説明

レジストレーション誤差測定装置及び方法

【課題】画像形成装置のレジストレーション誤差の補正において、出力サンプルを読み取ったスキャナの色収差等による色ずれの影響を低減する。
【解決手段】二次元方向に濃淡が変化する各色材の評価画像データ12を評価対象のカラーの画像形成装置30に出力させ、その出力サンプル40を画像入力装置13によって読み取ることで各色材の読取画像を得る。レジストレーション誤差量演算部14は、これら各読取画像を周波数空間に展開し、その位相スペクトル同士の相関から二次元のレジストレーション誤差量を算出する(位相限定相関法)。このときレジストレーション誤差量演算部14は、センサ間色ずれ量記憶部15に登録された画像入力装置13の各カラーセンサ間の色ずれ量を受け取り、位相相関限定法で求めたレジストレーション誤差をこの色ずれ量で補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタなどのカラー画像形成装置の、各色材の画像間の相対的なずれであるレジストレーション誤差の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー複写機やカラープリンタなどのカラー画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、サイアン(C)、ブラック(K)等3色以上の単色の画像を重ねあわせることによってカラー画像を形成する。
【0003】
この重ね合わせの位置精度による各色材の画像の用紙上のずれをレジストレーション誤差とよび、レジストレーション誤差の発生によって、線画像の色づきや色境界での色変わり白抜けなどが発生し、画質低下の原因となる。
【0004】
このような、レジストレーション誤差を評価測定する技術として、特許文献1に記載されている「画像評価装置」では、相対位置関係が既知である各色線画像を出力し、走査型濃度計などを用いて各線画像の濃度分布を測定し、その濃度分布から各線画像の中心線を求め、その中心線の位置情報によって各色の位置ずれを検出している。
【0005】
しかしこの先行技術では、各線画像の濃度分布を測定する際に、測定する線幅よりも十分に高い解像度で読み取る必要があるため、高い解像度の得られる測定機を用意しなくてはならない。また1次元方向のレジストレーション誤差量のみしか算出できないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されている「レジストレーション誤差検出方法」では、所定の線幅を持つ線分とその線幅に等しい間隙とを交互に発生させ、その検出用パターンの第1の色と第2の色とのレジずれ量を、位相差と検出用パターンの波長とから算出する。
【0007】
しかしこの先行技術では、1次元方向のレジストレーション誤差量のみしか算出できない。また、入力パターン一周期以上のずれを測定することができないという問題点もあった。
【0008】
また、安価で比較的低解像度なカラー画像入力装置(例えばスキャナ)では、RGBの各色用のセンサで同じ画像を読み取った場合でも、光学系の色収差やスキャン速度の変動等に起因して、それら各色用センサの読取画像の間に位置ずれ(「色ずれ」と呼ばれる)が発生する。したがって、レジストレーション誤差の測定を行うのに、そのような比較的性能の低いカラー画像入力装置で出力サンプルを読み取ると、高い測定精度を得ることができない。このため、従来、カラー画像形成装置の色材間のレジストレーション誤差の測定には高精度の画像入力装置を使用していたが、簡便な測定を可能にするためには、比較的性能の低い画像入力装置が利用できることが望ましい。
【0009】
ここで、光学系の色収差の影響を除去するための一つの方法としては、白黒の画像入力センサ又はもしくはカラー画像入力センサのうちのグリーン(G)用のセンサの信号のみを使って画像入力を行うことも考えられる。しかし、この方法では、サンプル原稿のイエロー(Y)画像のコントラストが低下して測定精度が低下してしまう。
【0010】
【特許文献1】特開平6-261156号公報
【特許文献2】特開2002-139880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の一つの側面では、カラー画像形成装置の各色材間のレジストレーション誤差の測定に当たり、比較的性能の低い画像入力装置でサンプルを読み取った場合でも精度よく測定できるようにする。本発明の別の側面では、二次元の各方向についてのレジストレーション誤差を精度よく測定できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する装置であって、前記画像入力装置が備える各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量を保持するセンサ間ずれ量保持手段と、前記カラー画像形成装置が出力した各色材の出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像の比較に基づき、前記カラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を計算する手段であって、該計算において前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて各読取色の読取画像間のずれ成分を補正する誤差計算手段と、を備える。
【0013】
本発明の好適な態様では、前記各色材の出力サンプルは、各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより生成されるものであり、前記誤差計算手段は、前記各色材についての前記二次元濃淡パターンを示した前記出力サンプルを前記画像入力装置で読み取ることで得られた読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間での一次レジストレーション誤差を計算する一次誤差計算手段と、前記各色材間の一次レジストレーション誤差に含まれる各読取色の読取画像間のずれ成分を、前記前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて補正する補正手段と、を備える。
【0014】
更に好適な態様では、前記二次元濃淡パターンは、二次元の各軸方向に沿って濃淡がランダムに変化するパターンである。
【0015】
また更に好適な態様では、前記各色材の出力サンプルは、各色材で同一の二次元濃淡パターンに加え、各色材の二次元濃淡パターンごとにその基準位置をそれら各色材から選択された基準色材で示す基準位置画像を含んだ評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより生成されるものであり、前記補正手段は、前記各色材の二次元濃淡パターンに対応する前記基準位置画像同士の位置ずれを求め、この位置ずれを用いて前記各色材間の一次レジストレーション誤差に含まれる各読取色の読取画像間のずれ成分を更に補正する。
【0016】
本発明の別の好適な態様では、二次元濃淡パターンを印刷した同一のサンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサで読み取ることで得られた読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量を計算し、この計算結果を前記センサ間ずれ量保持手段に保持させる手段、を更に備える。
【0017】
更に別の好適な態様では、レジストレーション誤差測定装置は、前記誤差計算手段が求めた各色材画像間のレジストレーション誤差に基づき、前記カラー画像形成装置の画像書込タイミングの補正量を計算し、この計算結果を前記カラー画像形成装置に設定する手段、を更に備える。
【0018】
また、本発明に係る装置は、画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する装置であって、各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより出力サンプルを生成させる手段と、該出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間でのレジストレーション誤差を計算する誤差計算手段と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一つの側面によれば、レジストレーション誤差測定のための出力サンプルを読み取る画像入力装置の各読取色用カラーセンサ間の色ずれを示すずれ量を用いて補正を行うので、色収差等が比較的大きい画像入力装置を用いた場合でも精度よくレジストレーション誤差を測定することができる。また、別の側面によれば、各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す出力サンプルの読取結果の間で位相限定相関法によりレジストレーション誤差を計算するので、一方向だけでなく、二方向についてのレジストレーション誤差を高い精度で測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」と呼ぶ)について説明する。
【0021】
図1に、本実施形態のレジストレーション誤差測定装置10のブロック図を示す。図に示すように、レジストレーション誤差測定装置10は、評価画像データ保持部11,画像入力装置13,レジストレーション誤差量演算部14,及びセンサ間色ずれ量記憶部15を備える。このうち、画像入力装置13を除く各部は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムに、以下で説明するそれら各部の機能・処理を既述したプログラムを実行させることにより実現される。
【0022】
評価画像データ保持部11には、レジストレーション誤差を検出するための評価画像データ12が記憶されている。レジストレーション誤差測定装置10の制御部は、レジストレーション誤差の測定又は補正が指示された場合、評価画像データ保持部11が保持する評価画像データ12を、レジストレーション誤差測定対象である画像形成装置30に転送し、評価用のサンプル画像(出力サンプル40)を出力させる。画像形成装置30は、複写機や複合機、プリンタなどのように、画像データを紙等の媒体に出力する装置であり、フルカラー出力が可能な装置である。フルカラー出力は、典型的には、C,M,Y,Kの4つの色材(例えばトナー)の画像を重畳することで実現される。例えば、C,M,Y,K各色の感光体ドラムを用紙搬送路に沿って直列配列したタンデム型の電子写真方式のプリンタがその一例である。
【0023】
オペレータは、画像形成装置30が出力した出力サンプル40をスキャナ等の画像入力装置13にセットし、読取を行わせる。このとき、レジストレーション誤差測定装置10は、コンピュータシステムに付属する表示装置に、「対象プリンタが出力した出力サンプルをスキャナにセットして、測定開始ボタンを押してください」などという、操作内容を案内するメッセージを表示してもよい。測定開始が指示されると、レジストレーション誤差測定装置10は、画像入力装置13に読取開始を指示する。これにより、画像入力装置13は、出力サンプル40を光学的に読み取り、二次元のカラー画像データをレジストレーション誤差測定装置10に対して提供する。この二次元カラー画像データは、レジストレーション誤差量演算部14に供給される。
【0024】
なお、画像入力装置13は、フルカラーの光学的な画像読取装置であり、RGBなどの各読取色のカラーセンサの組を備えている。
【0025】
レジストレーション誤差量演算部14は、二次元カラー画像データを周波数空間に変換し、位相限定相関法により各色材間のレジストレーション誤差量を算出する。
【0026】
センサ間色ずれ量記憶部15は、画像入力装置13の光学系の色収差や、センサ等を移動させるための機械的機構の移動精度によって生じる各読取色のカラーセンサー間の色ずれ量を記憶している。レジストレーション誤差量演算部14は、位相限定相関法により求めたレジストレーション誤差量(一次レジストレーション誤差と呼ぶ)をカラーセンサ間の色ずれ量の情報を用いて補正する機能を備える。
【0027】
補正量演算部50は、レジストレーション誤差量演算部14によって算出された各色材間のレジストレーション誤差量を打ち消すように、画像形成装置30における画像形成処理のパラメータの補正量を算出する。算出した補正量は、レジストレーション誤差測定装置10の表示装置に表示し、オペレータがそれを見て画像形成装置30のパラメータを補正できるようにしたり、或いはその補正量を直接画像形成装置30に送信してパラメータの補正を行ったりする。
【0028】
以上、レジストレーション誤差測定装置10の構成を説明したので、次に、レジストレーション誤差の測定処理の詳細な例について述べる。
【0029】
図2A及び図2Bは、評価画像データ12が示す評価画像パターンの例を示す模式図である。いずれの例でも、評価画像データ12の評価画像パターンは、レジストレーション評価用パターン100と、当該画像パターンの基準位置を示す基準位置パターン102A又は102Bとを含んでいる。レジストレーション評価用パターン100は、二次元方向にそれぞれ濃淡が変化する単色の濃度変化パターンである。濃淡の変化は、縦横の両方向について様々な周波数成分を含むことが望ましい。好適には各画素の濃度値をランダムに決めた濃淡パターンを用いる。図示した画像パターン例は、画像形成装置30が用いる複数の色材(例えばCMYK)のうちの1つの色についてのものであり、評価画像データ12は、それら複数の色材のそれぞれについて図2A又は図2Bに示したようなレジストレーション評価用パターン100を備える。各色材用のレジストレーション評価用パターン100は、同じ二次元濃淡パターンのものである(すなわち濃度値の分布が共通)。
【0030】
これに対し、基準位置パターン102A及び102Bは、画像形成装置30が用いる色材のうちから選んだ基準色材で形成されるパターンである。すなわち、各色材用のレジストレーション評価用パターン100に対し、同じ基準色材の基準位置パターン102A及び102Bが配置される。基準色材としては、画像入力装置13の全ての読み取り色のカラーセンサで高いコントラストで読み取れるよう、K(ブラック)を用いることが好適である。基準位置パターン102A又は102Bは、各色材のレジストレーション評価用パターン100同士をいわば位置合わせするときの基準位置を示すものである。例えば、図2Aの基準位置パターン102Aは、レジストレーション評価用パターン100の矩形外周を平行に取り囲む矩形線画であり、図2Bの基準位置パターン102Bはレジストレーション評価用パターン100の矩形外周の四隅の点を示す4つのマークである。
【0031】
評価画像データ12は、各色材ごとに、図2A又は図2Bに示したレジストレーション評価用パターン100と基準位置パターン102A又は102Bとからなる評価画像パターンを含んだものとなる。これら各色材ごとの画像パターンは、好適には1ページの画像中に配列されるが、各色材の画像パターンを別々のページにしてもよい。
【0032】
次にレジストレーション誤差量演算部14における計算処理について説明する。図3はレジストレーション誤差量の計算処理の手順を示すフローチャートである。
【0033】
この手順では、あらかじめ、レジストレーション誤差算出の基準となる色を決定しておく。画像のコントラストが高い色のパターンを基準とすることが好ましく、本実施形態ではブラック色(K)を基準とする。
【0034】
画像入力装置13から出力サンプル40のスキャン画像を受け取ったレジストレーション誤差量演算部14は、スキャン画像から各色材K,C,M,Yの評価画像パターンごとにおおよその画像切り出しを行い(S1及びS2)、各色材の評価画像パターンに対して、切り出し位置誤差を算出する(S3及びS4)。このときの各色材の評価画像パターンは、画像入力装置13の各読取色のカラーセンサのうち、評価画像パターンの色材の色の補色となる読取色のカラーセンサから得られた画像から切り出す。具体的には、イエロー(Y)の色材に対しては画像入力装置13のブルー(B)チャンネルの画像を、マゼンダ(M)の色材に対してはグリーン(G)チャンネルの画像を、サイアン(C)の色材に対してはレッド(R)チャンネルの画像を用いる。このようにすることで、各色材の評価画像パターンを高いコントラストで得ることができる。各色材の評価画像パターンの切り出しでは、スキャン画像のうち、既知であるそれら各色材の評価画像パターンの存在場所をそれぞれ内包する領域を切り出せばよい。
【0035】
切り出し位置誤差の算出では、まず、切り出した各色材の画像領域からそれぞれ基準位置パターン102A又は102Bを検出する(S3)。そして、各色材の切り出し領域の基準位置パターンに基づき、各色材の評価画像パターンの切り出し誤差(Δcrop(x,y)、Δcrop(x,y)、Δcrop(x,y))を算出する。Δcrop(x,y)は基準色(K)に対するC色の切り出し誤差量、Δcrop(x,y)は基準色(K)に対するM色の切り出し誤差量、Δcrop(x,y)は基準色(K)に対するY色の切り出し誤差量である。
【0036】
この切り出し誤差量の計算では、各色材の評価画像パターン中の基準位置パターンのみを用いる。レジストレーション評価用パターン100が切り出し誤差測定にとってはノイズとなるからである。基準位置パターンのみを抽出するため、各色材の切り出し領域の画像のうち、レジストレーション評価用パターン100の領域を、画像の白部平均画素値に変換するなどの手法で消去する。レジストレーション評価用パターン100の領域は、読み取りの誤差等により多少はずれるが、大体決まった位置にあるので、その既知のレジストレーション評価用パターン100の領域より少し広めの領域を白部平均画素値に置換することで、レジストレーション評価用パターン100を消すことができる。白部平均画素値は、スキャン画像のうちの白の部分(最低濃度近傍の部分)の平均画素値であり、これは公知手法で求めることができる。
【0037】
次に、このようにして基準位置パターンのみとなった基準色(K)の評価画像データと、比較対象である他色C,M,Yの評価画像データとの間で、位相限定相関法による演算(演算内容は後述)を行うことで、各色C,M,Yの基準位置パターンの、基準色(K)の基準位置パターンに対する位置ずれ量を計算する。この位置ずれ量が切り出し誤差である(S4)。切り出し誤差は、xyの二次元空間でのベクトル量として求められる。
【0038】
次にレジストレーション誤差量演算部14は、レジストレーション誤差量の前提となる各色材の色ずれ量(一次レジストレーション誤差)を算出する(S5及びS6)。ここでは、基準色(K)に対する各色C,M,Yのレジストレーション評価用パターン100の位置ずれ量(ΔC(x,y), ΔM(x,y), ΔY(x、y))を求める。
【0039】
このずれ量の算出では、各色材の評価画像パターン中のレジストレーション評価用パターン100のみを用いる。このため、ノイズとなる基準位置パターンの領域を、画像の白部平均画素値に変換するなどにより消去する(S5)。
【0040】
次に、このようにしてレジストレーション評価用パターンのみとなった基準色(K)の評価画像データと、比較対象である他色C,M,Yの評価画像データとの間で、位相限定相関法による演算(演算内容は後述)を行うことで、各色C,M,Yのレジストレーション評価用パターンの、基準色(K)のレジストレーション評価用パターンに対する位置ずれ量を計算する。この位置ずれ量が一次レジストレーション誤差である(S6)。
【0041】
この、切り出し誤差と一次レジストレーション誤差の算出の処理を、C,M,Yの各色材について繰り返し行うことで(S7)、基準色(K)に対するC,M,Y各色材の一次レジストレーション誤差(ΔC(x,y), ΔM(x,y), ΔY(x、y))と切り出し誤差(Δcrop(x,y)、Δcrop(x,y)、Δcrop(x,y))が求められる。
【0042】
以上に説明した切り出し誤差の計算(S3,S4)と一次レジストレーション誤差の計算(S5,S6)は、どのような順序で実行してもよい。
【0043】
次に、レジストレーション誤差量演算部14は、求められた切り出し誤差及び一次レジストレーション誤差と、センサ間色ずれ量保持部15に記憶された各カラーセンサ間の読み取りの色ずれ量(ΔIITGR(x,y)、ΔIITGB(x,y))とを用いて、最終的なレジストレーション誤差(Regi(x,y)、Regi(x,y)、Regi(x,y))を算出する(S8)。カラーセンサ間の色ずれ量(ΔIITGR(x,y)、ΔIITGB(x,y))は、G色のカラーセンサを基準とし、これに対するR,B各色のカラーセンサの読み取り位置のずれを示している。
【0044】
レジストレーション誤差量の計算は次式で表すことができる。
【0045】
【数1】

【0046】
すなわちレジストレーション誤差は、位相限定相関法で求めた一次レジストレーション誤差から、切り出し誤差及びセンサ間の色ずれ量を減算することで計算される。この計算は、xyの二次元空間におけるベクトルの減算である。
【0047】
ここで減算するセンサ間の色ずれ量は、着目する色材の評価画像パターンを読み取ったカラーセンサの読取色に対応するものである。例えば、色材Cの基準色材Kに対するレジストレーション誤差Regi(x,y)は、CのKに対する一次レジストレーション誤差ΔC(x,y)から、CのKに対する切り出し誤差Δcrop(x,y)と、C色画像の読み取りに用いたR色のカラーセンサの基準色Gのセンサに対する色ずれとを減算したものとなる。M色については、これを読み取るカラーセンサの色Gがセンサの基準色なので、センサ間の色ずれ量は考慮しなくてよい。
【0048】
次に、この計算式に必要となる位相限定相関法による一次レジストレーション誤差の求め方の詳細について説明する。位相限定相関は、比較する二つの画像をそれぞれ二次元フーリエ空間に展開し、それぞれの画像の位相スペクトル情報同士の相関係数を求める方法であり、二つのフーリエ画像をスペクトルごとに規格化してから合成(乗算)し、逆フーリエ変換を行うことで実現できる。つまり、次式で求めることができる。
【0049】
【数2】

POC(x,y):位相限定相関法による二次元相関係数画像
ρ:二次元フーリエ変換
ρ−1:二次元フーリエ逆変換
A(x,y),B(x,y) :比較する2つの画像
【0050】
この計算では、二次元フーリエ画像の各画素の値を当該画素の値の絶対値で除する(すなわち規格化する)ことで、振幅成分を打ち消して位相成分のみが残るようにし、2つのフーリエ画像の位相成分同士を乗算することで両者の相関を求めている。そして、この乗算結果をフーリエ逆変換することで、元の画像の二次元空間における相関係数の分布CPOC(x,y)が求められる。
【0051】
この計算で求まった二次元画像CPOC(x,y)のピーク位置(原点から見たピークの位置ベクトル)が、比較した2つの画像A(x,y),B(x,y)の相対的な位置ずれ量を表し、ピークの高さが二つの画像の類似度を表す。本実施形態では、比較する2つの画像A(x,y),B(x,y)は、色材は異なるが同じ濃淡分布を示すレジストレーション評価用パターンなので、両者に位置ずれがなければ、CPOC(x,y)には二次元画像空間の原点に鋭いピークが1つ現れるだけである。位置ずれがあれば、そのピークが原点からずれ、そのずれのベクトルが一次レジストレーション誤差となる。
【0052】
このように位相限定相関法を用いて画像のずれ量を算出する利点として、検出されるピークが鋭いので、ノイズがあっても、ピーク位置をより正確に求めることができるという点がある。またこの方法は、画像の明るさの変化や、画像のぼけに対してロバストであるという利点もある。
【0053】
次に、センサ間色ずれ量記憶部15に記憶される各色のカラーセンサ間の色ずれ量(ΔIITGR(x,y)、ΔIITGB(x,y))の求め方を説明する。ここでも、位相相関法を利用する。
【0054】
この色ずれ量の算出に用いる評価画像は、前述のレジストレーション評価用パターン100と同様の二次元濃淡パターンである。カラーセンサ間の色ずれを求めるには、同じ評価画像を各読取色のカラーセンサでそれぞれ読み取らせ、その読み取り結果のずれを求める。このため、評価画像としては、すべての読取色のカラーセンサで良好なコントラストが得られるような画像が好ましい。したがって、無彩色に近く、かつ画像のコントラストが高い色であるブラック色(K)のパターンを用いる。
【0055】
K色の評価画像パターンを、画像入力装置13のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各カラーセンサで読み取ったR,G,Bの各読取画像を、R,G,Bそれぞれで周波数空間に展開し、先に述べた位相限定相関法によって2つの画像のずれを算出する。本実施形態ではG色センサによる読取画像を基準とし、これに対するR色及びB色の読取画像のずれ量ΔIITGR(x,y)、ΔIITGB(x,y)として求める。
【0056】
このような手法により、利用する画像入力装置13の各読取色間の色ずれ量を求めることができる。
【0057】
ただし、これは一例であり、このほかの方法で求められた色ずれ量をセンサ間色ずれ量記憶部15に登録してももちろんよい。
【0058】
以上、画像形成装置30の各色材間のレジストレーション誤差(Regi(x,y)、Regi(x,y)、Regi(x,y))を求める処理について説明した。
【0059】
このようにしてレジストレーション誤差が求められると、これを用いて画像形成装置30の色材間のレジストレーション誤差を補正することができる。レジストレーション誤差を補正するための画像形成装置の動作パラメータの補正には、従来より知られる様々な方法を用いることができる。以下では、その一例を説明する。
【0060】
これまでに求められたレジストレーション誤差に対する補正は、画像形成装置30の露光装置(レーザー又はLED)の書き込みの方向(主走査方向)をX軸、画像形成プロセスの進行方向(用紙の搬送方向。すなわち副走査方向)をY軸として、Y軸のレジストレーション誤差の補正には、各色材ユニットの画像形成プロセス開始のタイミングや、露光プロセス開始のタイミングを制御し、X軸のレジストレーション誤差の補正には露光プロセスのタイミングや露光装置の走査位相を制御する。
【0061】
このときの補正量は、求めた各色材の基準色に対するレジストレーション誤差と、プリンタのプロセススピードや露光装置の走査ピッチなどの装置情報から、従来公知の手法で計算できる。このようにして、例えば露光プロセスのタイミングの補正量が計算される。計算した補正量は、レジストレーション誤差測定装置10の表示画面に表示するか、あるいは画像形成装置30に送信して設定する。
【0062】
なお、計算した補正量が大きすぎて補正しきれないと判断された場合(例えば補正量が所定に閾値を超えた場合など)は、レジストレーション誤差測定装置10は表示画面に警告を表示する。このとき、部品の交換などの案内を表示することも好適である。
【0063】
以上に説明した実施形態では、レジストレーション誤差測定の対象である画像形成装置30はタンデム型の電子写真方式のプリンタとし、画像入力装置13はカラースキャナとしたが、これに限定されるものではない。画像形成装置30が複写機である場合、画像入力装置13として画像形成装置30付属のスキャナを用いることが可能であり、また、以上の実施形態では、画像入力装置13に対しオペレータが出力サンプル40をセットしたが、カラーCCDなどの読取装置を画像形成装置30内の印刷機構の後段に組み込んでもよい。この場合、画像形成装置30とレジストレーション誤差測定装置10とをネットワークや通信ケーブルを介して接続し、オンラインでレジストレーション誤差の測定および補正を行うことが可能となる。また、レジストレーション誤差測定装置10自体も、画像形成装置30に組み込むことができる。これには、例えば、画像形成装置30の備える制御・演算用のプロセッサに、上述のレジストレーション誤差測定装置10の各機能を記述したプログラムを実行させればよい。
【0064】
なお、レジストレーション誤差測定装置10の演算機能は、典型的にはプログラムの形で実現されるが、例えば位相限定相関演算などその演算の一部又は全部をハードウエア回路化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の構成を示すブロックダイアグラムである。
【図2A】評価用画像の例である。
【図2B】評価用画像の別の例である。
【図3】レジストレーション誤差量算出の処理の流れを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 レジストレーション誤差測定装置、11 評価画像データ保持部、12 評価画像データ、13 画像入力装置、14 レジストレーション誤差量演算部、15 センサ間色ずれ量記憶部、30 画像形成装置、40 出力サンプル、50 補正量演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する装置であって、
前記画像入力装置が備える各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量を保持するセンサ間ずれ量保持手段と、
前記カラー画像形成装置が出力した各色材の出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像の比較に基づき、前記カラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を計算する手段であって、該計算において前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて各読取色の読取画像間のずれ成分を補正する誤差計算手段と、
を備えるレジストレーション誤差測定装置。
【請求項2】
前記各色材の出力サンプルは、各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより生成されるものであり、
前記誤差計算手段は、
前記各色材についての前記二次元濃淡パターンを示した前記出力サンプルを前記画像入力装置で読み取ることで得られた読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間での一次レジストレーション誤差を計算する一次誤差計算手段と、
前記各色材間の一次レジストレーション誤差に含まれる各読取色の読取画像間のずれ成分を、前記前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて補正する補正手段と、
を備える請求項1記載のレジストレーション誤差測定装置。
【請求項3】
前記二次元濃淡パターンは、二次元の各軸方向に沿って濃淡がランダムに変化するパターンであることを特徴とする請求項2記載のレジストレーション誤差測定装置。
【請求項4】
前記各色材の出力サンプルは、各色材で同一の二次元濃淡パターンに加え、各色材の二次元濃淡パターンごとにその基準位置をそれら各色材から選択された基準色材で示す基準位置画像を含んだ評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより生成されるものであり、
前記補正手段は、前記各色材の二次元濃淡パターンに対応する前記基準位置画像同士の位置ずれを求め、この位置ずれを用いて前記各色材間の一次レジストレーション誤差に含まれる各読取色の読取画像間のずれ成分を更に補正する、
ことを特徴とする請求項2又は3記載のレジストレーション誤差測定装置。
【請求項5】
二次元濃淡パターンを印刷した同一のサンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサで読み取ることで得られた読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量を計算し、この計算結果を前記センサ間ずれ量保持手段に保持させる手段、を更に備える請求項1〜4のいずれか1項に記載のレジストレーション誤差測定装置。
【請求項6】
前記誤差計算手段が求めた各色材画像間のレジストレーション誤差に基づき、前記カラー画像形成装置の画像書込タイミングの補正量を計算し、この計算結果を前記カラー画像形成装置に設定する手段、を更に備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のレジストレーション誤差測定装置。
【請求項7】
画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する装置であって、
各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより出力サンプルを生成させる手段と、
該出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間でのレジストレーション誤差を計算する誤差計算手段と、
を備えるレジストレーション誤差測定装置。
【請求項8】
スキャナ部とプリント部を備えたカラー画像形成装置であって、
前記スキャナ部が備える各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量を保持するセンサ間ずれ量保持手段と、
前記プリント部が出力した各色材の出力サンプルを前記スキャン部の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像の比較に基づき、前記プリント部の各色材画像間のレジストレーション誤差を計算する手段であって、該計算において前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて各読取色の読取画像間のずれ成分を補正する誤差計算手段と、
を備えるカラー画像形成装置。
【請求項9】
画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する方法であって、
(a) 前記画像入力装置が備える各読取色用カラーセンサで同じ画像を読み取った場合の読取結果の読取色間のずれ量をセンサ間ずれ量保持手段に登録するステップと、
(b) 前記カラー画像形成装置が出力した各色材の出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせるステップと、
(c) この読取により得られた各読取色の読取画像の比較に基づき、前記カラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を計算するステップと、
を含み、前記ステップ(c)の計算においては、前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて各読取色の読取画像間のずれ成分を補正する、
ことを特徴とするレジストレーション誤差測定方法。
【請求項10】
前記各色材の出力サンプルは、各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより生成されるものであり、
前記ステップ(c)では、
前記各色材についての前記二次元濃淡パターンを示した前記出力サンプルを前記画像入力装置で読み取ることで得られた読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間での一次レジストレーション誤差を計算し、
前記各色材間の一次レジストレーション誤差に含まれる各読取色の読取画像間のずれ成分を、前記前記センサ間ずれ量保持手段が持つ前記読取色間のずれ量を用いて補正する、
ことを特徴とする請求項9記載のレジストレーション誤差測定方法。
【請求項11】
画像入力装置で読み取られた画像に基づきカラー画像形成装置の各色材画像間のレジストレーション誤差を測定する方法であって、
各色材で同一の二次元濃淡パターンを示す評価画像データを前記カラー画像形成装置に出力させることにより出力サンプルを生成させ、
該出力サンプルを前記画像入力装置の各読取色用カラーセンサに読み取らせることにより得られた各読取色の読取画像同士の間で位相限定相関法による演算を行うことにより、各色材画像間でのレジストレーション誤差を計算する、
レジストレーション誤差測定方法。

【図1】
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【図3】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2007−33550(P2007−33550A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213016(P2005−213016)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】