説明

レーザ加工装置

【課題】 レーザ光の光軸の安定性を確保する。
【解決手段】 本発明によるレーザ加工装置1は、レーザ光を出力する光源2と、該レーザ光の光路を調整する光路調整部4と、レーザ光を分光する第1分光器8と、所定の可動域を有し被加工物11を載置する可動台6と、可動台の位置を検出する可動台位置検出器12と、前記分光されたレーザ光の光軸の位置を検出する第1光軸位置検出器10と、前記可動台、可動台位置検出器及び第1光軸位置検出器を載置したステージ7と、前記第1光軸位置検出器からの出力を受けて前記光路調整部を制御し、前記分光したレーザ光の光軸を調整する光軸制御部5と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に関し、特にナノメートルオーダー以上の精度を有するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、レーザ加工装置は、被加工物に照射するレーザ光源と、被加工物を載置する可動台を配備した耐震性を有する精密テーブルとを備えており、レーザ光源から出力されるレーザ光の基準点を固定し、前記可動台を精密テーブル上のX−Y平面上で移動させて被加工物を加工する工程を有する。当該加工工程では、精密テーブル上の可動台の位置を検出する位置検出器の誤差及びレーザ光源から被加工物までの導光路に起因するレーザ光の光軸の誤差が考えられるが、可動台の位置検出器の精度は10nm以下の精度が実現されており、レーザ光源から出力されるレーザ光の光軸の安定精度はマイクロラジアンレベルの精度まで実現されている。
【0003】
特許文献1では、レーザ光の照射位置の測定を可能にするレーザ加工装置における集光光学系の集光位置検出装置が開示されている。当該集光位置検出装置は、複数の受光素子がマトリクス状に配置され、X−Yテーブルの所定の位置に着脱可能に配置される位置センサと、この位置センサに向けてレーザ光を照射したとき、位置センサを構成する各受光素子の出力を検出し、レーザ光の集光位置を判別する判別装置と、この判別結果に基づいて、前記X−Yテーブルの座標軸に対する集光位置のずれ量を算出する演算装置とが設けられている。
【0004】
当該装置では、X−YテーブルのX−Y方向の座標軸と位置センサのX−Y方向の座標軸が一致するように位置センサをX−Yテーブルに取り付け、X−Yテーブルを所定の位置に移動させ、位置センサにレーザ光を集光照射する。そして、位置センサを構成する各受光素子の出力を検出し、どの受光素子がレーザ光を受光しているか判別し、受光素子の位置センサの原点からの座標位置を求めることにより、レーザ光の集光位置を求めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−23577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のレーザ光の位置検出装置は、着脱可能な可動台上に配置されており、マイクロメートル単位の精度を有する加工技術であれば、レーザ光の光軸の安定性がマイクロラジアンレベルでも許容できるため、可動台の位置を適切に制御することができる。
しかし、加工精度がナノメートル単位以下である場合、レーザ加工装置の誤差は、可動台の位置検出器による誤差は許容できるが、レーザ光の光軸の揺らぎは許容されず、レーザ光の照射点の安定性に起因する誤差が問題となってくる。
本発明は、レーザ光の光軸の位置を監視するための光軸位置検出器を配備し、被加工物に照射するレーザ光の光軸のずれを補正することによって、ナノメートル単位以下の加工精度に対応できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 上述の目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工装置は、
レーザ光を出力する光源と、
該レーザ光の光路を調整する光路調整部と、
レーザ光を分光する第1分光器と、
所定の可動域を有し被加工物を載置する可動台と、
可動台の位置を検出する可動台位置検出器と、
前記分光されたレーザ光の光軸の位置を検出する第1光軸位置検出器と、
前記可動台と、可動台位置検出器と、第1光軸位置検出器とを載置したステージと、
前記第1光軸位置検出器からの出力を受けて前記光路調整部を制御し、前記分光したレーザ光の光軸を調整する光軸制御部と、
を具備する。
(2)また、本発明に係るレーザ加工装置における光軸制御部は、ファジイ制御を行うことが好ましい。
(3)さらに、本発明に係るレーザ加工装置は、前記分光したレーザ光をさらに分光する第2分光器と、第2分光器により分光された光軸の位置を検出するための第2光軸位置検出器とをさらに備え、第1光軸位置検出器と第2光軸位置検出器においてレーザ光が所定の位置で検出されるように前記光軸制御部を制御することが好ましい。
(4)さらに、本発明に係るレーザ加工装置における第1光軸位置検出器または第2光軸位置検出器の少なくとも一方は、第1分光器で分光されたレーザ光または第2分光器で分光されたレーザ光が球状の反射面に反射されて4象限センサで受光することにより各レーザ光の光軸の位置検出を行うことが好ましい。
(5)さらに、本発明に係るレーザ加工装置は、前記第1分光器と第1光軸位置検出器との間、あるいは、前記第2分光器と第2光軸位置検出器との間の少なくとも一方に、レーザ光が通過するための所定の口径を有するピンホールを配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
(1)請求項1に係る発明は、レーザ光源から出力されたレーザ光を被加工物に照射するまでの導光路において、レーザ光の光軸がマイクロラジアン程度の振れを生じ、照射点の位置に誤差が生じるので、例えば、マトリクス状に配置した受光素子からなる第1光軸位置検出器を可動台の近傍に配置し、位置検出用のレーザ光を分光し、該第1光軸位置検出器に分光したレーザ光の光軸を受光させて、受光したレーザ光の光軸の基準位置を検出することによって基準位置からのずれを算出し、算出した値に基づいて光路調整部を調整して導光路を修正することによって、ナノメートル単位以下の精度に対応するレーザ加工装置を実現することができる。
(2)請求項2に係る発明は、ファジイ制御を行うので、レーザ光の光軸にずれが生じても光軸のずれを徐々に補正し、最小の誤差でレーザ加工を行うことができる。
(3)請求項3に係る発明は、第1光軸位置検出器と第2光軸位置検出器においてレーザ光が所定の位置で検出されるように前記光軸制御部を制御するので、レーザ光の光軸の基準点が2箇所設けられ、例えば、当該2つの基準点を等間隔に維持するように光路調整部を調整して光路を補正し、補正精度を向上させることができる。
(4)請求項4に係る発明は、球状の反射面に反射されて4象限センサで受光することにより各レーザ光の光軸の位置検出を行うので、所定の光径を有するレーザ光を各受光素子に照射させ、受光強度(受光面積)が均等で維持されるように光軸を補正することができる。また、レーザ光の受光面を任意の箇所に設定でき、レーザ加工装置の設計に柔軟性を有する。
(5)請求項5に係る発明は、レーザ光が通過するための所定の口径を有するピンホールを配置するので、レーザ光を所望の光径に絞ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態について実施例を挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図において同じ要素には同じ符号を用い、適宜その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0010】
図1は、ナノ単位の精度を有する本発明によるレーザ加工装置1の全体的な構成概略図を示している。当該レーザ加工装置1は、光源2、光路調整部4、半透鏡(第1分光器)8、全反射鏡13、可動台6、可動台位置検出器12、第1光軸位置検出器(光検出器)10、ステージ7、光軸制御部5、集光レンズ9,9’から構成される。また、全ての構成要素1〜12は、防振テーブル3上に配置されている。
【0011】
レーザ光源2は、フェトム秒レーザ、あるいは、UVレーザ光を基本波として出力する。光路調整部4(詳細は図8参照)は、レーザ光源2から入力されたレーザ光を反射する複数の全反射鏡(図8では2つ:22と24)を有し、該全反射鏡にはレーザ光の反射角を変更するための複数のモータ(図8では4つ:M1〜M4)が具備されている。当該モータは、後述するように、光軸制御部5からの信号を受信し、全反射鏡の反射面の角度を調整しレーザ光を所定の光軸位置に位置決めする。半透鏡8は、光路調整部4から出力されたレーザ光の光軸上に配置されて該レーザ光を分光する。可動台6は、全反射鏡13で反射され集光レンズ9’で集光されたレーザ光が照射される被加工物11を載置して固定した状態で、所定の可動域内を移動することができる。可動台位置検出器12は、可動台6の移動誤差を10nmの精度で位置検出することができる。第1光軸位置検出器(光検出器)10は、加工用レーザ光の近傍で精確にレーザ光の光軸を調整するために可動台位置検出器12の近傍に配置され、例えば、マトリクス状に配置されたCCDにおける画素等の複数の受光素子から構成されている。ステージ7は、集光レンズ9で集光されたレーザ光の光軸が第1光軸位置検出器10の受光面に照射され、集光レンズ9’で集光されたレーザ光の光軸が被加工物11に対して照射されるように、可動台6、可動台位置検出器12、第1光軸位置検出器10を同一平面上に配置している。光軸制御部5は、調整値算出手段26とモータ制御部28とを具備し(図8参照)、後述するように、第1光軸位置検出器10が受光したレーザ光の受光強度の出力に基づいて前記光路調整部4をファジイ制御し、前記分光したレーザ光の光軸を一定の基準位置に固定させる。
【0012】
次に、本発明のレーザ加工装置1におけるレーザ光源2から出力されたレーザ光の導光路について説明する。
まず、光源2から光路調整部4に向けてレーザ光が出力される。次いで、光路調整部4では、被加工物11に照射するためにレーザ光の光路を所定位置で固定するように調整される。さらに、光路調整部4を通過したレーザ光は、半透鏡8において、そこを通過するレーザ光と、半透鏡8から分岐したレーザ光とに分光される。半透鏡8を通過したレーザ光は、全反射鏡13において反射されて集光レンズ9’を介して被加工物11を照射し所望の加工を施す。また、半透鏡8から分光されたレーザ光は、集光レンズ9を介して第1光軸位置検出器10を照射する。
以上のように、本発明によるレーザ加工装置における導光路が形成される。
【0013】
次いで、図1におけるレーザ光源2から第1光軸位置検出器10までの光路を調整する機構について、図8を参照して詳述する。
光路調整部4は、2つの全反射鏡22、24を具備し、各全反射鏡22、24は、レーザ光源2から出力されるレーザ光を反射させる反射面の角度を調整するためのモータM1、M2及びM3、M4をそれぞれ備えている。また、分光器44は、入射されるレーザ光を分光する半透鏡8と、集光レンズ9とを具備している。
【0014】
レーザ光源2から出力されたレーザ光は、前述したように、光路調整部4に入射されて全反射鏡22、24によって所定の光軸位置に位置決めされて出力される。出力されたレーザ光は、分光器44における半透鏡8に入射される。半透鏡8は、図示されていない被加工物に入射されるレーザ光から第1光軸位置検出器10に入射されるレーザ光を分光する。分光されたレーザ光は、集光レンズ9に入射され第1位置検出器10の所定の受光素子(図2ないし図4参照)に集光されて照射される。第1光軸位置検出器10の受光素子は、受光したレーザ光をその強度に比例した電気信号に変換し出力する。該出力された電気信号はその強度が一般には弱いので、増幅器34によって増幅されてから光軸制御部5内の調整値算出手段26に入力される。調整値算出手段26は、増幅器によって増幅された電気信号に基づいてファジイ推論を利用して前記モータM1〜M4の回転量をそれぞれについて算出する。ファジイ推論を利用してモータM1〜M4の回転量(調整量)を算出する仕組みについては後述する。調整値算出手段26で算出されたモータM1〜M4の回転量は、モータM1〜M4を制御するモータ制御部28に送信される。次いで、モータ制御部28から各モータM1〜M4に各回転量を示す信号が送信されモータM1〜M4が駆動される。それにより、全反射鏡22及び24それぞれの反射面の向きが調整されて、レーザ光の光路や光軸が調整される。
【0015】
次に、図2ないし図4を参照し第1光軸位置検出器10における受光素子について説明する。
図2及び図3では、各画素21は、マトリクス状に配置されて、画素間隔Aは約2μmである。図2では、レーザ光の照射点が1画素のみを基準画素として完全に照射している実施例(符号20)を示しており、当該基準画素によってレーザ光の受光強度を測定している。そして、レーザ光の光軸に揺れが生じ、画素に照射されない部分が発生した場合は、受光素子が受光強度の減少を感知し基準画素を完全に照射し、受光強度が極大の大きさとなるように光軸制御部5によって光路調整部4の調整が行われる。また、図3では、レーザ光の照射点が4象限センサを形成する4つの画素の一部を均等に照射している実施例(符号30)を示しており、各画素21における照射面積S1ないしS4を均等に照射すべきレーザ光の基準照射点を設定している。そして、レーザ光の光軸に揺れが生じ、各画素21の照射面積S1〜S4に不均衡が発生した場合は、光軸制御部5が各画素21における受光強度を均等にするように光路調整部4を調整する。
【0016】
図4では、第1光軸位置検出器10における受光素子の配置に関する変形実施例を開示している。当該実施例では、集光レンズ9と第1光軸位置検出器10との間にレーザ光を反射させるための反射球41を配置し、半透鏡8から分光されたレーザ光を、反射球41の反射面によって当該レーザ光の光軸に対して、好ましくは、垂直方向に反射させ、例えば、当該光軸と平行な面40に配置された4象限センサを形成する4つの画素に図3と同様の照射基準点を設定している。そして、レーザ光の光軸に揺れが生じ、各画素の照射面積に不均衡が発生した場合は、光軸制御部5が各画素における受光強度を均等にするように光路調整部4を調整する。
【0017】
次に、図5を参照し、第1光軸位置検出器と第2光軸位置検出器とを用いてレーザ光の光軸の位置を検出する変形実施例について説明する。当該実施例では、半透鏡8で分光されたレーザ光の導光路上であって、半透鏡8と第1光軸位置検出器10との間に、第2半透鏡(第2分光器)16を配置している。第2半透鏡16は、レーザ光をさらに分光しており、該分光されたレーザ光は、全反射鏡18で反射されて第2光軸位置検出器15に照射される。第2半透鏡16及び第2全反射鏡18は、共にミラー支持台50で支持されている。第2光軸位置検出器15は、第1光軸位置検出器10と同じタイプでも異なるタイプでもどちらでもよい。上述したように、いずれの光軸位置検出器でも受光素子においてレーザ光を照射する基準点を設定し、2つの基準点の距離が等しくなるように光軸制御部5を演算させることにより光路調整部4を制御する。
【0018】
次に、図6を参照し、図4の変形実施例について説明する。図6では、反射球41と、4象限センサを形成する4つの画素を配置した面40との間にピンホール42を配置している点で図4の実施形態と異なる。ピンホール42は、レーザ光の光径を所望の径に縮小することができ、前記4象限センサを形成する4つの画素の相互間隔を縮小することによって径の縮小に対応して各画素における照射面積を確保することができる。
【0019】
図7は、図1における集光レンズ9と第1光軸位置検出器10との間に支持台71で支持されたピンホール72を配置した状態を示す拡大図を示している。本実施形態においてもレーザ光の光径を縮小し、第1光軸位置検出器に照射することができる。
【0020】
図9は、光路調整部4においてレーザ光の光軸を調整することで、第1光軸位置検出器10の受光強度が極大値に安定するように制御を行なった結果、その受光強度が時間的に変化する様子を定性的に描いたグラフである。横軸は時間、縦軸は受光強度をそれぞれ任意スケールで目盛ってある。
【0021】
上述で説明したように、図8におけるレーザ光源2から第1光軸位置検出器10までの光路又は光軸を調整する過程を実行した結果、第1光軸位置検出装置10への入射開始時刻からt’後に入射光の強度が極大値に達し、その後入射光の強度変化として許容されるものとして設定した許容範囲(図9中では矢印で挟んでPと表示した範囲)内で変動しているのであれば、レーザ加工装置における第1光軸位置検出装置における出力強度の安定化が図られたことになる。よって、当該レーザ加工装置の作動中における当該光軸調整工程を継続することによって、レーザ光の光軸の安定化を図ることができる。
【0022】
次に、図10に示すフローチャートを参照して第1光軸位置検出器におけるレーザ光の受光から光路調整部4の光軸調整までの過程をさらに詳述する。
【0023】
ステップS−10:このステップは、制御開始ステップである。当該レーザ加工装置の操作者あるいはパーソナルコンピュータ等からの指示によって、第1光軸位置検出装置における受光強度を極大値に安定化するための制御を開始する。
【0024】
ステップS−12:このステップは、第1光軸位置検出器10からの出力を調整値算出手段26が取得するステップである。ただし、増幅器34を設けた場合には増幅器34からの出力を調整値算出手段26が取得するステップである。以後簡単のために、「第1光軸位置検出装置10からの出力」と表記して、増幅器24を設けた場合には増幅器24からの出力を意味するものとする。このステップにおいて、レーザ光の光路の制御開始直後に第1光軸位置検出装置10で取得した受光強度が測定される。
【0025】
ステップS−14:このステップは、モータM1〜M4を順次駆動するステップである。モータM1〜M4のうち任意のモータを選定して開始する。最初に選択されたモータ(ここではM1とする。)は、図8における全反射鏡22について反射面の向きを変化させ、受光強度が極大になる位置にモータ皿の回転を固定する。次に選択されたモータ(ここではM2とする。)は、同様に全反射鏡22について反射面の向きを変化させ、受光強度が極大になる位置にモータ皿の回転を固定する。同様に、モータM3及びM4は、第2全反射鏡24について反射面の向きを変化させ、受光強度が極大となる位置にモータ皿を固定して第2全反射鏡24について反射面の向きを固定する。
【0026】
全反射鏡22及び24の反射面の向きを決定するためのモータM1〜M4の回転量は、後述するファジイ推論に基づいて決定する。ここで用いるファジイ推論のアルゴリズムは、上述の全反射鏡22及び24の反射面の向きを制御してモータM1〜M4の回転量をパラメータとして説明する。
【0027】
ステップS−16:このステップは、モータM1〜M4の回転方向の確定のために回転駆動を行う試行駆動ステップである。
ステップS−18:このステップは、第1光軸位置検出器10に照射されたレーザ光の受光強度に比例する信号を取得するステップである。
【0028】
上述のステップS−16及びS−18において、特定の方向にモータを回転させることにより、第1光軸位置検出器10で受光される受光強度が増加することが判明すれば、そのモータの回転は受光強度が極大になる方向であることを示している。逆に第1光軸位置検出器10に受光される受光強度が減少することが判明すれば、このモータの回転は受光強度が極大になる方向と逆方向であることを示している。
【0029】
ステップS−20:このステップは、第1光軸位置検出器10の出力信号の時間微分値、目標値(極大値)からのずれ量を計算するステップである。このステップでは、ファジイ推論において、入力値として利用する出力信号の時間微分(差分)値を計算し、目標値(極大値)からのずれ量を計算する。第1光軸位置検出器10からの時刻tにおける出力信号の値をsとし、時刻tにおける出力信号の大きさをsとすれば、t<tであると仮定し、出力信号の時間差分値S’は、S’=(S−S)/(t−t)で与えられる。また目標値(極大値)をsとした場合にΔS=(s/s)−1で与えられる目標値からのずれ量(目標値からのずれの割合) ΔSを計算する。S’及びΔSを用いてファジイ推論が行なわれる。
【0030】
ステップS−22:このステップは、ファジイ推論によるモータの駆動量(回転量)を計算するステップである。詳細は後述するが、このステップでは、上述のS’及びΔSの値を用いて、ファジイ推論を行い、モータの駆動量(回転量)の絶対値Mが計算される。
【0031】
ステップS−24:このステップは、モータの駆動方向(回転方向)を求めるステップである。上述のステップS−20で求めたS’の値が負であれば、モータの駆動方向(回転方向)を反転させる必要がある。一方、S’の値が正であれば、モータの回転方向はそのままでよいことになる。このステップでは、上述したモータの回転方向を次の手順で求める。すなわち、モータの回転方向を決めるパラメータをαとする。αは値1または値−1を取るものとする。また、パラメータδを次のように定める。上述のステップS−20で求めたS’の値が負であれば、δ=−1とし、S’の値が正であれば、δ=1とする。そして、このモータの次の回転方向はα×δで与えられるものとする。すなわち、このα×δ値を次の新たなパラメータαの値と設定することで、モータの次の回転方向を確定する。モータの回転方向も含めて回転量を表示するとα×Mと表されることとなる。
【0032】
ステップS−26:このステップは、モータを駆動するステップであり、上述のα×Mだけモータを回転させる。
【0033】
ステップS−28:このステップは、上述のステップS−18と同様に、第1光軸位置検出器10に照射された受光強度に比例する信号を取得するステップである。
【0034】
ステップS−30:このステップでは、上述のステップS−28で取得された受光強度に比例する信号の値に基づいて、これまでのステップで制御及び調整したモータの調整作業を終了し、次のモータを制御するステップに進むか否かの判定を行なう。上述のステップS−28で取得された受光強度に比例する信号の値が、目標値(極大値)とみなせる大きさの範囲(図9において矢印で挟んでPと表記した値の範囲)内に収まれば、次のモータの制御を行なうために、制御の対象となるモータを切り替える。そして、次のステップであるステップS−32に進む。一方、ステップS−28で取得された受光強度に比例する信号の値が、目標値に達していないと判定されれば、ステップS−20に戻る。
【0035】
ステップS−32:このステップは、光路調整部4における調整作業を終了するか否かの判定を行なうステップである。モータM1〜M4に対する調整作業が全て終了していることが確かめられれば、次のステップS−34に進み、調整作業を終了させる。一方、終了させずにこのまま制御を続けるのであれば、上述のステップS−14に戻る。上述のモータM1〜M4に対する調整作業が全て終了していることが確かめられたとしても、経時変化に対応するために、このレーザ加工装置を駆動している間は、光路調整部4における調整作業を終了させないという判断もあり得る。
【0036】
ステップS−34:このステップは、光路調整部4における調整作業を終了させるステップである。
【0037】
<ファジイ推論>
図11(A1)〜(A4)及び(B1)〜(B4)と図12(A1)〜(A3)及び(B1)〜(B3)とを参照して、このレーザ加工装置におけるレーザ光の光軸調整のために実行されるファジイ推論で用いるメンバーシップ関数について説明する。以後、図11(A1)〜(A4)及び(B1)〜(B4)の全ての図を指す場合には単に図11と表記する。また、同じく図12(A1)〜(A3)及び(B1)〜(B3)の全ての図を指す場合にも単に図12と表記するものとする。
【0038】
図11は、第1光軸位置検出器10が検出する出力信号の時間微分(差分)値S’に対するメンバーシップ関数を示した図である。図12は、第1光軸位置検出器10の出力信号値の目標出力値が極大出力値に近い場合の出力信号の値ΔSに対するメンバーシップ関数を示した図である。図11に示した(A1)〜(A4)はファジイ推論の前件部を、(B1)〜(B4)は、前件部(A1)〜(A4)のそれぞれに対応する後件部を示す。また、図12においても同様に、(A1)〜(A3)はファジイ推論の前件部を、(B1)〜(B3)は、前件部(A1)〜(A3)のそれぞれに対応する後件部を示している。
【0039】
光路調整部4において光路調整が行なわれても、レーザ光の光軸は不安定でマイクロラジアン程度の振れが生じ、そのために第1光軸位置検出器における受光強度が時間的に変動する。上述したように、この受光強度の時間変化の様子は第1光軸位置検出器10によって観測される。第1光軸位置検出器10によって観測される受光強度の時間変化の様子は、上述した出力信号の時間差分値S’、すなわち、S’=(s−s)/(t−t)で表現される。
【0040】
そこでファジイ推論の基礎とするメンバーシップ関数を以下のルール(以後「ファジイルール」ということもある。)に従うように定義する。
【0041】
ルール11:S’が正の値をとり、その値が大きいならば、モータの回転量の絶対値は大きい。
【0042】
ルール12:S’が正の値をとり、その値が小さいならば、モータの回転量の絶対値は小さい。
【0043】
ルール13:S’が0の値をとるならば、モータの回転量の絶対値は0である。
【0044】
ルール14:S’が負の値をとるならば、モータの回転量の絶対値は小さい。
【0045】
図11を参照して上述のルールを視覚的に説明する。図11に示した(A1)〜(A4)は、上述のファジイルールの、それぞれルール11〜14の前件部を表している。図11(A1)〜(A4)において、横軸はS’を示し、縦軸は合致する度合い(0から1の値の範囲をとる。)を示している。一方、図11に示した(B1)〜(B4)は、上述のファジイルールの、それぞれルール11〜14の後件部を表している。横軸はモータの駆動量(回転量)の絶対値Mを表し、縦軸は合致する度合いを表している。
【0046】
次に、第1光軸位置検出器10の出力信号値の目標出力値が、最大出力値に近い場合について、目標値(極大値)をsとした場合の、ΔS=(s/s)−1で与えられるΔSに対するメンバーシップ関数について説明する。ここで、sは、時刻tにおける出力信号の値である。ΔSに対するメンバーシップ関数を利用する理由は、次の2点にある。
【0047】
まず第1の点について説明する。レーザ光源から出力されるレーザ光はガウシアンビームである。ガウシアンビームの性質上、ビームの中心近傍の強度の動径方向に対する微分値は小さい。そして、ビームの中心から十分に離れた場所での、強度の動径方向の微分値も小さい。すなわち、半透鏡8(分光器44)へのレーザ光の入射角度のアライメントがほぼ正確になされている場合と、アライメントが大きくずれている場合とでは、どちらの場合も、光路調整部4において行なわれるレーザ光の光路調整の効果は、同程度の大きさとなりその効果は小さいものとなる。言い換えると、光路調整部4においてレーザ光の光路を調整するために変化させる全反射鏡22及び24の反射面の向きの各単位変化量当たりの、第1光軸位置検出器10で検出される受光強度の変化の割合は同程度に小さい。
【0048】
つまり、アライメントが大きくずれている場合は、モータの回転角度の絶対値が大きくなるように設定すべきであるが、上述のルール11〜14のみを用いてファジイ推論を行なうと、モータの回転角度が小さく計算されてしまう。そこで、ΔSに対するメンバーシップ関数に対して新たなルールを設定することによって、モータの回転角度の大きさを適正化することができる。ただし、この新たなルールを設定しなくとも、目的とする光学系の調整は行なえる。ただ、計算されるモータの回転角度の値が小さいために、より最適状態に光学系が調整されるまでの時間が長く(制御のステップが多く)かかることになる。
【0049】
次に第2の点について説明する。光路調整機能は、上述の新たなルールの設定によって、雑音に対する耐久性が向上し、第1光軸位置検出器10において検出された受光強度に何らかの雑音が混入したとしても問題ない。しかし、仮にルール11〜14だけで、これ以外に新たなルールを設けなかった場合は、第1光軸位置検出器10が検出した受光強度の値に雑音が混入すると、S’の値が特異的に大きな値となり、モータの回転角度の値が不適切に大きな値として算出されてしまう場合があり、適切な制御ができなくなるという可能性がある。
【0050】
そこで、以下に示す新たなルールを設定しておけば、受光強度の値に雑音が混入するという事態が発生しても、上述の可能性を排除することができる。
【0051】
そこで、ファジイ推論の基礎とするΔSに関するメンバーシップ関数に対して、以下のファジイルール(新たなルール)に従うように定義する。
【0052】
ルール21:第1光軸位置検出器10が検出した受光強度の信号が目標値(極大値)sよりも非常に小さい(ΔSの値が負の値でありその絶対値が大きい。)ならば、モータの回転角度は大きい。
【0053】
ルール22:第1光軸位置光検出器10が検出した受光強度の信号が目標値(極大値)sに対してほぼ同程度(ΔSの値が負の値でありその絶対値が小さい。)ならば、モータの回転角度は小さい。
【0054】
ルール23:第1光軸位置検出器10が検出した受光強度の信号が、目標値(極大値)sに達したかあるいは上回った(ΔSの値が0より大きい。)ならば、モータの回転角度は0である。
【0055】
図12を参照して上述の新たなルールを視覚的に説明する。図12に示した(A1)〜(A3)は、上述のファジイルールの、それぞれルール21〜23の前件部を表している。(A1)〜(A3)において、横軸はΔSを示し、縦軸は合致する度合い(0から1の値の範囲をとる。)を示している。一方、図12に示した(B1)〜(B3)は、上述のファジイルールの、それぞれルール21〜23の後件部を表している。横軸はモータの駆動量(回転量)の絶対値Mを表し、縦軸は合致する度合いを表している。
【0056】
ファジイ推論によってモータの駆動量(回転量)を計算する手法として、ここではmin−max合成重心法を利用する。第1光軸位置検出器によって受光強度が検出されれば、その値に基づいてS’及びΔSが求められる。今、仮にS’及びΔSの値として、S’及びΔSと求められたものとして説明する。
【0057】
図13は、ルール11〜14に基づく統合化の工程の説明に供する図である。この図13において、ルール11〜14に対応するメンバーシップ関数は、図12に示すメンバーシップ関数と同一のものを再録してある。
【0058】
S’=S’であるから、図13に示すルール11〜14に対応するメンバーシップ関数の前件部を示す図において、S’を表す横軸のS’に当る位置を縦の点線によって表示してある。この図からわかるように、上述のルール13及びルール14において、前件部の適合度が0であるから、後件部も0である。上述のルール11及びルール12においては、前件部の適合度が0ではないので、その適合度に対応させて後件部のメンバーシップ関数の頭切りを行なう。その結果、ルール11〜14のファジイ推論が行なわれて、これらの結果として図13に統合化1として表されている後件部の論理和が求められる(統合化1)。なお、統合化1として表されている後件部の論理和を示す関数は、ルール11及びルール12の後件部の頭切りを行なったメンバーシップ関数を合成することによって求められる。
【0059】
図14は、ルール21〜23に基づく統合化の工程の説明に供する図である。この図において、ルール21〜23に対応するメンバーシップ関数は、図13に示すメンバーシップ関数と同一のものを再録してある。
【0060】
ΔS=ΔSであるから、図14に示すルール21〜23に対応するメンバーシップ関数の前件部を示す図において、ΔSを表す横軸のΔSに当る位置を縦の点線によって表示してある。この図からわかるように、上述のルール21の適合度が0であるから、後件部も0である。上述のルール22及びルール23においては、前件部の適合度が0ではないので、その適合度に対応させて後件部のメンバーシップ関数の頭切りを行なう。その結果、ルール21〜23のファジイ推論が行なわれて、これらの結果として図14に統合化2として表されている後件部の論理和が求められる(統合化2)。なお、統合化2として表されている後件部の論理和を示す関数は、上述の統合化1の場合と同様に、ルール21及びルール23の後件部の頭切りを行なったメンバーシップ関数を合成することによって求められる。
【0061】
次に、ルール11〜14(以後「第1ルール系列」ということもある。)に対してルール21〜23(以後「第2ルール系列」ということもある。)をどれだけ重視するのか、あるいは第1及び第2系列を均等に重視するのか等の重み付けを加味した処理を行なう。上述の統合化1及び統合化2として得られた結果(図13及び図14にそれぞれ統合化1及び統合化2として表した、後件部の論理和として求められた合成メンバーシップ関数)を、それぞれr倍及び(1−r)倍することによって、それぞれの関数に対して重み付けを行い、図15(A)〜(D)に示すように、両者を統合化する。
【0062】
ここで、rは0から1の値の範囲の実数値をとる。例えば、r=1を選択するということは、第1ルール系列のみを取り入れ、第2ルール系列は無視することに対応する。また、r=0.5を選択するということは、第1ルール系列と第2ルール系列とを同等に扱うことを意味する。また、r=0を選択するということは、第2ルール系列のみを取り入れ、第1ルール系列は無視することに対応する。
【0063】
図15(A)〜(D)は、上述の図13及び図14にそれぞれ統合化1及び統合化2として表した、後件部の論理和として求められた合成メンバーシップ関数を、統合して統合化1及び統合化2のメンバーシップ関数の論理和として、統合化3を求める工程の説明に供する図である。図15(A)は、統合化1として求められた合成されたメンバーシップ関数の概略の形状であり、図15(B)は、統合化2として求められた合成されたメンバーシップ関数の概略の形状である。図15(C)は、統合化1として求められた合成されたメンバーシップ関数をr倍し、統合化2として求められた合成されたメンバーシップ関数を(1−r)倍して合成した統合化3としてのメンバーシップ関数の概略の形状である。図15(D)は、図15(C)で与えられたメンバーシップ関数の合成重心の値を求めその合成重心の値をモータの駆動量(回転角度)として採用する手順を説明する図である。図15(D)において、横軸上にMと矢印で表示してある横軸の値は、図15(C)によって示されているメンバーシップ関数から求められた合成重心の位置であり、この位置がモータの回転角度を示していることになる。
【0064】
すなわち、上述したファジイ推論を行なうことによって、レーザ光の光路を調整するため、光路調整部4における全反射鏡の反射面等の角度を変化させるために駆動するモータの回転角度を求めることができることがわかる。
【0065】
上述の説明では第1ルール系列であるルール11〜14のそれぞれのルールあるいは、第2ルール系列であるルール21〜23のそれぞれのルールについては均等に扱ったが、これらのルール間においても重視する度合いに軽重をつけることも可能である。この場合には、第1ルール系列であるルール11〜14のそれぞれのルールあるいは、第2ルール系列であるルール21〜23のそれぞれのルールに対応するメンバーシップ関数に、上述のrに相当するパラメータを掛算して、統合化を行なえばよい。
【0066】
また、上述のファジイ推論においては、モータの回転角度の値をmin−max合成重心法を用いて求めたが、この方法に限定されず、代数積−加算重心法等ファジイ推論の方法として知られた他の方法を採用することも可能である。いずれの方法を採用するかは、ファジイ推論制御の対象となるレーザ加工装置ごとに、経験等に基づき最も適した方法を採用すればよい。
【0067】
次に、表1及び表2に、それぞれ上述のファジイ推論に用いた第1ルール系列及び第2ルール系列に対するパラメータを一覧にまとめる。表1及び表2に示されたパラメータから明らかなように、特段に複雑なファジイルールを定めてはいない。それにもかかわらず、上述のファジイ推論に基づく制御を実行すれば、レーザ加工装置の光学系のアライメントが、簡単に実現できることが確かめられた。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
この表1及び表2の示す内容は、それぞれ図11及び図12に示したメンバーシップ関数が表しているものと数学的に同値の内容である。ここで、この表1及び表2に示したパラメータの示す意味は次のとおりである。LP:大きな正の値、SP:小さな正の値、ZE:0、NE:負の値、NS:負の小さな値、NL:絶対値が大きな負の値である。
【0071】
以上説明したことから、本発明によるレーザ加工装置の光学系の調整工程において、いわゆる原点復帰動作を必要としないことが分かる。これは、上述のファジイ推論の根拠として用いられる値が、第1光軸位置検出器の出力信号の時間差分値S’=(S−S)/(t−t)及び目標値(極大値)Sに対してΔS=(s/s)−1で与えられるΔSのみであるからである。すなわち、S’及びΔSの値を得るためには、何れに対してもいわゆる原点復帰動作を必要とせずに求められる値であるからである。この結果、繰り返し述べるが、何らかの原因(例えばバックラッシュ等)で、光路調整部4が光軸制御部5からの制御信号どおりに正しく調整されなくとも、再度光路調整部4に制御信号が送られることで、いずれは最適条件を満たすアライメントを完了できる。
【0072】
また、本発明によるレーザ加工装置の光学系の調整工程において、上述のように、第1光軸位置検出器10によって測定される受光強度という一つの情報に対して、調整値算出手段26は光路調整部4において実行する複数の調整箇所でそれぞれ対応する光路調整値を算出することで、安定した光軸位置の固定を実現することができる。
【0073】
なお、ファジイ推論を利用しないで光路制御を実現するとすれば、アライメント作業の中にエラー発生処理(ルーチン)や暴走防止処理(ルーチン)を設けることが必要となる。これらエラー発生処理や暴走防止処理を実行させるためのプログラム量は、上述のファジイ推論処理のための処理と同等かそれ以上を必要とする。そして、装置の機構設計上も、リミッタースイッチなどの暴走防止のための手段を用意する必要がある。暴走防止のための手段は、特にレーザ装置を構成する上では重要で、仮に暴走が発生すると、被加工物の損傷等の重大な結果を招く。
【0074】
上述の実施例において開示したファジイ推論プログラムは、非常に単純なアルゴリズムに従って作られている。単純なアルゴリズムを基にしているために、プログラムの性格上から、レーザ加工装置の暴走が発生しにくい構造となっている。すなわち、ファジイ推論を利用することで、プログラムを単純化することができ、ファジイ推論を使うからこそ、単純なアルゴリズムで複雑な作業を行なえることとなった。
【0075】
さらに、S’とΔSとに対する二種類の判断を実行させる処理を行なうことが、上記暴走状態の発生を抑圧することに貢献している。S’あるいはΔSのいずれか一方だけの判断でアライメント作業を制御しようとすれば、制御信号に混入する雑音等を原因として、暴走状態が発現する危険が大きくなる。S’及びΔSの二種類の判断を行なっている場合には、暴走状態を発現させる要因が、S’とΔSとの両方に発生しなければ装置の暴走状態が発現しない。よって、S’とΔSとに対する二種類の判断を実行させる処理を行なうことで、暴走状態が発現する確率を格段に小さくできることになる。
【0076】
以上説明したように、この発明のレーザ加工装置は、制御システム全体としてみた場合においても、暴走状態が起こりにくい構造となっていることが分かる。
【0077】
以上のように、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光源から出力されるレーザ光の光軸の揺れに起因する光軸の角度誤差をファジイ制御によって調整し、安定したレーザ光の光軸の位置を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ナノ単位の精度を有する本発明によるレーザ加工装置1の全体的な構成概略図
【図2】第1光軸位置検出器においてマトリクス状に配列された受光画素のうちレーザ光の照射点が1画素のみを基準画素として完全に照射している実施例
【図3】第1光軸位置検出器においてマトリクス状に配列された受光画素のうちレーザ光の照射点が4象限センサを形成する4つの画素の一部を均等に照射している実施例
【図4】第1光軸位置検出器10における受光素子の配置に関する変形実施例
【図5】第1光軸位置検出器と第2光軸位置検出器とを用いてレーザ光の光軸の位置を検出する変形実施例
【図6】図4の変形実施例
【図7】図1における集光レンズ9と第1光軸位置検出器10との間に支持台71で支持されたピンホール72を配置した状態を示す拡大図
【図8】本発明によるレーザ加工装置の光路調整機能の説明に供する概略的ブロック構成
【図9】受光強度変化の説明に供する図
【図10】ファジイ推論に基づく光路調整ステップを示すフローチャート
【図11】S’に対するメンバーシップ関数を表す図
【図12】ΔSに対するメンバーシップ関数を表す図
【図13】ルール11〜14に基づく統合化の工程の説明に供する図
【図14】ルール21〜23に基づく統合化の工程の説明に供する図
【図15】統合化1及び統合化2のメンバーシップ関数の論理和として、統合化3を求める工程の説明に供する図
【符号の説明】
【0079】
1 本発明によるレーザ加工装置
2 レーザ光源
3 防振テーブル
4 光路調整部
5 光軸制御部
6 可動台
7 ステージ
8 半透鏡
9 集光レンズ
9’ 集光レンズ
10 第1光軸位置検出器
11 被加工物
12 可動台位置検出器
13 全反射鏡
15 第2光軸位置検出器
16 第2半透鏡
18 第2全反射鏡
20 レーザ光の照射点
21 CCD画素
22 全反射鏡
24 全反射鏡
26 算出手段
28 モータ制御部
30 レーザ光の照射点
A 画素間距離
S1〜S4 画素におけるレーザ光の照射面積
40 4つの画素(4象限)の配列面
41 レーザ光の反射球
42 ピンホール
50 ミラー支持台
71 ピンホール支持台
72 ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する光源と、
該レーザ光の光路を調整する光路調整部と、
レーザ光を分光する第1分光器と、
所定の可動域を有し被加工物を載置する可動台と、
可動台の位置を検出する可動台位置検出器と、
前記分光されたレーザ光の光軸の位置を検出する第1光軸位置検出器と、
前記可動台と、可動台位置検出器と、第1光軸位置検出器とを載置したステージと、
前記第1光軸位置検出器からの出力を受けて前記光路調整部を制御し、前記分光したレーザ光の光軸を調整する光軸制御部と、
を具備したレーザ加工装置。
【請求項2】
前記光軸制御部は、ファジイ制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記分光したレーザ光をさらに分光する第2分光器と、第2分光器により分光された光軸の位置を検出するための第2光軸位置検出器とをさらに備え、第1光軸位置検出器と第2光軸位置検出器においてレーザ光が所定の位置で検出されるように前記光軸制御部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
第1光軸位置検出器または第2光軸位置検出器の少なくとも一方は、第1分光器で分光されたレーザ光または第2分光器で分光されたレーザ光が球状の反射面に反射されて4象限センサで受光することにより各レーザ光の光軸の位置検出を行うことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1分光器と第1光軸位置検出器との間、あるいは、前記第2分光器と第2光軸位置検出器との間の少なくとも一方に、レーザ光が通過するための所定の口径を有するピンホールを配置することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−289443(P2006−289443A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114024(P2005−114024)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(504049730)株式会社光フィジクス研究所 (20)
【出願人】(500269934)サイバーレーザー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】