説明

ルテニウム触媒の存在におけるヒドロシリル化法

本発明は、ルテニウム触媒が、少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有し、その際、これら配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含有する群から選択することを特徴とする、ルテニウム化合物触媒の存在におけるヒドロキシル化法、このようなルテニウム−化合物のヒドロシリル化触媒としての使用及びこのようなルテニウム−化合物を含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属触媒作用によるヒドロシリル化におけるルテニウム触媒の新規使用又は触媒としての中性ルテニウム錯体の存在におけるヒドロシリル化法に関するが、その際、これはルテニウムに少なくとも2個の炭素−π−結合の不飽和配位子を有する。
【0002】
Si−H−官能性化合物の脂肪族不飽和結合、特にC=C−二重結合を有する化合物への付加(ヒドロシリル化)は既に以前から公知である。
【0003】
ヒドロシリル化を経てSi−含有の有機化合物、オルガノシラン及びオルガノポリシロキサンを製造することができる。これは特にシリコーン工業で、例えばエラストマー、歯科工業の型取り材料又は製紙−及びフィルム工業で付着防止塗膜を製造するために、オルガノポリシロキサンの付加架橋性硬化で使用される。
【0004】
ヒドロシリル化反応用の触媒として極めて頻繁に白金及びその化合物が使用されるが、その際、白金は、金属形で又は無機担体に固着させた金属として或いは白金塩として又は場合により可溶性白金錯体の形で使用される。
【0005】
これまで工業的に実施されてきた大部分のヒドロシリル化反応用には、US3715334及びUS3775452から公知のいわゆる"カーステット触媒"が使用されるが、これは主として式[Pt(TMDVS)](TMDVS=テトラメチル−ジビニル−ジシロキサン)により表される二量体の白金−テトラメチル−ジビニル−シロキサン−錯体から成る。カーステット触媒は、ヘキサクロロ白金酸HPtClから出発して製造されるが、この酸もアルコール溶液として同じくヒドロシリル化触媒としてしばしば使用される。
【0006】
白金は極めて高価な貴金属の一つであるので、ヒドロシリル化で触媒としてその他の金属及びその化合物を使用することが幾度となく試みられてきた。例えば公知技術から既にその他の白金群金属、Pd、Rh、Ir、Ru、をヒドロシリル化で使用することが公知である。しかしこれらは特に特別な支持体で使用するための触媒としてのPtの代用品として記載されている。
【0007】
例えばUS2004/0092759A1並びにUS5559264には、HSi(R)(OR)3−x(x=0−2)をオレフィン性ハロゲン化物、例えば塩化アリルを用いてヒドロシリル化するために、Ru−触媒、例えばRuCl、RuBr、Ru(acac)、Ru/C、Ru(CO)12、[RuCl(CO)、[Ru(COD)Cl(COD=1,5−シクロオクタジエン)、Ru(PPh(CO)Cl及びRu(PPh(CO)Hが記載されている。
【0008】
EP0403706には、少なくとも1個の第三ホスフィン配位子を有するRu錯体、例えばRu(CO)(PPh、RuCl(PPh、Ru(H)(Cl)(PPh、Ru(PPh及びRu(CH=CH)(PPhをSiH−官能性シランを用いるアリルアミンのヒドロシリル化用の触媒として使用することが記載されている。
【0009】
US5248802には、トリクロロシランをオレフィン性ニトリル、例えばアクリロニトリルを用いてRu−ハロゲン−又はRu−ホスフィン−化合物、例えばRuCl、RuBr、RuI、Ru(CO)(PPh、RuCl(PPh、Ru(H)(Cl)(PPh、RuH(PPh、Ru(CH=CH)(PPh及びRuCl(CO)(PPhの存在でヒドロシリル化することが記載されている。
【0010】
最後にDE2810032A1には、ジクロロシランをオレフィンを用いてRu−錯体、例えばRuCl(PPh、Ru(H)(Cl)(PPh、RuH(PPh[Si(OMe)]、RuH(PPh[Si(OMe)Ph]及びRuH(PPhの存在でヒドロシリル化することが記載されている。
【0011】
しかし、遷移金属、例えばNi、Co又はFeを有するその他の化合物をヒドロシリル化用の触媒として使用することも既に記載されている。
【0012】
しかし通常これらの触媒は慣用のPt触媒より反応性及び選択性に関して著しく劣っており、特にヒドロシリル化反応を経由するポリシロキサンの架橋用にはこれまでヒドロシリル化用に記載されている非Pt触媒の速度及び選択性は大抵不十分である。これらの系は経済的観点からも多くの場合必ずしも有利というわけではない。それは非白金触媒の場合にはより高い触媒濃度を使用することが必要であり、ロジウムの場合には白金より更に高い費用を覚悟せねばならないからである。
【0013】
従って本発明の課題は、代わりとなるヒドロキシル化触媒を提供することであった。特に課題は、経済的観点からも、反応性及び選択性に関しても、従来の公知技術に記載の非白金ヒドロシリル化触媒より優れており、従って公知技術から公知のPt触媒の代わりとなる触媒を提供することであった。
【0014】
意外にも、この課題を特定の種類の中性ルテニウム錯体化合物によって解決することができることを見出した。
【0015】
本発明の目的は、少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有するルテニウム化合物のヒドロキシル化触媒としての使用であり、その際、これら配位子の少なくとも1個はη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含有する群から選択する。
【0016】
その際、η−結合トリエン配位子とは、その二重結合と中心Ru原子を有するπ−錯体を形成する、共役又は非共役−有利には共役−トリオレフィンである。
【0017】
この種のルテニウム化合物は既に公知技術から公知であり、触媒としてのその使用も記載されているが、ヒドロシリル化触媒としてのその使用はこれまでまだ報告されていない。例えばHoriその他は、Bull.Chem.Soc.Jpn.(1988)、61、3011頁以降で、この種のルテニウム化合物を触媒としてオレフィンをSiH−官能性シランと反応させてビニル−又はアリル−シランを製造するために並びにオレフィン水素添加用に使用することができると報告しているが、ヒドロシリル化触媒としてのその使用に関しては記載してない。従って、本発明により使用可能な化合物が、特に支持体として酸素置換Si化合物、有利には酸素置換Si−H−官能性及び/又は酸素置換Si−ビニル−官能性化合物、例えばSi−H−又はSi−ビニル−官能性アルコキシシラン及び/又はSi−H−又はSi−ビニル−官能性シロキサン−化合物と結合して、極めて特に有利にはポリシロキサンの架橋で有効なヒドロシリル化触媒であると実証されたことは極めて意外である。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、ルテニウム触媒の存在におけるヒドロシリル化するための方法(ヒドロシリル化法)であり、これはルテニウム触媒が少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有し、その際、これら配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含有する群から選択することを特徴とする。
【0019】
ヒドロシリル化用に新規に使用するルテニウム−オレフィン−錯体の群から成る触媒の特徴は、その配位子圏が少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合(オレフィン性)、不飽和配位子をルテニウムに有し、その中少なくとも1個がη−結合アレーン−又はトリエン配位子又はη−結合1,5−シクロオクタジエン−又は1,3,5−シクロオクタトリエン配位子であることである。
【0020】
ルテニウム中心は、これらの錯体中で原則としてルテニウム−有機金属−錯体用に慣用の全ての酸化段階、特に酸化段階0、+II、+III、+IVで存在してよい。ルテニウムの酸化段階0及び+IIを有する錯体が有利である。
【0021】
ルテニウム(Ru)−化合物は通常18−電子−錯体として存在し、化合物は大抵中性である。
【0022】
π−結合配位子中で通常少なくとも1個が、ヒドロシリル化触媒サイクルをこれらの配位子又はその配位位置の一つの排除下で迅速に開始させることができ、それによって大抵の場合に非常に短い誘導期しか存在しないように不安定に結合している。1個又は数個のその他のπ−結合配位子は、場合により電子不飽和Ruフラグメントの安定化に役立ち、特に使用された支持体との良好な相溶性に関して、特に溶解性及び混合性の観点に関して選択又は最適化することができる。
【0023】
本発明による化合物の触媒としてのヒドロシリル化における使用は、白金不含であるにも拘らず非常に活性な触媒であることによって特に優れている。その際下記の利点を強調することができる:・同時に中程度の必要な触媒濃度における高い活性。・化合物は通常ヒドロシリル化されるポリシロキサンに完全に又は少なくとも部分的に混入可能である。・ポリシロキサンの架橋が塊状並びに薄層で可能である。・通常室温でも既に高い触媒活性。
【0024】
本発明によるRu錯体の合成は、当業者に原則的に公知であり、これらの種類の化合物の代表例は記載されている(例えばScience of Synthesis、2001、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、第1巻、931−972頁)。
【0025】
本発明による触媒の態様は、(a)η−結合アレーン−又はトリエン配位子及び少なくとも1個のその他の炭素−π−結合配位子を有するRu(0)−錯体;(b)η−結合1,5−シクロオクタジエン−又は1,3,5−シクロオクタトリエン配位子及び少なくとも1個のその他の炭素−π−結合配位子を有するRu(0)−錯体を含む群から選択することができる。
【0026】
η−結合アレーン−又はトリエン配位子及び少なくとも1個のその他の炭素−π−結合配位子を有するRu(0)−錯体の種類で、可能な態様は下記の種類から選択することができる:・一般式(1)の化合物
【化1】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;OR’(その際、R’も水素(H)、アルキル及びアリールを含む群から選択する);COR’’(R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、隣り合う2個の基RからRは場合によりもう一つの環を形成することができ、例えばナフチル基を形成することができるという条件であり、RからR14は、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR10及びR11からR14から成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、合わせて多樹状、非環状又は環状の配位子を形成するという条件であり、例えば1,3−シクロヘキサジエン又は1,5−シクロオクタジエン]。
【0027】
一般式(1)の化合物の具体的な態様は下記である:
【化2】

【0028】
【化3】

・一般式(2)の化合物
【化4】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO;C(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル、アリール及びNRを含む群から選択するが、その際、Rも水素(H)及びアルキルから選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR及びRからRから成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、合わせて多樹状、非環状又は環状の配位子を形成するという条件であり、例えば1,5−シクロオクタジエン又はノルボルナジエンであり、x=1及びy=2(シクロヘプタトリエンに相応);x=2及びy=2(シクロオクタテトラエンに相応);及びx=2及びy=4(シクロオクタトリエンに相応)であってよい]。
【0029】
一般式(2)の化合物の具体的態様は下記である:
【化5】

【0030】
【化6】

・一般式(3)の化合物
【化7】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択し、Lは、PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールから選択する);NRH(その際、Rも水素(H)、アルキル及びアルキルアリールから選択する);モルホリン及びピリジンから選択する]。
【0031】
一般式(3)の化合物の具体的な態様は下記である:
【化8】

【0032】
η−結合1,5−シクロオクタジエン−又は1,3,5−シクロオクタトリエン配位子及び少なくとも1個のその他の炭素−π−結合配位子を有するRu(0)−錯体の種類で可能な態様は下記の種類から選択することができる:
・一般式(4)の化合物
【化9】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR及びRからRから成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、従って合わせて多樹状、非環状又は環状の配位子を形成するという条件であり、例えば1,3,5−シクロオクタトリエンであり、Lは、CO;CNR’’’(その際R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);N−供与体を含む配位子、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、ピリジン;S−供与体を含む配位子、例えばジメチルスルホキシド;O−供与体を含む配位子、例えばテトラヒドロフランを含む群から選択する]。
【0033】
一般式(4)の化合物の具体的な態様は下記である:
【化10】

・一般式(5)の化合物
【化11】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択し、L及びLは、相互に無関係に、CO;CNR’’’(その際R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);N−供与体を含む配位子、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、ピリジン;S−供与体を含む配位子、例えばジメチルスルホキシド;O−供与体を含む配位子、例えばテトラヒドロフランを含む群から選択するが、その際、L及びLは場合により相互に結合していてもよく、環を形成することもできる]。
【0034】
一般式(5)の化合物の具体的な態様は下記である:
【化12】

・一般式(6)
【化13】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリールを含む群から選択し、一般式(6)中の破線は1個以上の共役又は非共役二重結合を表し、nは0、2又は3を表し、Xは、特にハロゲン化物及び酢酸塩を含む群から選択した、任意の一価の陰イオン配位子を表す]。
【0035】
一般式(6)の化合物の具体的な態様は下記である:
【化14】

・一般式(7)の化合物
【化15】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H)及びアルキルを含む群から選択する]。
【0036】
一般式(7)の化合物の具体的態様は下記である:
【化16】

【0037】
本発明による触媒、特に一般式(1)から(7)のようなもの及びその具体的な態様は一般に、反応する支持体の全質量に対して10〜1000ppm、有利には50〜500ppmのRu含量を生じる量で使用する。
【0038】
本発明による触媒の使用下におけるヒドロシリル化反応は、一般に室温、特に20℃と200℃の間の温度、有利には50〜120℃の温度及び圧力900〜1100hPaで行う。しかしこれより高いか又は低い温度及び圧力を使用することもできる。
【0039】
ポリシロキサンの架橋で、触媒を反応前にビニル官能性ポリシロキサン中でできる限り良好に均質化することが有利である。これは、外部手段によって、例えば超音波浴中で超音波処理によって行うか又は本発明によるRu触媒を好適な、有利には低沸点の、特に100℃より下で沸騰する有機溶剤、例えばジクロロメタン又はテトラヒドロフラン中に溶解させ、ついでビニル官能性ポリシロキサン中に混入し、ついで溶剤を真空中で溜去することによって行うことができる。
【0040】
非常に僅かな量の比較的高い温度で沸騰する、特に100℃以上で沸騰する、有機溶剤、例えばトルエン又はシロキサン、例えばオクタメチル−シクロテトラシロキサン(D4)、も好適であり、これは引き続き架橋すべき混合物中に残留する。
【0041】
ヒドロシリル化反応は空気中又は不活性雰囲気(窒素、アルゴン)下で実施することができるが、不活性雰囲気下での反応が有利である。
【0042】
本発明による方法又は本発明によるルテニウム触媒の使用は、通常公知技術から当業者に公知であり、例えばWalter Noll"Chemie und Technologie der Silicone"、Verlag Chemie GmbH、Weinheim/Bergstr.1968;Bogdan Marciniec、"Comprehensive Handbook on Hydrosilylation"、Oxford:Pergamon Press、1992に記載されている全てのヒドロシリル化反応で行うことができ、通常公知技術から公知のヒドロシリル化可能な、特に架橋性組成物中で使用することができる。
【0043】
本発明による触媒の使用又は本発明による方法は、低分子化合物の合成用にも好適であり、高分子化合物、特に不飽和基、特に炭素−炭素−二重結合を有するポリマーの硬化用にも好適である。
【0044】
特にC=C−官能性ポリシロキサンをSiH−官能性ポリシロキサンと又はC=C−官能性オルガノシロキサンをSiH−官能性オルガノシロキサンと反応させるようなヒドロシリル化反応で触媒作用が行われる。
【0045】
特にビニル−末端ポリジメチルシロキサンと一般式MeSiO−[Si(H)(Me)O]x−SiMe(式中、xは1〜500の数、特に1〜100の数を表す)の反応並びにSi−ビニル−官能性オルガノシランとSi−H−官能性オルガノシランの反応が有利である。
【0046】
本発明による方法により又は本発明による触媒の使用下でヒドロシリル化することができる、Si−ビニル−官能性オルガノシランの具体的な例としては、ビニルトリメチル−シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−メチル−ジエトキシシラン、ビニル−メチル−ジメトキシシラン、ビニルトリクロロシランが挙げられる。
【0047】
SiH−官能性オルガノシランの具体的な例としては、HSi(OR’)(式中、R’はアルキル基を表す)、HSi(Me)3−xCl(式中、xは1〜3の数を表す)及びHSiOR’’(式中、R’’はアルキル又はアリール基を表す)が挙げられる。
【0048】
本発明は、更に(A)少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素−結合を有する化合物、(B)少なくとも1個の珪素−水素−結合を有する化合物及び(D)配位子圏が少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合(不飽和)配位子を有し、その際これらの配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含む群から選択することを特徴とするルテニウム化合物を含むヒドロシリル化可能な組成物に関する。
【0049】
ヒドロシリル化可能な組成物の有利な態様の一つでは、これは(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン、(B)Si−結合の水素原子を有するポリオルガノシロキサン又は(A)及び(B)の代わりに(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC−結合基及びSi−結合の水素原子を有するポリオルガノシロキサン及び(D)配位子圏が少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合(不飽和)配位子を有し、その際これらの配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含む群から選択することを特徴とする、ルテニウム化合物を含むポリオルガノシロキサン材料である。
【0050】
その際、成分(D)のルテニウム化合物は各々ヒドロキシル化触媒(ルテニウム触媒)として作用する。有利には一般式(1)から(7)の化合物、特に1種以上の前記の具体的態様を使用する。
【0051】
その際、ヒドロシリル化可能な組成物は特に架橋性組成物を意味する。
【0052】
ヒドロシリル化可能な組成物で記載した成分(A)、(B)又は(C)は本発明による方法で反応させる化合物(反応成分)である。本発明による組成物も本発明による方法及び使用も自体本発明によるルチウム触媒に基礎をおく。
【0053】
本発明によるヒドロキシル化法は、エネルギー供給、特に熱供給によって行う。同じことが本発明によりヒドロシリル化可能な組成物にも当てはまる。
【0054】
有利には本発明によるヒドロシリル化可能な組成物は、ビニル官能性オルガノシラン及びビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む群から選択する、少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を有する化合物及びSiH−官能性ポリシロキサン及びSi−H−官能性オルガノシランを含む群から選択する、少なくとも1個の珪素−水素−結合を有する化合物を含有する。
【0055】
本発明は、前記の本発明によるヒドロシリル化可能な組成物、特に前記ポリオルガノシロキサン材料の架橋によって得られるシリコーンエラストマーにも関する。
【0056】
本発明は、前記の本発明によるヒドロシリル化可能な組成物、特に前記ポリオルガノシロキサン組成物の架橋によって得られる、塗膜、特に、例えば分離紙、はぎ取り紙及び中間差込み紙を製造するための、粘着防止塗膜にも関する。
【0057】
本発明は、例えば歯科用型、接着剤、レリースライナー、平面パッキング、充填剤及び塗膜に使用可能である、本発明による方法を用いて製造したポリシロキサン−又はオルガノシラン−組成物にも関する。
【0058】
本発明による材料中に使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は公知のようにして、架橋が可能であるように選択する。例えば化合物(A)は少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも3個のSi−結合の水素原子を有するか又は化合物(A)は少なくとも3個の脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも2個のSi−結合水素原子を有するか又は化合物(A)及び(B)の代わりに前記した比で脂肪族不飽和基及びSi−結合の水素原子を有するシロキサン(C)を有する。
【0059】
本発明により使用される化合物(A)は、有利には少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する珪素不含の有機化合物並びに有利には少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する有機珪素化合物であってよい。本発明による材料中で成分(A)として使用することができる有機化合物の例は、1,3,5−トリビニル−シクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロ−ペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチルーヘプタジエン−(1,5)、3−フェニルーヘキサジエン−(1,5)、3−ビニルーヘキサジエン−(1,5)及び4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、N,N’−メチレン−ビス−(アクリル酸アミド)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリメタクリレート、トリプロピレングリコール−ジアクリレート、ジアリルエーテル、ジ−アリルアミン、炭酸ジアリル、N,N’−ジアリル尿素、トリアリル−アミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ−(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0060】
しかしながら有利には本発明によるシリコーン材料は、成分(A)として脂肪族不飽和有機珪素化合物を含有し、その際、従来付加架橋性材料中で使用された全ての脂肪族不飽和有機珪素化合物、例えば尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステル−アミド−セグメント及び/又はポリスチレン−セグメント及び/又はシラリール−セグメント及び/又はカルボラン−セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー及びエーテル基を有するシリコーン−グラフトコポリマーを使用することができる。
【0061】
脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC−結合基を有する有機珪素化合物(A)としては有利には、平均一般式(X)
SiO(4−a−b)/2 式(X)
[式中、Rは、同一又は異なるものであってよく、脂肪族炭素−炭素−多重結合不含の、有機基を表し、Rは、同一又は異なるものであってよく、脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する、一価の、場合により置換された、SiC−結合の炭化水素基を表し、aは0、1、2又は3であり、bは0、1又は2であるが、その際、合計a+bは3以下であり、分子当たり平均して少なくとも2個の基Rが存在する]の単位から成る線状又は枝分かれオルガノポリシロキサンを使用する。
【0062】
一般式(X)中で基Rは、一価以上の基であってよく、その際、多価基、例えば二価、三価及び四価の基、従って一般式(X)のシロキシ単位数個、例えば2個、3個又は4個が相互に結合している。
【0063】
Rは特には、一価の基−F、−Cl、−Br、−OR、−CN、−SCN、−NCO及びSiC−結合の、場合により置換された炭化水素基(酸素原子又は基−C(O)−で遮断されていてよい)並びに二価の、両側で一般式(X)によりSi−結合した基を含む。その際、Rは水素又は一価の、場合により置換された炭素原子1〜20個を有する炭化水素基、有利には水素、アルキル基及びアリール基を表す。
【0064】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソ−プロピル−、1−n−ブチル、2−n−ブチル−、イソ−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、イソ−ペンチル−、ネオ−ペンチル−、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソ−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル−、シクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル−、5−ヘキセニル−、7−オクテニル−、シクロヘキセニル−及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基である。
【0065】
ハロゲン化基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基である。
【0066】
有利にはRは、水素、アルキル基及びアリール基であるが、その際水素、メチル−及びエチル基が特に有利である。
【0067】
基RがSiC−結合の置換された炭化水素基である場合には、置換基としてハロゲン原子、燐含有基、シアノ基、−OR、−NR−、−NR、−NR−C(O)−NR、C(O)−NR、−C(O)−NR、−C(O)OR、−SO−Ph及び−C(その際、Rは前記したものを表し、Phはフェニル基である)が有利である。
【0068】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソープロピルー、n−ブチル−、イソ−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、イソーペンチルー、ネオ−ペンチル−、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソ−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル−及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル−、ナフチル−、アンスリール−及びフェナンスリール基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0069】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基、−(CH−N(OR)C(O)NR、−(CH−C(O)NR、−(CH−C(O)R、−(CH−C(O)OR、−(CH−C(O)NR、−(CH−C(O)−(CH−C(O)CH、−(CH−NR−−(CH−NR、−(CH−O−CO−R、−(CH−O−(CH−CH(OH)−CHOH、−(CH−(OCHCH−OR、−(CH−SO−Ph及び−(CH−O−C(その際、Rはこれに関して前記したものを表し、n及びmは同一又は異なる0〜10の整数であり、Phはフェニル基を表す)である。
【0070】
二価の両側で一般式(X)によりSi結合した基であるRの例は、基Rに関して前記した一価の例から、水素原子の置換によって付加的な結合を行うことによって誘導されるようなものである。このような基の例は、−(CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−CH−、−C−、−CH(Ph)−CH−、−C(CF−、−(CH−C−(CH−、−(CH−C−C−(CH−、−(CHO)−、−(CHCHO)−、−(CH−O−C−SO−C−O−(CH−(その際、xは0又は1であり、m及びnは前記したものを表し、Phはフェニル基である)である。
【0071】
有利には基Rは、一価の、脂肪族炭素−炭素−多重結合不含の、SiC−結合の、場合により置換された炭素原子1〜18個を有する炭化水素基であり、特に有利には一価の、脂肪族炭素−炭素−多重結合不含の、SiC−結合の、炭素原子1〜6個を有する炭化水素基、特にメチル−又はフェニル基である。
【0072】
基Rは、SiH−官能性化合物を用いる付加反応(ヒドロシリル化)に使用される任意の基である。
【0073】
基Rが、SiC−結合の、置換された炭化水素基である場合には、置換基としてハロゲン原子、シアノ基及び−OR(その際、Rは前記したものを表す)が有利である。
【0074】
有利には基Rは、炭素原子2〜16個を有するアルケニル−及びアルキニル基、例えばビニル−、アリル−、メタリル−、1−プロペニル−、5−ヘキセニル−、エチニル−、ブタジエニル−、ヘキサジエニル−、シクロペンテニル−、シクロペンタジエニル−、シクロヘキセニル−、ビニルシクロヘキシルエチル−、ジビニルシクロヘキシルエチル−、ノルボルネニル−、ビニルフェニル−及びスチリル基であり、その際、ビニル−、アリル−及びヘキセニル基が特に有利に使用される。
【0075】
成分(A)の分子量は広い範囲で、例えば10〜10g/モルの間で変化してよい。従って成分(A)は例えば比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサンであるが、しかし、例えば分子量10g/モル(NMRを用いて測定した数平均)を有する、鎖位又は末端位にSi−結合のビニル基を有する高分子ポリジメチルシロキサンでもある。成分(A)を形成する分子の構造も確定的なものでなく;特に高分子の、従ってオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は線状、環状、枝分かれ又は樹枝状であっても、網状であってもよい。線状及び環状ポリシロキサンは有利には式RSiO1/2、RSiO1/2、RRSiO2/2及びRSiO2/2の単位から成り、その際R及びRは前記したものを表す。枝分かれ及び網状ポリシロキサンは、付加的に三官能性及び/又は四官能性単位を含有し、その際式RSiO3/2、RSiO3/2及びSiO4/2のようなものが有利である。もちろん、成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0076】
成分(A)として四官能性の、実質的に線状の、各々25℃で0.01〜500000Pa・s、特に有利には0.1〜100000Pa・sの粘度を有するポリジオルガノシロキサンの使用が特に有利である。
【0077】
有機珪素化合物(B)として、これまで付加架橋性材料中で使用されてきた全ての水素官能性有機珪素化合物を使用することができる。Si−結合の水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)として、有利には平均一般式(XI)
SiO(4−c−d)/2 式(XI)
[式中、Rは同一又は異なるものであってよく、前記したものを表し、cは0、1、2又は3であり、dは0、1又は2であり、その際、合計c+dは3以下であり、分子当たり平均2個のSi−結合の水素原子が存在する]の単位から成る線状、環状又は枝分かれオルガノポリシロキサンを使用する。
【0078】
有利には本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)はオルガノポリシロキサン(B)の全質量に対して0.04〜1.7質量%の範囲のSi−結合の水素を含有する。
【0079】
成分(B)の分子量も広い範囲で、例えば10〜10g/モルの間で変化してよい。従って成分(B)は例えば比較的低分子量のSiH−官能性オリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであるが、しかし、鎖位又は末端位にSiH−基を有する高分子ポリジメチルシロキサン又はSiH−基を有するシリコーン樹脂でもある。成分(B)を形成する分子の構造も確定的なものでなく;特に高分子の、従ってオリゴマー又はポリマーのSiH−含有シロキサンの構造は、線状、環状、枝分かれ又は樹枝状であっても、網状であってもよい。線状及び環状ポリシロキサンは、有利には式RSiO1/2、HRSiO1/2、HRSiO2/2及びRSiO2/2の単位から成り、その際Rは前記したものを表す。枝分かれ及び網状ポリシロキサンは、付加的に三官能性及び/又は四官能性単位を含有し、その際式RSiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のようなものが有利である。もちろん、成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することもできる。特に成分(B)を形成する分子は必須のSiH−基に付加的に場合により同時に脂肪族不飽和基を含有してもよい。低分子SiH−官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチル−シロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン並びに25℃で粘度10〜10000mPa・sを有する高分子、SiH−含有シロキサン、例えばポリ(ヒドロゲンメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロゲンメチル)シロキサン又はメチル基の一部が3,3,3−トリフルオロプロピル−またはフェニル基により置換されている同じようなSiH−含有化合物の使用が特に有利である。
【0080】
成分(B)は有利には、SiH−基対脂肪族不飽和基のモル比が0.1〜20、特に有利には1.0〜5.0であるような量で本発明による架橋性シリコーン材料中に含有される。
【0081】
本発明により使用される成分(A)及び(B)は市販製品であるか又は化学で慣用の方法により製造可能である。
【0082】
成分(A)及び(B)の代わりに本発明による材料は、脂肪族炭素−炭素−多重結合及びSi−結合の水素原子を有するオルガノポリシロキサン(C)を含有することができる。
【0083】
シロキサン(C)を使用する場合には、有利には式RSiO4−g/2、RSiO3−h/2及びRHSiO3−i/2[式中、R及びRは前記したものを表し、gは0、1、2又は3であり、hは0、1又は2であり、iは0、1又は2であるが、その際分子当たり少なくとも2個の基R及び少なくとも2個のSi−結合の水素原子が存在するという条件である]の単位から成るようなものである。
【0084】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SiO4/2−、RSiO1/2−、RSiO1/2−及びRHSiO1/2−単位から成るようなもの、いわゆるMQ−樹脂(その際、この樹脂は付加的にRSiO3/2−及びRSiO−単位を含有することができる)並びに主としてRSiO1/2−、RSiO−及びRHSiO−単位(式中、R及びRは前記したものを表す)から成る線状オルガノポリシロキサンである。
【0085】
オルガノポリシロキサン(C)は有利には、各々25℃で平均粘度0.01〜500000Pa・s、特に有利には0.1〜100000Pa・sを有する。オルガノポリシロキサン(C)は化学で慣用の方法により製造可能である。
【0086】
成分(A)から(D)の他に本発明による硬化性組成物はなお、付加架橋性材料の製造用にこれまで使用されてきたその他の全ての物質を含有することができる。
【0087】
成分(E)として本発明による材料中で使用することができる強化充填剤の例は、少なくとも50m/gのBET表面積を有する熱分解法又は沈降珪酸並びにカーボンブラック及び活性炭素、例えばファーネスブラック及びアセチレン−ブラックであり、その際少なくとも50m/gのBET表面積を有する熱分解法又は沈降珪酸が有利である。
【0088】
前記珪酸充填剤は親水性特性を有していてよく又は公知方法により疎水性化されていてもよい。親水性充填剤の混入の場合には疎水化剤の添加が必要である。
【0089】
本発明による架橋性材料の活性強化充填剤(E)の含量は、0〜70質量%、有利には0〜50質量%である。
【0090】
本発明による組成物、特にポリオルガノシロキサン材料は、場合により成分(F)としてその他の添加物を70質量%までの割合、有利には0.0001〜40質量%含有することができる。これらの添加物は例えば不活性充填剤、シロキサン(A)、(B)及び(C)とは異なる樹脂状ポリオルガノシロキサン、分散助剤、溶剤、定着剤、顔料、色料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤などであってよい。これには添加物、例えば石英粉末、珪藻土、粘土、白亜、リトポン、カーボンブラック、石墨、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、炭酸の金属塩、金属粉、繊維、例えばガラス繊維、人造繊維、プラスチック粉末、色料、顔料などが挙げられる。
【0091】
本発明による組成物、特にオルガノポリシロキサン材料の製造は、公知方法により例えば個々の成分の均質な混合によって行うことができる。その際、順序は任意であるが、本発明によるルテニウム触媒(D)と(A)及び(B)又は(C)、場合により(E)及び(F)から成る混合物との均質な混合が有利である。その際本発明により使用されるルテニウム触媒(D)は固体として又はいわゆるバッチとして−少量の(A)又は(A)と(E)と均質に混合して−加えることができる。その際、混合は(A)の粘度に応じて例えば攪拌機、溶解機、ローラ又は混練機で行う。
【0092】
次に本発明による方法及び本発明による組成物の本発明による使用を詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0093】
実施例
例1:3−ビニルヘプタメチルトリシロキサンを用いるHMeSiO−[SiMeO]−SiMeH(x≒13)(H−ポリマー13)のヒドロシリル化
H−ポリマー13 3.8g(約4ミリモル)及び3−ビニルヘプタメチルトリシロキサン1.99g(8ミリモル)から成る混合物に相応する量のRu−触媒(Ru300ppm)を加え、120℃でアルゴン雰囲気下で攪拌する。ヒドロシリル化反応の分析(変換率、選択性、収率)はH−NMRにより行う。
【0094】
【表1】

記号説明:COD=1,5−シクロオクタジエン;COT=1,3,5−シクロオクタトリエン;dmfm=ジメチルフマレート;(η−C)=1,3−シクロヘキサジエン;Cp=ペンタメチルシクロペンタジエニル;TMDVS=テトラメチル−ジビニルジシロキサン
【0095】
例2:120℃でSiH−官能性ポリシロキサンを用いるα,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサンの架橋
α,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサン、粘度η=500mPa・s(Wacker−interner Name VIPO 500)10gにRu−触媒(バッチの全質量に対してRu300ppm)を加え、丸底フラスコ中で超音波処理下で強力に混合し、式MeSiO−[Si(H)Me−O]48−SiMeのSiH−官能性ポリシロキサン(Wacker−interner Name Vernetzer V24)250mgを加え、もう一度強力に混合する。
【0096】
バッチを前もって温度調整した油浴中で120℃及び500r.p.mでアルゴン下で攪拌する。ゲル化過程が進んで"磁気攪拌機フィッシュ(Magnetruehrfisch)"でもはや十分な攪拌ができなくなるまでの時間を測定する。
【0097】
【表2】

記号説明:COD=1,5−シクロオクタジエン;COT=1,3,5−シクロオクタトリエン;(η−C)=1,3−シクロヘキサジエン;Cp=ペンタメチルシクロペンタジエニル;TMDVS=テトラメチル−ジビニルジシロキサン
【0098】
例3:室温(約20℃)でSiH−官能性ポリシロキサンを用いるα,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサンの架橋
例2からのバッチをアルゴン下室温(約20℃)で放置し、系がもはや流動性でなくなるまでの時間("ポットライフ")を測定する。
【0099】
【表3】

記号説明:COD=1,5−シクロオクタジエン;COT=1,3,5−シクロオクタトリエン;(η−C)=1,3−シクロヘキサジエン
【0100】
例4:薄層中120℃でSiH−官能性ポリシロキサンを用いるα,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサンの架橋
例2からのバッチをワイヤドクター(60μ)を用いてガラススライドガラス上に層として塗布し、ヒートベンチ上で120℃で焼き戻す。架橋の品質をスミア−又はラブオフ試験により測定するが、これは一定時間後に実施し、その際下記の基準により点数をつける:6:液状系、5:架橋した区域を有する液状系、4:1回の指擦過後に破壊される架橋層、3:2〜4回の指擦過後に破壊される架橋層、2:>4回の指擦過後に破壊される架橋層、1:指擦過によってもはや破壊することができない架橋層
【表4】

【0101】
例5:溶剤添加下における薄層中120℃でSiH−官能性ポリシロキサンを用いるα,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサンの架橋
α,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサン、粘度η=500mPa・s(Wacker−interner Name VIPO 500)10gに有機溶剤中のRu−触媒(バッチの全質量に対してRu300ppm)の溶液を加え、強力に混合する。引き続き均質な混合物を真空中で10−2バールで15分間攪拌し、常圧で式MeSiO−[Si(H)Me−O]48−SiMeのSiH−官能性ポリシロキサン(Wacker−interner Name Vernetzer V24)250mgを加え、もう一度強力に混合する。
【0102】
例4と同様にして、バッチをワイヤドクター(60μ)を用いてガラススライドガラス上に層として塗布し、ヒートベンチ上で120℃で焼き戻す。
【0103】
架橋の品質を一定時間後にスミア−又はラブオフ試験により測定するが、その際例4に記載の基準により点数をつける:
【表5】

記号説明:COD=1,5−シクロオクタジエン;COT=1,3,5−シクロオクタトリエン;THF=テトラヒドロフラン;(η−C)=1,3−シクロヘキサジエン
例5から、溶剤の助けによる均質化が層形成に関して有利である(例4の溶剤なしの相応する例を参照にされたい)ことが明らかである。
【0104】
例6:Ru50ppmを有する触媒としてRu(η−COD)(η−COT)の使用下における薄層中120℃でSiH−官能性ポリシロキサンを用いるα,ω−ジビニル−ポリジメチルシロキサンの架橋
例4と同様にしてRu50ppmを有する触媒としてRu(η−COD)(η−COT)の使用下で行う。
【0105】
【表6】

記号説明:COD=1,5−シクロオクタジエン;COT=1,3,5−シクロオクタトリエン
例6から、Ru(η−COD)(η−COT)を用いて既にRu50ppmで架橋層を製造することができることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム触媒の存在におけるヒドロキシル化法において、該ルテニウム触媒が、少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有し、その際、これら配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含有する群から選択することを特徴とする方法。
【請求項2】
ルテニウム触媒が、一般式(1)
【化1】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;OR’(その際、R’も水素(H)、アルキル及びアリールを含む群から選択する);COR’’(R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、隣り合う2個の基RからRは場合によりもう一つの環を形成することができ、RからR14は、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR10及びR11からR14から成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、合わせて1個の多樹状、非環状又は環状配位子を形成するという条件である]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ルテニウム触媒が、一般式(2)
【化2】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO;C(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル、アリール及びNRを含む群から選択するが、その際、Rも水素(H)及びアルキルから選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR及びRからRから成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、合わせて1個の多樹状、非環状又は環状配位子を形成するという条件であり、x=1及びy=2;x=2及びy=2;及びx=2及びy=4であってよい]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ルテニウム触媒が、一般式(3)
【化3】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO;C(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択し、Lは、PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールから選択する);NRH(その際、Rも水素(H)、アルキル及びアルキルアリールから選択する);モルホリン及びピリジンを含む群から選択する]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ルテニウム触媒が、一般式(4)
【化4】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択するが、その際、RからR及びRからRから成る場合による基−付加的にスペーサーを有するか又はそれなしの−は、相互に結合していてよく、従って合わせて1個の多樹状、非環状又は環状配位子を形成するという条件であり、例えば1,3,5−シクロオクタトリエンであり、Lは、CO;CNR’’’(その際R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);N−供与体を含む配位子;S−供与体を含む配位子;O−供与体を含む配位子を含む群から選択する]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ルテニウム触媒が、一般式(5)
【化5】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリール;ハロゲン;シリル;シロキシ;CN;COR’’(その際、R’’も水素(H)及びアルキルを含む群から選択する);CHO及びC(O)R’’’(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する)を含む群から選択し、L及びLは、相互に無関係に、CO;CNR’’’(その際R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);PR’’’及びP(OR’’’)(その際、R’’’もアルキル及びアリールを含む群から選択する);N−供与体を含む配位子;S−供与体を含む配位子;O−供与体を含む配位子を含む群から選択するが、その際、L及びLは場合により相互に結合していてもよく、環を形成することもできる]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ルテニウム触媒が、一般式(6)
【化6】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H);アルキル;アリールを含む群から選択し、一般式(6)中の破線は1個以上の共役又は非共役二重結合を表し、nは0、2又は3を表し、Xは、任意の一価の陰イオン配位子を表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ルテニウム触媒が、一般式(7)
【化7】

[式中、RからRは、相互に無関係に、水素(H)及びアルキルを含む群から選択する]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有し、その際、これら配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含有する群から選択する、ルテニウム化合物のヒドロシリル化触媒としての使用。
【請求項10】
請求項2から8に記載のルテニウム化合物を使用することを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
(A)少なくとも1個の脂肪族不飽和炭素−炭素−結合を有する化合物、(B)少なくとも1個のSi−水素−結合を有する化合物及び(D)配位子圏が少なくとも2個の無関係な炭素−π−結合配位子を有し、その際これらの配位子の少なくとも1個をη−結合アレーン配位子、η−結合トリエン配位子、η−結合1,5−シクロオクタジエン配位子及びη−結合1,3,5−シクロオクタトリエン配位子を含む群から選択することを特徴とするルテニウム化合物を含む、ヒドロシリル化可能な組成物。
【請求項12】
成分(D)中のルテニウム化合物として請求項2から8に記載の化合物を使用することを特徴とする、請求項11に記載のヒドロシリル化可能な組成物。
【請求項13】
請求項11及び12に記載のヒドロシリル化可能な組成物の架橋により得られるシリコーンエラストマー。
【請求項14】
請求項11及び12に記載のヒドロシリル化可能な組成物の架橋により得られる塗膜。

【公表番号】特表2009−533503(P2009−533503A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504678(P2009−504678)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052964
【国際公開番号】WO2007/118773
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】