説明

レーザプロジェクタ

【課題】良好な3D映像を表示可能なレーザプロジェクタを実現する。
【解決手段】レーザプロジェクタ100のレーザ光源1、2、3から出射したレーザ光の偏光方向をλ/2変調素子5によって変換し、左目用画像に対応するレーザ光と右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向が垂直をなすように切り替えた後、さらにλ/4位相差板6によって左目用画像に対応するレーザ光を左円偏光、右目用画像に対応するレーザ光を右円偏光に変化させて、そのレーザ光を走査型投影ミラー7でスクリーンSに走査して、画像信号に基づく左目用画像と右目用画像を交互に表示することで、レーザプロジェクタ100は、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源からの光を投影面に走査して画像を表示させるレーザプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを光源とするレーザプロジェクタとして、例えば、共振ミラーによる反射によって、レーザ光源からのレーザ光を2軸方向に走査してスクリーンに照射し、画像を表示させる技術が知られている。
【0003】
そして、レーザ光源から出射されたレーザ光が、波長変換素子(SHG素子)を通過することによって、ほぼ半分の波長の光に変換された後、共振ミラーの反射によって画像を投影する画像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この画像表示装置は、レーザ光源ユニットのレーザ光源に入力される電流または電圧におけるピーク値及びデューティを検出し、その検出結果に基づいてレーザ光源ユニットの駆動条件を補正して、レーザ光源から所望の光量を得ることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−130968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、家庭用液晶テレビにおいて3D映像を楽しむニーズが高まっており、より大画面の映像を表示できるレーザプロジェクタによっても高精細な3D映像を表示させる要望がある。
【0006】
本発明の目的は、良好な3D映像を表示可能なレーザプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
画像信号に基づき、左目用画像に関するレーザ光と右目用画像に関するレーザ光を交互に出射するRGBの3色のレーザ光源と、
前記レーザ光源が出射したレーザ光を、左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替える偏光切替手段と、
前記偏光切替手段により偏光方向が切り替えられた前記レーザ光を投影面上に走査する走査手段と、
を備え、前記投影面に前記画像信号に基づく左目用画像と右目用画像を表示するレーザプロジェクタであって、
前記偏光切替手段は、透明基板を対向配置した基板対と、前記基板対に設けた透明電極を対向配置した電極対と、前記電極対間に液晶を介装した液晶層と、を備えており、前記電極対間に駆動電圧が印加されることによって前記液晶の配列を切り替え、当該偏光切替手段を通過する前記レーザ光の偏光方向を切り替えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記走査手段の動作状況を監視する走査状況監視手段と、
前記走査状況監視手段の監視により検出した前記走査手段の動作状況を示すパラメータに対応する温度データに基づき、前記電極対間に印加する前記駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記レーザ光源が出射する前記レーザ光の出力を監視するレーザ光監視手段と、
前記レーザ光監視手段の監視により検出した前記レーザ光の出力値に対応する温度データに基づき、前記電極対間に印加する前記駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRGB3色のレーザ光に共通する一組の電極対を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRG2色のレーザ光に対応するRG用電極対と、Bのレーザ光に対応するB用電極対との二組の電極対を備え、
前記RG用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRのレーザ光に対応するR用電極対と、Gのレーザ光に対応するG用電極対と、Bのレーザ光に対応するB用電極対との三組の電極対を備え、
前記R用電極対の間の液晶層の厚みと、前記G用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記偏光切替手段は、二組の基板対と、前記二組の基板対の一方の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRG2色のレーザ光に対応するRG用電極対と、他方の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるBのレーザ光に対応するB用電極対と、の二組の電極対を備え、
前記RG用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタにおいて、
前記偏光切替手段は、三組の基板対と、前記三組の基板対の第1の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRのレーザ光に対応するR用電極対と、第2の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるGのレーザ光に対応するG用電極対と、第3の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるBのレーザ光に対応するB用電極対と、の三組の電極対を備え、
前記R用電極対の間の液晶層の厚みと、前記G用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザプロジェクタのレーザ光源から出射したレーザ光の偏光方向を偏光切替手段によって変換して、左目用画像に関するレーザ光と右目用画像に関するレーザ光の偏光方向が、例えば垂直をなすように異なる2つの偏光方向に切り替えることができ、左目用画像に対応するレーザ光と右目用画像に対応するレーザ光とを走査手段によって投影面に走査して、画像信号に基づく左目用画像と右目用画像を交互に表示することができる。
この偏光切替手段は、電極対間に液晶を介装した液晶層を備えており、その電極対間に駆動電圧を印加することによって、液晶の配列を切り替えて、その液晶を通過するレーザ光の偏光方向を良好に切り替えることができるので、レーザプロジェクタは、投影面に3D映像(立体映像)とする左目用画像と右目用画像を良好に表示することができる。
このように、レーザプロジェクタは、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るレーザプロジェクタの要部を示す構成図である。
【図2】レーザプロジェクタにおけるλ/2変調素子を示す説明図である。
【図3】走査型投影ミラーの温度依存相関図の一例である。
【図4】レーザ光源の温度依存相関図の一例である。
【図5】液晶分子移動量の温度依存相関図の一例である。
【図6】実施形態2のレーザプロジェクタの要部を示す構成図である。
【図7】実施形態3のレーザプロジェクタにおけるλ/2変調素子を示す説明図である。
【図8】実施形態4のレーザプロジェクタにおけるλ/2変調素子を示す説明図である。
【図9】実施形態5のレーザプロジェクタの要部を示す構成図(a)と、実施形態5のレーザプロジェクタにおけるλ/2変調素子を示す説明図(b)である。
【図10】実施形態6のレーザプロジェクタの要部を示す構成図(a)と、実施形態6のレーザプロジェクタにおけるλ/2変調素子を示す説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、発明の範囲は図示例に限定されない。
本発明にかかるレーザプロジェクタは、そのレーザプロジェクタにより表示された映像(画像)を、偏光眼鏡を着用する方式で3D映像(立体映像)として認識させる表示装置である。
【0018】
(実施形態1)
レーザプロジェクタ100は、例えば、図1に示すように、レーザ光源1、2、3と、レーザ光源1、2、3が出射した各レーザ光を反射して1つの光線に合波するミラー部4と、レーザ光源1、2、3が出射したレーザ光の偏光方向を左目用画像と右目用画像に応じて切り替える偏光切替手段としてのλ/2変調素子5と、線偏光を円偏光に変化させるλ/4位相差板6と、合波されたレーザ光を投影面であるスクリーンS上に走査する走査手段としての走査型投影ミラー7と、各部を制御するコントローラ8等を備えて構成される。
なお、本実施形態においてλ/2変調素子5は、レーザ光源1、2、3とミラー部4との間のレーザ光の光路に配置されている。また、λ/4位相差板6は、合波されたレーザ光の光路となるミラー部4と走査型投影ミラー7との間に配置されている。
【0019】
レーザ光源1、2、3は、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、左目用画像に関するレーザ光と右目用画像に関するレーザ光を交互に出射する。
レーザ光源1、2、3は、例えば半導体レーザ(LD:Laser Diode)であり、レーザ光源1は赤色レーザ光、レーザ光源2は緑色レーザ光、レーザ光源3は青色レーザ光を出射する。
【0020】
ミラー部4は、レーザ光源1が出射したレーザ光(赤色レーザ光)を反射するダイクロイックミラー4rと、レーザ光源2が出射したレーザ光(緑色レーザ光)を反射するダイクロイックミラー4gと、レーザ光源3が出射したレーザ光(青色レーザ光)を反射する全反射ミラー4bを備えている。
このミラー部4は、レーザ光源1、2、3が出射した3色のレーザ光を1つの光線に合波するように反射し、反射して合波したレーザ光を走査型投影ミラー7(λ/4位相差板6)に向けて射出する。
【0021】
λ/2変調素子5は、例えば、図2に示すように、透明基板51を対向配置した基板対51,51と、基板対51,51に設けた透明電極52を対向配置した電極対52,52と、電極対52,52に設けた配向膜53を介して電極対52,52(透明電極52)間に液晶を介装した液晶層54等を備えている。
このλ/2変調素子5は、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、電極対52,52(透明電極52)間に駆動電圧が印加されることにより液晶層54の液晶の配列を切り替え、λ/2変調素子5を通過するレーザ光を左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替える。
具体的に、電極対52,52間に、例えば−Vの駆動電圧が印加された状態では、λ/2変調素子5に入射したレーザ光は偏光方向が90°変換されて通過し、また、電極対52,52間に、例えば+Vの駆動電圧が印加された状態では、λ/2変調素子5に入射したレーザ光は偏光方向0°の変換で、偏光方向は変化されずに通過するようになっている。つまり、λ/2変調素子5は、例えば、左目用画像に関するレーザ光に対しては+Vの駆動電圧を印加した状態でレーザ光の偏光方向を0°変換し、右目用画像に関するレーザ光に対しては−Vの駆動電圧を印加した状態でレーザ光の偏光方向を90°変換して、左目用画像に対応するレーザ光と右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向が垂直をなすように切り替える。
こうして、左目用画像に対応するレーザ光は偏光方向が0°の線偏光に切り替えられ、右目用画像に対応するレーザ光は偏光方向が90°の線偏光に切り替えられる。
なお、λ/2変調素子5が、左目用画像と右目用画像を切り替える間のブランキングタイム中に偏光状態を完全に切り替える必要があるので、例えば、1[ms]のブランキングタイム中に応答が完了するように、高速応答が可能な液晶、例えば、強誘電性液晶(FLC)を液晶層54に用いている。
【0022】
また、レーザ光源1、2、3がそれぞれ出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光の中心波長(λ)をλ、λ、λとし、その各色レーザ光の中心波長に対する複屈折率(Δn)をΔn、Δn、Δnとした場合、λ/2変調素子5の液晶層54の厚みdは、以下の式(1)を満たすことが好ましい。

d=(λ+λ+λ)/2(Δn+Δn+Δn) … (1)

λ/2変調素子5の液晶層54の厚みdが、式(1)を満たすようにすることで、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向とが垂直をなすように良好に切り替えることができる。
このλ/2変調素子5の液晶層54に用いる液晶は、例えば、単安定型強誘電性液晶である。
なお、λ/2変調素子5における液晶層54の液晶分子が、電圧が印加された際に移動し配列が切り替わることを利用して、λ/2変調素子5を通過するレーザ光の偏光方向を切り替えるようなっているが、液晶分子の移動量には温度依存性があるので、後述するコントローラ8の制御によって、温度条件に応じた駆動電圧がλ/2変調素子5の電極対52,52に印加されることで、適切な液晶分子移動量で液晶の配列が切り替えられるようになっている。
【0023】
λ/4位相差板6は、λ/4位相差板6を通過するレーザ光の線偏光を円偏光に変化させる機能を有している。λ/4位相差板6は、例えば、左目用画像に対応して偏光方向が0°の線偏光とされたレーザ光を左円偏光に変化させ、右目用画像に対応して偏光方向が90°の線偏光とされたレーザ光を右円偏光に変化させる。
なお、λ/4位相差板6は、偏光切替手段の一部として機能する。
【0024】
走査型投影ミラー7は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術を利用した電磁駆動型のMEMSミラーであり、電磁的な駆動によってレーザ光源1、2、3からのレーザ光を二次元方向に反射させ、スクリーンSにレーザ光を走査して投影する機能を有している。例えば、走査型投影ミラー7は、その走査型投影ミラー7固有の共振周波数に応じて駆動されてレーザ光を走査するようになっている。
この走査型投影ミラー7は、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、スクリーンSにレーザ光を走査して画像信号に基づく左目用画像と右目用画像を表示する。
【0025】
コントローラ8は、例えば、画像信号に基づき、レーザ光源1、2、3から左目用画像に対応するレーザ光と右目用画像に対応するレーザ光を交互に出射させる制御を実行する。
また、コントローラ8は、例えば、画像信号に基づき、λ/2変調素子5の電極対52,52(透明電極52)間に駆動電圧を印加して、λ/2変調素子5を通過するレーザ光の偏光方向を左目用画像と右目用画像に応じて切り替える制御を実行する。
また、コントローラ8は、例えば、画像信号に基づき、レーザ光源1、2、3からのレーザ光を二次元方向に反射させ、スクリーンSにレーザ光を走査して画像を投影させる制御を実行する。
【0026】
特に、コントローラ8は、走査型投影ミラー7の動作状況を監視する走査状況監視手段として機能するとともに、その走査状況監視手段としてのコントローラ8の監視により検出した走査型投影ミラー7の動作状況(走査駆動)を示すパラメータに対応する温度データに基づき、λ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段として機能する。
具体的に、走査状況監視手段としてのコントローラ8が、走査型投影ミラー7の動作状況(走査駆動)を示すパラメータである共振周波数が21438[Hz]であると検出した場合、例えば、図3に示す走査型投影ミラー7の温度依存相関図に基づき、共振周波数21438[Hz]に対応する温度データは35℃であると判断する。
更に、駆動電圧調整手段としてのコントローラ8が、例えば、図5に示すλ/2変調素子5における液晶層54の液晶分子移動量の温度依存相関図に基づき、温度データ35℃に対応する駆動電圧をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する制御を実行する。例えば、レーザ光の偏光方向を良好に切り替えることに適する液晶分子移動量が50[deg]である場合、図5に示す液晶分子移動量の温度依存相関図に基づき、35℃の温度条件に対応し、液晶分子移動量50[deg]に応じた駆動電圧(例えば、6[V])をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する制御を実行する。
ここで、λ/2変調素子5の電極対52,52間に駆動電圧を印加することにより液晶層54の液晶の配列が切り替わる際の液晶分子移動量には、温度依存性があるので、例えば、液晶分子移動量を50[deg]とするには、その環境温度に応じて駆動電圧を調整する必要がある。そのため、走査型投影ミラー7が共振周波数21438[Hz]で作動している際の環境温度は35℃であると判断し、35℃の際に液晶層54の液晶分子移動量が50[deg]となる駆動電圧(ここでは、6[V])をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加するように、コントローラ8による制御がなされる。
【0027】
また、コントローラ8は、レーザ光源1、2、3が出射するレーザ光の出力を監視するレーザ光監視手段として機能するとともに、そのレーザ光監視手段としてのコントローラ8の監視により検出したレーザ光の出力値に対応する温度データに基づき、λ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段として機能する。
具体的に、レーザ光監視手段としてのコントローラ8が、レーザ光源1、2、3が出射しているレーザ光の出力値が9[mV]であると検出した場合、例えば、図4に示すレーザ光源1、2、3の温度依存相関図に基づき、レーザ光の出力値9[mV]に対応する温度データは35℃であると判断する。
更に、駆動電圧調整手段としてのコントローラ8が、例えば、図5に示すλ/2変調素子5における液晶層54の液晶分子移動量の温度依存相関図に基づき、温度データ35℃に対応する駆動電圧をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する制御を実行する。例えば、レーザ光の偏光方向を良好に切り替えることに適する液晶分子移動量が50[deg]である場合、図5に示す液晶分子移動量の温度依存相関図に基づき、35℃の温度条件に対応し、液晶分子移動量50[deg]に応じた駆動電圧(例えば、6[V])をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する制御を実行する。
ここで、λ/2変調素子5の電極対52,52間に駆動電圧を印加することにより液晶層54の液晶の配列が切り替わる際の液晶分子移動量には、温度依存性があるので、例えば、液晶分子移動量を50[deg]とするには、その環境温度に応じて駆動電圧を調整する必要がある。そのため、レーザ光源1、2、3が出射しているレーザ光の出力値が9[mV]である際の環境温度は35℃であると判断し、35℃の際に液晶層54の液晶分子移動量が50[deg]となる駆動電圧(ここでは、6[V])をλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加するように、コントローラ8による制御がなされる。
【0028】
なお、レーザプロジェクタ100において、上述した走査状況監視手段および駆動電圧調整手段としてのコントローラ8の機能と、レーザ光監視手段および駆動電圧調整手段としてのコントローラ8の機能は、少なくとも一方の機能を実行可能であればよい。
【0029】
このようなレーザプロジェクタ100であれば、レーザ光源1、2、3から出射したレーザ光の偏光方向をλ/2変調素子5によって変換し、左目用画像に対応するレーザ光と右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向が垂直をなすように切り替えることができ、さらに左目用画像に対応するレーザ光を左円偏光、右目用画像に対応するレーザ光を右円偏光に変化させて、そのレーザ光をスクリーンSに走査して画像を投影することができる。
そして、レーザプロジェクタ100は、左円偏光のレーザ光をスクリーンSに走査して投影した左目用画像と、右円偏光のレーザ光をスクリーンSに走査して投影した右目用画像とを、交互に表示することができるので、ユーザは、左右のレンズ枠に偏光方向が直交する偏光フィルムと、λ/4フィルムを取り付けた偏光眼鏡を掛けて、その画像(映像)を見ることによって、スクリーンS上の画像を立体画像として認識でき、良好な3D映像を楽しむことができる。
【0030】
以上のように、レーザプロジェクタ100は、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
特に、レーザプロジェクタ100は、温度センサなどの温度検出器を構成に加えることなく、コントローラ8による監視によって検出した、走査型投影ミラー7の動作状況を示すパラメータである共振周波数や、レーザ光源1、2、3が出射しているレーザ光の出力値に基づき、レーザプロジェクタ100が作動している環境温度を判断することができるので、その温度条件に応じてλ/2変調素子5の電極対52,52間に印加する駆動電圧を適切に調整することができ、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向が垂直をなすように良好に切り替えることができる。
【0031】
(実施形態2)
次に、本発明に係るレーザプロジェクタの実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0032】
レーザプロジェクタ101は、例えば、図6に示すように、λ/2変調素子5を、ミラー部4とλ/4位相差板6との間であり、合波されたレーザ光の光路に配置したものである。
このようなレーザプロジェクタ101であれば、実施形態1のレーザプロジェクタ100と同様の効果を奏することができる。
特に、レーザプロジェクタ101におけるλ/2変調素子5は、レーザ光源1、2、3が出射した3色のレーザ光が1つの光線に合波された光路に配されるので、実施形態1よりもλ/2変調素子5をコンパクトなサイズにすることができ、λ/2変調素子5の配置構成の自由度があがる。
【0033】
(実施形態3)
次に、本発明に係るレーザプロジェクタの実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0034】
実施形態3のレーザプロジェクタは、図1に示すレーザプロジェクタ100のλ/2変調素子5を、図7に示すλ/2変調素子15としたものである。
【0035】
λ/2変調素子15は、例えば、図7に示すように、透明基板51を対向配置した一組の基板対51,51と、その基板対51,51に設けられ、透明電極52と透明電極52bを対向配置したB用電極対52,52bと、透明電極52と透明電極52rgを対向配置したRG用電極対52,52rgとの二組の電極対を備えている。また、透明電極52の表面には配向膜53、透明電極52bの表面には配向膜53b、透明電極52rgの表面には配向膜53rgがそれぞれ設けられており、各配向膜を介して二組の電極対間(基板対51,51)に液晶層54が設けられている。
なお、B用電極対52,52bは、レーザ光源3から出射される青色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、RG用電極対52,52rgは、レーザ光源1、2から出射される赤色レーザ光および緑色レーザ光が透過する位置に対応して設けられている。
【0036】
このλ/2変調素子15も、実施形態1のλ/2変調素子5と同様に、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、B用電極対52,52bとRG用電極対52,52rgの二組の電極対間に駆動電圧が印加されることにより液晶層54の液晶の配列を切り替え、λ/2変調素子15を通過するレーザ光を左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替えることができる。
【0037】
また、レーザ光源1、2、3がそれぞれ出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光の中心波長(λ)をλ、λ、λとし、その各色レーザ光の中心波長に対する複屈折率(Δn)をΔn、Δn、Δnとした場合、λ/2変調素子15におけるB用電極対52,52b間の液晶層54の厚みdIと、RG用電極対52,52rg間の液晶層54の厚みdIIは、以下の式(2)、式(3)を満たすことが好ましい。

dI=λ/2Δn … (2)
dII=(λ+λ)/2(Δn+Δn) … (3)

λ/2変調素子15の液晶層54の厚みdI、dIIが、それぞれ式(2)、式(3)を満たすようにすることで、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向とが垂直をなすように良好に切り替えることができる。
【0038】
ここで、λ/2変調素子15において、青色レーザ光が通過するB用電極対52,52b間の液晶層54の厚みdIと、赤色レーザ光および緑色レーザ光が通過するRG用電極対52,52rg間の液晶層54の厚みdIIを、それぞれ異なるようにした理由は、レーザ光の波長域が色毎に異なることによる。
そして、赤色レーザ光と緑色レーザ光の波長域が比較的近いことに対し、青色レーザ光の波長域は、赤色レーザ光および緑色レーザ光の波長域から離れているので、青色レーザ光に対応する液晶層54の厚みdIを、赤色レーザ光および緑色レーザ光に対応する液晶層54の厚みdIIと異なるように設定している。
こうして、レーザ光の色毎に液晶層54の厚みを異ならせて、上記した式(2)、式(3)を満たすようにすることによって、各レーザ光の偏光方向をより適切に切り替えることができるので、より良好な3D映像の表示が可能になる。
【0039】
以上のように、λ/2変調素子15を備えるレーザプロジェクタであっても、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
【0040】
(実施形態4)
次に、本発明に係るレーザプロジェクタの実施形態4について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0041】
実施形態4のレーザプロジェクタは、図1に示すレーザプロジェクタ100のλ/2変調素子5を、図8に示すλ/2変調素子25としたものである。
【0042】
λ/2変調素子25は、例えば、図8に示すように、透明基板51を対向配置した一組の基板対51,51と、その基板対51,51に設けられ、透明電極52と透明電極52bを対向配置したB用電極対52,52bと、透明電極52と透明電極52gを対向配置したG用電極対52,52gと、透明電極52と透明電極52rを対向配置したR用電極対52,52rとの三組の電極対を備えている。また、透明電極52の表面には配向膜53、透明電極52bの表面には配向膜53b、透明電極52gの表面には配向膜53g、透明電極52rの表面には配向膜53rがそれぞれ設けられており、各配向膜を介して三組の電極対間(基板対51,51)に液晶層54が設けられている。
なお、B用電極対52,52bは、レーザ光源3から出射される青色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、G用電極対52,52gは、レーザ光源2から出射される緑色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、R用電極対52,52rは、レーザ光源1から出射される赤色レーザ光が透過する位置に対応して設けられている。
【0043】
このλ/2変調素子25も、実施形態1のλ/2変調素子5と同様に、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、B用電極対52,52bと、G用電極対52,52gと、R用電極対52,52rとの三組の電極対間に駆動電圧が印加されることにより液晶層54の液晶の配列を切り替え、λ/2変調素子25を通過するレーザ光を左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替えることができる。
【0044】
また、レーザ光源1、2、3がそれぞれ出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光の中心波長(λ)をλ、λ、λとし、その各色レーザ光の中心波長に対する複屈折率(Δn)をΔn、Δn、Δnとした場合、λ/2変調素子25におけるB用電極対52,52b間の液晶層54の厚みdIと、G用電極対52,52g間の液晶層54の厚みdIIと、R用電極対52,52r間の液晶層54の厚みdIIIは、以下の式(4)、式(5)、式(6)を満たすことが好ましい。

dI=λ/2Δn … (4)
dII=λ/2Δn … (5)
dIII=λ/2Δn … (6)

λ/2変調素子25の液晶層54の厚みdI、dII、dIIIが、それぞれ式(4)〜(6)を満たすようにすることで、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向とが垂直をなすように良好に切り替えることができる。
【0045】
ここで、λ/2変調素子25において、青色レーザ光が通過するB用電極対52,52b間の液晶層54の厚みdIと、緑色レーザ光が通過するG用電極対52,52g間の液晶層54の厚みdIIと、赤色レーザ光が通過するR用電極対52,52r間の液晶層54の厚みdIIIを、それぞれ異なるようにした理由は、レーザ光の波長域が色毎に異なることによる。
こうして、レーザ光の色毎に液晶層54の厚みを異ならせて、上記した式(4)〜(6)を満たすようにすることによって、各レーザ光の偏光方向をより適切に切り替えることができるので、より良好な3D映像の表示が可能になる。
【0046】
以上のように、λ/2変調素子25を備えるレーザプロジェクタであっても、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
【0047】
(実施形態5)
次に、本発明に係るレーザプロジェクタの実施形態5について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0048】
レーザプロジェクタ102は、例えば、図9に示すように、レーザ光源1、2、3と、レーザ光源1、2、3が出射した各レーザ光を反射して1つの光線に合波するミラー部4と、レーザ光源1、2、3が出射したレーザ光の偏光方向を左目用画像と右目用画像に応じて切り替える偏光切替手段としてのλ/2変調素子35と、線偏光を円偏光に変化させるλ/4位相差板6と、合波されたレーザ光を投影面であるスクリーンS上に走査する走査手段としての走査型投影ミラー7と、各部を制御するコントローラ8等を備えて構成される。
なお、本実施形態においてλ/2変調素子35は、レーザ光源1、2、3とミラー部4との間のレーザ光の光路に配置されている。また、λ/4位相差板6は、合波されたレーザ光の光路となるミラー部4と走査型投影ミラー7との間に配置されている。
【0049】
λ/2変調素子35は、例えば、図9に示すように、透明基板51rgを対向配置した基板対51rg,51rgと、透明基板51bを対向配置した基板対51b,51bと、の二組の基板対を有し、一方の基板対51rg,51rgを含むRG用変調素子35rgと、他方の基板対51b,51bを含むB用変調素子35bとを有している。
そして、λ/2変調素子35のRG用変調素子35rgは、一方の基板対51rg,51rgに設けた透明電極52rgを対向配置したRG用電極対52rg,52rgと、RG用電極対52rg,52rgに設けた配向膜53rgを介してRG用電極対52rg,52rg(透明電極52rg)間に液晶を介装した液晶層54rgを備えている。また、λ/2変調素子35のB用変調素子35bは、他方の基板対51b,51bに設けた透明電極52bを対向配置したB用電極対52b,52bと、B用電極対52b,52bに設けた配向膜53bを介してB用電極対52b,52b(透明電極52b)間に液晶を介装した液晶層54bを備えている。
なお、RG用変調素子35rg及びそのRG用電極対52rg,52rgは、レーザ光源1、2から出射される赤色レーザ光および緑色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、B用変調素子35b及びそのB用電極対52b,52bは、レーザ光源3から出射される青色レーザ光が透過する位置に対応して設けられている。
【0050】
このλ/2変調素子35も、実施形態1のλ/2変調素子5と同様に、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、RG用電極対52rg,52rgとB用電極対52b,52bの二組の電極対間に駆動電圧が印加されることにより液晶層54rgと液晶層54bの液晶の配列を切り替え、λ/2変調素子35を通過するレーザ光を左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替えることができる。
【0051】
また、レーザ光源1、2、3がそれぞれ出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光の中心波長(λ)をλ、λ、λとし、その各色レーザ光の中心波長に対する複屈折率(Δn)をΔn、Δn、Δnとした場合、λ/2変調素子35におけるB用電極対52b,52b間の液晶層54bの厚みdIと、RG用電極対52rg,52rg間の液晶層54rgの厚みdIIは、以下の式(2)、式(3)を満たすことが好ましい。

dI=λ/2Δn … (2)
dII=(λ+λ)/2(Δn+Δn) … (3)

λ/2変調素子35の液晶層54bと液晶層54rgの各厚みdI、dIIが、それぞれ式(2)、式(3)を満たすようにすることで、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向とが垂直をなすように良好に切り替えることができる。
【0052】
ここで、λ/2変調素子35において、青色レーザ光が通過するB用電極対52b,52b間の液晶層54bの厚みdIと、赤色レーザ光および緑色レーザ光が通過するRG用電極対52rg,52rg間の液晶層54rgの厚みdIIを、それぞれ異なるようにした理由は、レーザ光の波長域が色毎に異なることによる。
そして、赤色レーザ光と緑色レーザ光の波長域が比較的近いことに対し、青色レーザ光の波長域は、赤色レーザ光および緑色レーザ光の波長域から離れているので、青色レーザ光に対応する液晶層54bの厚みdIを、赤色レーザ光および緑色レーザ光に対応する液晶層54rgの厚みdIIと異なるように設定している。
こうして、レーザ光の色毎に液晶層54bと液晶層54rgの厚みを異ならせて、上記した式(2)、式(3)を満たすようにすることによって、各レーザ光の偏光方向をより適切に切り替えることができるので、より良好な3D映像の表示が可能になる。
【0053】
以上のように、λ/2変調素子35を備えるレーザプロジェクタであっても、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
【0054】
(実施形態6)
次に、本発明に係るレーザプロジェクタの実施形態6について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0055】
レーザプロジェクタ103は、例えば、図10に示すように、レーザ光源1、2、3と、レーザ光源1、2、3が出射した各レーザ光を反射して1つの光線に合波するミラー部4と、レーザ光源1、2、3が出射したレーザ光の偏光方向を左目用画像と右目用画像に応じて切り替える偏光切替手段としてのλ/2変調素子45と、線偏光を円偏光に変化させるλ/4位相差板6と、合波されたレーザ光を投影面であるスクリーンS上に走査する走査手段としての走査型投影ミラー7と、各部を制御するコントローラ8等を備えて構成される。
なお、本実施形態においてλ/2変調素子45は、レーザ光源1、2、3とミラー部4との間のレーザ光の光路に配置されている。また、λ/4位相差板6は、合波されたレーザ光の光路となるミラー部4と走査型投影ミラー7との間に配置されている。
【0056】
λ/2変調素子45は、例えば、図10に示すように、透明基板51rを対向配置した第1の基板対51r,51rと、透明基板51gを対向配置した第2の基板対51g,51gと、透明基板51bを対向配置した第3の基板対51b,51bと、の三組の基板対を有し、第1の基板対51r,51rを含むR用変調素子45rと、第2の基板対51g,51gを含むG用変調素子45gと、第3の基板対51b,51bを含むB用変調素子45bとを有している。
そして、λ/2変調素子45のR用変調素子45rは、第1の基板対51r,51rに設けた透明電極52rを対向配置したR用電極対52r,52rと、R用電極対52r,52rに設けた配向膜53rを介してR用電極対52r,52r(透明電極52r)間に液晶を介装した液晶層54rを備えている。また、λ/2変調素子45のG用変調素子45gは、第2の基板対51g,51gに設けた透明電極52gを対向配置したG用電極対52g,52gと、G用電極対52g,52gに設けた配向膜53gを介してG用電極対52g,52g(透明電極52g)間に液晶を介装した液晶層54gを備えている。また、λ/2変調素子45のB用変調素子45bは、第3の基板対51b,51bに設けた透明電極52bを対向配置したB用電極対52b,52bと、B用電極対52b,52bに設けた配向膜53bを介してB用電極対52b,52b(透明電極52b)間に液晶を介装した液晶層54bを備えている。
なお、R用変調素子45r及びそのR用電極対52r,52rは、レーザ光源1から出射される赤色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、G用変調素子45g及びそのG用電極対52g,52gは、レーザ光源2から出射される緑色レーザ光が透過する位置に対応して設けられており、B用変調素子45b及びそのB用電極対52b,52bは、レーザ光源3から出射される青色レーザ光が透過する位置に対応して設けられている。
【0057】
このλ/2変調素子45も、実施形態1のλ/2変調素子5と同様に、画像信号に基づくコントローラ8の制御によって、R用電極対52r,52rと、G用電極対52g,52gと、B用電極対52b,52bとの三組の電極対間に駆動電圧が印加されることにより液晶層54rと液晶層54gと液晶層54bの液晶の配列を切り替え、λ/2変調素子45を通過するレーザ光を左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替えることができる。
【0058】
また、レーザ光源1、2、3がそれぞれ出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光の中心波長(λ)をλ、λ、λとし、その各色レーザ光の中心波長に対する複屈折率(Δn)をΔn、Δn、Δnとした場合、λ/2変調素子45におけるB用電極対52,52b間の液晶層54bの厚みdIと、G用電極対52g,52g間の液晶層54gの厚みdIIと、R用電極対52r,52r間の液晶層54rの厚みdIIIは、以下の式(4)、式(5)、式(6)を満たすことが好ましい。

dI=λ/2Δn … (4)
dII=λ/2Δn … (5)
dIII=λ/2Δn … (6)

λ/2変調素子45の液晶層54b、54g、54rの各厚みdI、dII、dIIIが、それぞれ式(4)〜(6)を満たすようにすることで、左目用画像に対応するレーザ光の偏光方向と、右目用画像に対応するレーザ光の偏光方向とが垂直をなすように良好に切り替えることができる。
【0059】
ここで、λ/2変調素子45において、青色レーザ光が通過するB用電極対52b,52b間の液晶層54bの厚みdIと、緑色レーザ光が通過するG用電極対52g,52g間の液晶層54gの厚みdIIと、赤色レーザ光が通過するR用電極対52r,52r間の液晶層54rの厚みdIIIを、それぞれ異なるようにした理由は、レーザ光の波長域が色毎に異なることによる。
こうして、レーザ光の色毎に液晶層54b、54g、54rの厚みを異ならせて、上記した式(4)〜(6)を満たすようにすることによって、各レーザ光の偏光方向をより適切に切り替えることができるので、より良好な3D映像の表示が可能になる。
【0060】
以上のように、λ/2変調素子45を備えるレーザプロジェクタであっても、良好な3D映像を表示することができ、ユーザは偏光眼鏡を掛けて、3D映像を楽しむことができる。
【0061】
なお、上記実施形態1〜6では、λ/2変調素子(5、15、25、35、45)の駆動によって、左目用画像と右目用画像とを良好に切り替えて、良好な3D映像を表示するレーザプロジェクタについて説明したが、このレーザプロジェクタで2D映像を表示する際にλ/2変調素子を駆動させることによって、スペックルノイズ(スクリーン表面の微細な凹凸等の影響により反射したレーザ光が干渉しあうことによって生じる干渉パターン)を低減することができ、良好な2D映像の表示も可能になる。
【0062】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザ光源
2 レーザ光源
3 レーザ光源
4 ミラー部
5 λ/2変調素子(偏光切替手段)
51 透明基板、基板対
52 透明電極、電極対
53 配向膜
54 液晶層
15 λ/2変調素子(偏光切替手段)
52,52b 透明電極、B用電極対
52,52rg 透明電極、RG用電極対
25 λ/2変調素子(偏光切替手段)
52,52r 透明電極、R用電極対
52,52g 透明電極、G用電極対
52,52b 透明電極、B用電極対
35 λ/2変調素子(偏光切替手段)
35rg RG用変調素子
35b B用変調素子
51rg 透明基板、一方の基板対
51b 透明基板、他方の基板対
52rg,52rg 透明電極、RG用電極対
52b,52b 透明電極、B用電極対
54rg、54b 液晶層
45 λ/2変調素子(偏光切替手段)
45r R用変調素子
45g G用変調素子
45b B用変調素子
51r 透明基板、第1の基板対
51g 透明基板、第2の基板対
51b 透明基板、第3の基板対
52r,52r 透明電極、R用電極対
52g,52g 透明電極、G用電極対
52b,52b 透明電極、B用電極対
54r、54b、54g 液晶層
6 λ/4位相差板
7 走査型投影ミラー(走査手段)
8 コントローラ(走査状況監視手段、レーザ光監視手段、駆動電圧調整手段)
100、101、102、103 レーザプロジェクタ
S スクリーン(投影面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に基づき、左目用画像に関するレーザ光と右目用画像に関するレーザ光を交互に出射するRGBの3色のレーザ光源と、
前記レーザ光源が出射したレーザ光を、左目用画像と右目用画像に応じて異なる2つの偏光方向に切り替える偏光切替手段と、
前記偏光切替手段により偏光方向が切り替えられた前記レーザ光を投影面上に走査する走査手段と、
を備え、前記投影面に前記画像信号に基づく左目用画像と右目用画像を表示するレーザプロジェクタであって、
前記偏光切替手段は、透明基板を対向配置した基板対と、前記基板対に設けた透明電極を対向配置した電極対と、前記電極対間に液晶を介装した液晶層と、を備えており、前記電極対間に駆動電圧が印加されることによって前記液晶の配列を切り替え、当該偏光切替手段を通過する前記レーザ光の偏光方向を切り替えることを特徴とするレーザプロジェクタ。
【請求項2】
前記走査手段の動作状況を監視する走査状況監視手段と、
前記走査状況監視手段の監視により検出した前記走査手段の動作状況を示すパラメータに対応する温度データに基づき、前記電極対間に印加する前記駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項3】
前記レーザ光源が出射する前記レーザ光の出力を監視するレーザ光監視手段と、
前記レーザ光監視手段の監視により検出した前記レーザ光の出力値に対応する温度データに基づき、前記電極対間に印加する前記駆動電圧を調整する駆動電圧調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項4】
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRGB3色のレーザ光に共通する一組の電極対を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項5】
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRG2色のレーザ光に対応するRG用電極対と、Bのレーザ光に対応するB用電極対との二組の電極対を備え、
前記RG用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項6】
前記偏光切替手段は、一組の基板対と、前記基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRのレーザ光に対応するR用電極対と、Gのレーザ光に対応するG用電極対と、Bのレーザ光に対応するB用電極対との三組の電極対を備え、
前記R用電極対の間の液晶層の厚みと、前記G用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項7】
前記偏光切替手段は、二組の基板対と、前記二組の基板対の一方の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRG2色のレーザ光に対応するRG用電極対と、他方の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるBのレーザ光に対応するB用電極対と、の二組の電極対を備え、
前記RG用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタ。
【請求項8】
前記偏光切替手段は、三組の基板対と、前記三組の基板対の第1の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるRのレーザ光に対応するR用電極対と、第2の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるGのレーザ光に対応するG用電極対と、第3の基板対に設けられ、前記レーザ光源から出射されるBのレーザ光に対応するB用電極対と、の三組の電極対を備え、
前記R用電極対の間の液晶層の厚みと、前記G用電極対の間の液晶層の厚みと、前記B用電極対の間の液晶層の厚みは、それぞれ異なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47926(P2012−47926A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189134(P2010−189134)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】