説明

レーザ加工装置及び方法

【課題】加工対象物内部のクラックの発生を制限可能なレーザ加工を行う。
【解決手段】
レーザ加工装置1は、ガラス又は水晶を加工対象物50としてレーザ加工する装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源12と、レーザ光の出射条件を制御する制御手段10と、レーザ光を加工対象物に集光する集光手段16、19とを備え、制御手段は、(i)ガラスを加工対象物とする場合、レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を加工対象物とする場合、レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるようレーザ光の出射条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、ガラスや水晶などの材質から成る基板などの加工対象物の表面又は内部にレーザ光を集光させ、多光子吸収による化学的又は物理的な改質領域を形成する加工装置が知られている。加工装置による加工後に改質領域を起点として、劈開などの手順を加えることで基板を分断し、チップなどの電子部品を形成することが出来る。このようなレーザ加工装置においては、加工精度の向上のために、種々の工夫が為されている。
【0003】
加工精度の劣化の要因として、レーザ光により加工対象物に形成されるクラックの存在が挙げられる。加工対象物に吸収されるレーザ光の出力や出射時間に応じて、改質領域における改質の態様が変化することが知られており、高出力、長時間の出射により、主に加熱による脆化が進み、不要なクラックが生じることがある。また、加工対象物の材質などに応じた脆性の変化により、クラックの発生条件が変化する。
【0004】
後述する先行技術文献には、加工対象物内部にレーザ光を集光させる際に、パルス状のレーザ光の非照射期間を設けることで過度な加熱を抑制し、クラックを生じ難くする技術が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−123577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラスや水晶などの脆性材を加工対象物とするレーザ加工では、上述したようにレーザ光の出射によりクラックが生じ易いため、加工精度が低いとされている。その要因として、脆性により、加工対象物内のレーザ光の出射領域外の領域にまでクラックが伸展することや、分断処理時の熱応力の作用精度が低いことなどが挙げられる。
【0007】
本発明は、例えば上述の問題点に鑑み為されたものであり、ガラスや水晶などの脆性材を加工対象物とする場合のレーザ加工において、加工精度の向上を実現可能なレーザ加工装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1のレーザ加工装置は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光手段とを備え、前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御する。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2のレーザ加工装置は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光手段と、前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断手段とを備え、前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、前記分断手段は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1のレーザ加工方法は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光工程とを備え、前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御する。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第2のレーザ加工方法は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光工程と、前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断工程とを備え、前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、前記分断工程は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例のレーザ加工装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】パルス状のレーザ光を示す図である。
【図3】変形例のレーザ加工装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光手段とを備え、前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御する。
【0014】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態によれば、加工対象物に対してレーザ光を照射し、該レーザ光を加工対象物の表面又は内部に集光させることで、集光部近傍に加熱などによる物理的又は化学的な改質を生じさせる。加工対象物における改質領域は、一般的に他の部位と比較して脆化するため、改質領域を起点とすることで分断等の加工を容易に行うことが出来る。
【0015】
より具体的には、加工対象物におけるレーザ光の照射領域(具体的には、集光部近傍)では、レーザ光の照射中は、短時間の急激な加熱による気化の後、過冷却状態となるという一連の状態変化が生じる。このとき、一連の状態変化により、加熱状態では急激な熱膨張が生じ、過冷却状態では急速な収斂により、体積又は密度の異なる部分が照射領域内に形成され、照射領域内に固体化状態となる部分が生じる。該固体化により、レーザ光の照射領域において改質が生じ、加工対象物の脆化が進む。また、収斂による応力の集中により、クラックが生じることがある。
【0016】
特に、ガラスや水晶などの脆性材を加工対象物とする場合、照射領域においてレーザ光の照射による上述した一連の状態変化が生じる場合、照射領域外にまでクラックが伸展する可能性があることが知られている。これは、レーザ光の出力や照射時間の増加により、加工対象物におけるレーザ光の吸収エネルギが増大することに起因するものであり、集光部近傍の加工対象物を気化させた後の余剰のエネルギが周辺部に熱として蓄積することに起因する。このように蓄積した熱は、加工対象物内部の熱膨張を引き起こし、意図しない(つまり、レーザ光の照射により形成される改質領域以外の領域における)クラックの発生要因となる。ガラスや水晶などの脆性材内部においては、クラックは、比較的小さな力でも容易に脆性材内部に進展するため、このように意図しないクラックが加工対象物内に伸展する場合、脆性材の強度を著しく低下させ、加工精度の低下に繋がる。
【0017】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態は、レーザ光を出射するレーザ光源における出射条件が、制御手段により制御される。具体的には、制御手段は、加工対象物の材質(言い換えれば、加工対象物の脆性等、加工精度に係るパラメータ)に応じて、パルス状のレーザ光の平均出力とパルスピーク時の出力との比率が所定の基準を満たすようにレーザ光源の駆動を制御する。
【0018】
制御手段は、例えば加工対象物がガラスである場合、パルス状のレーザ光のピーク時の出力を、平均出力に対して25倍以上とする。また、加工対象物が水晶である場合、パルス状のレーザ光のピーク時の出力を、平均出力に対して6倍以上とする。
【0019】
このように設定する場合、レーザ光の照射領域においては、相対的に高エネルギとなる高出力のピーク時のレーザ光により、加工対象物の表面又は内部の照射領域に気化などによる改質が生じ、好適な加工が可能となる。一方で、非ピーク時においては、加工対象物におけるレーザ光のエネルギ吸収量がピーク時と比較して相対的に低くなるため、照射領域に蓄積される熱を放出させ、温度の上昇を好適に防止出来る。
【0020】
上述のようにパルス状のレーザ光の出力を設定することで、加工対象物内部に蓄積される熱を好適に逃がすことが可能となり、熱膨張によるクラックの発生及び伸展を抑制することが出来る。このようなレーザ加工を行うことで、クラックなどを含む改質が生じる領域をレーザ光の照射領域及び出射条件に応じて制限することが出来、加工精度の向上に繋がる。また、このような改質領域を起点として、加工対象物の分断などの更なる加工を実施する場合、制限された領域内に集中的に生じるクラックなどを含む改質により高精度の分断が可能となる。このため、意図しない領域に生じたクラックによる加工精度の劣化を防止することが出来、高精度に形成される改質領域を起点とする種々の加工を好適に実現することが可能となる。
【0021】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の一の態様では、前記制御手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光の平均出力を0.01W以上、4W以下に制御する。
【0022】
この態様によれば、ガラスを加工対象物とするレーザ加工に際し、パルス状のレーザ光の出射条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0023】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記集光手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記加工対象物における前記レーザ光のビーム径が40マイクロメートル以上、140マイクロメートル以下となるよう前記レーザ光を集光する。
【0024】
この態様によれば、ガラスを加工対象物とするレーザ加工に際し、パルス状のレーザ光の出射条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0025】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記加工対象物を前記レーザ光に対して相対的に移動させる移動手段を更に備え、前記移動手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記加工対象物を前記レーザ光に対して0.01ミリメートル毎秒以上、3ミリメートル毎秒以下の速度で相対的に移動させる。
【0026】
この態様によれば、ガラスを加工対象物とするレーザ加工に際し、加工対象物の移動条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0027】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記制御手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光の平均出力を0.1W以上、10W以下に制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【0028】
この態様によれば、水晶を加工対象物とするレーザ加工に際し、パルス状のレーザ光の出射条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0029】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記集光手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記加工対象物における前記レーザ光のビーム径が40マイクロメートル以上、300マイクロメートル以下となるよう前記レーザ光を集光する。
【0030】
この態様によれば、水晶を加工対象物とするレーザ加工に際し、パルス状のレーザ光の出射条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0031】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記加工対象物を前記レーザ光に対して相対的に移動させる移動手段を更に備え、前記移動手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記加工対象物を前記レーザ光に対して0.01ミリメートル毎秒以上、50ミリメートル毎秒以下の速度で相対的に移動させる。
【0032】
この態様によれば、水晶を加工対象物とするレーザ加工に際し、加工対象物の移動条件を適切に設定出来る。従って、意図しないクラックの進展による加工精度の劣化を抑制し、高精度の加工を実現可能となる。
【0033】
本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の他の態様では、前記レーザ光源は、炭酸ガスレーザ光源である。
【0034】
上述の出射条件を満たすことで、従来FS(Femto Second)レーザ又はPS(Pico Second)レーザなどといったパルスの繰り返し周波数が比較的高い高価なレーザが必要とされている硬質ガラスなどの加工について、比較的安価な炭酸ガスレーザを用いることが可能となる。また、この態様によれば、比較的簡単に上述したレーザ光のパルス制御及び出力制御を実現出来る。
【0035】
本発明のレーザ加工装置の第2実施形態は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光手段と、前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断手段とを備え、前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、前記分断手段は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させる。
【0036】
本発明のレーザ加工装置の第2実施形態によれば、上述した本発明のレーザ加工装置の第1実施形態によるものと同様に、加工対象物に対して改質領域を形成する加工を行うことが出来る。
【0037】
レーザ加工装置の第2実施形態の分断手段は、加工用のレーザ光源より照射されるレーザ光を分岐させ、加工対象物の改質領域内の分断面に沿って集光させる。分断手段は、該集光により、加工対象物の改質領域内の微小体積内に、加熱による熱応力を生じさせ、該熱応力により改質領域を起点とする熱応力分断を行う。
【0038】
レーザ加工装置の第2実施形態によれば、一つのレーザ光源を有する装置を用いることで、加工対象物に対して改質領域を形成させる第1の加工と、該改質領域を用いて加工対象物を分断する第2の加工とを実施することが出来る。
【0039】
尚、上述した第1実施形態のレーザ加工装置が取り得る各種態様に対応して、第2実施形態のレーザ加工装置も各種態様を採用することができる。
【0040】
本発明のレーザ加工装置の第2実施形態の一の態様では、前記分断手段は、前記集光手段が前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる際に、前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に、前記分岐されたレーザ光を集光させる。
【0041】
この態様によれば、加工用のレーザ光による改質領域を形成させる第1の加工と、該改質領域を起点とした熱応力による加工対象物を分断する第2の加工とを平行して実施出来る。従って、加工対象物を分断する際の、改質領域の形成と分断とを含む一連の分断処理に要するタクトタイムの短縮を実現出来る。
【0042】
本発明のレーザ加工方法の第1実施形態は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光工程とを備え、前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御する。
【0043】
本発明のレーザ加工方法の第1実施形態によれば、レーザ加工装置を用いて、上述した本発明のレーザ加工装置の第1実施形態によるものと同様の効果を得ることが出来る。尚、本発明のレーザ加工方法の第1実施形態についても、上述した本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の各種態様と同様の各種態様を採用してもよい。
【0044】
本発明のレーザ加工方法の第2実施形態は、ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と、前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光工程と、前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断工程とを備え、前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、前記分断工程は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させる。
【0045】
本発明のレーザ加工方法の第2実施形態によれば、レーザ加工装置を用いて、上述した本発明のレーザ加工装置の第2実施形態によるものと同様の効果を得ることが出来る。尚、本発明のレーザ加工方法の第2実施形態についても、上述した本発明のレーザ加工装置の第1実施形態の各種態様と同様の各種態様を採用してもよい。
【0046】
以上、説明したように、本発明のレーザ加工装置の第1実施形態は、レーザ光源と、集光手段と、制御手段とを備える。本発明のレーザ加工装置の第2実施形態は、レーザ光源と、集光手段と、制御手段と、分断手段とを備える。本発明のレーザ加工方法の第1実施形態は、集光工程と、制御工程とを備える。本発明のレーザ加工方法の第2実施形態は、集光工程と、制御工程と、分断工程を備える。
【0047】
このため、ガラスや水晶などの脆性材を加工対象物とする場合のレーザ加工において、意図しないクラックが生じることを好適に抑制し、加工精度の向上を実現出来る。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0049】
(1)レーザ加工装置の構成
先ず、図1を参照して、本発明のレーザ加工装置の一例である、レーザ加工装置1の基本的な構成について説明する。
【0050】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、制御部10と、レーザ電源11と、レーザ光源12と、ミラー13と、1/2波長板14と、ミラー15と、ビームエキスパンダ16と、ビームコンバイナ17と、レンズブロック18と、集光レンズ19とを備える。また、レーザ加工装置1は、ガイド用のレーザダイオード(LD)21と、ガイド用光学系22とを備える。
【0051】
制御部10は、本発明の制御手段の一例であって、レーザ加工装置1の各部の動作を制御するCPU等を含む。制御部10は、パルス状であり、所定の繰り返し周波数、平均出力、パルスピーク出力などの出射条件を満たすレーザ光L1を出射するようレーザ電源11及びレーザ光源12の動作を制御する。また、制御部10は、レーザ光L1の出射による加工対象物50の加工に伴って、レーザ光L1の集光部F1のビーム径を変更するよう、レンズブロック18の動作を制御する。また、制御部10は、レーザ光L1の出射に伴って、加工対象物50を載置するステージ40をレーザ光L1の光軸方向に直交する面内などにおいて移動させる制御を行う。
【0052】
レーザ電源11は、レーザ光源12を駆動させるための電力を供給する電源と、パルス制御装置とを備え、例えばユーザによる指示の入力を受けて、所望の態様でレーザ光源に対して電流の供給を行い、駆動させる。
【0053】
レーザ光源12は、本発明のレーザ光源の一例であって、レーザ発生部、結集素子、位相変調器及び共振器などを備え、レーザ電源11から供給される電流に応じてレーザ光L1を発生させ、ミラー13方向へ出射する。レーザ光源12は、パルス制御及び出力制御に優れる光源であることが好ましく、例えば最大出力100W程度の円偏光又は直線偏光を付加する炭酸ガスレーザ光源である。
【0054】
レーザ光源12より出射されるレーザ光L1は、ミラー13を介して1/2波長版14において位相差(或いは、偏光状態)を調整された後、ミラー15を介してビームエキスパンダ16に入射する。
【0055】
ビームエキスパンダ16は、本発明の集光手段の構成要素の一例であり、平行光の態様で入射するレーザ光L1のビーム径を拡大する機構である。具体的には、ビームエキスパンダ16は、後述する集光レンズ19による集光と併せて、レーザ光L1の加工対象物50における集光部F1のビーム径が所定の範囲内となるよう調整する。ビームエキスパンダ16によるビーム径の拡大比率などは、後述する集光レンズ19の開口度などに応じて設定される。
【0056】
ビームコンバイナ17は、レーザ光L1を透過させ、一方でガイド用のレーザ光L2を反射させることで、両者を同一の光路上に合成するハーフミラーなどである。
【0057】
ガイド用のレーザ光L2は、ガイド用のLD21により出射されるレーザ光であり、ビームコンバイナ17によってレーザ光L1と同一の光路上に組み込まれ集光レンズ19により加工対象物50上に集光される距離測定、又はサーボ駆動用のレーザ光である。レーザ光L2の光路上には、ビーム成形用のレンズ、集光レンズ又はシリンドリカルレンズなど、用途に応じたガイド用光学系22が配置される。
【0058】
レンズブロック18は、集光レンズ19を保持するレンズユニットであり、集光レンズ19をレーザ光L1の光軸方向に移動させるスライド機構などを有する。
【0059】
集光レンズ19は、主にレーザ光L1を加工対象物50の表面又は内部に集光し、典型的には、焦点位置に集光部F1を形成するレンズである。集光レンズ19の開口度は、集光部F1のビーム径に合わせて設定されることが好ましい。レンズブロック18は、例えば、制御部10からの制御信号に応じて集光レンズ19をレーザ光L1の光軸方向に移動させることで、加工対象物50の表面又は内部の所望の位置に形成される集光部F1のビーム径を調整する。
【0060】
ステージ40は、加工対象物50を載置する載置台であり、レーザ光L1の光軸方向に対して直行する面内などにおいて加工対象物50を移動可能な機構を備える。例えば、ステージ40は、制御部10から供給される制御信号に応じた速度で加工対象物50を、レーザ光L1の集光部F1に対して相対的に移動させる。
【0061】
(2)加工条件
レーザ加工装置1の制御部10は、例えばユーザからの入力などに応じて加工対象物50の材質(ひいては、脆性等の該加工対象物50の材質に依存する性質)を把握し、材質に応じた加工条件を満たすよう各部の動作の態様を設定する。
【0062】
レーザ加工装置1では、制御部10は、ガラスを加工対象物50とする場合の加工条件Aと、水晶を加工対象物50とする場合の加工条件Bとの少なくとも2通りの加工条件に応じて各部の動作の態様を設定可能となる。以下に説明するように、制御部10の制御対象となる主な各部の動作の態様は、(1)パルス状のレーザ光L1における平均出力に対するパルスピーク出力比、(2)レーザ光L1の平均出力、(3)加工時にレーザ光L1の集光部F1に対してステージ40(ひいては加工対象物50)を移動させる際の相対速度、及び(4)レーザ光L1の集光部F1におけるビーム径である。
【0063】
加工対象物50の材質がガラスである場合の加工条件Aについて説明する。制御部10は、ガラスを加工対象物50とするレーザ加工時に、以下に説明する条件A1乃至A4のいずれか、又は適宜組み合わせた加工条件を満たすように、各部の動作の態様を制御する。
【0064】
制御部10は、好適には、レーザ光L1のパルスピーク時の出力が平均出力の25倍以上となるようレーザ光源12の動作を制御する(条件A1)。
【0065】
制御部10は、更に好適には、レーザ光L1の平均出力が0.01W以上4W以下となるようレーザ光源12の動作を制御する(条件A2)。ここに、平均出力とは、パルス状のレーザ光L1の一周期辺りの出力の平均値である。図2に、パルス状のレーザ光L1の出力の時系列的な変化の例を示す。
【0066】
制御部10は、更に好適には、レーザ光L1の照射による加工対象物50の加工時に、集光部F1に対するステージ40の相対移動速度が0.01ミリメートル毎秒以上、3ミリメートル毎秒以下となるようステージ40の動作を制御する(条件A3)。
【0067】
制御部10は、更に好適には、レーザ光L1の加工対象物50の表面又は内部に形成される集光部F1のビーム径が40マイクロメートル以上、140マイクロメートル以下となるようビームエキスパンダ16及びレンズブロック18の動作を制御する(条件A4)。
【0068】
上述した各条件A1乃至A4に規定される加工条件を満たす設定で、硬質ガラス(光学ガラス)に対してレーザ光L1の照射による加工を行った場合における、本願発明者等によって行われた加工の評価について説明する。加工対象物50について、レーザ光L1の照射により照射領域外におけるクラックが生じないものを良好な加工、改質領域外においてクラックが生じるものを不良の加工として分類する。条件A1について、パルスピーク時の出力が平均出力の25倍以上となる領域では良好な加工が観察される一方で、パルスピーク時の出力が平均出力の25倍未満となる領域では良好な加工は観察されなかった。
【0069】
条件A2について、レーザ光L1の平均出力が4W以下の領域では良好な加工が観察される一方で、平均出力が4Wを超える領域では良好な加工は観察されなかった。また、レーザ光L1の平均出力が0.01Wを下回る領域では加工対象物50に改質が生じなかった。
【0070】
条件A3について、ステージ40の相対移動速度が3ミリメートル毎秒以下となる領域では良好な加工が観察される一方で、ステージ40の相対移動速度が3ミリメートル毎秒を超える領域では良好な加工は観察されなかった。また、ステージ40の相対移動速度が0.01ミリメートル毎秒以下となる領域では、加工に長時間要することから加工機として好ましくないとされる。
【0071】
条件A4について、集光部F1のビーム径が40マイクロメートル以上、140マイクロメートル以下となる範囲では良好な加工が観察される一方で、ビーム径が範囲外となる加工においては良好な加工は観察されなかった。
【0072】
加工対象物50の材質が水晶である場合の加工条件について説明する。制御部10は、水晶を加工対象物50とするレーザ加工時に、以下に説明する条件B1乃至B4のいずれか、又は適宜組み合わせた加工条件を満たすように、各部の動作の態様を制御する。
【0073】
制御部10は、好適には、レーザ光L1のパルスピーク時の出力が平均出力の6倍以上となるようレーザ光源12の動作を制御する(条件B1)。
【0074】
更に好適には、制御部10は、レーザ光L1の平均出力が0.1W以上10W以下となるようレーザ光源12の動作を制御する(条件B2)。
【0075】
更に好適には、制御部10は、レーザ光L1の照射による加工対象物50の加工時に、集光部F1に対するステージ40の相対移動速度が0.01ミリメートル毎秒以上、50ミリメートル毎秒以下となるようステージ40の動作を制御する(条件B3)。
【0076】
更に好適には、制御部10は、レーザ光L1の加工対象物50の表面又は内部に形成される集光部F1のビーム径が40マイクロメートル以上、300マイクロメートル以下となるようビームエキスパンダ16及びレンズブロック18の動作を制御する(条件B4)。
【0077】
上述した各条件B1乃至B4に規定される加工条件を満たす設定で、水晶に対してレーザ光L1の照射による加工を行った場合における、本願発明者等によって行われた加工の評価について説明する。加工対象物50について、レーザ光L1の照射により照射領域外におけるクラックが生じないものを良好な加工、改質領域外においてクラックが生じるものを不良の加工として分類する。条件B1について、パルスピーク時の出力が平均出力の6倍以上となる領域では良好な加工が観察される一方で、パルスピーク時の出力が平均出力の6倍未満となる領域では良好な加工は観察されなかった。
【0078】
条件B2について、レーザ光L1の平均出力が10W以下の領域では良好な加工が観察される一方で、平均出力が10Wを超える領域では良好な加工は観察されなかった。また、レーザ光L1の平均出力が0.1Wを下回る領域では加工対象物50に改質が生じなかった。
【0079】
条件B3について、ステージ40の相対移動速度が50ミリメートル毎秒以下となる領域では良好な加工が観察される一方で、ステージ40の相対移動速度が50ミリメートル毎秒を超える領域では良好な加工は観察されなかった。また、ステージ40の相対移動速度が0.01ミリメートル毎秒以下となる領域では、加工に長時間要することから加工機として好ましくないとされる。
【0080】
条件B4について、集光部F1のビーム径が40マイクロメートル以上、300マイクロメートル以下となる範囲では良好な加工が観察される一方で、ビーム径が範囲外となる加工においては良好な加工は観察されなかった。
【0081】
ここに、(1)レーザ光L1の平均出力に対するピーク出力比133、(2)レーザ光L1の平均出力0.56W、(3)ステージ40の相対移動速度0.1ミリメートル毎秒、及び(4)集光部F1におけるビーム径68マイクロメートル(設計値)、の条件下でレーザ光L1を硬質ガラスに照射する場合を例として、得られた結果を説明する。このとき、レーザ光L1の集光領域に沿って幅100マイクロメートルの改質領域が形成され、該改質領域内に複数のクラックが観察された。他方で、改質領域外への100マイクロメートル以上のクラックの進展は観察されなかった。形成された改質領域を起点として硬質ガラスを分断したところ、照射領域に沿って鏡面となる分断面が得られ、外形寸法公差が60マイクロメートル未満となった。
【0082】
また、改質領域は脆化しているため、分断後、分断面に残る改質したガラスについては比較的簡単に除去出来る。例えば、分断後、分断面から100マイクロメートル程の領域を研磨などによって除去することで、クラックなどの痕跡を排除することが出来る。
【0083】
尚、上述した加工条件を用いる場合、例えば、複数回のレーザ光L1の照射により照射領域同士が交差する場合であっても、形成された改質領域におけるクラックの進展などの影響が生じない。このため、加工の自由度を保証することが出来る。
【0084】
(3)変形例
レーザ加工装置1の変形例であるレーザ加工装置1’について説明する。図3は、レーザ加工装置1’の構成を示す図である。尚、図3において、図1と同一の番号を付している部分は、図1に示されるレーザ加工装置1と同様の構成であってよい。例えば、レーザ加工装置1’は、レーザ加工装置1と同様に、制御部10、レーザ電源11と、レーザ光源12と、ミラー13と、1/2波長板14と、ビームエキスパンダ16と、ビームコンバイナ17と、レンズブロック18と、集光レンズ19、ガイド用のレーザダイオード(LD)21と、ガイド用光学系22とを備える。
【0085】
更に、レーザ加工装置1’は、ミラー15に代わる構成として、偏光ビームスプリッタ31を備える。偏光ビームスプリッタ31は、1/2波長板14を通過したレーザ光L1の一部をビームエキスパンダ16方向に反射する一方で、レーザ光L1の一部を分断用のレーザ光L3として分岐させ、ミラー32方向に透過させる。ミラー32は、レーザ光L3をビームエキスパンダ33に入射させるよう反射する。
【0086】
ビームエキスパンダ33は、本発明のレーザ光の第2実施形態における分断手段の一構成例であり、平行光の態様で入射するレーザ光L3のビーム径を調整して出射する。具体的には、ビームエキスパンダ33は、集光レンズ19による集光と併せて、レーザ光L3の加工対象物50における集光部F3のビーム径が所定の範囲内となるよう調整する。ビームエキスパンダ33によるレーザ光L3のビーム径の拡大比率などは、後述する集光レンズ19の開口度などに応じて設定される。
【0087】
ビームエキスパンダ33より出射されたレーザ光L3は、光路上に配置されるビーム成形用のレンズ、集光レンズ又はシリンドリカルレンズなどの用途に応じた分断用光学系34を介して偏光ビームスプリッタ36においてレーザ光L1と同一の光路上に合成される。偏光ビームスプリッタ36は、レーザ光L3を透過させる一方で、ビームエキスパンダ16より出射し、ミラー35により光軸を調整されたレーザ光L1を反射させ、両者を同一の光路上に合成する。
【0088】
同一の光路上を進むレーザ光L1とレーザ光L3とは、集光レンズ19において加工対象物50の表面又は内部に集光され、夫々集光部F1、F3を形成する。集光部F1では、レーザ光L1のエネルギ吸収により加工対象物50の表面又は内部において気化などによる改質領域の形成が生じる。他方、集光部F3では、レーザ光L3のエネルギ吸収により加工対象物50の表面又は内部に形成される改質領域内が加熱され、熱膨張による応力が生じる。このとき脆化した改質領域内に集中する応力により、改質領域を起点とする加工対象物50の分断が生じる。
【0089】
かかる集光部F1におけるレーザ光L1の出力及びビーム径は、加工対象物50の材質に応じて制御部10により制御される。具体的には、レーザ光L1の出力及びビーム径、並びに集光部F1に対するステージ40の相対移動速度は、上述した加工条件を満たすものである。
【0090】
同様に、集光部F3におけるレーザ光L3の出力及びビーム径は、加工対象物50の材質に応じて制御部10による制御下にある。制御部10は、好適に加工対象物50の表面又は内部に応力を生じさせるために、例えば、分断用のレーザ光L3を平均出力20W以上100W以下の範囲に設定し、集光部F3におけるビーム径を0.5ミリメートル以上5ミリメートルの範囲に設定する。尚、本願発明者等によって行われた加工の実験により、上述の条件下において、硬質ガラス又は水晶である加工対象物50の分断が確認されている。
【0091】
以上、説明したようにレーザ加工装置1’は、加工用のレーザ光L1を照射することにより、加工対象物50の表面又は内部に改質領域を形成する。また、レーザ加工装置1’は、該改質領域に対してレーザ光L1より分岐した分断用のレーザ光L3を照射することにより、改質領域内に熱膨張による応力を生じさせ改質領域を起点とする分断を行う。従って、レーザ加工装置1’は、上述したレーザ加工装置1と同様の加工精度を維持しつつ、加工対象物50の表面又は内部に改質領域を形成する第1の加工と、脆化した該改質領域を起点として熱応力により加工対象物50を分断する第2の加工とを行うことが可能となる。これは、加工対象物50を加工する拠点における装置配置上、有益である。
【0092】
例えばレーザ加工装置1’は、第1の加工と第2の加工とを同時に実施してもよく、この場合、上述の利点に加えて、加工対象物50の分断のための一連の処理に要するタクトタイムの低減との更なる利点を有する。
【0093】
尚、第1の加工と第2の加工とは相異なるタイミングにおいて実施されるものであってもよい。この場合レーザ加工装置1'は、加工用のレーザ光L1及び分断用のレーザ光L3の一方を加工対象物50に照射する間、他方を照射しないよう、夫々のレーザ光の光路状にシャッタを備えていてもよい。
【0094】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うレーザ加工装置及び方法などもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
1 レーザ加工装置、
10 制御部、
11 レーザ電源
12 レーザ光源、
13、15 ミラー、
14 1/2波長板、
16 ビームエキスパンダ、
17 ビームコンバイナ、
18 レンズブロック、
19 集光レンズ、
40 ステージ、
50 加工対象物、
L1 (加工用)レーザ光、
L2 (ガイド用)レーザ光、
L3 (分断用)レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、
前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光手段と
を備え、
前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光の平均出力を0.01W以上、4W以下に制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記集光手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記加工対象物における前記レーザ光のビーム径が40マイクロメートル以上、140マイクロメートル以下となるよう前記レーザ光を集光することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記加工対象物を前記レーザ光に対して相対的に移動させる移動手段を更に備え、
前記移動手段は、ガラスを前記加工対象物とする場合、前記加工対象物を前記レーザ光に対して0.01ミリメートル毎秒以上、3ミリメートル毎秒以下の速度で相対的に移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光の平均出力を0.1W以上、10W以下に制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記集光手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記加工対象物における前記レーザ光のビーム径が40マイクロメートル以上、300マイクロメートル以下となるよう前記レーザ光を集光することを特徴とする請求項1又は6に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工対象物を前記レーザ光に対して相対的に移動させる移動手段を更に備え、
前記移動手段は、水晶を前記加工対象物とする場合、前記加工対象物を前記レーザ光に対して0.01ミリメートル毎秒以上、50ミリメートル毎秒以下の速度で相対的に移動させることを特徴とする請求項1、5及び6のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザ光源は、炭酸ガスレーザ光源であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の出射条件を制御する制御手段と、
前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光手段と、
前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断手段と
を備え、
前記制御手段は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、
前記分断手段は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
前記分断手段は、前記集光手段が前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる際に、
前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に、前記分岐されたレーザ光を集光させることを特徴とする請求項9に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、
レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と
前記レーザ光を前記加工対象物に集光する集光工程と
を備え、
前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項12】
ガラス又は水晶を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工方法であって、
レーザ光を出射するレーザ光源の出射条件を制御する制御工程と、
前記レーザ光を前記加工対象物に集光させる集光工程と、
前記レーザ光により形成される改質領域を用いて、前記加工対象物を分断する分断工程と
を備え、
前記制御工程は、(i)ガラスを前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して25倍以上、(ii)水晶を前記加工対象物とする場合、前記レーザ光のパルスピーク出力を、平均出力に対して6倍以上となるよう前記レーザ光の出射条件を制御し、
前記分断工程は、前記レーザ光を分岐させ、且つ前記分岐されたレーザ光を0.5ミリメートル以上、5ミリメートル以下のビーム径で前記加工対象物に形成される前記改質領域に応じた位置に集光させることを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30268(P2012−30268A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173826(P2010−173826)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(596041928)株式会社パイオニアFA (38)
【Fターム(参考)】