説明

ロボット、ロボットシステム及びハンド装置の姿勢制御方法

【課題】ハンド装置の剛性を高めることができ、ロボットの大型化やコストの高騰を抑制する。
【解決手段】ロボットシステム100は、複数のハンド51,52と、各ハンドの一端を上下動させて、当該ハンドにおけるワーク12の把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させる上下動機構53と、ハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況毎にハンドにおけるワークの把持面を水平面に一致させたときの回転軸61の回転角度を対応付けて記憶する記憶手段と、回転軸の回転角度を検出する検出手段と、検出手段により検出された回転軸の回転角度が、当該検出されたときのハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に一致する記憶手段に記憶されたハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に対応する回転角度となるように駆動手段62により回転軸を回転させる制御を行う制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットディスプレイパネル用のガラス基板を搬送するロボット、このロボットを有するロボットシステム、このロボットシステムによるハンド装置の姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルの生産工程において、その材料を生産工程内で搬送するために、ロボットを用いた搬送設備が多く用いられる。一般に、ロボットは、カセット内に収納されたガラス基板を取り出してプロセス装置に供給したり、プロセス工程で処理が完了したガラス基板をカセットに収納する用途や、高低差のあるコンベア間を搬送する用途などに用いられることが多い。
このような用途に用いられるロボットは、垂直多関節型や円筒座標型の構造を持つものが多く、先端にハンドを有するハンド装置を搭載し、多くの場合、ガラス基板を下からハンドですくい上げて搬送する。また、ラインの生産効率を上げるため、ロボットの動作速度は、より速くすることが求められている。その一方で、大型テレビの普及などから、ガラス基板は大型化する傾向が強くなってきている。
【0003】
ところが、カセット内に水平に収納されたガラス基板の狭いすきまに、干渉することなくハンドを抜き差しするためには、ロボットは、ハンド上にガラス基板を載せた状態においても載せない状態においても、また、ロボットの動作位置に依らず、ハンドが極力水平な状態となるように姿勢を保つ必要があり、また、ロボットの動作によるハンドの振動もより小さくする必要がある。
このため、ロボットの各関節部の減速機や軸受に大型のものを採用してロボットの剛性を高くする方法が考えられるが、ロボットが大型化するとともに、コストが高くなるという問題があった。また、ハンドを剛性の高い特殊材料で形成する方法も考えられるが、材料費が高くなるため、コストが高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、ハンドが水平に保たれるように、ハンド全体をチルトさせる構造が開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開平11−25550号公報
【特許文献2】特開2001−71291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に記載の発明においては、チルト軸はハンド装置の全荷重が作用した状態でハンドのチルトを行っているため、チルト軸の出力軸に大きな慣性モーメントが加わるため、剛性が小さくなり、ハンドが振動しやすくなる問題があった。従って、この問題を解決するためには、より大きな減速機、軸受を使用せざるを得ず、上述したように、ロボットの大型化、コストの高騰といった問題を解決することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ハンド装置の剛性を高めることができ、ロボットの大型化やコストの高騰を抑制するロボット、ロボットシステム及びハンド装置の姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上下方向及び水平方向に移動して所定の場所に載置されたワークを把持して他の場所に搬送するハンド装置を備えるロボットにおいて、前記ハンド装置は、ワークを下方から把持する複数のハンドと、各ハンドの一端を上下動させて、当該ハンドにおけるワークの把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させる上下動機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロボットにおいて、前記上下動機構は、前記ハンドが回転自在に固定されるブラケットと、前記ブラケットに軸回りに回転自在に固定される回転軸と、前記回転軸を回転させる駆動手段と、前記回転軸の軸心に対して偏心した位置で軸支される偏心軸と、一端が前記ハンドの一端に回転自在に連結されるとともに、他端が前記偏心軸に回転自在に軸支され、前記偏心軸の回転により前記ハンドの一端が上下動するように連結されるリンクと、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロボットにおいて、前記駆動手段は、サーボモータであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のロボットにおいて、前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況によって各ハンドのたわみ量の差に対応づけて前記偏心軸の前記回転軸に対する偏心量を設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、ロボットシステムにおいて、請求項2〜4の何れか一項に記載のロボットと、前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況毎に前記ハンドにおけるワークの把持面を水平面に一致させたときの前記回転軸の回転角度を対応付けて記憶する記憶手段と、前記回転軸の回転角度を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記回転軸の回転角度が、当該検出されたときの前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に一致する前記記憶手段に記憶された前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に対応する回転角度となるように前記駆動手段により前記回転軸を回転させる制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のロボットシステムにより前記ハンド装置の姿勢を制御するハンド装置の姿勢制御方法において、前記検出手段により前記回転軸の回転角度を検出する検出工程と、前記検出工程により検出された前記回転軸の回転角度が、当該検出されたときの前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に一致する前記記憶手段に記憶された前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に対応する回転角度となるように前記駆動手段により前記回転軸を回転させる制御を行う制御工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、上下動機構により各ハンドの一端を上下動させて、当該ハンドにおけるワークの把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させることができる。
これにより、ハンドのたわみ・傾きを補正するための駆動源として、小さい駆動力のモータを採用することが可能となり、ハンドの軽量化とコスト低減が可能となる。
また、ハンドだけを上下動させるため、ハンド装置全体の剛性が高くなり、動作時の振動を小さくすることができる。
また、上下動機構によりハンドにおけるワークの把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させてハンドを水平にすることができるので、より狭い範囲にハンドを挿入し、ワークを周囲と干渉することなく取り出すことができる。このため、ワークが載置されたカセットピッチを狭くすることができ、設備をコンパクトにすることができる。また、設備をコンパクトにしなくとも同サイズのカセットにより多くのワークを積載することが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、駆動手段によりブラケットに軸回りに回転自在に固定される回転軸を回転させることにより、回転軸の軸心に対して偏心した位置で軸支される偏心軸も回転軸の回転に伴い回転する。そして、偏心軸の回転駆動はリンクによりハンドに伝達され、ハンドの一端が上下動する。
これにより、簡単な伝達機構でハンドの上下動を行わせることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、駆動手段としてサーボモータを使用することにより、高い応答性を実現できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、負荷の状態や構造により、たわみの状態が異なる各ハンドついて、それぞれに回転角度の補正量を変えることができるので、水平度を向上させる微調整を行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、検出手段により回転軸の回転角度を検出し、制御手段は、検出手段により検出された回転軸の回転角度が、当該検出されたときのハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に一致する記憶手段に記憶されたハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に対応する回転角度となるように駆動手段により回転軸を回転させる制御を行う。
これにより、ハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に対応させて回転軸を回転させることが出きるので、ハンドにおけるワークの積載面を容易に水平にすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、検出工程では、検出手段により回転軸の回転角度を検出する。そして、制御工程では、検出工程により検出された回転軸の回転角度が、当該検出されたときのハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に一致する記憶手段に記憶されたハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に対応する回転角度となるように駆動手段により回転軸を回転させる制御を行う。
これにより、ハンドへのワークの積載状況やハンドの動作状況に対応させて回転軸を回転させることが出きるので、ハンドにおけるワークの積載面を容易に水平にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、ロボット、ロボットシステム及びハンド装置の姿勢制御方法の最良の形態について詳細に説明する。
<ロボット及びロボットシステムの構成>
図1は、ロボットシステム100の概要を示す図である。
ロボットシステム100は、大型の薄型テレビ等に用いられる液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルを生産する際に用いられる。ディスプレイパネルの生産は、塵芥の付着による製品の品質不良を避けるため、クリーンルーム1内で行われており、これらのディスプレイパネルやその材料を生産工程内で搬送するために、クリーンルーム1内にはロボット2が配置されている。このロボット2は、多段に積み上げられたカセット11内に収納されたガラス基板12を取り出してプロセス装置に供給したり、プロセス工程で処理が完了したガラス基板12をカセット11に収納する用途や、高低差のあるコンベア間を搬送する用途等に用いられる。
【0020】
ロボットシステム100は、クリーンルーム1内で使用されるロボット2と、このロボット2の動作制御を行う制御装置4と、を備えている。
(クリーンルーム)
クリーンルーム1は、パーテーション1aにより外気との接触を遮断され、天井に設けられた一つ又は複数の送気装置13から床面に向けて層流の清浄な空気が送気される環境となっている。送気装置13は、汎用のファンフィルタユニットであり、外部から吸気した空気をフィルタに通して塵芥等を除去し、所定の基準を満たす清浄な空気をクリーンルーム1内で上方から下方に向けて送気するものである。
クリーンルーム1の床面には、当該クリーンルーム1内で発生した塵芥を引き込んでクリーンルーム1の外部に排出するための塵芥蓄積部14が設けられており、この塵芥蓄積部14の上方には塵芥蓄積部14の蓋を構成するとともに、塵芥を塵芥蓄積部14に導くグレーティング15が設けられている。
【0021】
クリーンルーム1の床面には、複数のカセット11が多段に積み重ねられ、各カセット11には、ディスプレイパネルの生産に用いるワークとしてのガラス基板12が収納されている。
クリーンルーム1には、ロボット2を挟んでカセット11と対向する位置にコンベア装置16が設けられている。コンベア装置16は、ロボット2によりカセット11から取り出されたガラス基板12をプロセス装置に搬送するものである。なお、コンベア装置16は、プロセス工程で処理が完了したガラス基板12をカセット11に収納するためにロボット2に向けて搬送する役割を担ってもよい。
なお、カセット11及びコンベア装置16は、ロボット2の動作範囲内に配置されている。
【0022】
(ロボット)
ロボット2は、クリーンルーム1の床に固定されている。
ロボット2は、床に固定されたベースフレーム21を備えており、このベースフレーム21には、上下アーム22の一端が連結されている。上下アーム22の一端はベースフレーム21に対して回動自在に連結され、ベースフレーム21に設けられた上下動モータ23により上下アーム22は、一端を支点に回動し、他端が弧状の軌跡を描くように動作する。
上下アーム22の他端には、上下アーム24の一端が連結されている。上下アーム24の一端は上下アーム22の他端に対して回動自在に連結され、上下アーム22の他端に設けられた上下動モータ25により上下アーム24は、一端を支点に回動し、他端が弧状の軌跡を描くように動作する。
【0023】
上下アーム24の他端には、旋回ベース26が上下アーム24に対して旋回自在に設けられている。この旋回ベース26は、リンク27及びリンク28の動作により、その姿勢を一定の状態に保つことができるようになっている。
旋回ベース26には、旋回フレーム29が旋回ベース26に対して回動自在に設けられており、この旋回フレーム29は、旋回ベース26に設けられた旋回モータ30により旋回ベース26上で旋回するようになっている。
旋回フレーム29には、当該旋回フレーム29の上面に水平アーム31の一端が旋回自在に設けられている。この水平アーム31の他端には、当該水平アーム31の上面に水平アーム32の一端が旋回自在に設けられている。この水平アーム32の他端には、当該水平アーム32の上面に手首フレーム33が旋回自在に設けられている。
水平アーム31,32及び手首フレーム33は、水平フレーム31の上面に設けられた水平移動モータ34により連動するように構成されている。
手首フレーム33には、上下アーム22,24及び水平アーム31,32の動作により、上下方向及び水平方向に移動して、カセット11内に収納されたガラス基板12を把持してコンベア装置16に搬送するハンド装置5が設けられている。
【0024】
(ハンド装置)
図2は、ハンド装置5の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、ハンド装置5は、ガラス基板12を下方から把持するハンドとしての複数のフォーク51,52と、フォーク51,52の一端を上下動させて、当該フォーク51,52におけるガラス基板12の把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させる上下動機構53と、を備えている。
(フォーク)
フォーク51,52は、略水平方向に延びる薄板状に形成され、フォーク51,52の上面には、所定間隔毎に複数の吸着パッド51a,52aが設けられている。すなわち、ハンド装置5がカセット11に収納されたガラス基板12の下面側からすくい上げるように移動して、吸着パッド51a,52aでガラス基板12を真空圧で吸着することにより、ガラス基板12を把持することができるようになっている。
【0025】
(上下動機構)
上下動機構53は、一端部が手首フレーム33に連結されたブラケット54を備えている。ブラケット54は長尺に形成された板状の部材であり、このブラケット54の上面には、軸受55及び軸56を介してフォーク51が回転自在に固定され、軸受57及び軸58を介してフォーク52が回転自在に固定されている。
フォーク51,52は、その長手方向がブラケット54の長手方向に直交するように固定され、フォーク51,52の一端部近傍でブラケット54に回転自在に固定されている。フォーク51は、軸56を回転軸とし、フォーク51の長手方向を回転半径として回転することができるようにブラケット54に固定されている。フォーク52は、軸58を回転軸とし、フォーク52の長手方向を回転半径として回転することができるようにブラケット54に固定されている。
【0026】
ブラケット54の側面には、ブラケット54の両端近傍に軸受59,60が設けられ、この軸受59,60に回転軸61がその軸回りに回転自在となるように軸支されている。回転軸61は、その軸線がブラケット54の長手方向に沿うように配されており、回転軸61の長手方向の中央付近には、回転軸61を軸回りに回転させる駆動手段としてのハンド傾斜補正モータ62が減速機63を介して設けられている。ハンド傾斜補正モータ62には、回転軸61の初期位置に対する回転角度を検出する検出手段としての位置検出器が内蔵されており、回転軸61の回転角度を検出してハンド傾斜補正モータ62に接続された制御装置4に出力される。ここで、ハンド傾斜補正モータ62としては、サーボモータ等が用いられる。
回転軸61における両端近傍には、回転軸61の軸心に対して偏心した位置で当該回転軸61により軸支される偏心軸64,65が固定されている。各偏心軸64,65には、各偏心軸64,65の駆動を各フォーク51,52に伝達するためのリンク66,67が設けられている。
【0027】
リンク66の一端には、フォーク51の一端にピン等を介して回動自在に連結されるとともに、他端には、偏心軸64が挿通されて偏心軸64に対して回転自在に軸支されている。ここで、リンク66は、偏心軸64の回転によりフォーク51の一端が上下動するように連結されている。
リンク67の一端には、フォーク52の一端にピン等を介して回動自在に連結されるとともに、他端には、偏心軸65が挿通されて偏心軸65に対して回転自在に軸支されている。ここで、リンク67は、偏心軸65の回転によりフォーク52の一端が上下動するように連結されている。
【0028】
(上下動機構によるフォークの動作)
ここで、上下動機構53によるフォーク51,52の動作について説明する。
ハンド傾斜補正モータ62により減速機63を介して回転軸61に駆動力を与えると、回転軸61は軸回りに回転し、回転軸61に固定された偏心軸64,65も回転する。偏心軸64,65の回転により、偏心軸64,65に回転自在に軸支されているリンク66,67の他端は上下方向に往復運動するため、リンク66,67の一端は連結されているフォーク51,52の一端を上下動させる。フォーク51,52の一端を上下動させることにより、フォーク51,52は軸56,58を支点として回転し、フォーク51,52におけるガラス基板12の把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させる。
【0029】
(制御装置)
図1に示すように、制御装置4は、ケーブル40によりロボット2と接続されており、クリーンルーム1の外に設けられている。すなわち、作業者はクリーンルーム1に立ち入ることなくクリーンルーム1外から制御装置4の操作を行うことにより、ロボット2によるガラス基板12の搬送を行うことができるようになっている。
図3は、制御装置4を有するロボットシステム100の構成を示すブロック図である。
制御装置4は、ロボット2の動作制御に関する処理プログラムに従って各処理を実行するCPU41と、各処理を実行するための処理プログラムや処理データ等が記憶されるメモリ42と、を備えている。
メモリ42には、ロボット2の動作制御を行うに当たって必要なプログラムが記憶されたプログラムエリア43と、ロボット2の動作制御を行うに当たって必要なデータが記憶されたデータエリア44と、種々のワークメモリやカウンタなどが設けられ、各処理が行われる作業エリア45と、が形成されている。
【0030】
プログラムエリア43には、位置検出器により検出された回転軸61の回転角度が、当該検出されたときのフォーク51,52へのガラス基板12の積載状況やフォーク51,52の動作状況に一致するデータエリア44に記憶された回転角度データ44d(後述する)におけるフォーク51,52へのガラス基板12の積載状況やフォーク51,52の動作状況に対応する回転角度となるようにハンド傾斜補正モータ62により回転軸61を回転させる制御を行う機能を実現させる制御プログラム43pが記憶されている。すなわち、CPU41が制御プログラム43pを実行することにより、制御装置4は制御手段として機能する。
【0031】
データエリア44には、フォーク51,52へのガラス基板12の積載状況やフォーク51,52の動作状況毎にフォーク51,52におけるガラス基板12の把持面を水平面に一致させたときの回転軸61の初期位置からの回転角度を対応付けた回転角度データ44dが記憶されている。従って、データエリア44は、記憶手段として機能する。
具体的に、回転角度データ44dは、フォーク51,52にガラス基板12が積載されているか否か、フォーク51,52に載置されているガラス基板12の大きさや重量、ロボット2の動作位置(上下アーム22,24の角度、水平アーム31,32の角度、フォーク51,52の先端に作用するモーメント)、ロボット2の動作方向(フォーク51,52の先端の上下方向又は水平方向への移動方向)、ロボット2の動作速度(上下アーム22,24の動作速度、水平アーム31,32の動作速度)等の各状況の場合において、回転軸61をどれだけ回転させるとガラス基板12の把持面が水平になるかについて必要な回転角度と対応付けられたものである。
その他、制御装置4は、上下動モータ23,25、旋回モータ30、水平移動モータ34に接続され、いずれも制御装置4により駆動が制御される。また、制御装置4は、ハンド装置5の吸着パッド51a,52aのガラス基板12への吸着のON/OFFを制御する。
【0032】
図4は、ロボットシステム100の機能を示すブロック図である。
ロボットシステム100は、ロボット2に設けられたハンド装置5を上下方向に移動させる上下移動部71を有し、この上下移動部71の機能を上下アーム22,24及び上下動モータ23,25が担う。
ロボットシステム100は、ロボット2に設けられたハンド装置5を旋回させる旋回部72を有し、この旋回部72の機能を旋回フレーム29及び旋回モータ30が担う。
ロボットシステム100は、ロボット2に設けられたハンド装置5を水平方向に移動させる水平移動部73を有し、この水平移動部73の機能を水平アーム31,32及び水平移動モータ34が担う。
【0033】
ロボットシステム100は、ガラス基板12を搬送する際にガラス基板12を保持する保持部74を有し、この保持部74の機能をハンド装置5が担う。
ロボットシステム100は、上記各部の動作制御を行い、特に、位置検出器により検出された回転軸61の回転角度が、当該検出されたときのフォーク51,52へのガラス基板12の積載状況やフォーク51,52の動作状況に一致するデータエリア44に記憶された回転角度データ44d(後述する)におけるフォーク51,52へのガラス基板12の積載状況やフォーク51,52の動作状況に対応する回転角度となるようにハンド傾斜補正モータ62により回転軸61を回転させる制御を行う機能を実現させる制御部75を有し、この制御部75の機能を制御手段である制御装置4が担う。
ロボットシステム100は、フォーク51,52の傾斜を補正する傾斜補正部76を有し、この傾斜補正部76の機能をハンド傾斜補正モータ62及び制御装置4が担う。
【0034】
<たわみの補正方法>
(フォークにガラス基板を載置した場合のたわみの補正)
図5に示すように、フォーク51,52にガラス基板12を載置した場合、ガラス基板12の荷重によりハンド装置5全体が鉛直下向きに変位しつつ、フォーク51,52の先端にいくほどガラス基板12の荷重により、より大きく下方にたわむ。
このような場合において、ハンド装置5全体の鉛直下向きへの変位については、制御装置4は、ハンド装置5のたわみ量を予め外部に設置した計測機器等により測定しておき、この測定値に基づいて、検出されたたわみ量だけハンド装置5を上昇させるように上下動モータ23,25の駆動を制御する。
【0035】
また、フォーク51,52の先端の下方へのたわみは、制御装置4が制御プログラム43pを実行することにより、データエリア44に記憶された回転角度データ44dに基づいてフォーク51,52に載置されたガラス基板12の把持面が水平になるようにハンド傾斜補正モータ62の駆動を制御して回転軸61を回転させ、フォーク51,52の先端が上方に移動するように当該フォーク51,52を回転させる。
これらの二つの補正方法により、フォーク51,52にガラス基板12を載置した場合のたわみを補正することができる。
【0036】
(フォークの移動によるたわみの補正)
図6に示すように、フォーク51,52を前進させた場合、前進するにつれ、フォーク51,52が鉛直下向きに変位しつつ、フォーク51,52の先端にいくほど大きく下方にたわむ。
このような場合において、フォーク51,52の先端の下方へのたわみは、制御装置4が制御プログラム43pを実行することにより、データエリア44に記憶された回転角度データ44dに基づいてフォーク51,52に載置されたガラス基板12の把持面が水平になるようにハンド傾斜補正モータ62の駆動を制御して回転軸61を回転させ、フォーク51,52の先端が上方に移動するように当該フォーク51,52を回転させる。
【0037】
ここで、図7に示すように、フォーク51におけるガラス基板12の把持面を水平に補正する機構について説明すると、フォーク51にガラス基板12を載置していない状態での状態を図7(a)とする。このとき、偏心軸64は、回転軸61が下方に位置するような状態となっている。
そして、図7(b)に示すように、フォーク51にガラス基板12を載置すると、フォーク51はガラス基板12の重量によりたわみ、このたわみを補正するように偏心軸64が回転する。偏心軸64の回転時には、回転軸61が上方に向かうように回転させる。これにより、リンクと66の上端の位置が下方に下がり、フォーク51は、56を支点としてリンク66に連結された基端部が下がり、先端が上方に移動する。この作用によってフォーク51のたわみを補正してフォーク51におけるガラス基板12の把持面を水平にすることができる。
【0038】
さらに、図7(c)に示すように、ハンド装置5が前方に移動することにより、フォーク51の先端は下方にたわむこととなる。この場合においても、このたわみを補正するように偏心軸64が回転する。偏心軸64の回転時には、回転軸61が上方に向かうように回転させる。これにより、リンクと66の上端の位置が下方に下がり、フォーク51は、56を支点としてリンク66に連結された基端部が下がり、先端が上方に移動する。この作用によってフォーク51のたわみを補正してフォーク51におけるガラス基板12の把持面を水平にすることができる。
【0039】
なお、上記各補正はフォーク51,52のたわみを補正するものであったが、例えば、図2に示すように、ブラケット54も一端が旋回フレーム29に取り付けられた片もちとされているため、ガラス基板12の重さによって、ブラケット54の先端が基端より多くたわむことにより、フォーク51とフォーク52とでは、たわみ量が異なる。
このような場合においても、フォーク51を駆動させる偏心軸64の偏心量をフォーク52を駆動させる偏心軸65の偏心量よりも大きくし、制御装置4によるハンド傾斜補正モータ62の駆動制御により、たわみの大きなフォーク51をフォーク52よりも多く回転させるとよい。
【0040】
<作用効果>
上記実施形態によれば、上下動機構53により各フォーク51,52の一端を上下動させて、当該フォーク51,52におけるガラス基板12の把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させることができる。
これにより、各フォーク51,52のたわみ・傾きを補正するための駆動源として、小さい駆動力のモータを採用することが可能となり、各フォーク51,52の軽量化とコスト低減が可能となる。
また、各フォーク51,52だけを上下動させるため、ハンド装置5全体の剛性が高くなり、動作時の振動を小さくすることができる。
また、上下動機構53により各フォーク51,52におけるガラス基板12の把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させて各フォーク51,52を水平にすることができるので、より狭い範囲に各フォーク51,52を挿入し、ガラス基板12を周囲と干渉することなく取り出すことができる。このため、ガラス基板12が載置されたカセットのピッチを狭くすることができ、設備をコンパクトにすることができる。また、設備をコンパクトにしなくとも同サイズのカセットにより多くのガラス基板12を積載することが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
また、ガラス基板12による負荷の状態やフォーク51,52の取り付け位置等により、たわみの状態が異なる各フォーク51,52ついて、それぞれに補正の量を変えることができるので、水平度を向上させる微調整を行うことができる。
【0041】
<その他>
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、図8に示すように、ハンド傾斜補正モータ62として用いられるサーボモータに代えてエアシリンダ8を用いてもよい。図8に示すロボット20において、エアシリンダ8を用いる場合には、ブラケット101上にヒンジ102によりエアシリンダ8を支持する支持部材103を設け、この支持部材103によりエアシリンダ8を支持させる。そして、エアシリンダ8のピストンロッド8aの先端にナックル104を取り付け、このナックル104をクランク105の一端に連結する。クランク105の他端は回転軸106に固定され、クランク105の一端がエアシリンダ8によって押されることにより、クランク105はクランク105の他端を支点に回転するため、回転軸106も回転し、回転軸106に固定された偏心軸107,108が回転してリンク109,110を上下動させ、その結果、フォーク111,112の一端を上下動させる。
これにより、フォーク111,112を回転させる角度に応じてエアシリンダ8のピストンロッド8aの移動量を変えることにより、フォーク111、112をたわみ量に応じて上下動させることができ、サーボモータを使用する場合よりもコストを低減することができる。
また、本発明は、フォークが2本の場合のロボットに限らず、3本以上あるロボットにおいても適用可能である。
その他、発明の範囲内で自由に置換、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ロボットシステムの概要を示す図。
【図2】ロボットの構成を示す斜視図。
【図3】ロボットシステムの構成を示すブロック図。
【図4】ロボットシステムの機能を示すブロック図。
【図5】ガラス基板の重量によりフォークが下方にたわんだ状態を示す図。
【図6】フォークが前進することによりフォークがたわんだ状態を示す図。
【図7】(a)はフォークにガラス基板を載置しない状態でのハンド装置、(b)はフォークにガラス基板を載置した状態でのハンド装置、(c)はフォークにガラス基板を載置した状態でフォークを前進させたときのハンド装置。
【図8】他の実施形態におけるロボットを示す斜視図。
【符号の説明】
【0043】
2 ロボット
4 制御装置(制御手段)
5 ハンド装置
12 ガラス基板(ワーク)
44 データエリア(記憶手段)
51 フォーク(ハンド)
52 フォーク(ハンド)
53 上下動機構
54 ブラケット
61 回転軸
62 ハンド傾斜補正モータ(駆動手段)
64 偏心軸
65 偏心軸
66 リンク
67 リンク
100 ロボットシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び水平方向に移動して所定の場所に載置されたワークを把持して他の場所に搬送するハンド装置を備えるロボットにおいて、
前記ハンド装置は、
ワークを下方から把持する複数のハンドと、
各ハンドの一端を上下動させて、当該ハンドにおけるワークの把持面の水平面に対する傾斜角度を変化させる上下動機構と、
を備えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記上下動機構は、
前記ハンドが回転自在に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに軸回りに回転自在に固定される回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動手段と、
前記回転軸の軸心に対して偏心した位置で軸支される偏心軸と、
一端が前記ハンドの一端に回転自在に連結されるとともに、他端が前記偏心軸に回転自在に軸支され、前記偏心軸の回転により前記ハンドの一端が上下動するように連結されるリンクと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記駆動手段は、サーボモータであることを特徴とする請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況によって各ハンドのたわみ量の差に対応づけて前記偏心軸の前記回転軸に対する偏心量を設定したことを特徴とする請求項2又は3に記載のロボット。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一項に記載のロボットと、
前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況毎に前記ハンドにおけるワークの把持面を水平面に一致させたときの前記回転軸の回転角度を対応付けて記憶する記憶手段と、
前記回転軸の回転角度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記回転軸の回転角度が、当該検出されたときの前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に一致する前記記憶手段に記憶された前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に対応する回転角度となるように前記駆動手段により前記回転軸を回転させる制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットシステムにより前記ハンド装置の姿勢を制御するハンド装置の姿勢制御方法において、
前記検出手段により前記回転軸の回転角度を検出する検出工程と、
前記検出工程により検出された前記回転軸の回転角度が、当該検出されたときの前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に一致する前記記憶手段に記憶された前記ハンドへのワークの積載状況や前記ロボットの動作状況に対応する回転角度となるように前記駆動手段により前記回転軸を回転させる制御を行う制御工程と、
を有することを特徴とするハンド装置の姿勢制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−283436(P2007−283436A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113628(P2006−113628)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】