説明

レンズ交換式カメラの絞り制御装置

【課題】絞り駆動制御にステッピングモータを使用しても、ステッピングモータの駆動ステップ数により正確に絞り値を制御できるレンズ交換式カメラの絞り制御装置を得る。
【解決手段】装着された撮影レンズの絞り連動杆を移動させるスライド部材を備えたレンズ交換式カメラの絞り制御装置であって、前記スライド部材を開放側の原点位置から絞り込み位置方向にステップ駆動するステッピングモータを所定ステップ数絞り込み駆動するときは、スライド部材が原点位置から絞り込み方向の所定位置を越えたときを基準として前記所定ステップ数をカウントする制御手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ交換式カメラの絞り制御装置に係り、特にレンズ交換式の一眼レフカメラにおいて、露光中に撮影レンズの絞りをカメラボディ側で制御可能にした絞り制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ交換可能な一眼レフカメラの絞り機構は、交換レンズの絞り機構を駆動する絞り連動杆を、カメラボディ側の絞り制御機構の絞り制御杆によって移動させる機構であった。絞り制御機構がミラー駆動機構やシャッターチャージ機構のモータから動力を得ている場合、その機構の構成上、絞りを一方向のみにしか制御できなかった。例えば、開放絞りから絞り込み方向に駆動し、設定された絞り値になった段階でラチェットを掛けて係止するため、その後の調整はできなかった。
【0003】
かかる従来の絞り機構では、デジタル一眼レフカメラにおいて、撮像素子から得た画像情報をディスプレイにリアルタイムに表示するライブビューや動画撮影を行う場合、最初に設定した絞り値から絞り値を調整することができなかった。
【0004】
そこでライブビューを可能にするために、絞り制御機構の駆動源として絞りモータを使用して絞りを開閉方向に制御する発明を出願人は提案した(特許文献1)。この発明によれば、絞りをモータの回転によって駆動できるので、ライブビュー、動画撮影中に絞りを調整することが可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-197552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の撮影レンズ(交換レンズ)は、開放絞り値に応じて、絞り連動杆の開放基準位置が異なっている。そのためカメラボディに装着した際に、絞り連動杆がカメラボディ側の絞り制御杆を移動させる量が異なる。絞り制御機構の駆動源としてステッピングモータを使用した場合、撮影レンズをカメラボディに装着した際に絞り制御杆の移動に連動してステッピングモータが強制的に回転させられるが、その回転量が撮影レンズ毎に異なってしまう。そのため、ステッピングモータ(そのロータ)の停止位置が初期のディテント位置から回転してしまい、停止位置が不明になってしまう。さらに従来の撮影レンズは、絞り装置の機械誤差、組立誤差などにより、絞り連動杆の開放基準位置、つまりカメラボディに装着したときにカメラボディに対する絞り連動杆の停止位置に誤差を生じている場合もある。かかる場合も、この誤差によりステッピングモータの停止位置が基準となる原点位置からずれてしまうことがあった。
【0007】
絞りモータとして使用可能なステッピングモータは通常、複数の励磁パターンを順番に繰り返すことで一方向に1ステップ単位で回転駆動するタイプである。このようなステッピングモータにおいて停止位置と励磁パターンとが一致していない場合は、回転させようとした方向と逆方向に回転したり、回転しなかったりして、付与した励磁パターン数と実際に回転したステップ数とが一致せず、絞り値の制御誤差を発生してしまうという問題があった。特に、絞り制御値をステッピングモータの駆動ステップ数で設定する場合は、ステッピングモータを駆動したステップ数と、絞り制御杆の原点位置からの実際の移動量が異なってしまい、絞り値に誤差を生じてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は前記従来の課題に鑑みてなされたものであって、絞り連動杆を備えた撮影レンズを用いても露光中に連続的な絞り制御が可能な絞り制御装置において、絞り駆動制御にステッピングモータを使用しても、ステッピングモータの駆動ステップ数により正確に絞り値を制御できるレンズ交換式カメラの絞り制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明は、絞りを開閉駆動する絞り連動杆を有する絞り装置を備えた撮影レンズが着脱自在に装着されるカメラボディに設けられ、前記絞り連動杆を移動させるスライド部材を備えたレンズ交換式カメラの絞り制御装置であって、ステッピングモータ、このステッピングモータにより回転駆動されるリードスクリュー、及びこのリードスクリューの回転によって前記スライド部材を移動させる絞り制御機構と、前記スライド部材を、一方の移動端である初期位置方向に移動付勢し、前記撮影レンズがカメラボディに装着され、前記ステッピングモータが自由状態のときは、前記絞り連動杆によって絞り装置の初期位置に対応する原点位置まで前記スライド部材移動するのを、前記リードスクリュー及び前記ステッピングモータを回転させて許容する弾性付勢部材と、前記スライド部材の位置を検出する位置検出手段と、前記ステッピングモータを所定の複数の励磁パターンを繰り返してステップ駆動させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ステッピングモータを前記スライド部材を前記弾性部材の付勢力に抗して前記原点位置から離反する方向に所定ステップ数駆動するときは、前記ステッピングモータをステップ駆動する前の前記スライド部材の位置を原点位置として前記位置検出手段により検出し、その後ステップ駆動する毎に前記スライド部材の移動位置を前記位置検出手段により検出して前記原点位置と比較し、前記移動位置が前記原点位置よりも前記弾性部材の付勢力に抗して前記原点位置から離反する方向の所定位置を超えたときを基準として前記所定ステップ数をカウントすることに特徴を有する。
【0010】
実際的には、前記原点位置から離反する方向の所定位置は、前記ステッピングモータをステップ駆動したときに前記スライド部材が移動する1ステップ当たりの移動長よりも短い長さ前記原点位置から離反した位置である。好ましくは、1ステップ当たりの移動長の0.2乃至0.4倍とする。
【0011】
また、前記1ステップ当たりの移動長は、前記スライド部材を前記弾性付勢部材の付勢力に抗して原点位置から離反する方向にステップ移動させる途中、またはその後、原点位置に接近する方向にステップ移動させる途中に前記位置検出手段により求めた複数位置に基づいて前記制御手段が設定することが好ましい。
【0012】
前記スライド部材が前記所定位置を超えたときの前記ステッピングモータの励磁パターンに基づいて、前記原点位置に位置しているであろう前記スライド部材をステップ駆動する最初の初期励磁パターンを設定することが好ましい。
【0013】
前記位置検出手段は、磁石及びホールセンサーから構成できる。前記スライド部材は、前記リードスクリューと平行に配置されたスライド軸にスライド自在に支持されていて、前記磁石は、前記スライド部材の、前記リードスクリューとスライド軸の間の部分に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、前記構成により、スライド部材を所定ステップ数分移動させるときに、前記スライド部材が原点位置から所定位置を超える位置まで移動したときを基準として所定ステップ数をカウントするので、スライド部材を確実に正確に所定ステップ数分移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した一眼レフカメラのカメラボディの正面図である。
【図2】同カメラボディに着脱可能な、絞り連動杆を備えた撮影レンズの、(A)は背面図、(B)は側面図である。
【図3】前記撮影レンズをカメラボディに装着した状態の主要構成要素をブロックで示す図である。
【図4】同カメラボディ側の絞り制御装置の絞り制御機構及び撮影レンズ側の絞り装置の要部を開放状態で示す背面図である。
【図5】同絞り制御機構及び撮影レンズ側の絞り装置の要部の絞り込み状態の背面図である。
【図6】同絞り制御機構の要部の開放状態を、(A)は正面左側から見た斜視図、(B)は正面右側から見た斜視図である。
【図7】同絞り制御機構からスライドレバーを取り外した状態の要部を、(A)は正面左側から見た斜視図、(B)は正面右側から見た斜視図である。
【図8】同絞り制御機構に搭載されたホールセンサー及び永久磁石の実施形態を示す側面図である。
【図9】同絞り制御装置の原点位置初期化処理動作に関する全体動作のタイミングチャートを示す図である。
【図10】同絞り制御装置の原点位置初期化処理動作において、原点位置近傍まで戻ってきてからのより詳細な動作をタイミングチャートで示す図である。
【図11】同絞り制御装置の原点位置初期化処理に関する動作をフローチャートで示す図である。
【図12】同絞り制御装置の原点位置初期化処理に関する動作をフローチャートで示す図である。
【図13】同絞り制御装置の原点位置初期化処理に関する動作をフローチャートで示す図である。
【図14】同絞り制御装置の原点位置初期化処理に関する動作をフローチャートで示す図である。
【図15】同絞り制御装置の絞り込み動作に関するタイミングチャートを示す図である。
【図16】同絞り制御装置の絞り込み動作をフローチャートで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を適用した一眼レフカメラのカメラボディの正面図、図2(A)及び(B)は同カメラボディに着脱可能な、絞り連動杆を備えた撮影レンズの背面図及び側面図である。
【0017】
カメラボディ10の正面ほぼ中央にはボディ側マウント13が装着されている。ボディ側マウント13の表面には、AFカプラー14、情報接点群15、ロックピン16、及びマウント指標17が設けられ、ボディ側マウント13の内周部にはバヨネットマウント18が設けられている。カメラボディ10内のミラーボックス内にはメインミラー20が配置され、メインミラー20の左側、バヨネットマウント18近傍には、撮影レンズの絞り連動杆の運動を制御する絞り制御杆19が配置されている。
【0018】
カメラボディ10の上面には、左側に、シャッターボタン21が配置され、シャッターボタン21を囲むように、回動式の電源レバー23が配置されている。カメラボディ10の上面右側にはモードスイッチ25が配置されている。
【0019】
電源レバー23は、回動操作可能に構成され、OFF位置及びON位置でクリックストップされ、さらにON位置から、OFF位置方向とは逆方向にライブビュー位置があり、ON位置からライブビュー位置まで、ばね付勢に力に抗して回動可能に形成されている。電源レバー23がON位置からさらにライブビュー位置方向に回動操作されると、メインスイッチはON状態を維持して、ライブビュースイッチがONする。
【0020】
モードスイッチ25は、複数位置にクリックストップされる回転スイッチであって、クリックストップ位置に応じて、スチル撮影モード、動画撮影モードなどの撮影モードを選択できる。
【0021】
撮影レンズ100は、撮影レンズ鏡筒の後端部にレンズ側マウント環103を備え、該レンズ側マウント環103の表面には、ボディ側マウント13表面の、AFカプラー14に対応するAFカプラー104、情報接点群15に対応する情報接点群105、ロックピン16に対応するロック穴106などが設けられている。レンズ側マウント環103内周にはバヨネットマウント108が設けられ、さらにバヨネットマウント108の内周部には、カメラボディ10の絞り駆動杆19に連動する絞り連動杆109が設けられている。撮影レンズ100のレンズ鏡筒後端部表面には、前記マウント指標17に対応するマウント指標107が付されている。
【0022】
この撮影レンズ100をカメラボディ10に装着するときは、マウント指標17、107を合致させた状態でバヨネットマウント18、108を嵌合させ、撮影レンズ100をカメラボディ正面側から見て、時計方向に回転させる。すると、撮影レンズ100は、絞り連動杆109が絞り制御杆19に当接し、絞り制御杆19を移動させながら回転し、ロックピン16がロック穴106に嵌合したロック位置で止まる。このロック位置における絞り連動杆109は、絞り連動杆109の可動域の一方の機械的端部に当接して移動規制されている。この位置が撮影レンズ100の開放基準位置であり、初期位置である。一方、カメラボディ10の絞り制御杆19は、この絞り連動杆109に当接されて前記開放基準位置に対応する位置に強制的に移動させられている。なお、撮影レンズ100がこのロック位置にロックされた状態では、AFカプラー104はAFカプラー14に係合し、情報接点群105は情報接点群15に電気的に接触している。
【0023】
図3は、この撮影レンズ100をカメラボディ10に装着した状態の主要構成要素をブロックで示す図である。カメラボディ10は、撮影レンズ100で結像される被写体像を視認するための光学ファインダーとして、メインミラー20の上方にピント板27、ペンタプリズム28及び接眼レンズ29が設けられている。接眼レンズ29の近傍には被写体輝度を測定するための測光素子30が設けられている。
【0024】
メインミラー20の後方には、メインミラー20がアップ(ミラーアップ)したときに被写体光を受光して被写体を撮像するCCD等の撮像素子31が配置され、撮像素子31の直前にシャッター機構33が設けられている。前記メインミラー20の背面には、メインミラー20の中央領域を透過した被写体光を下方に向けて反射するサブミラー35が設けられている。メインミラー20の下方であって、ミラーボックスの底部には、サブミラー35で反射した被写体光を受光して焦点状態を検出するAFユニット37が設けられている。AFユニット37は、いわゆるTTL位相差検出方式であって、瞳分割された一対の被写体像信号をAFデータとして出力する。CPU45は、この一対の被写体像のAFデータからデフォーカス量を演算し、さらに装着された撮影レンズ100のフォーカシングレンズLFを合焦位置まで移動させるために必要なデータを演算する。
【0025】
カメラボディ10には、撮像素子31で撮像して得られた画像信号を処理し、圧縮又は非圧縮変換して画像メモリ41に記録する信号処理部39を備えている。カメラボディ10の背面には、撮像した画像を表示するディスプレイ43が設けられている。このディスプレイ43の画像表示は、信号処理部39によって制御される。
【0026】
さらにカメラボディ10は、撮影レンズ100のAF機構111を駆動制御するAF装置47と、絞り装置113を駆動制御する絞り制御機構51を備えている。AF装置47は、図示しないAF用モータを内蔵し、このAF用モータの回転を、前記AFカプラー14、104を介して撮影レンズ100のAF機構111に伝達する。AF用モータはCPU45により駆動制御され、AF機構111によってフォーカシングレンズLFを合焦位置まで移動させる。絞り制御機構51は、CPU45により絞り駆動回路49を介して制御され、絞り制御杆19を駆動する。
【0027】
また、測光素子30からの測光データや、前記AFユニット37からのAFデータがCPU45に入力される。CPU45は、これらのデータに基づいて適切な絞り値データ及び合焦させるためのレンズ駆動データを演算し、演算した絞り値データに基づいて絞り駆動回路49を介して絞り制御機構51を駆動し、レンズ駆動データに基づいてAF装置47を駆動する。
【0028】
撮影レンズ100の絞り装置113は、複数枚の絞り羽根115を開閉駆動して光量調整する瞳絞りである。この絞り装置113は絞り制御杆19と連動する絞り連動杆109を備えていて、この絞り連動杆109を介して絞り羽根115が開閉制御される。
【0029】
「絞り制御機構」
カメラボディ10の絞り制御機構51及び撮影レンズ100の絞り装置113の構成を、図4乃至図8を参照してより詳細に説明する。図4は絞り制御機構51及び絞り装置113の要部をカメラボディ背面側から見た、開放状態の背面図、図5は同絞り込み状態の背面図、図6は同絞り制御機構51の、(A)は正面左側から見た斜視図、(B)は正面右側から見た斜視図、図7は同絞り制御機構51からスライドレバー57を外した状態の、(A)は正面左側から見た斜視図、(B)は正面右側から見た斜視図、図8は絞り制御機構51に搭載されたホールセンサー及び永久磁石の概要を説明する図である。
【0030】
絞り制御機構51は、駆動源としてステッピングモータ53を有し、ステッピングモータ53からその回転軸と一体に形成されたリードスクリュー55が突出している。つまりこのリードスクリュー55は、ステッピングモータ53のローターと一体に回転する。ステッピングモータ53はフレーム59に固定され、リードスクリュー55の先端部はフレーム59に形成された軸受板に回動自在に軸支されている。
【0031】
リードスクリュー55には、スライドレバー57の本体部57aから延びたアーム部57bの先端部に形成されたスクリューナット57cが螺合されている。スライドレバー57の本体部57aに形成されたスライド軸穴が、スライド軸61にスライド自在に嵌合されている。スライド軸61は、リードスクリュー55と平行に配置され、両端部がフレーム59に対向形成された軸受板に支持されている。絞り制御杆19は、このスライドレバー57の本体部57aに一体に突出形成されていて、スライドレバー57と一体として移動する。
【0032】
この絞り制御機構51は、ステッピングモータ53をステップ回転駆動してリードスクリュー55をステップ回転させることができる。つまり、スクリューナット57c、スライドレバー57及び絞り制御杆19を一体として、ステッピングモータ53の1ステップ回転角とリードスクリュー55のリードにより決まる微少長単位でステップ移動させることができる。この実施形態における絞り制御杆19の移動範囲は、スライドレバー57の一方の端部がフレーム59の一方(開放側)の規制部に当接する開放側可動端位置である初期位置から、スライドレバー57の他方の端部がフレーム59の他方(絞り込み側)の規制部に当接する絞り込み側可動端位置の間である。なお、図5はこの撮影レンズ100の絞り込み位置を示していて、スライドレバー57はさらに、他方の端部がフレーム59の他の規制部に当接するまで、図では上方に移動可能である。
【0033】
絞り制御機構51はさらに、スライドレバー57を開放側可動端方向(初期位置方向)に付勢する弾性付勢部材として、スライドレバー付勢ばね(ねじりばね)67を備えている。スライドレバー付勢ばね67は、中間部にコイル部67aを有するねじりばねである。スライドレバー付勢ばね67のコイル部67aが、スライド台座68に突設されたスライド台座ピン70に嵌合されている。スライド台座68は、フレーム59に対してスライド台座板69を介して固定されている。また、スライドレバー付勢ばね67は、コイル部67aから延びる一方の端部67bがスライドレバー57に突設された係合部57dに係合され、他方の端部67cがスライド台座68に係合されて、スライドレバー57を常時、開放方向(図4中下方向)に付勢している。スライドレバー57は、スライドレバー付勢ばね67の付勢力により、ステッピングモータ53に通電されていない状態(自由状態)では、リードスクリュー55、ステッピングモータ53を回転させて機械的に移動が規制される開放側可動端まで移動できる。なお、スライドレバー付勢ばね67の付勢力は、通常、撮影レンズ100が装着された状態でも、装着された撮影レンズの絞りばね121の付勢力に抗してスライドレバー57を開放側可動端まで移動させることが可能であり、一方、ステッピングモータ53によりスライドレバー57を絞り込み方向可動端まで移動するのを許容する強さである。
【0034】
撮影レンズ100がカメラボディ10に装着されていない状態におけるスライドレバー57は、スライドレバー付勢ばね67の付勢力によって開放端位置に機械的に位置規制されるので、ステッピングモータ53の停止位置も一定である。このスライドレバー57の停止位置、ステッピングモータ53の停止位置を、初期位置とする。撮影レンズ100は、図2(A)のように背面から見て矢印α方向(反時計方向)に回されてカメラボディ10に装着される。この回転の際に、絞り連動杆109が絞り制御杆19に当接し、絞り制御杆19によって絞り連動杆109が絞り開放方向移動させられる。絞り連動杆109が機械的な開放基準位置に達して停止すると、その後は絞り制御杆19及びスライドレバー57が絞り込み方向に、絞り連動杆109の開放基準位置と対応する位置(原点位置)まで移動する(図4に示す状態となる)。つまり、絞り連動杆109は、機械的に規制される開放基準位置で停止するので、絞り連動杆109に当接した絞り制御杆19はスライドレバー57と共にスライドレバー付勢ばね67の付勢力に抗して絞り込み方向に移動させられる場合がある。図4に示したように、この実施形態の絞り制御杆19(スライドレバー57)は、初期位置から移動長Δdだけ絞り込み方向に移動させられている。この絞り制御杆19、スライドレバー57の移動によってステッピングモータ53は、開放方向移動端(初期位置)からの移動長Δdとリードスクリュー55のリードとの商に相当する角度、初期位置における停止位置から回転させられている。スライドレバー57のこの位置を原点位置とし、この位置におけるステッピングモータ53の回転位置を原点位置とする。そのため、撮影レンズ100を装着すると、ステッピングモータ53は初期位置で停止しない場合があり、原点位置となる回転停止位置が不明になる。
【0035】
ステッピングモータ53の停止位置(原点位置)が不明になると、ステッピングモータ53をどの励磁パターン(NO.)から励磁すれば最初の励磁から所望の方向にステップ動作するのかが不明になる。本発明の実施形態は、このようにして強制回転させられたステッピングモータ53がどの位置(回転位置、回転角)で停止しているか、駆動する際には励磁をどの励磁パターン(NO.)から開始すればよいかを検出、つまり原点位置を検出して、適切な最初の励磁パターンの設定を可能にしたことに特徴を有する。以下、実施形態の特徴について説明する。
【0036】
この絞り制御機構51には、スライドレバー57の原点位置付近における位置(初期位置を含む所定範囲の位置)を検出する原点検出センサー63として、永久磁石64(64a、64b)及びホールセンサー65が設けられている。永久磁石64a、64bは、リードスクリュー55とスライド軸61の間のアーム部57bに固定されていて、ホールセンサー65はセンサー基板66上に実装された状態でフレーム59に固定されている。図8には、なお、自己補償機能を有するホールセンサーを使用すれば、環境、経年による影響、誤差が小さくて済む。
【0037】
ホールセンサー65は、永久磁石64(64a、64b)から受ける磁力を検出して、磁力に応じた電圧を出力する。CPU45は、ホールセンサー65が出力した検出信号に基づいて、磁石64a、64bの位置、つまりスライドレバー57、絞り制御杆19の位置を検出する。ホールセンサー65は、磁石64との相対距離に応じた検出信号を出力するので、所定範囲内において、その相対距離を検出できる。これらの磁石64a、64b及びホールセンサー65は、カメラボディ10に装着された撮影レンズの絞り連動杆の開放基準位置に対応するスライドレバー57の停止位置である原点位置及びその近傍位置にあるスライドレバー57の位置を検出するように配置されている。
【0038】
絞り制御機構51の原点検出センサー63の構成を、図8に模式的に示した。図において、左右方向が磁石64a、64bの移動方向である。
【0039】
この実施例では、2個の磁石64a、64bを、ホールセンサー65に対して反対磁極が対向するように、移動方向に沿って配置してある。この実施例では、磁石64aの磁力が、ホールセンサー65と対向する面のN極の中心から出てS極の中心に入るので、磁力の変化が相対移動方向で急峻に、つまり大きくなり、感度が鋭くなる。なお、1個の強磁性材を、相対移動方向に二分割して、各部分を、相対移動方向と直交する方向に磁化させてもよい。
【0040】
「撮影レンズの絞り装置」
撮影レンズ100の絞り装置113の構成について、さらに図4、図5を参照して詳細に説明する。撮影レンズ100の絞り装置113は、光軸O周りに回転する絞り環117と、絞り環117の外周縁部からカメラボディ側に突設された、絞り制御杆19と係合する絞り連動杆109と、この絞り環117の内周縁部から被写体側に突設された、光軸Oと平行に延びる連係杆118と、複数枚の絞り羽根115を備えた絞り機構119を備えている。絞り機構119は、連係杆118の回転を受けて絞り羽根115を開閉駆動する公知の機構である。また、絞り環117は、絞り羽根115を絞り込む方向に、絞りばね121によって回動付勢されている。撮影レンズ100がカメラボディ10に装着されない自然状態では、絞り環117は、絞りばね121の回動付勢力によって、絞り羽根115を最も絞り込んで、絞り込み側のストッパに当接した(図示せず)機械的回転限界位置である絞り込み位置まで回動付勢されて、この絞り込み位置に保持されている。撮影レンズ100がカメラボディ10に装着される際に、絞り連動杆109が絞り制御杆19によって絞りばね121の付勢力に抗して開放方向に回動させられ、撮影レンズ100がカメラボディ10に対してロックされる正規装着位置まで回転されると、絞り環117は、開放側のストッパに当接した(図示せず)開放側の機械的移動端である開放基準位置で停止し、この開放基準位置に保持される。一方カメラボディ10の絞り制御杆19と一体のスライドレバー57は、前記の通り初期位置から前記開放基準位置に対応する位置(原点位置)まで動かされて保持される。
【0041】
以上の構成により撮影レンズ100の絞り装置113は、撮影レンズ100がカメラボディ10に装着されていないときや、絞り連動杆109がフリーな状態にあるときは、絞りばね121の弾性付勢力によって絞り機構119が絞り羽根115を最も絞り込んだ絞り込み状態になる。
【0042】
一方、撮影レンズ100がカメラボディ10に装着された装着状態、例えば図4の初期状態では、絞り連動杆109が絞り制御杆19に当接して機械的回転限界位置である開放基準位置まで回転駆動されて、絞り環117が絞りばね121の付勢力に抗して開放方向に回動し、絞り羽根115が最も開いた開放状態に保持されている。その際スライドレバー57及び絞り制御杆19は、開放基準位置まで達して回動が規制された絞り連動杆109により開放方向に移動させられて、絞り連動杆109の開放基準位置に対応する原点位置に保持されている。
【0043】
そうして撮影の際に、ステッピングモータ53のステップ回転によりスライドレバー57及び絞り制御杆19が絞り込み方向にステップ移動させられ、絞り制御杆19の移動に追従して絞り連動杆109が絞りばね121の回動付勢力により絞り込み方向に移動する。ステッピングモータ53が設定位置において所定励磁パターンで励磁された状態に保持される。すると、絞り制御杆19が停止し、その位置で絞り連動杆109も停止して、その停止位置に対応する絞り値が設定される。スライドレバー57は、絞り制御杆19に作用する絞りばね121による絞り込み方向の力と、スライドレバー付勢ばね67による開放方向の力の差よりも強い、ステッピングモータ53の停止保持力とによって、停止した状態に保持されている。なお、絞り込み量(絞り値)は、ステッピングモータ53をスライドレバー57の前記原点位置から駆動するステップ数(励磁パターン(NO.))で制御される。
【0044】
絞り制御機構51は、このように絞り装置113を絞り込んだ状態において、ステッピングモータ53を絞り込み方向及び開放方向のいずれにも駆動できる。つまり、露光中に絞りの制御ができる。したがって、ライブビュー中、動画撮影中の絞り制御が可能である。
【0045】
この実施形態の原点検出センサー63(磁石64及びホールセンサー65)は、絞り制御杆19、スライドレバー57が原点位置から絞り込み方向に移動して、装着された撮影レンズの絞り連動杆109の開放基準位置に相当する原点位置を検出できるように設定してある。前述の通り、撮影レンズの種類、同一種であっても組み立て誤差などにより開放絞り値、つまり絞り連動杆109の開放基準位置が異なるので、原点検出センサー63は所定の移動距離範囲においてスライドレバー57の位置を検出できるように形成し、配置してある。
【0046】
この実施形態において、絞り装置113の絞り連動杆109の開放基準位置に対応する原点位置にスライドレバー57及びステッピングモータ53が停止している状態において、ステッピングモータ53の停止位置における励磁パターン、最初に励磁すべき初期励磁パターンを検出することを原点初期化処理と呼ぶ。
この絞り制御機構51の原点位置初期化処理について、図9、図10に示したステッピングモータ53を駆動するタイミングチャートと、図11乃至図14に示したフローチャートを参照して説明する。
【0047】
この実施形態におけるステッピングモータ53は、2相のコイルX、X-、及びコイルY、Y-を備え、4種類の励磁パターンによる励磁によりステップ回転する2相のステッピングモータとする。表1にコイルX、X-、及びコイルY、Y-の励磁パターン(NO.)を示した。この実施例では、2相駆動の励磁パターン(0)、(1)、(2)、(3)による通電を繰り返す(通電を切り替える)ことで、ステッピングモータ53を一方向(絞り込み方向)にステップ回転させることができる。また、逆方向に励磁パターン(3)、(2)、(1)、(0)を繰り返すことで逆方向(開放方向)にステップ回転させることができる。なお、表1において、1は通電、0は非通電である。
【0048】
【表1】

【0049】
また、いずれかの励磁パターン(NO.)で励磁(保持)して通電遮断保持したときは、次にステッピングモータ53を駆動するときの最初の励磁パターン(NO.)は駆動方向に応じて、通電遮断したときの励磁パターン(NO.)の前又は後(次)の励磁パターン(NO.)になる。例えば、通電遮断したとき(自由状態)の励磁パターン(NO.)が(0)の場合(ディテント位置が(0)の場合)は、絞り込み方向駆動の場合は励磁パターン(1)から通電し、開放方向駆動の場合は励磁パターン(3)から通電する。なおこの通電は、CPU45の制御下で、絞り駆動回路49により実行される。また、この実施形態では、一定のパルスレートで励磁パターンを切り替えている。つまり、各励磁パターン(NO.)による通電を一定時間t1(数ms)継続してから切り換えている。
【0050】
「原点位置初期化動作」
この実施形態では、スライドレバー57が所定ステップ分往復移動するようにステッピングモータ53を駆動し、スライドレバー57が原点位置近くまで戻ったときにステッピングモータ53をフリー状態にしてステッピングモータ53がスライドレバー57の移動により回転させられて停止した位置を検出して原点位置として設定し、原点位置における励磁パターンを初期励磁パターンとして設定する。その概要を、図9及び図10に示したタイミングチャートを参照して説明する。
【0051】
原点位置初期化動作開始時には、ステッピングモータ53に通電する前に、スライドレバー57の位置を検出して原点位置として保存(メモリ)する。続いてステッピングモータ53を絞り込み方向(スライドレバー57をスライドレバー付勢ばね67の付勢力に抗して原点位置から絞り込み方向に離反させる方向)に、基準の起動励磁パターンとして、励磁パターン(0)から順に通電する。最初は励磁パターン(0)で通電するが、ステッピングモータ53は、励磁パターン(0)の位置で停止していた場合は回転せず、励磁パターン(1)の位置で停止していた場合は開放方向に1ステップ回転しようとし、励磁パターン(2)の位置で停止していた場合は、回転しないかいずれかの方向(スライドレバー付勢ばね67の付勢力により開放方向優勢)に回転し、励磁パターン(3)の位置で停止していた場合は絞り込み方向に回転する。いずれの場合も、遅くとも3回目の通電でステッピングモータ53の停止位置と励磁パターン(NO.)が一致し、4回目の励磁からは絞り込み方向に1ステップ回転するようになる。
【0052】
図9に示すように、この実施形態の往行程では計8ステップ分駆動する。そうしてステップ駆動の途中、5ステップ目の励磁直前(励磁パターン(3)で励磁中)のスライドレバー57の位置と、8ステップ目の励磁直前(励磁パターン(2)で励磁中)のスライドレバー57の位置を検出して、3ステップでスライドレバー57が移動した長さA(距離)を求め、さらにステッピングモータ53の1ステップ回転で移動する長さの平均値(1ステップ当たりのステップ移動長)を求める(移動長Aを3で割る)。続いて平均値に所定の1未満の係数を掛けた値をΔAとして設定し、原点位置P0にΔAを加算した値を閾値P0′として設定する。この実施形態では係数を0.7に設定するが、係数は0.3乃至0.9の範囲が好ましい。なお、ΔAの算出に当たって、5ステップ目の励磁直前(励磁パターン(3)で励磁中)のスライドレバー57の位置から検出するのは、励磁パターンが一巡して確実に1ステップ回転がなされた状態になって正確な検出をするためである。
【0053】
8ステップ分の励磁で往行程が終了し、その後復行程に進む。復行程では、ステッピングモータ53を開放方向に、スライドレバー57の位置を検出しながらステップ駆動する。この実施例では、ステッピングモータ53を8ステップ目の励磁パターン(3)でホールディングしているので、復行程では、励磁パターン(2)から順にステップ駆動を開始する。その後、ステップ駆動する毎に、次の励磁パターン(NO.)で励磁する直前に、スライドレバー57の検出位置が前記閾値P0′以下になったどうかをチェックする。閾値P0′以下でなければ、ステップ駆動を継続する。
【0054】
スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下になったときは、そのときの励磁を通常の励磁継続時間よりも長く継続(ステッピングモータ53をホールディング)してから励磁を終了する。励磁を切ったときの励磁パターンが原点位置における励磁パターンであり、この励磁パターンを初期励磁パターンとしてメモリし、以後、絞り込み動作するときは、初期励磁パターンまたはその次の励磁パターンから励磁を開始する。励磁は、初期励磁パターの次の励磁パターンから開始してもよいが、絞り込み動作開始時に設定した初期励磁パターンで励磁すると、スライドレバー57を原点位置から閾値P0′以下の位置まで確実に移動させることができる。
【0055】
このように本実施形態の原点位置初期化動作によれば、ステッピングモータ53によって駆動される機構、部材が機械的衝突を生じる前にステッピングモータ53を停止させるので、衝突により生じるスライドレバー51、リードスクリュー53等の撓み、反動を受けることがない。このように、スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下の条件でステッピングモータ53を停止させ、その時の励磁パターンを知ることにより、次回、ステッピングモータ53を起動する場合に開始すべき励磁パターンを把握することができる。
【0056】
なお、実際には、スライドレバー57は、前述のようにステッピングモータ53をホールディングしてから励磁を終了して停止させても、瞬時に静止せずになお動く場合がある。このため、本実施形態においては、励磁をオフする直前にスライドレバー57の位置を検出してメモリし、メモリした位置と、ステッピングモータ53の励磁をオフしてスライドレバー付勢ばね67の付勢力により機械的な移動限界位置まで移動して停止したであろう所定時間後に再度検出したスライドレバー57の位置との差を求め、その差からステッピングモータ53の停止位置における励磁パターン(NO.)を求めて初期励磁パターン(NO.)としてメモリする。図9、図10における初期励磁パターン(NO.)は(0)である。
【0057】
以上の実施形態では、閾値P0′(ΔA)をスライドレバー57が原点位置から離れた往行程の検出結果に基づいて設定していたが、スライドレバー57の移動量の検出は、ホールセンサー65と磁石64とが接近している原点位置近くで検出する方が精度が高い。そこで他の実施形態では、復行程において、スライドレバー57が原点位置から4乃至1ステップ分まで接近した位置でスライドレバー57の位置を検出して、それらの検出位置から3個のパルス(3ステップ)でスライドレバー57が移動した長さBを求める。そうして、スライドレバー57の1ステップ分の移動長B/3に前述の係数、0.3乃至0.9、好ましくは0.7を掛けた値を、前記ΔAに替えて設定してもよい。
【0058】
さらに別の実施形態では、前記復行程における1ステップ当たりの移動長B/3を変化値ΔB(1ステップ当たりの移動長に相当)とおいて、以下の処理を実行する。
図9、図10において、スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下となったのは、パルス数16個目の励磁パターン(0)のときである。この状態からステッピングモータ53を所定時間ホールドし、ホールド解除直前に、スライドレバー57の位置を検出してメモリする(図10中P3)。ホールド解除してから所定時間経過後に、再びスライドレバー57の位置を検出してメモリする(図10中P4)。スライドレバーの位置P3とP4との差分が、1ステップで移動する長さのΔBの半分よりも大きく、ΔB×1.5未満なので、スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下ときの励磁パターンの次の励磁パターンを初期励磁パターン(NO.)とする。すなわち、この場合は励磁パターン(0)の次の初期励磁パターン(3)が初期励磁パターンである。
【0059】
その後撮影動作制御をするとき、つまり絞り込み駆動するときには、初期励磁パターン(3)から励磁(通電)を開始し、励磁パターン(0)、励磁パターン(1)・・・と励磁パターンを順次切り替えて絞り込み駆動する。本来は、次の励磁パターン(0)から励磁開始すべきであるが、初期励磁パターン(3)から励磁を開始するのは、ステッピングモータ53が初期励磁パターン(3)の位置を励磁パターン(0)方向に越えて停止している場合があるから、停止位置にかかわらず初期励磁パターン(3)の位置に戻すためである。なお、スライドレバーの位置P3とP4との差分がΔBの半分以下の場合は、スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下となったときの励磁パターンがそのまま初期励磁パターンとなる。
【0060】
このように、スライドレバー57の検出位置が閾値P0′以下の条件でステッピングモータ53を停止させ、その時の励磁パターンを知ることにより、次回、ステッピングモータ53を起動する場合に開始すべき励磁パターンを把握することができる。
【0061】
このように本実施形態によれば、スライドレバー57が機械的衝突によって停止する前であって、かつ原点位置まで1ステップ未満の位置でステッピングモータ53の励磁を停止(通電を遮断)させる。したがってスライドレバー57が、スライドレバー付勢ばね67の付勢力によりリードスクリュー55、ステッピングモータ53、撮影レンズ100の絞り装置113を駆動しながら絞り装置113の機械的停止位置まで戻る移動距離は、ステッピングモータ53の1ステップ回転未満相当なので、ステッピングモータ53の初期励磁パターン(NO.)を正確に取得できる。
【0062】
以上の原点位置初期化処理について、さらに図11乃至図14に示したフローチャートを参照して詳細に説明する。この原点位置初期化処理は、カメラボディ10のCPU45によって制御される処理であって、カメラボディ10のメインスイッチ(図示せず)がONされて、電源がONしたときに入る。原点位置初期化処理が終了すると、通常の撮影関係の処理に入る。なお、この実施例の説明ではカメラボディ10に撮影レンズ100が装着されているものとする。
【0063】
原点位置初期化処理に入ると、最初に、ステップS101、S103で初期設定を実行する。ステップS101では、INIT終了フラグのリセット(=0)、変数等の初期化を実行してから、ステッピングモータ53へ励磁する前のホールセンサー65の検出電圧をA/D変換してその値を原点検出値(検出位置)P0として保存する。ステップS103では、初期励磁パターン(NO.)を(0)、駆動残ステップ数を8に設定する。原点検出値P0は現在のスライドレバー57の停止位置であり、原点位置として利用する。駆動残ステップ数は、原点位置初期化処理における往行程においてステッピングモータ53を絞り込み方向に駆動する残りのステップ数であって、この実施形態では8ステップ駆動する。以上の初期設定処理を実行してから、以下、ステップS105以降の往行程ループ処理を実行する。
【0064】
先ず、駆動残ステップ数が0であるかどうかをチェックする(S105)。最初は駆動残ステップ数が0ではないので(S105:NO)、駆動残ステップ数が4であるかどうかをチェックする(S107)。駆動残ステップ数4は、3ステップ分の移動量(移動長)を検出する一方の基準位置である。最初は駆動残ステップ数が4ではないので(S107:NO)、ステップS109をスキップしてステップS111に進む。
【0065】
ステップS111では、駆動残ステップ数が1かどうかをチェックする(S111)。駆動残ステップ数1は3ステップ分の移動量(移動長)を検出するための他方の検出位置である。最初は駆動残ステップ数が1ではないので(S111:NO)、ステップS113をスキップしてステップS115に進む。
【0066】
ステップS115では、旧励磁パターン(NO.)に現励磁パターン(NO.)をセットする。旧励磁パターン(NO.)は前回の励磁パターン(NO.)に関する変数であり、現励磁パターン(NO.)はこれから励磁する又は励磁している励磁パターン(NO.)に関する変数である。最初は現励磁パターン(NO.)が(0)なので、旧励磁パターン(NO.)に(0)がセットされる。次に、現励磁パターン(NO.)でステッピングモータ53を励磁する(S117)。最初は励磁パターン(0)で励磁されるが、ステッピングモータ53が励磁パターン(0)の位置で停止していた場合は回転せず、励磁パターン(3)の位置で停止していた場合は1ステップ分絞り込み方向に回転し、励磁パターン(1)の位置で停止していた場合は開放方向に回転しようとし、励磁パターン(2)の位置で停止していた場合は不定である。続いて、現励磁パターン(NO.)が(3)であるかどうかをチェックする(S119)。現励磁パターン(NO.)が(3)でなければ現励磁パターン(NO.)に1加算し(S119:NO、S121)、現励磁パターン(NO.)が(3)であれば現励磁パターン(NO.)に(0)をセットする(S119:YES、S123)。現励磁パターン(NO.)は(0)から(3)までの循環数となるので、現励磁パターン(NO.)が(3)になったら(0)に戻す処理である。最初は現励磁パターン(0)なので、現励磁パターン(NO.)に1インクリメントされて励磁パターン(1)となる。
【0067】
駆動残ステップ数を1デクリメント(減算)し(S125)、一定時間t1(ms)待って(S127)からステップS105に戻る。この一定時間t1(ms)待つ処理が、各励磁パターン(NO.)での通電(励磁)を継続(ホールド)する時間(パルスレート)になる。
【0068】
以上のステップS105乃至S127の処理を、駆動ステップ数が0になるまで繰り返す(S105:NO、S107乃至S127、S105)。繰り返し中に駆動残ステップ数が4になると(S107:YES)、ホールセンサー65の検出値をA/D変換して検出値P1としてメモリする(S109)。さらに駆動残ステップ数が1になると(S111:YES)、ホールセンサー65の検出値をA/D変換して検出値P2としてメモリする(S113)。
【0069】
その後、駆動残ステップ数が0になると(S105:YES)、ステップS129に進む。ステップS129以降の処理は、ステッピングモータ53を絞り開放方向(初期位置方向)に駆動してスライドレバー57を原点位置まで戻す復行程処理である。なお、上記ステップS107及びステップS109において、駆動残ステップ数4のときのホールセンサー65の検出値P1と、ステップS111及びS113において駆動残ステップ数1、すなわち3ステップ分駆動した時のホールセンサー65の検出値P2とから、1ステップ分の移動量を検出しているが、これは、駆動開始してから励磁パターンが一巡し(励磁パターンが0→1→2→3→0)、励磁パターンの切り替えで確実に1ステップ分の駆動がなされる状態となってからスライドレバー57の位置検出を行って、1ステップ分の移動量をより高精度に求めるためである。
【0070】
ステップS129ではさらに待ち時間t2(ms)待つ。このようにステッピングモータ53をt1+t2時間ホールドすることで、このホールド中にステッピングモータ53、スライドレバー57等の動作部材の振動等が減衰する。
【0071】
次に、閾値補正用の値ΔAを算出する(S131)。
ΔA=(P2−P1)/3×0.7
(P2−P1) は、往行程における駆動残ステップ4から駆動残ステップ1までの3ステップ間にスライドレバー57が移動した長さAであり、0.7は補正係数である。
続いて、閾値P0′を算出する(S133)。
P0′=P0+ΔA
ΔAは、原点検出値P0からの距離(長さ)に相当する。
【0072】
その後、現励磁パターン(NO.)に旧励磁パターン(NO.)をセットし、駆動残ステップ数に16をセットする(S135)。旧励磁パターン(NO.)は、ステップS105からステップS129に入る直前のステップS115でセットされた励磁パターン(NO.)であって、励磁後にインクリメントする前の現在励磁している励磁パターン(NO.)である。この実施形態では、現在励磁している励磁パターン(NO.)は励磁パターン(3)であるから、励磁パターン(3)がセットされる。駆動残ステップ数は、スライドレバー57を確実に原点位置まで戻すために、往行程における駆動残ステップ数よりも多く設定される。
【0073】
続いて、INIT終了フラグに"1"がセットされているか、又は駆動残ステップ数が0であるかどうかをチェックする(S137)。INIT終了フラグは、原点位置初期化処理を終了させるフラグであって、"1"で終了し、"0"で継続する。また、ステップS101の初期化処理においてクリア("0"がセット)される。いずれでもない場合(S137:NO)は、ホールセンサー65が検出した位置信号をA/D変換して検出位置(AD[16 − 駆動残ステップ数])として保存する(S139)。続いて旧励磁パターン(NO.)に現励磁パターン(NO.)をセットし(S143)、現励磁パターン(NO.)でステッピングモータ53を励磁する(S145)。なお、ここでの(16 − 駆動残ステップ数)は、復行程において駆動したステップ数である。
【0074】
次に、現励磁パターン(NO.)が(0)であるかどうかチェックし(S147)、現励磁パターン(NO.)が(0)でない場合は現励磁パターン(NO.)から1デクリメント(減算)し(S147:NO、S149)、現励磁パターン(NO.)が(0)の場合は現励磁パターン(NO.)に3をセットする(S147:YES、S151)。現励磁パターン(NO.)が(0)の場合に3をセットするのは、ステッピングモータ53を開放方向に駆動する場合は励磁パターン(NO.)が(3)、(2)、(1)、(0)の順で循環するので、励磁パターン(NO.)が(0)になったら(3)に戻すためである。続いて、駆動残ステップ数を1デクリメントし(S153)、一定時間t1(ms)待ってから(S155)、ステップS137に戻る。
【0075】
以上のステップS137乃至S155の処理を繰り返すことで、ホールセンサー65によってスライドレバー57の位置を検出しながらステッピングモータ53を絞り開放方向にステップ駆動できる。INIT終了フラグに"1"がセットされるか又は駆動残ステップ数が0になるか(S137:YES)、あるいはA/D変換した検出位置(AD[16 − 駆動残ステップ数])が閾値P0′以下になる(S141:YES)のを待つ。通常は先に現在位置(AD[16 − 駆動残ステップ数])が閾値P0′以下になる(S141:YES)。これは、スライドレバー57が原点検出値P0と閾値P0′の間の位置まで戻ったことを意味する。
【0076】
検出位置(AD[16 − 駆動残ステップ数])が閾値P0′以下になると(S141:YES)、旧励磁パターン(NO.)を初期励磁パターン(NO.)にセットし(S157)、INIT終了フラグに"1"をセットして(S159)、さらに一定時間t1よりも長い第1の待ち時間(t3(ms))待つ(S161)。つまり、検出位置(原点検出値P0からの長さ)が閾値P0′以下になったときに、ステッピングモータ53への励磁を第1の待ち時間(t3(ms))継続して、強制的停止する。この励磁の継続によりステッピングモータ53を励磁状態で停止(ホールド)している間に、ステッピングモータ53、スライドレバー57など絞り制御機構、撮影レンズ100の絞り装置113の各部材の振動等が収まる。
【0077】
スライドレバー57が安定停止状態になってから、ホールセンサー65の検出出力をA/D変換した強制停止検出値P3を保存する(S163)。
【0078】
その後、ステッピングモータ53の励磁を解除(通電遮断)してステッピングモータ53をフリーにし(S165)、第2の待ち時間t4(ms)待つ(S167)。このようにステッピングモータ53をフリーにしてスライドレバー57が安定停止状態になったときに、ホールセンサー65の検出出力をA/D変換した値をフリー停止検出値P4として保存し(S169)、ステップS155に戻る。ステッピングモータ53をフリーにすると、スライドレバー57が、スライドレバー付勢ばね67の付勢力によって撮影レンズ100の絞り装置113が機械的な初期状態となる位置まで、ステッピングモータ53を回転させながら移動する場合があるからである。なお、この実施形態では第1の待ち時間t3と第2の待ち時間t4を等しく設定してあるが、これらの時間は所望に応じて変更される時間である。
【0079】
ステップS155に戻ると、一定時間t1(ms)待ってから、INIT終了フラグに"1"がセットされているか、又は駆動残ステップ数が0であるかチェックする(S137)。ここでは、INIT終了フラグに"1"がセットされているので(S137:YES)、ステップS171に飛んでステッピングモータ53の電源をOFF(励磁をOFF)する。次に、駆動残ステップ数が0かどうかチェックし(S173)、0であれば異常終了処理に進む(S173:YES、異常終了処理)。ステッピングモータ53の駆動ステップ数は往路よりも復路の方を多く設定してあり、設定したステップ数で復帰しない場合は何らかの障害があったと考えられるので、異常終了としてある。異常終了処理は図示しないが、ディスプレイ43に異常表示を出すなどの処理である。
【0080】
駆動残ステップ数が0でない場合(S173:NO)は、1ステップ当たりの検出値の変化値ΔBを求める。
ΔB=(AD[16−駆動残ステップ数−4]−AD[16−駆動残ステップ数−1])/3×0.9
変化値として1ステップ分の移動量をそのまま使用すると、後述の処理で1ステップ分以上移動した状態を検出することになるので、1ステップ当たりの変化値よりも少し小さい値にすべく、0.9を乗じた値ΔBとしてある。
【0081】
次に、強制停止検出値P3がフリー停止検出値P4より大きいかどうかをチェックする(S177)。つまり、ステッピングモータ53をフリーにしたときに、スライドレバー57が開放方向に移動したか(S177:YES)、又は移動していないか絞り込み方向に移動したか(S177:NO)をチェックする。
【0082】
「開放方向に移動した場合」
P3>P4の場合(ステップS177:YES)は、強制停止検出値P3からのずれ量比ΔCを下記式により求める(S179)。
ΔC=(P3−P4)/ΔB
なお、ずれ量比ΔCが1の場合は、ステッピングモータ53が1ステップ分回転したことを意味する。ずれ量比ΔCが1未満の場合はステッピングモータ53の回転が1ステップ分未満であることを、1を超えていた場合はステッピングモータ53が1ステップ分を超えた量回転したことを意味する。ステッピングモータ53の1ステップ分未満の回転分については、ΔCが0.5(1ステップ分回転の半分)以上ある場合に初期励磁パターンを補正する。
【0083】
そうしてこのずれ量比ΔCが、0.5以上1.5未満かどうか(S181)、1.5以上2.5未満かどうか(S185)、2.5以上3.5未満かどうか(S189)をチェックする。
ずれ量比ΔCが、0.5以上1.5未満の場合(S181:YES)は初期励磁パターン(NO.)を1デクリメントして(S183)ステップS209に進む。
ずれ量比ΔCが1.5以上2.5未満の場合(S185:YES)は初期励磁パターン(NO.)を2デクリメントして(S187)ステップS209に進む。
ずれ量比ΔCが2.5以上3.5未満の場合(S189:YES)は初期励磁パターンを3デクリメントして(S191)ステップS209に進む。
ずれ量比ΔCが以上のいずれでもない場合(S181:NO、S185:NO、S189:NO)、つまり0.5未満の場合は初期励磁パターン(NO.)修正無し(S193)で、原点位置初期化処理を終了する。
【0084】
ステップS209乃至ステップS219は、ステップS183、S187、S191で1乃至3減算した初期励磁パターン(NO.)を(0)乃至(3)に戻す処理である。
初期励磁パターン(NO.)が−1になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(3)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S209:YES、S211、終了)。
初期励磁パターン(NO.)が−2になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(2)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S213:YES、S215、終了)。
初期励磁パターン(NO.)が−3になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(1)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S217:YES、S219、終了)。
前記のいずれでもない場合、つまりステップS183、S187、S191で1乃至3減算した励磁パターン(NO.)が(0)、(1)又は(2)の場合はそのまま原点位置初期化処理を終了する(S209:NO、S213:NO、S217:NO)。
【0085】
「絞り込み方向に移動した場合」
P3>P4ではない場合(ステップS177:NO)は、強制停止検出値P3から絞り込み方向に移動している(絞り込み方向に戻っている)ので、フリー停止検出値P4からのずれ量比ΔCを下記式により求める(S195)。
ΔC=(P4−P3)/ΔB
【0086】
続いて、このずれ量比ΔCが、0.5以上1.5未満かどうか(S197)、1.5以上2.5未満かどうか(S201)、2.5以上3.5未満かどうか(S205)をチェックする。
ずれ量比ΔCが、0.5以上1.5未満の場合(S197:YES)は初期励磁パターン(NO.)を1インクリメントして(S199)ステップS221に進む。
ずれ量比ΔCが1.5以上2.5未満の場合(S201:YES)は初期励磁パターン(NO.)を2インクリメントして(S203)ステップS221に進む。
ずれ量比ΔCが2.5以上3.5未満の場合(S205:YES)は初期励磁パターン(NO.)を3デクリメントして(S207)ステップS221に進む。
ずれ量比ΔCが以上のいずれでもない場合(S197:NO、S201:NO、S205:NO)、つまり0.5未満の場合は初期励磁パターン(NO.)修正無し(S193)で、原点位置初期化処理を終了する。このようにずれ量比ΔCの絶対値が0.5未満(1/2未満)の場合は、初期励磁パターン(NO.)は修正しない。
【0087】
ステップS221乃至ステップS231は、ステップS199、S203、S207で1乃至3加算した初期励磁パターン(NO.)を(0)乃至(3)に戻す処理である。
初期励磁パターン(NO.)が4になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(0)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S221:YES、S223、終了)。
初期励磁パターン(NO.)が5になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(1)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S225:YES、S227、終了)。
初期励磁パターン(NO.)が6になった場合は初期励磁パターン(NO.)に(2)をセットして原点位置初期化処理を終了する(S229:YES、S231、終了)。
前記のいずれでもない場合、つまりステップS199、S203、S207で1乃至3加算した励磁パターン(NO.)が(1)、(2)又は(3)の場合はそのまま原点位置初期化処理を終了する(S221:NO、S225:NO、S229:NO、終了)。
【0088】
以上の原点位置初期化処理によれば、原点位置からステッピングモータ53を絞り込み方向に8ステップ分駆動してから原点位置に戻す際には、原点位置に達するか、原点位置から1ステップ当たりの移動長未満の位置まで戻ったときにステッピングモータ53の駆動を停止するので、絞り制御機構の機械的な衝突が無く、撓み、反発等によってステッピングモータ53が強制的に絞り込み方向に回転させられることがないので、停止位置を正確に検出できる。
【0089】
さらに、ステッピングモータ53を停止させた後に、スライドレバー付勢ばね67等の弾性付勢部材によってスライドレバー57が強制移動させられても、ステッピングモータ53を強制停止させた位置と自然に停止した位置間の長さと測定した1ステップ当たりの移動長との差に基づいて初期励磁パターン(NO.)を補正するので、ステッピングモータ53の初期励磁パターン(NO.)を適切に、正確に設定することができる。
【0090】
なお、上記1ステップ当たりの検出値の変化値ΔBは、前述のΔAで代用して、原点位置初期化動作処理を簡単化してもよいが、本実施形態においては、あえてΔAで代用せずに、駆動残ステップが4の位置、すなわち、原点位置近傍で、ホールセンサーの出力特性が線形で最良の検出精度となる条件下の検出値に基づいてΔBを演算している。このため、高精度な変化値ΔBの演算及び励磁パターンの把握ができる。また、移動長を求めるステップ数は2ステップ又は4ステップ以上でもよい。
【0091】
以上の原点位置初期化処理により設定されたステッピングモータ53の初期励磁パターン(0)は内蔵メモリ(例えばEEPROM)に記憶され、撮影時に使用される。また、次回の原点位置初期化処理を実行するとき、例えば電源がOFF/ONされたときに読み出して、原点位置初期化処理の初期励磁パターン(NO.)として利用することが好ましい。
【0092】
1ステップ当たりの移動長は予め測定した値をメモリに書き込み、原点位置初期化処理時に読み出して使用してもよい。
また、この実施形態の原点検出処理では、往行程では予め設定したステップ数駆動したが、ステップ数は設定せずに、例えば、所定励磁パターンで駆動しながらスライドレバー57の位置を検出し、1ステップ当たりの移動長が連続して複数回所定長になったときに往行程を終了し、復行程に移行してもよい。
【0093】
実際の使用においては、以上のように初期励磁パターン(NO.)を設定しても、その後の使用において、絞り制御機構、絞り装置の軸や摺動部の摩擦、リンク部の撓みなどの影響により、ステッピングモータ53が初期励磁パターン(NO.)に対応する原点位置まで戻っていない場合が想定される。本発明は、かかる場合でも正確に絞り込めることに特徴を有する。その実施形態の絞り込み動作について、さらに図15に示したタイミングチャート及び図16に示したフローチャートを参照して説明する。この実施形態では、絞り込み動作の最初に、スライドレバー57が原点位置から絞り込み方向に移動したことを検出する原点検出処理を実行することに特徴を有する。なお、この実施形態では、前記原点位置初期化処理で設定した初期励磁パターンから絞り込み動作を開始する。その後、原点検出処理で原点を検出したときは、対応する励磁パターンを記憶して以後、その励磁パターンを初期励磁パターンに設定してもよい。
【0094】
絞り込み動作を開始すると、先ず、絞り込みステップ数を設定する(S301)。絞り込みステップ数は、設定した絞り値までスライドレバー57を移動するのに必要な、ステッピングモータ53のステップ回転数である。絞り値は、従来の測光、露出演算処理によって求め、その絞り値を得るためのステッピングモータ53の回転数を演算により又はデータテーブルにより求めることができる。なお、この実施形態の説明において、「上昇」とは、カメラボディ10が正位置(横位置)にあるときにスライドレバー57が上昇すること、絞り込み方向に移動することであり、「下降」とは、同スライドレバー57が下降すること、絞り開放方向に移動することである。
【0095】
ステッピングモータ53をステップ駆動(励磁)する前にホールセンサー65の出力をA/D変換してスライドレバー57の位置を検出し、検出値P10を保存する(S303)。続いて、上昇確認閾値P11を算出する(S305)。
P11=P10+ΔB′
この実施形態におけるΔBは、前述の通り、原点位置初期化処理で検出した1ステップ当たりのスライドレバー移動長(検出値の変化値)であり、ΔB′は、1ステップ当たりの値B/3に1未満の係数を掛けた値である。係数は、0.2乃至0.4が好ましい。
【0096】
現励磁パターン(NO.)に初期励磁パターン、この実施形態では(0)、をセットする(S307)。そうして、セットした現励磁パターン(0)でステッピングモータ53の励磁を開始する(S309)。この実施形態では、ステッピングモータ53は回転しなかったものとする(図15)。続いて、現励磁パターン(NO.)が3かどうかチェックし(S311)、3でなければ現励磁パターン(NO.)を1インクリメント(加算)し(S311:NO、S313)、3であれば現励磁パターン(NO.)に0をセットする(S311:YES、S315)。ここでは、1インクリメントして、現励磁パターン(NO.)は(1)となる。
【0097】
続いて、一定時間t5(ms)待ち(S317)、ホールセンサー65の出力をA/D変換して暫定値AD_Tempとして保存し(S319)、暫定値AD_Tempが上昇確認閾値P11以下であるかどうかチェックする(S321)。暫定値AD_Tempが上昇確認閾値P11以下であれば(S321:YES)、ステップS309に戻る。
【0098】
以上のステップS309乃至S321の処理を、暫定値AD_Tempが上昇確認閾値P11を越えるまで繰り返す。ステッピングモータ53が原点位置まで戻っていない場合は、ステッピングモータ53を絞り込み方向に駆動しても1回目で暫定値AD_Tempが上昇確認閾値P11を越えない場合がある。このような場合でも、ステッピングモータ53を複数回励磁していると、ディテント位置と励磁パターン(NO.)とが一致して、絞り込み方向にステップ回転するようになる。
【0099】
暫定値AD_Tempが上昇確認閾値P11を越えると(S321:NO)、以降は絞り込み方向にステップ回転するので、ステップS309乃至S321のループを抜け、ステップS323に進む。
【0100】
ステップS323に進むと、一定時間t5(ms)待ち、現励磁パターン(NO.)によりステッピングモータ53を励磁する(S325)。この励磁によってステッピングモータ53は、絞り込み方向に1ステップ分回転する。そうして現励磁パターン(NO.)が3かどうかチェックし(S327)、3でなければ現励磁パターン(NO.)を1インクリメントし(S327:NO、S329)、3の場合は現励磁パターン(NO.)を(0)に設定する(S327:YES、S331)。そうして絞込みステップ数を1デクリメント(減算)し(S333)、絞込みステップ数が0になったかどうかをチェックする(S335)。絞込みステップ数が0でない場合(S335:NO)は、ステップS323に戻って絞り込み方向励磁を繰り返す。絞り込みステップ数が0になった場合(S335:YES)は、絞込み動作を終了する。
【0101】
以上の原点検出処理により、スライドレバー57が原点位置に戻ったときにステッピングモータ53が原点位置に戻っていなくても、ステッピングモータ53が絞り込み方向にステップ回転し、かつスライドレバー57が上昇確認閾値P11を越えるまで、絞り込みステップ数は減算せずに、複数回励磁を行うので、スライドレバー57は、原点位置から設定された絞り込みステップ数分正確に上昇移動される。したがってスライドレバー57に絞り連動杆109が連動する撮影レンズ100の絞り装置113は、設定された絞り値まで正確に絞り込まれる。
【0102】
なお、この絞り込み処理における一定時間t5(パルスレート)は、原点位置初期化処理における一定時間t1(パルスレート)よりも短く設定して、絞り込み処理の短縮を図っている。
【0103】
以上の実施形態では、スライドレバー57が上昇確認閾値P11を越えたときから絞り込みステップ数の減算を開始する構成としたが、絞り込み開始から絞り込みステップ数を減算し、スライドレバー57が上昇確認閾値P11を越えるまでにステッピングモータ53を駆動したステップ数を駆動補正ステップ数として減算した絞り込みステップ数に加算する構成としてもよい。
また、上記実施形態においては、上昇確認閾値P11を算出するに当たっては、原点位置初期化処理において開放方向駆動時に原点位置近傍にて検出した1ステップ当たりのスライドレバー移動長(検出値の変化値)ΔBに基づくΔB'を用いているので、高精度な駆動制御が行える。
【0104】
図示実施例では絞り制御杆19(スライドレバー57)のスライド方向位置を磁石64及びホールセンサー65によって検出したが、所定範囲内において絞り制御杆19(スライドレバー57)の相対位置又は絶対位置を検出できるセンサーであればよい。また、そのセンサーは非接触であることが好ましいが、接触タイプでも使用可能である。いずれのタイプのセンサーであっても、ステッピングモータ53の1ステップで移動するスライドレバー57の移動長より短い長さを検出できる分解能、精度が必要である。ステッピングモータ53のタイプはこの実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0105】
10 カメラボディ
19 絞り制御杆
20 メインミラー
31 撮像素子
33 シャッター機構
39 信号処理部
43 ディスプレイ
49 絞り駆動回路
51 絞り制御機構
53 ステッピングモータ
55 リードスクリュー
57 スライドレバー
57a 本体部
57b アーム部
57c スクリューナット
59 フレーム
61 スライド軸
63 原点検出センサー
64 磁石
65 ホールセンサー
67 スライドレバー付勢ばね(弾性付勢部材)
68 スライド台座
69 スライド台座板
70 スライド台座ピン
100 撮影レンズ
103 レンズ側マウント環
109 絞り連動杆
113 絞り装置
115 絞り羽根
117 絞り環
118 連係杆
119 絞り機構
121 絞りばね
P0 原点検出値(検出位置)
P1 往行程検出値(検出位置)
P2 往行程検出値(検出位置)
P3 強制停止検出値(検出位置)
P4 フリー停止検出値(検出位置)
P0′ 閾値
t1 一定時間(パルスレート)
t2 待ち時間
t3 第1の待ち時間
t4 第2の待ち時間
P10 原点位置
P11 上昇確認閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りを開閉駆動する絞り連動杆を有する絞り装置を備えた撮影レンズが着脱自在に装着されるカメラボディに設けられ、前記絞り連動杆を移動させるスライド部材を備えたレンズ交換式カメラの絞り制御装置であって、
ステッピングモータ、このステッピングモータにより回転駆動されるリードスクリュー、及びこのリードスクリューの回転によって前記スライド部材を移動させる絞り制御機構と、
前記スライド部材を、一方の移動端である初期位置方向に移動付勢し、前記撮影レンズがカメラボディに装着され、前記ステッピングモータが自由状態のときは、前記絞り連動杆によって絞り装置の初期位置に対応する原点位置まで前記スライド部材が移動するのを、前記リードスクリュー及び前記ステッピングモータを回転させて許容する弾性付勢部材と、
前記スライド部材の位置を検出する位置検出手段と、
前記ステッピングモータを所定の複数の励磁パターンを繰り返してステップ駆動させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ステッピングモータを前記スライド部材を前記弾性部材の付勢力に抗して前記原点位置から離反する方向に所定ステップ数駆動するときは、前記ステッピングモータをステップ駆動する前の前記スライド部材の位置を原点位置として前記位置検出手段により検出し、
その後ステップ駆動する毎に前記スライド部材の移動位置を前記位置検出手段により検出して前記原点位置と比較し、
前記移動位置が前記原点位置よりも前記弾性部材の付勢力に抗して前記原点位置から離反する方向の所定位置を超えたときを基準として前記所定ステップ数をカウントすること、を特徴とするレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ交換式カメラの絞り制御装置において、前記原点位置から離反する方向の所定位置は、前記ステッピングモータをステップ駆動したときに前記スライド部材が移動する1ステップ当たりの移動長よりも短い長さ前記原点位置から離反した位置であるレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のレンズ交換カメラの絞り制御装置において、前記原点位置から離反する方向の所定位置は、前記ステッピングモータをステップ駆動したときに前記スライド部材が移動する1ステップ当たりの移動長の0.2乃至0.4倍の長さ前記原点位置から離反した位置であるレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項4】
請求項2または3項記載のレンズ交換カメラの絞り制御装置において、前記1ステップ当たりの移動長は、前記スライド部材を前記弾性付勢部材の付勢力に抗して原点位置から離反する方向にステップ移動させる途中、又はその後、原点位置に接近する方向にステップ移動させる途中に前記位置検出手段により求めた複数位置に基づいて前記制御手段が設定するレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載のレンズ交換式カメラの絞り制御装置において、前記制御手段は、前記スライド部材が前記所定位置を超えたときの前記ステッピングモータの励磁パターンに基づいて、次回の絞り込み制御における最初の初期励磁パターンを設定するレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載のレンズ交換式カメラの絞り制御装置において、前記位置検出手段は、磁石及びホールセンサーからなるレンズ交換式カメラの絞り制御装置。
【請求項7】
請求項6記載のレンズ交換式カメラの絞り制御装置において、前記スライド部材は、前記リードスクリューと平行に配置されたスライド軸にスライド自在に支持されていて、前記磁石は、前記スライド部材の、前記リードスクリューとスライド軸の間の部分に配置されているレンズ交換式カメラの絞り制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−28243(P2011−28243A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139365(P2010−139365)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】