説明

レーザ加工装置

【課題】被加工基板の薄膜のうちパターニングされていない箇所を、迅速かつ確実に、決定すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、基板61と、該基板61に配置された薄膜62とを有する太陽電池に用いられる被加工基板60を加工する。レーザ加工装置は、被加工基板60を保持する保持部65と、被加工基板60の薄膜62にレーザ光Lを照射して、薄膜62を加工するレーザ発振器1と、保持部65に保持された被加工基板60の薄膜62に対するレーザ光Lの照射位置を相対的に移動させる移動機構5と、を備えている。被加工基板60を透過した光L’, P’または被加工基板60で反射された光L”,P”は光センサ10によって検知され、当該光センサ10からの信号に基づいて、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われているか判断部51によって判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置としては、従来から、被加工基板を保持する保持部と、保持部に保持された被加工基板に、反射ミラーで反射されたレーザ光を照射するレーザ発振器と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザ発振器では、被加工基板の一端から他端までを加工することができる(特許文献1の図3参照)。
【0003】
また、レーザ光によって被加工基板の薄膜が適切にパターニングされたかを確認するために、パターニングされた箇所をまたいで電気抵抗を測定し、電気抵抗値が所定値以上となっているかを確認する方法(例えば、特許文献2参照)や、直接、薄膜を顕微鏡で観察したり、薄膜の画像を取得したうえで当該画像の画像処理を行ったりする方法が知られている。
【特許文献1】特開2007−048835号公報
【特許文献2】特開2005−235920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被加工基板の薄膜が適切にパターニングされたかを確認するために、電気抵抗を測定する方法では、薄膜のうちいずれの部分がパターニングされていないかを特定することができない。このため、被加工基板の薄膜を再加工する場合には、薄膜を一端から他端まで全体に渡って再加工する必要がある。また、パターニングの溝の幅の加工不良や、わずかにショートしている場合には、発見することができない。
【0005】
さらに、従来技術の方法では、被加工基板を加工した後で、一度、レーザ加工装置から取り除いた後、検査し、再度、レーザ加工装置に戻すこととなるので、余計な時間がかかってしまっている。
【0006】
また、このような従来技術の方法では、レーザ加工装置から取り除いた被加工基板を、再度、レーザ加工装置に設置する必要があるので、一端から他端までレーザ光を照射する際に、既に加工済みのパターニングのライン(溝)上をトレースすることは極めて困難であり、わずかでも加工済みのラインからずれた場合には、ラインの幅が必要以上に太くなったり、場所によってラインの幅が変わってしまったりする。なお、再加工時に発生する熱によって、被加工基板に悪影響がでることもある。これらのことから、再加工することによって、被加工基板が不良品となってしまう可能性もある。
【0007】
また、顕微鏡で薄膜を直接観察したり、薄膜の画像を取得して当該画像の画像処理を行ったりする方法では、パターニングされていない箇所を特定するのに時間がかかってしまい効率が悪く、また、パターニングされていない箇所を見落とす可能性もある。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被加工基板の薄膜のうちパターニングされていない箇所を、迅速かつ確実に、決定することができ、再加工する場合でも精度良くかつ迅速に被加工基板を加工することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるレーザ加工装置は、
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工基板を保持する保持部と、
前記被加工基板の前記薄膜にレーザ光を照射して、該薄膜を加工するレーザ発振器と、
前記保持部に保持された前記被加工基板の前記薄膜に対するレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記被加工基板を透過した光または前記被加工基板で反射された光を検知する光センサと、
前記光センサからの信号に基づいて、前記被加工基板の前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われているかを判断する判断部と、
を備えている。
【0010】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記判断部によって前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断された場合に、その旨を通知する通知部をさらに備えたことが好ましい。
【0011】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記通知部は、前記判断部が所定数以上の箇所で正常でないと判断した場合には、被加工基板を排除する旨を通知することが好ましい。
【0012】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記通知部は、前記判断部がレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断した理由も通知することが好ましい。
【0013】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記判断部は、該判断部がレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断した理由から、不具合の理由を判断して、前記通知部に不具合の理由を表示させることが好ましい。
【0014】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記判断部からの情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判断部は、前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報を前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0015】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記判断部からの情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判断部は、前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、異常の種類を決定し、当該異常の種類に関する情報を前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0016】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記移動機構は、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて、レーザ光の照射位置を前記薄膜の所定の位置に位置づけ、
前記薄膜の所定の位置が、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光によって再加工されることが好ましい。
【0017】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記移動機構および前記レーザ発振器を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて所望の移動態様を選択して前記移動機構を制御し、レーザ光の照射位置を前記薄膜の所定の位置に自動的に位置づけ、当該薄膜の所定の位置を、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光によって自動的に再加工させることが好ましい。
【0018】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記判断部によって決定された異常の種類に基づいて、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光の条件が調整され、条件が調整された後のレーザ光によって、前記薄膜が再加工されることが好ましい。
【0019】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記光センサは、前記レーザ発振器から前記被加工基板に照射されるレーザ光に起因する光を検知することが好ましい。
【0020】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記被加工基板に光を照射する観察用光源をさらに備え、
前記光センサは、前記観察用光源から前記被加工基板に照射される光に起因する光を検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被加工基板を透過した光または被加工基板で反射された光を検知する光センサからの信号に基づいて、被加工基板の薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われているかが判断可能となっている。このため、被加工基板の薄膜のうち正常にパターニングされていない箇所を、迅速かつ確実に、決定することができる。さらに、再加工する場合でも、精度良くかつ迅速に、被加工基板を加工することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るレーザ加工装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態のレーザ加工装置は、ガラス板などからなる透明な基板61と、この透明な基板61に配置されたITOやTCOなどからなる薄膜62とを有し、太陽電池に用いられる被加工基板60を加工するために用いられる。
【0024】
図1に示すように、レーザ加工装置は、被加工基板60を保持する保持部65と、被加工基板60の薄膜62にレーザ光Lを照射して、薄膜62を加工するレーザ発振器1と、保持部65に保持された被加工基板60に対するレーザ光Lの照射位置を相対的に移動させる移動機構5と、を備えている。なお、本実施の形態では、保持部65は、基板61が上方側、薄膜62が下方側に位置するようにして被加工基板60を保持しているが、これに限られることなく、保持部65は、基板61が下方側、薄膜62が上方側に位置するようにして被加工基板60を保持してもよい。
【0025】
また、図1に示すように、レーザ発振器1と保持部65によって保持された被加工基板60との間(光路上の間)には、レーザ光Lを反射する反射ミラー21と、反射ミラー21で反射されたレーザ光Lを被処理基板60に集光させるための集光レンズ22が設けられている。また、レーザ発振器1は、このレーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件を調整するための調整部1aを有している。
【0026】
なお、本実施の形態では、移動機構5は、図1に示すように、レーザ発振器1、反射ミラー21および集光レンズ22を一体に移動させることによって、保持部65に保持された被加工基板60の薄膜62に対するレーザ光Lの照射位置を相対的に移動させるよう構成されている。しかしながら、これに限ることなく、例えば、保持部65に移動機構が設けられ、この移動機構が保持部65を移動させることによって、被加工基板60の薄膜62に対するレーザ光Lの照射位置を相対的に移動させてもよいし、反射ミラー21および集光レンズ22からなる光学系のみを移動させてもよい。
【0027】
また、図1に示すように、被加工基板60の下方側には、レーザ発振器1から被加工基板60に照射されてこの被加工基板60を透過したレーザ光L’(透過散乱光など)を検知する光センサ10が設けられている。なお、この光センサ10は、透過したレーザ光L’の光強度分布を検出するように構成されている。また、光センサ10には移動機構(図示せず)が連結されており、光センサ10は移動機構5の動きに合わせて移動可能となっている。
【0028】
また、図1に示すように、光センサ10には、コンピュータ50が接続されている。そして、このコンピュータ50は、図2に示すように、光センサ10からの信号に基づいて、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われているかを判断する判断部51を有している。なお、この判断部51は、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合には、異常の種類と、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報を決定するように構成されている。
【0029】
ところで、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われていない場合には、透過したレーザ光L’の光強度が低下したり(薄膜62が不透明なものからなり、当該薄膜62が全くパターニングされていない場合には、光強度は0となる)、透過したレーザ光L’の光強度分布が非対称になったり、透過光の位置(絶対位置)が変わってしまったり、レーザ光L’の幅が所定の値でなくなったりするが、判断部51は、これらのことから、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断する。
【0030】
また、図1および図2に示すように、判断部51には、判断部51によって薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断された場合に、異常がある旨を表示(通知)する表示画面(通知部)40が接続されている。なお、本実施の形態では、異常がある旨を通知する通知部として表示画面40を用いて説明するが、これに限られることはない。通知部としては、例えば、異常がある旨をアラーム音によって通知するものなども用いることができる。
【0031】
また、図2に示すように、判断部51には、判断部51からの情報を記憶する記憶部52が接続されている。この記憶部52は、判断部51によって薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断された場合に、判断部51が決定した異常の種類に関する情報と、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報を、記憶するように構成されている。なお、本実施の形態では、判断部51と記憶部52とが別体を構成する態様を用いて説明するが、これに限られることなく、判断部51と記憶部52とは、一体となっていてもよい。
【0032】
また、図2に示すように、移動機構5とレーザ発振器1には、これら移動機構5とレーザ発振器1を制御する制御部55が接続されている。なお、この制御部55は、判断部51と記憶部52にも接続されている。そして、これら制御部55、判断部51および記憶部52は、コンピュータ50に含まれている。
【0033】
図2において、制御部55は、判断部51または記憶部52から、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報を取得して、当該情報に基づいて、移動機構5を自動的に制御するように構成されている。また、制御部55は、判断部51または記憶部52から、判断部51によって決定された異常の種類に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件を、調整部1a(図1参照)によって自動的に調整するように構成されている。
【0034】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0035】
まず、保持部65によって、被加工基板60が保持される(保持工程)(図1参照)。その後、移動機構5によって、レーザ発振器1、反射ミラー21および集光レンズ22が一体となって移動させられる。他方、光センサ10も移動機構(図示せず)によって、移動機構5の動きに合わせて移動される。なお、以下の工程は、このように、レーザ発振器1、反射ミラー21、集光レンズ22および光センサ10が移動している間に行われる。
【0036】
次に、レーザ発振器1からレーザ光Lが照射される(レーザ照射工程)(図1参照)。このとき、レーザ発振器1から照射されたレーザ光Lは、反射ミラー21および集光レンズ22を経て、被加工基板60に達する(図1参照)。
【0037】
このように被加工基板60に達したレーザ光Lのうち、中心領域にある強度の強い光Laが被加工基板60の薄膜62の加工に用いられ、周縁領域にある強度の弱い光Lbが被加工基板60を透過して光センサ10で検知される(図3参照)。
【0038】
すなわち、レーザ光Lの中心領域にある強度の強い光Laは被加工基板60の薄膜62を加工するのに用いられて吸収されることとなるが、レーザ光Lの周縁領域にあるレーザ光Lbは、被加工基板60の薄膜62を加工するのには寄与せず吸収されない(図3参照)。このため、周縁領域にあるレーザ光Lbは、透明な基板61を通過して、光センサ10で検知されることとなる。
【0039】
次に、判断部51によって、光センサ10からの信号に基づいて、被加工基板60の薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われているかが判断される(図2参照)。具体的には、判断部51は、光センサ10から透過したレーザ光L’の光強度分布を取得する。そして、判断部51は、透過したレーザ光L’の光強度が低下した場合や、透過したレーザ光L’の光強度分布が非対称になった場合や、透過光の位置(絶対位置)が変わってしまった場合や、レーザ光L’の幅が所定の値でなくなった場合などに、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断する。
【0040】
そして、判断部51によって異常があると判断された場合には、異常がある旨が表示画面40で表示される(図1参照)。このため、操作者は、被加工基板60の薄膜62が正常にパターニングされていないことを容易に認識することができる。
【0041】
また、このように判断部51によって異常があると判断された場合には、透過したレーザ光L’の光強度が低下したとか、透過したレーザ光L’の光強度分布が非対称になったなどの異常の種類に関する情報と、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報とが、判断部51から記憶部52へと送られ、当該記憶部52で記憶される(図2参照)。
【0042】
このように、本実施の形態によれば、被加工基板60の薄膜62を加工するために用いられるレーザ光Lに基づいて、タイムリーに(加工のその場で)、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われたかが判断される。このため、被加工基板60の薄膜62のうちパターニングされていない箇所を、迅速かつ確実に、決定することができる。
【0043】
次に、制御部55は、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて、移動機構5を制御して、レーザ光Lの照射位置を薄膜62の所定の位置(異常があると判断された箇所)に自動的に位置づける(図1参照)。このとき、制御部55は、判断部51によって決定された異常の種類に基づいて、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件を調整部1aによって自動的に調整する(図1参照)。そして、このように条件が調整された後のレーザ光Lによって、薄膜62の所定の位置(異常があると判断された箇所)が照射されて、自動的に再加工される。
【0044】
このとき、制御部55は所望の移動態様を選択して移動機構5を移動させるが、その一例として、以下のような態様を用いることができる。なお、このような移動態様を説明するため、パターニングとして、被加工基板60にレーザ光Lによって複数本のラインを施す態様を用いて説明する(図4(a)(b)参照)。
【0045】
第一の態様としては、図4(a)に示すように、一本ずつ、所定のラインをレーザ光Lによって加工し、その後、当該ライン上で異常があると判断された箇所(図4(a)(b)では×印で示されている箇所)に、逆方向で戻り(図4(a)の矢印A1、参照)、レーザ光Lを照射することができる。このように異常があると判断された箇所をレーザ光Lで再加工すると、次の加工予定箇所に移動する。
【0046】
このように次の加工予定箇所に移動するときには、直接、斜め方向(X方向とY方向の間の方向)に移動して次の加工予定箇所の始点に位置づけられてもよいし(図4(a)の矢印A2、参照)(なお、次の加工予定箇所の始点がX方向にある場合には、X方向に向かって移動する)、ラインの両端部のうち近い方に移動した後に次の加工予定箇所の始点に位置づけられてもよい(図4(a)の矢印A2’と矢印A2”、参照)。
【0047】
また、第二の態様としては、図4(b)に示すように、加工予定の全てのラインにレーザ光を照射した後、異常があると判断された箇所を順次、レーザ光Lで再加工することもできる。このとき、異常があると判断された箇所(再加工予定箇所)に向かって移動する際に、直接、斜め方向に移動することが好ましい(図4(b)の矢印A1’、参照)(なお、次の再加工予定箇所がX方向にある場合には、X方向に向かって移動する(図4(b)の一番右側の矢印A1’、参照))。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて、レーザ光Lの照射位置が薄膜62の所定の位置(異常があると判断された箇所)に位置づけられる。このため、薄膜62のうち異常があると判断された箇所のみを再加工することができる。この結果、被加工基板60の処理時間を短くして処理効率を向上させるとともに、不要な箇所を再度レーザ加工する必要を無くすことができるので、被加工基板60の加工コストを削減することができる。
【0049】
また、本実施の形態よれば、判断部51によって決定された異常の種類に基づいて、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件が調整される。このため、パターニングされていない薄膜62の状態(異常の種類)に応じた適切な条件からなるレーザ光Lを、薄膜62に照射して再加工することができる。この結果、被加工基板60の薄膜62をより確実にパターニングすることができる。
【0050】
なお、上述した工程は、被加工基板60の加工対象となっている箇所の全てが正常に加工されるまで、断続的または連続的に行われる。そして、加工対象となっている箇所の全てが正常に加工されると、レーザ発振器1、反射ミラー21および集光レンズ22を移動させる移動機構5と、光センサ10を移動させる移動機構(図示せず)が停止され、被加工基板60が保持部65から取り除かれる。
【0051】
本実施の形態によれば、従来技術のように、被加工基板60を加工した後で、一度、レーザ加工装置から取り除いた後、検査し、再度、レーザ加工装置に戻す必要がなくなり、位置決めをした状態で、再度、レーザ光Lによって被加工基板60を加工することができる。このため、位置決め時に生じる誤差によって、パターニングのラインの幅が必要以上に太くなったり、場所によってラインの幅が変わってしまったりすることなどを防止することができる。なお、被加工基板60のパターニングはミクロンオーダーで行われるので、位置決め時に生じる誤差(特に角度の誤差)は、機械による位置決めでは当然に発生し、アライメントマークを利用した位置決めでもかなりの可能性で発生してしまう。
【0052】
ところで、上記では、判断部51が、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、異常の種類と、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置を決定する態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、判断部51は、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、異常の種類のみ、または、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置のみを決定するようにしてもよい。
【0053】
また、上記では、制御部55が、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて、移動機構5を制御して、レーザ光Lの照射位置を被加工基板60の所定の位置に自動的に位置づける態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、薄膜62のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報(例えば、表示画面40に表示される)に基づいて、操作者が、手入力などによって、レーザ光Lの照射位置を被加工基板60の所定の位置に位置づけるようにしてもよい。
【0054】
また、上記では、制御部55が、判断部51によって決定された異常の種類に基づいて、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件を調整部1aによって自動的に調整する態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、判断部51によって決定された異常の種類(例えば、表示画面40に表示される)に基づいて、操作者が、手入力などによって、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lの条件を調整部1aで調整するようにしてもよい。
【0055】
また、上記では図1に示すように、光センサ10が被加工基板60の下方側に配置され、この光センサ10が被加工基板60を透過したレーザ光L’を検知する態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、図5に示すように、光センサ10が被加工基板60の上方側に配置され、この光センサ10が被加工基板60で反射されたレーザ光L”(反射散乱光など)を検知するようにしてもよい。
【0056】
なお、このように光センサ10が被加工基板60で反射されたレーザ光L”を検知する場合には、このような光センサ10を備えたレーザ加工装置は、透明な基板61を有する被加工基板60だけでなく、不透明な基板61を有する被加工基板60を加工する際にも用いられることができる。なお、このようなレーザ加工装置では、判断部51は、被加工基板60で反射されたレーザ光L”の光強度が増加したり、光強度分布が非対称になったりすることによって、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断する。
【0057】
なお、表示画面40は、判断部51が正常でないと判断したときの表示のみならず、所定数以上の箇所で正常でないと判断した場合には、被加工基板60を排除する旨を通知したり、判断部51がレーザ光L’によるパターニングが正常に行われていないと判断した理由を通知したりすることが好ましい。被加工基板60の再加工点が多い場合には、レーザ加工装置の不具合や、被加工基板60全体にかかわる不良(薄膜62の不良や基板61の不良)が考えられる。このような場合には、被加工基板60を排除する旨が通知されることによって、無駄に被加工基板60を加工することを防止することができる。また、レーザ光L’によるパターニングが正常でないと判断した理由(導体膜加工時の不具合情報、半導体膜加工時の不具合情報、電極膜加工時の不具合情報など)を通知することによって、スパッタ装置の不具合や被加工基板の不具合などを特定できる(例えば、被加工基板60の周縁部に不具合が多い場合には、薄膜62の厚みに問題がある可能性があり、被加工基板60の所定箇所に集中して不具合がある場合には、基板61に問題がある可能性がある)。
【0058】
ところで、判断部51は、レーザ光L’によるパターニングが正常でないと判断した理由から、スパッタ装置の不具合や被加工基板の不具合などの不具合の理由を判断して、表示画面40に不具合の理由を表示させてもよい。
【0059】
第2の実施の形態
次に、図6および図7により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6および図7に示す第2の実施の形態は、被加工基板60に光Pを照射する観察用光源15が設けられ、光センサ10が、レーザ発振器1から被加工基板60に照射されるレーザ光Lに起因する光L’,L”を検知する代わりに、観察用光源15から被加工基板60に照射される光Pに起因する光P’,P”を検知するものであり、その他の構成は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0060】
図6および図7に示す第2の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図6に示す態様は、被加工基板60の上方側に観察用光源15が設けられ、被加工基板60の下方側に、観察用光源15から被加工基板60に照射されてこの被加工基板60を透過した光P’(透過散乱光など)を検知する光センサ10が設けられている。
【0062】
図6において、レーザ発振器1からレーザ光Lが照射されて薄膜62が加工されると、その直後に、このようにして加工された箇所に、観察用光源15からの光Pが照射される。そして、光センサ10によって、被加工基板60を透過した光P’が検知される。次に、判断部51によって、光センサ10からの信号に基づいて、被加工基板60を透過した光P’の光強度分布が判断され、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われたかが判断される。
【0063】
また、図7に示す態様では、被加工基板60の上方側に観察用光源15が設けられ、被加工基板60の上方側に、被加工基板60で反射された光P”(反射散乱光など)を検知する光センサ10が設けられている。
【0064】
図7において、レーザ発振器1からレーザ光Lが照射されて薄膜62が加工されると、その直後に、このようにして加工された箇所に、観察用光源15からの光Pが照射される。そして、光センサ10によって、被加工基板60で反射された光P”が検知される。次に、判断部51によって、光センサ10からの信号に基づいて、被加工基板60で反射された光P”の光強度分布が判断され、薄膜62のレーザ光Lによるパターニングが正常に行われたかが判断される。
【0065】
本実施の形態によれば、レーザ光Lによって被加工基板60の薄膜62が加工されると、その直後に、このようにして加工された箇所に、観察用光源15からの光Pが照射される。そして、この光Pに起因する光P’,P”の光強度分布に基づいて、被加工基板60の薄膜62が適切にパターニングされているかが判断される。このため、第1の実施の形態と同様、被加工基板60の薄膜62のうちパターニングされていない箇所を、迅速かつ確実に、決定することができる。
【0066】
さらに、本実施の形態によれば、被加工基板60を加工する際に用いられるレーザ光Lに限定されずに、自由に検査に最適な光Pを照射する観察用光源15を選択することができる。また、観察用光源15を自由に選択することができるのに伴って、光センサ10の種類も自由に選択することができるようになり、検出率の向上や、誤差の低減を図ることができる。なお、レーザ光L’,L”を受光する場合には、光センサ10が破損する可能性があるが、観察用光源15を用いることによって、その可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置のコンピュータ内の構成を示す概略図。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置から照射され被加工基板を通過したレーザ光の強度分布を示したグラフ図。
【図4】本発明の第1の実施の形態によるレーザ加工装置の制御部が所望の移動態様を選択して移動機構を移動させることを説明するための概略平面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例によるレーザ加工装置の構成を示す概略図。
【図6】本発明の第2の実施の形態によるレーザ加工装置の構成を示す概略図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の変形例によるレーザ加工装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザ発振器
1a 調整部
5 移動機構
10 光センサ
15 観察用光源
40 表示画面(通知部)
50 コンピュータ
51 判断部
52 記憶部
55 制御部
60 被加工基板
61 基板
62 薄膜
65 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工基板を保持する保持部と、
前記被加工基板の前記薄膜にレーザ光を照射して、該薄膜を加工するレーザ発振器と、
前記保持部に保持された前記被加工基板の前記薄膜に対するレーザ光の照射位置を相対的に移動させる移動機構と、
前記被加工基板を透過した光または前記被加工基板で反射された光を検知する光センサと、
前記光センサからの信号に基づいて、前記被加工基板の前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われているかを判断する判断部と、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記判断部によって前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断された場合に、その旨を通知する通知部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記判断部が所定数以上の箇所で正常でないと判断した場合には、被加工基板を排除する旨を通知することを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記通知部は、前記判断部がレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断した理由も通知することを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記判断部は、該判断部がレーザ光によるパターニングが正常に行われていないと判断した理由から、不具合の理由を判断して、前記通知部に不具合の理由を表示させることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記判断部からの情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判断部は、前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報を前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記判断部からの情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判断部は、前記薄膜のレーザ光によるパターニングが正常に行われておらず異常があると判断した場合に、異常の種類を決定し、当該異常の種類に関する情報を前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて、レーザ光の照射位置を前記薄膜の所定の位置に位置づけ、
前記薄膜の所定の位置が、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光によって再加工されることを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記移動機構および前記レーザ発振器を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記薄膜のうち異常があると判断された箇所の位置に関する情報に基づいて所望の移動態様を選択して前記移動機構を制御し、レーザ光の照射位置を前記薄膜の所定の位置に自動的に位置づけ、当該薄膜の所定の位置を、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光によって自動的に再加工させることを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記判断部によって決定された異常の種類に基づいて、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光の条件が調整され、条件が調整された後のレーザ光によって、前記薄膜が再加工されることを特徴とする請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記光センサは、前記レーザ発振器から前記被加工基板に照射されるレーザ光に起因する光を検知することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記被加工基板に光を照射する観察用光源をさらに備え、
前記光センサは、前記観察用光源から前記被加工基板に照射される光に起因する光を検知することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−291813(P2009−291813A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148145(P2008−148145)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】