
【0160】
C3.変形例3:
上記第2実施例では、制御部100Cは、3相の位置検出センサー40a,40b,40cが出力する3相の信号を2相の信号に変換して、スライダー20の位置検出を実行していた。しかし、制御部100Cは、リニアモーター10Cにおいて、2相の位置検出センサー40a,40bの出力信号を取得し、その2相の出力信号に基づいて3相の信号を算出するものとしても良い。そして、その3相の信号に基づいて、3相の電磁コイル31a,31b,31cを駆動するものとしても良い。
【0161】
C4.変形例4:
上記第1実施例において、制御部100が、第2実施例の制御部100Cと同様に位置検出部130を有するものとしても良い。この場合には、位置検出部130は、2相の位置検出センサー40a,40bの出力する2相の波形信号を用いて、スライダー20の位置を検出することができる。
【0162】
C5.変形例5:
上記実施例では、リニアモーター10は、制御部100のPWM制御によって駆動されていた。しかし、リニアモーター10は、他の方式の制御方法によって駆動するものとしても良い。
【符号の説明】
【0163】
10,10A,10B,10C,10a…リニアモーター
20…スライダー(可動子)
21…永久磁石
21l,21lA,21lB…磁石列
22…ケーシング
23…鍔部
24…磁石ヨーク
30…ステーター(固定子)
31…電磁コイル
31a…A相電磁コイル
31b…B相電磁コイル
31c…C相電磁コイル
33,33a〜33e…コイルバックヨーク
33s…スリット
34…シャフトベアリング
35…ケーシング
40,40a,40b,40c…位置検出センサー
40a…A相位置検出センサー
40b…B相位置検出センサー
40c…C相位置検出センサー
41…ホール素子
42…バイアス調整部
43…ゲイン調整部
45…位置検出部
100,100C…制御部
110…PWM制御部
111…A相駆動制御部
112…B相駆動制御部
113…C相駆動制御部
120,120C…ドライバー回路
1201〜1203…レベルシフタ
121…A相駆動部
122…B相駆動部
123…C相駆動部
130,130C…位置検出部
200…CPU
510…基本クロック生成回路
530…PWM部
531,532…カウンター
533,534…EXOR回路
535,536…駆動波形形成部
540…正逆方向指示値レジスター
550,552…乗算器
560,562…符号化部
564…絶対値変換部
570,572…AD変換部
580…電圧指令値レジスター
590…励磁区間設定部
592…電子可変抵抗器
594,596…電圧比較器
598…OR回路
611,612…信号変換部
620,620C,630,630C…微分回路
640…パルスカウンター部
650…演算部
651,652,653…乗算器
654,654C…rad関数部
655…加算機
656…Loffset格納部
D1〜D6…ダイオード
Tr1〜Tr6…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモーターであって、
複数の永久磁石が、同じ極同士が互いに対向するように直列に配列された磁石列を有し、電磁力によって前記磁石列の配列方向に移動するスライダー部と、
前記スライダー部の移動方向に沿って配列され、相ごとに異なる位相の駆動電流の供給を受ける複数相の電磁コイルを備えるステーター部と、
前記スライダー部の移動を制御するために、前記磁石列の移動に伴う磁束の変化を検出する複数の磁気検出素子と、
を備え、
前記複数の磁気検出素子は、前記複数相の電磁コイルの相に対応して設けられ、前記複数相の電磁コイルの外周側おいて、前記スライダー部の移動方向に沿って配列されることにより、前記磁石列の前記永久磁石同士の境界において前記永久磁石の配列方向に垂直な方向に放射状に延びる磁束を検出し、前記磁石列が移動したときに、前記複数相の電磁コイルのそれぞれに生じる逆起電圧の波形の位相と等しい位相の複数相の信号波形を出力する、リニアモーター。
【請求項2】
請求項1記載のリニアモーターであって、さらに、
複数の磁気検出素子が出力する少なくとも2相の出力信号に基づき、前記リニアモーターの駆動信号を制御するとともに、前記スライダー部の位置を制御するために前記スライダー部の位置を検出する制御部を備える、リニアモーター。
【請求項3】
請求項2記載のリニアモーターであって、
前記複数相の電磁コイルは、3相の電磁コイルであり、
前記複数の磁気検出素子は、前記3相の電磁コイルに対応する3相の信号波形を出力し、
前記制御部は、前記3相の信号波形を、前記磁石列における前記永久磁石同士の境界の位置に対応する2相の信号波形に変換して、前記2相の信号波形に基づき前記スライダー部の位置を検出する、リニアモーター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のリニアモーターであって、
前記複数の磁気検出素子と、前記複数相の電磁コイルの間には、バックヨークが配置されており、
前記バックヨークには、前記スライダー部の移動方向に沿った複数のスリットが形成されている、リニアモーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2012−90467(P2012−90467A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236323(P2010−236323)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】