説明

レーザスクライブ装置及び方法

【課題】 レーザスクライブを行いながら、実際にスクライブされた位置を検出し、予め設定された割断予定線に近づくようにフィードバック補正を行う装置及び方法を提供する。
【解決手段】 被割断基板上の予め設定された割断予定線に沿ってスクライブ線が形成されるように、レーザ光線からなる加熱ビームを照射させ、冷却剤を吹き付ける、レーザスクライブ装置において、前記スクライブ線の発生位置を検出するスクライブ線発生位置検出手段と、前記割断予定線に対する前記スクライブ線の発生位置のずれ量を演算するスクライブ位置ずれ量演算手段と、前記割断予定線に対するスクライブ線の発生位置を変更できるスクライブ位置変更手段とを用いた、装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被割断基板に設定した割断予定線に、スクライブ線を形成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレーや半導体チップなどの製造工程では、製造効率を上げるために、1つのウエハーや基板(以下、基板)にいくつもの製品を形成した後、所定の大きさに分割する方法が採用されている。前記フラットパネルディスプレーや半導体チップは、ガラスやセラミックス、シリコンなどの脆性材料で形成されており、前記基板の分割(以下、割断)は、次のように行われている。
【0003】
まず、被割断基板の表面にスクライブ線を形成する。前記スクライブ線とは、被割断基板において、割断予定線上に連続して形成される浅い亀裂のことである。
【0004】
次いで、形成した前記スクライブ線のまわりに曲げモーメントを加え、浅い亀裂を被割断基板の板厚方向に伸展させることで割断予定線を境に、被割断基板が割断される。
【0005】
前記スクライブ線の形成法の一つに、レーザスクライブ法がある。
レーザスクライブ法とは、
1)被割断基板上に予め割断予定線を設定し、
2)前記割断予定線に沿って、前記割断予定線をなぞるように、赤外線レーザを用いた加熱ビームを照射させて、被割断基板表面を加熱し、
3)前記加熱された部分に追従させて、冷却用のミストを噴霧して、前記加熱された部分を冷却し、
前記加熱と前記冷却を連続して実施することで、被割断基板の表面に、連続した浅い亀裂を形成する手法である。
【0006】
前記レーザスクライブ法では、割断予定線上の、被割断基板の割断開始端部に、微小な初期亀裂が形成される。前記初期亀裂部分から、前記加熱と前記冷却が連続して行われるので、被割断基板表面上に、連続した浅い亀裂が形成される。
【0007】
前記加熱ビームは所定の幅と長さを有しており、前記加熱ビームの照射により、被割断基板表面で吸収された熱が内部伝わり、被割断基板内部の温度も上昇する。この時、加熱された部分では、材料が加熱によって膨張しようとする力が働いた状態になっている。
【0008】
次いで、前記加熱された部分を冷却すると、材料が収縮しようとする力が働いた状態になる。この時、被割断基板の表面は冷却されて、収縮しようとする力が働くが、被割断基板の材料内部は未だ温度が高く、膨張しようとする力が働いたままであるため、表面の亀裂が広がる。その後、基板表面と内部の温度が均一となり、亀裂は見えなくなる。
【0009】
レーザスクライブされた被割断基板は、割断予定線に正しくレーザスクライブが施されたものとして、割断が行われる。
【0010】
レーザスクライブ法では、加熱と冷却を続けて行うことによって起きる、被割断基板の表面と内部に生じる力の変化を利用している。そのため、力のバランスを保つことが、スクライブ線の直進性を高めることにつながる。
【0011】
特許文献1によれば、レーザスクライブにより形成された亀裂部分に、マーキング剤を噴霧することで、前記亀裂が認識できるようする技術が開示されている。
【0012】
特許文献2によれば、レーザスクライブにより形成されたスクライブ線に、再びレーザを照射して被割断基板を割断する際に、割断発生の位置を検知し、その場所が適正であるかを判断し、調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−018723
【特許文献2】特表2008−503355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
レーザスクライブ法による脆性材料の割断において、加熱部分や冷却部分、割断予定線付近に働く力のバランスが変わると、スクライブ線の直進性が変化してしまう。
【0015】
図5に、従来のレーザスクライブ装置及び方法により割断された基板の平面図を示す。
被割断基板10に対して、割断予定線81a,82a,83aを設定する。割断予定線81a,82a,83aに対する、実際の割断線を81b,82b,83bとする。この状態は、レーザスクライブが正しく行われなかった場合の典型例である。
【0016】
実際の割断線81bは、割断途中で割断予定線81aから逸脱し、途中で割断が止まっている。
【0017】
実際の割断線82bは、割断予定線82aに対してやや蛇行するものの、概ね割断予定線82aに沿って形成されている。
【0018】
実際の割断線83bは、割断予定線83aに沿っているが、割断予定線83aから少し離れた状態で形成されている。
【0019】
前述のように、レーザスクライブが正しく行われていないと、途中で割断が止まり基板の割断ができなかったり、割断後の蛇行の幅が所望の値より大きかったり、所定の位置からずれて割断されたりする。
【0020】
前述のスクライブ線の直進性を変化させる、力のバランスが変わる要因として、
レーザ発信器や光学部品の経時変化などにより、加熱ビームの形状や温度分布などが変化する場合や、
冷却ミストの粒子分布や噴霧形状、噴霧位置などが変化する場合や、
被割断基板の内部組成や厚みの均一性などにばらつきがある場合や、
被割断基板と、前記基板を支える手段との平行度にばらつきがある場合や、
被割断基板を支える手段から働く、前記基板を保持する力などの外力に変化がある場合、などが挙げられる。
【0021】
前述の要因は、突発的に表れたり、実際の直進性に影響が及ぶ程度が小さいといったこともあり、レーザスクライブ装置が、一般公差や所定の公差の範囲内で加工及び組立されていれば、許容されていた場合もあった。しかし、レーザスクライブで割断された基板を組み込んだ製品に対して、高い加工精度が求めらるようになり、許容し難くなってきた。
【0022】
そのため、予め設定した割断予定線に対して、実際に形成されたスクライブ線を一致させることは、加工精度の向上に繋がり、割断後の基板を組み込んだ製品を組み立てる際に、重要となる。
【0023】
レーザスクライブ法では、前記スクライブ線の加工精度が規定範囲内かどうかは、実際に割断してからでないと、分からない。しかし、亀裂部分にマーキング剤を使用することは、被割断基板を汚し、後洗浄工程を要し、採用できない場合が多い。
【0024】
もし、前記スクライブ線が途中までしか形成されていなかったとか、前記スクライブ線の加工精度が悪くなっていたことが、基板の割断後に分かったとしても、不良品が発生してしまっているので、生産を中断して再調整する必要がある。
【0025】
さらに、前記スクライブ線の加工の位置を再調整する作業と、許容できる範囲かどうかの確認のための作業に、多大な時間と労力を費やしていた。
【0026】
そこで本発明の目的は、レーザスクライブを行いながら、実際にスクライブされた位置を検出し、予め設定された割断予定線に近づくようにフィードバック補正を行う装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
被割断基板上の予め設定された割断予定線に沿って、スクライブ線が形成されるように、レーザ光線からなる加熱ビームを照射させる手段と、冷却剤を吹き付ける手段とを備えた、レーザスクライブ装置において、
前記スクライブ線の発生位置を検出する、位置検出手段と、
前記割断予定線に対する、前記スクライブ線の発生位置のずれ量を演算する、位置ずれ量演算手段と、
前記割断予定線に対するスクライブ線の発生位置を変更できる、スクライブ位置変更手段とを備えることを特徴とする、レーザスクライブ装置である。
【0028】
請求項2に記載の発明は、
前記スクライブ線の形成中に、前記位置ずれ量演算手段からの情報を用いて、前記スクライブ線の発生位置を調節ができることを特徴とする、請求項1に記載のレーザスクライブ装置である。
【0029】
請求項3に記載の発明は、
前記スクライブ位置変更手段が、少なくとも前記加熱ビームの照射位置を変更させる手段若しくは、前記冷却剤の吹き付ける位置を変更させる手段のいずれかを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のレーザスクライブ装置である。
【0030】
請求項4に記載の発明は、
被割断基板上の予め設定された割断予定線に沿って、スクライブ線が形成されるように、レーザ光線からなる加熱ビームを照射させるステップと、冷却剤を吹き付けるステップとを有する、レーザスクライブ方法において、
前記スクライブ線の発生位置を検出する、位置検出ステップと、
前記割断予定線に対する、前記スクライブ線の発生位置のずれ量を演算する、位置ずれ量演算ステップと、
前記割断予定線に対するスクライブ線の発生位置を調節する、スクライブ位置変更ステップを有することを特徴とする、レーザスクライブ方法である。
【0031】
請求項5に記載の発明は、
前記スクライブ線を形成しながら、前記位置ずれ量演算ステップにおける情報を用いて、前記スクライブ位置変更ステップにおける前記スクライブ線の発生位置を調節するステップを有することを特徴とする、
請求項4に記載のレーザスクライブ方法である。
【0032】
請求項6に記載の発明は、
前記スクライブ位置変更ステップが、少なくとも前記加熱ビームの照射位置を変更させるステップ若しくは、前記冷却剤の吹き付ける位置を変更させるステップのいずれかを有することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のレーザスクライブ方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の装置及び方法を用いるので、真直度の高いスクライブ線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のレーザスクライブ装置の斜視図である。
【図2】本発明のスクライブヘッド部の主要機器構成を示した要部構成図である。
【図3】本発明のレーザスクライブ装置のシステム構成図である。
【図4】本発明のレーザスクライブの手順を示すフロー図である。
【図5】従来のレーザスクライブ装置及び方法により割断された基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、レーザスクライブ装置を示した斜視図である。
図2は、レーザスクライブ装置のスクライブヘッド部の主要機器構成を示した要部構成図である。各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面は水平面、Z方向は鉛直方向である。
【0036】
レーザスクライブ装置1は、装置ベース11と、装置ベース11上に取り付けられた支柱12と、支柱12の上に取り付けられた梁部13とからなる門型の構造物を含んで、構成されている。さらに、レーザスクライブ装置1は、ステージ部2と、スクライブヘッド部3と、各部の機器を制御するためのコントローラや、装置の操作を行うための機器が収納された、制御部9とが含まれて構成されている。
【0037】
ステージ部2は、装置ベース11上に取り付けられた、X軸ステージ21と、X軸ステージ21上に取り付けられた、テーブル22が含まれて、構成されている。X軸ステージ21は、テーブル22を、X方向に移動させることができる。
【0038】
テーブル22上には、被割断基板10が載置される。テーブル22の表面には、溝や孔が設けられており、前記溝や孔は、開閉制御用バルブを介して真空源に接続されている。テーブル22に載置された被割断基板10は、負圧により吸着保持され、移動中に位置ずれしないようになっている。
【0039】
ステージ部2は、前記のような構成をしているので、テーブル22上に載置された被割断基板10をX方向に移動させることができる。
【0040】
スクライブヘッド部3は、レーザスクライブ装置1の装置ベース11上に取り付けられた、支柱12と梁13とからなる門型の構造物に取り付けられた、Y1軸ステージ31に取り付けられており、Y方向に移動できるように構成されている。
【0041】
また、スクライブヘッド部3は、下面が開いた箱型の筐体30からなり、筐体30内側に取り付けられた、初期亀裂形成手段4と、レーザ光線照射ユニット5と、冷却ユニット6と、スクライブ位置検出部7とを含んで構成されている。
【0042】
初期亀裂形成手段4は、アクチュエータ41と、アクチュエータ41に取り付けられたホイールホルダ42と、ホイールホルダ42に取り付けられたスクライブホイール43とを含んで、構成されている。
【0043】
アクチュエータ41がZ方向下向きに動くことにより、ホイールホルダ42とスクライブホイール43がZ方向下向きに移動し、スクライブホイール43が被割断基板10に押し付けられることで、被割断基板10の割断開始端部に微小な初期亀裂40を付ける事ができる。
【0044】
レーザ光線照射ユニット5は、スクライブヘッド部3の筐体30上に取り付けられた、Y2軸ステージ54と、Y2軸ステージ54上に取り付けられたホルダ55と、ホルダ55に取り付けられた、ミラー53とレンズ56とを含んで構成されている。
【0045】
レーザ発信器51から照射され、ミラーやレンズなどを用いて導かれたレーザ光線52が、レーザ光線照射ユニット5のミラー53に向けてに照射されている。ミラー53に照射されたレーザ光線52は、角度を変えて反射され、レンズ56に照射される。
【0046】
レンズ56に照射されたレーザ光線は、所定の形状に成形され、被割断基板10に向かって、加熱ビーム50として照射される。
【0047】
Y2軸ステージ54は、ホルダ55を、Y方向に移動させることができる。これにより、被割断基板10に対する加熱ビーム50の照射位置を、Y方向に移動させることができる。
【0048】
冷却ユニット6は、空気や水、その他の流体や混合物からなる冷媒などの冷却剤を供給する冷却剤供給手段と、ガラス基板に向かって前記冷却剤を吹き付ける手段である冷却ノズル61とを含んで構成されている。
【0049】
冷却ノズル61は、スクライブヘッド部3の筐体30上に取り付けられた、Y3軸ステージ62上に取り付けられており、Y方向に移動させることができる。これにより、被割断基板10に対する冷却ミスト60の噴霧位置を、Y方向に移動させることができる。
【0050】
スクライブ位置検出部7は、位置検出器71を含んで構成されている。位置検出器71から、被割断基板10に向かって、測定用光線70が照射される。
【0051】
測定用光線70は、被割断基板10で反射され、位置検出器71の受光部に照射される。前記受光部に照射される光線は、被割断基板の表面の凹凸や、レーザスクライブ直後に開口した部分10cのY方向の位置を検出することができる。
【0052】
被割断基板10は、テーブル22に載置された状態で、矢印20で示される方向に移動される。また、初期亀裂形成手段4のスクライブホイール43を用いて、予め設定された割断予定線10aの端部に微小な初期亀裂40が付けられる。
【0053】
初期亀裂40を付けた後は、アクチュエータ41をZ方向上向きに動かし、スクライブホイール43を被割断基板10から遠ざける。
【0054】
引き続き、割断予定線10aは、レーザ光線照射ユニット5から出射される加熱ビーム50により加熱され、冷却ユニット6から吹き付けられる冷却ミスト60によって冷却される。この一連の動作によって、微小な初期亀裂40が開始点となり、被割断基板10の表面にレーザスクライブと呼ばれる処理が施され、実際のスクライブ線10bが連続して形成される。
【0055】
実際のスクライブ線10bは、時間が経つと、光学的な観察手段では、全く検知できない。しかし、被割断基板10を加熱し、冷却した直後は、ごく僅かではあるが、上面の一部が開口した状態になる。開口した部分10cを観察できるように、位置検出器71を冷却ノズル61の近傍に配置し、開口した部分10cに位置検出器71の測定用光線70を照射する。
【0056】
図3は、本発明のレーザスクライブ装置のシステム構成図である。
図3に示すように、制御部9には、制御用コンピュータ90と、情報入力手段91と、情報出力手段92と、発報手段93と、情報記録手段94と、機器制御ユニット95とが接続されて含まれている。
【0057】
制御用コンピュータ90としては、マイコン、パソコン、ワークステーションなどの、数値演算ユニットが搭載されたものが例示される。
情報入力手段91としては、キーボードやマウスやスイッチなどが例示される。
情報出力手段92としては、画像表示ディスプレイやランプなどが例示される。
【0058】
発報手段93としては、ブザーやスピーカ、ランプなど、作業者に注意喚起できるものが例示される。
情報記録手段94としては、メモリーカードやデータディスクなどの、半導体記録媒体や磁気記録媒体や光磁気記録媒体などが例示される。
機器制御ユニット95としては、プログラマブルコントローラやモーションコントローラと呼ばれる機器などが例示される。
【0059】
機器制御ユニット95には、X軸ステージ21と、Y1軸ステージ31と、イニシャルクラック生成手段部4のアクチュエータ41と、レーザ発信器51と、ミスト60のON/OFF切替用制御バルブ、Y2軸ステージ54、Y3軸ステージ62、位置検出器71と、その他の制御機器(図示せず)とが、接続されている。
【0060】
機器制御ユニット95は、前述の接続された各機器に対して制御用信号を与えることにより、前記各機器を動作させたり静止させたりすることができるようになっている。
【0061】
スクライブ位置やスクライブに必要な諸条件の設定は、制御部9の制御コンピュータ90に接続された、情報入力手段91を用いて行われ、情報表示手段92によって確認することができる。また、前記設定は、適宜読み出し、編集し、変更することができ、制御コンピュータ90に接続された情報記録手段94に登録することが可能である。
【0062】
図4は、レーザスクライブ装置1を用いて行う、レーザスクライブの手順を各ステップ毎に示した、フロー図である。
被割断基板10をテーブル22に載置し(s101)、被割断基板10を吸着保持する(s102)。
【0063】
次に、被割断基板10上のアライメントマークを読み取り(s103)、テーブル22上に載置された被割断基板10のアライメント動作を行う。
【0064】
次に、被割断基板10上の割断予定線10aに沿って、レーザスクライブ動作を行う(s104)。この時、位置検出器71を用いて、スクライブ直後の開口した部分10cの位置を検出し、実際のスクライブ線10bの発生位置として検出する(s105)。
【0065】
次に、割断予定線10aに対する、実際のスクライブ線10bの発生位置のY方向のずれ量を演算する(s106)。
【0066】
次に、前記Y方向のずれ量が、予め設定しておいた、適正範囲かどうかを判断する(s107)。
【0067】
もし、前記Y方向のずれ量が適正範囲内であれば、スクライブを継続(s108)し、1ラインのスクライブが終了しているかどうかを判断する(s109)。
【0068】
スクライブ中であれば、スクライブを継続し、再びスクライブ線の発生位置を検出し(s105)、前記ステップ(s106〜s109)を継続する。
【0069】
1ラインのスクライブが終了すれば、それで全てのスクライブが終了かどうかを判断する(s110)。他にスクライブを行う必要があれば、被割断基板10上の割断予定線に沿って、レーザスクライブ動作を行い(s104)、前記ステップ(s105〜s110)を継続する。
【0070】
全てのスクライブが終了すれば、基板載置テーブル22を、被割断基板の払出位置に移動させる。
【0071】
次に、被割断基板10の吸着を解除し(s111)、被割断基板10を基板載置テーブル22から取り出す(s112)。
【0072】
前記ステップs107において、前記Y方向のずれ量が、適正範囲でなければ、事前に選択されたケースA〜Cに従って動作が継続される(s113)。
【0073】
ケースA:加熱ビーム50の照射位置や、冷却ミスト60の噴霧位置をY方向に変更し、スクライブ線の発生位置を変更させる(s114)。
【0074】
この時、割断予定線10aに対して、実際のスクライブ線10bの発生位置が、Y方向の矢印の方向に50μmずれていたとすると、加熱ビーム50の照射位置や、冷却ミスト60の噴霧位置をY方向の矢印と反対方向に50μmずらす。そうすることで、実際のスクライブ線10bの発生位置が、割断予定線10aに近づく。
【0075】
ケースB:そのままの状態で、スクライブを継続させる(s115)。ケースC:スクライブを中断させる(s116)。その後、発報手段93を通じて、作業者にスクライブ位置のY方向のずれ量が適正範囲から外れたことを知らせる(s117)。
【0076】
前記ステップs114において、加熱ビームの照射位置だけを変更したり、冷却ミストの噴霧位置だけを変更したり、共に変更するかは、事前に設定しておく。また、スクライブヘッド全体の位置をY方向に変更しても良い。
【0077】
レーザスクライブ装置1は、前記のように、スクライブ線の発生位置を検出する、位置検出手段である位置検出部7と、割断予定線10aに対するスクライブ線の発生位置のずれ量を演算する、位置ずれ量演算手段である、制御用コンピュータ90を制御部9を含んだ構成をしているので、被割断基板10上に設定された割断予定線に対して、レーザスクライブを行い、その後すぐに実際にスクライブされて開口した部分10cの位置を知ることができる。
【0078】
その上、少なくとも加熱ビーム50の照射位置変更手段若しくは、冷却ミスト60の吹き付け位置変更手段のいずれかを含む構成をしているため、割断予定線10a上に予め設定したY方向の範囲内でレーザスクライブができるように、加熱ビーム50の照射位置や冷却ミスト60の噴霧位置をフィードバック補正しながら逐次変更することができる。
【0079】
加熱ビーム50の照射位置や冷却ミスト60の噴霧位置のどちらを、どの程度変更させるかといったフィードバック補正の条件は、事前に行ったテスト結果を元に決定すれば良い。また、前記フィードバック補正の条件は、制御部9の情報記録手段94に登録し、制御用コンピュータ90にて適宜読み出して用いれば良い。
【0080】
前述のようにすることで、真直度の高いスクライブ線を形成することができ、次工程で基板を割断した時に、割断面の寸法精度が高くなる。割断面の寸法精度が高くなったことにより、フレームにはめ込む場合に、寸法が合わずにはめ込みできないという不具合を減らすことができる。
【0081】
フレームと被割断基板との間に、緩衝材料となるような材料を注入する場合においても、適正な隙間が保てるようになる。その結果、緩衝材料を適切に使用することができ、強度低下を防ぐことができる。
【0082】
また、被割断基板の内部に残留応力がある被割断基板をスクライブする場合や、テーブル22の平坦度が悪い場合や、被割断基板を保持する仕方や重力によって被割断基板基板に外力が加わった場合には、従来のレーザスクライブ装置及び方法では、図5で示した実際の割断線81bの様な現象が頻発していた。
【0083】
しかし、本発明のレーザスクライブ装置及び方法では、予め設定した割断予定線から大きく逸脱することなく、連続したスクライブ線が形成された。そのため、割断不良で廃棄する基板が減り、歩留まりが向上した。
【実施例】
【0084】
被割断基板10として、X方向に500mm、Y方向に400mm、Z方向に(厚さ)0.7mmの、無アルカリガラスを用い、矢印20の方向に200mm/秒の速度で、レーザスクライブを行った。従来の装置及び方法を用いてレーザスクライブした場合では、Y方向に±70〜100μmの範囲であった。本発明の装置及び方法を用いてレーザスクライブした後、割断後の実際の割断線の位置を測定したところ、予め設定された割断予定線に対して、Y方向に±10〜30μmの範囲であった。よって、本発明の装置及び方法を用いることで、スクライブ線の直進性が向上したことが認められた。











【符号の説明】
【0085】
1 レーザスクライブ装置
2 ステージ部
3 スクライブヘッド部
4 初期亀裂形成手段
5 レーザ光線照射ユニット
6 冷却ユニット
7 スクライブ位置検出部
9 制御部
10 被割断基板
10a 割断予定線
10b 実際のスクライブ線
10c 開口した部分
11 装置ベース
12 支柱
13 梁部
20 矢印
21 X軸ステージ
22 テーブル
30 筐体
31 Y1軸ステージ
40 初期亀裂
41 アクチュエータ
42 ホイールホルダ
43 スクライブホイール
50 加熱ビーム
51 レーザ発信器
52 レーザ光線
53 ミラー
54 Y2軸ステージ
55 ホルダ
56 レンズ
60 冷却ミスト
61 冷却ノズル
62 Y3軸ステージ
70 計測用光線
71 位置検出器
81a スクライブ予定線
81b 実際の割断線
82a スクライブ予定線
82b 実際の割断線
83a スクライブ予定線
83b 実際の割断線
90 制御用コンピュータ
91 情報入力手段
92 情報表示手段
93 発報手段
94 情報記録手段
95 機器制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被割断基板上の予め設定された割断予定線に沿って、スクライブ線が形成されるように、レーザ光線からなる加熱ビームを照射させる手段と、冷却剤を吹き付ける手段とを備えた、レーザスクライブ装置において、
前記スクライブ線の発生位置を検出する、位置検出手段と、
前記割断予定線に対する、前記スクライブ線の発生位置のずれ量を演算する、位置ずれ量演算手段と、
前記割断予定線に対するスクライブ線の発生位置を変更できる、スクライブ位置変更手段とを備えることを特徴とする、レーザスクライブ装置。
【請求項2】
前記スクライブ線の形成中に、前記位置ずれ量演算手段からの情報を用いて、前記スクライブ線の発生位置を調節ができることを特徴とする、
請求項1に記載のレーザスクライブ装置
【請求項3】
前記スクライブ位置変更手段が、少なくとも前記加熱ビームの照射位置を変更させる手段若しくは、前記冷却剤の吹き付ける位置を変更させる手段のいずれかを含むことを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載のレーザスクライブ装置。
【請求項4】
被割断基板上の予め設定された割断予定線に沿って、スクライブ線が形成されるように、レーザ光線からなる加熱ビームを照射させるステップと、冷却剤を吹き付けるステップとを有する、レーザスクライブ方法において、
前記スクライブ線の発生位置を検出する、位置検出ステップと、
前記割断予定線に対する、前記スクライブ線の発生位置のずれ量を演算する、位置ずれ量演算ステップと、
前記割断予定線に対するスクライブ線の発生位置を調節する、スクライブ位置変更ステップを有することを特徴とする、レーザスクライブ方法。
【請求項5】
前記スクライブ線を形成しながら、前記位置ずれ量演算ステップにおける情報を用いて、前記スクライブ位置変更ステップにおける前記スクライブ線の発生位置を調節するステップを有することを特徴とする、
請求項4に記載のレーザスクライブ方法。
【請求項6】
前記スクライブ位置変更ステップが、少なくとも前記加熱ビームの照射位置を変更させるステップ若しくは、前記冷却剤の吹き付ける位置を変更させるステップのいずれかを有することを特徴とする、
請求項4又は請求項5に記載のレーザスクライブ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20140(P2011−20140A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166658(P2009−166658)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】