説明

ロフェキシジンを経粘膜送達するための組成物およびその方法

本発明は、アヘン中毒、片頭痛、神経因性疼痛、および他の、ロフェキシジンに関連する治療指標の治療において、このような治療を必要とする患者に迅速な反応をもたらすために、ロフェキシジンを全身性の循環に送達する速度を、鼻腔経路、舌下経路、または口腔経路を介した経粘膜投与によって加速させるための組成物およびその方法を提供する。経粘膜送達用に作製されたロフェキシジンの組成物が提供される。また、アヘン中毒、片頭痛、神経因性疼痛、および他の、ロフェキシジンに関連する治療指標を治療するための方法が提供される。この方法は、鼻腔投与経路、舌下投与経路、または口腔投与経路を介した経粘膜送達用に作製された、これらの薬物指標の治療に有効な量のロフェキシジン組成物を利用するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2008年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/039,977号に対する優先権を主張するものである。あらゆる目的のために、当該出願の全体を、引用することによって本願に含める。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、ロフェキシジン、または、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る遊離塩基、塩、エステル、アミド、もしくはプロドラッグを含む活性剤を、経粘膜投与により送達する方法に関する。より詳細にいうと、本発明は、アヘン中毒、片頭痛、神経因性疼痛、および、他の、ロフェキシジンに関連する治療指標の治療のために、鼻腔投与経路、舌下投与経路、および口腔投与経路を介してロフェキシジンを経粘膜投与するための組成物およびその方法を特徴とする。この投薬形態は、経粘膜的な薬物送達に適した投薬形態であり、例えば、噴霧剤、滴下剤、ゲル、錠剤、トローチ、薬用ドロップ、チューイングガム、膏薬などである。
【0003】
〔発明の背景〕
ロフェキシジンは、クロニジンと同様のα2−アドレナリン受容体アゴニスト類似体であり、主にアヘン剤の禁断症状を沈静するように機能する。この薬物は、1992年以降、BritLofexという名称で、イギリスにおいて、オピオイド解毒のための非オピオイド性の薬剤としての用途に利用されている。ロフェキシジンは、経口送達後、関連する降圧剤であるクロニジンよりも広範囲にわたって代謝されることが報告されている。ロフェキシジンの主要な代謝産物は、2,6−ジクロロフェノールであることが報告されている。2,6−ジクロロフェノールは、2種のO−グルクロン酸抱合体として尿に排出されることになる。
【0004】
全体的に見れば、経口薬物送達経路がよく知られているが、経粘膜送達経路は、その非侵襲性のために、魅力的であると共に特に有効である。鼻腔経路、舌下経路、および口腔経路といった経粘膜送達経路は、通常、単純であり、介護人または患者は、不快感を最小限に抑えて、投与することが可能である。
【0005】
さらに、経粘膜薬物送達は、ロフェキシジンの経口投与に関連付けられ得る末梢の副作用を最小化すると共に、肝臓による初回通過代謝を回避することによって、ロフェキシジンを血流に効果的に送達して、中毒者の解毒を行う。
【0006】
経粘膜送達は、迅速な吸収および高い生体利用効率を可能にし、従って、用量および副作用をより少なくすることができる。さらに、肝臓による初回通過代謝および胃腸管による代謝が回避されるため、ロフェキシジン代謝産物と関連する、起こり得る副作用は、軽減される。
【0007】
従って、本発明のいくつかある目的のうちの一つは、迅速に作用し、容易に投与され、実質的に有害な副作用を生じさせない、治療学的な量のロフェキシジンを血流中に確実に送達する、安全かつ確実にロフェキシジンの鼻腔内送達システム、舌下送達システム、または口腔送達システムを提供することである。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、経粘膜送達用の、ロフェキシジンを含む組成物に関する。この組成物は、舌下投与、鼻腔投与、および口腔投与の用途に適し、口腔粘膜および鼻粘膜を介した薬物の吸収をもたらす。
【0009】
本発明はまた、経粘膜送達によってロフェキシジンを投与することを含む、治療方法に関する。本発明に係る方法は、特に、胃内容物の排出が異常に遅い患者において、経口の投薬形態と比べて、生体利用効率を改善することが可能である。このような方法は、本明細書に記載した、ロフェキシジンを含有する新規の組成物を投与することを含むことが可能である。本方法は、ロフェキシジンの投与によって回復する傾向にある、様々な病気のための治療を提供することが可能であり、この際に、経口摂取に関連する、起こり得る副作用を生じさせることはない。
【0010】
本発明は、ロフェキシジン、またはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを含む薬学的組成物を提供する。ここで、ロフェキシジン、またはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩は、鼻腔投与、舌下投与、または口腔投与による経粘膜送達に適した形態にて提供される。
【0011】
以下に、本発明のこれらの実施形態および他の実施形態について記載する。すなわち、本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、以下の開示内容に基づいて、当業者に明らかである。
【0012】
上述した本発明の概要は、本発明の各実施形態またはあらゆる実施を説明することを意図するものではない。利点および到達可能な事項は、本発明をより完全に理解することと共に、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を添付の図面と共に参照することによって、明らかとなろう。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
特許請求の範囲に規定された本発明は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0014】
図1は、ウサギに1mg/kgの単回用量を、舌下投与および静脈内投与した後の、ロフェキシジンの平均血漿中濃度を示す図である(n=3)。全ての値は、平均±STDVを示している。
【0015】
図示された実施形態の以下の説明では、本願の一部を構成する添付の図面を参照する。この図には、本発明を実施することが可能な様々な実施形態が、図解の目的で示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いてもよく、構造的変更および機能的変更を行ってもよいことは理解される。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
他の規定がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有している。本発明を実際に実施する際または試験する際に、本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を用いてもよいが、好ましい方法、装置、および材料についてはここに記載されている。本明細書に記載される全ての引用文献、公報、特許、特許出願、および商業資料を、引用することによって本願に含める。これは、本発明に関連して用いられる公報において報告された細胞系、ベクター、および方法論を記載および開示することを含む、あらゆる目的のためである。本明細書において、本発明が、このような先願発明に基づく開示に先行する権利がないことを記載するものと解釈されるものはない。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲の明確かつ矛盾のない理解を提供するために、このような用語に与えられるべき範囲を含めて、以下の定義を提供する。
【0018】
本明細書において規定される、薬学的に活性のある化合物および薬学的組成物の「投与」という用語は、経粘膜的な適用を含む。本発明では、鼻腔投与、舌下投与、および口腔投与が、特に好ましい。
【0019】
「回復する」または「回復」という用語は、治療を受けている被験体における疾病の有害な影響の低下または重篤度の低下を意味している。この反応の重篤度は、当該技術分野において公知の手段によって決定される。
【0020】
本明細書内の「両立可能な」という用語は、本発明を含む組成物の成分が、通常の使用条件下において、薬学的に活性のある化合物の効能を実質的に低減させるように相互作用せずに、混合され得ることを意味している。
【0021】
用語「有効な量」または用語「薬学的に有効な量」は、無毒であると同時に、所望の生物学的結果を十分に提供する程度の薬剤の量を意味している。生物学的結果とは、神経疾患および悪性高体温症といった疾病の徴候、症候、もしくは原因の低減および/または緩和、または、生物学的な系の他の任意の所望の変化であり得る。このような量については後述する。各個体において適した「有効な」量については、当業者が通常の実験を用いて決定することが可能である。
【0022】
本明細書で用いられる場合は、用語「賦形剤」は、活性のある薬剤成分(API)を医薬製剤に調剤するために用いられる物質を意味している。つまり、好ましい一実施形態では、賦形剤は、APIの主な治療効果を低下させない、または妨害しない。好ましくは、賦形剤は、治療上の効果を有さない。用語「賦形剤」は、担体、希釈剤、媒介物、可溶化剤、安定剤、充填剤、酸性または塩基性のpH調整剤、および結合剤を含む。賦形剤はまた、製造プロセスの間接的または意図しない結果として医薬製剤内に存在する物質であり得る。賦形剤は、ヒトおよび動物への投与が承認されているか、または、ヒトおよび動物への投与に安全であると考えられている、すなわちGRAS(一般的に安全と考えられる:generally regarded as safe)物質であることが好ましい。GRAS物質は、連邦規制基準(CFR)の21 CFR 182および21 CFR 184の食品および薬物投与に列挙されている。これらを引用することによって本願に含める。
【0023】
本明細書で用いられる場合は、用語「調剤する」は、薬物、例えばロフェキシジンを、哺乳動物である患者、好ましくはヒトに投与するために適した形態に調製することを意味している。従って、「調剤」には、薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、または担体、およびpH調整剤を添加することが含まれ得る。
【0024】
本明細書で用いられる場合は、用語「透過促進剤」または「浸透促進剤」は、薬理学的に活性のある薬剤(例えば、ロフェキシジン)を、粘膜面を介して輸送する速度を改善する薬剤を指す。典型的には、浸透促進剤は、薬理学的に活性のある薬剤に対する粘膜組織の透過率を増大させる。浸透促進剤は、例えば、薬理学的に活性のある薬剤が細胞膜を通って透過し、血流に流入する速度を増大させる。浸透促進剤を用いることによって促進された透過作用は、後述の実施例に記載したように、例えば、動物またはヒトの細胞膜を通過する薬理学的に活性のある薬剤の流量を測定することによって観察可能である。本明細書で用いられる場合は、透過促進剤の「有効な」量とは、粘膜細胞膜の透過率を所望のように増大させて、例えば、選択された化合物の浸透深さ、化合物の投与の速度、および送達された化合物の量を所望のように提供する量のことを意味している。
【0025】
「薬学的に許容され得る」または「薬理学的に許容され得る」という表現は、生物学的に、または他の面で望ましい材料を意味している。つまり、この材料は、いかなる望ましくない生物学的作用を生じさせることなく、または、当該材料が含まれる組成物のいかなる成分と有害に相互作用することなく、個体に投与されることが可能である。
【0026】
本明細書で用いられる場合は、「薬学的に許容され得る担体」とは、無毒で、概して不活性であると同時に、活性のある成分の機能に悪影響を及ぼさない材料である。薬学的に許容され得る担体の例は周知であり、これらは、希釈剤、媒介物、または賦形剤と呼ばれることもある。この担体は、実際には、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。さらに、この製剤は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、着香料、着色剤、増粘剤またはゲル化剤、乳化剤、加湿剤、緩衝液、安定剤、および保存料(例えば酸化防止剤)などが挙げられる。
【0027】
本明細書で用いられる場合は、用語「薬学的組成物」は、ヒトへの投与に適した条件下、例えばGMP条件下で作製され、薬学的に許容され得る賦形剤、例えば、安定剤、pH調整剤、充填剤、緩衝液、担体、希釈剤、媒介物、可溶化剤、および結合剤(これらに限定されない)を含む組成物を意味している。
【0028】
液状の担体または媒介物は、溶媒または液状分散媒であり得、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、または液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒のグリセリルエステル、およびこれらの好適な混合物を含む。微生物の成長を妨げることは、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどといった種々の抗菌剤および抗真菌剤によって実現可能である。
【0029】
本明細書で用いられる場合は、用語「被験体」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含している。哺乳動物の例には、あらゆる哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、並びに、他の類人猿およびサル);家畜(例えば、牛、馬、羊、ヤギ、豚);飼育用動物(例えば、ウサギ、犬、および猫);並びに、齧歯類(例えば、ラット、マウス、およびテンジクネズミ)を含む実験動物などが挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、鳥や魚などが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。
【0030】
本明細書で用いられる場合は、疾病を「治療すること」または疾病の「治療」との用語は、疾病を予防すること、つまり、疾病に曝されるまたは疾病にかかりやすいが、まだ疾病の症候を経験または露呈していない被験体において、疾病の臨床症状を予防することを含む。つまり、疾病を抑制または軽減することによって、すなわち疾病またはその臨床症状の退行を生じさせることによって、疾病を阻害すること、すなわち疾病またはその臨床症状の進行を停止させることを含む。
【0031】
〔概要〕
本発明は、ロフェキシジン、またはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩を、このような治療を必要とする患者に送達するための組成物およびその方法を提供する。本発明には、ロフェキシジンの経粘膜投与が含まれる。より詳細にいうと、本発明は、アヘン中毒、片頭痛、神経因性疼痛、および他の、ロフェキシジンに関連する治療指標の治療のために、鼻腔投与経路、舌下投与経路、および口腔投与経路を介してロフェキシジンを経粘膜送達するための、投薬形態組成物および方法を特徴とする。この投薬形態は、経粘膜薬物送達に適した形であり、例えば、噴霧剤、滴下剤、ゲル、錠剤、トローチ、薬用ドロップ、チューイングガム、膏薬などである。鼻腔、舌下、または口腔を介して経粘膜送達する投薬形態の投与は、従来技術を超える著しい臨床的利点を提供する。より詳細にいうと、本発明は、ロフェキシジンに関連する治療指標、例えば、アヘン剤の解毒を受けている患者の症候を軽減するための治療に対する、迅速、確実、安全、効果的、かつ、便利な治療を提供すること、ストレス誘導性の中毒性物質の常習を低減させること、および、片頭痛および神経因性疼痛といった一般的な疼痛処理を治療することを目指したものである。本発明は、鼻腔投与、舌下投与および/または口腔投与によって、ロフェキシジンを投与することを含み、これによって、従来のロフェキシジン投与方法と比べて迅速な反応を提供すると共に、経口の投薬形態に関連する副作用を回避する。
【0032】
本発明は、約0.05mg〜約5mgのロフェキシジンを含む薬学的組成物に関する。幾つかの実施形態では、薬学的組成物は、約0.1mg〜約1mgのロフェキシジンを含む。
【0033】
本発明は、透過促進剤をさらに含む、約0.05mg〜約5mgのロフェキシジンを含む薬学的組成物に関する。
【0034】
一態様では、本発明は、薬学的な薬物送達のための組成物に関する。この組成物は、全身への適用、例えば、経粘膜的な適用に適したものに調剤されていてもよい。この組成物は、通常は、治療学的に有効な量の、ロフェキシジン、または、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体を含む。
【0035】
他の一実施形態では、上記組成物は、ゲル化剤または増粘剤を含む。典型的なゲル化剤には、カルボマー、カルボキシエチレン、またはポリアクリル酸(例えば、カルボマー980または940NF、981または941NF、1382または1342NF、5984または934NF、ETD2020、2050、934PNF、97IPNF、974PNF)、ポリカルボフィル(例えば、NOVEON AA−1、NOVEON CA1/CA2)、カルボマーコポリマー(carbomer copopolymer)(例えば、PEMULEN TRl NFまたはPEMULEN TR2 NF)、カルボマーインターポリマー(例えば、CARBOPOL ETD 2020 NF、CARBOPOLETD 2050 NF、CARBOPOLULTRA EZ 10など));セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)など);天然ゴム(例えば、アラビアガム、キサンタンガム、グァーガム、アルギナートなど);ポリビニルピロリドン誘導体;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーなど;キトサン、ポリビニルアルコール、ペクチン、各グレードのビーガムなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明を適用するための他の好適なゲル化剤には、カルボマーが含まれるが、これに限定されない。あるいは、当業者に公知の他のゲル化剤または増粘剤を用いてもよい。このゲル化剤または増粘剤は、ポリマーの種類に応じて、約0.2〜約30%w/wで存在している。これについては、当業者には公知である。ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボマーといったゲル化剤の好適な濃度域は、約0.5重量パーセントと約5重量パーセントとの間の濃度であり、より好ましくは、約1重量パーセントと約3重量パーセントとの間の濃度である。
【0036】
他の一実施形態では、上記組成物は、透過促進剤(浸透促進剤)を含む。この透過促進剤には、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシド);界面活性剤(例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ポロキサマー(231、182、184)、tween(20,40,60,80)、およびレシチン);1置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に、1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(1-n-dodecylcyclazacycloheptan-2-one);脂肪アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなど);脂肪酸(例えば、ラウリン酸、オレイン酸、およびバレリアン酸);脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、メチルプロピオネート、およびオレイン酸エチル);ポリオールおよびそのエステル(例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールモノラウレート、アミドおよび他の窒素化合物(例えば、尿素、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、テルペン);アルカノン、および有機酸、特に、サリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸およびコハク酸が含まれるが、これらに限定されない。本明細書の冒頭に記載したように、「Percutaneous Penetration Enhancers」(編集者Smith et al. (CRC Press,1995年))は、当該分野の極めて良好な概観を提供すると共に、本発明と一緒に用いることが可能な副次的な促進剤に関するさらなる情報を提供するものである。当該文献を引用することによって、本願に含める。本発明と一緒に用いることに適した別の透過促進剤は、当業者に知られている。透過促進剤は、化合物の種類に応じて、約0.1〜約30%w/wで存在している。好ましい透過促進剤は、脂肪アルコールおよび脂肪酸である。より好ましい透過促進剤は、脂肪アルコールである。脂肪アルコールは、化学式CH(CH(CH)CHOHを有していることが好ましい。ここで、nの範囲は、(8−m)〜(16−m)であり、m=0−2である。浸透促進剤の好ましい濃度域は、当業者に公知のように、透過促進剤の種類に応じて、約0.1重量パーセントと約10重量パーセントとの間の濃度である。好ましい一実施形態では、浸透促進剤は、約0.1重量パーセントと約2重量パーセントとの間の濃度のミリスチルアルコールを含む。
【0037】
幾つかの実施形態では、透過促進剤は、胆汁塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、ラウリル硫酸ナトリウム、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の誘導体、界面活性剤、胆汁塩の類縁物質、および胆汁塩の誘導体からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、透過促進剤は、合成透過促進剤である。
【0038】
他の一実施形態では、上記組成物は、酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、例えば、トコフェロールおよび誘導体、アスコルビン酸および誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸、リンゴ酸、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび誘導体であり、当業者に公知であるように、用いられる酸化防止剤の種類に応じて、約0.01〜約5重量パーセントの濃度、より好ましくは、約0.1〜約0.5重量パーセントの濃度である。
【0039】
他の一実施形態では、上記組成物は、緩衝剤を含む。緩衝剤は、例えば、炭酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、塩酸、乳酸、酒石酸、無機塩基および有機塩基であり、当業者に公知であるように、用いられる緩衝剤の種類に応じて、約1〜約10重量パーセントの濃度、より好ましくは、約2〜約5重量パーセントの濃度である。この緩衝剤の好ましい濃度域は、粘膜の細胞膜の生理学的なpHに近いpH、つまり、約pH2.0と約pH10.0との間、好ましくは、約pH3.0とpH7.0との間のpHを有する組成物の設計を可能にする濃度である。しかし、当業者には公知であるように、緩衝剤の濃度を変えてもよい。組成物において、緩衝剤を、最大100%の水の量に置き換えてもよい。
【0040】
本発明の経粘膜医薬製剤は、保存料をさらに含んでいてもよい。保存料の例には、塩化ベンザルコニウムおよび誘導体、安息香酸、ベンジルアルコールおよび誘導体、ブロノポール、パラベン、セントリミド、クロルヘキシジン、クレゾールおよび誘導体、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、フェニル第二水銀塩、チメロサール、ソルビン酸および誘導体が挙げられる。保存料は、当業者に公知であるように、用いられる化合物の種類に応じて、約0.01〜約10%w/wで存在している。
【0041】
本発明の経粘膜医薬製剤は、湿潤剤、金属イオン封鎖剤、保湿剤、界面活性剤、柔軟剤、顔料、芳香剤、香料、またはこれらの任意の組み合わせをさらに含んでいてよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、経粘膜的な投与形態は、ロフェキシジンまたはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩、水性溶媒、および、極性有機溶媒を含む液剤であり、極性有機溶媒は、ロフェキシジン遊離塩基またはその塩を水中での溶解を促進するために十分な量で存在している。
【0043】
一実施形態では、本発明のゲル製剤は、約0.01〜約5重量パーセントの間の、治療学的に効果のある量のロフェキシジン、または、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体を含む。主要媒介物は、約10〜約60重量パーセントの間の水、約30〜約70重量パーセントの間のエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルとプロピレングリコールとを10:1〜1:10(重量対重量)で混合させた約15と約60重量パーセントとの間の混合物、および、約0.1〜約2重量パーセントのラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、またはオレイン酸を含んでいてもよい。この主要媒介物は、約0.5と約5重量パーセントとの間のヒドロキシプロピルセルロースによって、ゲル化されてもよい。このゲルの見かけ上のpHは、約pH2.0と約pH10.0との間、または、好ましくは約pH3.0とpH7.0との間である。
【0044】
他の一実施形態では、ロフェキシジンまたはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩は、0.05〜5mgのロフェキシジン用量で存在している。好ましくは、極性有機溶媒は、アルコールである。このアルコールには、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物が含まれていてもよいが、これらに限定されない。より好ましくは、このアルコールは、エタノールである。この極性有機溶媒が、0.5〜50%w/wの量で存在していることが好ましい。
【0045】
さらに、上記薬学的組成物の経粘膜送達システムは、製剤のpHを維持するための緩衝液と、薬学的に許容され得る増粘剤とを含み得る。上記薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的賦形剤をさらに含み得、さらに、薬学的に許容され得る保存料を含み得る。
【0046】
経粘膜送達システムの緩衝液は、酢酸緩衝液、クエン酸塩緩衝液、プロラミン緩衝液、炭酸塩緩衝液、およびリン酸緩衝液から構成される群から選択されることが可能である。
【0047】
経粘膜送達システムの増粘剤は、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギナート、アカシア、キトサン、およびこれらの混合物から構成される群から選択されることが可能である。
【0048】
この製剤は、舌下送達システムおよび口腔送達システムに適した甘味料をさらに含んでいてよい。この甘味料は、マンニトール、サッカリン、またはサッカリンナトリウム塩であってよいが、これらに限定されない。この製剤は、着香料をさらに含んでいてよい。好ましくは、着香料はメントールである。この製剤は、増粘剤をさらに含んでいてよい。増粘剤は、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギナート、アカシア、キトサン、および、これらの混合物であってよいが、これらに限定されない。
【0049】
この製剤は、鼻腔送達システムに適した湿潤剤をさらに含んでいてよい。湿潤剤は、ソルビトール、グリセロール、鉱物油、植物油、および、これらの混合物であってよいが、これらに限定されない。
【0050】
幾つかの実施形態では、経粘膜単位用量の経粘膜担体は、水溶液であることが好ましい。さらに、水溶液は、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散液、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョン、水性ナノ粒子、および、これらの混合物を含む群から選択され得る。
【0051】
あるいは、経粘膜単位用量の担体は、非水溶液である。非水溶液は、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散液、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョン、非水性ナノ粒子、および、これらの混合物を含む群から選択され得る。
【0052】
経粘膜単位用量の担体はまた、水溶液と非水溶液との混合物であり得る。本製剤は、部分的に加圧されていてよい。あるいは、経粘膜単位用量の担体は粉末処方物である。
【0053】
粉末処方物は、単純な粉末混合物、粉末ミクロスフェア、被覆粉末ミクロスフェア、リポソーム分散液、および、これらの混合物から選択され得るが、これらに限定されない。好ましくは、粉末処方物は単純な粉末混合物である。
【0054】
幾つかの実施形態では、口腔粘膜吸収型の投与形態は、チューイングガム、膏薬、菱形キャンディ、錠剤、トローチ、香錠、小袋、および迅速に崩壊する錠剤から選択される。
【0055】
本発明の製剤は、単位用量の容器に入れて提供されてもよい。このような容器は、通常、内面および外面を含み、本発明の製剤は、容器の内面の近傍に含有される。選択された実施形態では、容器は、小包またはバイアルであり、容器の内面には、さらにライナーが設けられている。例えば、一実施形態では、容器は、柔軟な膜状の小包であり、ライナーは、ポリエチレンライナーである。選択的または追加的に、本発明の製剤は、複数回用量の容器に入れて提供されてもよい。このような複数回用量の容器は、通常は、内面および外面を含み、薬学的な薬物送達のためのゲルは、容器の内面の近傍に含有されている。複数回用量の容器は、例えば、定量または可変量を分配することが可能である。複数回用量の容器は、例えば、エネルギー蓄積型の用量計量式ポンプまたは手動の用量計量式ポンプであってよい。
【0056】
他の一態様では、本発明は、水、短鎖アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、薬学的に許容され得るグリコールおよび任意で脂肪性透過促進剤を含む含水アルコール媒介物内に、治療学的に効果のある量のロフェキシジン、または、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体を含む、薬学的な薬物送達のための組成物を含む。このような組成物では、組成物のpHは、通常、約pH2.0と約pH9.0との間である。これらの薬学的送達用の組成物は、本明細書に記載するさらなる成分を含んでいてよい。例えば、含水アルコール媒介物は、透過促進剤を含んでいてよい。このような組成物は、含水アルコール媒介物をゲル化する方法を含む、種々の方法で作製されてもよい。これらの組成物は、例えば、経粘膜的な適用のために用いられてもよい。経粘膜的な適用には、鼻孔組織、舌下組織、および口腔組織への適用が含まれる。
【0057】
さらに他の一態様では、本発明は、水、短鎖アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、薬学的に許容され得るグリコールおよび任意で脂肪性透過促進剤を含む含水アルコール媒介物内に、治療学的に効果のある量のロフェキシジン、または、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体を含む、薬学的な薬物送達のための組成物を含む。これらの薬学的送達用の組成物は、ここに記載するさらなる成分を含んでいてよい。例えば、含水アルコール媒介物は、共溶媒、浸透促進剤、緩衝剤、保存料、柔軟剤、湿潤剤、および/または、ゲル化剤をさらに含んでいてよい。このような組成物は、含水アルコール媒介物をゲル化する方法を含む、種々の方法で作製されてもよい。これらの組成物は、例えば、経粘膜塗布のために用いられてもよい。経粘膜的な適用には、鼻孔組織、舌下組織、および口腔組織への適用が含まれる。
【0058】
さらなる一態様では、本発明は、ここに記載される薬学的な薬物送達のための組成物の製造方法を含む。一実施形態では、この製造方法は、均一なゲルを得るために成分を混合することを含む。ここで、ゲルのpHは、約pH4.5と約pH8.5の間である(典型的な成分には、治療学的に効果のある量のロフェキシジン、またはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体、水を含む主要媒介物、少なくとも1つの短鎖アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、薬学的に許容され得るグリコール、任意で脂肪性透過促進剤が含まれるが、これらに限定されない)。これらの方法は、本明細書に記載するさらなる成分を添加することを含んでいてもよく、例えば、含水アルコール媒介物は、共溶媒、浸透促進剤、緩衝液、保存料、柔軟剤、湿潤剤、および/または、ゲル化剤をさらに含んでいてもよい。本方法は、ロフェキシジンの経粘膜送達に適したゲルを提供する。さらに、製造方法は、薬学的組成物を、1つまたは複数の容器(例えば、単位用量の容器(例えば、ライナーをさらに含む柔軟な膜状の小包)または複数回用量の容器)の中に分配することを含んでいてもよい。
【0059】
他の一態様では、本発明は、ロフェキシジンの投与を必要とするヒト被験体に、ロフェキシジンを投与する方法を含む。例えば、本方法は、本発明の組成物を、ロフェキシジンの薬学的な経粘膜送達のために提供することを含んでいてよい。本発明の組成物の用量は、例えば、鼻孔組織、舌下組織、および口腔組織に適用されるゲルであってよい。さらに、本発明の組成物の用量は、単回投与または分割投与で適用され得る。一実施形態では、組成物は、1日量または複数日量のゲルとして、被験体の鼻粘膜、舌下粘膜、または口腔粘膜に対して、ロフェキシジンが十分に血流内の治療濃度に達する量で適用される。本発明の組成物のさらなる投与形態は、当業者が、本明細書に記載する教示に照らして決定することが可能である。本発明の組成物は、種々の手段を用いて、粘膜の細胞膜に適用される。これらの手段には、ポンプパック、ブラシ、綿棒、指、手、または他の塗布具が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の製造方法は、本発明の組成物を適切な容器の中に分配することを含む。本発明の組成物は、例えば、単位用量の容器または複数回用量の容器に梱包されていてもよい。容器は、通常、組成物を含有する内面を形成している。任意の好適な容器を用いてもよい。容器の内面は、ライナーを含んでいてもよいし、または、容器の表面を保護するため、および/または、容器の内面と接触する組成物から生じ得る悪影響から、組成物を保護するために、処理が施されていてもよい。典型的なライナーまたはコーティング材には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、熱可塑性エラストマー、シリコンエラストマー、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、弾性ポリ塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム、および、これらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ライナーまたはコーティング材は、一般に、本組成物および典型的には本組成物の個々の成分に対して、実質的に不浸透性である。
【0061】
多数の種類の容器が、当該技術分野では公知である。例えば、破裂可能なバリアを備える小包(例えば、米国特許第3,913,789号、第4,759,472号、第4,872,556号、第4,890,744号、第5,131,760号、および第6,379,069号を参照)、使い捨ての小包(例えば、米国特許第6,228,375号および第6,360,916号を参照)、蛇行性経路シール(例えば、米国特許第2,707,581号、第4,491,245、第5,018,646号、および第5,839,609号を参照)、および、種々の密閉弁(例えば、米国特許第3,184,121号、第3,278,085号、第3,635,376号、第4,328,912号、第5,529,224号、および第6,244,468号を参照)である。単位用量容器の一例としては、ポリエチレンライナーを有する柔軟な膜状の小包が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物用の容器/送達システムはまた、例えば、定量または可変量の適用を提供する複数回用量の容器を含んでいてもよい。複数回用量の容器には、用量計量式スプレー、エネルギー蓄積型の用量計量式ポンプ、または手動の用量計量式ポンプが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、容器/送達システムは、本発明の組成物の定量を送達して、被験体の鼻粘膜、舌下粘膜、および口腔粘膜に塗布するために用いられる。用量計量式容器は、例えば、適用される用量の量および/または不均一性を正確に制御する作動装置ノズルを含んでいてよもい。送達システムは、例えば、ポンプパックによって、または、推進剤(例えば炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、窒素、亜酸化窒素、または二酸化炭素)の使用によって、推進され得る。好ましい推進剤は、ヒドロフルオロカーボン族(例えばヒドロフルオロアルカン)の推進剤を含む。これは、クロロフルオロカーボンよりも環境にやさしいと考えられている。一例であるヒドロフルオロアルカンは、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134(a))、1,1,1,2,3,3,3,−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227)、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143(a))、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、および、これらの混合物を含むが、これらに限定されない。特に好ましいのは、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134(a))、1,1,1,2,3,3,3,−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227)、およびこれらの混合物である。多くの薬学的に許容され得る推進剤が、既に開示されており、これらは、本発明を実施する際に、本明細書に記載する教示に照らして、用いることが可能である。本送達システムは、用量均一性を提供する必要がある。好ましい一実施形態では、ロフェキシジンの劣化を妨げるために、極めて良好な遮断性を有するエアレスパッケージ、例えば、用量計量式エアレスポンプが用いられる。用量計量式エアレスポンプでは、ロフェキシジンを含む組成物は、折り畳み可能なアルミホイルに梱包されている。このようなポンプからの正確な投与が、用量の再現可能性を保証する。
【0063】
本発明は、本発明の組成物の投与を必要としている被験体に、本発明の組成物を投与する方法をさらに含む。ロフェキシジンを含む本発明の組成物は、例えば、従来は経口量のロフェキシジンによって治療されていた種々の状態および/または病状の治療に用いることが可能である。
【0064】
本発明のロフェキシジン組成物は、治療を必要とする被験体が、自身で適用してもよいし、または、介護者もしくは保健医療の専門家が適用してもよい。
【0065】
本発明はまた、アヘン剤の禁断症状、片頭痛、神経因性疼痛、および他の、ロフェキシジンに関連する治療指標の迅速な軽減を提供する治療方法を提供する。本方法は、ロフェキシジンの投与を必要とする被験体に、薬学的に有効な量のロフェキシジンを、鼻腔投与、口腔投与および/または舌下投与を介して、投与することを含む。
【0066】
より詳細にいうと、本発明は、ロフェキシジンの経粘膜投与に関する。「ロフェキシジン」とは、化合物:2−[l−(2,6ジクロロフェノキシ)エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールを指し、次の化学式を有している。
【0067】
【化1】

【0068】
本発明では、ロフェキシジンは、遊離塩基の形態または任意の薬学的に許容され得る塩として存在可能である。薬学的に許容され得る塩とは、様々な有機イオンおよび無機イオンから誘導された、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩を指す。有機イオンおよび無機イオンは、当該技術分野では公知であり、ほんの一例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシラート、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などを含む。
【0069】
本発明の目的には、ロフェキシジン塩酸塩が好ましい。しかし、他にも、ロフェキシジン塩酸塩の薬理学的に許容され得る構成成分が利用可能である。
【0070】
本明細書で用いられる場合は、用語「ロフェキシジン」は、当該化合物の遊離塩基の形態、および、その薬理学的に許容され得る酸付加塩を含む。
【0071】
本発明に係る使用のためのロフェキシジンおよびロフェキシジン塩は、遊離アミンの形態(つまり−NH−)、または、より好ましくは薬学的に許容され得る塩の形態であってよい。一実施形態では、この塩は、生理学的に許容され得る有機酸または無機酸との酸付加塩である。好適な酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびスルホン酸が含まれる。他の一実施形態では、塩は、塩酸との酸付加塩である。塩の生成手順は、当技術分野で慣行のものである。
【0072】
一実施形態では、本発明における使用のためのロフェキシジンは、鏡像異性的に純粋である(例えば、上記ロフェキシジンは、少なくとも90重量%の鏡像体過剰率を有し、他の一実施形態では、少なくとも95重量%の鏡像体過剰率を有し、さらに他の一実施形態では、少なくとも99重量%の鏡像体過剰率を有している)。一実施形態では、本発明における使用のためのロフェキシジン鏡像異性体は、(−)−ロフェキシジンである。他の一実施形態では、ロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩は、(−)−ロフェキシジンから形成された塩である。鏡像異性的に純粋なロフェキシジンおよびその薬学的に許容され得る塩は、当該技術分野の文献に記載されるような(例えば、J. Med. Chem., 1986年, 29, 991 183-1188頁に記載されるような)従来の手順によって調製され得る。
【0073】
ロフェキシジンを鼻腔送達、舌下送達、および/または、口腔送達によって経粘膜投与して、ロフェキシジンの適切な血漿濃度を維持することによって、ロフェキシジンの治療効果を、アヘン中毒症候の軽減、片頭痛の軽減、または神経因性疼痛の治療を十分に生じさせる程度に実現可能である。投与されるロフェキシジンの量は、十分に治療効果を生じさせるが、実質的に容認し得ない不都合な副作用を生じさせない程度の少ない量である。本明細書で用いられる場合は、「実質的に容認し得ない不都合な副作用」には、送達システムまたはα2受容体アゴニストのいずれかによって引き起こされる、ユーザの健康と両立し得ない作用、または、非常に不快であるために本組成物を継続して使用する意欲を阻害する作用が含まれる。このような作用には、例えば、血圧低下、吐き気、嘔吐、視力障害、および発汗が含まれる。
【0074】
一実施形態では、「ロフェキシジンの解毒量」は、被験体の体内の有効な数のオピオイド受容体をほぼ飽和させるか、ほぼ結合させるか、またはほぼ阻害する、有効な量のロフェキシジンを含む。有効な数のオピオイド受容体を「ほぼ飽和させる」および「ほぼ阻害する」という表現は、被験体内のオピオイド受容体の約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上を飽和させること、または阻害することを含む。
【0075】
一態様では、解毒量は、約0.5mg〜約10mgのロフェキシジンを含む。ロフェキシジンの用量は、約1mg〜約8mg、または約2mg〜約6mg、または約3mg〜約5mg、または約1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、または10mgのロフェキシジンであってもよい。
【0076】
用語「オピオイド」は、特別なオピオイド受容体と結合し、これらの受容体においてアゴニスト(活性化)作用またはアンタゴニスト(不活性化)作用を有する化合物または組成物の代謝物質を含む、化合物または組成物を指す。当該化合物または組成物には、アゴニストモルヒネおよびその代謝産物であるモルヒネ−6−グルクロニドと、アンタゴニストナルトレキソンおよびその代謝産物とを含むオピオイドアルカロイドや、エンケファリン、ダイノルフィン、およびエンドルフィを含むオピオイドペプチドが挙げられる。オピオイドは、オピオイド塩基およびオピオイドの薬学的に許容され得る塩から選択される一員として存在可能である。オピオイドの薬学的に許容され得る塩は、無機塩類または有機塩類を包含する。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、ムコ酸塩、琥珀酸塩、n−酸化物、硫酸塩、マロネート、酢酸塩、二塩基リン酸塩、一塩基リン酸塩、酢酸塩三水化物、ビ(ヘプタフルオロ酢酸)、マレイン酸塩、ビ(メチルカルバミン酸塩)、ビ(ペンタフルオロプロピオネート)、メシラート、ビ(ピリジン−3−カルボン酸塩)、ビ(トリフルオロ酢酸塩)、重酒石酸塩,クロロ水和物(chlorhydrate)、フマル酸塩、および硫酸塩ペンタ水和物が含まれる。用語「アヘン剤」は、アヘンまたは関連する類似体に由来する薬物を指す。
【0077】
全般的には、他の送達方法もよく知られているが、口腔粘膜、および/または、舌下粘膜を介した口腔粘膜吸収型の送達、および、鼻腔送達システムは、特に有効な送達経路である。これらの送達システムの利点の一つは、これらが非侵襲性である点である。
【0078】
さらに、経粘膜送達は、概して、より良好な患者の薬剤服用順守を有し、感染の危険性が低く、注射や移植といった侵襲的手技よりも低コストである。これはまた、効果発現時間、すなわち、投与から治療学的効果までの時間が、経口送達よりも著しく短い。口腔粘膜、鼻粘膜、および舌下粘膜を介して吸収された薬物はまた、薬物が胃腸管および肝臓内で代謝される初回通過代謝を回避する。同様に、これらの経路を介して吸収された薬物は、近位消化管運動症候群(proximal gastrointestinal motility syndromes)の患者によく見られる胃内容物の排出時間の変動を回避し、得られる治療域の血中濃度をより正確に予測することが可能である。このような経粘膜送達システムは、単純であり、このような投与形態は、介護人または患者が、不快感を最小限に抑えて投与することが可能である。
【0079】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、有効な量の、少なくとも1つの鎮静剤をさらに含んでいてもよい。他の一実施形態では、鎮静剤は、抗精神病薬、非定型抗精神病薬、アルピデム、アモバルビタール,抗ヒスタミン剤、バルビツル酸塩、ベンゾジアゼピン、抱水クロラール、クロラゼペート、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロニジン、ジアゼパム、ジエチルエーテル、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エスクロルビノール、フルニトラゼパム、ガンマ−ヒドロキシ酪酸塩、グルテチミド、薬草系鎮静剤、イミダゾピリジン、カバ、ロラゼパム、メプロバメート、メタカロン、三塩化メチル、メチプリロン、オランザピン、フェノバルビタール(Phenabarbitol)、ペントバルビタール、プロメタジン、ピラゾロピリミジン、セロクエル、セコバルビタール、チアガビン、トランキラー(tranquilers)、ザレプロン、ゾルピデム、これらの薬学的に許容され得る塩もしくは錯体、これらの組合せ、および、これらを含む薬学的組成物から構成される群から選択される。
【0080】
本方法は、ロフェキシジン治療の前、または該治療と同時に、被験体に、有効な量の少なくとも1つのオピオイドを投与することをさらに含む。
【0081】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、有効な量の少なくとも1つのオピオイドをさらに含む。他の一実施形態では、オピオイドは、アヘン、モルヒネ、ヘロイン,ペチジン、メタドン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、オキシコドン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、またはトラマドール、医薬製剤、薬学的な塩、またはこれらの混合物もしくは組合せから構成される群から選択される。
【0082】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、有効な量の少なくとも1つのオピオイドアンタゴニストをさらに含む。他の一実施形態では、オピオイドアンタゴニストは、7−ベンジリデンナルトレキソン、ベータ−フナルトレキサミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロルナルトレキサミン、クロシンナモックス、結合組織−活性化ペプチド、シクラゾシン、ジプレノルフィン、ICI154129、レバロルファン、メプタジノール、メチルナルトレキソン、N,N−ジアリル−チロシル−アルファ−アミノイソ酪酸−フェニルアラニル−ロイシン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、もしくは、ナルトリンドール、または、これらの混合物もしくは組合せから構成される群から選択される。
【0083】
一実施形態では、本発明は、被験体のアヘン中毒を治療する方法を提供する。本方法は、アヘン中毒の被験体に、1治療日で、有効な量のロフェキシジンを経粘膜的に投与することを含む。本方法は、被験体に、少なくとも1治療日で、有効な量のアヘン剤を投与することを含む。本方法は、被験体に、少なくとも1治療日で、有効な量の鎮静剤を投与することを含む。一実施形態では、治療日数は、約2日〜約20日の範囲である。
【0084】
本発明に係る組成物は、例えば、噴霧剤、滴下剤、懸濁液、ゲル、軟膏、クリーム、または粉末として投与することが可能である。
【0085】
組成物の投与には、本発明の組成物を収容した加圧容器、加圧ストリップ、またはスポイトの使用を含んでいてもよい。
【0086】
本発明に係る組成物は、例えば、固体の舌下または口腔粘膜吸収型送達システムとして、投与され得る。固体の舌下または頬側経粘膜送達システムの例には、チューイングガム、膏薬、薬用ドロップ、錠剤、トローチ、芳香錠(pastille)、小袋(sachet)、および迅速に崩壊する錠剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ロフェキシジンはまた、従来から用いられている、例えば、天然ゴム、メチルセルロースおよび誘導体、アクリルポリマー(カルボポール)、並びにビニールポリマー(ポリビニルピロリドン)といった系を介して、粘性の主成分に組み込まれてもよい。
【0088】
本組成物には、他にも、当該技術分野において公知の多くの賦形剤を添加することが可能である。これらの賦形剤の例には、保存料、界面活性剤、共溶媒、粘着剤、酸化防止剤、緩衝液、粘度増強剤、並びに、pHおよびオスモル濃度を調節するための薬剤が挙げられる。
【0089】
既に説明したように、本発明と共に用いられ得る上記固形の経粘膜送達システムは、粉末、チューイングガム、膏薬、薬用ドロップ、錠剤、トローチ、芳香錠、小袋、および迅速に崩壊する錠剤が含む形状をしていてよいが、これらに限定されない。
【0090】
一実施形態では、製剤は、経粘膜送達に適した、カプセル、錠剤、カプレット、丸薬、粉末、顆粒、または懸濁液として提供され得る。これらは、従来の手段によって、薬学的に許容され得る賦形剤を用いて調製されたものであり、例えば、乳糖、マンニトール、コーンスターチ、またはジャガイモでん粉といった従来の添加剤または充填剤を用いて、結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチ(プレゼラチン化されたものを含む)、またはゼラチンといった結合剤または接着剤を用いて、コーンスターチ、ジャガイモでん粉、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースといった崩壊剤もしくは錠剤分解物質を用いて、または、タルクまたはステアリン酸マグネシウムといった潤滑剤または加湿剤を用いて、調製されたものである。錠剤は、当該技術分野において公知の方法を含む方法によって被覆されていてもよい。本製剤は、即時放出性の形態または徐放性の形態持続放出性の形態もしくは制御放出性の形態として提供可能である。本製剤はまた、例えば、柄の上に固形の薬物マトリクスが設置されたものとして提供可能である。他の一実施形態では、本製剤は、経口投与用の液体製剤として提供され、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をしていてもよい。あるいは、本製剤は、使用前に水または他の好適な媒介物と共に製剤を構成する、乾燥製品として提供可能である。このような液体製剤は、従来の手段によって、薬学的に許容され得る添加剤によって調製され得る。当該添加剤の例としては、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、または水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒介物(例えばメチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩、またはソルビン酸)が挙げられる。
【0091】
経粘膜投与のために、本化合物を、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプロパノール、エタノール、オレイン酸、N−メチルピロリドンなどといった浸透促進剤と組み合わせてもよい。浸透促進剤は、本化合物に対する粘膜の透過率を増大させ、化合物が粘膜を通って、血流の中に浸透することを可能にする。この化合物/促進剤の組成物を、さらに、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン/酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンなどといった重合物質と組み合わせて、ゲル状の組成物を提供することも可能である。このゲル状の組成物は、塩化メチレンといった溶媒中で溶解可能であり、所望の粘度まで蒸発させられた後、鼻粘膜、舌下粘膜、または口腔粘膜に適用され得る。
【0092】
本組成物は、例えば、見た目に美しい品質、改善された味などといった所望の特性、または、より患者に投与しやすい投薬形態を提供するために、さらなる薬剤成分を含んでいてよい。所望の成分の例には、浸透促進剤、顔料、着香料、溶媒および共溶媒、コーティング剤、直接圧縮賦形剤、錠剤分解物質、流動促進剤、潤滑剤、つや出し剤、懸濁化剤、甘味剤、抗接着剤、結合剤、および希釈剤が含まれるが、これらに限定されない。この薬剤成分には、保存料、乳化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、等張化剤、粘度増強剤、およびこれらの組合せも含まれる。有効な添加剤の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレンジ味、サクランボ味、ミント味、および苺味、並びに通常利用される他の成分が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本組成物の成分は、ロフェキシジンを舌下または頬側の口腔粘膜組織まで送達するために、口で溶ける、任意の好適な投与形態に調剤することが可能である。例えば、好適な製剤には、薬用ドロップ、棒付きキャンディ、トローチ、チュアブルガム、固形キャンディ、粒状固体、チュアブル錠剤もしくは丸薬、口で崩壊する錠剤もしくは丸薬、口で溶ける錠剤、および、口で溶ける丸薬といった、固形製剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
このような製剤は、当該技術分野において公知の製剤手技を用いて調製可能である。例えば、固形で、口で溶ける製剤を生成する幾つかの方法があり、これらの方法には、湿式造粒法、相互溶解法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法などが含まれるが、これらに限定されない。特に、錠剤や薬用ドロップなどの固形製剤は、このような、湿式造粒法、相互溶解法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法などを含む技術を用いて調製可能である。
【0095】
湿式造粒法のプロセスは、幾つかのステップとして概略を説明することが可能である。これらのステップは、溶媒の存在下において、組成物の成分を計量および混合するステップ、上記混合物を乾燥させて固形にするステップ、および、上記固形を適切な寸法に粉砕するステップである。
【0096】
湿式造粒法の計量および混合ステップでは、適切な量の、口で溶ける薬剤、ロフェキシジン、および溶媒を、十分に混合させる。これらの成分の混合を促進するために、さらなる成分を添加してもよい。用いられる溶媒は、ロフェキシジンおよび口で溶ける薬剤の両方を溶解する必要がある。このステップの結果、ロフェキシジンと口で溶ける薬剤とが分子レベルで混合された、細かく混合された混合物となる。この混合物を、その後、乾燥させて、一般には粉末状に挽いて、固形のユニットの中に圧縮させる。混合物、溶媒、および装置に応じて、湿式造粒混合物を乾燥させる幾つかの方法がある。圧縮のための適切な粒径分布を確保するために、粉砕および篩い分けステップが用いられることが多い。
【0097】
従って、ロフェキシジンは、口腔内で崩壊した後に、放出され、舌下または頬側の口腔粘膜組織に送達され、結果的に、効果的な吸収速度になる。
【0098】
上述のように、本発明と共に用いられる液体経粘膜送達システムは、種々の形態を取り得る。これらの形態には、水溶液、非水溶液、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。水溶液には、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散液、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョン、およびこれらの混合物が含まれる。非水溶液には、例えば、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散液、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0099】
本発明では、組成物のpHは、約2.0〜約10.0に維持されていてよい。約2.0よりも低いpH、または約10.0よりも高いpHを有する組成物は、受容体の鼻部、舌下部、および口腔内の粘膜を刺激する危険性を増大させ得る。さらに、組成物のpHが、約3.0〜約7.0に維持されていることが好ましい。有効期限を延長するために、本組成物に、保存料を添加してもよい。本組成物に用いることが可能な好適な保存料には、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、および塩化ベンザルコニウムが挙げられるが、塩化ベンザルコニウムが用いられることが好ましい。通常は、保存料は、組成物において最大約2重量%の濃度で存在している。しかし、保存料の正確な濃度は、使用目的に応じて変動し、当業者が容易に確定可能である。
【0100】
本発明は、上述の、神経因性疼痛、片頭痛、アヘン剤禁断症状、および他の、ロフェキシジンに関連する治療指標を治療するために、哺乳動物に、鼻粘膜、舌下粘膜、または口腔粘膜の細胞膜を介して投与される組成物を提供する。
【0101】
「〜を必要とする被験体」という表現は、アヘン中毒の禁断症状、片頭痛、神経因性疼痛、またはロフェキシジンを用いて治療可能な状態を軽減する必要があるあらゆる動物を指す。好ましくは、この被験体は、哺乳動物である。より好ましくは、この被験体はヒトである。
【0102】
本発明はまた、上述した、1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体または賦形剤と関連付けられた、1つまたは複数の本発明の化合物を、有効成分として含有する薬学的組成物を含む。用いられる賦形剤は、通常、被験体であるヒトまたは他の哺乳動物への投与に適した賦形剤である。本発明の組成物を作製する際に、有効成分は、通常、賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、賦形剤は、有効成分の媒介物、担体、または溶剤として機能する、固形材料、半固形材料、または液体材料であってよい。
【0103】
本発明の組成物は、当該技術分野において公知の手技を用いて患者に投与した後に、有効成分の即時放出性および/または持続放出性をもたらすように、作製可能である。
【0104】
以下の実施例は、本発明を説明するために記載するものであり、決して、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0105】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために記載するものであって、当業者が本発明を実施することを助けるものである。これらの実施例は、いかなる方法によっても、決して、本発明の範囲を限定するものと見なされるものではない。
【0106】
実施例1.経粘膜錠剤製剤
一実施形態において、本発明は、ロフェキシジン濃度が0.1mgである、全錠剤重量が約100mgの舌下錠/口腔錠を提供する。ここで、本錠剤は、錠剤化を助長するために、薬物と、シリカなどの吸収剤/吸着剤微粒子担体と、マンニトールなどの希釈剤と、デンプングリコール酸ナトリウムなどの錠剤分解物質と、フマル酸ステアリルナトリウムなどの潤滑剤とを含む。このような実施例では、ロフェキシジンは、ポリエチレングリコール400(PEG400)にて溶解されている。結果として生じたロフェキシジンの混合物を、残りの成分に加えて、直接圧縮錠剤化における使用に適した混合粉体に加工する。記載された本実施例の製剤に係る典型的な製剤を、以下の表1に記載する。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例2:経粘膜散布液
本組成物は、ロフェキシジン塩酸塩:200.0mg、およびリン酸緩衝液(0.05M,pH4.4):200.0mLを含む。ロフェキシジンを、このリン酸緩衝液に溶解し、この溶液のpHは、必要に応じて、4.4に再調製する。この溶液を、各使用時に100μLの噴霧剤を送達するように設計した投与具の中に入れる。1回の噴霧で、全0.1mgのロフェキシジン塩酸塩が送達される。
【0109】
実施例3:経粘膜ゲル製剤
本組成物は、ロフェキシジン塩酸塩:1.0g、メトセル(Methocel):3.0g、および、酢酸緩衝液(0.05M,pH4〜6)100.0gを含む。約70mLの酢酸緩衝液を、80℃に加熱し、メトセルを、攪拌しながら、該酢酸緩衝液中に分散させる。ロフェキシジン塩酸塩を、80℃の30mLの酢酸緩衝液に溶解させ、この溶液を、メトセル分散液と混合する。結果として生じる混合物を、室温にて3時間放置する。このゲルを、精巧な開口部を備えた軟膏チューブの中に入れ、指で、スポイトで、または綿棒状塗布具で、経粘膜的に適用する。さらに、このゲルを、絞り出して塗って、乾固させて、経粘膜送達に適したフィルムを作製してもよい。
【0110】
実施例4:舌下腔からのロフェキシジンのin vivo吸収
実験技術
これらの実験は、ロフェキシジンをウサギの舌下組織に経粘膜投与した後の、ロフェキシジンの生体利用効率を測定し、ロフェキシジンを静脈内投与した後の生体利用効率と比較するものである。
【0111】
ウサギにおける、ロフェキシジンの経粘膜吸収を、in vivo技術を用いて測定した。リドカイン局所麻酔を導入した後に、ウサギの周縁耳動脈内にカテーテルを設置して、血液試料を採取した。静脈内投与では、ウサギの周縁耳静脈内にカテーテルを設置し、ロフェキシジン塩酸塩水溶液(0.1mL)を投与した(滅菌薬液を、濾過(0.22μmの二重フィルタ)によって調製した)。用量1mg/kgのロフェキシジンを、周縁耳静脈カニューレの中に注入し、その後、カニューレの開存性を維持するために、0.1mLの、10%(v/v)のヘパリン/生理食塩水で流した。
【0112】
舌下投与では、ロフェキシジン製剤のロフェキシジンの用量(1mg/kg,0.1mL)を、ウサギの舌下粘膜に適用した。
【0113】
一定分量の1mLの血液試料を、所定の時点で採取し、事前にヘパリン化されたチューブの中に採取し、直ちに氷の上に設置した。遠心分離を3000rpmで10分間行うことによって、血漿を分離させ、ポリプロピレンチューブの中に設置し、分析を行うまで−20℃で冷凍した。
【0114】
舌下投与された薬物の生体利用効率を、舌下送達経路と静脈内送達経路との血漿中の薬物濃度を比較することによって計算し、静脈内生体利用効率の百分率として示した。
【0115】
経粘膜剤形の調剤
本実験において、ウサギの舌下領域の中に注入した製剤は、次の組成物を有していた。
【0116】
ロフェキシジン塩酸塩 6000mg
イソプロパノール 2mL
リン酸緩衝液(0.05M,pH6)
ロフェキシジンは、イソプロパノールおよびリン酸緩衝液にて溶解され、最大200mLの量となる。
【0117】
試料調製
−ロフェキシジンを、メタノール:水(50:50)混合物に溶解させて、(1000ng/mL)の濃度を得ることによって、内部標準(IS)溶液を調製した。血漿試料(50μL)を、IS溶液(10μL)に混ぜた後、渦流混合法を1分間行った。この混合物に、アセトニトリル(50μL)を混ぜて、血漿蛋白を沈殿させ、さらに1分間、渦を発生させた。遠心分離法を10,000rpmにて10分間行った後、Ultra Performance Liquid Chromatography Mass Spectroscopy (UPLC/MS)システムによる分析の準備のために、上澄みをHPLCバイアルの中に採取した。
【0118】
ロフェキシジンの検定方法
全ての分析操作法を、Waters Acquity(登録商標) Ultra UPLC/MSを用いて行った。Acquity UPLC BEH Shield RP 18 (2.1x100mm)カラム(Waters社)を用いて、40°Cにて化学成分を分離させた。流速は、5mM酢酸アンモニウム(pH4)およびアセトニトリル(90:10)から成る(A)と、アセトニトリルおよび5mMの酢酸アンモニウム(pH4)(90:10)から成る(B)の、2つの移動相の0.3mL/分であった。正のエレクトロスプレーイオン化(ESI)モードにて、質量分析計を作動させた。キャピラリー電圧を0.6kVに保持し、コーン電圧を35Vに保持した。供給元の温度は100℃に設定し、脱溶媒和温度は350℃に設定した。コーンガス(50L/h)および脱溶媒和ガス(700L/h)には、窒素を用いた。マスクロマトグラムデータおよび質量スペクトルデータを得て、MassLynxソフトウェア(Waters社)によって、処理した。
【0119】
結論
ロフェキシジンの薬物動態プロファイルを、無傷の動物において、180分間以上評価した。ウサギに舌下投薬した結果生じる、時間的関係に対するロフェキシジンの平均血漿濃度プロファイルを、静脈内投与と比較したものを、図1に示した。
【0120】
舌下経粘膜投薬経路の場合の薬物動態パラメータを、表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
時間曲線に対する血漿濃度下の領域を比較すると(図1参照)、ロフェキシジンが、舌下経路を介した経粘膜投与の後に、迅速かつ完全に吸収されていること、および、ピーク血漿濃度が、経粘膜投与の、およそ10分後に生じることが分かる。これらの結果は、経粘膜経路の投与が、投与量の約80%という極めて良好な生体利用効率で迅速な応答をもたらしていることを示している。
【0123】
本発明を、好ましい1つの実施形態を有するものとして説明してきたが、本発明は、図示および説明された特徴に限定されるものではないことを理解されたい。反対に、本発明は、本発明の一般的な原理に従ったさらなる変形、利用、および/または、適応が可能であり、従って、本発明は、このような、本開示内容から逸脱したものを、本発明が属する技術分野において公知のまたは習慣的に行われる範囲のものとして、および、上述の主な特徴に適合され得るものとして含み、上記の本開示内容から逸脱したものも、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0124】
本発明の新規の教示から逸脱することなく、本明細書に記載した好ましい実施形態を変形または変更してもよいことは、当業者には、明らかであろう。このような全ての変形および変更は、明細書および特許請求の範囲の中に組み込まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ウサギに1mg/kgの単回用量を、舌下投与および静脈内投与した後の、ロフェキシジンの平均血漿中濃度を示す図である(n=3)。全ての値は、平均±STDVを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の全身性の循環に対してロフェキシジンを迅速かつ確実に送達する方法であり、
このような治療を必要とする患者に対して、治療学的に有効な量のロフェキシジンまたはロフェキシジンの薬学的に許容され得る遊離塩基、塩、エステル、アミドもしくはプロドラッグを、経粘膜投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
上記薬学的組成物は、経粘膜薬物投与に適した担体と、必要に応じて、透過促進剤とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記薬学的組成物を、鼻腔送達経路、舌下送達経路、経口腔送達経路、および経直腸送達経路からなる群から選択される送達経路を介して経粘膜投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記投与形態は、噴霧剤、滴下剤、ゲル、錠剤、トローチ、薬用ドロップ、チューイングガム、および膏薬からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ロフェキシジンは、約0.1mgと約5mgとの間の量にて、1日に1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記経粘膜製剤は、錠剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記経粘膜製剤は、ゲルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記経粘膜製剤は、接着性のフィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記薬学的組成物は、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、乳酸またはグリコール酸の脂肪酸エステル、グリセロールトリエステル、グリセロールジエステル、グリセロールモノエステル、トリアセチン、短鎖アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択された透過促進剤をさらに含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
上記ロフェキシジンは、製剤の重量に対して、約5〜80%の間の量のアルカノール、約1〜30%の間の量のポリアルコール、および約1〜30%の間の量の透過促進剤をさらに含む製剤中に存在している、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
上記製剤は、少なくとも1つの、ゲル化剤、中和剤、緩衝剤、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、酸化防止剤、柔軟剤、または緩衝液をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
上記製剤は、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、エマルジョン、または懸濁液の形態において提供されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記製剤を用量計量式装置から分配することによって、ロフェキシジンの投与を正確に制御する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
上記用量計量式装置は、被験体が自ら投与するために、正確な量のロフェキシジンを、上記被験体の経粘膜表面に分配する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ロフェキシジン、上記製剤の約5〜80重量%の量のアルカノール、約1〜30重量%の量のポリアルコール、および約1〜30重量%の量の透過促進剤を含有している経粘膜ゲル製剤を投与する、方法。
【請求項16】
ロフェキシジンまたはロフェキシジンの薬学的に許容され得る遊離塩基、塩、エステル、アミドもしくはプロドラッグ、および薬学的に許容され得る担体を含む薬学的組成物であって、
上記組成物は、経粘膜投与に適した形態にて提供されている、薬学的組成物。
【請求項17】
上記薬学的に許容され得る担体は、水溶液、非水溶液、および水溶液と非水溶液との混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
上記薬学的に許容され得る担体は、溶液、ゲル、懸濁液、リポソーム分散液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、またはこれらの組合せをさらに含有している、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
上記薬学的に許容され得る担体は、粉末処方物である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
上記薬学的に許容され得る担体は、単純な粉末混合物、粉末ミクロスフェア、被覆粉末ミクロスフェア、リポソーム分散液およびこれらの組合せからなる群から選択された1つの粉末処方物である、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
舌下または口腔経粘膜の固形投与形態にて提供されている、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
上記舌下または口腔経粘膜の固形投与形態は、錠剤、チューイングガム、膏薬、薬用ドロップ、トローチ、芳香錠、小袋、および迅速に崩壊する錠剤からなる群から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
上記組成物は、約0.1mg〜約5mgの用量のロフェキシジンにて、ロフェキシジンまたはロフェキシジンの薬学的に許容され得る塩を含有している、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
ロフェキシジンの上記濃度は、上記組成物の乾燥様式での約0.01重量%〜約90重量%である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
上記組成物は、少なくとも1つの、着香料、人工着色料、甘味料、潤滑剤、崩壊剤、透過促進剤、潤滑剤、希釈剤、塩基または緩衝剤をさらに含有している、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
上記担体は、加水分解性ポリマーである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
上記ロフェキシジンは、鏡像異性的に純粋である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
上記ロフェキシジンは、(−)−ロフェキシジンである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
上記ロフェキシジンは、ロフェキシジン塩酸塩である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
さらなる活性剤を含有している、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
上記さらなる活性剤は、オピオイド鎮痛薬である、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
上記さらなる活性剤は、オピオイドアンタゴニストである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
上記オピオイドアンタゴニストは、7−ベンジリデンナルトレキソン、β−フナルトレキサミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロルナルトレキサミン、クロシンナモックス、結合組織活性化ペプチド、シクラゾシン、ジプレノルフィン、ICI154129、レバロルファン、メプタジノール、メチルナルトレキソン、N5N−ジアリル−チロシル−α−アミノイソ酪酸−フェニルアラニル−ロイシン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、もしくはナルトリンドール、またはこれらの混合物もしくは組合せを包含している、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
アヘン剤禁断症状、片頭痛、神経因性疼痛、およびロフェキシジンに関連する他の治療指標の治療方法であり、
治療学的に有効な量の、請求項16に記載の薬学的組成物を、このような治療を必要とする被験体に対して経粘膜投与することによって治療する工程を含む、治療方法。
【請求項35】
上記薬学的組成物は、鼻腔送達経路、舌下送達経路、または口腔送達経路を介して経粘膜投与される、請求項34に記載の治療方法。
【請求項36】
正確な量の液状薬剤を分配するためのシステムであり、
活性剤を含有している上記薬剤を保持するための貯蔵ユニットと、
ユーザが作動すると、所定量の上記薬剤を放出する分配ユニットとを備え、
上記所定量の活性剤は、所望される場合に放出され、
上記薬剤は、ロフェキシジンである、システム。
【請求項37】
上記分配ユニットは、作動されると、上記所定量の上記薬剤を分配する圧力操作式ポンプを備えている、請求項36に記載のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2011−515485(P2011−515485A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502001(P2011−502001)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038172
【国際公開番号】WO2009/120735
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510098995)ユーエス ワールドメッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】US WORLDMEDS LLC
【住所又は居所原語表記】4010 Dupont Circle,Suite 700,Louisville,KY 40207,United States of America
【Fターム(参考)】