説明

リレー装置

【課題】バッテリ逆接続でのリレー動作防止を実現するとともに、リレー回路の駆動電流経路の電圧降下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】リレー装置100では、電源電圧VbattからグランドGNDに向けて、逆流防止回路150、リレー駆動回路110及びリレー回路RLYが直列に配置されている。逆流防止回路150は、ショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とを備えている。ショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とは並列に接続されており、順方向が同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー装置に係り、例えば、バッテリ逆接続でのリレー動作防止機能を備えたリレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には電子制御装置が各種搭載されており、その駆動電源としてバッテリが搭載されている。車載バッテリは直流タイプであるので、接続極性(プラス/マイナス)が適正に接続されるように、十分な注意が必要である。その対策のためや、モータ等の影響によるサージ対策のために、一般には、バッテリ逆接続防止回路が設けられる。
【0003】
図1及び図2に、バッテリ逆接続防止回路を備えたリレー装置1、2を示す。図1のリレー装置1は、電源電圧VbattとグランドGNDとの間に設けられたリレー回路RLYと、リレー回路RLYの上流側(電源電圧Vbatt側)に配置されたリレー駆動回路10とを備える。リレー駆動回路10は、例えば、トランジスタ等のスイッチング素子を備えて構成されている。そして、リレー駆動回路10と電源電圧Vbattの経路中、つまり駆動電流経路中に逆流防止ダイオードD11が配置されている。図2のリレー装置2は、リレー駆動回路20をリレー回路RLYの下流側(グランドGND側)に配置した構成である。電源電圧Vbattとリレー回路RLYとの経路中に逆流防止ダイオードD21が配置されている。
【0004】
上述の回路以外にも、車両に搭載される保護回路として各種の技術が提案されている。例えば、負荷の電源のサージ電圧対策とバッテリ逆接続時の過電流を防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示の保護回路は、インダクタンス性の負荷に並列に接続され、その順方向が電源電流の通流方向と逆向き設定されたダイオードと、ダイオードの一方の端子と、その端子に対応する負荷の一方の端子との間に介装され、その順方向が電源電流の通流方向と一致するツェナーダイオードとを備えている。また、通常時における電力消費の低減とバッテリ逆接続時の大電流の発生を防止させる技術がある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示の保護回路でも、負荷に並列に、ダイオードとツェナーダイオードの直列体が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−47287号公報
【特許文献1】特開2010−11598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両では、エンジン始動などにより電源電圧Vbattが著しく低下することがある。一般には逆流防止ダイオードD11、D21の順方向電圧が大きいため、そのような場合、リレー回路RLYに印加される電圧が小さくなり、リレー回路RLYのオン動作を保持できなくなる虞があった。このリレー回路RLYがエンジン始動に関連する負荷に電力供給する機能である場合に、リレー回路RLYのオン動作を保持できないと、エンジンを始動させることができなくなってしまうという課題があった。一方で、逆流防止ダイオードD11、D21を順方向電圧の小さなショットキーダイオードに置き換えることも想定できるが、逆電圧に弱いことから、電源電圧Vbattに発生するマイナスサージ(例えば−100V)にて、ショットキーダイオードが破壊されてしまうおそれがあり、別の技術が求められていた。また、特許文献1及び2の技術では、上記の課題を解決することができず、やはり別の技術が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリレー装置は、バッテリに接続されるリレー回路と、前記リレー回路を駆動する為に直列に接続される駆動回路と、ショットキーダイオードと電圧抑制素子とを備え、前記リレー回路及び前記駆動回路と直列に接続される保護回路と、を備え、前記ショットキーダイオードと前記電圧抑制素子とは、順方向を同方向として並列に接続された並列体である。
前記ショットキーダイオードの逆電圧特性は、前記バッテリが逆に接続された場合の電圧である逆電圧の大きさより大きく、前記電圧抑制素子の抑制電圧は、前記逆電圧の大きさより大きく、かつ、前記ショットキーダイオードの逆電圧特性より小さくてもよい。
また、前記電圧抑制素子は、ツェナーダイオードであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリ逆接続でのリレー動作防止を実現する技術を提供することができる。また、リレー回路の駆動電流経路の電圧降下を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来技術に係る、リレー装置の回路構成を示す図である。
【図2】従来技術に係る、リレー装置の回路構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る、リレー装置の回路構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る、リレー装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、逆流防止ダイオードの代わりに、ショットキーダイオードと電圧抑制素子の並列体が配置された構成が採用されている。
【0012】
まず、車両に搭載されるリレー装置として達成することが要求される仕様(1)〜(4)について説明する。
(1)保護回路を付加する場合には、リレー回路の駆動電流経路の電圧降下を極力抑制する。
(2)バッテリ逆接続(−14V)により、リレー回路が動作しない。
(3)電源電圧に発生するマイナスサージ(−100V)にて、部品破壊が発生しない。
(4)リレー回路のオンからオフへ移行する動作時に、リレー回路中のコイルに発生するコイルサージによって部品破壊が発生しない。
【0013】
上記の仕様(1)を満足するために、逆流防止ダイオードとして順方向電圧の小さいショットキーダイオードが配置される。また、仕様(2)を満足するために、ショットキーダイオードの逆電圧特性は、14V以上とする。また、ショットキーダイオードは、逆電圧性能が小さく上記仕様(3)を満足できないので、ショットキーダイオードを保護する部品として、電圧抑制素子がショットキーダイオードと並列かつ同方向に接続される。また、電圧抑制素子の抑制電圧は、バッテリ逆接続電圧(14V)より大きくかつショットキーダイオードの逆電圧性能より小さく設定される。なお、ショットキーダイオードの逆電圧特性(14V)や、バッテリ逆接続電圧(14V)、マイナスサージ(−100V)等の値は例示であって、当然に車両仕様によって異なる値となることは当業者にとって理解されるところである。
【0014】
電圧抑制素子として、例えば、ツェナーダイオードやバリスタ、サージアブソーバがある。なお、リレー駆動回路にトランジスタが備わる場合には、そのトランジスタの保護を兼ねるツェナーダイオードが好適である。以下、第1及び第2の実施形態にて、具体的な回路構成について説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態に係るリレー装置100の回路構成を示す図である。このリレー装置100は、図1のリレー装置1の逆流防止ダイオードD11を逆流防止回路150に代替し、さらに駆動回路を具体的に示したものである。
【0016】
図示のように、リレー装置100では、電源電圧VbattからグランドGNDに向けて、逆流防止回路150、リレー駆動回路110及びリレー回路RLYが直列に配置されている。なお、バッテリが適正に接続されている場合には、電源電圧Vbattは+14Vであり、誤って逆接続された場合に、−14Vとなる。
【0017】
逆流防止回路150は、ショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とを備えている。ショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とは並列に接続されており、順方向が同じである。ここでの順方向は、電源電圧VbattからグランドGNDへ向けた方向である。つまり、ショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とからなる並列体の上流側(アノード側)が電源電圧Vbattに接続され、下流側(カソード側)がリレー駆動回路110に接続されている。
【0018】
リレー駆動回路110は、所定の制御装置の出力端子(CPU_Output)から出力される駆動制御信号によって駆動する。具体的な構成として、リレー駆動回路110は、PNP型の第1のトランジスタQ101と、NPN型の第2のトランジスタQ102と、ツェナーダイオードZD102と、第1〜第4の抵抗R101〜R104を備えている。
【0019】
第1のトランジスタQ101のエミッタが逆流防止回路150に接続され、コレクタはリレー回路RLYに接続されている。さらに、第1のトランジスタQ101のエミッタ−コレクタ間には、ツェナーダイオードZD102が接続されている。ここでは、ツェナーダイオードZD102のアノードがコレクタに接続されている。また、第1のトランジスタQ101のエミッタ−ベース間には、第1の抵抗R101が接続されている。
【0020】
さらに、第1のトランジスタQ101のベースには、第2の抵抗R102を介して第2のトランジスタQ102のコレクタが接続されている。第2のトランジスタQ102のエミッタはグランドGNDに接続されている。そして、ベースは、第3の抵抗R103を介して制御装置の出力端子(CPU_Output)に接続されている。また、ベース−エミッタ間には第4の抵抗R104が接続されている。
【0021】
以上、第1の本実施形態によると、逆流防止回路150のショットキーダイオードD101とツェナーダイオードZD101とが上述の仕様(1)〜(4)を満足するように設定されている。その結果、バッテリ逆接続された場合に、つまり、電源電圧Vbattが例えば−14Vとなった場合に、適切に動作防止を図ることができる。また、電源電圧Vbattにマイナスサージが重畳された場合でも、リレー駆動回路110等の部品破壊等を防止することできる。また、電源電圧VbattからグランドGNDまでのリレー回路の駆動電流経路における電圧降下を最小限に抑制することができる。
【0022】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係るリレー装置200の回路構成を示す図である。本実施形態は、図2のリレー装置2の逆流防止ダイオードD21を逆流防止回路250に代替し、さらに駆動回路を具体的に示したものである。
【0023】
図示のように、リレー装置200では、電源電圧VbattからグランドGNDに向けて、逆流防止回路250、リレー回路RLY及びリレー駆動回路220が直列に配置されている。
【0024】
逆流防止回路250は、第1の実施形態の逆流防止回路150と同様の構成であって、ショットキーダイオードD201とツェナーダイオードZD201とが並列に接続された並列体となっている。
【0025】
リレー駆動回路220は、所定の制御装置の出力端子(CPU_Output)から出力される駆動制御信号によって駆動する。具体的な構成として、リレー駆動回路220は、NPN型の第1のトランジスタQ201と、ツェナーダイオードZD202と、第1及び第2の抵抗R201、R202を備えている。
【0026】
第1のトランジスタQ201のコレクタがリレー回路RLYの下流側に接続され、エミッタがグランドGNDに接続されている。また、コレクタ−エミッタ(グランドGND)間には、ツェナーダイオードZD202が接続されている。ここではアノードがグランドGNDに接続されている。また、第1のトランジスタQ201のベースには、第1の抵抗R201を介して、制御装置の出力端子(CPU_Output)が接続される。また、第1のトランジスタQ201のエミッタ−ベース間には、第2の抵抗R202が接続されている。
【0027】
以上、第2の本実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0028】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、逆流防止回路150、250は、電源電圧Vbattに上流側が接続される構成を有していたがこれに限る趣旨ではなく、駆動電流経路中において適宜配置変更されてもよい。具体的には、リレー回路RLYとグランドGNDとの間や、リレー回路RLYとリレー駆動回路110、220との間に、逆流防止回路150、250が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0029】
100、200 リレー装置
110、220 リレー駆動回路
150、250 逆流防止回路
RLY リレー回路
Q101、Q201 第1のトランジスタ
Q102 第2のトランジスタ
D101、D201 ショットキーダイオード
ZD101、ZD102、ZD201、ZD202 ツェナーダイオード
Vbatt 電源電圧
GND グランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続されるリレー回路と、
前記リレー回路を駆動する為に直列に接続される駆動回路と、
ショットキーダイオードと電圧抑制素子とを備え、前記リレー回路及び前記駆動回路と直列に接続される保護回路と、
を備え、
前記ショットキーダイオードと前記電圧抑制素子とは、順方向を同方向として並列に接続された並列体である
ことを特徴とするリレー装置。
【請求項2】
前記ショットキーダイオードの逆電圧特性は、前記バッテリが逆に接続された場合の電圧である逆電圧の大きさより大きく、
前記電圧抑制素子の抑制電圧は、前記逆電圧の大きさより大きく、かつ、前記ショットキーダイオードの逆電圧特性より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のリレー装置。
【請求項3】
前記電圧抑制素子は、ツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1または2に記載のリレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115794(P2013−115794A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263223(P2011−263223)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】