説明

ロボットのアーム構造およびロボット

【課題】ロボットの最小旋回径を小さくすること。
【解決手段】実施形態に係るロボットは、第1アーム部、第2アーム部、中間リンク部、第1リンク部および第2リンク部を備える。第1リンク部は、第1アーム部と中間リンク部と固定ベース部との間で第1平行リンク機構を形成する。第2リンク部は、第2アーム部と中間リンク部と可動ベース部との間で第2平行リンク機構を形成する。そして、第2リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離は、第2リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットのアーム構造およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板や半導体ウエハ等のワークを搬送するロボットとして、水平多関節ロボットが知られている。水平多関節ロボットは、2つのアーム部が関節を介して連結された伸縮アームを備えるロボットであり、各アーム部を回転動作させることによって伸縮アームの先端部に設けられたエンドエフェクタを直線的に移動させる。さらに、水平多関節ロボットは、伸縮アームを支持するベース部が、鉛直軸である旋回軸を中心として回転可能に構成される。
【0003】
このような水平多関節ロボットでは、伸縮アームの先端部に取り付けられるエンドエフェクタの向きがアーム部材の回転動作によって変化しないように、各アーム部の回転動作に追従して動作するリンク機構を設けてエンドエフェクタの回転を規制している。
【0004】
たとえば、特許文献1には、基端側のアーム部の回転動作に追従する第1の平行リンク機構と、先端側のアーム部の回転動作に追従する第2の平行リンク機構の2つの平行リンク機構を用いてエンドエフェクタの回転を規制するアーム構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4295788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術には、ロボットの最小旋回径を小さくするという点で更なる改善の余地がある。ロボットの最小旋回径とは、旋回軸を中心としてベース部が回転する場合における水平多関節ロボットの最小の回転半径のことである。
【0007】
たとえば、上述した従来技術では、第1の平行リンク機構のリンク幅と第2の平行リンク機構のリンク幅とを同一としている。リンク幅とは、アーム部材と平行に設けられたリンク同士の幅のことをいう。したがって、ロボットが大型化すると、第2の平行リンク機構のリンク幅も大きくなり、これに伴って最小旋回径が大きくなってしまう。
【0008】
実施形態の一態様は、ロボットの最小旋回径を小さくすることができるロボットのアーム構造およびロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係るロボットのアーム構造は、第1アーム部と、第2アーム部と、中間リンク部と、第1リンク部と、第2リンク部とを備える。第1アーム部は、固定ベース部に対して基端部が回転可能に連結される。第2アーム部は、基端部が第1アーム部の先端部に対して回転可能に連結され、先端部において可動ベース部と回転可能に連結される。中間リンク部は、第1アーム部と第2アーム部との連結軸と同軸上に軸支される。第1リンク部は、第1アーム部と中間リンク部と固定ベース部との間で第1平行リンク機構を形成する。第2リンク部は、第2アーム部と中間リンク部と可動ベース部との間で第2平行リンク機構を形成する。そして、第2リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離は、第1リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離よりも短い。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、ロボットの最小旋回径を小さくすることが可能なロボットのアーム構造およびロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係るロボットの模式斜視図である。
【図2A】図2Aは、従来と同様の平行リンク機構を採用した場合におけるロボットの最小旋回径を示す模式平面図である。
【図2B】図2Bは、本実施形態に係るロボットの最小旋回径を示す模式平面図である。
【図3】図3は、ロボットを真空チャンバへ設置した状態を示す模式側面図である。
【図4】図4は、肉厚部周辺の模式側面図である。
【図5】図5は、肉厚部周辺の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットのアーム構造およびロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
まず、本実施形態に係るロボットの構成について図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係るロボットの模式斜視図である。
【0014】
図1に示すように、ロボット1は、水平方向に伸縮する2つの伸縮アームを備える水平多関節ロボットである。具体的には、ロボット1は、胴体部10と、アームユニット20とを備える。
【0015】
胴体部10は、アームユニット20の下部に設けられるユニットである。胴体部10は、筒状の筐体11内に昇降装置を備えており、かかる昇降装置を用いてアームユニット20を鉛直方向に沿って昇降させる。
【0016】
昇降装置は、たとえばモータやボールねじ、ボールナット等を含んで構成され、モータの回転運動を直線運動へ変換することによって昇降フランジ部15を鉛直方向に沿って昇降させる。これにより、昇降フランジ部15上に固定されるアームユニット20が昇降する。
【0017】
筐体11の上部には、フランジ部12が形成される。ロボット1は、フランジ部12が真空チャンバに固定されることによって、真空チャンバに設置された状態となる。ロボット1の真空チャンバへの設置については、図3を用いて説明する。
【0018】
アームユニット20は、昇降フランジ部15を介して胴体部10と連結するユニットである。具体的には、アームユニット20は、固定ベース部21と、第1アーム部22と、第2アーム部23と、可動ベース部24と、補助アーム部25とを備える。
【0019】
固定ベース部21は、昇降フランジ部15に対して回転可能に支持される。固定ベース部21は、モータや減速機等からなる旋回装置を備えており、かかる旋回装置を用いて回転する。
【0020】
具体的には、旋回装置は、出力軸が胴体部10に固定された減速機に対してモータの回転を伝達ベルト経由で入力する。これにより、固定ベース部21は、減速機の出力軸を旋回軸として水平方向に自転する。
【0021】
固定ベース部21の上部には、第1アーム部22の基端部が減速機を介して回転可能に連結される。また、第1アーム部22の先端上部には、第2アーム部23の基端部が減速機を介して回転可能に連結される。
【0022】
ロボット1は、第1アーム部22の基端部に設けられた減速機および第1アーム部22の先端部に設けられた減速機を1つのモータを用いて同期的に動作させることで、第2アーム部23の先端を直線的に移動させる。
【0023】
具体的には、ロボット1は、第1アーム部22に対する第2アーム部23の回転量が固定ベース部21に対する第1アーム部22の回転量の2倍となるように、第1アーム部22および第2アーム部23を回転させる。たとえば、ロボット1は、第1アーム部22が固定ベース部21に対してα度回転した場合に、第2アーム部23が第1アーム部22に対して2α度回転するように第1アーム部22および第2アーム部23を回転させる。これにより、第2アーム部23の先端部は、直線的に移動する。
【0024】
なお、真空チャンバ内の汚染防止等の観点から、減速機やモータといった駆動機構は、大気圧に保たれた第1アーム部22の内部に収納される。これにより、ロボット1を減圧環境下に置く場合であっても、グリス等の潤滑油の乾燥を防止することができる他、発塵による真空チャンバ内の汚染を防止することができる。
【0025】
第2アーム部23の先端部の上部には、可動ベース部24が回転可能に連結される。この可動ベース部24は、第1アーム部22および第2アーム部23の回転動作に伴って移動する部材であり、ワークを保持するためのエンドエフェクタ24aを上部に備える。
【0026】
補助アーム部25は、移動中のエンドエフェクタ24aが常に一定の方向を向くように、第1アーム部22および第2アーム部23の回転動作と連動して可動ベース部24の回転を規制するリンク機構である。
【0027】
具体的には、補助アーム部25は、第1リンク部25aと、中間リンク部25bと、第2リンク部25cとを備える。
【0028】
第1リンク部25aは、基端部が固定ベース部21に対して回転可能に連結され、先端部において中間リンク部25bの先端部と回転可能に連結される。また、中間リンク部25bは、基端部が第1アーム部22と第2アーム部23との連結軸と同軸上に軸支され、先端部が第1リンク部25aの先端部と回転可能に連結される。
【0029】
第2リンク部25cは、基端部において中間リンク部25bと回転可能に連結され、先端部において可動ベース部24の基端部と回転可能に連結される。また、可動ベース部24は、先端部において第2アーム部23の先端部と回転可能に連結され、基端部において第2リンク部25cと回転可能に連結される。
【0030】
第1リンク部25aは、固定ベース部21、第1アーム部22および中間リンク部25bと共に第1平行リンク機構を形成する。すなわち、第1アーム部22が基端部を中心として回転すると、第1リンク部25aおよび中間リンク部25bが、それぞれ第1アーム部22および固定ベース部21と平行な状態を保ちながら回転する。
【0031】
また、第2リンク部25cは、第2アーム部23、可動ベース部24および中間リンク部25bと共に第2平行リンク機構を形成する。すなわち、第2アーム部23が基端部を中心として回転すると、第2リンク部25cおよび可動ベース部24が、それぞれ第2アーム部23および中間リンク部25bと平行な状態を保ちながら回転する。
【0032】
中間リンク部25bは、第1平行リンク機構によって固定ベース部21と平行な状態を保ちながら回転する。このため、第2平行リンク機構の可動ベース部24も固定ベース部21と平行な状態を保ちながら回転する。この結果、可動ベース部24の上部に取り付けられるエンドエフェクタ24aは、固定ベース部21と平行な状態を保ちながら直線的に移動することとなる。
【0033】
このように、ロボット1は、第1平行リンク機構および第2平行リンク機構の2つの平行リンク機構を用いて、エンドエフェクタ24aの向きを一定に保つこととした。したがって、たとえば第2アーム部内にプーリや伝達ベルトを設け、これらプーリや伝達ベルトを用いてエンドエフェクタの向きを一定方向に維持する場合と比較して、プーリや伝達ベルトに起因する発塵を抑えることができる。
【0034】
また、補助アーム部25によってアーム全体の剛性を高めることができるため、エンドエフェクタ24aの動作時の振動を低減することができる。したがって、プーリや伝達ベルトを用いてエンドエフェクタの向きを一定方向に維持する場合と比較して、エンドエフェクタ24aの動作時の振動に起因する発塵も抑えることができる。
【0035】
ここで、図1に示すように、本実施形態に係るロボット1では、第2リンク部25cと中間リンク部25bとの連結位置を中間リンク部25bの先端部ではなく、中途部に設けることとした。これにより、本実施形態に係るロボット1では、第2リンク機構のリンク幅、すなわち、第2アーム部23および第2リンク部25c間の幅が小さくなるため、ロボット1の最小旋回径を小さくすることができる。
【0036】
以下では、かかる点についてより具体的に説明する。ここで、最小旋回径とは、固定ベース部21に設けられた旋回軸を中心として回転するロボット1の最小の回転半径のことである。また、以下では、旋回軸を中心とする回転半径が最小となるロボット1の姿勢を最小旋回姿勢と呼ぶ。
【0037】
まず、従来と同様の平行リンク機構を採用した場合におけるロボット2の最小旋回径について図2Aを用いて説明する。図2Aは、従来と同様の平行リンク機構を採用した場合におけるロボット2の最小旋回径を示す模式平面図である。
【0038】
なお、以下では、可動ベース部の進退方向をX軸方向とし、水平方向においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。また、X軸方向およびY軸方向に直交する方向、すなわち、鉛直方向をZ軸方向とする。
【0039】
また、以下では、ロボットの各構成要素の相対的な位置関係を説明する上で、上下、左右、及び前後で方向を示す場合があるが、各方向の基準は、ロボットを水平面に設置した場合とする。具体的には、図2A中、X軸の正方向および負方向をそれぞれロボット2の前方および後方、Y軸の正方向および負方向をそれぞれロボット2の右方および左方、Z軸の正方向および負方向をロボット2の上方および下方とする。また、図2Aでは、エンドエフェクタを省略して示す。
【0040】
図2Aに示すように、従来と同様の平行リンク機構を採用したロボット2は、第2リンク部25c’が、第1リンク部25aと中間リンク部25b’との連結軸P5と同軸上に連結される。
【0041】
第2平行リンク機構は、第2アーム部23、可動ベース部24’、第2リンク部25c’および中間リンク部25b’によって形成される。このため、可動ベース部24’における第2アーム部23との連結軸P3から第2リンク部25c’との連結軸P6までの距離は、中間リンク部25b’における第2アーム部23との連結軸P2から第2リンク部25c’との連結軸P5までの距離と同一である。
【0042】
したがって、固定ベース部21における第1アーム部22との連結軸P1から第1リンク部25aとの連結軸P4までの距離をL1とすると、連結軸P2から連結軸P5までの距離もL1であるため、連結軸P3から連結軸P6までの距離は、L1となる。
【0043】
ロボット2は、固定ベース部21に設けられた旋回装置によって旋回軸Oを中心に回転する。このとき、ロボット2は、旋回軸Oを中心とする回転半径が最小となる姿勢、すなわち最小旋回姿勢を取った状態で回転する。
【0044】
具体的には、図2Aに示すロボット2の左方に設けられた伸縮アームの姿勢、具体的には、可動ベース部24’の可動範囲内において可動ベース部24’を固定ベース部21の最も後方側へ位置させた姿勢が、ロボット2の最小旋回姿勢である。
【0045】
図2Aに示すように、ロボット2は、最小旋回姿勢を取ると、可動ベース部24’の基端部がロボット2の後方へ突き出た状態となる。かかる可動ベース部24’の基端部から旋回軸Oまでの距離が、ロボット2の最小旋回径となる。図2Aに示す円R1は、最小旋回姿勢を取ったロボット2が旋回軸Oを中心として回転する場合に、可動ベース部24’の基端部が描く円である。
【0046】
なお、ロボット2の右方に設けられた伸縮アームの姿勢は、可動ベース部24’の可動範囲内において可動ベース部24’を固定ベース部21の最も前方側へ位置させた姿勢である。
【0047】
近年では、ガラス基板や半導体ウエハ等のワークの大型化に伴い、これらのワークを搬送するロボットも大型化されつつある。連結軸P1から連結軸P4までの距離L1は、ロボットが大型化するほど長くなる。このため、ロボットが大型化するほど、連結軸P3から連結軸P6までの距離も長くなり、最小旋回径が大きくなるおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態に係るロボット1では、連結軸P2からの距離が連結軸P5よりも短い中間リンク部25bの中途部において、第2リンク部25cと中間リンク部25bとを連結することとした。これにより、可動ベース部24の長さを短くすることができ、ロボット1の最小旋回径を小さくすることができる。
【0049】
ここで、本実施形態に係る平行リンク機構の具体的な構成および本実施形態に係るロボット1の最小旋回径について図2Bを用いて説明する。図2Bは、本実施形態に係るロボット1の最小旋回径を示す模式平面図である。なお、図2Bでは、エンドエフェクタ24aを省略して示している。
【0050】
図2Bに示すように、第2リンク部25cと中間リンク部25bとの連結軸P7は、中間リンク部25bの中途部に設けられる。具体的には、連結軸P7は、連結軸P2までの距離が、連結軸P5から連結軸P2までの距離L1よりも短い位置に設けられる。すなわち、連結軸P2から連結軸P7までの距離をL2とすると、L2は、連結軸P2から連結軸P5までの距離L1よりも短い。
【0051】
可動ベース部24は、第2アーム部23との連結軸P3から第2リンク部25cとの連結軸P6までの距離が、中間リンク部25bにおける第2アーム部23との連結軸P2から第2リンク部25cとの連結軸P7までの距離L2と同一になるように形成される。このため、連結軸P3から連結軸P6までの距離は、従来のロボット2における連結軸P3から連結軸P6までの距離L1よりも短いL2となる。
【0052】
連結軸P3から連結軸P6までの距離が短くなることによって、可動ベース部24の基端部のロボット1後方への突出量を減らすことができる。これにより、可動ベース部24の基端部から旋回軸Oまでの距離、すなわち、ロボット1の最小旋回径は、小さくなる。
【0053】
図2Bに示す円R2は、最小旋回姿勢を取ったロボット1が旋回軸Oを中心として回転する場合に、可動ベース部24の基端部が描く円である。図2Bに示すように、円R2は、ロボット2の可動ベース部24’の基端部が描く円R1よりも小さくなる。
【0054】
このように、本実施形態に係るロボット1では、第2平行リンク機構のリンク幅を小さくし、可動ベース部24の基端部のロボット1後方への突出量を減らすこととしたため、ロボット1の最小旋回径を小さくすることができる。
【0055】
また、図2Bに示すように、第2リンク部25cは、ロボット1が最小旋回姿勢を取った場合に、第2アーム部23よりも固定ベース部21の外側に配置される。このため、第2平行リンク機構のリンク幅を小さくすることによってロボット1の最小旋回径を小さくする構成を容易に実現することができる。
【0056】
すなわち、仮に、第1アーム部22が第1リンク部25aよりも固定ベース部21の内側に配置され、第2アーム部23が第2リンク部25cよりも固定ベース部21の外側に配置されるとする。かかる場合、ロボット1の最小旋回径を小さくしようとすると、第2アーム部23の回転軸が第1アーム部22の回転軸と異なる位置に設けられることとなり、第1アーム部22および第2アーム部23を同期的に回転させるための構成が複雑化する可能性がある。
【0057】
これに対し、本実施形態に係るロボット1では、第1アーム部22と第2アーム部23とが同軸上で連結された状態を維持しつつ、第2平行リンク機構のリンク幅を小さくできる。このため、第2平行リンク機構のリンク幅を小さくすることによってロボット1の最小旋回径を小さくする構成を容易に実現することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るロボット1では、第1平行リンク機構については従来通りのリンク幅とし、第2平行リンク機構のリンク幅のみを小さくすることとしたため、伸縮アームの剛性を維持しつつ、ロボット1の最小旋回径を小さくすることができる。
【0059】
ところで、本実施形態に係るロボット1は、真空ポンプ等によって減圧状態に保たれた真空チャンバ内に配置される。
【0060】
以下では、ロボット1を真空チャンバへ設置した状態について図3を用いて説明する。図3は、ロボット1を真空チャンバへ設置した状態を示す模式側面図である。
【0061】
図3に示すように、ロボット1は、胴体部10に形成されたフランジ部12が真空チャンバ30の底部に形成された開口部31の縁部に対し、シール部材を介して固定される。これにより、真空チャンバ30は密閉された状態となり、真空ポンプ等の減圧装置によって内部が減圧状態に保たれる。なお、胴体部10の筐体11は、真空チャンバ30の下部から突出し、真空チャンバ30を支持する支持部35内の空間に位置する。
【0062】
ロボット1は、かかる真空チャンバ30内においてワークの搬送作業を行う。たとえば、ロボット1は、第1アーム部22および第2アーム部23を用いてエンドエフェクタ24aを直線的に移動させることで、図示しないゲートバルブを介して真空チャンバ30と接続される他の真空チャンバからワークを取り出す。
【0063】
つづいて、ロボット1は、エンドエフェクタ24aを引き戻したのち、固定ベース部21を旋回軸Oを中心に回転させることで、ワークの搬送先となる他の真空チャンバに対してアームユニット20を正対させる。そして、ロボット1は、第1アーム部22および第2アーム部23を用いてエンドエフェクタ24aを直線的に移動させることで、ワークの搬送先となる他の真空チャンバへワークを搬入する。
【0064】
真空チャンバ30の減圧状態の維持を容易にするためには、真空チャンバ30を可能な限り小型に形成することが好ましい。真空チャンバ30の大きさは、ロボット1の最小旋回径に応じて決まる。このため、本実施形態に係るロボット1のように最小旋回径を小さくすることで、真空チャンバ30を小型化することができ、真空チャンバ30の減圧状態を容易に維持することが可能となる。
【0065】
また、真空チャンバ30の大きさは、ロボット1の高さ寸法によっても決まる。このため、ロボット1の高さ寸法を小さく抑えることも好ましい。
【0066】
本実施形態に係るロボット1では、図1および図2Bに示すように、中間リンク部25bが、鉛直方向において第1アーム部22と第2アーム部23との間に設けられる。また、第1リンク部25aおよび第2リンク部25cは、それぞれ鉛直方向において第1アーム部22および第2アーム部23と重なる位置に設けられる。そして、第1リンク部25aは、中間リンク部25bの下部に連結され、第2リンク部25cは、中間リンク部25bの上部に連結される。
【0067】
第1リンク部25a、中間リンク部25bおよび第2リンク部25cを上記のように配置することで、本実施形態に係るロボット1では、伸縮アームの高さ寸法を小さく抑えることができる。したがって、ロボット1の高さ寸法が小さくなるため、真空チャンバ30を小型化することができ、真空チャンバ30の減圧状態を容易に維持することができる。
【0068】
このように、本実施形態に係るロボット1は、最小旋回径や高さ寸法を小さくしたため、真空チャンバ30を小型化することができる。
【0069】
なお、真空チャンバ30には、底面に凹部が形成されており、かかる凹部に対して、固定ベース部21や昇降フランジ部15といった下方へ突出するロボット1の部位が納められる。このように、真空チャンバ30をロボット1の形状に合わせて形成することによっても、真空チャンバ30内を小型化することができる。
【0070】
ところで、図1および図3に示すように、第2アーム部23には、鉛直方向における厚みが先端部と比較して厚い肉厚部23aが、基端部から中途部にかけて形成される。このように、第2アーム部23に対して肉厚部23aを形成することで、第2アーム部23の剛性を高めることができる。
【0071】
ここで、第2アーム部23に形成される肉厚部23aについて図4および図5を用いてさらに具体的に説明する。図4は、肉厚部23a周辺の模式側面図である。また、図5は、肉厚部23a周辺の模式平面図である。
【0072】
肉厚部23aの上面231は、第2アーム部23の先端部の上面よりも高い位置に形成される。具体的には、図4に示すように、肉厚部23aの上面231は、エンドエフェクタ24aの下面242よりも上方、かつ、エンドエフェクタ24aのワーク保持面241よりも下方に位置する高さに形成される。
【0073】
このように、肉厚部23aは、ワーク保持面241に載置されるワークと干渉しない範囲で、できるだけ厚く形成される。このため、ワークの搬送作業に支障を来たすことなく、第2アーム部23の剛性を高めることができる。
【0074】
図5は、肉厚部23a周辺の模式平面図である。図5には、可動ベース部24の可動範囲を示している。具体的には、可動ベース部24を固定ベース部21の最も後方側へ位置させた状態を点線で、最も前方側へ位置させた状態を実線で、それぞれ示している。
【0075】
図5に示すように、第2アーム部23は、点線で示した位置から実線で示した位置まで移動し、これに伴って可動ベース部24も点線で示した位置から実線で示した位置まで移動する。
【0076】
肉厚部23aは、第1アーム部22および第2アーム部23の回転動作に伴って移動する可動ベース部24が、第2アーム部23上を通過する位置よりも基端部側の領域に形成される。これにより、可動ベース部24の移動中に肉厚部23aが可動ベース部24と接触することがないため、ワークの搬送作業に支障を来たすことなく、第2アーム部23の剛性を高めることができる。
【0077】
なお、第2アーム部23の基端部の内部には、エンドエフェクタ24aからの配線を接続するコネクタが配設される。本実施形態に係るロボット1では、第2アーム部23の基端部に肉厚部23aを形成することとしたため、第2アーム部23の基端部内に十分な配線スペースを確保することができ、エンドエフェクタ24aからの配線に余計な負荷がかかることを防止することができる。
【0078】
上述してきたように、本実施形態に係るロボットは、第1アーム部と、第2アーム部と、中間リンク部と、第1リンク部と、第2リンク部とを備える。第1アーム部は、固定ベース部に対して基端部が回転可能に連結される。第2アーム部は、基端部が第1アーム部の先端部に対して回転可能に連結され、先端部において可動ベース部と回転可能に連結される。中間リンク部は、第1アーム部と第2アーム部との連結軸と同軸上に軸支される。第1リンク部は、第1アーム部と中間リンク部と固定ベース部との間で第1平行リンク機構を形成する。第2リンク部は、第2アーム部と中間リンク部と可動ベース部との間で第2平行リンク機構を形成する。
【0079】
そして、第2リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離を、第1リンク部と中間リンク部との連結軸から第1アーム部と第2アーム部との連結軸までの距離よりも短くした。したがって、ロボットの最小旋回径を小さくすることができる。
【0080】
なお、上述してきた実施形態では、ロボットが、ワークを搬送する搬送ロボットである場合の例について説明したが、ロボットは、ワークの搬送以外の作業を行うロボットであってもよい。また、上述してきた実施形態では、ロボットが、真空チャンバ内に設置される場合の例について説明してきたが、ロボットが設置されるチャンバは真空チャンバ以外のチャンバであってもよい。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ロボット
10 胴体部
11 筐体
12 フランジ部
15 昇降フランジ部
20 アームユニット
21 固定ベース部
22 第1アーム部
23 第2アーム部
23a 肉厚部
231 肉厚部の上面
24 可動ベース部
24a エンドエフェクタ
241 ワーク保持面
242 エンドエフェクタの下面
25 補助アーム部
25a 第1リンク部
25b 中間リンク部
25c 第2リンク部
30 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベース部に対して基端部が回転可能に連結される第1アーム部と、
基端部が前記第1アーム部の先端部に対して回転可能に連結され、先端部において可動ベース部と回転可能に連結される第2アーム部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸と同軸上に軸支される中間リンク部と、
前記第1アーム部と前記中間リンク部と前記固定ベース部との間で第1平行リンク機構を形成する第1リンク部と、
前記第2アーム部と前記中間リンク部と前記可動ベース部との間で第2平行リンク機構を形成する第2リンク部と
を備え、
前記第2リンク部と前記中間リンク部との連結軸から前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸までの距離が、前記第1リンク部と前記中間リンク部との連結軸から前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸までの距離よりも短いことを特徴とするロボットのアーム構造。
【請求項2】
前記第2リンク部は、
鉛直方向と平行な旋回軸を中心とする回転半径が最小となる最小旋回姿勢を前記ロボットが取った場合に、前記第2アーム部よりも前記固定ベース部の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のロボットのアーム構造。
【請求項3】
前記中間リンク部は、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に設けられ、
前記第1リンク部は、
鉛直方向において前記第1アーム部と重なる位置に設けられるとともに、前記中間リンク部の鉛直方向下部に連結され、
前記第2リンク部は、
鉛直方向において前記第2アーム部と重なる位置に設けられるとともに、前記中間リンク部の鉛直方向上部に連結されることを特徴とする請求項1または2に記載のロボットのアーム構造。
【請求項4】
前記第2アーム部は、
鉛直方向における厚みが前記先端部と比較して厚い肉厚部を備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載のロボットのアーム構造。
【請求項5】
前記可動ベース部は、
前記第2アーム部の先端部の上部に対して回転可能に連結されるとともに、ワークを保持するエンドエフェクタを上部に備え、
前記肉厚部は、
上面が、前記エンドエフェクタの下面よりも鉛直方向において上方、かつ、前記エンドエフェクタのワーク保持面よりも鉛直方向において下方に位置することを特徴とする請求項4に記載のロボットのアーム構造。
【請求項6】
前記肉厚部は、
前記第1アーム部および前記第2アーム部の回転動作に伴って移動する前記可動ベース部が前記第2アーム部上を通過する位置よりも前記第2アーム部の基端部側の領域に形成されることを特徴とする請求項4または5に記載のロボットのアーム構造。
【請求項7】
固定ベース部と、
前記固定ベース部に対して基端部が回転可能に連結される第1アーム部と、
基端部が前記第1アーム部の先端部に対して回転可能に連結される第2アーム部と、
前記第2アーム部の先端部に対して回転可能に連結される可動ベース部と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸と同軸上に軸支される中間リンク部と、
前記第1アーム部と前記中間リンク部と前記固定ベース部との間で第1平行リンク機構を形成する第1リンク部と、
前記第2アーム部と前記中間リンク部と前記可動ベース部との間で第2平行リンク機構を形成する第2リンク部と
を備え、
前記第2リンク部と前記中間リンク部との連結軸から前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸までの距離が、前記第1リンク部と前記中間リンク部との連結軸から前記第1アーム部と前記第2アーム部との連結軸までの距離よりも短いことを特徴とするロボット。
【請求項8】
前記固定ベース部は、
鉛直方向と平行な旋回軸を中心として回転する旋回部を備えることを特徴とする請求項7に記載のロボット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49113(P2013−49113A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188689(P2011−188689)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】