説明

リフローハンダ付け装置

【課題】 リフローに伴い発生するハンダに含まれるフラックスの蒸発成分を触媒体によって効果的、かつ大量に分解処理リフローハンダ付け装置を提供する。
【解決手段】 リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを分解する触媒体77を、輻射パネル75の放熱表面に接触させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線基板に電子部品を実装するためのリフローハンダ付け装置に係り、特に高い熱容量の鉛フリーハンダ、および電子部品、印刷配線基板などの実装に有効なリフローハンダ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷配線基板に電子部品を実装する装置としてリフローハンダ付け装置が広く利用されている。例えば、クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板を搬送手段によってリフロー炉内で搬送している間に、当該印刷配線基板に対して輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱により、クリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするリフローハンダ付け装置が用いられている。
【0003】
前記のようなリフローハンダ付け装置によるリフローハンダ付けに用いられるクリームハンダには、ぬれ性を向上させるためフラックスが含まれている。このフラックスは、ロジンや溶剤などであり、一般式Cで表される物質である。
【0004】
このため、クリームハンダを加熱するとフラックスガスが生じる。フラックスガスは、リフロー炉内の低温度部分において冷却されると、液化し、リフロー炉内や基板、電子部品に付着する。
【0005】
基板や電子部品にフラックスが付着すると、外観および実動作に悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
そこで、フラックスガスをリフロー炉内の雰囲気ガスから除去する方法として、リフロー炉内もしくは熱風・冷風循環経路に、熱風もしくは冷風より低温度となる熱交換器を設置し、これに蒸発したフラックスを蒸着もしくは固着させて回収する方法が提案されている。また、リフロー炉内もしくは熱風・冷風循環経路にフィルターを配置し、これにより蒸発したフラックスをろ過、回収する方法も提案されている。しかし、いずれの方法とも、回収したフラックスを定期的に装置外に取り出す必要があるためメンテナンス工数がかかってしまう。
【0007】
また、フラックスガスをリフロー炉内の雰囲気ガスから除去する方法として、フラックスガスを分解処理する触媒体を配設したリフロー炉が提案されている。
【0008】
この触媒体としては一般に白金などが用いられるが、触媒体は、高温度、例えば、300℃前後からの高温度においてフラックスガス分解能力が活性化する。そこで、リフロー炉における熱風加熱ユニット部の加熱手段に接近させて触媒体を配置することが考えられている。
【0009】
例えば、特許文献1には、ヒータの周囲に通気性を有する触媒筒体をヒータに一体的に嵌着したリフロー用加熱装置が記載されている。
【0010】
しかし、触媒体を用いた従来の方法においては、熱風を加熱するヒータ周辺に単純に触媒体を配置するだけであったので、触媒体が300℃程度にまで加熱されることはなく、分解に更に高温な状態を必要とする触媒体がその効力を十分に発揮できていなかった。
【特許文献1】特開平6−126439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、フラックスガスをリフロー炉内の雰囲気ガスから除去する方法として、フラックスガスを分解処理する触媒体を用い、この触媒体が十分な分解処理能力を発揮できるようにすることにより、リフローに伴い発生するハンダに含まれるフラックスの蒸発成分を触媒体によって効果的、かつ大量に分解処理できるリフローハンダ付け装置を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構造のリフローハンダ付け装置を提案するものである。
【0013】
本発明のリフローハンダ付け装置は、クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板を搬送手段によってリフロー炉内で搬送している間に、当該印刷配線基板に対して輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱により、クリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするものである。
【0014】
かかるリフローハンダ付け装置において、本願発明が提案するリフローハンダ付け装置は、リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを分解する触媒体を、輻射パネルの放熱表面に接触させて配置したことを特徴とするものである。
【0015】
リフローハンダ付け装置においては、クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板が搬送手段によってリフロー炉の入り口側から出口側へと搬送され、この間にリフロー炉内でリフロー処理が行われる。この間、印刷用配線基板は、リフロー炉の入口側の加熱ユニットにおいて140〜180℃程度の温度にまで予備加熱され、これに引き続いて配備されている加熱ユニットにおいて220〜240℃程度にまで加熱されてリフロー処理されて、ハンダ付けされる。そして引き続いて配備されている冷却ユニットによって数十℃程度まで冷却する冷却処理が行われ、リフロー処理された印刷用配線基板はリフロー炉の出口から搬出されていく。
【0016】
印刷配線基板に対して輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱によりクリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするリフローハンダ付け装置においては、前記の予備加熱を行う領域における熱風は140℃程度、リフロー処理を行う領域における熱風は270℃程度で印刷用配線基板に向けて吹き出される。そして、前記の予備加熱を行う領域に配置される輻射パネルの放熱表面の温度は200〜400℃前後、前記のリフロー処理が行われる領域に配置される輻射パネルの放熱表面の温度は500℃前後になる。
【0017】
そこで、300℃前後からの高温領域において活性化し、十分なフラックス分解能力を発揮しはじめる白金などの触媒体を、前述した本願発明のように、輻射パネルの放熱表面に接触させて配置することにより、リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを確実に、かつ大量に分解処理することができる。
【0018】
前記本発明のリフローハンダ付け装置において、輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域に前記触媒体が配置されている形態にすることができる。
【0019】
例えば、クリームハンダを介して電子部品が搭載されている印刷用配線基板を上側面で支持している搬送手段(例えば、チェーンコンベア、メッシュコンベア、等の搬送コンベア)の下側に輻射パネルがその上側面を放熱表面にして配置されている場合、チェーンコンベアなどによって搬送される印刷用配線基板の真下に位置する輻射パネルの放熱表面は、印刷用配線基板との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在していない領域における放熱表面である。そこで、これ以外の領域における輻射パネルの放熱表面に触媒体を配置するものである。
【0020】
クリームハンダを介して電子部品が搭載されている印刷用配線基板を上側面で支持している搬送手段の下側に輻射パネルが配置され、輻射パネルの上側面に放熱表面が形成されている場合、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材、例えば、搬送手段が存在する配置形態になることがある。
【0021】
特に、輻射パネルの上側面に形成される放熱表面の中の、チェーンコンベアなどによって搬送される印刷用配線基板の真下に位置する輻射パネルの放熱表面以外の領域においては、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材、すなわち、搬送手段が存在することになる。
【0022】
輻射加熱においては、距離によらずに熱交換が行われるが、加熱される対象物(例えば、印刷用配線基板)と輻射パネルの放熱表面との間に輻射を遮るものが存在していると輻射加熱の効率が低下する。
【0023】
そこで、輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域における輻射パネルの放熱表面に触媒体を接触させて配置しても、輻射加熱による印刷用配線基板の加熱効率が大きく損なわれることはない。
【0024】
一方、このような領域における輻射パネルの放熱表面であっても、輻射パネルを加熱するヒータ、例えば、輻射パネルに内蔵されているヒータなどによって加熱されているため、前述したように、予備加熱を行う領域に配置される輻射パネルの放熱表面の温度は200〜400℃前後、リフロー処理が行われる領域に配置される輻射パネルの放熱表面の温度は500℃前後になっている。
【0025】
そこで、放熱表面に触媒体が配置されても輻射加熱の効率が大きく損なわれることのない前記のような領域(輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域)における輻射パネルの放熱表面に接触させて、300℃前後からの高温領域において活性化し、十分なフラックス分解能力を発揮しはじめる白金などの触媒体を配置することにより、リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを確実に、かつ大量に分解処理できるようにするものである。
【0026】
なお、このように、輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域に前記触媒体が配置されている形態の場合、更に、輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域以外の領域にも前記触媒体が配置されている形態にすることができる。
【0027】
輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域以外の領域における輻射パネルの放熱表面、例えば、クリームハンダを介して電子部品が搭載されている印刷用配線基板を上側面で支持している搬送手段(例えば、チェーンコンベア、メッシュコンベア、等の搬送コンベア)の下側に輻射パネルがその上側面を放熱表面にして配置されている場合、チェーンコンベアなどによって搬送される印刷用配線基板の真下に位置する輻射パネルの放熱表面は、印刷用配線基板に対する輻射加熱に重要な役割を果たしている領域である。
【0028】
そこで、このような領域の放熱表面にまで触媒体を接触させて配置することは、輻射加熱による印刷用配線基板の加熱のみを考慮すると望ましくない。しかし、前記のように、輻射パネルの放熱表面は、予備加熱を行う領域では200〜400℃前後、リフロー処理が行われる領域では500℃前後の温度になっているので、300℃前後からの高温領域において活性化する白金などの触媒体によるフラックスの分解処理をより一層効果的に行う上で、このような領域の放熱表面にまで触媒体を接触させて配置することができる。
【0029】
なお、このような領域の放熱表面にまで触媒体を接触させて配置した場合であっても、例えば、輻射パネルの放熱表面上に設置された触媒体を黒化処理する等によって輻射効率を向上させるようにすれば、輻射加熱による印刷用配線基板の加熱効率を大きく損なうことなしに、フラックスの分解処理をより一層効果的に行うことができる。
【0030】
以上説明した本発明のリフローハンダ付け装置において、触媒体は多孔質部材製にすることができる。このようにすれば、リフロー炉の雰囲気ガスが触媒体に接触する面積が大きくなるので有利である。
【0031】
なお、多孔質状あるいは線状の触媒体であって、リフロー炉の雰囲気ガスが当該触媒体の表面に接触しつつ通過していける形態や、複数の平板状の触媒体が隣接する触媒体との間に所定の間隔を空けて積層されていてリフロー炉の雰囲気ガスが当該触媒体の表面に接触しつつ通過していける形態にしても、リフロー炉の雰囲気ガスが触媒体に接触する面積が大きくなるので有利である。
【0032】
また、以上説明した本発明のリフローハンダ付け装置において、触媒体は板状体にすることができる。輻射パネルが平板状などの形態であって、放熱表面が平面上の場合、触媒体が平板状であれば、両者の接触面積が大きくなって、効率的に触媒体を加熱することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板を搬送手段によってリフロー炉内で搬送している間に、当該印刷配線基板に対して輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱により、クリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするリフローハンダ付け装置において、フラックガスをリフロー炉内の雰囲気ガスから除去する方法としてフラックスガスを分解処理する触媒体を用い、この触媒体が十分な分解処理能力を発揮できるように触媒体を高温加熱可能にし、リフローに伴い発生するハンダに含まれるフラックスの蒸発成分を効果的、かつ大量に分解処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0035】
図1、図2図示の実施形態は、クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板を搬送手段によってリフロー炉内で搬送している間に、当該印刷配線基板に対して、輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱とにより、クリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするリフローハンダ付け装置に本願発明が適用されている例を説明するものである。
【0036】
図1は、本発明のリフローハンダ付け装置を印刷用配線基板82が搬送される方向と直交する方向で断面して説明する図である。
【0037】
図2は、図1図示のリフローハンダ付け装置を印刷用配線基板82が搬送される方向で断面して説明する図である。
【0038】
印刷用配線基板82は、搬送レール73に支持されている搬送チェーン74によって、リフロー炉C内を、図1中、紙面と直交する方向、すなわち、図2中、左側から右側に搬送される。
【0039】
リフロー炉Cには、図2図示のように、入口側から複数の加熱ユニット94a、94b、94c、94dが配備され、これに引き続いて、リフロー炉Cの出口側(図2中、右側)に冷却ユニット93が配備されている。
【0040】
加熱ユニット94a〜94dは、印刷配線基板82に対して、熱風による加熱と輻射パネル75(75a〜75d)からの輻射加熱とを行うものである。
【0041】
搬送チェーン74はその上側面で印刷用配線基板82を支持して搬送するものである。
【0042】
搬送チェーン74の下側に輻射パネル75(75a〜75d)が配置され、輻射パネル75(75a〜75d)の上側面に放熱表面が形成されている。輻射パネル75(75a〜75d)は不図示のヒータ、例えば、輻射パネル75(75a〜75d)に内蔵されているヒータによって加熱される。
【0043】
こうして、クリームハンダを介して電子部品81が搭載されている印刷用配線基板82は図1、図2中、下側から輻射パネル75(75a〜75d)による輻射加熱を受ける。
【0044】
一方、熱風吹出口は搬送チェーン74の上方に配備されていて、この熱風吹出口から図1、図2中、下側方向に向けて吹き出された熱風が、クリームハンダを介して電子部品81が搭載されている印刷用配線基板82に対して上側から吹きつけられる。
【0045】
図2図示の実施形態において、クリームハンダを介して電子部品81が搭載されている印刷用配線基板82が搬送チェーン74によって、リフロー炉C内を、図2中、左側から右側に搬送される時に、例えば、リフロー炉Cの入口側(図2中、左側)の加熱ユニット94a、94bにおいて予備加熱が行われ、引き続いて配備されている加熱ユニット94c、94dにおいてリフロー処理が行われるとすると、以下のようになる。
【0046】
加熱ユニット94a、94bにおいて、印刷用配線基板82に向けて上側から熱風が吹きつけられる。一方、輻射パネル75a、75bが不図示のヒータによって加熱され、その放熱表面(図2中、上側面)が200〜400℃程度にまで加熱されて輻射加熱が行われる。これによって、印刷用配線基板82を140〜180℃程度の温度にまで加熱する予備加熱が行われる。
【0047】
これに引き続いて配備されている加熱ユニット94c、94dにおいて、印刷用配線基板82に向けて上側から熱風が吹きつけられ、一方、輻射パネル75c、75dが不図示のヒータによって加熱され、その放熱表面(図2中、上側面)が最高で500℃程度にまで加熱されて輻射加熱が行われる。これによって、印刷用配線基板82を220〜240℃程度にまで加熱してリフロー処理が行われ、ハンダ付けされる。
【0048】
そして引き続いて配備されている冷却ユニット93によって数十℃程度まで冷却する冷却処理が行われ、リフロー処理された印刷用配線基板82は、図2中右側のリフロー炉Cの出口から搬出されていく。
【0049】
各加熱ユニット94a〜94d、冷却ユニット93には不活性ガス供給ライン91が接続されており、これを介して加熱ユニット、冷却ユニットに不活性ガス(例えば、窒素ガス)が供給される。一方、リフロー炉Cの入口部と出口部にはそれぞれラビリンス92が配備されている。
【0050】
リフロー処理開始前に、不活性ガス供給ライン91から加熱ユニット94a〜94d、冷却ユニット93に不活性ガス(例えば、窒素ガス)が供給され、リフロー炉C内の雰囲気ガスにおける酸素濃度を所望の濃度に設定すると共に、雰囲気ガスの温度を所望の設定温度に昇温させる。
【0051】
その後、リフロー処理する印刷用配線基板82が搬送チェーン74によってリフロー炉C内に図2中左側から搬送され、リフロー処理されて、図2中右側から搬出される。
【0052】
図1図示のように、搬送レール73、搬送チェーン74が配置されている搬送路空間72の雰囲気ガスは、ファンモータ61、ファン62によって吸引され、ヒータ66によって加熱された後、搬送路空間72内に戻されるように循環流動する。この搬送路空間72に戻されたヒータ66による加熱後の雰囲気ガスが、図1図示のように、印刷用配線基板82及び、輻射パネル75(75a〜75d)の方向に対して吹きつけられる。
【0053】
図示の実施形態では、加熱ユニット部における搬送レール73、搬送チェーン74が配置されている搬送路空間72は、上下からフード67で囲まれている。搬送路空間72と吸引チャンバー69とは吸い込み口パイプ78を介して連通されている。そして搬送路空間72の雰囲気ガスは、ファンモータ61、ファン62によって吸い込み口パイプ78を介して吸引チャンバー69に吸引され、更に、吸引チャンバー69の隔壁68に設けられている吸引孔63を介してヒータ66が配備されている循環経路内に吸引される。そして、ヒータ66によって加熱された後、噴出し吸い込み面71に形成されている噴出し口を介して搬送路空間72内に戻されるように循環流動する。
【0054】
冷却ユニット93には冷却ユニットファンモータが配備されており、これによって、冷却ユニット内を通過するリフロー処理後の印刷用配線基板82を冷却することを目的にして、冷却ユニット内の雰囲気ガスが強制的に循環流動されるようになっている。
【0055】
図示のリフローハンダ付け装置では、リフロー炉Cの雰囲気ガス中に存在するフラックスを分解する触媒体であって、多孔質で板状の触媒体76、77が、輻射パネル75の放熱表面に接触して配置されている。
【0056】
触媒体76、77としては、300℃程度の高温に加熱されると活性化し、クリームハンダに含まれているロジンや溶剤などのフラックス(一般式Cで表される物質)を分解する処理能力に優れているものを使用することができ、例えば、白金を用いることができる。
【0057】
白金などからなる触媒体76、77は、ヒータ66によって加熱された後、前述したようにして搬送路空間72内に戻された雰囲気ガスと接触する面積を大きくするため、多孔質部材製にしたり、多孔質状又は線状の形態、複数の平板状の触媒体が隣接する触媒体との間に所定の間隔を空けて積層されている形態などにすることができる。
【0058】
図2図示の実施形態では、輻射パネルは搬送路に沿って複数枚準備され、搬送チェーン74の下側に、各加熱ユニット94a〜94dごとに輻射パネル75a〜75dがそれぞれ配置されている。
【0059】
輻射パネル75a〜75dの放熱表面に接触して配置される触媒体76、77(図1)、77a〜77d(図2)は、前述したように多孔質部材製などであるため、熱容量は大きくないが、輻射パネル75(図1)、75a〜75d(図2)は、印刷用配線基板82に輻射熱を与えても簡単には温度が降下しないように熱容量の大きなものを用いることが望ましい。
【0060】
そこで、一般的にはアルミニウム製の輻射パネルが使用される。また図2図示の場合、搬送チェーン74の横幅(図1中、左右方向の幅)が300mmであるとすると、横幅500mm、厚さ8mm程度のものを用いる。
【0061】
図1図示の実施形態では、輻射パネル75の放熱表面において、印刷用配線基板82と、輻射パネル75の放熱表面との間に輻射パネル75による印刷用配線基板82に対する輻射を遮る部材が存在している領域以外の領域(すなわち、搬送チェーン74によって搬送される印刷用配線基板82の真下に位置する領域であって、図1中、符号Aで表す領域)に触媒体76が配置されている。また、この図1中、符号Aで表す領域以外の領域、すなわち、輻射パネル75の放熱表面において、印刷用配線基板82と、輻射パネル75の放熱表面との間に輻射パネル75による印刷用配線基板82に対する輻射を遮る部材が存在している領域(図1中、符号Bで表す領域)に触媒体77を配置している。
【0062】
輻射パネル75の放熱表面における符号Bで表す領域には、図1図示のように、触媒体77を配置する形態しておくことが望ましい。
【0063】
すなわち、輻射パネル75の放熱表面において、印刷用配線基板82と、輻射パネル75の放熱表面との間に輻射パネル75による印刷用配線基板82に対する輻射を遮る部材、例えば、搬送手段たる搬送チェーン74などが存在している領域Bには、触媒体76を配置しておく形態にすることが望ましい。
【0064】
輻射加熱においては、距離によらずに熱交換が行われるが、加熱される対象物である印刷用配線基板82と輻射パネル75の放熱表面との間に輻射を遮るものが存在していると輻射加熱の効率が低下する。そこで、このように輻射加熱の効率が低下する符号Bで表す領域に触媒体77を配置しても、輻射加熱による印刷用配線基板82に対する加熱効率が大きく損なわれることはない。
【0065】
一方、この符号Bで表す領域における輻射パネル75の放熱表面であっても、前述したように、予備加熱の領域における輻射パネル75a、75bの放熱表面は200〜400℃前後、リフロー処理が行われる領域に配置される輻射パネル75c、75dの放熱表面の温度は500℃前後になっている。そこで、300℃前後からの高温領域において活性化し、十分なフラックス分解能力を発揮しはじめる触媒体77を符号Bで表す領域に配置すれば、輻射パネル75による輻射加熱の効率をあまり低下させることなしに、フラックスの分解処理を効果的に行うことができるので有利である。
【0066】
一方、図1中、符号Aで表す領域は、輻射パネル75の放熱表面(図1中、上側表面)と、輻射加熱を受ける印刷用配線基板82との間に輻射パネル75による印刷用配線基板82に対する輻射を遮る部材、例えば、搬送手段たる搬送チェーン74などが存在しない領域である。
【0067】
そこで、輻射パネル75からの輻射による印刷用配線基板82の加熱を効率よく行う上で、図1図示の形態とは異なり、この符号Aで表す領域に触媒体76を配置しない形態(不図示)にすることもできる。
【0068】
ただし、前述したように、予備加熱の領域における輻射パネル75a、75bの放熱表面は200〜400℃前後、リフロー処理が行われる領域に配置される輻射パネル75c、75dの放熱表面の温度は500℃前後になる。そこで、300℃前後からの高温領域において活性化し、十分なフラックス分解能力を発揮しはじめる触媒体76を、図1図示のように、符号Bで表す領域に触媒体77を配置することに追加して、符号Aで表す領域にも配置しておけば、リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを確実に、かつ大量に分解処理することができるので有利である。
【0069】
なお、このように、図1の符号Aで表す領域に触媒体76を配置する場合であっても、輻射パネル75の放熱表面上に設置された触媒体76を黒化処理する等によって輻射効率を向上させるようにすれば、輻射パネル75からの輻射加熱による加熱効率を大きく損なうことなしに、フラックスの分解処理を効果的に行うことができる。
【0070】
以下、図1、図2図示のリフローハンダ付け装置において、図1に符号Bで表す領域にしか触媒体が配置されておらず、図1に符号Aで表す領域には触媒体が配置されていない場合におけるリフローハンダ付け処理の一例を説明する。
【0071】
リフロー処理開始前に、不活性ガス供給ライン91から加熱ユニット94a〜94d、冷却ユニット93に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を供給し、リフロー炉C内の雰囲気ガスにおける酸素濃度を所望の濃度に設定すると共に、ヒータ66を作動させつつ、搬送路空間72の雰囲気ガスを、ファンモータ61、ファン62によって吸い込み口パイプ78を介して吸引チャンバー69に吸引し、ヒータ66を通過させて、噴出し吸い込み面71に形成されている噴出し口を介して搬送路空間72内に循環流動させ、雰囲気ガスの温度を所望の設定温度に昇温させる。
【0072】
次いで、クリームハンダを介して電子部品81が搭載されている印刷用配線基板82が搬送チェーン74によって、リフロー炉C内に、図2中、左側から搬入される。
【0073】
リフロー炉Cの入口側(図2中、左側)の加熱ユニット94a、94bにおいて、印刷用配線基板82に向けて熱風が吹きつけられる。一方、加熱ユニット94a、94bのところで、搬送チェーン74の下側に配置されている輻射パネル75a、75bは、不図示のヒータによって加熱され、その放熱表面が200〜400℃程度にまで加熱されて輻射加熱が開始される。特に、図1に符号Aで表す領域の放熱表面には触媒体が配置されていないので、効率よく輻射加熱が行われる。
【0074】
このように、上側から吹きつけられる熱風と、下側からの輻射加熱とによって、搬送チェーン74で搬送されている印刷用配線基板82を140〜180℃程度の温度にまで加熱する予備加熱が行われる。
【0075】
なお、この際、輻射パネル75a、75bの放熱表面における図1中、符号Bで表す領域に接触配置されている多孔質状の白金触媒体77a、77bは、輻射パネル75a、75bの放熱表面と同程度の200〜400℃程度にまで加熱されるので、活性化し始める。そこで、搬送路空間72内に流動している雰囲気ガス中にフラックスが含まれていると、この活性化し始めた白金触媒体77a、77bによって、効果的にフラックス除去を行うことができる。
【0076】
引き続いて、加熱ユニット94c、94dにおいて、印刷用配線基板82に向けて熱風が吹きつけられる。また、加熱ユニット94c、94dのところで、搬送チェーン74の下側に配置されている輻射パネル75c、75dは、不図示のヒータによって加熱され、その放熱表面が500℃程度にまで加熱されて輻射加熱が行われる。特に、図1に符号Aで表す領域の放熱表面には触媒体が配置されていないので、効率よく輻射加熱が行われる。
【0077】
このように、上側から吹きつけられる熱風と、下側からの輻射加熱とによって、搬送チェーン74で搬送されている印刷用配線基板82を220〜240℃程度にまで加熱してリフロー処理が行われ、ハンダ付けされる。
【0078】
この際、輻射パネル75c、75dの放熱表面における図1中、符号Bで表す領域に接触配置されている多孔質状の白金触媒体77c、77dは、輻射パネル75c、75dの放熱表面と同程度の500℃程度にまで加熱されて活性化している状態にある。そこで、搬送路空間72内に流動している雰囲気ガス中に含まれているフラックスは白金触媒体77c、77dによって、確実に、かつ大量に分解処理される。
【0079】
そして引き続いて配備されている冷却ユニット93によって数十℃程度まで冷却する冷却処理が行われ、リフロー処理された印刷用配線基板82は、図2中右側のリフロー炉Cの出口から搬出されていく。
【0080】
前記のように、白金触媒体77c、77dは500℃程度にまで加熱されているので、触媒体による分解処理効率を上げるため多孔質状にしていても、確実にフラックスを分解処理することができ、白金触媒体77c、77dが目詰まりすることはない。
【0081】
また、高温に維持されている白金触媒体77c、77dによって前記のように確実な分解処理が行われているので、循環経路や、印刷配線基板82に向けた熱風ガスの噴出し口などにフラックスが付着して印刷用配線基板82や電子部品81に吹きつける熱風の量が減少することを大幅に抑制できる。
【0082】
これによって、前記の輻射パネル75c、75dによる輻射加熱と合わせて、熱風によるリフローハンダ付け処理を確実に、かつ、効果的に行うことができる。また、印刷用配線基板82や、電子部品81にフラックスが付着することを大幅に抑制し、外観および実動作に悪影響が生じることを未然に防止できる。
【0083】
なお、図1図示のように、ファンモータ61、ファン62によって搬送路空間72内から吸い込み口パイプ75を介して吸引チャンバー69に吸引された雰囲気ガスが、搬送路に直交する方向(図1中、左右方向)に均等に分割されて流動するようにすることができる。このようにして、フード67の両側に設けたヒータ66により加熱された雰囲気ガスを、図1図示のように左右から均等に合流させて、噴出し吸い込み面71に形成されている噴出し口を介して搬送路空間72へ噴出させることができる。これによって、印刷用配線基板82や電子部品81に、均一な温度の雰囲気ガスを、フード67内を通過中の印刷用配線基板82、電子部品81の全領域に対して均等に吹き付け、均等にリフロー処理することができる。
【0084】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のリフローハンダ付け装置を印刷用配線基板が搬送される方向と直交する方向で断面して説明する図。
【図2】図1図示のリフローハンダ付け装置を印刷用配線基板が搬送される方向で断面して説明する一部を省略した図。
【符号の説明】
【0086】
61 ファンモータ
62 ファン
63 吸引孔
66 ヒータ
67 フード
68 隔壁
69 吸引チャンバー
71 噴出し吸い込み面
72 搬送路空間
73 搬送レール
74 搬送チェーン
75、75a〜75d 輻射パネル
76 触媒体
77、77a〜77d 触媒体
78 吸い込み口パイプ
81 電子部品
82 印刷用配線基板
91 不活性ガス供給ライン
92 ラビリンス
93 冷却ユニット
94a〜94d 加熱ユニット
C リフロー炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリームハンダを介して電子部品を搭載している印刷配線基板を搬送手段によってリフロー炉内で搬送している間に、当該印刷配線基板に対して輻射パネルからの輻射加熱と熱風による加熱により、クリームハンダをリフローさせて電子部品を印刷配線基板にハンダ付けするリフローハンダ付け装置であって、
リフロー炉の雰囲気ガス中に存在するフラックスを分解する触媒体を、輻射パネルの放熱表面に接触させて配置した
ことを特徴とするリフローハンダ付け装置。
【請求項2】
輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域に前記触媒体が配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のリフローハンダ付け装置。
【請求項3】
輻射パネルの放熱表面において、印刷用配線基板と、輻射パネルの放熱表面との間に輻射パネルによる印刷用配線基板に対する輻射を遮る部材が存在している領域以外の領域にも前記触媒体が配置されている
ことを特徴とする請求項2記載のリフローハンダ付け装置。
【請求項4】
触媒体は多孔質部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のリフローハンダ付け装置。
【請求項5】
触媒体は板状体であることを特徴とする請求項4記載のリフローハンダ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−295024(P2006−295024A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116616(P2005−116616)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504464634)有限会社オアネス (4)
【Fターム(参考)】