説明

リニアモータ用ブレーキ回路

【課題】 ブレーキ電流を外部から段階的に制御することが可能なリニアモータ用ブレーキ回路を提供する。
【解決手段】 リニアモータ150a、150bの負荷1に並列に接続された全波整流回路20と、整流回路20に直列に接続された、負荷1から出力される電流を制限する複数の電流制限抵抗R、R0、R1、R2と、各電流制限抵抗に直列に接続されたスイッチ素子M、M0、M1、M2と、前記スイッチ素子を独立してオンオフさせるインバータN、N0、N1、N2を有する。これらの電流制限抵抗は直列または並列に接続することができる。スイッチ素子としてnチャンネル型パワーMOSFETを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージなどを駆動するリニアモータの制動力を外部から段階的に制御することが可能なリニアモータ用ブレーキ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置(例えば投影露光装置や検査装置)においては、非露光部材(例えばガラス基板)などを搭載したステージを所定の位置まで高速で移動させるために、ステージを非接触で(例えば静圧軸受で)ステージの両側に設けられたリニアガイドに沿ってリニア同期モータ(以下単にリニアモータという)により駆動することが行われている
【0003】
上記のリニアモータの駆動回路の概略を図7に示す。同図に示すように、リニアモータの負荷(3相コイル:U相コイル、V相コイル、W相コイル)に駆動電流を供給するための駆動回路は、直流電源10から供給された直流を交流に変換するためにブリッジ接続した3組のスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータ回路11と、各スイッチング素子をその制御位相を120°ずつずらして(UV−UW−VW−VU−WU−WV)オンオフさせるPWM制御回路12を有する。また、リニアモータは、コイルに供給する電流の向きを変えるために可動子(例えば3相コイル)の位置を検出する位置センサ13を備えている。このインバータ回路11からリニアモータの負荷(U相コイル、V相コイル、W相コイル)に正弦波電流が供給されることにより、電流の値に応じた推力で可動コイル部材を移動することができ、またコイルに供給する電流の向きを変えることにより、可動子(コイル部材)の移動方向を切り替えることができる。なお、図示を省略するが、直流電源10は、例えば商用交流電源(通常は3相交流電源)を全波整流する整流回路と所定電圧に調整するDC−DCコンバータ(例えば昇圧チョッパ回路)で構成することができる。
【0004】
上記のステージを非常時に速やかに停止させるために、3組のスイッチング素子Q1〜Q6の下アームQ2、Q4、Q6を全てオンとし、各相のコイルを短絡することにより、制動(ダイナミックブレーキ)を掛けることが一般的である。しかるにエア浮上タイプのXYステージでは、左右の静圧軸受の浮上力が一致せず、ステージの重心位置が中央からずれることがある。この状態で、左右のリニアモータに同じ制動力を掛けると、慣性力の強い側に回転力が働き、ステージのねじれ現象が発生する。
【0005】
上述したように、ステージの重心が一対のリニアモータの中心位置からずれている状態でダイナミックブレーキを働かせると、モーメントが発生してステージは重心周りに回転(ヨーイング)しようとする。これを解消するために、特許文献1には、緊急時にはリニアモータが備える少なくとも1つのコイルを含む閉回路を構成してダイナミックブレーキを働かせることによって前記移動体を減速させるステージ装置において、ダイナミックブレーキ時にコイルに流れる電流を制限する制限手段を設けることが提案されている。
【0006】
また特許文献2には、半導体投影露光装置のウエハステージやレチクルステージ等において移動ストロークの長いステージに使用されているリニアモータにおいて、駆動中に停電が生じた場合、ステージを確実に停止させるために、停電時にダイナミックブレーキを働かせる半導体リレースイッチ202と、スイッチSW2、SW3、コイルL2、L3とが閉回路を構成し、停電が生じると、コイルL2、L3の位置に対応して位置する可動子の永久磁石が慣性で移動しようとするのを、コイルL2、L3に逆起電力を生じさせ、可動子の移動を妨げる向きに閉回路内で電流を流すことにより、可動子にはダイナミックブレーキが働くことによりリニアモータを停止させることが記載されている。
【0007】
この他にも、特許文献3には、巻線形モータ10の二次側を三相全波整流回路100により整流して、抵抗器111に直流電圧を加えることにより、巻線形モータ10の二次側の抵抗器111の制御を行う(巻線形モータ10の給電を制御する)とともに、巻線形モータ10の運転条件に応じて半導体スイッチ手段(GTO)121〜125をオンオフ制御することが記載されている。例えばクレーンの全速運転制御が継続して、目標位置のやや手前の位置にクレーンが移動すると、停止精度を上げるためにGTO121〜125を順にオフにする。このように、抵抗器111の抵抗値が大きくなるように制御することにより、巻線形モータ10の回転数を下降させ、ブレーキ作用によってクレーンを停止させることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−237069号公報(第5−6頁、図1、2、4)
【特許文献2】特開2002−142491号公報(第4―6頁、図4、5,6)
【特許文献3】特開平9−140188号公報(第4―5頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたブレーキ回路では、全ての負荷(コイル)が短絡状態となるので、速度に比例して急激な制動力が発生し、リニアモータには機械的なストレスが加わり、位置決め精度が低下するという問題がある。
【0010】
特許文献2に記載されたブレーキ回路は、逆起電力を利用して制動を掛けるので、ステージのバランスが崩れた場合には、安定した制動を掛けることができないという問題がある。
【0011】
また特許文献3に記載されたブレーキ回路では、半導体スイッチ手段としてGTOサイリスタを使用するので、複雑なブレーキ回路になるという問題がある。
【0012】
従って本発明の目的は、ステージバランスに応じて制動力を外部から段階的にコントロールすることができるリニアモータ用ブレーキ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のリニアモータ用ブレーキ回路は、リニアモータの負荷に並列に接続された全波整流回路と、前記整流回路に直列に接続された、前記負荷から出力される電流を制限する複数の電流制限抵抗と、前記各電流制限抵抗に直列に接続されたスイッチ素子と、前記スイッチ素子を独立してオンオフさせるベース駆動回路を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、前記複数の電流制限抵抗は並列に接続することができる。
【0015】
本発明において、前記複数の電流制限抵抗は直列に接続することができる。
【0016】
本発明において、前記複数の電流制限抵抗は直列に接続されるとともに、前記スイッチ素子はアイソレーションアンプを介して直列に接続することができる。
【0017】
本発明において、前記スイッチ素子としてnチャンネル型パワーMOSFETを使用するとともに、前記ドライブ回路は、前記nチャンネル型パワーMOSFETのゲートを駆動するインバータを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電流制限抵抗を流れる電流を段階的に制御するので、ステージバランスに応じて制動力を外部(モータの制御回路とは別の回路)からコントロールすることができる。したがって非常停止時にステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【0019】
本発明によれば、単軸のステージにおいても、リニアモータの制動力を外部から段階的に制御できるので、非常停止時にステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の対象とするXYステージの平面図、図2は図1をA方向からみた矢視図、図3はリニアモータの駆動回路を示すブロック図、図4は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図、図5は本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図、図6は本発明の第3の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【0021】
[XYステージ]
XYステージの構成を図1及び図2により説明する。XYステージ100は、ベース110と、その上にY方向に伸長するリニアガイド120a、120bと、空気軸受を形成するためにこのリニアガイドの外周面に設けられたエアーパッド130a、130bと、Xステージ160(図中破線で示す)を搭載したキャリッジ140と、キャリッジ140を駆動するリニアモータ150a、150bを備えている。エアーパッド130a、130bは、Y軸方向に沿って複数個配置されており(各面に1個のみ図示)、各エアーパッドから圧縮エアを噴出することにより、静圧軸受が形成されて、キャリッジは非接触でガイドに支持される。
【0022】
リニアモータ150aは、強磁性体からなり断面コ字状のヨーク152aの内側にその伸長方向に沿って異なる極性の磁極が現出しかつ異なる極性の磁極が対向するように複数の永久磁石153aを固着し、正弦波状の磁束密度分布が現出する磁気空隙を有する固定子151aと、磁気空隙内に位置する有効導体部を有する3相コイル(例えば空心コイル)154aを有する可動コイル部材155aを備えている。
【0023】
リニアモータ150bは、リニアモータ150aと同様に、強磁性体からなり断面コ字状のヨーク152bの内側にその伸長方向に沿って異なる極性の磁極が現出しかつ異なる極性の磁極が対向するように複数の永久磁石153bを固着し、正弦波状の磁束密度分布が現出する磁気空隙を有する固定子151bと、磁気空隙内に位置する有効導体部を有する3相コイル(例えば空心コイル)154bを有する可動コイル部材155bを備えている。なお図示を省略するが、エアーパッド130a、130bは各々、Y軸方向に沿って所定間隔をおいて複数個配置されている。
【0024】
図3に示すように、負荷1(3相コイル154a、154b)に駆動電流を供給する駆動回路は、直流電源10から供給された直流を交流に変換するためにブリッジ接続した3組のスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータ回路11と、スイッチング素子をその制御位相を120°ずつずらして(UV−UW−VW−VU−WU−WV)オンオフさせるPWM制御回路12とを有する。負荷1には、ブレーキ回路2が接続され、そこに流れるブレーキ電流を段階的に調整できるように構成されている。スイッチング素子Q1〜Q6としては、図示したNPN形トランジスタに限定されず、例えばパワーMOSFETを使用することができる。インバータ回路11は、主回路を電圧源にする電圧形インバータ又は主回路を電流源にする電流形インバータのいずれでもよい。
【0025】
[ブレーキ回路例1]
図4に示すように、第1の実施の形態に係るブレーキ回路2は、負荷1に並列に接続された全波整流回路20と、整流後の電流を制限する複数の電流制限抵抗21(R、R0、R1、R2)と、各抵抗に直列に接続されたスイッチ素子22(M、M0、M1、M2)を有する。全波整流回路20は、ブリッジ接続された複数のダイオードD1〜D6を有する。また各スイッチ素子M、M0、M1、M2には各々、論理ゲート(インバータ)23(N、N0、N1、N2)を含むベース駆動回路が接続され、制御電源Vccから供給された直流電圧(例えば6〜10V)をADC(ADコンバータ)24によりディジタル信号に変換することにより、これらを個別にオンオフできるように構成される。
【0026】
本発明のブレーキ回路2では、高速でスイッチング動作を行い、制動力を速やかに調整できるようにするために、スイッチ素子22としては、例えばnチャンネル形パワーMOSFETが使用される。nチャンネル形パワーMOSFETは、ゲート電圧がスレッショルド電圧(Vt)以下では、ドレインからソースに電流が流れないが、ゲート電圧がスレッショルド電圧(Vt)を超えると、ドレインからソースに電流が流れて、ターンオンされる。
【0027】
本実施の形態のブレーキ回路2の動作は、次の通りである。スイッチ素子M0、M1及びM2のゲートにLレベル(例えば3V以下)の電圧を印加し、スイッチ素子MのゲートにHレベル(例えば5V以上)の電圧を印加することにより、スイッチ素子Mはターンオンし、他のスイッチ素子はターンオフするので、電流制限抵抗21のうちRのみにブレーキ電流i1が流れる。次にスイッチ素子M1及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加し、スイッチ素子M及びM0のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M及びM0はターンオンし、他のスイッチ素子はターンオフするので、電流制限抵抗RとR0にブレーキ電流i1、i2が流れ、ブレーキ電流はi1+i2に増加する。またスイッチ素子M、M0及びM1のゲートにHレベルの電圧を印加し、スイッチ素子M2のゲートにLレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M、M0及びM1はターンオンし、スイッチ素子M2はターンオフするので、電流制限抵抗R、R0及びR1にブレーキ電流i1、i2、i3が流れ、ブレーキ電流はi1+i2+i3に増加する。そして全てのスイッチ素子M、M0、M1及びM2のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、電流制限抵抗R、R0、R1及びR2にブレーキ電流i1、i2、i3、i4が流れ、ブレーキ電流はi1+i2+i3+i4に増加する。したがって複数のスイッチ素子を選択的にターンオン又はターンオフすることにより、ブレーキ電流を段階的に制御することができる。
【0028】
[ブレーキ回路例2]
第2の実施の形態に係るブレーキ回路を図5により説明する。図5において、図4と同一部分は同一の参照符号で示す。
【0029】
このブレーキ回路2は、負荷1に並列に接続された全波整流回路20と、整流後の電流を制限する直列に接続された複数の電流制限抵抗R、R0、R1、R2、R3と、各抵抗の中点に接続されたスイッチ素子M、M0、M1、M2を有する。また第1の実施の形態と同様に、各スイッチ素子M0、M1、M2には各々、インバータ23が接続され、制御電源Vccから供給された直流電圧をADC24によりディジタル信号に変換することにより、これらを個別にオンオフできるように構成されている。
【0030】
本実施の形態のブレーキ回路2の動作は、次の通りである。スイッチ素子M0、M1及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加し、スイッチ素子MのゲートにHレベルの電圧を加えることにより、スイッチ素子Mはターンオンし、他のスイッチ素子はターンオフするので、電流制限抵抗21のうちRのみにブレーキ電流i1が流れる。次にスイッチ素子M、M1及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加し、スイッチ素子M0のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M0はターンオンし、他のスイッチ素子はターンオフするので、電流制限抵抗RとR0にブレーキ電流i2(<i1)が流れる。またスイッチ素子M1のゲートにHレベルの電圧を印加し、スイッチ素子M、M0及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M1はターンオンし、他のスイッチ素子M、M0、M2はターンオフするので、電流制限抵抗R、R0及びR1にブレーキ電流i3(<i2)が流れる。さらにスイッチ素子M2のゲートにHレベルの電圧を印加し、他のスイッチ素子M、M0及びM1のゲートにLレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M2はターンオンし、他のスイッチ素子M、M0、M1はターンオフするので、電流制限抵抗R、R0、R1及びR2にブレーキ電流i4(<i3)が流れる。そして全てのスイッチ素子M、M0、M1及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加することにより、電流制限抵抗R、R0、R1及びR2にブレーキ電流i5(<i4)が流れる。したがって複数のスイッチ素子を選択的にターンオン又はターンオフすることにより、ブレーキ電流を段階的に制御することができる。
【0031】
[ブレーキ回路例3]
第3の実施の形態に係るブレーキ回路を図6により説明する。図6において、図4と同一部分は同一の参照符号で示す。
【0032】
このブレーキ回路2は、負荷1に並列に接続された全波整流回路20と、整流後の電流を制限する直列に接続された複数の電流制限抵抗R、R0、R1、R2、R3と、各抵抗の中点に接続されたスイッチ素子M、M0、M1、M2を有する。また第1の実施の形態と同様に、各スイッチ素子M、M0、M1、M2には各々、インバータ23が接続され、制御電源Vccから供給された直流電圧をADC24によりディジタル信号に変換することにより、これらを個別にオンオフできるように構成される。さらに、入力信号のグランドと出力信号のグランドを区別して、各グランド間に任意の電位をもたせるために、最下段以外のスイッチ素子のゲートとソース間にアイソレーションアンプAM、AM0、AM1を設ける。すなわちスイッチ素子M、M0、M1はグランドから浮いているので、アイソレーションアンプAM、AM0、AM1を設けることにより、共通のグランドを基準として電圧を印加することができる。本実施の形態のようにMOSFETを駆動する場合には、アイソレーションアンプAM、AM0、AM1として、フォトカプラ(例えば入力側に発光LED、出力側にフォトダイオードアレイを内蔵したフォトボルカプラ)を使用することが好ましい。
【0033】
本実施の形態のブレーキ回路2の動作は、次の通りである。全てのスイッチ素子M、M0、M1、M2のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、これらのスイッチ素子はターンオンするので、電流制限抵抗21のうちRのみにブレーキ電流i1が流れる。次にスイッチ素子MのゲートにLレベルの電圧を印加し、他のスイッチ素子M0、M1、M2のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子Mはターンオフし、他のスイッチ素子はターンオンするので、電流制限抵抗RとR0にブレーキ電流i2(<i1)が流れる。またスイッチ素子M、M0のゲートにLレベルの電圧を印加し、他のスイッチ素子M1、M2のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M、M0はターンオフし、他のスイッチ素子はターンオンするので、電流制限抵抗R、R0及びR1にブレーキ電流i3(<i2)が流れる。さらにスイッチ素子M、M0、M1のゲートにLレベルの電圧を印加し、他のスイッチ素子M2のゲートにHレベルの電圧を印加することにより、スイッチ素子M、M0、M1はターンオフし、他のスイッチ素子はターンオンするので、電流制限抵抗R、R0、R1及びR2にブレーキ電流i4(<i3)が流れる。そして全てのスイッチ素子M、M0、M1及びM2のゲートにLレベルの電圧を印加することにより、全ての電流制限抵抗R、R0、R1、R2及びR3にブレーキ電流i5(<i4)が流れる。したがって複数のスイッチ素子を選択的にターンオン又はターンオフすることにより、ブレーキ電流を段階的に制御することができる。
【0034】
本発明では、ブレーキ回路を複数の電流制限抵抗と複数のスイッチ素子で構成することにより、モータの制動力を外部(リニアモータの制御回路から電気的に独立した回路)から制御することが可能となり、ステージバランスが崩れていても、ステージの状態に応じて各リニアモータに安定した制動がかけられ、機械的なストレス(ステージのねじれ)を軽減することができる。したがってエア浮上型ステージにおいて、ステージのねじれが防止され、高精度の位置決め精度を確保することができる。
【0035】
ステージバランスは、レーザ干渉計などによりキャリッジの浮上量を監視し、その出力信号に基づいて、例えば、図1及び2においてリニアモータ150a側にキャリッジ140が傾いた場合には、リニアモータ150aのブレーキ電流が小さくなるように、制限電流を流す抵抗を選択すればよい。これにより、ステージを正常な姿勢を保持した状態でリニアモータを所定位置に位置決めすることができる。
【0036】
また、本発明では、複数のスイッチ素子を使用するので、例えば全てのMOSFETの熱破壊により、ブレーキ回路が故障しない限り(いくつかの素子が損傷した場合でも)、ブレーキを掛けることが可能であり、リニアモータの安全性を保証することができる。
【0037】
本発明のブレーキ回路は、図1に示すような複数軸のステージに限らず、単軸のステージに使用することが可能であり、その場合でも、リニアモータの制動力を外部から段階的に制御できるので、ステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】XYステージを示す平面図である。
【図2】図1をA方向からみた矢視図である。
【図3】本発明のブレーキ回路を備えたリニアモータの駆動回路を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【図7】従来の駆動回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1:負荷、2:ブレーキ回路、20:全波整流回路、21:電流制限抵抗、22:スイッチ素子、23:インバータ、24:ADコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータの負荷に並列に接続される全波整流回路と、前記全波整流回路に直列に接続され、前記全波整流回路から出力される電流を制限する複数の電流制限抵抗と、前記各電流制限抵抗に直列に接続されるスイッチ素子と、前記スイッチ素子を独立してオンオフさせるベース駆動回路を有することを特徴とするリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項2】
前記複数の電流制限抵抗は並列に接続されることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項3】
前記複数の電流制限抵抗は直列に接続されることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項4】
前記複数の電流制限抵抗は直列に接続されるとともに、前記スイッチ素子はアイソレーションアンプを介して直列に接続されることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項5】
前記スイッチ素子としてnチャンネル型パワーMOSFETを使用するとともに、前記ベース駆動回路は、前記nチャンネル型パワーMOSFETのゲートを駆動するインバータを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリニアモータ用ブレーキ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−303377(P2009−303377A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154488(P2008−154488)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(393027383)NEOMAXエンジニアリング株式会社 (46)
【Fターム(参考)】