レーザ加工方法および装置
【課題】確実に有機物層および接着層を加工できるレーザ加工方法および装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工方法は、有機物層と導体層とが接着層により接合されたフレキシブルプリント基板300に、有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備える。
【解決手段】レーザ加工方法は、有機物層と導体層とが接着層により接合されたフレキシブルプリント基板300に、有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工方法および装置に関し、より特定的には、有機物層を加工するレーザ加工方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工方法および装置は、たとえば特開2008−73760号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、除去されるべき付着物が炭素を含む場合に加工対象物表面から付着物をきれいに除去することができる付着物除去方法を提供することを目的としている。この目的を達成するために、レーザ光源から出力されるレーザ光は、ミラーにより反射された後、レンズにより集光されて付着物に照射される。
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1の方法では、必ずしも十分に有機物を除去することができないという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、確実に有機物を除去することが可能なレーザ加工方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったレーザ加工方法は、有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備える。
【0008】
このように構成されたレーザ加工方法では、有機物層を除去するのに適した第一パルスレーザと、接着層を除去するのに適した第二パルスレーザとを照射することで、有機物層のみならず接着層をも確実に除去することができる。
【0009】
好ましくは、第一パルスレーザは炭酸ガスレーザであり、第二パルスレーザはファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである。
【0010】
好ましくは、第二パルスレーザは、非線形結晶により短波長に波長変換されたレーザである。
【0011】
好ましくは、有機物層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。
【0012】
好ましくは、被加工物は、フレキシブルプリント基板およびフラットケーブルのいずれかである、請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【0013】
好ましくは、被加工物は、ロール形状から引き出されて加工され、加工後はロール形状で巻き取られる。
【0014】
好ましくは、第一または第二パルスレーザで加工中に加工部に酸素が供給される。
この発明に従ったレーザ加工装置は、上記のレーザ加工方法を実施するためのレーザ加工装置であって、有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、有機物層を除去するための第一パルスレーザと、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射することが可能なレーザ源とを備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明は確実に有機物層および接着層を除去することが可能なレーザ加工方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に従った、レーザ加工装置の模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法で加工されるフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。
【図5】ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図6】ポリイミドの可視および紫外領域における吸収率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図7】ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態2に従った加工方法で有機物層として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)および液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図9】有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの断面図である。
【図10】有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの加工工程を示す断面図である。
【図11】この発明に従って形成された孔の平面図である。
【図12】PETの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図13】液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合せることも可能である。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った、加工部と測定部とを有するレーザ加工装置の模式図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工装置1は、樹脂を加工する加工部100と、加工部100で加工された樹脂を測定する測定部200とを有する。加工部100は、炭酸ガスレーザ源である加工用レーザ源110と、加工用レーザ源110から照射されたレーザ光111の向きを変えるためのガルバノスキャナ120と、ガルバノスキャナ120で反射したレーザ光を収束させるFθレンズ130とを有する。Fθレンズ130で集光されたレーザ光112は、フレキシブルプリント基板300の表面に照射される。レーザ光112が照射される領域が加工エリア310であり、フレキシブルプリント基板上の有機物層が除去される。
【0019】
加工用レーザ源110は、複数の種類のパルスレーザを照射することが可能である。この複数のレーザは、フレキシブルプリント基板上の有機物層および接着層を除去するための最適な波長を有する。
【0020】
加工エリア310に隣接するように測定エリア320が設けられる。測定エリア320では、加工エリア310で加工された部分が正しく加工されているかどうかが測定される。
【0021】
加工エリア310では、加工箇所に加工を促進するためのガスを供給することが可能である。
【0022】
測定部200は、残渣測定用レーザ源210を有する。残渣測定用レーザ源210から射出されたレーザ光211は、ガルバノスキャナ220で反射してそのレーザ光は集光レンズ230を透過する。集光レンズ230を透過したレーザ光は測定エリア320のフレキシブルプリント基板300表面で反射して受光部240で検出される。受光部240は、レーザ光213を測定することで加工エリア310での加工状態を撮像することができる。なお、測定部200は必ずしも設ける必要はない。
【0023】
加工用レーザ源110、ガルバノスキャナ120、220、残渣測定用レーザ源210および受光部240はそれぞれ制御部400に接続されている。測定したデータまたは照射するレーザの強さなどが制御部400により送られる。制御部400では、コンピュータにより、得られたデータをもとにして、加工が適切に行なわれているかどうかを判断することができる。
【0024】
図2は、この発明の実施の形態1にレーザ加工方法で加工されるフレキシブルプリント基板の断面図である。図2を参照して、導電層10、有機物層20および導電層30の積層構造体に開口31を形成する。開口31の直径はDとされる。導電層10はいずれの導電層であってもよい。たとえば、銅、アルミニウムなどの金属であってもよく、不純物が導入されたシリコンなどの半導体であってもよい。
【0025】
また、有機物層20は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)および液晶ポリマー(LCP)などのさまざまな有機物を採用することが可能である。接着層20aにより、有機物層20は、導電層10に接続されている。
【0026】
図3は、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。図3を参照して、レーザ光112により、有機物層20に孔22を形成する。このとき、レーザ光112は、導電層10を露出させるようにレーザ光112が照射される。
【0027】
レーザ光112は、2段階にわたって照射される。最初は、有機物層20を除去するための第一パルスレーザが照射される。このレーザは、炭酸ガスレーザなどの、長波長のレーザで、効率よく有機物層を除去することが可能となる。このとき、炭酸ガスレーザは、接着層20aを除去するのに適した特性を有しているとはいえない。その結果、炭酸ガスレーザ照射後に、接着層20aを除去するための第二パルスレーザを照射する。接着層除去用のレーザは、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである。すなわち、単一のパルスレーザだけでは、接着層20aが残りやすくなる。これに対して、有機物層20および接着層20aの両方に吸収が高い単一のパルスレーザで加工すると、薄い接着層20aで吸収を持つ波長のレーザを選定するため、接着層20aより厚い有機物層20を加工する際に時間がかかる。そのため、厚い有機物層20と、薄い接着層20aとを別々の波長のパルスレーザで加工することで、効率のよい加工を実施することができる。
【0028】
一般に樹脂に代表される有機物層20の吸収は、炭酸ガスレーザにおいて高い場合が多い。ところが、波長が長いため、厚さの薄い接着層20aを残してしまうことが多い。そこで、波長が1/10のファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザで接着層20aを照射除去することで樹脂残渣が無く、効率よく加工ができる。
【0029】
そして、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザは、非線形結晶を使って短波長化されたレーザとすることで、さらに吸収率が高くなり効率的に接着層20aを照射除去できる。
【0030】
そして、有機物層20としては、ポリイミド樹脂、PETまたは液晶ポリマーが用いられる。有機物層20および接着層20aをパルスレーザ除去する際には、酸素アシストガスを用いることが好ましい。この場合、レーザ単体の除去効果(アブレーション)だけでなくC+O2→CO2という化学変化がおきて有機物層20および接着層20aを効率よく加工することが可能になる。
【0031】
図4は、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。図4を参照して、残渣測定用レーザ源210からレーザ光211を照射する。そして、孔22の底22aから反射した電磁波を受光部240が検出する。このときの検出量によって、底22aにどの程度残存した有機物層20が残っているかどうかを検出することができる。そして、底22a全体で有機物層20の残存量のマップを作成する。
【0032】
図5は、ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図6は、ポリイミドの可視および紫外領域における吸収率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図5および図6を参照して、吸収率は、透過率と関連しており、吸収率=1−透過率という式が成立する。
【0033】
図7は、ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図7を参照して、いずれの有機物層20を構成する材料においても、特定の波数で吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物層20を構成する化学結合に起因する吸収である。
【0034】
すなわち、レーザ加工方法は、有機物層20を含む被加工物としてのフレキシブルプリント基板300を準備する工程と、レーザ光112を照射して有機物層20を加工する工程とを備える。
【0035】
(実施の形態2)
図8は、この発明の実施の形態2に従った加工方法で有機物層として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)および液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【0036】
図8を参照して、PETおよび液晶ポリマーでは、約200〜450nmの範囲で吸光度が大きくなる。したがって、加工用のレーザ源としてこの波長のレーザを用いれば、有機物層を構成するPETおよび液晶ポリマーでの吸収が大きくなり、確実に除去することができる。なお、紫外および可視領域での吸収は、赤外領域での吸収のように、有機物を構成する特定の化学結合に基づく吸収ではない。そのため、赤外吸収で見られた鋭いピークは紫外および可視領域では見当たらない。
【0037】
なお、以下において各樹脂の吸光度について説明する。
PETでは、波数が1712cm-1において吸光度のピークが存在する。このピークは、エステルのC=O結合に由来する。このピークの波長は5.84μmである。このような波長のレーザとして、浜松ホトニクス社量子カスケードレーザ(波長5.8μm)がある。
【0038】
またPETは、波数が1240cm-1において吸光度のピークを有する。このピークは、カルボニル基のC−O結合に由来する。このピークの波長は8.06μmであり、このような波長のレーザとして、半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0039】
またPETは波数1100cm-1において吸光度のピークを有する。このピークはカルボニル基のC−O結合に由来する。このピークの波長は9.09μmであり、このような波長のレーザとして、半導体レーザ(Pb1-xSnxTe(波長6.3−32μm))がある。
【0040】
またPETは可視領域の波長300nmにおいて吸光度のピークを有する。このような波長のレーザとして、XeClエキシマレーザ(波長0.308μm)がある。
【0041】
PIは赤外領域の波数が1775cm-1において吸光度のピークを有する。このピークはイミドC=O結合に由来する。このピークの波長は5.63μmであり、このような波長のレーザとして、DBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)がある。
【0042】
またPIは、波数が1712cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはイミドC=O結合に由来する。このピークの波長は5.84μmであり、このような波長のレーザとしてDBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)がある。
【0043】
またポリイミドは、波数1400cm-1において吸光度のピークを有する。このピークは両側のベンゼン環のメチレンに由来する。このピークの波長は7.14μmであり、このような波長のレーザとして半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))が存在する。
【0044】
またポリイミドは可視領域において波長が450nmで吸光度のピークを有し、このような波長のレーザとしてArイオンレーザ(波長0.45μm)が存在する。
【0045】
LCPは赤外領域において波数が1730cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはエステルのC=O結合に由来する。このピークの波長は5.78μmであり、このような波長のレーザとして浜松ホトニクス社製量子カスケードレーザ(波長5.8μm)または半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))が存在する。
【0046】
またLCPは波数1300−1150cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはエステルのC−O結合に由来する。このピークの波長は7.69−8.70μmであり、このような波長のレーザとして半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0047】
LPCは波数1650−1400cm-1の吸光度のピークを有する。このピークは、ベンゼン環のC=C結合に由来する。このピークの波長は6.06−1.74μmである。このような波長のレーザとして、DBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)、半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0048】
また、LPCは波長400nmにおいて吸光度のピークを有し、このような波長のレーザとして半導体レーザ(波長が0.41μm)およびPb蒸気レーザ(波長0.41μm)が存在する。
【0049】
これらのレーザを加工用に用いることで、有機物層20による吸収を高めることができる。
【0050】
(実施の形態3)
図9は、有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの断面図である。図10は、有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの加工工程を示す断面図である。図11は、この発明に従って形成された孔の平面図である。
図9から図11を参照して、有機物層20に導電層29が埋め込まれたフラットケーブルであっても、この発明の従った加工方法および加工装置の加工対象となる。具体的には、図10で孔22を製造する工程において、図1で示した方法および装置を使用することによって、有機物層20と接着層20aを確実に除去することができる。
【0051】
図11で示すように、炭酸ガスレーザのみが照射された第一領域1100では、孔22の底においては導電層29が露出していない。これは、接着層の取り残しが孔22の底に残存しているからであると考えられる。これに対して、炭酸ガスレーザを照射した後にファイバレーザを照射した部分では、孔22の底面において導電層29が露出する。これは、ファイバレーザにより接着層が確実に除去されたからであると考えられる。
【0052】
図12は、PETの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図13は、液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図12および図13を参照して、特定の波数において、吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物を構成する特定の化学結合(官能基)による吸収であり、このような吸収が存在すれば、その官能基を有する有機物が残存していることがわかる。そして、吸収が大きい波数のレーザを照射することで、効率よく樹脂にレーザのエネルギーを吸収させることができる。
【実施例1】
【0053】
図2で示すような、銅板(厚みが18μm)、ポリイミド系樹脂からなる接着層20a(厚みが2−3μm)、有機物層20を構成するポリイミド樹脂(厚みが20μm)、ポリイミド系樹脂からなる接着層20a(厚みが2−3μm)、銅板(厚みが18μm)の層構造を有するフレキシブルプリント基板を準備した。
【0054】
このフレキシブルプリント基板において、予め片側の銅板に図2で示すようにフォトリソグラフィと銅エッチングにより開口31が形成されている。
【0055】
フレキシブルプリント基板は、ロール巻きの状態から引き出されて加工され、その後、ロール巻きの状態で収納される。
【0056】
そして炭酸ガスレーザによる加工で有機物層20を除去し、その後、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザで接着層20aを除去する。これにより、ポリイミド樹脂が除去されたブラインドビア構造のフレキシブルプリント基板を加工した。ここで、炭酸ガスレーザは、出力100W、約μ秒パルス、とする。炭酸ガスレーザは、図1で示すガルバノスキャナ120により銅の孔加工されている位置へ照射できるように制御される。炭酸ガスレーザ照射後のファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザは、出力16Wとした。炭酸ガスレーザ照射エリアと、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザ照射エリアに酸素を10dm3/min、の流量で導入する。これにより、樹脂の残渣を確実に除去することが可能となる。
【実施例2】
【0057】
PET樹脂(厚みが20μm)、PET系樹脂接着層(厚みが2−3μm)、銅配線(厚みが18μm)、PET系樹脂接着層(厚みが2−3μm)、PET樹脂(厚みが20μm)の層構造を有するフラットケーブル(図9)を準備した。片側のPET樹脂およびPET系樹脂接着層を炭酸ガスレーザの照射および、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザで接着層を除去した。(図10)。ここで、炭酸ガスレーザは、出力100W、約12μ秒パルス、とした。ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザの出力は、炭酸ガスレーザは、図1で示すガルバノスキャナ120により直線走査して加工する。YAGレーザまたはYVO4レーザは、出力16Wとした。炭酸ガスレーザ照射エリアと、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザ照射エリアに酸素を10dm3/min、の流量で導入する。これにより、樹脂の残渣を確実に除去することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、有機物層を加工することが可能なレーザ加工装置の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 レーザ加工装置、10,30 導電層、20 有機物層、21 残渣、22 孔、22a 底、31 開口、100 加工部、110 加工用レーザ源、111,112,211,213 レーザ光、120,220 ガルバノスキャナ、130 レンズ、200 測定部、210 残渣測定用レーザ源、230 集光レンズ、240 受光部、300 フレキシブルプリント基板、310 加工エリア、320 測定エリア、400 制御部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工方法および装置に関し、より特定的には、有機物層を加工するレーザ加工方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工方法および装置は、たとえば特開2008−73760号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、除去されるべき付着物が炭素を含む場合に加工対象物表面から付着物をきれいに除去することができる付着物除去方法を提供することを目的としている。この目的を達成するために、レーザ光源から出力されるレーザ光は、ミラーにより反射された後、レンズにより集光されて付着物に照射される。
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1の方法では、必ずしも十分に有機物を除去することができないという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、確実に有機物を除去することが可能なレーザ加工方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったレーザ加工方法は、有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備える。
【0008】
このように構成されたレーザ加工方法では、有機物層を除去するのに適した第一パルスレーザと、接着層を除去するのに適した第二パルスレーザとを照射することで、有機物層のみならず接着層をも確実に除去することができる。
【0009】
好ましくは、第一パルスレーザは炭酸ガスレーザであり、第二パルスレーザはファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである。
【0010】
好ましくは、第二パルスレーザは、非線形結晶により短波長に波長変換されたレーザである。
【0011】
好ましくは、有機物層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。
【0012】
好ましくは、被加工物は、フレキシブルプリント基板およびフラットケーブルのいずれかである、請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【0013】
好ましくは、被加工物は、ロール形状から引き出されて加工され、加工後はロール形状で巻き取られる。
【0014】
好ましくは、第一または第二パルスレーザで加工中に加工部に酸素が供給される。
この発明に従ったレーザ加工装置は、上記のレーザ加工方法を実施するためのレーザ加工装置であって、有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、有機物層を除去するための第一パルスレーザと、有機物を除去した後に被加工物に接着層を除去するための第二パルスレーザを照射することが可能なレーザ源とを備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明は確実に有機物層および接着層を除去することが可能なレーザ加工方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に従った、レーザ加工装置の模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法で加工されるフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。
【図5】ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図6】ポリイミドの可視および紫外領域における吸収率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図7】ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態2に従った加工方法で有機物層として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)および液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【図9】有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの断面図である。
【図10】有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの加工工程を示す断面図である。
【図11】この発明に従って形成された孔の平面図である。
【図12】PETの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【図13】液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合せることも可能である。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った、加工部と測定部とを有するレーザ加工装置の模式図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工装置1は、樹脂を加工する加工部100と、加工部100で加工された樹脂を測定する測定部200とを有する。加工部100は、炭酸ガスレーザ源である加工用レーザ源110と、加工用レーザ源110から照射されたレーザ光111の向きを変えるためのガルバノスキャナ120と、ガルバノスキャナ120で反射したレーザ光を収束させるFθレンズ130とを有する。Fθレンズ130で集光されたレーザ光112は、フレキシブルプリント基板300の表面に照射される。レーザ光112が照射される領域が加工エリア310であり、フレキシブルプリント基板上の有機物層が除去される。
【0019】
加工用レーザ源110は、複数の種類のパルスレーザを照射することが可能である。この複数のレーザは、フレキシブルプリント基板上の有機物層および接着層を除去するための最適な波長を有する。
【0020】
加工エリア310に隣接するように測定エリア320が設けられる。測定エリア320では、加工エリア310で加工された部分が正しく加工されているかどうかが測定される。
【0021】
加工エリア310では、加工箇所に加工を促進するためのガスを供給することが可能である。
【0022】
測定部200は、残渣測定用レーザ源210を有する。残渣測定用レーザ源210から射出されたレーザ光211は、ガルバノスキャナ220で反射してそのレーザ光は集光レンズ230を透過する。集光レンズ230を透過したレーザ光は測定エリア320のフレキシブルプリント基板300表面で反射して受光部240で検出される。受光部240は、レーザ光213を測定することで加工エリア310での加工状態を撮像することができる。なお、測定部200は必ずしも設ける必要はない。
【0023】
加工用レーザ源110、ガルバノスキャナ120、220、残渣測定用レーザ源210および受光部240はそれぞれ制御部400に接続されている。測定したデータまたは照射するレーザの強さなどが制御部400により送られる。制御部400では、コンピュータにより、得られたデータをもとにして、加工が適切に行なわれているかどうかを判断することができる。
【0024】
図2は、この発明の実施の形態1にレーザ加工方法で加工されるフレキシブルプリント基板の断面図である。図2を参照して、導電層10、有機物層20および導電層30の積層構造体に開口31を形成する。開口31の直径はDとされる。導電層10はいずれの導電層であってもよい。たとえば、銅、アルミニウムなどの金属であってもよく、不純物が導入されたシリコンなどの半導体であってもよい。
【0025】
また、有機物層20は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)および液晶ポリマー(LCP)などのさまざまな有機物を採用することが可能である。接着層20aにより、有機物層20は、導電層10に接続されている。
【0026】
図3は、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において有機物を除去する工程を説明するための断面図である。図3を参照して、レーザ光112により、有機物層20に孔22を形成する。このとき、レーザ光112は、導電層10を露出させるようにレーザ光112が照射される。
【0027】
レーザ光112は、2段階にわたって照射される。最初は、有機物層20を除去するための第一パルスレーザが照射される。このレーザは、炭酸ガスレーザなどの、長波長のレーザで、効率よく有機物層を除去することが可能となる。このとき、炭酸ガスレーザは、接着層20aを除去するのに適した特性を有しているとはいえない。その結果、炭酸ガスレーザ照射後に、接着層20aを除去するための第二パルスレーザを照射する。接着層除去用のレーザは、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである。すなわち、単一のパルスレーザだけでは、接着層20aが残りやすくなる。これに対して、有機物層20および接着層20aの両方に吸収が高い単一のパルスレーザで加工すると、薄い接着層20aで吸収を持つ波長のレーザを選定するため、接着層20aより厚い有機物層20を加工する際に時間がかかる。そのため、厚い有機物層20と、薄い接着層20aとを別々の波長のパルスレーザで加工することで、効率のよい加工を実施することができる。
【0028】
一般に樹脂に代表される有機物層20の吸収は、炭酸ガスレーザにおいて高い場合が多い。ところが、波長が長いため、厚さの薄い接着層20aを残してしまうことが多い。そこで、波長が1/10のファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザで接着層20aを照射除去することで樹脂残渣が無く、効率よく加工ができる。
【0029】
そして、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザは、非線形結晶を使って短波長化されたレーザとすることで、さらに吸収率が高くなり効率的に接着層20aを照射除去できる。
【0030】
そして、有機物層20としては、ポリイミド樹脂、PETまたは液晶ポリマーが用いられる。有機物層20および接着層20aをパルスレーザ除去する際には、酸素アシストガスを用いることが好ましい。この場合、レーザ単体の除去効果(アブレーション)だけでなくC+O2→CO2という化学変化がおきて有機物層20および接着層20aを効率よく加工することが可能になる。
【0031】
図4は、この発明の実施の形態1に従ったレーザ加工方法において孔の検査工程を説明するための断面図である。図4を参照して、残渣測定用レーザ源210からレーザ光211を照射する。そして、孔22の底22aから反射した電磁波を受光部240が検出する。このときの検出量によって、底22aにどの程度残存した有機物層20が残っているかどうかを検出することができる。そして、底22a全体で有機物層20の残存量のマップを作成する。
【0032】
図5は、ポリイミドの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図6は、ポリイミドの可視および紫外領域における吸収率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。図5および図6を参照して、吸収率は、透過率と関連しており、吸収率=1−透過率という式が成立する。
【0033】
図7は、ポリイミドの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図7を参照して、いずれの有機物層20を構成する材料においても、特定の波数で吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物層20を構成する化学結合に起因する吸収である。
【0034】
すなわち、レーザ加工方法は、有機物層20を含む被加工物としてのフレキシブルプリント基板300を準備する工程と、レーザ光112を照射して有機物層20を加工する工程とを備える。
【0035】
(実施の形態2)
図8は、この発明の実施の形態2に従った加工方法で有機物層として用いられるPET(ポリエチレンテレフタレート)および液晶ポリマーの可視および紫外領域における透過率(縦軸)と波長(横軸)との関係を示すグラフである。
【0036】
図8を参照して、PETおよび液晶ポリマーでは、約200〜450nmの範囲で吸光度が大きくなる。したがって、加工用のレーザ源としてこの波長のレーザを用いれば、有機物層を構成するPETおよび液晶ポリマーでの吸収が大きくなり、確実に除去することができる。なお、紫外および可視領域での吸収は、赤外領域での吸収のように、有機物を構成する特定の化学結合に基づく吸収ではない。そのため、赤外吸収で見られた鋭いピークは紫外および可視領域では見当たらない。
【0037】
なお、以下において各樹脂の吸光度について説明する。
PETでは、波数が1712cm-1において吸光度のピークが存在する。このピークは、エステルのC=O結合に由来する。このピークの波長は5.84μmである。このような波長のレーザとして、浜松ホトニクス社量子カスケードレーザ(波長5.8μm)がある。
【0038】
またPETは、波数が1240cm-1において吸光度のピークを有する。このピークは、カルボニル基のC−O結合に由来する。このピークの波長は8.06μmであり、このような波長のレーザとして、半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0039】
またPETは波数1100cm-1において吸光度のピークを有する。このピークはカルボニル基のC−O結合に由来する。このピークの波長は9.09μmであり、このような波長のレーザとして、半導体レーザ(Pb1-xSnxTe(波長6.3−32μm))がある。
【0040】
またPETは可視領域の波長300nmにおいて吸光度のピークを有する。このような波長のレーザとして、XeClエキシマレーザ(波長0.308μm)がある。
【0041】
PIは赤外領域の波数が1775cm-1において吸光度のピークを有する。このピークはイミドC=O結合に由来する。このピークの波長は5.63μmであり、このような波長のレーザとして、DBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)がある。
【0042】
またPIは、波数が1712cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはイミドC=O結合に由来する。このピークの波長は5.84μmであり、このような波長のレーザとしてDBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)がある。
【0043】
またポリイミドは、波数1400cm-1において吸光度のピークを有する。このピークは両側のベンゼン環のメチレンに由来する。このピークの波長は7.14μmであり、このような波長のレーザとして半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))が存在する。
【0044】
またポリイミドは可視領域において波長が450nmで吸光度のピークを有し、このような波長のレーザとしてArイオンレーザ(波長0.45μm)が存在する。
【0045】
LCPは赤外領域において波数が1730cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはエステルのC=O結合に由来する。このピークの波長は5.78μmであり、このような波長のレーザとして浜松ホトニクス社製量子カスケードレーザ(波長5.8μm)または半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))が存在する。
【0046】
またLCPは波数1300−1150cm-1の吸光度のピークを有する。このピークはエステルのC−O結合に由来する。このピークの波長は7.69−8.70μmであり、このような波長のレーザとして半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0047】
LPCは波数1650−1400cm-1の吸光度のピークを有する。このピークは、ベンゼン環のC=C結合に由来する。このピークの波長は6.06−1.74μmである。このような波長のレーザとして、DBr化学レーザ(波長5.8−6.3μm)、半導体レーザ(PbS1-xSex(波長4−8.5μm))がある。
【0048】
また、LPCは波長400nmにおいて吸光度のピークを有し、このような波長のレーザとして半導体レーザ(波長が0.41μm)およびPb蒸気レーザ(波長0.41μm)が存在する。
【0049】
これらのレーザを加工用に用いることで、有機物層20による吸収を高めることができる。
【0050】
(実施の形態3)
図9は、有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの断面図である。図10は、有機物層としてPET樹脂を用いたフラットケーブルの加工工程を示す断面図である。図11は、この発明に従って形成された孔の平面図である。
図9から図11を参照して、有機物層20に導電層29が埋め込まれたフラットケーブルであっても、この発明の従った加工方法および加工装置の加工対象となる。具体的には、図10で孔22を製造する工程において、図1で示した方法および装置を使用することによって、有機物層20と接着層20aを確実に除去することができる。
【0051】
図11で示すように、炭酸ガスレーザのみが照射された第一領域1100では、孔22の底においては導電層29が露出していない。これは、接着層の取り残しが孔22の底に残存しているからであると考えられる。これに対して、炭酸ガスレーザを照射した後にファイバレーザを照射した部分では、孔22の底面において導電層29が露出する。これは、ファイバレーザにより接着層が確実に除去されたからであると考えられる。
【0052】
図12は、PETの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図13は、液晶ポリマーの赤外領域における吸収(縦軸)と波数(横軸)との関係を示すグラフである。図12および図13を参照して、特定の波数において、吸収が大きくなっていることがわかる。これは、有機物を構成する特定の化学結合(官能基)による吸収であり、このような吸収が存在すれば、その官能基を有する有機物が残存していることがわかる。そして、吸収が大きい波数のレーザを照射することで、効率よく樹脂にレーザのエネルギーを吸収させることができる。
【実施例1】
【0053】
図2で示すような、銅板(厚みが18μm)、ポリイミド系樹脂からなる接着層20a(厚みが2−3μm)、有機物層20を構成するポリイミド樹脂(厚みが20μm)、ポリイミド系樹脂からなる接着層20a(厚みが2−3μm)、銅板(厚みが18μm)の層構造を有するフレキシブルプリント基板を準備した。
【0054】
このフレキシブルプリント基板において、予め片側の銅板に図2で示すようにフォトリソグラフィと銅エッチングにより開口31が形成されている。
【0055】
フレキシブルプリント基板は、ロール巻きの状態から引き出されて加工され、その後、ロール巻きの状態で収納される。
【0056】
そして炭酸ガスレーザによる加工で有機物層20を除去し、その後、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザで接着層20aを除去する。これにより、ポリイミド樹脂が除去されたブラインドビア構造のフレキシブルプリント基板を加工した。ここで、炭酸ガスレーザは、出力100W、約μ秒パルス、とする。炭酸ガスレーザは、図1で示すガルバノスキャナ120により銅の孔加工されている位置へ照射できるように制御される。炭酸ガスレーザ照射後のファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザは、出力16Wとした。炭酸ガスレーザ照射エリアと、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザ照射エリアに酸素を10dm3/min、の流量で導入する。これにより、樹脂の残渣を確実に除去することが可能となる。
【実施例2】
【0057】
PET樹脂(厚みが20μm)、PET系樹脂接着層(厚みが2−3μm)、銅配線(厚みが18μm)、PET系樹脂接着層(厚みが2−3μm)、PET樹脂(厚みが20μm)の層構造を有するフラットケーブル(図9)を準備した。片側のPET樹脂およびPET系樹脂接着層を炭酸ガスレーザの照射および、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザで接着層を除去した。(図10)。ここで、炭酸ガスレーザは、出力100W、約12μ秒パルス、とした。ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのパルスレーザの出力は、炭酸ガスレーザは、図1で示すガルバノスキャナ120により直線走査して加工する。YAGレーザまたはYVO4レーザは、出力16Wとした。炭酸ガスレーザ照射エリアと、ファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザ照射エリアに酸素を10dm3/min、の流量で導入する。これにより、樹脂の残渣を確実に除去することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、有機物層を加工することが可能なレーザ加工装置の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 レーザ加工装置、10,30 導電層、20 有機物層、21 残渣、22 孔、22a 底、31 開口、100 加工部、110 加工用レーザ源、111,112,211,213 レーザ光、120,220 ガルバノスキャナ、130 レンズ、200 測定部、210 残渣測定用レーザ源、230 集光レンズ、240 受光部、300 フレキシブルプリント基板、310 加工エリア、320 測定エリア、400 制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、前記有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、
前記有機物を除去した後に前記被加工物に前記接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備えた、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記第一パルスレーザは炭酸ガスレーザであり、前記第二パルスレーザはファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第二パルスレーザは、非線形結晶により短波長に波長変換されたレーザである、請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記有機物層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記被加工物は、フレキシブルプリント基板およびフラットケーブルのいずれかである、請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記被加工物は、ロール形状から引き出されて加工され、加工後はロール形状で巻き取られる、請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記第一または第二パルスレーザで加工中に加工部に酸素が供給される、請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザ加工方法を実施するためのレーザ装置であって、
有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、前記有機物層を除去するための第一パルスレーザと、前記有機物を除去した後に前記被加工物に前記接着層を除去するための第二パルスレーザを照射することが可能なレーザ源とを備えた、レーザ加工装置。
【請求項1】
有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、前記有機物層を除去するための第一パルスレーザを照射する工程と、
前記有機物を除去した後に前記被加工物に前記接着層を除去するための第二パルスレーザを照射する工程とを備えた、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記第一パルスレーザは炭酸ガスレーザであり、前記第二パルスレーザはファイバレーザ、YAGレーザまたはYVO4レーザのいずれかである、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第二パルスレーザは、非線形結晶により短波長に波長変換されたレーザである、請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記有機物層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよび液晶ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記被加工物は、フレキシブルプリント基板およびフラットケーブルのいずれかである、請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記被加工物は、ロール形状から引き出されて加工され、加工後はロール形状で巻き取られる、請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記第一または第二パルスレーザで加工中に加工部に酸素が供給される、請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザ加工方法を実施するためのレーザ装置であって、
有機物層と導体層とが接着層により接合された被加工物に、前記有機物層を除去するための第一パルスレーザと、前記有機物を除去した後に前記被加工物に前記接着層を除去するための第二パルスレーザを照射することが可能なレーザ源とを備えた、レーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【公開番号】特開2012−45567(P2012−45567A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189342(P2010−189342)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
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