レーザ加工方法及びレーザ加工装置
【課題】脆性材料からなる基板に対して、破断部やクラックを殆ど生成することなく、レーザ加工によって貫通溝を形成することができる、レーザ加工方法及びレーザ加工装置を、提供する。
【解決手段】脆性材料からなる基板1に、レーザ光9を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、レーザ光9を照射して、前記基板1の両表面11,12の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工、例えば有底溝111を形成する加工、を行う、予備工程と、前記基板の他方の表面に、レーザ光9を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、を有する。
【解決手段】脆性材料からなる基板1に、レーザ光9を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、レーザ光9を照射して、前記基板1の両表面11,12の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工、例えば有底溝111を形成する加工、を行う、予備工程と、前記基板の他方の表面に、レーザ光9を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法及びレーザ加工装置に、関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16は、例えば特許文献1に示されているような、レーザ加工によって基板に貫通溝を形成するための従来の方法を、示している。なお、図16における破線Lは、貫通溝を形成する予定ラインを示している。予定ラインLは、形成される貫通溝の中心を示している。従来においては、基板1の一方の表面11の予定ラインLに、レーザ光9を照射することにより、貫通溝を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16に示される従来の方法では、基板1が脆性材料からなっている場合に、次のような不具合があった。すなわち、図17に示されるように、レーザ光9によって表面11が掘り下げられていく際に、他方の表面12には応力が働き、それ故に、表面12における貫通溝2の開口21近傍に、破断部31やクラック32が生成していた。
【0005】
本発明は、脆性材料からなる基板に対して、破断部やクラックを殆ど生成することなく、レーザ加工によって貫通溝を形成することができる、レーザ加工方法及びレーザ加工装置を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、レーザ光を照射して、前記基板の両表面の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工を行う、予備工程と、前記基板の他方の表面に、レーザ光を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、を有することを特徴としている。
【0007】
このレーザ加工方法は、更に、次のような具体的構成を採用するのが好ましい。
(a)前記予備加工が、前記基板の前記一方の表面に、レーザ光を照射して、有底溝を形成する加工である。
(b)前記脆性材料が、レーザ光透過可能な材料であり、前記予備加工が、前記基板の前記他方の表面側からレーザ光を照射して前記一方の表面にレーザ光を集光することによって、前記一方の表面に有底溝を形成する加工である。
(c)前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ライン上に形成する。
(d)前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ラインの両側に形成する。
(e)前記有底溝は、底が幅狭となった断面形状を有している。
(f)前記基板の前記両表面の内の一方の表面側からレーザ光を照射して前記予備工程を実施した後、前記基板を表裏反転し、前記一方の表面側からレーザ光を照射して前記本工程を実施する。
(g)前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施した後、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する。
(h)前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施しながら、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する。
(i)前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである。
【0008】
本発明の第2態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力する1つのレーザ光出力部を備えたレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記加工ステージが、前記基板を表裏反転させる反転機構を、有している、ことを特徴としている。
【0009】
本発明の第3態様は、レーザ光透過可能な脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力するレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記レーザ発振器が、前記基板の一方の表面側からレーザ光を照射して前記基板の他方の表面にレーザ光を集光するように、調節可能である、ことを特徴としている。
【0010】
本発明の第4態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力するレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるように、構成されている、ことを特徴としている。
【0011】
第4態様のレーザ加工装置においては、前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射できるように、構成されている、ことが好ましい。
【0012】
第2〜第4態様のレーザ加工装置においては、前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のレーザ加工方法によれば、本加工を行った際の応力が、予備加工を行った部分に集中するので、予備加工を行った表面に破断部やクラックが生成するのを抑制できる。したがって、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝を、形成することができる。
【0014】
本発明の第2態様のレーザ加工装置によれば、反転機構によって、基板を1つのレーザ光出力部に対して表裏反転できるので、1つのレーザ光出力部によって、基板の一方の表面にレーザ光を照射して予備加工を実施でき、且つ、他方の表面にレーザ光を照射して本加工を実施できる。したがって、基板に対する貫通溝の形成を、安価に実現できる。
【0015】
本発明の第3態様のレーザ加工装置によれば、基板の両表面の内の同じ表面側から、予備加工及び本加工を実施できるので、基板の表裏反転を不要にできる。したがって、基板を表裏反転した場合の再位置調整を不要にでき、それ故、作業性を向上できる。
【0016】
本発明の第4態様のレーザ加工装置によれば、基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるので、基板を表裏反転することなく、一方の表面に予備加工を実施でき、他方の表面に本加工を実施できる。したがって、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面略図である。
【図2】基板の予定された加工後の状態を示す平面部分図である。
【図3】基板内のチップの予定された加工後の状態を示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係るレーザ加工方法の予備工程を示す断面図である。
【図5】予備工程後の基板の状態を示す断面図である。
【図6】予備工程に続く本工程を示す断面図である。
【図7】本工程後の貫通溝が形成された基板を示す断面図である。
【図8】第2実施形態における予備工程後の基板の状態を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係るレーザ加工方法の本工程を示す断面図である。
【図10】第3実施形態に係るレーザ加工方法の予備工程を示す断面図である。
【図11】図10の予備工程の後の基板の状態を示す断面図である。
【図12】第4実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面部分断面略図である。
【図13】第4実施形態に係るレーザ加工装置によって本工程を実施している状態を示す側面部分断面略図である。
【図14】第5実施形態に係るレーザ加工方法の一工程を示す断面図である。
【図15】図14の工程の後の基板の状態を示す断面図である。
【図16】従来のレーザ加工方法を示す断面図である。
【図17】従来のレーザ加工方法によって貫通溝が形成された基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面略図である。このレーザ加工装置5Aは、レーザ発振器51と加工ステージ52とを備えている。レーザ発振器51は、鉛直下方に向けて先端からレーザ光を出力するレーザ光出力部511を、備えている。加工ステージ52は、加工対象である基板1をステージ本体521上に保持するように、構成されている。
【0019】
加工ステージ52は、更に、駆動機構522及び反転機構523を備えている。駆動機構522は、ステージ本体521を、上下方向、水平方向、及び所定の水平軸回りの回動方向に、動かすことができるように、構成されており、ステージ本体521を動かすことによって、レーザ光出力部511に対する基板1の位置を任意に設定できるようになっている。反転機構523は、ステージ本体521上の基板1を、把持し、持ち上げて裏返し、ステージ本体521上に載置できるように、構成されている。
【0020】
基板1は、脆性材料であるタンタル酸リチウムのウエハであり、多数の赤外線センサチップからなっている。基板1は、平面部分図である図2に示されるように、貫通溝2Aによって赤外線センサチップ10毎に切り分けられることが予定されている。更に、赤外線センサチップ10においては、平面図である図3に示されるように、基板1の表面に赤外線受光部100が設けられており、断熱のために、赤外線受光部100の3辺に沿って貫通溝2Bが形成されることが予定されている。本実施形態のレーザ加工装置5Aによって基板1に形成する貫通溝2は、貫通溝2A及び貫通溝2Bの一方又は両方である。
【0021】
本実施形態のレーザ加工装置5Aを用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0022】
(1)まず、図4に示されるように、ステージ本体521上の基板1の一方の表面11に、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成するための予備加工を行う(予備工程)。図5は、予備工程後の基板1を示している。予備加工としては、表面11の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。有底溝111は、底が幅狭となった断面形状を有しており、具体的には、断面くさび形状を有している。なお、予定ラインLは、貫通溝2を形成する位置の中心を示している。
【0023】
この予備加工は、レーザ光9によって有底溝111を形成する加工であるので、容易に実施できる。
【0024】
(2)次に、反転機構523を作動させて、ステージ本体521上の基板1を表裏反転させる。そして、図6に示されるように、基板1の他方の表面12の予定ラインLに、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0025】
この本加工においては、レーザ光9によって表面12が掘り下げられていく際に、表面11側に応力が働く。しかしながら、本実施形態の方法によれば、表面11側に働く応力が、有底溝111に集中するので、表面11に破断部やクラックが生成するのを、抑制できる。特に、有底溝111は、予定ラインL上に位置しているので、表面11側に働く応力は有底溝111に集中しやすい。したがって、本実施形態の方法によれば、図7に示されるように、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝2を、形成することができる。
【0026】
更に、有底溝111が断面くさび形状を有しているので、応力は、有底溝111の底端118に集中しやすい。それによって、有底溝111の底端118には、クラックが発生しやすくなるが、底端118は、表面12から掘り下げられてきた穴に確実に通じて貫通溝2となる部分であるので、クラックが発生しても問題はない。したがって、有底溝111が断面くさび形状を有していることにより、表面11に破断部やクラックが生成するのを、より効果的に抑制できる。
【0027】
また、レーザ加工装置5Aは、反転機構523によって、基板1を1つのレーザ光出力部511に対して表裏反転できるので、1つのレーザ光出力部511によって、基板1の一方の表面11に予備加工を実施でき、且つ、他方の表面12に本加工を実施できる。したがって、本実施形態によれば、基板1に対する貫通溝2の形成を、安価に実現できる。
【0028】
[第2実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に比して、有底溝111の形成場所及び数が異なるだけである。すなわち、本実施形態では、図8に示されるように、予備加工として、一方の表面11の予定ラインLの両側に、有底溝111を形成している。
【0029】
本実施形態によれば、図9に示されるように、他方の表面12へのレーザ光9の照射によって本加工が行われる際に、部分X1の温度が上昇するが、表面11においては、部分X1の両側の有底溝111が断熱機能を発揮するので、有底溝111の外側の部分X2への熱影響が小さくなる。また、表面11側に働く応力は、有底溝111に集中しやすい。したがって、本実施形態によれば、表面11への熱や応力の伝播を低減でき、表面11における破断部やクラックの生成を抑制できる。
【0030】
[第3実施形態]
本実施形態のレーザ加工装置は、第1実施形態のレーザ加工装置5Aに比して、次の点が異なるだけである。
(a)レーザ発振器51が、基板1の一方の表面11側(又は表面12側)からレーザ光を照射して基板1の他方の表面12(又は表面11)にレーザ光を集光するように、調節可能である。
(b)加工ステージ52が、反転機構523を備えていない。
【0031】
そして、本実施形態のレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。なお、基板1を構成する脆性材料は、レーザ光透過可能な材料であり、具体的には、第1実施形態の場合と同じタンタル酸リチウムである。
【0032】
(1)まず、図10に示されるように、基板1の一方の表面11側からレーザ光9を照射して他方の表面12にレーザ光9を集光することにより、予備加工を行う(予備工程)。これにより、図11に示されるように、表面12の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。なお、有底溝111は、第2実施形態の場合のように形成してもよい。
【0033】
(2)そして、基板1を表裏反転させることなく、第1実施形態の図6に示される場合と同様に、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0034】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。しかも、本実施形態によれば、基板1の両表面11、12の内の同じ表面側から、予備加工及び本加工を実施できるので、基板1の表裏反転を不要にできる。したがって、基板1を表裏反転した場合の再位置調整を不要にでき、それ故、作業性を向上できる。
【0035】
[第4実施形態]
図12は、本実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面部分断面略図である。このレーザ加工装置5Bは、レーザ発振器55と加工ステージ56とを備えている。レーザ発振器55は、2つのレーザ光出力部551、552を有しており、レーザ光出力部551は、鉛直下方に向けて先端からレーザ光を出力するように設けられており、レーザ光出力部552は、レーザ光出力部551に対向した位置で、鉛直上方に向けて先端からレーザ光を出力するように設けられている。加工ステージ56は、加工対象である基板1を、両表面11、12全面がレーザ光出力部551、552に対して露出した状態で、ステージ本体561によって保持するように、設けられている。また、レーザ発振器55は、レーザ光出力部551、552のそれぞれからのレーザ光の出力タイミング及び出力強度を、任意に設定できるようになっている。例えば、レーザ発振器55は、レーザ光出力部551、552から、同時に同じ強度のレーザ光を出力したり、時間的に前後して異なる強度のレーザ光を出力したりできる。
【0036】
加工ステージ56は、更に、駆動機構562を備えている。駆動機構562は、ステージ本体561を、上下方向、水平方向、及び所定の水平軸回りの回動方向に、動かすことができるように、構成されており、ステージ本体561を動かすことによって、レーザ発振器51のレーザ光出力部551、552に対する基板1の位置を任意に設定できるようになっている。
【0037】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0038】
本実施形態のレーザ加工装置5Bを用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0039】
(1)図13に示されるように、まず、基板1の表面12に、レーザ光出力部552からレーザ光を照射して、貫通溝2を形成するための予備加工を行う(予備工程)。すなわち、表面12の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。なお、有底溝111は、第2実施形態の場合のように形成してもよい。
【0040】
(2)そして、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光出力部551からレーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0041】
すなわち、本実施形態のレーザ加工方法は、基板1の両表面11、12に両表面側からレーザ光9を照射することにより、基板1の表面12に予備工程を実施した後、基板1の表面11に本工程を実施している。
【0042】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。しかも、本実施形態によれば、基板1の両表面11、12に両表面側からレーザ光9を照射できるので、基板1を表裏反転することなく、表面12に予備加工を実施でき、且つ、表面11に本加工を実施できる。したがって、作業性を向上できる。
【0043】
[第5実施形態]
本実施形態は、第4実施形態に比して、レーザ加工方法が異なっている。
【0044】
本実施形態のレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0045】
(1)図14に示されるように、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光出力部551からレーザ光9を照射すると同時に、基板1の他方の表面12の予定ラインLに、レーザ光出力部552からレーザ光9を照射する。すなわち、両表面11、12に同時にレーザ光9を照射する。
(2)そして、図15に示されるように、両表面11、12に、それぞれ有底溝111が形成されると、レーザ光出力部551、552の一方を停止して他方のみで堀り込みを行い、貫通溝2を形成する。したがって、例えばレーザ光出力部551を停止した場合には、表面11では予備加工が実施されたこととなり、表面12では本加工が実施されたこととなる。
【0046】
本実施形態によれば、一方の表面へのレーザ光の照射によって他方の表面側に応力が働いても、他方の表面にもレーザ光が照射されて堀り込みが行われているので、他方の表面側への応力の集中が解消される。すなわち、両表面側への応力の集中が解消される。したがって、本実施形態の方法によれば、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝2を、形成することができる。
【0047】
しかも、作業途中までは、両表面11、12に対して同時に加工を行うので、作業効率を向上できる。
【0048】
[別の実施形態]
(1)第1、第2、第4、及び第5実施形態では、基板1を構成する脆性材料として、タンタル酸リチウム以外の材料を用いてもよい。
(2)第3実施形態では、基板1を構成する脆性材料として、レーザ光透過可能な材料であれば、タンタル酸リチウム以外の材料を用いてもよい。
(3)本発明によって形成する貫通溝2は、脆性材料からなる基板に形成する貫通溝であれば、図2の貫通溝2Aや図3の貫通溝2Bに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、脆性材料からなる基板に対して、破断部やクラックを殆ど生成することなく、レーザ加工によって貫通溝を形成することができるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板 11、12 表面 111 有底溝 2 貫通溝 5A、5B レーザ加工装置 51、55 レーザ発振器 511、551、552 レーザ光出力部 52、56 加工ステージ 9 レーザ光 L 予定ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法及びレーザ加工装置に、関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16は、例えば特許文献1に示されているような、レーザ加工によって基板に貫通溝を形成するための従来の方法を、示している。なお、図16における破線Lは、貫通溝を形成する予定ラインを示している。予定ラインLは、形成される貫通溝の中心を示している。従来においては、基板1の一方の表面11の予定ラインLに、レーザ光9を照射することにより、貫通溝を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16に示される従来の方法では、基板1が脆性材料からなっている場合に、次のような不具合があった。すなわち、図17に示されるように、レーザ光9によって表面11が掘り下げられていく際に、他方の表面12には応力が働き、それ故に、表面12における貫通溝2の開口21近傍に、破断部31やクラック32が生成していた。
【0005】
本発明は、脆性材料からなる基板に対して、破断部やクラックを殆ど生成することなく、レーザ加工によって貫通溝を形成することができる、レーザ加工方法及びレーザ加工装置を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、レーザ光を照射して、前記基板の両表面の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工を行う、予備工程と、前記基板の他方の表面に、レーザ光を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、を有することを特徴としている。
【0007】
このレーザ加工方法は、更に、次のような具体的構成を採用するのが好ましい。
(a)前記予備加工が、前記基板の前記一方の表面に、レーザ光を照射して、有底溝を形成する加工である。
(b)前記脆性材料が、レーザ光透過可能な材料であり、前記予備加工が、前記基板の前記他方の表面側からレーザ光を照射して前記一方の表面にレーザ光を集光することによって、前記一方の表面に有底溝を形成する加工である。
(c)前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ライン上に形成する。
(d)前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ラインの両側に形成する。
(e)前記有底溝は、底が幅狭となった断面形状を有している。
(f)前記基板の前記両表面の内の一方の表面側からレーザ光を照射して前記予備工程を実施した後、前記基板を表裏反転し、前記一方の表面側からレーザ光を照射して前記本工程を実施する。
(g)前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施した後、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する。
(h)前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施しながら、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する。
(i)前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである。
【0008】
本発明の第2態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力する1つのレーザ光出力部を備えたレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記加工ステージが、前記基板を表裏反転させる反転機構を、有している、ことを特徴としている。
【0009】
本発明の第3態様は、レーザ光透過可能な脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力するレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記レーザ発振器が、前記基板の一方の表面側からレーザ光を照射して前記基板の他方の表面にレーザ光を集光するように、調節可能である、ことを特徴としている。
【0010】
本発明の第4態様は、脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、レーザ光を出力するレーザ発振器と、前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、を備えており、前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるように、構成されている、ことを特徴としている。
【0011】
第4態様のレーザ加工装置においては、前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射できるように、構成されている、ことが好ましい。
【0012】
第2〜第4態様のレーザ加工装置においては、前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のレーザ加工方法によれば、本加工を行った際の応力が、予備加工を行った部分に集中するので、予備加工を行った表面に破断部やクラックが生成するのを抑制できる。したがって、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝を、形成することができる。
【0014】
本発明の第2態様のレーザ加工装置によれば、反転機構によって、基板を1つのレーザ光出力部に対して表裏反転できるので、1つのレーザ光出力部によって、基板の一方の表面にレーザ光を照射して予備加工を実施でき、且つ、他方の表面にレーザ光を照射して本加工を実施できる。したがって、基板に対する貫通溝の形成を、安価に実現できる。
【0015】
本発明の第3態様のレーザ加工装置によれば、基板の両表面の内の同じ表面側から、予備加工及び本加工を実施できるので、基板の表裏反転を不要にできる。したがって、基板を表裏反転した場合の再位置調整を不要にでき、それ故、作業性を向上できる。
【0016】
本発明の第4態様のレーザ加工装置によれば、基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるので、基板を表裏反転することなく、一方の表面に予備加工を実施でき、他方の表面に本加工を実施できる。したがって、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面略図である。
【図2】基板の予定された加工後の状態を示す平面部分図である。
【図3】基板内のチップの予定された加工後の状態を示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係るレーザ加工方法の予備工程を示す断面図である。
【図5】予備工程後の基板の状態を示す断面図である。
【図6】予備工程に続く本工程を示す断面図である。
【図7】本工程後の貫通溝が形成された基板を示す断面図である。
【図8】第2実施形態における予備工程後の基板の状態を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係るレーザ加工方法の本工程を示す断面図である。
【図10】第3実施形態に係るレーザ加工方法の予備工程を示す断面図である。
【図11】図10の予備工程の後の基板の状態を示す断面図である。
【図12】第4実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面部分断面略図である。
【図13】第4実施形態に係るレーザ加工装置によって本工程を実施している状態を示す側面部分断面略図である。
【図14】第5実施形態に係るレーザ加工方法の一工程を示す断面図である。
【図15】図14の工程の後の基板の状態を示す断面図である。
【図16】従来のレーザ加工方法を示す断面図である。
【図17】従来のレーザ加工方法によって貫通溝が形成された基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面略図である。このレーザ加工装置5Aは、レーザ発振器51と加工ステージ52とを備えている。レーザ発振器51は、鉛直下方に向けて先端からレーザ光を出力するレーザ光出力部511を、備えている。加工ステージ52は、加工対象である基板1をステージ本体521上に保持するように、構成されている。
【0019】
加工ステージ52は、更に、駆動機構522及び反転機構523を備えている。駆動機構522は、ステージ本体521を、上下方向、水平方向、及び所定の水平軸回りの回動方向に、動かすことができるように、構成されており、ステージ本体521を動かすことによって、レーザ光出力部511に対する基板1の位置を任意に設定できるようになっている。反転機構523は、ステージ本体521上の基板1を、把持し、持ち上げて裏返し、ステージ本体521上に載置できるように、構成されている。
【0020】
基板1は、脆性材料であるタンタル酸リチウムのウエハであり、多数の赤外線センサチップからなっている。基板1は、平面部分図である図2に示されるように、貫通溝2Aによって赤外線センサチップ10毎に切り分けられることが予定されている。更に、赤外線センサチップ10においては、平面図である図3に示されるように、基板1の表面に赤外線受光部100が設けられており、断熱のために、赤外線受光部100の3辺に沿って貫通溝2Bが形成されることが予定されている。本実施形態のレーザ加工装置5Aによって基板1に形成する貫通溝2は、貫通溝2A及び貫通溝2Bの一方又は両方である。
【0021】
本実施形態のレーザ加工装置5Aを用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0022】
(1)まず、図4に示されるように、ステージ本体521上の基板1の一方の表面11に、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成するための予備加工を行う(予備工程)。図5は、予備工程後の基板1を示している。予備加工としては、表面11の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。有底溝111は、底が幅狭となった断面形状を有しており、具体的には、断面くさび形状を有している。なお、予定ラインLは、貫通溝2を形成する位置の中心を示している。
【0023】
この予備加工は、レーザ光9によって有底溝111を形成する加工であるので、容易に実施できる。
【0024】
(2)次に、反転機構523を作動させて、ステージ本体521上の基板1を表裏反転させる。そして、図6に示されるように、基板1の他方の表面12の予定ラインLに、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0025】
この本加工においては、レーザ光9によって表面12が掘り下げられていく際に、表面11側に応力が働く。しかしながら、本実施形態の方法によれば、表面11側に働く応力が、有底溝111に集中するので、表面11に破断部やクラックが生成するのを、抑制できる。特に、有底溝111は、予定ラインL上に位置しているので、表面11側に働く応力は有底溝111に集中しやすい。したがって、本実施形態の方法によれば、図7に示されるように、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝2を、形成することができる。
【0026】
更に、有底溝111が断面くさび形状を有しているので、応力は、有底溝111の底端118に集中しやすい。それによって、有底溝111の底端118には、クラックが発生しやすくなるが、底端118は、表面12から掘り下げられてきた穴に確実に通じて貫通溝2となる部分であるので、クラックが発生しても問題はない。したがって、有底溝111が断面くさび形状を有していることにより、表面11に破断部やクラックが生成するのを、より効果的に抑制できる。
【0027】
また、レーザ加工装置5Aは、反転機構523によって、基板1を1つのレーザ光出力部511に対して表裏反転できるので、1つのレーザ光出力部511によって、基板1の一方の表面11に予備加工を実施でき、且つ、他方の表面12に本加工を実施できる。したがって、本実施形態によれば、基板1に対する貫通溝2の形成を、安価に実現できる。
【0028】
[第2実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に比して、有底溝111の形成場所及び数が異なるだけである。すなわち、本実施形態では、図8に示されるように、予備加工として、一方の表面11の予定ラインLの両側に、有底溝111を形成している。
【0029】
本実施形態によれば、図9に示されるように、他方の表面12へのレーザ光9の照射によって本加工が行われる際に、部分X1の温度が上昇するが、表面11においては、部分X1の両側の有底溝111が断熱機能を発揮するので、有底溝111の外側の部分X2への熱影響が小さくなる。また、表面11側に働く応力は、有底溝111に集中しやすい。したがって、本実施形態によれば、表面11への熱や応力の伝播を低減でき、表面11における破断部やクラックの生成を抑制できる。
【0030】
[第3実施形態]
本実施形態のレーザ加工装置は、第1実施形態のレーザ加工装置5Aに比して、次の点が異なるだけである。
(a)レーザ発振器51が、基板1の一方の表面11側(又は表面12側)からレーザ光を照射して基板1の他方の表面12(又は表面11)にレーザ光を集光するように、調節可能である。
(b)加工ステージ52が、反転機構523を備えていない。
【0031】
そして、本実施形態のレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。なお、基板1を構成する脆性材料は、レーザ光透過可能な材料であり、具体的には、第1実施形態の場合と同じタンタル酸リチウムである。
【0032】
(1)まず、図10に示されるように、基板1の一方の表面11側からレーザ光9を照射して他方の表面12にレーザ光9を集光することにより、予備加工を行う(予備工程)。これにより、図11に示されるように、表面12の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。なお、有底溝111は、第2実施形態の場合のように形成してもよい。
【0033】
(2)そして、基板1を表裏反転させることなく、第1実施形態の図6に示される場合と同様に、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0034】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。しかも、本実施形態によれば、基板1の両表面11、12の内の同じ表面側から、予備加工及び本加工を実施できるので、基板1の表裏反転を不要にできる。したがって、基板1を表裏反転した場合の再位置調整を不要にでき、それ故、作業性を向上できる。
【0035】
[第4実施形態]
図12は、本実施形態に係るレーザ加工装置を示す側面部分断面略図である。このレーザ加工装置5Bは、レーザ発振器55と加工ステージ56とを備えている。レーザ発振器55は、2つのレーザ光出力部551、552を有しており、レーザ光出力部551は、鉛直下方に向けて先端からレーザ光を出力するように設けられており、レーザ光出力部552は、レーザ光出力部551に対向した位置で、鉛直上方に向けて先端からレーザ光を出力するように設けられている。加工ステージ56は、加工対象である基板1を、両表面11、12全面がレーザ光出力部551、552に対して露出した状態で、ステージ本体561によって保持するように、設けられている。また、レーザ発振器55は、レーザ光出力部551、552のそれぞれからのレーザ光の出力タイミング及び出力強度を、任意に設定できるようになっている。例えば、レーザ発振器55は、レーザ光出力部551、552から、同時に同じ強度のレーザ光を出力したり、時間的に前後して異なる強度のレーザ光を出力したりできる。
【0036】
加工ステージ56は、更に、駆動機構562を備えている。駆動機構562は、ステージ本体561を、上下方向、水平方向、及び所定の水平軸回りの回動方向に、動かすことができるように、構成されており、ステージ本体561を動かすことによって、レーザ発振器51のレーザ光出力部551、552に対する基板1の位置を任意に設定できるようになっている。
【0037】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0038】
本実施形態のレーザ加工装置5Bを用いたレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0039】
(1)図13に示されるように、まず、基板1の表面12に、レーザ光出力部552からレーザ光を照射して、貫通溝2を形成するための予備加工を行う(予備工程)。すなわち、表面12の予定ラインL上に、有底溝111を形成する。なお、有底溝111は、第2実施形態の場合のように形成してもよい。
【0040】
(2)そして、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光出力部551からレーザ光9を照射して、貫通溝2を形成する本加工を行う(本工程)。
【0041】
すなわち、本実施形態のレーザ加工方法は、基板1の両表面11、12に両表面側からレーザ光9を照射することにより、基板1の表面12に予備工程を実施した後、基板1の表面11に本工程を実施している。
【0042】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を発揮できる。しかも、本実施形態によれば、基板1の両表面11、12に両表面側からレーザ光9を照射できるので、基板1を表裏反転することなく、表面12に予備加工を実施でき、且つ、表面11に本加工を実施できる。したがって、作業性を向上できる。
【0043】
[第5実施形態]
本実施形態は、第4実施形態に比して、レーザ加工方法が異なっている。
【0044】
本実施形態のレーザ加工方法による貫通溝2の形成は、次のように行う。
【0045】
(1)図14に示されるように、基板1の表面11の予定ラインLに、レーザ光出力部551からレーザ光9を照射すると同時に、基板1の他方の表面12の予定ラインLに、レーザ光出力部552からレーザ光9を照射する。すなわち、両表面11、12に同時にレーザ光9を照射する。
(2)そして、図15に示されるように、両表面11、12に、それぞれ有底溝111が形成されると、レーザ光出力部551、552の一方を停止して他方のみで堀り込みを行い、貫通溝2を形成する。したがって、例えばレーザ光出力部551を停止した場合には、表面11では予備加工が実施されたこととなり、表面12では本加工が実施されたこととなる。
【0046】
本実施形態によれば、一方の表面へのレーザ光の照射によって他方の表面側に応力が働いても、他方の表面にもレーザ光が照射されて堀り込みが行われているので、他方の表面側への応力の集中が解消される。すなわち、両表面側への応力の集中が解消される。したがって、本実施形態の方法によれば、破断部やクラックが殆ど生成していない貫通溝2を、形成することができる。
【0047】
しかも、作業途中までは、両表面11、12に対して同時に加工を行うので、作業効率を向上できる。
【0048】
[別の実施形態]
(1)第1、第2、第4、及び第5実施形態では、基板1を構成する脆性材料として、タンタル酸リチウム以外の材料を用いてもよい。
(2)第3実施形態では、基板1を構成する脆性材料として、レーザ光透過可能な材料であれば、タンタル酸リチウム以外の材料を用いてもよい。
(3)本発明によって形成する貫通溝2は、脆性材料からなる基板に形成する貫通溝であれば、図2の貫通溝2Aや図3の貫通溝2Bに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、脆性材料からなる基板に対して、破断部やクラックを殆ど生成することなく、レーザ加工によって貫通溝を形成することができるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板 11、12 表面 111 有底溝 2 貫通溝 5A、5B レーザ加工装置 51、55 レーザ発振器 511、551、552 レーザ光出力部 52、56 加工ステージ 9 レーザ光 L 予定ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、
レーザ光を照射して、前記基板の両表面の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工を行う、予備工程と、
前記基板の他方の表面に、レーザ光を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、
を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記予備加工が、前記基板の前記一方の表面に、レーザ光を照射して、有底溝を形成する加工である、
請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記脆性材料が、レーザ光透過可能な材料であり、
前記予備加工が、前記基板の前記他方の表面側からレーザ光を照射して前記一方の表面にレーザ光を集光することによって、前記一方の表面に有底溝を形成する加工である、
請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ライン上に形成する、
請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ラインの両側に形成する、
請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記有底溝は、底が幅狭となった断面形状を有している、
請求項2〜5のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記基板の前記両表面の内の一方の表面側からレーザ光を照射して前記予備工程を実施した後、前記基板を表裏反転し、前記一方の表面側からレーザ光を照射して前記本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施した後、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施しながら、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、請求項1〜9のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力する1つのレーザ光出力部を備えたレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記加工ステージが、前記基板を表裏反転させる反転機構を、有している、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
レーザ光透過可能な脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記レーザ発振器が、前記基板の一方の表面側からレーザ光を照射して前記基板の他方の表面にレーザ光を集光するように、調節可能である、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるように、構成されている、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項14】
前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射できるように、構成されている、
請求項13記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、請求項11〜14のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項1】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工方法であって、
レーザ光を照射して、前記基板の両表面の内の一方の表面に、前記貫通溝を形成するための予備加工を行う、予備工程と、
前記基板の他方の表面に、レーザ光を照射して、前記貫通溝を形成する本加工を行う、本工程と、
を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記予備加工が、前記基板の前記一方の表面に、レーザ光を照射して、有底溝を形成する加工である、
請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記脆性材料が、レーザ光透過可能な材料であり、
前記予備加工が、前記基板の前記他方の表面側からレーザ光を照射して前記一方の表面にレーザ光を集光することによって、前記一方の表面に有底溝を形成する加工である、
請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ライン上に形成する、
請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記有底溝を、前記貫通溝を形成する予定ラインの両側に形成する、
請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記有底溝は、底が幅狭となった断面形状を有している、
請求項2〜5のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記基板の前記両表面の内の一方の表面側からレーザ光を照射して前記予備工程を実施した後、前記基板を表裏反転し、前記一方の表面側からレーザ光を照射して前記本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施した後、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記基板の前記両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射することにより、前記基板の前記一方の表面に予備工程を実施しながら、前記基板の前記他方の表面に本工程を実施する、
請求項1、2、4〜6のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、請求項1〜9のいずれか一つに記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力する1つのレーザ光出力部を備えたレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記加工ステージが、前記基板を表裏反転させる反転機構を、有している、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
レーザ光透過可能な脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記レーザ発振器が、前記基板の一方の表面側からレーザ光を照射して前記基板の他方の表面にレーザ光を集光するように、調節可能である、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
脆性材料からなる基板に、レーザ光を照射して貫通溝を形成する、レーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記基板を保持し、前記レーザ発振器に対する前記基板の位置を任意に設定する、加工ステージと、
を備えており、
前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を照射できるように、構成されている、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項14】
前記レーザ発振器が、前記基板の両表面に両表面側からレーザ光を同時に照射できるように、構成されている、
請求項13記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記脆性材料が、タンタル酸リチウムである、請求項11〜14のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−199399(P2012−199399A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62815(P2011−62815)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]