説明

レーザー装置及びレーザーモジュール

【課題】光集塵効果によるゴミ等によって光ファイバーが汚染されて光利用効率が低下するのを防ぐことができると共に光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができるレーザー装置及びレーザーモジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバー30と、光ファイバー30を接続可能であって、レーザー光を出射する半導体レーザー12及びレーザー光を集光させるレンズ16がハウジング14に収容されたレーザーモジュール10と、レーザー光の集光位置Aと光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる振動素子40と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー装置及びレーザーモジュールに係り、特に、半導体レーザー等のレーザー光源を備えたレーザーモジュールと光ファイバーの一端とを接続し、その光ファイバーの他端からレーザー光を出射するレーザー装置及びレーザーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーのレーザー光入射面のように強烈なレーザー光が照射される部位では、光ファイバーをフェルールに取り付ける際に使用する接着剤からのアウトガスがエネルギー密度の高いレーザー光によって光化学反応して表面に付着し、固体または液体物質として蓄積してしまい、光ファイバーへの結合効率を著しく低下させる現象があり問題となっていた。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1には、光ファイバーのレーザー光入射面を含むフェルール先端面に光透過性かつガスバリヤ性を有する部材(SiO2膜)を形成した半導体レーザーモジュールが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、半導体レーザーモジュールを構成する各々の光学部品、あるいは光ファイバーアレイの光出力端面に光集塵効果によって有機物が付着、吸着することで光利用効率が劣化するのを防止するために、半導体レーザー内部の内壁面や半導体レーザーモジュール内の光通過領域や光ファイバーの入出射面の少なくとも1つに、半導体レーザーから出されたレーザー光により活性化する光触媒層をコーティングした半導体レーザーモジュールが開示されている。
【特許文献1】特開2005−215426号公報
【特許文献2】特開2004−179595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、接着剤からのアウトガスを防止することはできるものの、もともと空中に浮遊しているゴミや有機揮発物による汚れ等に対しては効果がない。
【0006】
また、特許文献2に記載された技術では、光触媒膜は低温でコートすると黒っぽく着色するため、吸収によりロスが大きくなる、コート膜が破壊する、などの問題があった。一方、吸収を抑制するために高温でコートすると、今度は光ファイバーが樹脂で被覆されているため、樹脂が溶けてしまうなどの問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、光集塵効果によるゴミ等によって光ファイバーが汚染されて光利用効率が低下するのを防ぐことができると共に、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができるレーザー装置及びレーザーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明のレーザー装置は、光ファイバーと、前記光ファイバーを接続可能であって、レーザー光を出射するレーザー光源及び前記レーザー光を集光させる集光レンズが収容体に収容されたレーザーモジュールと、前記レーザー光の集光位置と前記光ファイバーの前記レーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる変動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、レーザー光の集光位置と光ファイバーのレーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる変動手段を備えた構成としたので、光集塵効果によるゴミ等によって光ファイバーが汚染されて光利用効率が低下するのを防ぐことができると共に、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる。
【0010】
なお、請求項2に記載したように、前記変動手段は、前記光ファイバーを振動させる振動手段である構成とすることができる。
【0011】
この場合、請求項3に記載したように、前記振動手段は、前記光ファイバーを保持するフェルールを振動させる構成とすることができる。
【0012】
また、請求項4に記載したように、前記光ファイバーを保持するフェルールが前記収容体に固定されると共に、前記光ファイバーの一部が前記収容体内に延伸され、前記振動手段は、前記収容体内に延伸した光ファイバーを振動させる構成としてもよい。
【0013】
また、請求項5に記載したように、前記収容体内に、液体が充填された液体室をさらに備え、前記液体室内に前記光ファイバーの一部が延伸されると共に、前記振動手段は、前記液体を振動させることにより前記光ファイバーを振動させる構成としてもよい。
【0014】
また、請求項6に記載したように、前記変動手段は、前記光ファイバーのコアに入射される前記レーザー光のスポット径が前記コア径内となるように、前記相対位置を変動させることが好ましい。
【0015】
また、請求項7に記載したように、前記振動手段はピエゾ素子又は超音波振動素子である構成とすることができる。
【0016】
また、請求項8に記載したように、前記レーザー光源は、波長が350nmから500nmの範囲内の波長のレーザー光を出射する構成とすることができる。
【0017】
請求項9記載の発明のレーザーモジュールは、光ファイバーを接続可能であって、レーザー光を出射するレーザー光源及び前記レーザー光を集光させる集光レンズが収容体に収容されたレーザーモジュールであって、前記レーザー光の集光位置と前記光ファイバーの前記レーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる変動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光集塵効果によるゴミ等によって光ファイバーが汚染されて光利用効率が低下するのを防ぐことができると共に光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1には、本実施形態に係るレーザー装置1の側面の概略断面図を示した。レーザー装置1は、レーザーモジュール10に光ファイバーケーブル24が接続されて構成されている。
【0021】
レーザーモジュール10は、一例として外形が略円筒状である。そして、レーザーモジュール10は半導体レーザー12を備えており、ハウジング14内に収容されている。
【0022】
半導体レーザー12は、例えば紫外光域の波長(例えば400nm)のレーザー光を出射する半導体レーザーを用いることができる。なお、本発明は、光集塵効果が発生しやすい波長、例えば350nm〜500nmの波長のレーザー光を出力する半導体レーザー12を用いる場合に特に効果がある。
【0023】
半導体レーザー12のレーザー光の出射側には、レンズ16が設けられている。このレンズ16は、レンズホルダ18によってハウジング14内に固定されている。
【0024】
また、ハウジング14には、半導体レーザー12から出射され、レンズ16を透過したレーザー光をハウジング14の外部へ出射するための窓部(孔)19が設けられている。半導体レーザー12から出射されレンズ16を透過したレーザー光は、この窓部19を通過してレーザーモジュール10の外部へ出射される。
【0025】
なお、レンズ16は、半導体レーザー12から出射されたレーザー光が、窓部19のレーザー光出射側の端部(図1に示すA点)付近に集光されるような開口率を有する。これにより、レンズ16を透過したレーザー光は、後述する光ファイバーケーブルの端部との接続位置である図1に示すA点付近に集光される。
【0026】
また、ハウジング14のレーザー光の出力端側は、後述する光ファイバーケーブルのフェルールを保持するためのフェルール保持部14Aが設けられたレセプタクル構造となっており、略円筒状の凹部が形成されている。この凹部に後述する光ファイバーケーブルの一端が挿入される。
【0027】
光ファイバーケーブル24は、コア26の周囲にクラッド28が形成され、これが被覆材29によって被覆された光ファイバー30を備え、被覆材29が除去された一端側にフェルール32が取り付けられた構成である。この光ファイバーケーブル24のフェルール32側がレーザーモジュール10のフェルール保持部14A内に挿入されることにより両者が接続される。
【0028】
また、フェルール保持部14Aの内周部には、振動素子40が取り付けられており、この振動素子40には制御部42及び電源部44が接続されている。振動素子40は、例えばピエゾ素子や超音波振動素子等で構成されるが、これに限られるものではない。振動素子40は、電源部44によって電源供給され、制御部42によって振動制御される。
【0029】
また、図1に示すように、フェルール保持部14Aは、挿入されたフェルール32との間にわずかな隙間46が生じた状態でフェルール32を保持している。従って、フェルール32によって保持された光ファイバー30を良好に振動させることができる。
【0030】
制御部42は、半導体レーザー12が発光中に振動素子40を常時振動させる。これにより、レーザー光の集光位置と光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置が常時変動するため、光集塵効果によって有機物が光ファイバー30に付着して光利用効率が低下するのを防ぐことができる。また、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる。
【0031】
なお、制御部42は、光ファイバー30の振動振幅が、次式で示す最大振動振幅値ΔX以下となるように振動素子40を制御することが好ましい。
【0032】
ΔX=d−ω0 ・・・(1)
ここで、dは光ファイバー30のコア26のコア径(直径)、ω0は光ファイバー30のレーザー光の入射面におけるレーザー光の強度が1/e2のビーム径である。例えばコア径dが60μm、レーザー光のビーム径が10μmの場合、最大振動振幅値ΔXは50μmとなる。
【0033】
このように、光ファイバー30の振動振幅が最大振動振幅値ΔX以下となるように制御することにより、光ファイバー30を振動させても損失を抑えつつ確実にレーザー光を光ファイバー30に入射させることができる。
【0034】
なお、制御部42は、半導体レーザー12が発光していない時に例えば定期的に振動素子40を振動させるように制御してもよい。これにより、光ファイバー30に付着したゴミ等を除去することができる。
【0035】
次にレーザー装置の変形例について説明する。なお、図1に示すレーザー装置1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
まず、図2に、第1の変形例に係るレーザー装置1Aを示した。レーザー装置1Aは、レーザーモジュール10Aと光ファイバーケーブル24Aとが接続されて成り、同図に示すように、光ファイバー30のフェルール32がフェルール保持部14Aによって保持されている。フェルール保持部14Aは、ハウジング14に例えば溶接等によって固定され、ハウジング14内が密閉されている。
【0037】
そして、フェルール保持部14Aに保持されたフェルール32から光ファイバー30がハウジング14内に延伸されており、この延伸された光ファイバー30に振動素子40が取り付けられている。なお、半導体レーザー12から出射されたレーザー光は、ハウジング14内に延伸された光ファイバー30の端部(図中A点)付近に集光される。
【0038】
制御部42の振動制御によって振動素子40が振動すると、ハウジング14内に延伸された光ファイバー30の先端が振動する。これにより、レーザー光の集光位置と光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置が変動するため、光集塵効果によって有機物が光ファイバー30に付着して光利用効率が低下するのを防ぐことができる。また、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる。
【0039】
なお、図2では、光ファイバー30のみがハウジング14内に延伸した構成としているが、フェルール32と共にハウジング14内に延伸した構成とし、フェルール32ごと振動させる構成としてもよい。
【0040】
次に、図3に、第2の変形例に係るレーザー装置1Bを示した。レーザー装置1Aは、レーザーモジュール10Bと光ファイバーケーブル24Aとが接続されて成り、同図に示すように、レーザーモジュール10Bのハウジング14内に、液体50が充填された液体室52が設けられており、この液体室52内に光ファイバー30の先端側が延伸している。そして、液体室52の底面とハウジング14との間に振動素子40が取り付けられている。
【0041】
このような構成の場合、制御部42の振動制御により振動素子40が振動すると、液体室52内に発生するキャビテーションにより液体室52内に延伸された光ファイバー30の先端が振動する。これにより、レーザー光の集光位置と光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置が変動するため、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる。また、光ファイバー30の先端の周囲が液体50で満たされているため、ゴミ等が付着するのを防ぐことができる。
【0042】
次に、図4に、第3の変形例に係るレーザー装置1Cを示した。レーザー装置1Cは、レーザーモジュール10Cと光ファイバーケーブル24とが接続されて成り、同図に示すように、レーザーモジュール10Cのハウジング14にレーザー光の出射窓部にガラススタブ54が設けられている。そして、このガラススタブ54とフェルール保持部14A内に挿入された光ファイバーケーブル24のレーザー光の入射側の端面とが当接した状態で、レーザーモジュール10Cと光ファイバーケーブル24とが接続されている。これにより、光集塵効果によって有機物が光ファイバー30に付着して光利用効率が低下するのを防ぐことができる。
【0043】
また、フェルール保持部14Aの内周部に、ガラススタブ54及びフェルール保持部14Aを同時に振動させる振動素子40が設けられている。
【0044】
制御部42の振動制御により振動素子40が振動すると、ガラススタブ54及びフェルール32が同時に振動し、光ファイバー30の先端が振動する。これにより、レーザー光の集光位置と光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置が変動するため、光密度の高い集光位置において焼き付きや損傷等が発生するのを防ぐことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、光ファイバー30の先端側を振動させる場合について説明したが、これに限らず、半導体レーザー12やレンズ16を振動させる構成としてもよく、レーザー光の集光位置と光ファイバー30のレーザー光の入射側端面との相対位置を変動させることができるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】レーザー装置の断面図である。
【図2】第1の変形例に係るレーザー装置の断面図である。
【図3】第2の変形例に係るレーザー装置の断面図である。
【図4】第3の変形例に係るレーザー装置の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A、1B、1C レーザー装置
10、10A、10B、10C レーザーモジュール
12 半導体レーザー
14 ハウジング(収容体)
14A フェルール保持部
16 レンズ
18 レンズホルダ
19 窓部
24A 光ファイバーケーブル
26 コア
28 クラッド
29 被覆材
30 光ファイバー
32 フェルール
40 振動素子(振動手段)
42 制御部
44 電源部
52 液体室
54 ガラススタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーと、
前記光ファイバーを接続可能であって、レーザー光を出射するレーザー光源及び前記レーザー光を集光させる集光レンズが収容体に収容されたレーザーモジュールと、
前記レーザー光の集光位置と前記光ファイバーの前記レーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる変動手段と、
を備えたことを特徴とするレーザー装置。
【請求項2】
前記変動手段は、前記光ファイバーを振動させる振動手段であることを特徴とする請求項1記載のレーザー装置。
【請求項3】
前記振動手段は、前記光ファイバーを保持するフェルールを振動させることを特徴とする請求項2記載のレーザー装置。
【請求項4】
前記光ファイバーを保持するフェルールが前記収容体に固定されると共に、前記光ファイバーの一部が前記収容体内に延伸され、前記振動手段は、前記収容体内に延伸した光ファイバーを振動させることを特徴とする請求項2記載のレーザー装置。
【請求項5】
前記収容体内に、液体が充填された液体室をさらに備え、前記液体室内に前記光ファイバーの一部が延伸されると共に、前記振動手段は、前記液体を振動させることにより前記光ファイバーを振動させることを特徴とする請求項2記載のレーザー装置。
【請求項6】
前記変動手段は、前記光ファイバーのコアに入射される前記レーザー光のスポット径が前記コア径内となるように、前記相対位置を変動させることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のレーザー装置。
【請求項7】
前記振動手段はピエゾ素子又は超音波振動素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のレーザー装置。
【請求項8】
前記レーザー光源は、波長が350nmから500nmの範囲内の波長のレーザー光を出射することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のレーザー装置。
【請求項9】
光ファイバーを接続可能であって、レーザー光を出射するレーザー光源及び前記レーザー光を集光させる集光レンズが収容体に収容されたレーザーモジュールであって、
前記レーザー光の集光位置と前記光ファイバーの前記レーザー光の入射側端面との相対位置を変動させる変動手段と、
を備えたことを特徴とするレーザーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−266137(P2007−266137A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86579(P2006−86579)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】