説明

リニア圧縮装置およびその制御方法

【課題】 ピストンの位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置および位置検出器を用いず、電気ノイズの影響を受け難く、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、精度の高い位置制御が出来るリニア圧縮装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】 リニアモータを有するリニア圧縮機2と、リニアモータに電力を供給する電源31と、電源部3を制御する制御部4とを備えるリニア圧縮装置であって、制御部の電圧測定演算と、電流測定演算と、変位測定演算の各ステップの3つ以上の異なる位相角で測定した電圧、電流、変位から各振幅と各位相角を演算し、該演算値からリニアモータのコイルのインダクタンスと逆起電力係数を求め、リニア圧縮装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧縮や蒸気圧縮あるいは冷凍機などに用いられるリニアモータで駆動されるリニア圧縮機およびその制御方法に関するもので、詳しくは、ピストンの位置を制御するリニア圧縮装置および制御するため、リニアモータのコイルのインダクタンスと逆起電力係数を測定するリニア圧縮装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術の制御方法に使われるインダクタンスの測定は、LCR回路において周波数を掃引しながらインピーダンスZ及び位相角θを測定、記録する測定工程と、測定工程で測定された位相角θを所定回数前の値と比較して位相角が所定の値に近づきつつあるか、又は遠ざかりつつあるかを判断する第1比較工程と、θの増減回数を計測し所定の値と比較して測定完了を判断する第2比較工程と、測定工程で測定、記録されたインピーダンスZ及び位相角θの測定値に数値演算を施して近似値を求める演算処理工程とを備えており、第2比較工程と、測定工程の動作回数を所定値と比較し、所定の値と等しければ演算処理工程で、測定工程で測定・記録された測定周波数と、インピーダンスZ及び位相角θの数値演算を施してインダクタンスL'の近似値を求めている。この場合、周波数fを0もしくは十分低い値に設定すると、インピーダンスZ及び位相角θを数1、数2の式を使い数値演算を施してインダクタンスL'の近似値が求められる(例えば、特許文献1)。
【数1】

【0003】
数1において、ωは角速度で、円周率をπ(≒3.14)とするとω=2πfになる。
【数2】

【0004】
また、直流電圧Vdcを交流に変換し、交流を交流電動機へ供給するためのパワー半導体素子から構成されるインバータと、インバータの出力電圧の大きさと周波数を制御するための制御装置とから成る交流電動機の制御装置における交流電動機の定数測定方法において、インバータの1次周波数指令値ω及び1次電圧指令値VC1を基に単相交流励磁信号を出力し、この信号によりインバータを動作させて交流電動機を単相交流励磁し、1次周波数指令を積分した位相と交流電動機の電流検出値から電動機の有効パワー分電流Iqと、無効パワー分電流Idを演算し、次式VC1・Iqと、次式(Iq+Id)との比から交流電動機の1次及び2次の合成抵抗(r+r)を演算測定し、次式VC1・Idと、次式ω(Id+Iq)との比から、交流電動機の1次及び2次の合成もれインダクタンス(L+L)を演算測定する。即ち、数3により合成もれインダクタンス(L+L)を求める(例えば、特許文献2)。
【数3】

【0005】
また、従来技術のピストン位置制御したリニア圧縮機では、ピストンを往復運動させるリニアモータの電圧と電流を継続的に検出し、検出された電圧V、電流Iと、事前に測定されたコイルの電気抵抗Rから、リニアモータのインダクタンスLと逆起電力係数Cを含む式、即ち、速度v={(1/C)(V−L(dI/dt)−IR)}を使いピストンの速度を計算し、この速度を微分してピストンの加速度、積分して変位を計算し、さらにこれらの諸量を用いてピストンの上死点位置を計算し、変位センサを使わずにピストンの位置制御を行う(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特許第2751285号報
【特許文献2】特許第3284602号報
【特許文献3】特許第3413658号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のインダクタンスの測定方法では、リニアモータのような磁気回路において可動子あるいは回転子の速度により生じる逆起電力の影響が数1、数2に含まれていないため、リニアモータの実機運転状態相当のインダクタンスと逆起電力係数を測定できないと言う問題がある。
【0007】
また、特許文献2の合成もれインダクタンスの測定方法は、交流電動機の磁気回路においても、交流電動機の回転子(可動子)の速度により生じる逆起電力の影響が数3に含まれていないため、リニアモータの実機運転状態相当のインダクタンスと逆起電力係数を測定できないと言う問題がある。
【0008】
また、特許文献3では、リニアモータの電圧と電流を継続的に検出するとともに、遂次微分処理と積分処理を行う必要がある。この微分処理は、速度変化を微少時間で割って加速度を求めるため、速度変化に電気的ノイズが含まれると、このノイズ影響を受けて、加速度が不正確になり、正しいピストン変位が計算されず、ピストン位置が正しく制御されない問題がある。また、遂次微分処理と積分処理を行うため、制御装置には微分器と積分器を設ける必要があり、微分器と積分器をアナログ回路で実現すると回路構成が複雑になり、ディジタル回路で実現すると演算処理を行うプロセッサの負担が増大するとともに、コストが高くなる問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ピストンの位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、リニアモータのコイルに電力を供給し、リニア圧縮機の可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、電源部に送る正弦波、又は、正弦波状の基本波形を発生する基本波形発生手段と、電力の電圧の測定と演算を行う電圧測定演算手段と、電力の電流の測定と演算を行う電流測定演算手段と、ピストンの変位の測定と演算を行う変位測定演算手段と、電圧と電流と変位の測定値から得られた演算結果に基き演算するコイル演算手段と、を有する制御部と、を備えるリニア圧縮装置の制御方法であって、制御部は、基本波発生手段により基本波形を発生する基本波形発生ステップと、電圧測定演算手段により共通タイミングを基準に電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角とを演算する電圧測定演算ステップと、電流測定演算手段により共通タイミングを基準に電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角とを演算する電流測定演算ステップと、変位測定演算手段により共通タイミングを基準に変位を測定し、測定した該変位値から変位波形の変位振幅と変位位相角とを演算する変位測定演算ステップと、コイル演算手段により、電圧振幅と電圧位相角と、電流振幅と電流位相角と、変位振幅と変位位相角と、からコイルのインダクタンスと、コイルの逆起電力係数を演算するコイル演算ステップと、を備える。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、電圧測定演算ステップの電圧測定は、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内の3つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2π(360°)を加えた位相角で行われ、電流測定演算ステップの電流測定は、共通タイミングを基準に周波数の1周期内の3つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、変位測定演算ステップの変位測定は、共通タイミングを基準に周波数の1周期内の3つ以上の異なる変位位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、コイルに供給される電力の電圧の直流分が振幅に対して小さく、電流の直流分が振幅に対して小さく、可動体の変位の直流分が振幅に対して小さい場合は、電圧測定演算ステップの電圧測定は、共通タイミングを基準に周波数の1周期内の2つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、電流測定演算ステップの電流測定は、共通タイミングを基準に周波数の1周期内の2つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、変位測定演算ステップの変位測定は、共通タイミングを基準に周波数の1周期内の2つ以上の異なる変位位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、リニアモータに電力を供給し、リニア圧縮機の可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、電源部の電力の電圧又は電流を制御する制御部と、を備えるリニア圧縮装置であって、制御部は、正弦波又は正弦波状の基本波形を発生させる基本波形発生手段と、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角でコイルを流れる電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角を演算する電圧測定演算手段と、共通タイミングを基準に周波数の1周期内で3つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角でコイルを流れる電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角を演算する電流測定演算手段と、電圧測定演算手段により得られた電圧波形と、電流測定演算手段により得られた電流波形から可動体の変位波形を演算する変位波形演算手段と、基本波形と、変位波形演算手段により得られた変位波形とを比較し基本波形を補正した動作信号を電源部に伝送する基本波形補正手段と、を備え、変位波形演算手段でコイルのインダクタンスとコイルの逆起電力係数により変位波形を演算してリニア圧縮装置を制御する。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、リニアモータに電力を供給し、リニア圧縮機の可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、電源部の電力の電圧又は電流を制御する制御部と、を備えるリニア圧縮装置であって、制御部は、基本波形を発生させ基本波形発生手段と、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角でコイルを流れる電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角を演算する電圧測定演算手段と、共通タイミングを基準に周波数の1周期内で2つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角でコイルを流れる電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角を演算する電流測定演算手段と、電圧測定演算手段により得られた電圧波形と、電流測定演算手段により得られた電流波形から可動体の変位波形を演算する変位波形演算手段と、基本波形と、変位波形演算手段により得られた変位波形とを比較し基本波形を補正した動作信号を電源部に伝送する基本波形補正手段と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明では、基本波形発生ステップで所定の周波数で、所定の振幅の正弦波、又は、正弦波状の基本波形を発生させ、この基本波形に基づき電源部でリニア圧縮機のリニアモータに供給する電力の電圧と電流を実機運転状態に近い状態にしてリニアモータに供給し、可動体を正弦波、又は、正弦波状(略正弦波)に往復運動させる。次に、電圧測定演算ステップ、電流測定演算ステップ、変位測定演算ステップで、共通タイミングを基準に、それぞれ電圧、電流、変位を測定し、該測定値から電圧振幅と電圧位相角、電流振幅と電流位相角、変位振幅と変位位相角を演算し、該演算値からコイル演算ステップでインダクタンスと逆起電力係数を演算するので、実機運転状態に近い状態のリニアモータのコイルのインダクタンス値と逆起電力係数の値を求めることが可能で、従来技術の測定された電流を微分する必要がないので、位置検出器を用いず、電気ノイズの影響を受け難く、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、精度の高い位置制御が出来るリニア圧縮装置の制御方法を提供できる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、電圧測定演算ステップの電圧の測定と、電流測定演算ステップの電流の測定と、変位測定演算ステップの変位の測定が、共通タイミングを基準にそれぞれ基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる各位相角に整数倍の2π(πは円周率)を加えた位相角で測定され、該測定値からインダクタンスと逆起電力係数を演算するので、演算処理のプロセッサの負担が軽減される。さらに、3つ以上の異なる各位相角の測定点を増やし測定値を平均処理し演算することで、インダクタンスの値と逆起電力係数の値の精度が向上し、高い精度のピストン位置制御ができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、コイルに供給される電力の電圧の直流分が振幅分に対して小さく、電流の直流分が振幅分に対して小さく、可動体の変位の直流分が振幅分に対して小さくなるように事前に電源部の電圧と電流あるいは基本波形発生手段の基本波形と、そして可動体、即ち可動子とピストンの位置を調整することで、電圧測定演算ステップの電圧の測定と、電流測定演算ステップの電流の測定と、変位測定演算ステップの変位の測定が、共通タイミングを基準にそれぞれ基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なる各位相角に整数倍の2π(πは円周率)を加えた位相角で測定され、該測定値からインダクタンスと逆起電力係数を演算できる。従って、演算が簡単になり、演算処理のプロセッサの負担が軽減される。さらに、2つ以上の異なる各位相角の測定点を増やし測定値を平均処理し演算することで、インダクタンスの値と逆起電力係数の値の精度が向上し、高い精度のピストン位置制御ができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明では、リニアモータのコイルに正弦波、又は、正弦波状の電力を供給することで、可動子にピストンを備えた可動体は、正弦波、又は、正弦波状の往復運動をする。従って、共通のタイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる各位相角に整数倍の2πを加えた位相角で、電圧と、電流とを測定して得られた測定値と、実機運転と同じ状態に近いリニアモータのコイルのインダクタンスと逆起電力係数の演算値とを使って、従来技術の演算式に含まれる微分と積分を用いずにピストンの変位波形を演算して求めることが出来る。引続き、基本波形と演算で求めた変位波形とを比較し基本波形補正手段により基本波形を補正した動作信号に基づき電源部でコイルに供給する電力の電圧と位相を決定してリニアモータを駆動してピストンの位置をフィードバック制御するので、ピストンの位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置を提供できる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、リニアモータのコイルに供給される電力の電圧の直流分が電圧振幅分に対して小さく、電流の直流分が振幅分に対して小さく、且つ、ピストンの変位の直流分が振幅分に対して小さくなるように事前に電源部の電圧と電流、そしてリニア圧縮機の可動体の位置を調整することで、共通のタイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なる各位相角に整数倍の2πを加えた位相角で、電圧と、電流とを測定して、各々の測定された測定値に基づきピストンの変位波形を、従来技術の演算式に含まれる微分と積分を用いず演算できる。従って、演算で得られた変位波形を請求項6と同じようにフィードバックしピストンの位置制御を行っているので、ピストンの位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置を提供できる。さらに、プロセッサの処理数が減少するのでプロセッサの負担が減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係わるリニア圧縮装置の制御方法に関する回路のブロック線図を示す。図1に基づき制御回路の構成を説明する。リニア圧縮装置1のリニアモータの制御回路1aは、リニア圧縮機2、電源部3、制御部4から構成される。リニア圧縮機2は、後述(図6)するようにコイル53a、53b、53cを有するリニアモータ50を備える。リニアモータ50の可動子55には、ロッド59を介してピストン58が接続されて可動体60が構成され、可動体60は両端側をコイルバネ71、72で弾性支持され、共振点を有する振動系が形成される。リニアモータ50を共振点近傍の周波数で運転することで、ピストン58によりガス又は蒸気が効率よく圧縮され、共振点近傍の周波数で運転することが好ましい。
【0022】
制御部4の測定演算ステップは、基本波形発生手段5による基本波形発生ステップ5s、電圧測定演算手段6による電圧測定演算ステップ6s、電流測定演算手段7による電流測定演算ステップ7s、変位測定演算手段8による変位測定演算ステップ8s、コイル演算手段9によるコイル演算ステップ9sとから成る。まず、基本波形発生ステップ5sでは、制御部4で行われる各種処理のタイミングの基準を設定するために時計信号発生手段5bにより極めて短い一定時間間隔で基準となる時間信号を発生する。次いで、変位波形情報設定手段5cにより基本波形の周波数と振幅が所望の値に設定され、この波形情報と時間信号に基づき基準波形発生源5aは、正弦波又は略正弦波(以下、正弦波状)の基本波形u(t)と制御部4で行われる各種処理のタイミング信号とを発生し出力する。また、必要に応じて基本波形u(t)には、振幅分Uに所定の直流分Uを重ね合せることが出来る。
【0023】
電源部3は、制御部4から送られる正弦波又は正弦波状の基本波形によってリニアモータ50のコイル53a、53b、53cに供給する電力の電圧と電流を決定し、コイル53a、53b、53cに電力を供給する。この供給電力でリニアモータ50の可動子55がピストン58と一体となって、正弦波又は正弦波状に往復運動する。
【0024】
以下に述べる電圧測定演算ステップ6s、電流測定演算ステップ7s、変位測定演算ステップ8sで測定された各々の測定値の出力は、各ステップ6s、7s、8sに対して前述した基準波形発生源5aのタイミング信号による共通タイミングを基準に処理される。
【0025】
電圧測定演算ステップ6sは、電圧測定手段6aによりコイル53a、53b、53cの両端の各電圧が測定され、次に電圧測定タイミング手段6dからの後述する測定タイミングの指令に基づき測定された各電圧値を電圧値出力手段6bにより出力し、電圧振幅電圧位相検出手段6cにより出力された各電圧値からコイル53a、53b、53cの両端の各電圧の電圧振幅Vと、共通タイミングを基準とした電圧位相角θを後述する演算式に基づき演算し、コイル演算手段9に伝達する。
【0026】
電流測定演算ステップ7sは、電流測定手段7aによりコイル53a、53b、53cを流れる各電流が測定され、次に電流測定タイミング手段7dからの測定タイミングの指令に基づき測定された各電流圧値を電流値出力手段7bにより出力し、電流振幅電流位相検出手段7cにより出力された各電流値からコイル53a、53b、53cを流れる各電流の電流振幅Iと、共通タイミングを基準とした電流位相角θを後述する演算式に基づき演算し、コイル演算手段9に伝達する。
【0027】
変位測定演算ステップ8sは、変位測定手段8aにより可動体60(図6)の変位(ピストン58、可動子55の変位と同じ)が測定され、次に変位測定タイミング手段8dからの所定のタイミングの指令に基づき測定された各変位値を変位値出力手段8bにより出力し、変位振幅変位位相検出手段8cにより出力された各変位値から可動体60の変位振幅Xと、共通タイミングを基準とした変位位相角θを後述する演算式に基づき演算し、コイル演算手段9に伝達する。
【0028】
コイル演算ステップ9sは、電圧振幅電圧位相検出手段6cで演算された電圧振幅Vと電圧位相角θと、電流振幅電流位相検出手段7cで演算された電流振幅Iと電流位相角θと、変位振幅変位位相検出手段8cで演算された変位振幅Xと変位位相角θとから後述する演算式に基づきコイル53a、53b、53cの各インダクタンスLと、各逆起電力係数Cを算出してリニアモータのインダクタンスと逆起電力係数を求める制御方法の一連の処理を完了する。
【0029】
前述の共通タイミングは、基本波形又は、時間信号発生手段5bの時計信号を共通タイミングにしてもよく、あるいは各測定演算手段6a、7a、8aでの測定タイミングのうちいずれか一つのタイミングを共通タイミングにしもてよい。また、電圧振幅電圧位相検出手段6c、電流振幅電流位相検出手段7c、変位振幅変位位相検出手段8cは、後述のする演算機能の他に、多数のサイクルの同じ位相角に整数倍の2πを加えた位相角で測定された各々の測定値を平均化する処理機能を備えている。
【0030】
次に、リニアモータのインダクタンスと逆起電力係数を求めるリニア圧縮装置1の制御方法の作用についてコイル53aで説明する。コイル53b、53cの作用はコイル53aと同じである。
【0031】
(直流分がある場合の制御方法)
図2は、共通タイミングを基準に1周期内でコイルの電圧波形v(t)の3つ以上の異なる測定タイミングに対応する位相角で測定されるコイルの電圧測定値から導かれる電圧振幅と電圧位相の演算式を説明する電圧ベクトル線図を示する。
【0032】
上記の直流分がある場合とは、コイル53aの電圧直流分と電流直流分、可動体の変位の直流分のうち少なくともいずれかが直流分を有することである。
【0033】
(基本波形発生ステップ)
基本波形発生ステップ5sでは、基本波形発生手段5により所定の周波数の正弦波あるいは正弦波状(略正弦波)に直流分が重ね合せた基本波形u(t)が発生される。例えば、基本波形u(t)は数4で示されることが好ましいが、以下に述べる作用は正弦波状(略正弦波)の場合にも適用できる。
【数4】

【0034】
数4で、tは時間、Uは基本波形の振幅、Uは基本波形の直流分、ωは角速度、πは円周率、fは所定の周波数、u(t)は時間tにおける基本波形である。所定の周波数は、可動体60と後述のコイルバネ71、72とガスバネと磁気バネとを合成した合成バネで形成される振動系の共振周波数の近傍の周波数が効率の関点から好ましい。
【0035】
(電圧測定演算ステップ)
コイル53a両端の測定される電圧波形v(t)は、数4で示される基本波形が正弦波であるので数5で示される。電圧測定演算ステップ6sでは、電圧測定タイミング手段6dからの共通タイミングを基準として、基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる測定タイミング、即ち3つ以上の異なる位相角で測定した電圧値から数5に示される電圧振幅Vと電圧位相θを求める。
【数5】

【0036】
数5で、Vは電圧振幅、θは共通タイミングを基準とした電圧位相角、Vは直流分である(図2)。
【0037】
共通タイミングを基準とした1周期内の3つの異なる測定タイミングに対応する位相角の第1の位相角(θV1+θ)、第2の位相角(θV2+θ)、第3の位相角θで測定された電圧をそれぞれV、V、Vとすると、第1の電圧位相角(θV1+θ)、第2の電圧位相角(θV2+θ)、第3の電圧位相角θは、それぞれ2π(360°)を整数倍した位相角でも、それぞれの測定値V1、V2、V3の値は変わらないので、3つ以上の異なる測定タイミングは、1周期内に限定しなくてよく、1周期内で3つ以上の異なる測定タイミングに整数倍の周期を加えたタイミングで測定すればよい。即ち、P、Q、Rを整数とすると、3つ以上の異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の電圧位相角{(θV1+θ)+P(2π)}、第2の位電圧相角{(θV2+θ)+Q(2π)}、第3の電圧位相角{θ+R(2π)}で測定された各電圧値V、V、Vは、数5により数6で示さる。従って、数6の3元連立方程式を解くことで、未知数であった電圧振幅V、電圧位相角θ、直流分Vは数7に示され、電圧測定値から電圧振幅V、電圧位相角θ、直流分V求めることができる。
【数6】

【数7】

【0038】
(電流測定演算ステップ)
電流測定演算ステップ7sは、電流測定タイミング手段7dからの共通タイミングを基準として、基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる測定タイミング、即ち3つ以上の異なる位相角で測定した電流値から数8に示される電流振幅Iと電流位相θを求める。
【数8】

【0039】
数8で、Iは電流振幅、θは共通タイミングを基準とした電流位相角、Iは直流分である。
【0040】
電圧測定演算ステップ6sと同様に、共通タイミングを基準とした1周期内の3つの異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の電流位相角{θI1+θ+P(2π)}、第2の電流位相角{θI2+θ+Q(2π)}、第3の電流位相角{θ+R(2π)}で測定された各電流値をそれぞれI、I、Iとすると、数8を使ってI、I、Iは数9で示され、数9の3元連立方程式を解くことで数10が求まり、電流定値から電流振幅I、電流位相角θ、直流分Iは数10により求めることができる。ここで、Pと、Qと、Rは整数である。
【数9】

【数10】

【0041】
(変位測定演算ステップ)
変位測定演算ステップ8sは、変位測定タイミング手段8dからの共通タイミングを基準として、基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる測定タイミング、即ち3つ以上の異なる位相角で測定した変位値から数11に示される変位振幅Xと変位位相θを求める。
【数11】

【0042】
数11で、Xは変位振幅、θは共通タイミングを基準とした電流位相角、Xは直流分である。電圧測定演算ステップ6sと同様に、共通タイミングを基準とした1周期内の3つの異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の変位位相角{θX1+θ+P(2π)}、第2の位変位相角{θX2+θ+Q(2π)}、第3の変位位相角{θ+R(2π)}で測定された各変位値をそれぞれX、X、Xとすると、数11を使ってX、X、Xは数12で示され、数12の3元連立方程式を解くことで数13が求まり、変位定値から変位振幅X、変位位相角θ、直流分Xは数13により求めることができる。ここで、Pと、Qと、Rは整数である。
【数12】

【数13】

【0043】
前述の各測定演算ステップ6s、7s、8sの測定タイミングは、共通の共通タイミングを基準としなければならないが、各ステップ6s、7s、8sで互いに同じでも又は異なってもよい。また、電圧、電流、変位の測定値は、それぞれ位相角度が微少量ずれたところの測定値を数7、数10、数13に代入して求めた電圧、電流、変位の振幅V、I、X、位相角θ、θ、θ、直流分VD、D、D、は、位相角度がずれていない場合に対する差は微少量であるので、電圧の測定値は、位相角が微少量ずれところの測定値を使ってもよい。また、θV1=θI1=θX1=π、θV2=θI2=θX2=π/2にすると数7、数10、数13は簡単な式になる。
【0044】
(コイル演算ステップ)
コイル演算ステップ9sは、電圧測定演算ステップ6sの電圧振幅Vと電圧位相角θ、電流測定演算ステップ7sの電流振幅Iと電流位相角θ、変位測定演算ステップ8sの変位振幅Xと変位位相角θの各々の演算値からコイル53aのインダクタンスLと逆起電力係数Cを求める。
【0045】
インダクタンスLと逆起電力係数Cの演算式は、次のように導入される。即ち、インダクタンスと逆起電力係数は、磁束の変化によって生じる係数であるので、電圧、電流、変位の各々の直流分は各々から減じてよい。この直流分を減じた電圧、電流、変位のベクトル表示の電圧V、電流I、変位Xは数14で示される。ここで、jは虚数単位で、eは2.718である。
【数14】

【0046】
図3は、図1のリニア圧縮装置1の基本波形発生手段5と電源部3とリニアモータ50のコイル53aとを接続した等価回路を示す。図中、L、Rはそれぞれコイル53aのインダクタンスと電気抵抗を示す。コイル53aの端子間の電圧V(t)は、可動子55が往復運動することによる逆起電力の影響を受け、コイル53aのインダクタンスLと逆起電力係数Cは、数15に示される。ここで、Nはコイル53aの巻数、Φはコイル53aが発生する磁束である。
【数15】

【0047】
速度は変位と時間の関数であることから、磁束Φは、電流Iと変位Xの関数Φ(I,X)であり、電流Iと変位Xは時間である。従って、磁束Φは電流の時間変化と可動子55の変位の時間変化、即ち速度の影響を受けるので、コイル53aの端子間の電圧Vは、数15を用い数16で示される。
【数16】

【0048】
数14と数16により数17を得る。従って、コイル両端の電圧振幅Vと電圧位相θ、電流振幅Iと電流位相θ、可動体60、即ち、可動子55又はピストン58の変位振幅Xと変位位相θとからインダクタンスLと逆起電力係数Cは、数17から求めることができる。
【数17】

【0049】
コイル53aの電気抵抗Rが、インダクタンスLに比べて小さい場合は、電気抵抗は0と見なすことで、数17は数18で示される。
【数18】

【0050】
尚、数3から数17は、直流分が0でも成立つ。
【0051】
(直流分が振幅分に対して小さい場合の制御方法)
直流分が振幅分に対して小さい場合(振幅0を含む)は、測定前に、電源部3がリニアモータ50に供給する電力の電圧と電流を振幅分に対して小さくなるように電源部3で調整あるいは基本波形発生源5aの直流分を調整することで実現できる。また、後述するように(図6)、リニア圧縮機2の可動子55の中立位置は、コイル71、72の一端に配備したスペーサ73、74の厚さを調整することで確保でき、ピストン58の中立位置は、ピストン58の長さを調整することで確保できる。
【0052】
また、電源部3の出力にトランスを介在させてリニアモータ50のコイル53a、53b、53cに電力を供給することで、コイル端子間のコイル電圧と53a、53b、53cを流れる電流を0にすることができる。この場合は、可動体60の変位の直流分を振幅分に対して小さくなるように調整すればよい。
【0053】
数4の直流分U、数6の直流分Vは、0と見なしてよいので基本波形u(t)と電圧波形v(t)はそれぞれ数19、数20で示され、電圧測定演算ステップ6sでは、電圧振幅と電圧位相角の2つの未知数を求めればよい。従って、共通タイミングを基準とした基本波形の周波数の1周期内の2つの異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の位電圧相角{(θV1+θ)+P(2π)}、第2の位電圧相角{θ+Q(2π)}で測定した電圧値V、Vより得られる数20の連立二元方程式を解くことで、電圧振幅Vと電圧位相θが求まる数21を得る。ここで、P、Qは整数である。
【数19】

【数20】

【数21】

【0054】
電流測定演算ステップ7sでは、数9のIを0と見なしてよいので電流波形i(t)は数22で示され、電流振幅と電流位相角の2つの未知数を求めればよい。即ち、共通タイミングを基準とした基本波形の周波数の1周期内の2つの異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の電流位相角{(θI1+θ)+P(2π)}、第2の電流位相角{θ+Q(2π)}で測定した電流値I、Iより得られる数22の連立二元方程式を解くことで、電流振幅Iと電流位相θが求まる数23を得る。ここで、P、Qは整数である。
【数22】

【数23】

【0055】
変位測定演算ステップ6sでは、数11のXを0と見なしてよいので変位波形x(t)は数24で示され、変位振幅と変位位相角を2つの未知数を求めればよい。即ち、共通タイミングを基準とした1周期内の2つの異なる測定タイミングに対応する位相角に整数倍の2πを加えた第1の変位位相角{(θX1+θ)+P(2π)}、第2の変位圧相角{θ+Q(2π)}で測定した変位値X、Xより得られる数24の連立二元方程式を解くことで、変位振幅Xと変位位相θが求まる数25を得る。ここで、P、Qは整数である。
【数24】

【数25】

【0056】
上述の各測定演算ステップ6s、7s、8sの測定タイミングは、共通の共通タイミングを基準としなければならないが、各ステップで互いに同じでも又は異なってもよい。また、電圧、電流、変位の測定値は、それぞれ位相角が微少量ずれたところの測定値を数21、数23、数25に代入して求めた電圧、電流、変位の振幅V、I、X、位相角θ、θ、θ、直流分VD、D、D、は、位相角がずれていない場合に対する差は微少量であるので、電圧の測定値は、位相角度が微少量ずれところの測定値を使ってもよい。また、θV1=θI1=θX1をπ/2又はπにすると数21、数23、数25は簡単な式になる。
【0057】
コイル演算9sでは、コイルの53aインダクタンスLと逆起電力係数Cを求める。即ち、電圧測定演算ステップ6sで数21により算出した電圧振幅Vと電圧位相角θと、電流測定演算ステップ7sで数23により算出した電流振幅Iと電流位相角θと、変位測定演算ステップ8sで数25により算出した変位振幅Xと変位位相角θを数17に代入してコイルのインダクタンスLと逆起電力係数Cが求まる。前述の数17と数18は直流分を取除いているので、直流分が振幅分に対して小さい場合にも成立つ。従って、コイルの電気抵抗Rを考慮する場合は数17を、電気抵抗Rを考慮しない場合は数18で演算すればよい。
【0058】
尚、インダクタンスと逆起電力係数を求める方法は、電圧、電流、変位の各測定手段6a、7a、8aにより測定された測定値を人が前述した各種の演算式を使いインダクタンスと逆起電力係数を算出してもよい。
【0059】
次に、リニアモータのインダクタンスと逆起電力係数を求めるリニア圧縮装置1の制御方法の効果について説明する。
【0060】
制御部4の基本波形発生源5aにより、実機運転に対応する所定の周波数で、所定の振幅の正弦波、又は、正弦波状の基本波形を発生させ、この基本波形に基づき電源部3でリニアモータ50に供給する電力の電圧と電流を実機運転状態に近い状態にしてリニアモータ50に供給し、可動体60を正弦波、又は、正弦波状に往復運動させる。電圧測定演算ステップ6s、電流測定演算ステップ7s、変位測定演算ステップ8sで共通タイミングを基準に、各々のタイミング手段6d、7d、8dからの測定タイミングでコイル53aの電圧と、電流と、可動体60の変位との測定値を各々の出力手段6b、7b、8bにより出力する。出力された測定値から各々の検出手段6c、7c、8cにより得た演算値、即ち、電圧、電流、変位の各振幅と各位相角からコイル演算ステップ9sでインダクタンスと逆起電力係数を演算するので、実機運転状態に近い状態のリニアモータ50のコイル53a、53b、53cのインダクタンスと逆起電力係数を求めることが可能で、従来技術の測定された電流を微分する必要がないので、位置検出器を用いず、電気ノイズの影響を受け難く、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、精度の高い位置制御が出来るリニア圧縮装置1の制御方法を提供できる。
【0061】
(直流分がある場合の制御方法の効果)
コイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧、電流、ピストン58の変位のいずれかに直流分が含まれる場合、電圧測定演算ステップ6sの電圧の測定と、電流測定演算ステップ7sの電流の測定と、変位測定ステップ8sの変位の測定とが、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内でそれぞれ3つ以上の異なる各々の位相角に整数倍の2πを加えた位相角で測定され、各々の測定演算手段6、7、8により求めた演算値からインダクタンスを演算することで、演算処理のプロセッサの負担が軽減される。さらに、3つ以上の異なる各位相角の測定点を増やし測定値を平均処理し演算することで、インダクタンスの値と逆起電力係数の値の精度が向上し、高い精度のピストン位置制御ができる。
【0062】
また、制御部4の基本波形発生源5aにより、実機運転に対応する所定の周波数で、所定の振幅の正弦波、又は、正弦波状(略正弦波)の基本波形を発生させ、この基本波形を入力して電源部3からリニア圧縮機2のリニアモータ50に電力を供給することで、可動体60、即ち可動子55、ピストン58は所定の周波数で、所定の振幅の正弦波、又は、正弦波状に往復運動する。従って、コイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧、電流と、ピストン58の変位のいずれかに直流分が含まれる場合、電圧測定演算ステップ6sの数7、電流測定演算ステップ7sの数10と、変位測定演算ステップ8sの数13と、コイル演算ステップ9sの数17とを使うことができるので、従来技術で使われる微分、積分を用いず演算することで、ノイズの影響を受け難く、精度の高い演算が可能になり、また、演算回路が簡単で、演算処理のプロセッサの負担も少なくなる。
【0063】
(直流分が振幅分に対して小さい場合の制御方法の効果)
コイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧と電流の直流分が振幅分小さく、ピストン58の変位の直流分が振幅分に対して小さい場合、電圧、電流、変位の各々の直流分を0と見なすことで、電圧測定演算ステップ6sと、電流測定演算ステップ7sと、変位測定演算ステップ8sにおいて共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なる位相角に整数倍の2πを加えた位相角で、それぞれ電圧、電流、変位を測定して、各々の検出手段6c、7c、8cにより電圧、電流、変位の各振幅と各位相角を演算で求めることができ、該演算値からインダクタンスと逆起電力係数を演算できる。従って、各々の測定演算ステップ6s、7s、8sでの処理数も減り、また各々の検出手段6c、7c、8cで使われる演算式が簡単になり、演算処理のプロセッサの負担が小さくなるさらに、2つ以上の異なる各位相角の測定点を増やし測定値を平均処理し演算することで、インダクタンスの値と逆起電力係数の値の精度が向上し、高い精度のピストン位置制御ができる。
【0064】
また、可動体60は所定の周波数で、所定の振幅の正弦波、又は、正弦波状に往復運動する従って、コイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧と電流の直流分が振幅分小さい、ピストン58の変位の直流分が振幅分に対して小さくい場合は、電圧、電流、変位の各々の直流分を0と見なすることで、電圧測定演算ステップ6sの数21、電流測定演算ステップ7sの数23と、変位測定演算ステップ8sの数25と、コイル演算ステップ9sの数17を使うことができるので、従来技術で使われる微分、積分を用いず演算することで、ノイズの影響を受け難く、精度の高い演算が可能になり、また、演算回路が簡単で、演算処理のプロセッサの負担も少なくなる。
【0065】
(コイルの電気抵抗について)
一般にコイルの電気抵抗は、コイルのインダクタンスに比べて小さく設計されるので、インダクタンスLと逆起電力係数Cは数18を使うことが出来るので、数18は数17より簡単になり、演算処理するプロセッサの負担が軽減される。
【0066】
尚、図4は、従来行われているインダクタンス測定の回路図である。図4に示すように、供試体であるコイル15が交流電流源17に接続され、コイル15には電圧計18と電流計16が設けられている。図中、Lはコイル15のインダクタンス、Rはコイル15の電気抵抗を示す。図4に示す測定回路で使われるインピーダンスを求める従来の式は数26に示される。ここでVは電圧、Iは電流、Rはコイルの電気抵抗、fは周波数、πは円周率である。
【数26】

【0067】
次に、ピストンの位置制御したリニア圧縮装置について説明する。
【0068】
図5は、本発明に係わるピストン位置制御したリニア圧縮装置の制御回路のブロック線図を示す。図5の回路は、基本的には図1の回路と同じであり、図1と異なる点について説明すると、図5のリニア圧縮装置10の制御回路10aは、図1の変位波形測定手段8aとコイル演算手段9が取除かれ、新たに演算式特定手段11と、変位波形演算手段12と、基本波形補正手段13とが加わり構成される。
【0069】
図1の制御回路1aと図5の制御回路10aは、ディジタル回路やアナログ回路又はディジタル回路とアナログ回路を組合せた回路で実現できる。各種の演算式は、ディジタル回路の場合はマイクロプロセッサとソフトウェアとで所望の演算式が実現でき、アナログ回路の場合は加算器、正弦発生器、掛算器、割算器を組合わせて実現できる。電源部3は、インバータ又はパワーアンプでよい。
【0070】
ピストン58を位置制御したリニア圧縮装置10の作用について図5に基きコイル53aで説明する。コイル53b、53cの作用もコイル53aと同じである。
【0071】
(直流分がある場合)
リニアモータ50のコイル53aの電圧と、電流と、ピストン58の変位のうち少なくとも1つに直流分がある場合、基本波形発生手段5と、電圧測定演算手段6と、電流測定演算手段7により、図1に示されるインピーダンスと逆起電力係数の測定法の直流分がある場合の変位測定演算ステップ8sを除き、基本波形発生ステップ5sと、電圧測定演算ステップ6sと、電流測定演算ステップ7sとで使われる同じ演算式に基づき同じ処理がなされる。電圧、電流のそれぞれの測定タイミングは、電圧測定タイミング手段6d、電流測定タイミング7dからの共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内の3つ以上の異なるそれぞれの測定タイミングに対応するそれぞれの位相角に整数倍の(2π)を加えた位相角で電圧、電流の各測定値が出力される。
【0072】
演算式特定手段11では、変位波形演算手段12により演算されるピストン58の変位x(t)の演算式の諸量、即ち電圧振幅V、電圧位相角θ、電流振幅I、電流位相角θ、インダクタンスL、逆起電力係数C、電気抵抗Rが定数として設定される。
【0073】
変位波形演算手段12で使われる変位x(t)の演算式は、以下のように導かれる。図3のコイル53aの等価回路においてコイル電圧v(t)とコイル電流i(t)と、変位x(t)の関係は数27で示される。
【数27】

【0074】
数27で、Lはインダクタンス、Rはコイル53aの電気抵抗、Cは逆起電力係数である。数27と、前述の数5のv(t)、V=0と、数8のi(t)、I=0から求めた速度dx(t)/dtを時間tで積分して数28で示される変位x(t)が得られる。数28のx(t)には積分と微分の項は含まれない。
【数28】

【0075】
数28において、V、θは数7で、I、θは数10で、L、Cは数17又は数18で、Xは数13で示され、これらの定数は事前に前述した図1に示される各ステップ6s、7s、8s、9sにより測定演算される。また電気抵抗Rは抵抗計で事前に測定される。
【0076】
変位波形演算手段12では、数28の特定された変位式に基づき変位波形が演算される。
【0077】
基本波形補正手段13では、変位波形演算手段12で演算された変位波形x(t)に相当した電圧波形を基本波形発生源5aで発生された基本波形u(t)と比較し偏差値を算出し、基本波形u(t)を補正して電源部3へ偏差信号(動作信号)を伝達する。
【0078】
電源部3では、偏差信号に基づきリニアモータ50に供給する電力の電圧値と電流値を決定し、リニアモータ50に電力を供給すると、リニアモータ50のコイル53a、53b、53cに交番磁界が発生し、可動子55の永久磁石56aの磁束と作用し合い可動子55を基本波形に対応する所望の振幅の正弦波または正弦波状に往復運動させるようにピストン58の変位の位置がフィードバック制御され、圧縮空間70のガスが圧縮される。
【0079】
(直流分が振幅に対して小さい場合)
この場合、電圧、電流の測定タイミングは、電圧測定タイミング手段6d、電流測定タイミング7dからの共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内の2つ以上の異なるそれぞれの測定タイミングに対応するそれぞれの位相角に整数倍の(2π)を加えた位相角で測定値が出力される。また、図5の位置制御回路では、図1に示されるインピーダンスと逆起電力係数の測定法の直流分が振幅に対して小さい場合の変位測定演算ステップ8sを除き、基本波形発生ステップ5sと、電圧測定演算ステップ6sと、電流測定演算ステップ7sとで使われる同じ演算式に基づき同じ処理がなされる。
【0080】
変位波形演算手段12で使われる変位x(t)の演算式は、数28の変位の直流分Xを取除いた数29になる。
【数29】

【0081】
数29において、前述したように、V、θは数21で、I、θは数23で、L、Cは数17又は数18で示され、これらの定数は事前に前述した各ステップ6s、7s、8s、9sにより測定演算される。また電気抵抗Rも事前に測定され、演算式特定手段11でこれらの諸量が定数として特定される。次に、変位波形演算手段12により数29に基づき変位波形x(t)が演算されると、前述の直流分がある場合と同じようにピストン58の位置がフィードバック制御される。
【0082】
(リニア圧縮機について)
図6は、図1および図5に示されるリニア圧縮機2の断面図である。リニア圧縮機2は、圧力容器69と、圧力容器69内周面に固定されたリニアモータ50と、リニアモータ50の可動子55に配設されたピストン58と、ピストン58が往復運動してガスを圧縮する圧縮空間70を形成するシリンダー部65とから構成される。
【0083】
圧力容器69は、胴筒69aの一端に鏡板69bが気密に固着され、他端はシリンダー部65のシリンダーブロック66のフランジ部66aが気密に固着される。
【0084】
リニアモータ50は、胴筒69aの内周面に固定された固定子51と、固定子51で発生する磁束により駆動される可動子55とから構成される。固定子51は、ホルダ54aを備え胴筒62aの周方向に巻かれたコイル53aと、コイル53aの軸方向の両端に多数枚の磁性鋼板52aを積層したコア52と、2つのコア52の外側に設けられホルダ54b、54cを備え胴筒69aの周方向に巻かれたコイル53b、53cとから構成される。
【0085】
可動子55は、帽子形状のホルダ57の円筒中央に固定され円筒の永久磁石56aと、永久磁石56aの両端に設けた非磁性材のスペーサ56bと、スペーサ55bを介して固定された磁性材のヨーク56c、56dと、ヨーク56cの端部に設けたバネホルダ56eとから構成される。ロッドホルダ61は、ホルダ57の閉じた内側に設けられ、ロッド59はロッドホルダ61の中心部の孔を通って一端がナット62で固定され、他端がピストン58が固定される。ピストン58と可動子55はロッド59を介し一体となって可動体60が構成される。
【0086】
シリンダー部65は、シリンダーブロック66とシリンダーライナ67から構成され、リンダーブロック66は大筒部66bと、大筒部66bの両端に設けられたフランジ部66aと、ロッド59が貫通する小筒部66cとからなる。シリンダーライナ67は大筒部66bの内周面に装着され、一端部には、ガスが流出入する配管68aを備えたヘッド68が設けられ、ヘッド68はフランジ部66aに気密に固着される。ヘッド68とシリンダーライナ67とピストン58とでガスが圧縮される圧縮空間70が形成される。
【0087】
ピストン58はシリンダーライナ67に対して所定の微少間隙を持って摺動可能に外接し、ロッド59は小筒部66cの孔に対し間隙をもって装着される。ホルダ57は、小筒部66cの外周面に対し微少間隙を持って摺動可能に内接している。
【0088】
可動子55の両端には、コイルバネ71、72が設けられ、コイルバネ71、72と永久磁石56aの磁気バネとピストン58の往復運動によって生じるガスバネとを合成した合成バネと、可動体60の質量とで振動系が形成される。また、可動子55は、コア52の内周面に対し所定の間隙を保ち、停止状態で永久磁石55aの軸方向の中間位置と2つのコア52の中間位置とが合うようにコイルバネ71、72の端部に設けたスペーサ73,74で調整され、この状態でピストン58は中立位置に配置されようピストン58のヘッド側の長さが調整される。このように調整されることで、前述の共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内の2つ又は3つ以上の異なるそれぞれの測定タイミングに対応するそれぞれの位相角に整数倍の(2π)を加えた位相角で電圧、電流、変位の測定と演算が可能になる。
【0089】
リニアモータ50のコイル53a、53b、53cのインダクタンスと逆起電力係数を測定する場合は、鏡板69bの中央に一点鎖線で示される変位センサ75が配設され、可動体60の変位(ピストン58および可動子55の変位)が測定される。リニア圧縮機2のピストン58を位置制御する場合には、変位センサ75を配設しなくてよい。
【0090】
リニア圧縮機2は、例えばスターリング冷凍機などに使用され、圧力容器69は、例えばヘリウムが充填され、リニアモータ50に正弦波又は正弦波状の電圧を印加することで、固定子51に交番磁束が発生され、この交番磁束で可動子55がピストン58と一体になって往復運動することで、圧縮空間70内でヘリウムの圧縮と膨張が繰返され配管68a内を往復流動する。また、図6には示していないが、ヘッド68に吸入弁と吐出弁を配備したリニア圧縮機は、スプリット型のパルス管冷凍機やGM冷凍機などに使用される。
【0091】
次に、ピストン58を位置制御したリニア圧縮装置10の効果について説明する。
【0092】
リニアモータ50のコイル53a、53b、53cに正弦波、又は、正弦波状の電力を供給することで、可動子55にピストン58を備えた可動体60は、正弦波、又は、正弦波状の往復運動をする。従って、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なるタイミングに相当する位相角に整数倍の2πを加えた位相角で、電圧と、電流とを測定して得られた測定値と、実機運転と近い状態で求めたコイル53a、53b、53cのインダクタンスと逆起電力係数の測定値とを使って、従来技術の演算式に含まれる微分と積分を用いずにピストン58の変位波形を演算して求めことが出来る。この演算で求めた変位波形と基本波形とを比較し基本波形補正手段13により基本波形を補正した偏差信号(動作信号)に基づき電源部3でコイル53a、53b、53cに供給する電力の電圧と位相を決定してリニアモータ50を駆動して、ピストン58の位置をフィードバック制御するので、ピストン58の位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置10を提供できる。
【0093】
リニアモータ50のコイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧の直流分が電圧振幅分小さいく、電流の直流分が振幅分に対して小さく、ピストン58の変位の直流分が振幅分に対して小さくするように事前に電源部の電圧と電流、そしてリニア圧縮機2の可動子55及びピストン58の位置を調整することで、共通タイミングを基準に基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なるタイミングに相当する位相角に整数倍の2πを加えた位相角で、電圧と、電流とを測定して、各々の測定された測定値に基づき可動体60の変位波形を、従来技術の演算式に含まれる微分と積分を用いずに演算し、この演算で得られた変位波形を前述と同じようにフィードバックし可動体60の位置制御を行っている。従って、ピストン58の位置検出器が不要で、演算処理を行うプロセッサの負担が小さく、且つ電気ノイズの影響を受け難く、精度の高いピストン位置制御のできるコストの安いリニア圧縮装置10を提供できる。さらに、プロセッサの処理数が減少するのでプロセッサの負担が減少する。
【0094】
また、リニアモータ50のコイル53a、53b、53cに供給される電力の電圧の直流分が振幅分小さいく、電流の直流分が振幅分に対して小さく、ピストン58の変位の直流分が振幅分に対して小さい場合、実機運転態に近い状態で測定演算して求めたコイル53a、53b、53cのインダクタンス値と逆起電力係数値を使って、ピストン58の変位波形を演算して求め、フィードバックし可動体60の位置制御を行うことで、ピストン58の変位波形の精度が高くなり、精度の高いピストン位置制御したリニア圧縮装置
10が可能になる。
【0095】
以降では、実施例のインダクタンスと逆起電力係数を求めるリニア圧縮装置1の制御方法と、ピストンを位置制御したリニア圧縮装置10の妥当性を検証した検証試験結果について、図7を参照して説明する。図7は、図6とは異なる寸法諸元で構成されたリニア圧縮機にインダクタンスと逆起電力係数を求めるリニア圧縮装置1の制御方法と、ピストン位置制御を適用した検証試験結果を示す図である。図中、横軸は時間tを示し、縦軸は電圧、電流、変位を示す。図中、(1)が供給電圧の実測値、(2)が供給電圧の演算値、(3)が供給電流の実測値、(4)が供給電流の演算値、(5)がピストン変位の実測値、(6)がピストン変位の演算値の各波形をそれぞれ示す。供給電圧の周波数は29Hzで、ほぼピストン変位の共振周波数に近い。
【0096】
図7から判るように、供給電圧の実測値の(1)と供給電圧の演算値の(2)、又、供給電流の実測値の(3)と供給電流の演算値の(4)のそれぞれの波形は良く一致していおり、ピストン変位の実測値の(5)、ピストン変位の演算値の(6)は、波形がほぼ重なっており精度よく演算される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係わるリニア圧縮装置の制御方法に関する制御回路のブロック線図を示す。
【図2】コイルの電圧測定値から導かれる電圧振幅と電圧位相の演算式を説明する電圧ベクトル線図を示す。
【図3】図1のリニア圧縮装置の基本波形発生手段と電源部とリニアモータのコイルとを接続した等価回路を示す。
【図4】従来技術のインダクタンス測定回路を示す。
【図5】ピストン位置制御したリニア圧縮装置の制御回路のブロック線図を示す。
【図6】図1および図5に示されるリニア圧縮機を示す。
【図7】本発明のインダクタンスと逆起電力係数を求めるリニア圧縮装置の制御方法とピストンの位置制御の検証試験結果を示す。
【符号の説明】
【0098】
1、10 リニア圧縮装置
2 リニア圧縮機
3 電源部
4 制御部
5 基本波形発生手段
5s 基本波形発生ステップ
6 電圧測定演算手段
6s 電圧測定演算ステップ
7 電流測定演算手段
7s 電流測定演算ステップ
8 変位測定演算手段
8s 変位測定演算ステップ
9 コイル演算手段
9s コイル演算ステップ
12 変位波形演算手段
13 基本波形補正手段
50 リニアモータ
53a、53b、53c コイル
55 可動子
58 ピストン
60 可動体
65 シリンダー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、前記ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、
前記リニアモータの前記コイルに電力を供給し、前記リニア圧縮機の前記可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、
前記電源部に送る正弦波、又は、正弦波状の基本波形を発生する基本波形発生手段と、前記電力の電圧の測定と演算を行う電圧測定演算手段と、前記電力の電流の測定と演算を行う電流測定演算手段と、前記ピストンの変位の測定と演算を行う変位測定演算手段と、前記電圧と前記電流と前記変位の測定値から得られた演算結果に基き演算するコイル演算手段と、を有する制御部と、
を備えるリニア圧縮装置の制御方法であって、
前記制御部は、前記基本波発生手段により前記基本波形を発生する基本波形発生ステップと、
前記電圧測定演算手段により共通タイミングを基準に前記電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角とを演算する電圧測定演算ステップと、
前記電流測定演算手段により前記共通タイミングを基準に前記電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角とを演算する電流測定演算ステップと、
前記変位測定演算手段により前記共通タイミングを基準に前記変位を測定し、測定した該変位値から変位波形の変位振幅と変位位相角とを演算する変位測定演算ステップと、
前記コイル演算手段により、前記電圧振幅と前記電圧位相角と、前記電流振幅と前記電流位相角と、前記変位振幅と前記変位位相角と、から前記コイルのインダクタンスと、前記コイルの逆起電力係数を演算するコイル演算ステップと、を備える、ことを特徴とするリニア圧縮装置の制御方法。
【請求項2】
前記電圧測定演算ステップの電圧測定は、前記共通タイミングを基準に前記基本波形の周波数の1周期内の3つ以上の異なる前記電圧位相角に整数倍の2π(360°)を加えた位相角で行われ、
前記電流測定演算ステップの電流測定は、前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内の3つ以上の異なる前記電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、
前記変位測定演算ステップの変位測定は、前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内の3つ以上の異なる前記変位位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のリニア圧縮装置の制御方法。
【請求項3】
前記コイルに供給される前記電力の前記電圧の直流分が振幅に対して小さく、前記電流の直流分が振幅に対して小さく、前記可動体の前記変位の直流分が振幅に対して小さい場合は、
前記電圧測定演算ステップの電圧測定は、前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内の2つ以上の異なる前記電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、
前記電流測定演算ステップの電流測定は、前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内の2つ以上の異なる前記電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われ、
前記変位測定演算ステップの変位測定は、前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内の2つ以上の異なる前記変位位相角に整数倍の2πを加えた位相角で行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のリニア圧縮装置の制御方法。
【請求項4】
可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、前記ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、
前記リニアモータに電力を供給し、前記リニア圧縮機の前記可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、
前記電源部の前記電力の電圧又は電流を制御する制御部と、を備えるリニア圧縮装置であって、
前記制御部は、正弦波又は正弦波状の基本波形を発生させる基本波形発生手段と、
共通タイミングを基準に前記基本波形の周波数の1周期内で3つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角で前記コイルを流れる電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角を演算する電圧測定演算手段と、
前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内で3つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で前記コイルを流れる電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角を演算する電流測定演算手段と、
前記電圧測定演算手段により得られた前記電圧波形と、前記電流測定演算手段により得られた前記電流波形から前記可動体の変位波形を演算する変位波形演算手段と、
前記基本波形と、前記変位波形演算手段により得られた前記変位波形とを比較し前記基本波形を補正した動作信号を前記電源部に伝送する基本波形補正手段と、を備え、
前記変位波形演算手段で前記コイルの前記インダクタンスと前記コイルの前記逆起電力係数により前記変位波形を演算して前記リニア圧縮装置を制御する、ことを特徴するリニア圧縮装置。
【請求項5】
可動子にピストンを配設した可動体とコイルとを有するリニアモータと、前記ピストンが往復動してガスを圧縮するシリンダー部と、を備えたリニア圧縮機と、
前記リニアモータに電力を供給し、前記リニア圧縮機の前記可動体を正弦波又は正弦波状に往復動させる電源部と、
前記電源部の前記電力の電圧又は電流を制御する制御部と、を備えるリニア圧縮装置であって、
前記制御部は、基本波形を発生させ基本波形発生手段と、
共通タイミングを基準に前記基本波形の周波数の1周期内で2つ以上の異なる電圧位相角に整数倍の2πを加えた位相角で前記コイルを流れる電圧を測定し、測定した該電圧値から電圧波形の電圧振幅と電圧位相角を演算する電圧測定演算手段と、
前記共通タイミングを基準に前記周波数の1周期内で2つ以上の異なる電流位相角に整数倍の2πを加えた位相角で前記コイルを流れる電流を測定し、測定した該電流値から電流波形の電流振幅と電流位相角を演算する電流測定演算手段と、
前記電圧測定演算手段により得られた前記電圧波形と、前記電流測定演算手段により得られた前記電流波形から前記可動体の変位波形を演算する変位波形演算手段と、
前記基本波形と、前記変位波形演算手段により得られた前記変位波形とを比較し前記基本波形を補正した動作信号を前記電源部に伝送する基本波形補正手段と、を備える、ことを特徴するリニア圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−62853(P2009−62853A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230628(P2007−230628)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】